説明

免疫刺激性乳児用栄養

本発明は、脂肪成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含みかつホエーおよびカゼインを含む栄養または薬剤組成物を提供するものである。当該組成物は、ホエーに対するカゼインの重量比が1:1〜1:2.4であり、さらに前記組成物が、a)100gのタンパク質当たり、少なくとも3gのアルギニン;b)全脂肪酸に対して、少なくとも10wt%のリノール酸;c)全脂肪酸に対して、少なくとも1wt%のα−リノレン酸;d)全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量の少なくとも一の長鎖多価不飽和脂肪酸、この際、前記長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される;e)全脂肪酸に対して、5〜25wt%の少なくとも一の多価不飽和脂肪酸;およびf)乾燥重量100gの組成物当たり、2〜12gの、重合度が2〜100の難消化性オリゴ糖を含むことを特徴とする。本発明の組成物は、他に比べて、ホエー主要特殊調製粉乳を与えることに伴うリスクを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、脂肪成分、タンパク質成分及び炭水化物成分を含みかつホエーおよびカゼインを含む栄養または薬剤組成物に、ならびに当該組成物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
授乳は、乳児の発育を最適に支持し、感染から身を守る。しかしながら、乳児全員が人乳をもらえる立場にあるわけではない。このため、人乳の機能を模倣する、特殊調製粉乳を提供するという目的が現在も続いている。特殊調製粉乳と人乳との望ましい組成上の類似に加えて、人乳の保護作用をまねることが特に望ましい。人乳は、例えば、感染症やアレルギーから身を守ることが示された。
【0003】
最新の調乳では、ホエーに対するカゼインの割合が可能な限り人乳に近い。この割合により乳児が最適に成長できると考えられる。しかしながら、ウシホエー主要タンパク質源の使用に付随したマイナス面が幾つか依然として存在する。これらのホエー主要調乳は、感染症から身を守るには最適ではない。このような調乳を与えると、特に最初の3〜4週齢では、人乳を与えた乳児に比して、乳児の腸内細菌叢の発達が悪い。ホエー主要調乳を与えた乳児の細菌叢は、人乳を与えた乳児と同じ細菌属をおよそ含んでいるが、有益な細菌数は、人乳をもらっている乳児に比べてホエー主要調乳をもらっている乳児では少ない。さらに、ホエー主要ウシタンパク質源を含む調乳を与えた乳児の細菌叢は、クロストリジウムや腸内細菌等の異常な細菌の量が増える。ゆえに、ホエー主要調乳を乳児に与えると、「次善最適な腸内細菌叢」が形成される。
【0004】
非常に幼い乳児は免疫系が未熟で腸管も未熟であるため、次善最適な腸内細菌叢が発達すると、感染症、下痢、アレルギー及び炎症が起こる。特に、0〜30日齢でかつウシホエー主要タンパク質を含む調乳が与えられた乳児は、大便の細菌叢が人乳を与えられた乳児とは最も異なるため、これらのリスクをおいやすい。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明の目的は、ホエー主要特殊調製粉乳を与えることに付随したリスクを抑える栄養または薬剤組成物を提供することである。
【0006】
上記目的は、請求項1に記載の組成物によって解決される。
【0007】
本発明の組成物は、
ホエーに対するカゼインの重量比が1:1〜1:2.4であり、さらに
前記組成物が、
a)100gのタンパク質当たり、少なくとも3gのアルギニン;
b)全脂肪酸に対して、少なくとも10wt%のリノール酸(LA);
c)全脂肪酸に対して、少なくとも1wt%のα−リノレン酸(ALA);
d)全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量の少なくとも一の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、この際、前記長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)からなる群より選択される;
e)全脂肪酸に対して、5〜25wt%の少なくとも一の多価不飽和脂肪酸;および
f)乾燥重量100gの組成物当たり、2〜12gの重合度が2〜100の難消化性オリゴ糖
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の組成物は、免疫系の成熟及び腸管の成熟を刺激する。本発明の組成物は、感染症、下痢及びアレルギー等の、乳児の炎症性疾患を予防するおよび/または治療するのに特に適切である。本発明の組成物は:
・「最適な腸内細菌叢」(即ち、人乳を与えることによって得られる細菌叢と同様の細菌叢)の発達を刺激する;
・胃腸管の成熟を刺激することにより、異常な細菌、毒素及び食物アレルゲン等のアレルゲンが体循環に入るのを予防する;
・免疫系の成熟を刺激することにより、アレルゲン、病原または毒素が腸バリアを通るおよび/または体循環に入る際に、より良好に防御する;
・同時に乳児に最適な栄養を提供する。
【0009】
「リスクの低い腸内細菌叢」の発達の根底にある生理学的過程である、腸の成熟及び免疫系の成熟は、非常に相関性があり、共依存していると考えられる。ゆえに、特殊調製粉乳は、腸の成熟、免疫系の成熟及びリスクの低い腸内細菌叢の発達を刺激する、適当なバランスで、すべてのこれらの成分を含む必要がある。成分を最適に組合わせると、乳児はアレルゲンからより良好に保護される。本発明の組成物は、このような成分の最適な組み合わせを提供する。成分はしばしば異なるメカニズムで作用するため、本発明の組成物の成分は相乗的に作用し、乳児によりよい耐性を与え、炎症性疾患、特にアレルギーの発症率を低減する。
【0010】
本発明の組成物は、重合度の低いオリゴ糖を含む。このようなオリゴ糖は、リスクの低い腸内細菌叢の形成を刺激して、特にクロストリジウム、腸内細菌および/または腸球菌等の異常である(可能性のある)腸内細菌の数を減らし;さらにビフィドバクテリウムや乳酸菌によるコロニー形成を刺激する。ビフィドバクテリウムや乳酸菌は、例えば、腸上皮細胞によるフコ−オリゴ糖の合成を刺激することにより、腸の成熟を刺激する。最適な刺激は、異なるオリゴ糖の混合物、特に中性及び酸性オリゴ糖双方を含むオリゴ糖の混合物を含ませることによって達成される。また、オリゴ糖は、Th2応答を低減し、Th1応答を向上することにより免疫系に「直接的な」効果を及ぼす。オリゴ糖を含む本発明の組成物はTh1/Th2応答の不均衡を回復し、自己免疫及びアレルギー等の、Th1/Th2不均衡に関連する疾患の治療および予防に好ましく使用されうることが判明した。
