光音響画像生成装置及び音響波ユニット
【課題】レーザ光源ユニットにおいて、所望の波長系列でパルスレーザ光を出射する。
【解決手段】レーザロッド51を挟んで対向する一対のミラー53、54を含む光共振器内に、Qスイッチ55と複屈折フィルタ56とが挿入される。複屈折フィルタ56は、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる。トリガ制御回路30は、出射すべきパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で複屈折フィルタ56を回転させる。また、トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射した後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55をオンにしてパルスレーザ光を出射させる。
【解決手段】レーザロッド51を挟んで対向する一対のミラー53、54を含む光共振器内に、Qスイッチ55と複屈折フィルタ56とが挿入される。複屈折フィルタ56は、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる。トリガ制御回路30は、出射すべきパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で複屈折フィルタ56を回転させる。また、トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射した後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55をオンにしてパルスレーザ光を出射させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像生成装置及び音響波ユニットに関し、更に詳しくは、複数波長のレーザ光を被検体に照射したときに各波長に対して検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成装置及び音響波ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響画像化装置が知られている。この光音響画像化装置においては、例えばパルスレーザ光等のパルス光が生体に照射される。このパルス光の照射を受けた生体内部では、パルス光のエネルギーを吸収した生体組織が熱によって体積膨張し、音響波が発生する。この音響波を超音波プローブなどで検出し、検出された信号(光音響信号)に基づいて生体内部を可視像化することが可能となっている。光音響画像化方法では、特定の光吸収体において音響波が発生するため、生体における特定の組織、例えば血管等を画像化することができる。
【0003】
ところで、生体組織の多くは光吸収特性が光の波長に応じて変わり、また一般に、その光吸収特性も組織ごとに特有のものとなっている。例えば図12に、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)と、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の光波長ごとの分子吸収係数を示す。動脈の光吸収特性は、酸素化ヘモグロビンのそれに対応し、静脈の光吸収特性は、脱酸素化ヘモグロビンのそれに対応する。この波長に応じた光吸収率の違いを利用して、互いに異なる2種の波長の光を血管部分に照射し、動脈と静脈とを区別して画像化する光音響画像化方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ここで、可変波長レーザに関して、特許文献3には、波長選択素子としてのエタロン又は複屈折フィルタを光共振器内に配置し、その回転角度を調整することで、所望の波長のレーザ光を得ることが記載されている。また、特許文献4には、波長選択手段としてのエタロンを光共振器内に配置し、エタロンを一定の速度でスキャンすることが記載されている。特許文献4には、エタロンの透過波長がレーザ光の縦モード発振と一致するときにのみレーザ発振し、エタロンのスキャン速度を増加した場合、レーザ光の発振はパルス的になるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−21380号公報
【特許文献2】特開2010−046215号公報
【特許文献3】特開2009−231483号公報
【特許文献4】特開2000−105464号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A High-Speed Photoacoustic Tomography System based on a Commercial Ultrasound and a Custom Transducer Array, Xueding Wang, Jonathan Cannata,Derek DeBusschere, Changhong Hu, J. Brian Fowlkes, and Paul Carson, Proc. SPIE Vol. 7564, 756424 (Feb.23, 2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3において、複数波長のレーザ光を切り替えて出射するためには、レーザ出射のたびに、エタロンや複屈折フィルタの回転角度の調整を行う必要がある。光音響イメージングにおいて、例えば第1の波長と第2の波長のパルスレーザ光を被検体に照射する場合、波長選択素子を調整して第1の波長のレーザ光を被検体に照射し、第1の波長のレーザ光の光音響信号の検出を全て終えてから、第2の波長のレーザ光が出射されるように波長選択素子を調整し、第2の波長のレーザ光を被検体に照射することが考えられる。光音響イメージングでは、人などの動きがあるものを対象とすることが多く、第1の波長から第2の波長へ切り替えている間に対象物が動くと、第1の波長のレーザ光を照射したときの光音響信号と第2の波長のレーザ光を照射したときの光音響信号とに不整合が生じることがある。
【0008】
光音響イメージングでは、上記の不整合を防ぐという観点から、例えば第1の波長と第2の波長とを、パルスごとに切り替えてレーザ光を照射するとよいと考えられる。つまり、例えば第1の波長と第2の波長とをこの順で含む所定の波長系列で、繰り返しレーザ光を照射すればとよいと考えられる。パルスごとに照射するレーザ光の波長を変えるレーザ装置として特許文献4に記載されたものがあるが、特許文献4では、エタロンの透過波長がレーザ光の縦モード発振と一致するときにのみレーザ発振するため、ある特定の波長系列のレーザ光を得ることしかできず、任意の波長系列のレーザ光を得ることはできない。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、波長可変のレーザ光源から所望の波長系列でパルスレーザ光を出射させることができる音響波ユニット、及びそのような音響波ユニットを含む光音響画像生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を順次に出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内に挿入されたQスイッチと、光共振器の内部に挿入され、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタとを有するレーザ光源ユニットと、光音響画像の生成を行う音響波ユニットであって、所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じる光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、複屈折フィルタを波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源からレーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを有する音響波ユニットとを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【0011】
本発明では、所定の回転速度は、複屈折フィルタにおける回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数とに基づいて決定されるものとすることができる。
【0012】
複屈折フィルタが1回転の間に繰り返す自由スペクトルレンジの回数をk[回/回転]とし、波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]とする場合、所定の回転速度が、v=m/(k×n)[回転/秒]で計算される値に決定されるものとしてもよい。
【0013】
本発明では、トリガ制御回路は、複屈折フィルタを、所定の方向に所定の回転速度で連続的に回転させる構成を採用することができる。
【0014】
トリガ制御回路は、複屈折フィルタの回転変位位置を示す複屈折フィルタ状態情報に基づいて、励起光を照射させるタイミング及びQスイッチをオンにするタイミングを決定してもよい。
【0015】
トリガ制御回路は、複屈折フィルタ状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した複屈折フィルタの位置からレーザロッドの励起に要する時間の間に複屈折フィルタが回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になると、レーザロッドに励起光を照射させるものとすることができる。
【0016】
トリガ制御回路は、所定時間の間における複屈折フィルタ状態情報の変化の量が所定の回転速度に応じた変化量となるように、複屈折フィルタを回転させることとしてもよい。
【0017】
上記に代えて、レーザ光源ユニットは、複屈折フィルタを回転させる駆動手段と、複屈折フィルタの回転変位を検出する回転変位検出手段と、所定時間の間に回転変位検出手段が検出した回転変位の量が所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段を制御する回転制御部とを更に有する構成を採用してもよい。
【0018】
音響波ユニットは、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備える構成を採用でき、光音響画像構築手段が、光音響画像の各画素の階調値を強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を抽出された大小関係に基づいて決定することしてもよい。
【0019】
所定の波長系列が第1の波長と第2の波長を含み、音響波ユニットは、第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備える構成を採用することができ、強度比抽出手段が再構成画像から強度情報としての位相情報を抽出し、強度情報抽出手段が再構成画像から強度情報を抽出することとしてもよい。
【0020】
検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、音響波ユニットは、反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える構成としてもよい。
【0021】
本発明は、また、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度情報抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器内に挿入され、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタを波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源からレーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを備えたことを特徴とする音響波ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光音響画像生成装置及び音響波ユニットは、光共振器内に挿入され、回転変位に伴って発振波長を変化させる複屈折フィルタを、レーザ光源ユニットから出射すべきパルスレーザ光の波長系列の数に応じた回転速度で回転させ、複屈折フィルタの回転変位位置が出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにする。複屈折フィルタの回転速度を速くするほど波長の切り替えを高速化することができ、逆に回転速度を遅くするほど選択可能な発振波長の数を増やすことができる。本発明では、波長系列に含まれる波長の数に応じて複屈折フィルタの回転速度を制御しており、そのような構成とすることで、音響波ユニットから、レーザ光源ユニットから出射するパルスレーザ光の波長を、任意の波長系列に制御することができる。また、本発明では、音響波ユニットがパルスレーザ光の出射タイミングを決めており、光音響信号のサンプリング開始にあたり、レーザ光源ユニットからレーザ出射を示す同期信号のような信号を取得する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】複屈折フィルタ、駆動手段及び回転変位検出手段の構成例を示す斜視図。
【図4】複屈折フィルタの回転変位に対する波長透過特性の一例を示すグラフ。
【図5】複屈折フィルタを1秒間に1回転の速度で回転したときの発振波長特性を示すグラフ。
【図6】各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャート。
【図7】第1実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すフローチャート。
【図8】波長系列が6つの波長を含む場合の各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャート。
【図9】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図10】第2実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すブロック図。
【図11】変形例のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図12】酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光波長ごとの分子吸収係数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例では、音響波として超音波を用いるが、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択することにより、可聴周波数の音響波であっても良い。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置10は、超音波探触子(プローブ)11と、超音波ユニット12と、レーザ光源ユニット13とを備える。レーザ光源ユニット13は、被検体に照射すべきパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を出射する。以下の説明においては、主に、波長系列が第1の波長と第2の波長とをこの順で含み、レーザ光源ユニット13が、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とをこの順で出射するものとして説明する。
【0026】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。先に説明した図12を参照すると、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0027】
