説明

光電変換装置

【課題】フェルールとフェルール受けの間に設けた封止剤の光素子側への必要以上の流入を防ぐことで、光素子を小さな空間に密閉可能であり、集積回路と光素子を接続する配線が短く、空間の外側に配された他の部材のレイアウトの自由度が高く、素子が劣化しにくい光電変換装置を提供することである。
【解決手段】光ファイバ2を支持するフェルール5と、フェルール5を回路基板4上に支持するフェルール受け6とを備えており、フェルール5とフェルール受け6の間に配置時に流動可能な封止剤11が介在しており、フェルール受け6は封止剤11の流れを止める流動阻止手段である溝や壁等を有している光電変換装置において、封止剤11の配置時の流れを流動阻止手段によって止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号と光信号の変換を行う光電変換装置に関するものであり、より詳細には素子と光ファイバの光結合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信分野において、光通信システムが広く採用されている。情報を伝搬する通信光を用いた通信は、電気通信のように電磁波の影響を受けず、また伝送損失が少ないなどの利点がある。しかし、光通信の技術は、全ての情報伝達を光信号によって行うまでには至っておらず、電気通信と光通信の両方用いる機器においては光信号と電気信号間の変換を行う光電変換装置が用いられる。
【0003】
一般に、光通信システムでは、基板上に光素子が設けられ、この光素子と光通信可能に、光ファイバの端部が配される。ここで、光ファイバはフェルールで保持され、このフェルールはフェルール受けを介して基板に固定される。そして、光ファイバと光通信する光素子が有線で集積回路と接続される。
【0004】
ここで、他の情報通信と同様に、光通信においても信号の減衰を防ぐことが必要となる。そして、光電変換装置における通信光の減衰要因の一つは、受光部の素子または発光部の素子の様な光素子が、外部からの湿気やガス、埃等に接触することであり、これによって光素子が劣化する。
【0005】
そこで光素子の劣化を防ぐ技術として、例えば、特許文献1の段落[0060]に「本発明の受発光素子モジュールは、面発光レーザアレイ8などの受発光素子の受発光面側を光透過性樹脂などの光透過性材料で覆って形成することもできる。このようにすると、受発光素子の受発光素面を光透過性樹脂により保護することができる」と記載されているように、光透過性樹脂により光素子を保護するという方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−206376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている方法では、温度変化により、樹脂が膨張と収縮を繰り返すことにより、通信光の方向が変化したり、光素子を応力破壊してしまう等の恐れがある。
【0008】
そこで、光素子の周囲に空間を設けて光素子に接触する部材をなくし、さらに、空間を密閉することにより光素子の気密性を保つという方法が考えられる。即ち、空間を形成するフェルールとフェルール受けの隙間を封止剤で充填することによって、空間(光素子)の気密性を保つという方法である。しかし、この方法において、光素子の周囲の空間を大きくすると、空間の外側にある集積回路と光素子を接続する配線が長くなったり、基板上に配された光素子用の領域が大きくなって、空間の外側(フェルール受けの外側)に配されている他の部材のレイアウトに制約が生じるという問題がある。
【0009】
また、光素子の周囲の空間を小さくすると、封止剤の流入量の調整が難しくなり、封止剤が必要以上に光素子側へ流れ込み、光素子に付着するという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、フェルールとフェルール受けの間に設けた封止剤の光素子側への必要以上の流入を防ぐことで、光素子を小さな空間に密閉可能であり、集積回路と光素子を接続する配線が短く、空間の外側に配された他の部材のレイアウトの自由度が高く、素子が劣化しにくい光電変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、電気信号を光信号に変換して光ファイバに光を射出する発光部の素子又は/および、光ファイバから受光した光を電気信号に変換する受光部の素子を備えた回路基板を有する光電変換装置であって、光ファイバを支持するフェルールと、前記フェルールを前記回路基板上に支持するフェルール受けとを備えており、前記フェルールと前記フェルール受けの間に配置時に流動可能な封止剤が介在しており、前記フェルール受けは流動する封止剤の流れを止める流動阻止手段を有しており、前記流動阻止手段は、封止剤を流入させる溝であることを特徴とする光電変換装置である。
【0012】
本発明の光電変換装置では、フェルール受けに封止剤を流入させる溝が設けられているため、封止剤が必要以上にフェルールとフェルール受けの間に供給されたとき、封止剤は溝に流入する。