【0011】
しかしながら、たとえオリゴ糖を非ヒトホエー主要タンパク質とを組合わせたとしても、このような組成物が与えられる乳児は、最初の1ヶ月間は感染症のリスクが高くなる。ゆえに、免疫系および/または腸の成熟度をさらに改善することが望ましい。
【0012】
驚くべきことに、LCPUFAが上皮傍細胞の透過性を効果的に抑制することが判明した。Usami et al(Clinical Nutrition 2001,20(4):351−359)が報告したこととは反対に、C18及びC20多価不飽和脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA;C20:5 n3)ドコサヘキサエン酸(DHA;C22:56 n3)及びアラキドン酸(AA;C20:4)が腸密着結合部の透過性を有効に抑制し、これにより腸の成熟を刺激することができることを見出した。ゆえに、本発明の組成物は、LCPUFAを含むことが好ましい。加えて、必須脂肪酸であるリノール酸(C18:2 n6)及びα−リノレン酸(C18:3 n3)は、腸管の成熟に加えて免疫系の成熟双方に不可欠である。さらに特に好ましい実施形態においては、本発明の組成物はまた、γ−リノレン酸(GLA;C18:3 (n−6))を含む。したがって、本発明の組成物は、リノール酸及びα−リノレン酸を含む。
【0013】
必要であれば、しかし、非常に好ましくは、本発明の組成物はまた、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドを含む。ヌクレオチドは、腸管の成熟を刺激し、下痢の発症を抑制し、さらに免疫系を刺激する。ヌクレオチドが補足されない調乳に対してヌクレオチドが補足された調乳が与えられた乳児は、抗原に対して発現した後の抗体価が上昇し、抗原ナチュラルキラー細胞活性を刺激した(Carver et al Acta Paediatrica,(1999) Vol.88, No. Sup 430,pp.83−88)。
【0014】
詳細な説明
本発明の組成物は、ホエー主要非ヒトタンパク質源、長鎖多価不飽和脂肪酸およびオリゴ糖を含む。
【0015】
上述したように、本発明は、ホエーに対するカゼインの重量比が1:1〜1:2.4であり、100gのタンパク質当たり、少なくとも3gのアルギニンを含む組成物を提供する。
【0016】
このカゼイン/ホエー比に関する1:1〜1:2.4という範囲は、この範囲に含まれるすべての値を含み、ゆえに、例えば、下記のホエーに対するカゼインの割合を含む:1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.7、1:1.9、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2.0、1:2.1、1:2.2、1:2.3、及び1:2.4。好ましい実施形態においては、カゼイン:ホエー比は、1:1.4〜1.6であり、より好ましくは約1:1.5(40:60)である。
【0017】
アルギニンは、好ましくは、100gのタンパク質成分当たり、3〜8gの量で存在する。この範囲は、すべての値を開示しており、特に、3、4、5、6、7、及び8gなどのこの範囲に含まれるすべての整数値を含む。本組成物は、好ましくは、100gのタンパク質当たり、4〜5gのアルギニンを含む。
【0018】
本組成物中に存在するLCPUFAは、DHA、AA及びEPAからなる群より選択される。これは、1または2または3種の当該長鎖多価不飽和脂肪酸が存在しうることを意味する。
【0019】
多価不飽和脂肪酸に関して記載される5〜25wt%という範囲は、この範囲に含まれるすべての値を開示する。
【0020】
本組成物は、人乳から構成される組成物を含まない。本方法は、人乳から構成される組成物の投与を有する方法を包含しない。ゆえに、好ましくは、本方法は、非ヒト由来の物質、好ましくは、非ヒト由来の、好ましくは植物、動物、細菌または合成物由来の、炭水化物繊維、脂肪および/またはタンパク質を含む組成物の投与を包含する。好ましくは、本発明の組成物を調製するもととなる成分及び構成成分はすべて非ヒト源由来である。
【0021】
主要栄養素
本組成物は、特殊調製粉乳として好ましく使用されうる。このような特殊調製粉乳は、好ましくは、脂質成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含み、液状で乳児に投与されることが好ましい。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明は、30〜60en%の脂質;5〜15en%のタンパク質;および25〜75en%の炭水化物を含む組成物、特に特殊調製粉乳に関するものである。好ましくは、本組成物は、5〜15en%のタンパク質、30〜60en%の脂肪および25〜65en%の炭水化物を含む。より好ましくは、本組成物は、43〜53en%の脂質;7〜11en%のタンパク質;および43〜53en%の炭水化物を含む(en%は、エネルギーパーセントの略称であり、各構成成分が調製物の全カロリー値に寄与する相対量を表わす)。
【0023】
本発明の特殊調製粉乳のタンパク質成分は、上記した重量比でカゼイン及びホエーを含む。カゼイン/ホエーは、好ましくは、非ヒト哺乳動物のミルク由来である。乳児に最適な栄養を提供するためには、本組成物は、特定量のアルギニンを含む。本明細書において、「タンパク質」またはタンパク質成分ということばは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びアミノ酸の累積である。アルギニンは、本組成物では不可欠である。アルギニンは、腸の炎症の症状の発症を抑制する(Amin et al Journal of Pediatrics,(2002) Vol.140,No.4,pp.425−431)。さらに、アルギニンは、免疫系を刺激し、健常な免疫系の維持に必要である(Niever et al,Biomedicine & Pharmacotherapy,(2002) Vol.56,No.10,pp.471−482)。カゼイン及びホエーは、アルギニンを含むが、ほとんどのミルク源(例えば、ウシホエー及びカゼイン)では、カゼイン及びホエーは、不十分なアルギニンを提供する。好ましくは、少なくとも一部のアルギニンを、遊離アミノ酸ベース、例えば、L−アルギニン、の形態で、または遊離アミノ酸が好ましい塩もしくはエステルの形態で、組成物に補足される。本発明の組成物は、好ましくは、乾燥特殊調製粉乳100g当たり、75〜500mgの遊離アミノ酸形態のアルギニン、より好ましくは乾燥特殊調製粉乳100g当たり、150〜400mgの遊離アミノ酸形態のアルギニンを含む。