レーザ光源ユニット13から出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。パルスレーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ11以外の場所からパルスレーザ光の照射を行ってもよい。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで超音波(音響波)が生じる。プローブ11は、超音波検出器を含む。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波検出器素子(超音波振動子)を有し、その一次元配列された超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響信号)を検出する。
【0028】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、複素数化手段24、光音響画像再構成手段25、位相情報抽出手段26、強度情報抽出手段27、検波・対数変換手段28、光音響画像構築手段29、トリガ制御回路30、及び、制御手段31を有する。受信回路21は、プローブ11が検出した光音響信号を受信する。AD変換手段22は検出手段であり、受信回路21が受信した光音響信号をサンプリングし、デジタルデータである光音響データを生成する。AD変換手段22は、ADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で光音響信号のサンプリングを行う。
【0029】
AD変換手段22は、光音響データを受信メモリ23に格納する。AD変換手段22は、レーザ光源ユニット13から出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響データを受信メモリ23に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ23に格納する。
【0030】
複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、複素数化手段24が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0031】
光音響画像再構成手段25は、複素数化手段24から複素数データを入力する。光音響画像再構成手段25は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段25は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを位相情報抽出手段26と強度情報抽出手段27とに入力する。
【0032】
位相情報抽出手段26は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、位相情報抽出手段26は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を生成する。位相情報抽出手段26は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0033】
強度情報抽出手段27は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段27は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段27は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段28は、強度情報抽出手段27で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0034】
光音響画像構築手段29は、位相情報抽出手段26から位相情報を入力し、検波・対数変換手段28から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段29は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段29は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段29は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段29は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0035】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。
【0036】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が青色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。画像表示手段14は、光音響画像構築手段29が生成した光音響画像を表示画面上に表示する。
【0037】
次いで、レーザ光源ユニット13の構成を詳細に説明する。図2は、レーザ光源ユニット13の構成を示す。レーザ光源ユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、複屈折フィルタ(BRF:birefringent filter)56、駆動手段57、及び回転変位検出手段58を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源を、励起光源として用いてもよい。例えば、レーザーロッド51がチタンサファイアの場合は励起光源としては、Nd-YAG(SHG)が用いられる。
【0038】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ミラー54が出力側であるものとする。光共振器内には、Qスイッチ55及び複屈折フィルタ56が挿入される。Qスイッチ55により、光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。複屈折フィルタ56は、回転変位に伴って透過波長を変化させ、光共振器の発振波長を変化させる。駆動手段57は、複屈折フィルタ56を回転させる。回転変位検出手段58は、複屈折フィルタ56の回転変位を検出する。回転変位検出手段58は、複屈折フィルタ56の回転変位位置を示すBRF状態情報を超音波ユニット12に出力する。
【0039】
図1に戻り、制御手段31は、超音波ユニット12内の各部の制御を行う。トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を、レーザ光源ユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させる。複屈折フィルタの回転速度は、例えば複屈折フィルタ56における回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数(パルスレーザ光間の時間間隔)とに基づいて決定できる。
【0040】
トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転を制御するためのBRF制御信号を出力する。レーザ光源ユニット13の駆動手段57は、BRF制御信号に応じて複屈折フィルタ56を回転させる。トリガ制御回路30は、BRF制御信号を通じて、例えば所定時間の間におけるBRF状態情報の変化の量が所定の回転速度に応じた変化量となるように、複屈折フィルタを回転させる。
【0041】
上記に加えて、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に、フラッシュランプ52の発光を制御するためのフラッシュランプトリガ信号を出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。トリガ制御回路30は、BRF状態信号に基づいて、フラッシュランプトリガ信号を出力する。例えばトリガ制御回路30は、BRF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した複屈折フィルタ56の位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に複屈折フィルタ51が回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプトリガ信号を出力し、レーザロッド51に対して励起光を照射させる。
【0042】
トリガ制御回路30は、励起光の照射後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。言い換えると、トリガ制御回路30は、BRF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長を透過する複屈折フィルタ56の位置を示す情報となると、Qスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで(Qスイッチがオンすることで)、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。
【0043】
トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号のタイミング、すなわちパルスレーザ光の出射タイミングに合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号(ADトリガ信号)を出力する。AD変換手段22は、サンプリングトリガ信号にと基づいて光音響信号のサンプリングを開始する。
【0044】
図3は、複屈折フィルタ56、駆動手段57、及び回転変位検出手段58の構成例を示す。この例では、駆動手段57はサーボモータであり、回転変位検出手段58はロータリーエンコーダーである。複屈折フィルタ56は、サーボモータの出力軸の回転に従って回転する。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとで複屈折フィルタ56の回転変位を検出し、BRF状態情報を生成する。トリガ制御回路30は、例えばBRF状態情報をモニタし、所定時間の間にロータリーエンコーダーで検出されるサーボモータの回転軸の回転変位量が所定の量に保たれるように、BRF制御信号を通じてサーボモータに供給する電圧などを制御することで、複屈折フィルタ56を所定の速度で回転させる。
【0045】
図4は、複屈折フィルタ56の回転変位に対する波長透過特性(発振波長特性)の一例を示す。複屈折フィルタ56は、例えば700nmから840nmまで間で光共振器の発振波長を変化させる。複屈折フィルタ56は、例えば回転変位位置0°から90°までの間に(1/4回転で)自由スペクトルレンジ(FSR:Free Spectral Range)を3回繰り返し、1回転につきFSRを12回繰り返す。
【0046】
図5は、上記の複屈折フィルタ56を1秒間に1回転の速度で回転したときの発振波長特性を示す。図4に示す波長透過特性を持つ複屈折フィルタ56を1秒あたり1回転の回転速度で回転させると、複屈折フィルタ56は、1/4秒の間にFSRを3回繰り返し、1秒間に12回(12Hz)でFSRを繰り返す。複屈折フィルタ56の回転速度を速めるほど、1秒間におけるFSRの繰り返し回数は多くなり、回転速度を遅くすると、1秒間におけるFSRの繰り返し回数は少なくなる。
【0047】
図6は、各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャートである。(a)は、時間変化に対する光共振器の発振波長特性(複屈折フィルタ56の透過波長特性)を示す。(b)はフラッシュランプトリガを示し、(c)はQスイッチトリガを示す。(d)は、フラッシュランプの発光タイミング及びパルスレーザ光の出射タイミングを示す。なお、図5では、説明簡略化のために、フラッシュランプ52及びQスイッチ55がトリガに対して瞬時に応答するものとしているが、実際には遅延時間が存在する。だだし、その遅延は数μ秒から100μ秒程度であるので、遅延は無視できる。
【0048】
トリガ制御回路30は、まず、レーザ光源ユニット13から波長750nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t1で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置となる時刻t2でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から波長750nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0049】
次いで、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から波長800nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t3で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長800nmに対応した位置となる時刻t4でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から800nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0050】
ここで、フラッシュランプトリガ信号が出力される時刻t1は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置となる時刻t2からレーザロッド51の励起に要する時間の分だけ前の時刻である。また、フラッシュランプトリガ信号が出力される時刻t3は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長800nmに対応した位置となる時刻t4からレーザロッド51の励起に要する時間の分だけ前の時刻である。時刻t1及びt3に対応した複屈折フィルタ56の回転変位位置は、複屈折フィルタ56の波長750nm及び800nmに対応した回転変位位置と、複屈折フィルタ56の回転速度と、レーザロッド51の励起に要する時間とから求めることができる。
【0051】
以降同様に、トリガ制御回路30は、時刻t5、t7、t9、t11で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力する。また、時刻t6、t8、t10、t12で、Qスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力し、各時刻における複屈折フィルタ56の透過波長に応じた波長のパルスレーザ光を出射させる。時刻t6及びt10における複屈折フィルタ56の透過波長は750nmであり、時刻t8及びt12における複屈折フィルタの透過波長は800nmであるので、レーザ光源ユニット13は、750nmと800nmのパルスレーザ光を順次にこの順で繰り返し出射する。
【0052】
図6の例では、レーザ光源ユニット13は、1/12秒の間に、波長750nmのパルスレーザ光と波長800nmのパルスレーザ光との2つを交互に出射する。レーザ光源ユニット13は、2つの波長を切り替えつつパルスレーザ光を1秒間に24回出射する(24Hz動作)。言い換えると、1セット2波長のパルスレーザ光を、1秒間に12セット出射する。
【0053】
図7は、光音響画像生成装置10の動作手順を示す。ここでは、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を回転させる旨のBRF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップA1)。例えば複屈折フィルタ56が1回転の間にFSRを12回繰り返すものであり、1/12秒の間に波長750nmのパルスレーザ光と波長800nmのパルスレーザ光とを順次に出射させる場合(24Hz動作の場合)、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56を1秒間で1回転させる旨のBRF制御信号を出力する。
【0054】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する(ステップA2)。レーザ光源ユニット13のフラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、レーザロッド51の励起が開始される(ステップA3)。トリガ制御回路30は、BRF状態情報に基づいて、例えば複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置になるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ52を点灯させる。
