説明

免疫療法

酸化されたLDLに対する免疫療法の使用は、個体に既に存在するアテローム性動脈硬化症の病変の退縮を誘導する。前記免疫療法は、酸化されたLDL上に存在するエピトープに結合する退縮を利用する受動的免疫療法であるか、又は酸化されたLDL上に存在するエピトープに対する免疫応答を誘導するためのワクチン組成物を利用する能動的免疫療法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管疾患の免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症は、とりわけ、喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、増大された血漿低密度リポタンパク質(LDL)及びトリグリセリド、フィブリノゲン過剰血症、並びに高血糖症を含む生化学的なリスクファクターを示す対象において好適に発症する多因子性疾患である。アテローム性動脈硬化症は、大又は中程度の大きさの動脈の最内層(最も内部)の肥厚化を生じさせる慢性疾患である。アテローム性動脈硬化症は、血流を低減させ、影響を受けた血管によって供給を受ける器官において虚血及び組織破壊を生じさせる。アテローム性動脈硬化症の病変は、ヒトにおいて数十年に亘って発達し、冠状脈及び大脳の虚血並びに血栓塞栓症及び大脳梗塞のような合併症を生じさせる。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、心筋梗塞、脳卒中、及び末梢動脈症を含む心臓血管疾患の主要な原因である。心臓血管疾患は、先進国における罹患率及び死亡率の主要な原因であり、新興国では徐々に発展しており、アテローム性環状動脈硬化症が主要な基礎をなす症状である。現在におけるアテローム性動脈硬化症の治療は、疾患の発症及び合併症の予防において完全に効果的であるわけではない。
【0004】
前記疾患は、血管の細胞外マトリックスにおけるリポタンパク質、主にLDLの蓄積によって誘導される。これらのLDL粒子は凝集し、酸化的修飾を受ける。酸化されたLDLは毒性であり、血管損傷を生じさせる。アテローム性動脈硬化症は、多くの点において、炎症及び線維症を含む損傷に対する応答を表わす。
【0005】
コレステロールの高い血漿中レベル、特にLDLの高い血漿中レベルは、アテローム性動脈硬化症の発症のための駆動力として一般的に認識されているが、高レベルの高密度リポタンパク質(HDL)はアテローム性動脈硬化症の発症を妨害する。そのため、HDLは善玉コレステロールと称されているが、LDLは悪玉コレステロールと称されている。簡単には、LDLはコレステロールを組織に輸送するが、HDLはコレステロールを組織から吸収し、肝臓へと輸送して、分解させる。LDLを低減し、且つ、HDLを増大する治療戦略は、アテローム性動脈硬化症の治療のために開発段階である。1つの特定の興味深く有望な戦略は、HDLの変異体、いわゆるApoA−1Milanoを必要とする。このHDL変異体は、組織からのコレステロールの輸送において非常に有効であり、動物実験(Shah et al., 1998)及び臨床試験(Nissen et al,2003)の結果は、アテローム斑の負荷の有意な低減を生じさせることを示している。
【0006】
WO 02/080954の背景に要約されているように、Palinski et al(1989)は、ヒトにおける酸化されたLDLに対する循環自己抗体を同定した。この知見は、アテローム性動脈硬化症が、酸化されたリポタンパク質に対する免疫応答によって生じる自己免疫疾患である可能性を示唆している。この時、複数の研究室が、酸化されたLDLに対する抗体力価と心臓血管疾患の間の関連についての研究を開始した。
【0007】
酸化されたLDLに対する抗体は、心臓血管疾患を有する患者並びに健康な対照において存在することが認められた。この事によって、研究者達は、自己の酸化されたLDLに対して動物を免疫することによって、血管壁における酸化されたLDLに対する自己免疫応答が、アテローム性動脈硬化症の発症において役割を担っているかどうかを調べることとなった。この手法の背景にある考えは、古典的な免疫技術を用いて酸化されたLDLに対する自己免疫応答を強化する場合には、血管の炎症及びアテローム性動脈硬化症の進行を生じさせるであろうということである。この仮説について試験するために、相同的な酸化されたLDLを用いてウサギを免疫し、次いで16週に亘って高コレステロールの食餌を動物に与えることによってアテローム性動脈硬化症が誘導された(Ameli et al,1996;Freigang et al,1998)。しかしながら、本来の仮説とは対照的に、酸化されたLDLを用いた免疫は、約50%でアテローム性動脈硬化症の発症を低減する保護効果を有していた。同様の結果が、高コレステロールの食餌を血管バルーン損傷と組み合わせて、更に攻撃的な斑の発生を生じさせた後続の研究においても得られた(Nilsson et al,1997)。まとめると、利用可能なデータは、アテローム性動脈硬化症の発症に対して保護する免疫応答が存在し、その応答は酸化されたLDLに対する自己免疫を必要とすることを示唆していた。