【0024】
本発明の組成物中の炭水化物は、ほとんどラクトースによって供給されることが好ましく、すなわち、好ましくは全可消化炭水化物の少なくとも75wt%がラクトースによって提供され、好ましくは少なくとも90wt%である。
【0025】
低トレオニンタンパク質
非ヒトタンパク質源由来のホエー主要特殊調製粉乳は、一般的に、人乳に比して生物学的に利用可能なトレオニン含量が高い。人乳は、比較的少量の生物学的に利用可能なトレオニンを含む。ゆえに、ホエー主要調乳のトレオニン含量の低減方法が当該分野において提供される(例えば、EP 1048226、WO 0111990及びEP 741522を参照)。トレオニンが低減されたホエー主要特殊調製粉乳を投与すると、母乳を与えられた乳児に匹敵する、インビボでのトレオニンプロフィールが得られる。本発明の組成物は、低トレオニン組成物、即ち、100gのタンパク質当たり、2〜6gのトレオニンを含む組成物であることが好ましい。低トレオニン含量は、限外濾過によって調製されるホエー製品または特定の酸性ホエー製品を用いることによって達成されうる。
【0026】
必須脂肪酸含量
本発明の組成物は、全脂肪酸に対して、少なくとも10wt%のリノール酸(LA)を含み、好ましくは11〜20wt%、より好ましくは12〜15wt%である。本発明の組成物は、好ましくは、全脂肪酸に対して、少なくとも1wt%のα−リノレン酸(ALA)を含み、好ましくは1.5〜4wt%のALA、より好ましくは2〜2.5wt%である。腸のストレスを抑えるために、LA/ALAの重量比は、好ましくは2〜10、好ましくは5〜7.5である。
【0027】
本発明の組成物は、好ましくは、全脂肪酸に対して、0.05〜5wt%のγ−リノレン酸(GLA)を含み、好ましくは0.1〜1wt%である。
【0028】
長鎖多価不飽和脂肪酸含量
本発明の組成物は、全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量の少なくとも一の20〜22炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含み、この際、前記長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)からなる群より選択される。好ましくは、本組成物は、全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量のDHA;および全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量のAAを含む。
【0029】
好ましくは、この群の少なくとも一のLCPUFAが、本組成物の全脂肪酸含量に対して、0.15〜1wt%の量で含まれる。好ましくは、これらのLCPUFAの少なくとも2種が、本組成物の全脂肪酸含量に対して、0.15〜1wt%の量で存在する。好ましくは、本組成物は、AA及びDHAを、さらにより好ましくはAA、DHA及びEPAを含む。
【0030】
AA含量は、全脂肪酸の、好ましくは5wt%以下であり、より好ましくは1wt%以下であり、最も好ましくは0.1〜0.6wt%である。本組成物では、EPAおよび/またはDHAが、AAの作用のバランスをとるために、例えば、AA代謝産物の潜在的な炎症誘発効果を抑制するために、添加されることが好ましい。AA由来の過剰な代謝産物は、炎症を引き起こす可能性がある。ゆえに、本発明の組成物は、好ましくは、AA、EPAおよび/またはDHAを含み、この際、AA/DHAの重量比は、好ましくは0.25超であり、好ましくは0.5超であり、さらにより好ましくは1超である。AA/DHAの比は、好ましくは25未満であり、好ましくは10未満である。AA/EPAの重量比は、好ましくは1〜100であり、より好ましくは5〜20である。EPA/DHAの重量比は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5未満である。
【0031】
好ましい実施形態においては、可能な限り人乳に模倣することが望ましいため、LCPUFAの含量は、全脂肪酸の3wt%以下である。同様の理由により、本発明の組成物は、100gの脂肪酸当たり、好ましくは1g未満のオメガ−3 LCPUFAを含み、より好ましくは、100gの脂肪酸当たり、0.1〜0.75gである。オメガ−6 LCPUFA含量は、100gの脂肪酸当たり、好ましくは2g以下であり、100gの脂肪酸当たり、好ましくは0.1〜0.75gである。
【0032】
LCPUFA及び他の脂肪酸は、遊離脂肪酸として、トリグリセリドの形態で、リン脂質の形態で、または上記一以上の混合物として提供されてもよい。本発明の組成物は、腸の炎症性疾患の発症を抑制するため、好ましくはリン脂質形態のAA及びDHAの少なくとも一方を含むことが好ましい。本発明の組成物は、全脂肪1g当たり、0.1〜5mgのリン脂質由来のAA及び全脂肪1g当たり、0.1〜5mgのリン脂質由来のDHAを含むことが好ましい。好ましくは、AAおよび/またはDHAは、少なくとも一部がホスファチジルコリン(PC)および/またはホスファチジルエタノールアミン(PE)の形態で存在し、例えば、PEおよび/またはPCを含むAAおよび/またはDHAがある。
【0033】
単不飽和脂肪酸