【0055】
トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52の点灯後、BRF状態情報に基づいて、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)に対応した位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにする(ステップA4)。Qスイッチ55がオンになることで、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。
【0056】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。プローブ11で検出された光音響信号は、受信回路21にて受信される。
【0057】
トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号を出力するタイミングに合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21で受信された光音響信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングする(ステップA5)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0058】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり波長系列を構成する全ての波長のパルスレーザ光を出射させたか否かを判断する(ステップA6)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップA2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、ステップA3でフラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、トリガ制御回路30は、ステップA4で、複屈折フィルタ56が波長系列を構成する2つ目の波長(800nm)に対応した回転変位位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにし、パルスレーザ光を出射させる。
【0059】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせてAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップA5で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、波長系列を構成する各波長に対してステップA1からA5を実行し、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。
【0060】
制御手段31は、ステップA6で残りの波長がないと判断すると、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップA7)。選択すべき部分領域が残っておりときは、ステップA2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップA2からA6を実行し、各部分領域に波長系列を構成する各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射し、各部分領域に対応した第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射及び光音響信号の検出を行うと、1フレームの光音響画像を生成するために必要な光音響データが揃う。
【0061】
制御手段31は、ステップA7で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像の生成に処理を移す。複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップA8)。光音響画像再構成手段25は、ステップA8で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップA9)。
【0062】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データ(再構成画像)から位相情報を抽出する(ステップA10)。位相情報抽出手段26は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として抽出する(ただし、X=0の場合はθ=90°)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップA11)。強度情報抽出手段27は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を強度情報として抽出する。
【0063】
検波・対数変換手段28は、ステップA11で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップA10で抽出された位相情報と、ステップA11で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップA12)。光音響画像構築手段29は、例えば強度情報に基づいて光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定し、位相情報に基づいて各画素の色を決定することで、光音響画像を生成する。生成された光音響画像は、画像表示手段14に表示される。
【0064】
ここで、複屈折フィルタ56の回転速度は、出射すべくパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じて適宜決定すればよい。以下、波長系列が6つの波長(720nm、740nm、760nm、780nm、800nm、820nm)を含む場合について説明する。図8は、波長系列が6つの波長を含む場合の各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャートである。(a)は、時間変化に対する光共振器の発振波長特性(複屈折フィルタ56の透過波長特性)を示す。(b)はフラッシュランプトリガを示し、(c)はQスイッチトリガを示す。(d)は、フラッシュランプの発光タイミング及びパルスレーザ光の出射タイミングを示す。
【0065】
図4に示す、1回転でFSRを12回繰り返す複屈折フィルタ56を4秒で1回転させると、複屈折フィルタ56は1秒間に1/4回転し、1秒間にFSRを3回繰り返す(a)。トリガ制御回路30は、まず、レーザ光源ユニット13から波長720nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t21で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長720nmに対応した位置となる時刻t22で、Qスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から波長720nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0066】
次いで、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から波長740nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t23で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長740nmに対応した位置となる時刻t24でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から740nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0067】
以降同様に、トリガ制御回路30は、時刻t25、t27、t29、t31で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力する。また、時刻t26、t28、t30、t32で、Qスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力し、各時刻における複屈折フィルタ56の透過波長に応じた波長のパルスレーザ光を出射させる。時刻t26、t28、t30、及びt32おける複屈折フィルタ56の透過波長はそれぞれ760nm、780nm、800nm、及び820nmであり、レーザ光源ユニット13は、1/3秒間に、720nmから820nmまでの範囲で波長が20nmずつ長くなる6つのパルスレーザ光を出射する。
【0068】
図8の例では、レーザ光源ユニット13は、1/3秒の間に、波長720nmから820nmまでの6つの波長のパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、6つの波長を切り替えつつパルスレーザ光を1秒間に18回出射する(18Hz動作)。言い換えると、1セット6波長のパルスレーザ光を、1秒間に3セット出射する
【0069】
複屈折フィルタ56の回転速度は、1回のFSRで、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光が出射できるように設定されていることが好ましい。例えば、複屈折フィルタ56が1回転の間に繰り返すFSRの回数をk[回/回転]とし、波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]としたとき、複屈折フィルタ56の回転速度を、v=m/(k×n)[回転/秒]で決定した値とすることができる。この場合、1FSRあたりn個の波長を切り替えつつ、1秒間にm個のパルスレーザを出射できる(mHz動作)。
【0070】
本実施形態では、複屈折フィルタ56を所定の回転速度で回転させつつ、フラッシュランプ52を点灯してレーザロッド51を励起し、その励起後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55をオンにする。複屈折フィルタ56の回転速度を遅くするほど、例えば複屈折フィルタ56の1回分のFSRの中で選択可能な発振波長の数を増やすことができる。一方、波長系列に含まれる波長が2つであるような場合は、複屈折フィルタ56の回転速度を速めることで、2つの波長の切り替えを高速化することができる。このように、本実施形態では、複屈折フィルタ56の回転速度を制御することで、レーザ光源ユニット13から所望の波長系列でパルスレーザ光を出射することができる。本実施形態では、Qスイッチトリガ信号を超音波ユニット12から出力しており、レーザ光源ユニット13からレーザ発光タイミングを示す同期信号のような情報を取得する必要がない。
【0071】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射し、各波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、例えば光照射領域が3つの部分領域に分かれているときには、第1の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、次いで、第2の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、その後、第3の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射する。本実施形態では、ある部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を連続的に照射した後に、次の部分領域に移っている。この場合、第1の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射した後に、第2の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射する場合に比して、同じ位置において第1の波長のパルスレーザ光を照射してから第2のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短くすることができる。第1の波長のパルスレーザ光が照射されてから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短縮することで、第1の光音響データと第2の光音響データとの不整合を抑制することができる。
【0073】
引き続き、本発明の第2実施形態を説明する。図9は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置10aは、超音波ユニット12aが、図1に示す第1実施形態の光音響画像生成装置10における超音波ユニット12の構成に加えて、データ分離手段32、超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、超音波画像構築手段35、画像合成手段36、及び送信制御回路37を有する。本実施形態の光音響画像生成装置10は、光音響画像に加えて、超音波画像を生成する点で第1実施形態と相違する。その他の部分は、第1実施形態と同様でよい。
【0074】
本実施形態では、プローブ11は、光音響信号の検出に加えて、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び送信した超音波に対する被検体からの反射超音波の検出(受信)を行う。トリガ制御回路30は、超音波画像の生成時は、送信制御回路37に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路37は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、超音波の送信後、被検体からの反射超音波を検出する。
【0075】
プローブ11が検出した反射超音波は、受信回路21を介してAD変換手段22に入力される。トリガ制御回路30は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。AD変換手段22は、反射超音波のサンプリングデータ(反射超音波データ)を受信メモリ23に格納する。
【0076】
データ分離手段32は、受信メモリ23に格納された反射超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段32は、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡し、第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡す。第1及び第2の光音響データに基づく光音響画像の生成は第1実施形態と同様である。データ分離手段32は、分離した反射超音波のサンプリングデータを、超音波画像再構成手段33に入力する。
【0077】
超音波画像再構成手段33は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された反射超音波(そのサンプリングデータ)に基づいて、超音波画像の各ラインのデータを生成する。超音波画像再構成手段33は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。
【0078】
検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、及び超音波画像構築手段35は、反射超音波に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段を構成する。
【0079】
画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段36は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0080】
図10は、光音響画像生成装置10aの動作手順を示している。以下では、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を回転させる旨のBRF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップB1)。