【0013】
ここで、溝に流入する封止剤の量が、溝の容積に満たない場合は、溝より下流側(流動する封止剤の進行方向下流側)に封止剤が流れない。また、封止剤の量が溝の容積を越える場合であっても、溝に流入した分だけ溝よりも下流側に流れる封止剤の量が減少する。
【0014】
そのため、溝の容積や数、位置を調整することで封止剤の流れを止めたり、封止剤が広がる範囲を狭くしたりすることが可能である。
【0015】
このことから、封止剤の規定外の場所(例えば、光素子を設けている場所)への流入を防ぐことができる。即ち、封止剤の流入を阻止したい場所の上流側(流動する封止剤の進行方向上流側)に溝を設けることにより、その場所への封止剤の流入を防ぐことができる。
【0016】
したがって、フェルールやフェルール受け等の部材が小型化しても、封止剤の供給量の微細な調整なしに、フェルールとフェルール受けの間に封止剤を好適に介在させることができる。
【0017】
請求項2の発明は、電気信号を光信号に変換して光ファイバに光を射出する発光部の素子又は/および、光ファイバから受光した光を電気信号に変換する受光部の素子を備えた回路基板を有する光電変換装置であって、光ファイバを支持するフェルールと、前記フェルールを前記回路基板上に支持するフェルール受けとを備えており、前記フェルールと前記フェルール受けの間に配置時に流動可能な封止剤が介在しており、前記フェルール受けは流動する封止剤の流れを止める流動阻止手段を有しており、前記流動阻止手段は、流動する封止剤の進行を阻止する壁であることを特徴とする光電変換装置である。
【0018】
本発明の光電変換装置では、流動する封止剤の進行を阻止する壁がフェルール受けに設けられているので、フェルール受けの壁を設けた位置より下流側(流動する封止剤の進行方向下流側)に封止剤が流れない。したがって、フェルールとフェルール受けの間を封止剤で密封すると共に、封止剤が光素子に付着することを防ぐことができる。即ち、封止剤の流入を阻止したい場所の上流側(流動する封止剤の進行方向上流側)に壁を設けることにより、その場所への封止剤の流入を防ぐことができる。
【0019】
したがって、フェルールやフェルール受け等の部材が小型化しても、封止剤の流入量の微細な調整なしに、フェルールとフェルール受けの間に好適に封止剤を介在させることができる。また、フェルール受けの壁は、フェルール受けと一体に形成してもよいが、パッキンやOリング等のシール部材で構成してもよい。
【0020】
請求項3の発明は、前記溝よりも、流動する封止剤の進行方向下流側に壁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置である。
【0021】
本発明の光電変換装置では、溝の下流側(流動する封止剤の進行方向下流側)に壁を配することにより、溝のみを配する場合に比べ、封止剤の規定外の場所への流入をより確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フェルールとフェルール受けの間に設けた封止剤の光素子側への必要以上の流入を防ぐことで、光素子を小さな空間に密閉可能であり、集積回路と光素子を接続する配線が短く、空間の外側に配された他の部材のレイアウトの自由度が高く、素子が劣化しにくい光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態の光電変換装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光電変換装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の光電変換装置への封止剤の流入に用いる流入補助部材の斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の光電変換装置に流入補助部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図4の光電変換装置に封止剤を充填した状態の光電変換装置の縦断図である。
【図6】図2のフェルール受けから溝を廃し、代わりに壁を設けたフェルール受けの斜視図である。
【図7】図5のフェルール受けの溝を廃し、代わりに壁を設け、封止剤を充填した状態の光電変換装置の縦断図である。
【図8】図5のフェルール受けの溝をフェルールの外周側へ移動し、フェルール6の上面を突出させて壁とした状態の光電変換装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施形態の光電変換装置1は、回路基板4と、光ファイバ2を支持するフェルール5と、フェルール受け6とを備えている。回路基板4上にはフェルール受け6が配され、フェルール受け6の上側にフェルール5が設置される。なお、フェルール5にはピン孔5bが設けられており、フェルール受け6の、ピン孔5bに対応する位置にはピン穴6bが設けられている。これらピン孔5b、ピン穴6bにピン9を挿通し、フェルール5とフェルール受け6の位置合わせをする。さらに、フェルール受け6とフェルール5の間の隙間には封止剤11が充填されている。なお、封止剤11の充填には後述する流入補助部材13(図4)を用いることが望ましい。