本発明の栄養組成物はまた、十分な栄養を提供するために、オメガ−9(n−9)脂肪酸(好ましくは、オレイン酸、18:1)を含むことが好ましい。好ましくは、本発明の組成物は、全脂肪酸の重量に対して、少なくとも15wt%のn−9脂肪酸を提供し、より好ましくは少なくとも25wt%である。n−9脂肪酸の含量は、全脂肪酸の重量に対して、80wt%未満であることが好ましい。十分な栄養を提供するために、本発明の組成物は、飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸の重量比が2〜5であることが好ましい。単飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の重量比が0.5〜2であることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、全脂肪酸に対して、5〜25wt%の多価不飽和脂肪酸を含み、好ましくは10〜20wt%である。
【0035】
本発明の組成物は、ステアリドン酸(C18:4n3)を含ませることによってさらに改善されうる。本組成物は、好ましくは、全脂肪酸に対して、0.05〜2wt%のステアリドン酸を含み、より好ましくは0.1〜1wt%である。
【0036】
オリゴ糖
本発明の組成物は、乾燥重量100gの組成物当たり、2〜12gの重合度(DP)が2〜100の難消化性オリゴ糖を含み、好ましくは3〜8gであり、より好ましくは5〜7.5gである。粉末を液体に再構成し、液状調乳を乳児に投与すると、これらの量の難消化性オリゴ糖は、腸に不快感を与えることなく所望の効果を奏する。適当な難消化性オリゴ糖は、ヒトの上部消化管(小腸及び胃)中に存在する酸または消化酵素の作用によって腸では消化されないまたは一部のみが消化されるが、ヒトの腸内細菌叢によって発酵可能である。オリゴ糖は水溶性であることが好ましい(1リットルの水当たり、1gオリゴ糖の溶解度を超える)。存在するオリゴ糖の平均DPは、好ましくは40未満であり、より好ましくは20未満である。必要であれば、本発明の組成物は、DPが2〜60の、より好ましくはDPが2〜10の2〜12g(即ち、DPが2、3、4、5、6、7、8、9及び10であるこれらのオリゴ糖の重量の合計)のオリゴ糖を含む。
【0037】
さらなる実施形態によると、本発明の組成物の少なくとも一のオリゴ糖は、イヌリン、フルクトオリゴ糖、難消化性デキストリン、ガラクトオリゴ糖(トランスガラクトオリゴ糖(transgalactooligosaccharide)を含む)、キシロオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、グルコオリゴ糖、マンノオリゴ糖、ラクト−N−ネオテトラオース、フコオリゴ糖(少なくとも一のフコースサッカリド単位を含む)、酸性オリゴ糖(下記参照、例えば、ペクチン加水分解物等のウロン酸オリゴ糖)およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0038】
好ましくは、本発明の組成物は、イヌリン及びフルクトオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも一種ならびにガラクトオリゴ糖(トランスガラクトオリゴ糖を含む)及びペクチン加水分解物からなる群より選択される少なくとも一種を含む。特に好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、2〜12gの、DPが2〜10のオリゴ糖ならびにβ−結合したガラクトースおよびグルコースサッカリド、より好ましくはトランスガラクトオリゴ糖(即ち、[gal]−glu、この際、nは2〜10である)を含む。特に好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、トランスガラクトオリゴ糖(即ち、[gal]−glu、この際、nは2〜10である)、ペクチン加水分解物ならびにフルクトオリゴ糖及びイヌリンからなる群より選択される少なくとも一種を含む。本発明のオリゴ糖はまた、動物ミルク由来のオリゴ糖、動物ミルク由来のオリゴ糖の混合物またはフコシル化オリゴ糖(少なくとも一のフコースサッカリド単位を含むオリゴ糖)であってもよい。
【0039】
結腸の全域にわたって腸の成熟のさらなる改善を目的として、好ましくは本発明の組成物における少なくとも10wt%のオリゴ糖は、2〜5のDP(即ち、2、3、4および/または5)を有し、および少なくとも5wt%が10〜100のDPを有する。回腸ならびに結腸の近位及び中位にわたって働くと考えられ、さらに所望の効果を達成するのに組成物中に含ませる必要のあるオリゴ糖の重量パーセントが減少するため、好ましくは、少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも75wt%のオリゴ糖が2〜10のDP(即ち、2、3、4、5、6、7、8、9および/または10)を有する。
【0040】
好ましい重量比は、下記の通りである:
(DPが2〜5のオリゴ糖):(DPが6〜9のオリゴ糖);および
(DPが10〜100のオリゴ糖):(DPが6〜9のオリゴ糖)
が双方とも1超である。
【0041】
好ましくは、双方の重量比が2超であり、さらにより好ましくは5超である。
【0042】
本発明の組成物は、乾燥重量100gの組成物当たり、0.5〜10gの、DPが2〜10のガラクトオリゴ糖を含むことが好ましく、より好ましくは1〜5gである。最も良好に人乳のオリゴ糖を模倣するため、好ましいガラクトオリゴ糖はトランスガラクトオリゴ糖である。本発明は、好ましくは、乾燥重量100gの組成物当たり、0.5〜10gの、DPが10〜60のフルクト多糖を含み、より好ましくは1〜5gである。「フルクト多糖」ということばは、少なくとも10個のβ−結合したフルクトース単位の鎖を有する多糖炭水化物を意味する。
【0043】
酸性オリゴ糖
バリア完全性をさらに改善するために、本発明の組成物は、DPが2〜100、好ましくは2〜60の酸性オリゴ糖を含むことが好ましい。酸または酸性オリゴ糖ということばは、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル化カルボン酸、硫酸基およびリン酸基からなる群より選択される少なくとも一の酸基を有するオリゴ糖を意味する。酸性オリゴ糖は、好ましくは、ウロン酸単位(即ち、ウロン酸ポリマー)を含み、より好ましくはガラクトウロン酸単位を含む。本発明の組成物は、好ましくは、乾燥重量100gの本発明の組成物当たり、0.1〜10gの酸性オリゴ糖を含み、より好ましくは乾燥重量100g当たり、1〜6gである。
【0044】
【化1】

【0045】
この際、Rは、好ましくは、水素、ヒドロキシまたは酸基からなる群より選択され、好ましくはヒドロキシ基であり;および