【0081】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、フラッシュランプトリガ信号を出力する(ステップB2)。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、レーザロッド51の励起が開始される(ステップB3)。
【0082】
トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52の点灯後、BRF制御信号に基づいて、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)に対応した位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにする(ステップB4)。Qスイッチ55がオンになることで、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。
【0083】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21を介してプローブ11で検出された光音響信号を受信し、所定のサンプリング周期で光音響信号をサンプリングする(ステップB5)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0084】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり波長系列を構成する全ての波長のパルスレーザ光を出射させたか否かを判断する(ステップB6)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップB2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、ステップB3でフラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、トリガ制御回路30は、ステップB4で、複屈折フィルタ56が波長系列を構成する2つ目の波長(800nm)に対応した回転変位位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにし、パルスレーザ光を出射させる。
【0085】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせてAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップB5で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、波長系列を構成する各波長に対してステップB1からB5を実行し、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。ステップB1からB5は、図7のステップA1からA5と同様でよい。
【0086】
制御手段31は、ステップB6で残りの波長がないと判断すると、超音波の送受信に処理を移す。トリガ制御回路30は、送信制御回路37を介してプローブ11から被検体に超音波を送信させる(ステップB7)。ステップB7では、被検体のパルスレーザ光が照射された部分領域と同じ領域に対して超音波を送信する。プローブ11は、送信した超音波に対する反射超音波を検出する(ステップB8)。検出された反射超音波は、受信回路21を経てAD変換手段22でサンプリングされ、受信メモリ23に反射超音波データとして格納される。
【0087】
制御手段31は、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップB9)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップB2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップB2からB6を実行し、各部分領域に波長系列を構成する各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射して、第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。また、ステップB7及びB8を実行して、反射超音波データを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射と光音響信号の検出、及び超音波の送受信を行うと、1フレームの光音響画像及び超音波画像を生成するために必要なデータが揃う。
【0088】
制御手段31は、ステップB9で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像及び超音波画像の生成に処理を移す。データ分離手段32は、第1及び第2の光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段32は、分離した第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡す。複素数化手段24は、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップB10)。光音響画像再構成手段25は、ステップB10で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップB11)。
【0089】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データから位相情報を抽出する(ステップB12)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップB13)。検波・対数変換手段28は、ステップB13で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップB12で抽出された位相情報と、ステップB13で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップB14)。ステップB10からB14は、図7のステップA8からA12と同様でよい。
【0090】
超音波画像再構成手段33は、例えば遅延加算法により、超音波画像の各ラインのデータを生成する。検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する(ステップB15)。画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成し、合成した画像を画像表示手段14に表示する(ステップB16)。
【0091】
本実施形態では、光音響画像生成装置は、光音響画像に加えて超音波画像を生成する。超音波画像を参照することで、光音響画像では画像化することができない部分を観察することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0092】
なお、上記各実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。さらに、ここでは、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られるまた、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0093】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば位相情報抽出手段26は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段27は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0094】
上記各実施形態では、トリガ制御回路30がBRF状態情報をモニタし、BRF制御信号を通して複屈折フィルタ56の回転速度を所定の回転速度に制御するものとして説明したが、これには限定されない。図11は、レーザ光源ユニットの変形例を示している。このレーザ光源ユニット13aは、図2に示すレーザ光源ユニット13の構成に加えて回転制御部59を有する。回転制御部59は、所定時間の間に回転変位検出手段58が検出した回転変位の量が、複屈折フィルタ56の所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段57に供給する電圧などを制御する。トリガ制御回路30は、BRF制御信号を通じて、回転制御部59に、複屈折フィルタ56の回転速度を指示する。回転制御部59は、複屈折フィルタ56の回転速度が指示された回転速度となるように駆動手段57を駆動する。
【0095】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の超音波ユニット及び光音響画像生成装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10:光音響画像生成装置
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザ光源ユニット
14:画像表示手段
21:受信回路
22:AD変換手段
23:受信メモリ
24:複素数化手段
25:光音響画像再構成手段
26:位相情報抽出手段
27:強度情報抽出手段
28:検波・対数変換手段
29:光音響画像構築手段
30:トリガ制御回路
31:制御手段
32:データ分離手段
33:超音波画像再構成手段
34:検波・対数変換手段
35:超音波画像構築手段
36:画像合成手段
37:送信制御回路
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:Qスイッチ
56:複屈折フィルタ
57:駆動手段
58:回転変位検出手段
59:回転制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像生成装置及び音響波ユニットに関し、更に詳しくは、複数波長のレーザ光を被検体に照射したときに各波長に対して検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成装置及び音響波ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響画像化装置が知られている。この光音響画像化装置においては、例えばパルスレーザ光等のパルス光が生体に照射される。このパルス光の照射を受けた生体内部では、パルス光のエネルギーを吸収した生体組織が熱によって体積膨張し、音響波が発生する。この音響波を超音波プローブなどで検出し、検出された信号(光音響信号)に基づいて生体内部を可視像化することが可能となっている。光音響画像化方法では、特定の光吸収体において音響波が発生するため、生体における特定の組織、例えば血管等を画像化することができる。
【0003】
ところで、生体組織の多くは光吸収特性が光の波長に応じて変わり、また一般に、その光吸収特性も組織ごとに特有のものとなっている。例えば図12に、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)と、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の光波長ごとの分子吸収係数を示す。動脈の光吸収特性は、酸素化ヘモグロビンのそれに対応し、静脈の光吸収特性は、脱酸素化ヘモグロビンのそれに対応する。この波長に応じた光吸収率の違いを利用して、互いに異なる2種の波長の光を血管部分に照射し、動脈と静脈とを区別して画像化する光音響画像化方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ここで、可変波長レーザに関して、特許文献3には、波長選択素子としてのエタロン又は複屈折フィルタを光共振器内に配置し、その回転角度を調整することで、所望の波長のレーザ光を得ることが記載されている。また、特許文献4には、波長選択手段としてのエタロンを光共振器内に配置し、エタロンを一定の速度でスキャンすることが記載されている。特許文献4には、エタロンの透過波長がレーザ光の縦モード発振と一致するときにのみレーザ発振し、エタロンのスキャン速度を増加した場合、レーザ光の発振はパルス的になるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−21380号公報
【特許文献2】特開2010−046215号公報
【特許文献3】特開2009−231483号公報
【特許文献4】特開2000−105464号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A High-Speed Photoacoustic Tomography System based on a Commercial Ultrasound and a Custom Transducer Array, Xueding Wang, Jonathan Cannata,Derek DeBusschere, Changhong Hu, J. Brian Fowlkes, and Paul Carson, Proc. SPIE Vol. 7564, 756424 (Feb.23, 2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3において、複数波長のレーザ光を切り替えて出射するためには、レーザ出射のたびに、エタロンや複屈折フィルタの回転角度の調整を行う必要がある。光音響イメージングにおいて、例えば第1の波長と第2の波長のパルスレーザ光を被検体に照射する場合、波長選択素子を調整して第1の波長のレーザ光を被検体に照射し、第1の波長のレーザ光の光音響信号の検出を全て終えてから、第2の波長のレーザ光が出射されるように波長選択素子を調整し、第2の波長のレーザ光を被検体に照射することが考えられる。光音響イメージングでは、人などの動きがあるものを対象とすることが多く、第1の波長から第2の波長へ切り替えている間に対象物が動くと、第1の波長のレーザ光を照射したときの光音響信号と第2の波長のレーザ光を照射したときの光音響信号とに不整合が生じることがある。
【0008】
光音響イメージングでは、上記の不整合を防ぐという観点から、例えば第1の波長と第2の波長とを、パルスごとに切り替えてレーザ光を照射するとよいと考えられる。つまり、例えば第1の波長と第2の波長とをこの順で含む所定の波長系列で、繰り返しレーザ光を照射すればとよいと考えられる。パルスごとに照射するレーザ光の波長を変えるレーザ装置として特許文献4に記載されたものがあるが、特許文献4では、エタロンの透過波長がレーザ光の縦モード発振と一致するときにのみレーザ発振するため、ある特定の波長系列のレーザ光を得ることしかできず、任意の波長系列のレーザ光を得ることはできない。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、波長可変のレーザ光源から所望の波長系列でパルスレーザ光を出射させることができる音響波ユニット、及びそのような音響波ユニットを含む光音響画像生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を順次に出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内に挿入されたQスイッチと、光共振器の内部に挿入され、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタとを有するレーザ光源ユニットと、光音響画像の生成を行う音響波ユニットであって、所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じる光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、複屈折フィルタを波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源からレーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを有する音響波ユニットとを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【0011】