【0025】
また、回路基板4には光モジュール3が設けられており、フェルール受け6には貫通孔6aが設けてある。さらに、図2に示すように、貫通孔6aの中に光モジュール3がくるようにフェルール受け6は回路基板4に設けられる。そして、フェルール受け6の上面6dには、貫通孔6aの開口を取り囲むように溝6fが設けられている。
【0026】
また、フェルール5に支持された光ファイバ2の先端(下端)は、光モジュール3と対向している。そして、光モジュール3(受光部の素子又は/及び発光部の素子)によって電気信号と光信号を変換し、光ファイバ2の端面と光モジュール3との間で、情報を伝達する光信号の通信を行う。以下詳細に説明する。
【0027】
光ファイバ2は従来周知の光ファイバであり、ガラスやプラスチック等の細い繊維の部材で作成された、光信号を通す通信ケーブルである。
【0028】
光モジュール3は、光信号と電気信号とを変換する部材であり、光素子を内蔵する。光モジュール3は、内蔵される光素子により発光モジュールと受光モジュールとに分けられる。発光モジュールは、レーザダイオードや発光ダイオード等の発光素子を備えた光モジュールであり、受光モジュールは、フォトダイオード等の受光素子を備えた光モジュールである。なお、本実施形態において、光モジュール3は発光モジュールとするが、光モジュール3を受光モジュールとした場合においても、本発明の各実施形態の光電変換装置は同様の効果を得ることができる。
【0029】
図2に示される様に、フェルール5は光ファイバ2を保持する部材であり、略直方体状の部分と、略直方体状の部分の上面から、該上面と垂直方向に突出した突出部5aを有している。フェルール5の中心部分には、突出部5aの突出方向の端部から直方体部分の底面5cまで貫通する孔5dが設けられている。すなわち、孔5dはフェルール5の長手方向に延びており、光ファイバ2を丁度挿通可能な内径を有する。したがって、孔5dの内径は、光ファイバ2の外径に略等しい。
【0030】
さらに、フェルール5の略直方体状の部分の角部付近にはピン孔5bが設けられている。ピン孔5bは対角の角部に夫々設けられており、孔5dと平行に延びている。なお、ピン孔5bにはピン9が丁度挿通される。即ち、ピン孔5bの内径は、挿通するピン9の外径に略等しい。
【0031】
図2に示される様に、フェルール受け6の中央部分には貫通孔6aが設けられている。貫通孔6aの開口は四角形であり、カタカナの「ロ」の様な形状となっている。そして、貫通孔6aは上面6dから下面6eに至っている。
【0032】
さらに、上面6dの角部付近にはピン穴6bと溝6fが設けられている。ピン穴6bは対角に2つ設けられており、貫通孔6aと平行に延びる有底穴である。また、溝6fは貫通孔6aの周囲を囲むように設けられた溝であり、平面視すると漢字の「回」の様な形状となっている。
【0033】
封止剤11は、フェルール5とフェルール6の隙間に介在しており、隙間の密閉や、フェルール5とフェルール6の固着等に用いられる樹脂である。なお、封止剤11に用いられる樹脂の種類は問わないが、使用される樹脂してはウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂が好適に使用される。
【0034】
流入補助部材13は、図3に示される様に、略直方体の部材に上面13cから下面13dに向かって、開口の形状が四角形の有底穴である穴13aが設けられている。そして、穴13aの底部分に、開口の形状が四角形の貫通孔である底孔13bが設けられている。つまり、流入補助部材13は升状の部材の底に、開口の形状が四角形の貫通孔(底孔13b)を設けた様な形状である。なお、底孔13bの開口部分の面積は穴13aの開口部分の面積より小さくなっている。
【0035】
また、底孔13bは、フェルール受け6を略丁度挿通可能であり、フェルール5の略直方体部分を挿通可能である。本実施形態では、流入補助部材13は一体構造の形態を例示しているが、例えば2つに分割して、各片をフェルール受け6の左右から設けてフェルール受け6を挟んだ状態で一体化させてもよい。流入補助部材13を複数片に分割可能にすると、後述する封止剤11の充填後の撤去が容易である。
【0036】
次に本実施形態の光電変換装置1における、各部材間の組み立て構成と、封止剤11を充填する際の封止剤11(樹脂)の動きについて説明する。
【0037】
図2に示すように、フェルール受け6は回路基板4の上に設けられている。そして、光モジュール3は、フェルール受け6の貫通孔6aの内部に配置されている。即ち、光モジュール3は回路基板4上に配されており、貫通孔6aの内壁6cに囲まれている。
【0038】