R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される少なくとも一は、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル化カルボン酸、硫酸基およびリン酸基を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わす。好ましくは、R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される一は、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコロイルノイラミン酸、遊離もしくはエステル化カルボン酸、硫酸基またはリン酸基を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わす。さらにより好ましくは、R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される一は、遊離またはエステル化カルボン酸を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わし;さらに
nは、整数であり、いずれのヘキソース単位であってもよい、ヘキソース単位の数(また、下記重合度をも参照)を意味する。適切には、nは1〜5000の整数である。好ましくは、ヘキソース単位は、ウロン酸単位である。
【0046】
最も好ましくは、R1、R2およびR3は、ヒドロキシを表わし、R4は、水素を表わし、R5は、カルボン酸を表わし、nは、1〜250、好ましくは1〜10の数であり、ヘキソース単位は、ガラクトウロン酸である。
【0047】
本発明の方法に使用される好ましい酸性オリゴ糖の検出、測定および分析は、酸性オリゴ糖に関連する本願出願人による先の特許出願である、WO 0/160378に記載されている。
【0048】
好ましくは、酸性オリゴ糖は、1個、好ましくは2個の、末端ウロン酸単位を有し、この際、末端ウロン酸単位は遊離していてもあるいはエステル化されていてもよい。好ましくは、末端ウロン酸単位は、ガラクツロン酸、グルクロン酸、グルロン酸、イズロン酸、マンヌロン酸、リボウロン酸およびアルツウロン酸からなる群より選択される。これらの単位は、遊離していてもあるいはエステル化されていてもよい。さらにより好ましい実施形態においては、末端ヘキソース単位は二重結合を有し、この際、二重結合は末端ヘキソース単位のC4及びC5位置の間に位置することが好ましい。好ましくは、末端ヘキソース単位の一方は二重結合を有する。末端ヘキソース(例えば、ウロン酸)は下記構造IIによる構造を有することが好ましい:
【0049】
【化2】

【0050】
この際、Rは、好ましくは、水素、ヒドロキシまたは酸基からなる群より選択され、好ましくはヒドロキシ基(上記参照)であり;および
R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される少なくとも一は、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル化カルボン酸、硫酸基およびリン酸基を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わす。好ましくは、R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される一は、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル化カルボン酸、硫酸基およびリン酸基を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わす。さらにより好ましくは、R2、R3、R4及びR5からなる群より選択される一は、遊離またはエステル化カルボン酸を表わし、残りのR2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシおよび/または水素を表わし;ならびに、nは、整数であり、いずれのヘキソース単位であってもよい、ヘキソース単位の数(また、下記重合度をも参照)を意味する。適切には、nは1〜5000の整数であり、ヘキソース単位の数を表わし、当該ヘキソースは好ましくはウロン酸であり、さらにより好ましくはガラクトウロン酸単位である。これらの単位のカルボン酸基は、遊離していてもあるいは(一部が)エステル化されていてもよく、好ましくは少なくとも一部がメチル化している。
【0051】
最も好ましくは、R2及びR3がヒドロキシを表わし、R4が水素を表わし、およびR5が遊離またはエステル化されたカルボン酸を表わす。
【0052】
本発明で使用される酸性オリゴ糖は、好ましくは、ペクチン、ペクチン酸塩、アルギン酸塩、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性炭水化物、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖またはカラギーナンから調製され、より好ましくはペクチンおよび/またはアルギン酸塩から調製される。好ましくは、ペクチン加水分解物が使用される。
【0053】
ヌクレオチド
本発明の組成物はまた、乾燥重量100gの組成物当たり、5〜100mgのヌクレオチドおよび/または5〜100mgのヌクレオシドを含むことが好ましく、より好ましくは5〜50mgである。ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドは、さらに免疫系を刺激し、本発明の組成物の他の成分と相乗的に作用する。
【0054】
亜鉛
亜鉛は、成長および免疫反応の発達に必須の微量栄養素である。亜鉛が欠乏すると、全身の免疫機能および感染に対する耐性が損なわれる。ゆえに、本発明の組成物は、乾燥重量100gの本発明の組成物当たり、2〜100mg、さらにより好ましくは、乾燥重量100gの本発明の組成物当たり、少なくとも4〜25mg、の量の亜鉛を含むことが好ましい。亜鉛の重量は、亜鉛元素として算出される。
【0055】
液体