【0008】
これらの知見は、アテローム性動脈硬化症の治療のための免疫療法又は「ワクチン」を開発し得ることを示唆している。これを行う1つの手法は、例えば銅に曝露することによって酸化した後に、自己のLDLを用いて固体を免疫することであろう。
【0009】
Palinski et al,(1995)及びGeorge et al,(1998)は、酸化されたLDLに対する免疫がアテローム性動脈硬化症を低減することを示している。同様に、Zhou et al,(2001)は、LDLの酸化された形態に見出されたエピトープを用いた抗体反応が、動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化症の発症に対する保護を行うことを示した。
【0010】
WO 02/080954は、アポリポタンパク質B−100(ApoB−100)に由来するあるペプチドの酸化された形態を用いたアテローム性動脈硬化症を発症しやすい動物のワクチン接種は、アテローム性動脈硬化症の発症から動物を保護することを報告している。過去の実験は、LDL粒子に存在する酸化されたエピトープに結合する抗体(Schipou et al,2004)が、動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化症の病変の発生から保護することを示している。更に、酸化されたLDLに結合する抗体の放射標識した形態が、実験動物におけるアテローム性動脈硬化症の病変の放射免疫検出に使用されてもいる。125ヨウ素標識抗MDAリジンエピトープ抗体を使用して、マウス及びウサギにおける斑を検出し、注射した抗体は大動脈中の斑に局在することが認められた。この事は、酸化されたLDLに対する免疫応答が保護効果を有する可能性がある事を示す。
【0011】
また、ヒトApoB−100に由来するMDA修飾ペプチドに対して産生した組換えヒト抗体は、適当な動物モデルにおける斑形成を有意に阻害する事を示した(Schiopu et al,(2004);WO 2004/030607)。斑形成に対するこの効果について基礎を成すメカニズムは未知であるが、マクロファージ活性化及び炎症に対する効果は示唆された(Schiopu et al,2004)。酸化されたLDLはマクロファージを活性化して、続いてアテローム性動脈硬化症を進行させる炎症過程の促進を生じさせることが既知である。しかしながら、酸化されたLDLに対する免疫応答又は酸化されたLDLに対して反応性の予め作られた抗体の投与が、既に存在するアテローム性動脈硬化症の病変の退縮を生じさせる可能性がある事を示唆する実験的な証拠は存在せず、予想もされていない。
【0012】
過去の研究は、ApoB−100由来の酸化されたペプチドに対する抗体並びにホスファチジルコリンを含む他のLDLエピトープに対する抗体が、実験動物においてアテローム性動脈硬化症の病変の発生を妨げ得ることも示している(2004/030607;US6,716,410)。天然の抗oxLDL抗体を含有するヒトイムノグロブリンの注射は、ApoE欠損マウスにおいてアテローム性動脈硬化症を低減する(Nicoletti et al,1998)。
【特許文献1】WO 02/080954
【特許文献2】WO 02/080954
【特許文献3】WO 2004/030607
【特許文献4】US6,716,410
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【非特許文献42】Melo LG et al, (2004) Gene and cell-based therapies for heart disease. FASEB J. 18(6): 648-63.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者が認識する限りでは、これらの文献のいずれの著者も、酸化されたLDLに対する抗体が、アテローム性動脈硬化症の病変の退縮を生じさせる可能性があることを理解しておらず、その様な抗体が、アテローム斑の負荷の低減のためにヒトの患者において使用され得ることを示唆もしていない。
【0014】
驚くべきことに、そして予期されずに、本発明者は、酸化されたLDLエピトープに対する抗体が斑形成を阻害するだけでなく、既に形成されたアテローム斑の退縮の誘導をもすることを発見した。その様な抗体は、進行したアテローム性動脈硬化症の治療方法に使用して、疾患の進行を積極的に逆行させ、斑の負荷の低減を生じさせる素質を有する。
【0015】
同様に、哺乳動物における特定の抗体力価が、能動的免疫又は受動的免疫のいずれかによって達成される得るため、既に存在する斑の退縮が、その2つの手法のいずれかによって得られて良い。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かくして、本発明は、個体において既に存在するアテローム斑の退縮を誘導する、酸化されたLDLに対する免疫療法の使用に関する。