本発明では、所定の回転速度は、複屈折フィルタにおける回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数とに基づいて決定されるものとすることができる。
【0012】
複屈折フィルタが1回転の間に繰り返す自由スペクトルレンジの回数をk[回/回転]とし、波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]とする場合、所定の回転速度が、v=m/(k×n)[回転/秒]で計算される値に決定されるものとしてもよい。
【0013】
本発明では、トリガ制御回路は、複屈折フィルタを、所定の方向に所定の回転速度で連続的に回転させる構成を採用することができる。
【0014】
トリガ制御回路は、複屈折フィルタの回転変位位置を示す複屈折フィルタ状態情報に基づいて、励起光を照射させるタイミング及びQスイッチをオンにするタイミングを決定してもよい。
【0015】
トリガ制御回路は、複屈折フィルタ状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した複屈折フィルタの位置からレーザロッドの励起に要する時間の間に複屈折フィルタが回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になると、レーザロッドに励起光を照射させるものとすることができる。
【0016】
トリガ制御回路は、所定時間の間における複屈折フィルタ状態情報の変化の量が所定の回転速度に応じた変化量となるように、複屈折フィルタを回転させることとしてもよい。
【0017】
上記に代えて、レーザ光源ユニットは、複屈折フィルタを回転させる駆動手段と、複屈折フィルタの回転変位を検出する回転変位検出手段と、所定時間の間に回転変位検出手段が検出した回転変位の量が所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段を制御する回転制御部とを更に有する構成を採用してもよい。
【0018】
音響波ユニットは、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備える構成を採用でき、光音響画像構築手段が、光音響画像の各画素の階調値を強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を抽出された大小関係に基づいて決定することしてもよい。
【0019】
所定の波長系列が第1の波長と第2の波長を含み、音響波ユニットは、第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備える構成を採用することができ、強度比抽出手段が再構成画像から強度情報としての位相情報を抽出し、強度情報抽出手段が再構成画像から強度情報を抽出することとしてもよい。
【0020】
検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、音響波ユニットは、反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える構成としてもよい。
【0021】
本発明は、また、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度情報抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器内に挿入され、回転変位に伴って光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタを波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源からレーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを備えたことを特徴とする音響波ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光音響画像生成装置及び音響波ユニットは、光共振器内に挿入され、回転変位に伴って発振波長を変化させる複屈折フィルタを、レーザ光源ユニットから出射すべきパルスレーザ光の波長系列の数に応じた回転速度で回転させ、複屈折フィルタの回転変位位置が出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにする。複屈折フィルタの回転速度を速くするほど波長の切り替えを高速化することができ、逆に回転速度を遅くするほど選択可能な発振波長の数を増やすことができる。本発明では、波長系列に含まれる波長の数に応じて複屈折フィルタの回転速度を制御しており、そのような構成とすることで、音響波ユニットから、レーザ光源ユニットから出射するパルスレーザ光の波長を、任意の波長系列に制御することができる。また、本発明では、音響波ユニットがパルスレーザ光の出射タイミングを決めており、光音響信号のサンプリング開始にあたり、レーザ光源ユニットからレーザ出射を示す同期信号のような信号を取得する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】複屈折フィルタ、駆動手段及び回転変位検出手段の構成例を示す斜視図。
【図4】複屈折フィルタの回転変位に対する波長透過特性の一例を示すグラフ。
【図5】複屈折フィルタを1秒間に1回転の速度で回転したときの発振波長特性を示すグラフ。
【図6】各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャート。
【図7】第1実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すフローチャート。
【図8】波長系列が6つの波長を含む場合の各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャート。
【図9】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図10】第2実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すブロック図。
【図11】変形例のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図12】酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光波長ごとの分子吸収係数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例では、音響波として超音波を用いるが、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択することにより、可聴周波数の音響波であっても良い。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置10は、超音波探触子(プローブ)11と、超音波ユニット12と、レーザ光源ユニット13とを備える。レーザ光源ユニット13は、被検体に照射すべきパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を出射する。以下の説明においては、主に、波長系列が第1の波長と第2の波長とをこの順で含み、レーザ光源ユニット13が、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とをこの順で出射するものとして説明する。
【0026】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。先に説明した図12を参照すると、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0027】
レーザ光源ユニット13から出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。パルスレーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ11以外の場所からパルスレーザ光の照射を行ってもよい。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで超音波(音響波)が生じる。プローブ11は、超音波検出器を含む。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波検出器素子(超音波振動子)を有し、その一次元配列された超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響信号)を検出する。
【0028】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、複素数化手段24、光音響画像再構成手段25、位相情報抽出手段26、強度情報抽出手段27、検波・対数変換手段28、光音響画像構築手段29、トリガ制御回路30、及び、制御手段31を有する。受信回路21は、プローブ11が検出した光音響信号を受信する。AD変換手段22は検出手段であり、受信回路21が受信した光音響信号をサンプリングし、デジタルデータである光音響データを生成する。AD変換手段22は、ADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で光音響信号のサンプリングを行う。
【0029】
AD変換手段22は、光音響データを受信メモリ23に格納する。AD変換手段22は、レーザ光源ユニット13から出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響データを受信メモリ23に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ23に格納する。
【0030】
複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、複素数化手段24が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0031】
光音響画像再構成手段25は、複素数化手段24から複素数データを入力する。光音響画像再構成手段25は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段25は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを位相情報抽出手段26と強度情報抽出手段27とに入力する。
【0032】
位相情報抽出手段26は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、位相情報抽出手段26は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を生成する。位相情報抽出手段26は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0033】
強度情報抽出手段27は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段27は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段27は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段28は、強度情報抽出手段27で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0034】
光音響画像構築手段29は、位相情報抽出手段26から位相情報を入力し、検波・対数変換手段28から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段29は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段29は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段29は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段29は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0035】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。
【0036】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が青色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。画像表示手段14は、光音響画像構築手段29が生成した光音響画像を表示画面上に表示する。
【0037】
次いで、レーザ光源ユニット13の構成を詳細に説明する。図2は、レーザ光源ユニット13の構成を示す。レーザ光源ユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、複屈折フィルタ(BRF:birefringent filter)56、駆動手段57、及び回転変位検出手段58を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源を、励起光源として用いてもよい。例えば、レーザーロッド51がチタンサファイアの場合は励起光源としては、Nd-YAG(SHG)が用いられる。
【0038】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ミラー54が出力側であるものとする。光共振器内には、Qスイッチ55及び複屈折フィルタ56が挿入される。Qスイッチ55により、光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。複屈折フィルタ56は、回転変位に伴って透過波長を変化させ、光共振器の発振波長を変化させる。駆動手段57は、複屈折フィルタ56を回転させる。回転変位検出手段58は、複屈折フィルタ56の回転変位を検出する。回転変位検出手段58は、複屈折フィルタ56の回転変位位置を示すBRF状態情報を超音波ユニット12に出力する。
【0039】
図1に戻り、制御手段31は、超音波ユニット12内の各部の制御を行う。トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を、レーザ光源ユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させる。複屈折フィルタの回転速度は、例えば複屈折フィルタ56における回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数(パルスレーザ光間の時間間隔)とに基づいて決定できる。
【0040】
トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転を制御するためのBRF制御信号を出力する。レーザ光源ユニット13の駆動手段57は、BRF制御信号に応じて複屈折フィルタ56を回転させる。トリガ制御回路30は、BRF制御信号を通じて、例えば所定時間の間におけるBRF状態情報の変化の量が所定の回転速度に応じた変化量となるように、複屈折フィルタを回転させる。
【0041】
上記に加えて、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に、フラッシュランプ52の発光を制御するためのフラッシュランプトリガ信号を出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。トリガ制御回路30は、BRF状態信号に基づいて、フラッシュランプトリガ信号を出力する。例えばトリガ制御回路30は、BRF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した複屈折フィルタ56の位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に複屈折フィルタ51が回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプトリガ信号を出力し、レーザロッド51に対して励起光を照射させる。