図2に示すように、フェルール5はフェルール受け6の上側に配置される。即ち、フェルール受け6は回路基板4とフェルール5に挟まれる様に設けられており、フェルール5の底面5cとフェルール受け6の上面6dが対向している。底面5cと上面6dは、光ファイバ2と光モジュール3が精度よく対向するように、精度よく平面仕上げされている。しかし、フェルール5とフェルール6の間には加工誤差に起因する微細な隙間が生じている。
【0039】
さらに、フェルール5とフェルール受け6は、ピン孔5bとピン穴6bが同芯状に重なりあうように配置されている。即ち、ピン孔5bの中心軸とピン穴6bの中心軸が一致している。
【0040】
ピン9はピン孔5bを挿通し、さらにピン穴6bに挿入されている。具体的に説明すると、ピン9はフェルール5を貫通しており、ピン9の下端がピン穴6bの底に当接し、フェルール受け6の内部で止まっている。
【0041】
さらに、図4に示されるように、回路基板4上に流入補助部材13がフェルール5の下部や、フェルール5の下側に配されているフェルール受け6(図2)を囲むように設けられている。即ち、流入補助部材13の底孔13bにフェルール受け6が嵌まっている。なお、フェルール受け6にフェルール5が配置されると、光モジュール3と光ファイバ2が通信可能に対向する。
【0042】
そして、図4の状態で流入補助部材13の穴13aに封止剤11を流し込むと、図5に示されるように、フェルール受け6の外周側(上流側)から中心部の貫通孔6a(下流側)に向かう方向に、フェルール5とフェルール受け6の隙間に封止剤11が流れていく。そして、封止剤11はフェルール受け6の溝6fに流入する。そのことにより、封止剤11の貫通孔6a側への流動が鈍化する。そして、封止剤11が硬化し、流入補助部材13と光電変換装置1の外側にある余分な封止剤11が排されると、図1に示されるような状態となる。
【0043】
即ち、溝6fが設けられていないと仮定した場合、フェルール受け6の中心部の貫通孔6aへ向かって流れていく封止剤11が、溝6f内に入り込むことによって、溝6fより貫通孔6a側へ流れない。
【0044】
ここで、フェルール5の底面5cとフェルール受け6の内壁6c、回路基板4、封止剤11により、外気と遮断される内部空間10が形成される。内部空間10は密閉された空間であるので、湿気やガス、光等の光接続に影響を及ぼす要因が内部空間10に侵入することを防ぐことができる。
【0045】
なお、本発明の光電変換装置1は、上記したように溝6fにより、貫通孔6aへの封止剤11の流入を防ぐので、封止剤11の流入量の微細な調整が不要である。そのため、内部空間10の小型化が容易である。
【0046】
なお、以下では第2の実施形態を説明するが、特に説明がない限り、第1の実施形態における光電変換装置1と同様の構造については、同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
本発明の第2の実施形態における光電変換装置30は、図6に示されるように、フェルール受け6の上面6dに溝6fが設けられておらず、シール部材12(流動阻止手段,壁)が配されている。
【0048】
具体的に説明すると、シール部材12は、略直方体の部材の中心部分に開口の形状が四角形である貫通孔12aが設けられており、平面視するとカタカナの「ロ」の様な形状となっている。また、貫通孔12aの開口は、フェルール受け6の貫通孔6aの開口と略同一である。すなわち、フェルール受け6の貫通孔6aの周囲には、シール部材12の側面である壁12bが配置されている。そして、シール部材12は天然ゴムや合成ゴムの様な弾性を有する素材や、変形しない素材で形成されているものとする。
【0049】
また、フェルール受け6の上側にフェルール5を配した際に、フェルール5の底面5cとシール部材12の上面(図6における上側の面)が密着し、フェルール受け6の上面6dとシール部材12の下面(図6における下側の面)が密着する。即ち、シール部材12は、フェルール5とフェルール受け6に挟まれるように配置され、フェルール5とフェルール受け6の間の隙間の一部を埋めている。
【0050】
そして、第1の実施形態と同様に図4のように各部材を配した状態で、流入補助部材13の穴13aに封止剤11を流し込む。すると、図7に示されるように、フェルール受け6の外周側から中心部の貫通孔6aに向かう方向に、フェルール5とフェルール受け6の隙間に封止剤11が流れていく。そして、封止剤11はシール部材12に接触し、シール部材12の壁12b(貫通孔12aの内壁に対向する位置にある面)より貫通孔6a側への封止剤11の流動は阻止され、封止剤11がフェルール受け6の貫通孔6aに流れ込むことを防ぐことができる。
【0051】
ここで、フェルール5の底面5cとフェルール受け6の内壁6c、回路基板4、シール部材12により、外気と遮断される内部空間10が形成される。内部空間10は密閉された空間であるので、湿気やガス、光等の光接続に影響を及ぼす要因が内部空間10に侵入することを防ぐことができる。
【0052】
なお、本発明の光電変換装置30は、上記したようにシール部材12により、貫通孔6aへの封止剤11の流入を防ぐので、封止剤11の流入量の微細な調整が必要ない。そのため、内部空間10の小型化が容易である。