【0017】
前記免疫療法は、LDLの酸化されたエピトープの投与による能動的免疫、又はLDLの酸化されたエピトープに対して産生した抗体の投与による受動的免疫のいずれかであって良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「アテローム斑の退縮」は、アテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度の低減という意味を含む。典型的には、アテローム斑の退縮は、斑によって覆われた動脈内部の表面領域の低減を生じさせる。かくして、「アテローム斑の退縮」は、個体における斑全体の負荷の低減、並びに個体のアテローム斑の全て又は一部のサイズの低減を含む。アテローム斑の退縮は、血流の増大に寄与する血管腔の増大も生じさせる。
【0019】
固体におけるアテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度を測定する方法は、当業者に良く知られており、血管造影法、血管超音波法、コンピューター断層撮影法、及び磁気共鳴画像法を含む。
【0020】
「サイズ及び/又は量及び/又は程度を低減する」は、約1から25%の低減、例えば、約1又は2又は3又は4又は5%の低減、あるいは約6又は7又は8又は9又は10%のより大きな低減、あるいは10から25%の低減を含む。更に好ましくは、25から50%又は50から75%あるいはそれ以上の低減である。
【0021】
アテローム斑によって覆われた動脈内部の表面領域の低減は、約1から25%の低減、例えば、約1又は2又は3又は4又は5%の低減、あるいは約6又は7又は8又は9又は10%のより大きな低減、あるいは10から25%の低減を含む。更に好ましくは、25から50%又は50から75%あるいはそれ以上の低減である。
【0022】
動脈血管の有効断面積における増大は、約1から25%の低減、例えば、約1又は2又は3又は4又は5%の低減、あるいは約6又は7又は8又は9又は10%のより大きな低減、あるいは10から25%の低減を含む。更に好ましくは、25から50%又は50から75%あるいは75から100%の低減である。最も好ましくは、動脈血管の有効断面積は、2又は3又は4又は5又は10倍以上の増大である。明らかに、動脈血管の有効断面積における増大の程度は、治療前のアテローム性動脈硬化症の病変によって生じている動脈の閉塞の程度に依存する。
【0023】
逆行させられるアテローム斑は、典型的には、個体の大動脈のものであるが、大腿動脈、頚動脈、及び冠状動脈のような患者の他の動脈の部位において認められても良い。
【0024】
好ましくは、前記免疫療法は、酸化されたLDLには存在するが天然のLDLには存在しないエピトープに対するものである。その様なエピトープは、当業者に良く知られた方法及びWO 02/080954に開示された方法を用いて決定されて良い。
【0025】
更に好ましくは、前記免疫療法は、酸化されたLDLにおけるApoB−100に存在する酸化されたエピトープに対するものである。
【0026】
酸化されたLDLは、抗体によって認識され得る複数の異なるエピトープを含有する。LDLは、広範な各種の異なる化学反応によって酸化及び分解性の変化を受ける可能性がある。これらは、酸素、酵素(例えば、ミエロペルオキシダーゼ)、金属イオン(例えば、Fe2+及びCu2+)、フリーラジカル、及び他のタイプの化学的ストレスの活性によって生じる各種のタイプの修飾によって生じる反応を含む。
【0027】
前記酸化されたエピトープの幾つかは、LDLのタンパク質部分上に認められるが(Yang et al,2001)、他のものはLDL粒子中に存在する脂質の修飾である。酸化修飾され、且つ、生物学的に活性な多数のリン脂質が形成され得る(Heery et al,1995;Friedman et al,2002;Watson et al,1999)。ポリ不飽和脂肪酸は、脂肪酸ヒドロ過酸化物に変換され、マロンジアルデヒド及び4−ヒドロキシノニナールのような非常に反応性の生成物を即時に形成する(Smiley et al,1991)。これらのタイプの中間体生成物は、続いて、LDLのApoB−100タンパク質中のリジンと、共有結合性のシッフ塩基(covalent Schiff base)及びマイケルタイプの生成物(Michael−type product)を形成する。反応性アルデヒドは、ホスファチジルコリン部分においてエステル結合を介して結合した脂肪酸において認められても良い(Witztum & Verliner,1998)。頻繁に認められるのはリン脂質である1−パルミトイル−2−アラキドノイルsn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)(sn−2酸化アラキドン酸の炭素においてアルデヒドを生じる末端付近の酸化生成物)であり、POVPC(1−パルミトイル−2−(5−オキソ)バレロイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン)を生じる。