本発明の組成物は、粉末もしくは液体形態または錠剤形態であることが好ましく、この際、錠剤は5〜25gの重量を有する。好ましくは、本発明の組成物は、保存寿命が延びるため、粉末形態で提供される。本発明の組成物は、液状で経口投与されることが好ましい。本発明の組成物を投与する前に、液体、好ましくは水と混合されることが好ましい。液体組成物は35〜40℃(好ましくは、約37℃)の温度を保ちつつ投与されることが好ましいので、液状調乳は、下記によって調製されることが好ましい:
方法a:1〜10:1の水:組成物の重量比で、30℃未満の温度の水および請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を混合し;さらに段階a)で得られた混合物を35〜50℃の温度に加熱する;または
方法b:1〜10:1の水:組成物の重量比で、60℃未満の温度の水および請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を混合し;さらに段階a)で得られた混合物を35〜40℃の温度にまで冷却する。方法a)の方が粉末から液状調乳の調製には適しており、一方で、方法b)の方が錠剤から液状調乳を調製するには適している。
【0056】
便秘(例えば、硬い便、不十分な便容積、下痢)は、液状食物を摂取する多くの幼児や病気の患者には主だった問題である。便の問題は、50〜500mOsm/kg、より好ましくは100〜400mOsm/kg、最も好ましくは220〜300mOsm/kgの浸透圧を有する、液状の本発明の組成物を投与することによって、抑えられる可能性があることが判明した。
【0057】
上記下痢の問題を考慮すると、液状食物は、顕著な腸へのストレスを引き起こすので、過剰なカロリー密度を持たないこともまた重要である。しかしながら、調乳は、乳児に食物を与えるのに十分なカロリーを供給する必要がある。ゆえに、液状食物は、0.5〜0.9kcal/ml、好ましくは0.6〜0.8kcal/mlのカロリー密度を有することが好ましい。
【0058】
用途
本発明の組成物は、0〜2歳の乳児に投与されることが好ましい。本発明の組成物はまた、早産児(37週の妊娠期間前に生まれた乳児)の栄養必要量を提供する方法に好ましく使用されうる。好ましい実施形態においては、本発明は、0〜30日齢の乳児に食物を与える方法を提供する。
【0059】
本発明の組成物は、構成される免疫系および/または腸バリアの未熟が病気の経過の発達の根底にある病気を治療するまたは予防するのに好ましく使用できる。ゆえに、本発明の組成物は、特に0〜2歳の乳児の、下痢またはアレルギーを治療するまたは予防するのに好ましく使用できる。本発明の組成物は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎および/または食物アレルギーの治療および/または予防に特に適切である。
【0060】
本発明の組成物は、包装粉末または包装された食事の与え易い調乳として提供されることが好ましい。製品の腐敗を防止するために、食事の与え易い調乳の包装サイズは、一人分を超えない、例えば、500ml以下であることが好ましく;さらに、粉末形態の本発明の組成物の包装サイズは、250回分以下であることが好ましい。粉末での適当な包装サイズは、2000g以下、好ましくは1000g以下である。
【0061】
上記または下記の目的の一以上に従った製品の使用に関して消費者に陰に陽に示唆するラベルのついた包装製品は、本発明に包含される。このようなラベルは、例えば、「腸および/または免疫系の成熟化を刺激する」、「アレルギー反応を低減する」、「少ないストレス」、「改善された耐性」または「低い感受性」または同様の表現のような表現を含んでもよい。
【0062】
したがって、炎症疾患、下痢、湿疹および/またはアトピー性皮膚炎の治療および/または予防を目的として哺乳動物に投与される粉ミルク食品もしくは薬剤の製造を目的とする本明細書に記載される組成物の使用が本発明の対象である。
【0063】
さらに、哺乳動物および特にヒト乳児に経腸管的にまたは経口的に本組成物を投与することを含む、炎症疾患、下痢、湿疹および/またはアトピー性皮膚炎の治療および/または予防方法に使用される薬剤の製造を目的とする本明細書に記載される組成物の使用が本発明の対象である。
【0064】
本発明を、下記実施例によってさらに説明する。
【0065】
実施例1:乳児用栄養
液状乳児用栄養は、最終産物が100mlになるように、13.9gの粉末を水と混合することによって調製され、この際、当該液状製品は、100ml当たり、下記を含む:
【0066】
【表1】

【0067】
本組成物は、さらに、コリン(6mg/100ml)及びタウリン(6.3mg/100ml);ミネラル及び微量元素(2mg亜鉛/100mlを含む)ならびに乳児用調乳に関する国際ガイドラインに従った量のビタミン類を含む。
【0068】
実施例2:
実施例1に記載の包装された乳児用調乳。この際、包装には、調乳がアレルギーを予防または治療するのに適切に使用できることを示すラベルがついている。
【0069】
実施例3:
実験準備
必要であれば中性オリゴ糖を合わせた、酸性オリゴ糖を含む、食べ物の効果を、遅延型過敏症(DTH)応答について試験した。ここで、遅延型過敏症(DTH)応答は、Th1免疫応答のパラメーターであり、局所的な抗原チャレンジ後の耳の腫れの増加を測定することによって測定される。
【0070】
使用される酸性オリゴ糖(AcOl)は、平均DPが2〜10であり、WO 02/42484(実施例1参照)に記載される方法によって得られた。食べ物の総重量に対して1wt%、2.5wt%、5wt%及び10%wt% AcOlを含む食べ物を試験した。ガラクトオリゴ糖(GOS)(Vivinal−GOSTM(Borculo Domo Ingredients,Netherlands)及びフルクトオリゴ糖(FOS)(Raftiline HPTM,Orafti,Tienen,Belgium)を含む中性オリゴ糖混合物(GF)を、GOS:FOSの重量比が9:1で使用した。食べ物の総重量に対して1、2.5及び5wt%のGFを含む食べ物を試験した。酸性及び中性オリゴ糖(GF及びAcOl)の組合わせの効果を、食べ物の総重量に対して1wt%GF及び1wt%AcOlを含む食べ物で試験した。
【0071】
すべてのデータは、コントロール値に対する百分率、即ち、(オリゴ糖を含まない)コントロールの食べ物を摂取した群と比較した、オリゴ糖を補足した群の相対値として示す。
【0072】
動物および食べ物