【0053】
上記した各実施形態において、流動阻止手段を一つずつ設けたが、設置する流動阻止手段の数はこれに限るものではない。流動阻止手段を複数設けてもよい。
【0054】
また、第2の実施形態において、流動阻止手段の壁にシール部材12を用いたが、本発明の流動阻止手段である壁はこれに限るものではない。例えば、フェルール受け6の一部を突出させて流動阻止手段をしてもよい。
【0055】
したがって、例えば、図8に示されるように溝6fを設け、溝6fの下流側(流動する封止剤11の進行方向下流側)にフェルール受け6の一部をフェルール受け5に向かって突出させ、突出した部分を流動阻止手段の壁としてもよい。
【0056】
また、流動阻止手段の壁とフェルール5が密着することが好適であるが、必ずしも密着する必要はない。図8の様にフェルール5との間に隙間を設けてもよい。即ち、壁の下流側への封止剤の流入を阻止できればよい。
【0057】
本発明のシール部材12の材料に天然ゴムを使用したが、シール部材12に用いられる材料はこれに限るものではない。シリコーンゴムやフッ素ゴムの様な合成ゴム等の樹脂を含む有機材料や、鉄合金等の無機材料等、任意の材料を使用してよい。即ち、光電変換装置に配した際に、封止剤11の流れを止めることができればよい。
【0058】
また、本発明において、封止剤11の流入を容易にするために、流入補助部材13を用いたが、流入補助部材13の形状はこれに限るものではない。例えばチューブ容器に封止剤が入った所謂コーキングガンを用いてもよい。即ち、フェルール5とフェルール受け6の隙間に封止剤を充填できればよい。
【0059】
さらにまた、本発明において、ピン9によってフェルール受け6に対してフェルール5を固定したが、固定の方法はこれに限るものではない。例えば、ピン9の代わりに封止剤11に接着材を用いることにより、フェルール5とフェルール受け6を固着してもよい。
【0060】
なお、本発明によれば、封止剤に接着材を使用してフェルール5とフェルール受け6を固着する場合、また、封止剤11(接着剤)がフェルール5へ必要以上に接触することを防ぐことができる。
【0061】
具体的に説明すると、例えば、封止剤11に接着材等を使用する場合において、溝6fに流入した封止剤11はフェルール5と接触しないため、溝6fを設けない場合に比べて、封止剤11がフェルール5と接触する面積が減少する。換言すると、溝6fに入った接着材の大半はフェルール5とフェルール受け6の接着に寄与しない。そのため、フェルール5とフェルール受け6を強力に固着しすぎることを防ぐことができる。
【0062】
したがって、メンテナンス等によりフェルール5とフェルール受け6を分離する場合等に作業が容易になるという利点がある。
【符号の説明】
【0063】
1,30 光電変換装置
2 光ファイバ
3 光モジュール(発光部の素子又は/および受光部の素子)
4 回路基板
5 フェルール
6 フェルール受け
6f 溝(流動阻止手段)
11 封止剤
12 シール部材(流動阻止手段,壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換して光ファイバに光を射出する発光部の素子又は/および、光ファイバから受光した光を電気信号に変換する受光部の素子を備えた回路基板を有する光電変換装置であって、光ファイバを支持するフェルールと、前記フェルールを前記回路基板上に支持するフェルール受けとを備えており、前記フェルールと前記フェルール受けの間に配置時に流動可能な封止剤が介在しており、前記フェルール受けは流動する封止剤の流れを止める流動阻止手段を有しており、前記流動阻止手段は、封止剤を流入させる溝であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
電気信号を光信号に変換して光ファイバに光を射出する発光部の素子又は/および、光ファイバから受光した光を電気信号に変換する受光部の素子を備えた回路基板を有する光電変換装置であって、光ファイバを支持するフェルールと、前記フェルールを前記回路基板上に支持するフェルール受けとを備えており、前記フェルールと前記フェルール受けの間に配置時に流動可能な封止剤が介在しており、前記フェルール受けは流動する封止剤の流れを止める流動阻止手段を有しており、前記流動阻止手段は、流動する封止剤の進行を阻止する壁であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記溝よりも、流動する封止剤の進行方向下流側に壁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−271444(P2010−271444A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121683(P2009−121683)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】