POVPCはリジンと反応することができ、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンのようなアミン含有リン脂質とも反応し得る。最終的な結果物は、各種の酸化脂質−タンパク質及び酸化脂質−脂質付加物である。これらの酸化の幾つかは、分泌性ホスホリパーゼのような酵素によって促進される(Leitinger et al,1999)。HOCLの付加及びニトロ化のような他の酵素形成変化は、ミエロペルオキシダーゼによって成し遂げられる(Carr et al,2000)。全てのネオエピトープは免疫原性であり、生物学的に活性であると解されている(McIntyre et al,1999;Esterbauer et al,1991)。LDLの酸化修飾に由来するが、それ自体は酸化されていない潜在的エピトープ、例えば、タンパク質の断片及びホスホリルコリンは、酸化されたLDL粒子の特徴であり、その様なエピトープは、免疫療法によって標的とされ得る。
【0028】
最近、本発明者は、n−CoDeR(登録商標)と称される組換え抗体断片ライブラリーから、ApoB−100由来の酸化されたペプチドに対するヒト抗体を開発した(WO 02/080954)。これらのApoB−100のペプチドエピトープは、WO 02/080954の表1に挙げられており、下記の表1に記載する。開発した抗体は、動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化症の発症から保護した(Schiopu et al,2004;WO 2004/030607)。WO 2004/030607に開示した抗酸化ApoB−100抗体、特にIEI−A8、IEI−D8、IEI−E3、IEI−G8、KTT−B8、及びKTT−D6の配列は参照によって本明細書に取り込む。誤解を避けるために、WO 2004/030607及びSchiopu et al(2004)に記載された抗体の各々は、本発明において使用して良い抗体の例である。
【0029】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0030】
上記の表1に示すように、前記ペプチドは、下記の共通の特徴を有する6つカテゴリーに分類し得る。
【0031】
カテゴリーA:MDA修飾ペプチドに対する高レベルのIgG抗体を産生する断片(n=3)。
カテゴリーB:高レベルのIgM抗体を産生するが、天然ペプチドとMDA修飾ペプチドとの間の差が無い断片(n=9)。
カテゴリーC:高レベルのIgG抗体を産生するが、天然ペプチドとMDA修飾ペプチドとの間に差が無い断片(n=2)。
カテゴリーD:MDA修飾ペプチドに対する高レベルのIgG抗体を産生し、AHPプールと比較してNHPプールにおいて少なくとも2倍の抗体を産生する断片(n=5)。
カテゴリーE:MDA修飾ペプチドに対する高レベルのIgM抗体を産生し、AHPプールと比較してNHPプールにおいて少なくとも2倍の抗体を産生する断片(n=11)。
カテゴリーF:高レベルのIgG抗体を産生するが、天然のペプチドとMDA修飾ペプチドとの間に差が無く、しかしNHPプールと比較してAHPプールにおいて少なくとも2倍の抗体を産生する断片(n=7)。
【0032】
ApoB−100のペプチド断片は、タンパク質化学技術を使用して、例えば、部分的なタンパク質分解(内因性溶解(endolytically)又は外因性溶解(exolytically)のいずれか)あるいはデノボ合成によって作製されて良い。代替的に、変異体が組換え技術によって作製されて良い。遺伝子のクローニング、操作、修飾、及び発現、並びに発現したタンパク質の精製の適切な技術は当該技術分野において良く知られており、例えば、参照によって本願明細書に組み込まれるSambrook et al (2001) “Molecular Cloning, a Laboratory Manual”, 3rd edition, Sambrook et al (eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに開示されている。
【0033】
「ペプチド」は、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合によって結合している分子だけでなく、ペプチド結合が反転した分子も含む。その様なレトロ−インベルソペプチド摸倣体(retro−inverso peptidemimetic)は、例えば、Meziere et al,1997に開示されたもののような当該技術分野において既知の方法を用いて作製されて良い。この手法は、主鎖に関するが、側鎖の配向に関するものではない変化を有するスードペプチド(pseudopeptide)の作製を含む。少なくともMHCクラスIII及びTヘルパー細胞応答について、これらのスードペプチドは有用であることが示されている。レトロインベルソペプチドは、CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含有し、タンパク質溶解に対するより良好な耐性を有する。同様に、前記ペプチド結合は、アミノ酸残基のCα原子の間の間隔を保持する適当なリンカー部分が使用されることを条件としてのみ投薬されて良く;前記リンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同一の電荷分布及び実質的に同一の平面性を有する場合には特に好ましい。前記ペプチドは、外因性タンパク質溶解性の消化に対する感受性の低減を促進するように、N又はC末端において都合よくブロックされて良いことも理解される。