メスの、6週齢のC57Bl/6マウス(Harlan Nederland BV,Horst,the Netherlands)を、規則的に12時間毎に明るく/暗くしたレジメでグループ毎に飼育した。グループの大きさは、1群10匹の動物であり、ネガティブコントロール群は3匹の動物であった。動物に、半合成食(Research Diet Services,Wijk bij Duurstede,the Netherlands)を与えた。コントロール食は、AIN93G仕様(Reeves et al(1993) Development and Testing of the AIN93 purified diets for rodents: results on growth kidney calcification and bone mineralisation in rats and mice. J Nutrition 123(11):1923−31)、で作製し、オリゴ糖を補足した食事は、これらの仕様に基づいた。補足食の炭水化物含量は、重量に基づいてオリゴ糖を全炭水化物に換算することによって一定に維持した。別の炭水化物成分は、食事中の各正常値になるように置換した。通常の食事の炭水化物は、コーンスターチ(全重量の40%)、デキストリン化コーンスターチ(13.2%)、スクロース(10%)及びセルロース(5%)から構成される。
【0073】
ワクチン接種プロトコル
ワクチン接種を、新しい家と餌に適応させてから2〜4週間後に開始した。0日目に、ワクチン接種前に、血液サンプルを集めた。1日目に、1回目のワクチン接種を皮下に投与した。3週間後、血液サンプルを集め(21日目)、追加ワクチン接種を行なった(22日目)。追加の注射から9日目(31日目)に、基底耳の厚みを、Digimatic外側マクロメーター(Mitutoyo,Veenendaal,the Netherlands)を用いて測定し、遅延型過敏症(DTH)応答を、マウスの耳介のi.c.に(皮内に)抗原溶液を注射することによって誘導した。24時間後(32日目)に、DTH応答を測定し、血液サンプルを採取し、マウスを剖検した。脾臓を単離し、ex vivo再刺激用に調製した。
【0074】
ワクチン接種液は、抗原溶液及びStimuneアジュバント(Specol,Cedi−diagnostics BV,Lelystad,the Netherlands)の1:1混合液の100μlのi.c.用(皮内用)注射液から構成された。抗原溶液は、Influvac 2002/2003(Solvay Pharmaceuticals,Weesp,the Netherlands)のPBSによる1:100希釈液であった。Influvacは、3種の異なるインフルエンザ株の3×30μg/mlのヘマグルチニンを含む、3価タンパク質ワクチンである。
【0075】
DTH応答に関しては、マウスの双方の耳に、25μlの透析したInfluvacをDTHチャレンジとして皮内注射した。
【0076】
細胞培養物
脾細胞を、細かいメッシュの細胞ストレーナー(Becton Dickinson,Erembodegem,Belgium)を用いて脾臓から単離した。赤血球を、氷上で5分間インキュベーションすることによって溶解した。フェノールレッドを含まない培養液で洗浄した後、細胞を計測し(Coulter Counter,Beckman Coulter,the Netherlands)、氷上に保持した。培養物を、0.1μg/mlの透析したInfluvacを刺激剤として用いて誘導した。細胞を、1ウェル当たり1×10細胞で96ウェルの培養プレートに播種した。培養液は、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むHEPES緩衝液及び2mM L−グルタミン(Invitrogen,Merelbeke,Belgium)を含むRPMI−1640から構成された。培養物を、5% COで37℃で5日間インキュベートした。その後、上清を集めて、分析するまでは−80℃で冷凍した。細胞の増殖を、最後の18時間、0.4μCu/ウェルで培養物に添加した、H−チミジンの取り込みによって並列培養物で測定した。5日後、細胞をFiltermateハーベスター(Perkin Elmer,Zaventem,Belgium)を用いて集め、Micro−Betaカウンター(Perkin Elmer,Zaventem,Belgium)で計測した。放射性崩壊を、1ウェル当たり1分間測定し、1分当たりの計測数(cpm)を増殖速度の指標として記録した。
【0077】
サイトカインを、Influvacで刺激した培養物の上清において分析した。IL−2、IL−5、IL−10及びIFN−ガンマを、上記サイトカイン用のカスタム混合ビーズセット(custom mixed beadset)を有するBio−Plexシステム(Bio−Rad,Veenendaal,the Netherlands)を用いて測定した。サイトカインを、製造社の仕様に従って測定した。IL−4を、製造社の仕様に従って、Pharmingen OptEIAマウスIL−4キット(Becton Dickinson,Erembodegem,Belgium)を用いてELISAによって測定した。
【0078】
結果
DTH応答酸性オリゴ糖
1wt%、2.5wt%及び5wt% AcOlの量を含む食べ物は、DTH応答の統計学的に有意な増加を誘導し、用量依存的な増加を示した(表1参照)。観察された効果は、本方法に酸性オリゴ糖を使用することが好ましいことを示す。
【0079】
【表2】

【0080】
DTH応答酸性及び中性オリゴ糖
1wt%GF、2.5wt%GFの組合わせならびに1wt%GF及び1wt%AcOlの混合物は、DTHの統計学的に有意な増加を誘導した(表2参照)。観察された結果は、本発明の方法に、難消化性オリゴ糖、特に酸性及び中性オリゴ糖の組合わせが好ましく使用されることを示す。
【0081】
【表3】

【0082】
酸性オリゴ糖のInfluvac特異的増殖
2.5wt%及び5wt%酸性オリゴ糖(AcOl)を含む食べ物を投与すると、ex vivoでのInfluvacに特異的な増殖に対して有意な低減効果を誘導した(表3参照)。観察された効果は、本発明の方法に酸性オリゴ糖が好ましく使用されることを示す。
【0083】
酸性及び中性オリゴ糖の組合わせのInfluvac特異的増殖