【0042】
トリガ制御回路30は、励起光の照射後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。言い換えると、トリガ制御回路30は、BRF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長を透過する複屈折フィルタ56の位置を示す情報となると、Qスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで(Qスイッチがオンすることで)、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。
【0043】
トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号のタイミング、すなわちパルスレーザ光の出射タイミングに合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号(ADトリガ信号)を出力する。AD変換手段22は、サンプリングトリガ信号にと基づいて光音響信号のサンプリングを開始する。
【0044】
図3は、複屈折フィルタ56、駆動手段57、及び回転変位検出手段58の構成例を示す。この例では、駆動手段57はサーボモータであり、回転変位検出手段58はロータリーエンコーダーである。複屈折フィルタ56は、サーボモータの出力軸の回転に従って回転する。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとで複屈折フィルタ56の回転変位を検出し、BRF状態情報を生成する。トリガ制御回路30は、例えばBRF状態情報をモニタし、所定時間の間にロータリーエンコーダーで検出されるサーボモータの回転軸の回転変位量が所定の量に保たれるように、BRF制御信号を通じてサーボモータに供給する電圧などを制御することで、複屈折フィルタ56を所定の速度で回転させる。
【0045】
図4は、複屈折フィルタ56の回転変位に対する波長透過特性(発振波長特性)の一例を示す。複屈折フィルタ56は、例えば700nmから840nmまで間で光共振器の発振波長を変化させる。複屈折フィルタ56は、例えば回転変位位置0°から90°までの間に(1/4回転で)自由スペクトルレンジ(FSR:Free Spectral Range)を3回繰り返し、1回転につきFSRを12回繰り返す。
【0046】
図5は、上記の複屈折フィルタ56を1秒間に1回転の速度で回転したときの発振波長特性を示す。図4に示す波長透過特性を持つ複屈折フィルタ56を1秒あたり1回転の回転速度で回転させると、複屈折フィルタ56は、1/4秒の間にFSRを3回繰り返し、1秒間に12回(12Hz)でFSRを繰り返す。複屈折フィルタ56の回転速度を速めるほど、1秒間におけるFSRの繰り返し回数は多くなり、回転速度を遅くすると、1秒間におけるFSRの繰り返し回数は少なくなる。
【0047】
図6は、各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャートである。(a)は、時間変化に対する光共振器の発振波長特性(複屈折フィルタ56の透過波長特性)を示す。(b)はフラッシュランプトリガを示し、(c)はQスイッチトリガを示す。(d)は、フラッシュランプの発光タイミング及びパルスレーザ光の出射タイミングを示す。なお、図5では、説明簡略化のために、フラッシュランプ52及びQスイッチ55がトリガに対して瞬時に応答するものとしているが、実際には遅延時間が存在する。だだし、その遅延は数μ秒から100μ秒程度であるので、遅延は無視できる。
【0048】
トリガ制御回路30は、まず、レーザ光源ユニット13から波長750nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t1で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置となる時刻t2でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から波長750nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0049】
次いで、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から波長800nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t3で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長800nmに対応した位置となる時刻t4でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から800nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0050】
ここで、フラッシュランプトリガ信号が出力される時刻t1は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置となる時刻t2からレーザロッド51の励起に要する時間の分だけ前の時刻である。また、フラッシュランプトリガ信号が出力される時刻t3は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長800nmに対応した位置となる時刻t4からレーザロッド51の励起に要する時間の分だけ前の時刻である。時刻t1及びt3に対応した複屈折フィルタ56の回転変位位置は、複屈折フィルタ56の波長750nm及び800nmに対応した回転変位位置と、複屈折フィルタ56の回転速度と、レーザロッド51の励起に要する時間とから求めることができる。
【0051】
以降同様に、トリガ制御回路30は、時刻t5、t7、t9、t11で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力する。また、時刻t6、t8、t10、t12で、Qスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力し、各時刻における複屈折フィルタ56の透過波長に応じた波長のパルスレーザ光を出射させる。時刻t6及びt10における複屈折フィルタ56の透過波長は750nmであり、時刻t8及びt12における複屈折フィルタの透過波長は800nmであるので、レーザ光源ユニット13は、750nmと800nmのパルスレーザ光を順次にこの順で繰り返し出射する。
【0052】
図6の例では、レーザ光源ユニット13は、1/12秒の間に、波長750nmのパルスレーザ光と波長800nmのパルスレーザ光との2つを交互に出射する。レーザ光源ユニット13は、2つの波長を切り替えつつパルスレーザ光を1秒間に24回出射する(24Hz動作)。言い換えると、1セット2波長のパルスレーザ光を、1秒間に12セット出射する。
【0053】
図7は、光音響画像生成装置10の動作手順を示す。ここでは、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を回転させる旨のBRF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップA1)。例えば複屈折フィルタ56が1回転の間にFSRを12回繰り返すものであり、1/12秒の間に波長750nmのパルスレーザ光と波長800nmのパルスレーザ光とを順次に出射させる場合(24Hz動作の場合)、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56を1秒間で1回転させる旨のBRF制御信号を出力する。
【0054】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する(ステップA2)。レーザ光源ユニット13のフラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、レーザロッド51の励起が開始される(ステップA3)。トリガ制御回路30は、BRF状態情報に基づいて、例えば複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長750nmに対応した位置になるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ52を点灯させる。
【0055】
トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52の点灯後、BRF状態情報に基づいて、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)に対応した位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにする(ステップA4)。Qスイッチ55がオンになることで、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。
【0056】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。プローブ11で検出された光音響信号は、受信回路21にて受信される。
【0057】
トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号を出力するタイミングに合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21で受信された光音響信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングする(ステップA5)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0058】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり波長系列を構成する全ての波長のパルスレーザ光を出射させたか否かを判断する(ステップA6)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップA2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、ステップA3でフラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、トリガ制御回路30は、ステップA4で、複屈折フィルタ56が波長系列を構成する2つ目の波長(800nm)に対応した回転変位位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにし、パルスレーザ光を出射させる。
【0059】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせてAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップA5で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、波長系列を構成する各波長に対してステップA1からA5を実行し、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。
【0060】
制御手段31は、ステップA6で残りの波長がないと判断すると、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップA7)。選択すべき部分領域が残っておりときは、ステップA2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップA2からA6を実行し、各部分領域に波長系列を構成する各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射し、各部分領域に対応した第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射及び光音響信号の検出を行うと、1フレームの光音響画像を生成するために必要な光音響データが揃う。
【0061】
制御手段31は、ステップA7で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像の生成に処理を移す。複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップA8)。光音響画像再構成手段25は、ステップA8で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップA9)。
【0062】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データ(再構成画像)から位相情報を抽出する(ステップA10)。位相情報抽出手段26は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として抽出する(ただし、X=0の場合はθ=90°)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップA11)。強度情報抽出手段27は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を強度情報として抽出する。
【0063】
検波・対数変換手段28は、ステップA11で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップA10で抽出された位相情報と、ステップA11で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップA12)。光音響画像構築手段29は、例えば強度情報に基づいて光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定し、位相情報に基づいて各画素の色を決定することで、光音響画像を生成する。生成された光音響画像は、画像表示手段14に表示される。
【0064】
ここで、複屈折フィルタ56の回転速度は、出射すべくパルスレーザ光の波長系列に含まれる波長の数に応じて適宜決定すればよい。以下、波長系列が6つの波長(720nm、740nm、760nm、780nm、800nm、820nm)を含む場合について説明する。図8は、波長系列が6つの波長を含む場合の各種トリガと発光タイミングとを示すタイミングチャートである。(a)は、時間変化に対する光共振器の発振波長特性(複屈折フィルタ56の透過波長特性)を示す。(b)はフラッシュランプトリガを示し、(c)はQスイッチトリガを示す。(d)は、フラッシュランプの発光タイミング及びパルスレーザ光の出射タイミングを示す。
【0065】
図4に示す、1回転でFSRを12回繰り返す複屈折フィルタ56を4秒で1回転させると、複屈折フィルタ56は1秒間に1/4回転し、1秒間にFSRを3回繰り返す(a)。トリガ制御回路30は、まず、レーザ光源ユニット13から波長720nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t21で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長720nmに対応した位置となる時刻t22で、Qスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から波長720nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0066】
次いで、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から波長740nmのパルスレーザ光を出射させるために、時刻t23で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力し(b)、フラッシュランプ52を点灯させる(d)。その後、トリガ制御回路30は、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長740nmに対応した位置となる時刻t24でQスイッチトリガ信号を出力し(c)、Qスイッチ55をオンにすることで光共振器から740nmのパルスレーザ光を出射させる。
【0067】