【0034】
かくして、本発明は、表1に記載したApoB−100の酸化されたペプチドエピトープ又はこれらのペプチドの1つ又は複数の活性断片の使用であって、能動的免疫又は受動的免疫(すなわち、これらの酸化されたエピトープに対して産生された抗体の投与)のいずれかによって既に存在するアテローム斑の退縮を誘導する酸化されたLDLに対する免疫療法のための使用を含む。
【0035】
ワクチン接種のために、ApoB−100ペプチドが酸化された形態又は酸化されていない形態のいずれかにおいて投与されて良いと解される。これは、それらがin vivoにおいて投与される際に酸化されるようであるからである。かくして、「LDLの酸化されたエピトープの投与」は、in vivoで酸化される非酸化のエピトープの投与を含む。
【0036】
誤解を避けるために、本発明において、受動的免疫のための抗体は全て、酸化されたLDLに結合する。
【0037】
表1に記載したApoB−100のペプチドエピトープの「断片」は、所定の配列を有する少なくとも6つの連続するアミノ酸を意味する。かくして、断片は、所定の配列を有する6又は7又は8又は9又は10又は11又は12又は13又は14又は15又は16又は17又は18又は19の連続するアミノ酸を含んで良い。「活性」断片は、酸化された際に、能動的免疫療法又は受動的免疫療法によって個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する抗体の産生に使用されて良いものである。表1に記載したペプチドエピトープの任意の特定の断片が規定した活性断片であるかどうかを決定するための方法は、実施例に挙げている。
【0038】
本発明の1つの態様では、前記免疫療法は、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体を個体に投与する工程を含む。
【0039】
かくして、本発明は、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体を個体に投与する工程を含む、治療の必要がある個体におけるアテローム斑の退縮を誘導するための方法を含む。
【0040】
本発明は、個体においてアテローム斑の退縮を誘導する医薬の調製における、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体の使用も含む。
【0041】
1つの実施態様では、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する抗体の投与は、前記抗体分子をコードするポリヌクレオチドを個体に投与する工程を含む。
【0042】
患者にポリヌクレオチドを投与する方法は、当業者に良く知られており、免疫リポソーム、ウイルスベクター(ワクシニア、修飾ワクシニア、及びアデノウイルスを含む)の使用及びDNAの直接送達(例えば、遺伝子銃及びエレクトロポレーションの使用)を含む。例えば、Svensson et al,1999は、心臓向性ベクター、例えば、組換えアデノ関連ウイルスベクターの心筋内注射又は冠状脈内輸液による心筋細胞への組換え遺伝子の送達によって、in vivoでマウス心筋細胞において導入遺伝市発現を生じさせることを開示している。Melo et al(2004)は、心臓病のための遺伝子及び細胞に基づいた治療法を概説している。投与の代替的な好ましい経路は、カテーテル又はステントを介するものである。ステントは、対向する動脈壁の持続的な遺伝子の溶出及び効率的な伝達のための足場を提供するため、局所的な遺伝子送達のための魅力的な代替方法を表わす。この遺伝子送達戦略は、ウイルスベクターの全身的な拡散を低減し、そのため、宿主免疫応答を低減するという潜在能力を有する。合成及び天然のステントコーティングの双方が、顕著な副作用なく持続的な遺伝子溶出を可能にする潜在能力を示している(Sharif et al,2004)。
【0043】
好ましくは、前記抗体分子をコードするポリヌクレオチドは、抗体の発現を動脈、好ましくは動脈壁に誘導する標的配列及び/又は調節配列に任意に結合される。かくして、前記ポリヌクレオチドは、患者内における特異的な抗体の産生を可能にする。適切な標的配列及び調節配列は当業者に既知である。
【0044】