1wt%GF及び1wt%AcOlの組み合わせを投与すると、抗原に特異的な増殖に対して有意な低減効果を誘導した(表3参照)。この効果は酸性または中性オリゴ糖単独を含む食べ物によるDTH応答に比して有意に向上するため、これらの結果は、酸性及び中性オリゴ糖を投与することによって相乗効果が得られることを示す。観察された効果は、本発明の方法に酸性および中性オリゴ糖を組合わせて使用することが好ましいことを示す。増殖が抑制されることから、Th2応答の低減、および本発明の方法のTh1/Th2バランス効果が示される。
【0084】
【表4】

【0085】
Th1/Th2バランス:酸性オリゴ糖の投与後のサイトカインプロフィール
サイトカインプロフィールを、Influvacに特異的な脾細胞の培養上清で測定した。データは、ワクチン接種したコントロール群(即ち、オリゴ糖を投与しない)の値に対する百分率として表わす。コントロールに比べて、2.5wt%及び5wt%AcOlを含む食べ物は、Th2−関連サイトカインであるIL−4、IL−5及びIL−10を減少させるが、Th1−関連サイトカインであるIL−2は増加し、IFN−γは有意には低下しなかった(表4参照)。これらの結果は、酸性オリゴ糖のTh1/Th2バランス効果を示すものであり、また、本発明の方法、例えば、Th1免疫力が比較的低い病気の治療および/または予防方法に酸性オリゴ糖が好ましく使用されることを示す。
【0086】
Th1/Th2バランス:酸性及び中性オリゴ糖の投与後のサイトカインプロフィール
コントロールに比べて、1wt%GT及び1wt%AcOlの組み合わせを投与すると、Th2−関連サイトカインであるIL−4、IL−5及びIL−10は減少するが、Th1−関連サイトカインであるIL−2及びIFN−γは低下しなかった(表4参照、ここで、データは、ワクチン接種したコントロール群(即ち、オリゴ糖を投与しない)の値に対する百分率として表わす)。これらの結果は、酸性及び中性オリゴ糖の組合わせのTh1/Th2バランス効果を示すものであり、また、本発明の方法、例えば、Th1免疫力が比較的低い病気の治療および/または予防方法に酸性オリゴ糖が好ましく使用されることを示す。特に、IL−4/IFN比は、Th1/Th2バランスに反映する。換言すると、IL−4/IFN比が低いことは、Th1の刺激および/またはTh2の阻害を示し、いずれにしても、本発明に係るオリゴ糖のTh1−Th2バランス効果が示される。
【0087】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含みかつホエーおよびカゼインを含む栄養または薬剤組成物であって、
ホエーに対するカゼインの重量比が1:1〜1:2.4であり、さらに
前記組成物が、
a)100gのタンパク質当たり、少なくとも3gのアルギニン;
b)全脂肪酸に対して、少なくとも10wt%のリノール酸;
c)全脂肪酸に対して、少なくとも1wt%のα−リノレン酸;
d)全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量の少なくとも一の長鎖多価不飽和脂肪酸、この際、前記長鎖多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される;
e)全脂肪酸に対して、5〜25wt%の少なくとも一の多価不飽和脂肪酸;および
f)乾燥重量100gの組成物当たり、2〜12gの重合度が2〜100の難消化性オリゴ糖
を含むことを特徴とする、栄養または薬剤組成物。
【請求項2】
トランスガラクトオリゴ糖、ペクチン加水分解物ならびにフルクトオリゴ糖およびイヌリンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、乾燥重量100gの組成物当たり、2〜100mgの亜鉛を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記タンパク質成分は5〜15en%を占め;前記脂肪成分は30〜60en%を占め;さらに前記炭水化物成分は25〜75en%を占めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、乾燥重量100gの組成物当たり、5〜100mgのヌクレオチドおよび/または5〜100mgのヌクレオシドをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、100gのタンパク質成分当たり、2〜6gのトレオニンを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量のドコサヘキサエン酸および全脂肪酸に対して、0.1wt%を超える量のアラキドン酸を含み、アラキドン酸/ドコサヘキサエン酸の重量比が0.25〜25であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
特殊調製粉乳として配合されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
薬剤として使用される請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
炎症疾患、下痢、湿疹および/またはアトピー性皮膚炎の治療および/または予防を目的として哺乳動物に投与される粉ミルク食品もしくは薬剤の製造を目的とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
前記炎症疾患がアレルギーである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物は経腸管的にまたは経口的に投与される、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
前記哺乳動物はヒト乳児である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−510689(P2008−510689A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526399(P2007−526399)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008999
【国際公開番号】WO2006/018314
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(502191066)ナムローゼ フェンノートシャップ ヌトリシア (3)
【Fターム(参考)】