以降同様に、トリガ制御回路30は、時刻t25、t27、t29、t31で、フラッシュランプ52にフラッシュランプトリガ信号を出力する。また、時刻t26、t28、t30、t32で、Qスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力し、各時刻における複屈折フィルタ56の透過波長に応じた波長のパルスレーザ光を出射させる。時刻t26、t28、t30、及びt32おける複屈折フィルタ56の透過波長はそれぞれ760nm、780nm、800nm、及び820nmであり、レーザ光源ユニット13は、1/3秒間に、720nmから820nmまでの範囲で波長が20nmずつ長くなる6つのパルスレーザ光を出射する。
【0068】
図8の例では、レーザ光源ユニット13は、1/3秒の間に、波長720nmから820nmまでの6つの波長のパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、6つの波長を切り替えつつパルスレーザ光を1秒間に18回出射する(18Hz動作)。言い換えると、1セット6波長のパルスレーザ光を、1秒間に3セット出射する
【0069】
複屈折フィルタ56の回転速度は、1回のFSRで、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光が出射できるように設定されていることが好ましい。例えば、複屈折フィルタ56が1回転の間に繰り返すFSRの回数をk[回/回転]とし、波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]としたとき、複屈折フィルタ56の回転速度を、v=m/(k×n)[回転/秒]で決定した値とすることができる。この場合、1FSRあたりn個の波長を切り替えつつ、1秒間にm個のパルスレーザを出射できる(mHz動作)。
【0070】
本実施形態では、複屈折フィルタ56を所定の回転速度で回転させつつ、フラッシュランプ52を点灯してレーザロッド51を励起し、その励起後、複屈折フィルタ56の回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングでQスイッチ55をオンにする。複屈折フィルタ56の回転速度を遅くするほど、例えば複屈折フィルタ56の1回分のFSRの中で選択可能な発振波長の数を増やすことができる。一方、波長系列に含まれる波長が2つであるような場合は、複屈折フィルタ56の回転速度を速めることで、2つの波長の切り替えを高速化することができる。このように、本実施形態では、複屈折フィルタ56の回転速度を制御することで、レーザ光源ユニット13から所望の波長系列でパルスレーザ光を出射することができる。本実施形態では、Qスイッチトリガ信号を超音波ユニット12から出力しており、レーザ光源ユニット13からレーザ発光タイミングを示す同期信号のような情報を取得する必要がない。
【0071】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射し、各波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、例えば光照射領域が3つの部分領域に分かれているときには、第1の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、次いで、第2の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、その後、第3の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射する。本実施形態では、ある部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を連続的に照射した後に、次の部分領域に移っている。この場合、第1の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射した後に、第2の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射する場合に比して、同じ位置において第1の波長のパルスレーザ光を照射してから第2のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短くすることができる。第1の波長のパルスレーザ光が照射されてから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短縮することで、第1の光音響データと第2の光音響データとの不整合を抑制することができる。
【0073】
引き続き、本発明の第2実施形態を説明する。図9は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置10aは、超音波ユニット12aが、図1に示す第1実施形態の光音響画像生成装置10における超音波ユニット12の構成に加えて、データ分離手段32、超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、超音波画像構築手段35、画像合成手段36、及び送信制御回路37を有する。本実施形態の光音響画像生成装置10は、光音響画像に加えて、超音波画像を生成する点で第1実施形態と相違する。その他の部分は、第1実施形態と同様でよい。
【0074】
本実施形態では、プローブ11は、光音響信号の検出に加えて、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び送信した超音波に対する被検体からの反射超音波の検出(受信)を行う。トリガ制御回路30は、超音波画像の生成時は、送信制御回路37に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路37は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、超音波の送信後、被検体からの反射超音波を検出する。
【0075】
プローブ11が検出した反射超音波は、受信回路21を介してAD変換手段22に入力される。トリガ制御回路30は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。AD変換手段22は、反射超音波のサンプリングデータ(反射超音波データ)を受信メモリ23に格納する。
【0076】
データ分離手段32は、受信メモリ23に格納された反射超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段32は、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡し、第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡す。第1及び第2の光音響データに基づく光音響画像の生成は第1実施形態と同様である。データ分離手段32は、分離した反射超音波のサンプリングデータを、超音波画像再構成手段33に入力する。
【0077】
超音波画像再構成手段33は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された反射超音波(そのサンプリングデータ)に基づいて、超音波画像の各ラインのデータを生成する。超音波画像再構成手段33は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。
【0078】
検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、及び超音波画像構築手段35は、反射超音波に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段を構成する。
【0079】
画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段36は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0080】
図10は、光音響画像生成装置10aの動作手順を示している。以下では、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の複屈折フィルタ56を回転させる旨のBRF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップB1)。
【0081】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、フラッシュランプトリガ信号を出力する(ステップB2)。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、レーザロッド51の励起が開始される(ステップB3)。
【0082】
トリガ制御回路30は、フラッシュランプ52の点灯後、BRF制御信号に基づいて、複屈折フィルタ56の回転変位位置が波長系列を構成する1つ目の波長(750nm)に対応した位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにする(ステップB4)。Qスイッチ55がオンになることで、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。
【0083】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21を介してプローブ11で検出された光音響信号を受信し、所定のサンプリング周期で光音響信号をサンプリングする(ステップB5)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0084】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり波長系列を構成する全ての波長のパルスレーザ光を出射させたか否かを判断する(ステップB6)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップB2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、ステップB3でフラッシュランプトリガ信号に応答して点灯し、トリガ制御回路30は、ステップB4で、複屈折フィルタ56が波長系列を構成する2つ目の波長(800nm)に対応した回転変位位置になるタイミングでQスイッチ55をオンにし、パルスレーザ光を出射させる。
【0085】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチトリガ信号の出力に合わせてAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップB5で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、波長系列を構成する各波長に対してステップB1からB5を実行し、波長系列を構成する各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。ステップB1からB5は、図7のステップA1からA5と同様でよい。
【0086】
制御手段31は、ステップB6で残りの波長がないと判断すると、超音波の送受信に処理を移す。トリガ制御回路30は、送信制御回路37を介してプローブ11から被検体に超音波を送信させる(ステップB7)。ステップB7では、被検体のパルスレーザ光が照射された部分領域と同じ領域に対して超音波を送信する。プローブ11は、送信した超音波に対する反射超音波を検出する(ステップB8)。検出された反射超音波は、受信回路21を経てAD変換手段22でサンプリングされ、受信メモリ23に反射超音波データとして格納される。
【0087】
制御手段31は、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップB9)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップB2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップB2からB6を実行し、各部分領域に波長系列を構成する各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射して、第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。また、ステップB7及びB8を実行して、反射超音波データを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射と光音響信号の検出、及び超音波の送受信を行うと、1フレームの光音響画像及び超音波画像を生成するために必要なデータが揃う。
【0088】
制御手段31は、ステップB9で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像及び超音波画像の生成に処理を移す。データ分離手段32は、第1及び第2の光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段32は、分離した第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡す。複素数化手段24は、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップB10)。光音響画像再構成手段25は、ステップB10で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップB11)。
【0089】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データから位相情報を抽出する(ステップB12)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップB13)。検波・対数変換手段28は、ステップB13で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップB12で抽出された位相情報と、ステップB13で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップB14)。ステップB10からB14は、図7のステップA8からA12と同様でよい。
【0090】
超音波画像再構成手段33は、例えば遅延加算法により、超音波画像の各ラインのデータを生成する。検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する(ステップB15)。画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成し、合成した画像を画像表示手段14に表示する(ステップB16)。
【0091】
本実施形態では、光音響画像生成装置は、光音響画像に加えて超音波画像を生成する。超音波画像を参照することで、光音響画像では画像化することができない部分を観察することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0092】
なお、上記各実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。さらに、ここでは、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られるまた、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0093】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば位相情報抽出手段26は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段27は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0094】
上記各実施形態では、トリガ制御回路30がBRF状態情報をモニタし、BRF制御信号を通して複屈折フィルタ56の回転速度を所定の回転速度に制御するものとして説明したが、これには限定されない。図11は、レーザ光源ユニットの変形例を示している。このレーザ光源ユニット13aは、図2に示すレーザ光源ユニット13の構成に加えて回転制御部59を有する。回転制御部59は、所定時間の間に回転変位検出手段58が検出した回転変位の量が、複屈折フィルタ56の所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段57に供給する電圧などを制御する。トリガ制御回路30は、BRF制御信号を通じて、回転制御部59に、複屈折フィルタ56の回転速度を指示する。回転制御部59は、複屈折フィルタ56の回転速度が指示された回転速度となるように駆動手段57を駆動する。
【0095】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の超音波ユニット及び光音響画像生成装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10:光音響画像生成装置
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザ光源ユニット
14:画像表示手段
21:受信回路
22:AD変換手段
23:受信メモリ
24:複素数化手段
25:光音響画像再構成手段
26:位相情報抽出手段
27:強度情報抽出手段
28:検波・対数変換手段
29:光音響画像構築手段
30:トリガ制御回路
31:制御手段
32:データ分離手段
33:超音波画像再構成手段
34:検波・対数変換手段
35:超音波画像構築手段
36:画像合成手段
37:送信制御回路
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:Qスイッチ
56:複屈折フィルタ
57:駆動手段
58:回転変位検出手段
59:回転制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を順次に出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、前記光共振器内に挿入されたQスイッチと、前記光共振器の内部に挿入され、回転変位に伴って前記光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタとを有するレーザ光源ユニットと、
光音響画像の生成を行う音響波ユニットであって、前記所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じる光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、前記複屈折フィルタを前記波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、前記励起光源から前記レーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、前記複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで前記Qスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを有する音響波ユニットとを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置。
【請求項2】
前記所定の回転速度は、前記複屈折フィルタにおける回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、前記波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数とに基づいて決定される請求項1に記載の光音響画像生成装置。
【請求項3】
前記複屈折フィルタは、1回転の間に繰り返す自由スペクトルレンジの回数をk[回/回転]とし、前記波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]とする場合、前記所定の回転速度は、v=m/(k×n)[回転/秒]で計算される値に決定される請求項1又は2に記載の光音響画像生成装置。
【請求項4】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタを、所定の方向に前記所定の回転速度で連続的に回転させる請求項1から3何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項5】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタの回転変位位置を示す複屈折フィルタ状態情報に基づいて、前記励起光を照射させるタイミング及び前記Qスイッチをオンにするタイミングを決定する請求項1から4何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項6】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタ状態情報が、前記出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した前記複屈折フィルタの位置から前記レーザロッドの励起に要する時間の間に前記複屈折フィルタが回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になると、前記レーザロッドに励起光を照射させる請求項5に記載の光音響画像生成装置。
【請求項7】
前記トリガ制御回路は、所定時間の間における前記複屈折フィルタ状態情報の変化の量が前記所定の回転速度に応じた変化量となるように、前記複屈折フィルタを回転させる請求項5又は6に記載の光音響画像生成装置。
【請求項8】
前記レーザ光源ユニットは、前記複屈折フィルタを回転させる駆動手段と、前記複屈折フィルタの回転変位を検出する回転変位検出手段と、所定時間の間に前記回転変位検出手段が検出した回転変位の量が前記所定の回転速度に応じた量になるように前記駆動手段を制御する回転制御部とを更に有する請求項1から6何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項9】
前記音響波ユニットが、前記各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、
前記光音響画像構築手段は、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記抽出された大小関係に基づいて決定する請求項1から8何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項10】
前記所定の波長系列が第1の波長と第2の波長を含み、
前記音響波ユニットは、前記第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第1の光音響データと、前記第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、
前記強度比抽出手段は、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が前記再構成画像から前記強度情報を抽出する請求項9に記載の光音響画像生成装置。
【請求項11】
前記検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成し、
前記音響波ユニットは、前記反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える請求項1から10何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項12】
相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、
前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、
前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、
レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器内に挿入され、回転変位に伴って前記光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタを前記波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源から前記レーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、前記複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで前記光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを備えたことを特徴とする音響波ユニット。
【請求項1】
相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列で複数のパルスレーザ光を順次に出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、前記光共振器内に挿入されたQスイッチと、前記光共振器の内部に挿入され、回転変位に伴って前記光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタとを有するレーザ光源ユニットと、
光音響画像の生成を行う音響波ユニットであって、前記所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じる光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、前記複屈折フィルタを前記波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、前記励起光源から前記レーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、前記複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで前記Qスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを有する音響波ユニットとを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置。
【請求項2】
前記所定の回転速度は、前記複屈折フィルタにおける回転変位位置に対する発振波長の変化特性と、前記波長系列に含まれる波長の数、及び単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数とに基づいて決定される請求項1に記載の光音響画像生成装置。
【請求項3】
前記複屈折フィルタは、1回転の間に繰り返す自由スペクトルレンジの回数をk[回/回転]とし、前記波長系列に含まれる波長の数をn[個]とし、単位時間当たりのパルスレーザ光の発光回数をm[回/秒]とする場合、前記所定の回転速度は、v=m/(k×n)[回転/秒]で計算される値に決定される請求項1又は2に記載の光音響画像生成装置。
【請求項4】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタを、所定の方向に前記所定の回転速度で連続的に回転させる請求項1から3何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項5】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタの回転変位位置を示す複屈折フィルタ状態情報に基づいて、前記励起光を照射させるタイミング及び前記Qスイッチをオンにするタイミングを決定する請求項1から4何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項6】
前記トリガ制御回路は、前記複屈折フィルタ状態情報が、前記出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した前記複屈折フィルタの位置から前記レーザロッドの励起に要する時間の間に前記複屈折フィルタが回転変位する量を差し引いた位置を示す情報になると、前記レーザロッドに励起光を照射させる請求項5に記載の光音響画像生成装置。
【請求項7】
前記トリガ制御回路は、所定時間の間における前記複屈折フィルタ状態情報の変化の量が前記所定の回転速度に応じた変化量となるように、前記複屈折フィルタを回転させる請求項5又は6に記載の光音響画像生成装置。
【請求項8】
前記レーザ光源ユニットは、前記複屈折フィルタを回転させる駆動手段と、前記複屈折フィルタの回転変位を検出する回転変位検出手段と、所定時間の間に前記回転変位検出手段が検出した回転変位の量が前記所定の回転速度に応じた量になるように前記駆動手段を制御する回転制御部とを更に有する請求項1から6何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項9】
前記音響波ユニットが、前記各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、
前記光音響画像構築手段は、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記抽出された大小関係に基づいて決定する請求項1から8何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項10】
前記所定の波長系列が第1の波長と第2の波長を含み、
前記音響波ユニットは、前記第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第1の光音響データと、前記第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出される光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、
前記強度比抽出手段は、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が前記再構成画像から前記強度情報を抽出する請求項9に記載の光音響画像生成装置。
【請求項11】
前記検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成し、
前記音響波ユニットは、前記反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える請求項1から10何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項12】
相互に異なる2以上の波長を含む所定の波長系列に含まれる各波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、
前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、
前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、
レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器内に挿入され、回転変位に伴って前記光共振器の発振波長を変化させる複屈折フィルタを前記波長系列に含まれる波長の数に応じた所定の回転速度で回転させつつ、励起光源から前記レーザロッドに励起光を照射させ、該励起光の照射後、前記複屈折フィルタの回転変位位置が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した位置となるタイミングで前記光共振器内に挿入されたQスイッチをオンにしてパルスレーザ光を出射させるトリガ制御回路とを備えたことを特徴とする音響波ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−51404(P2013−51404A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160426(P2012−160426)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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