細胞内でポリヌクレオチドの発現を一時的に制御することができることが望ましい可能性がある。かくして、前記ポリヌクレオチドの発現は、例えば、ポリヌクレオチドからの抗体の発現を活性化するか又はどちらかと言えば抑制する(低分子がプロモーター活性化又は抑制のいずれに作用するかに依存する)ことが望ましい際に患者に投与されて良い低分子の濃度によって制御されて良いプロモーターの制御下における直接的又は間接的(下記参照)なものである事が望ましい可能性がある。これは、発現構築物が少なくとも1週間、1、2,3、4、5、6、8ヶ月、又は1年以上の期間に亘って細胞内で安定であり、すなわち、(任意の必要な調節分子の存在下において)抗体を発現することができる場合に特に有益である。かくして、前記ポリヌクレオチドは、調節可能なプロモーターに作動可能に結合されて良い。調節可能なプロモーターの例は、以下の論文:Rivera et al (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96(15), 8657-62 (一方が誘導可能なヒト成長ホルモン(hGF)標的遺伝子をコードし、他方がラパマイシンに調節される両方向性転写因子をコードする2つの別々のアデノウイルス又はアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを使用する、経口生物学的利用能を有する薬剤であるラパマイシンによって調節);Magari et al (1997) J Clin Invest 100(11), 2865-72 (ラパマイシンによる調節);Bueler (1999) Biol Chem 380(6), 613-22 (アデノ関連ウイルスベクターのレヴュー);Bohl et al (1998) Blood 92(5), 1512-7 (アデノ関連ベクターにおけるドキシサイクリンによる調節);Abruzzese et al (1996) J Mol Med 74(7), 379-92 (誘導因子、例えば、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、細胞増殖抑制剤、放射線照射、熱ショック、及び関連する応答配列のレヴュー)に記載されているものを含む。
【0045】
好ましい実施態様では、前記抗体分子は、WO 02/080954に開示されているもの及び表1に記載したもののようなLDLの酸化されたエピトープに対して産生された抗体である。WO 02/080954に開示されているように、ペプチドは、各種の薬剤、例えば、鉄、酸素、銅、ミエロペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、次亜塩素酸への曝露によるか又はマロンジアルデヒド(MDA)修飾によって酸化され、LDLの酸化の間に生じる可能性があるアミノ酸の各種の修飾を摸倣して良い。代替的に、当該技術分野において既知の他の方法が使用されて、LDLのエピトープが酸化されて良い。
【0046】
ペプチド由来のMDA修飾ApoB−100との反応性を有するヒト抗体の産生は、WO 02/090854及びSchiopu et al(2004)に開示されている。以下に詳細に議論しているように、ヒト又はヒト様抗体は、ヒトイムノグロブリンの遺伝子座におけるトランスジェニックマウスの免疫又は例えば所望の特異性を有するマウス抗体のヒト化を含む、当該技術分野において良く知られた他の技術を用いて産生されても良い。
【0047】
「LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する」抗体は、酸化されていないLDLよりも大きなアフィニティーで抗体がLDLの酸化されたエピトープに結合することを意味する。好ましくは、前記抗体は、酸化されていないLDLより少なくとも1.5、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも50倍の大きいアフィニティーでLDLの酸化されたエピトープに結合する。更に好ましくは、前記抗体分子は、酸化されていないLDLより少なくとも100、又は少なくとも1000、又は少なくとも10000倍大きいアフィニティーでLDLの酸化されたエピトープに結合する。その様な結合は、Biacore(登録商標)システムのような当該技術分野において良く知られた方法によって測定して良い。好ましくは、前記抗体分子は、LDLの酸化されたエピトープには選択的に結合するが、酸化されていないLDLには結合しない。
【0048】
より大きなアフィニティーを有する個体が更に好ましいものであって良いが、前記抗体が少なくとも10−8Mの標的エピトープについてのアフィニティーを有する場合が好ましい。
【0049】
液性免疫の保護効果は、抗体と称される構造的に関連する分子のファミリーによって媒介されることが知られている。抗体は、抗原に結合する事によって、その生物学的活性を誘導する。抗原に対する抗体の結合は、一般的には1つの抗原に対して特異的なものであり、その結合は大抵の場合には高いアフィニティーのものである。抗体は、Bリンパ球によって生産される。血液は、多数の異なる抗体を含有し、その各々はB細胞のクローンに由来し、異なる構造及び抗原についての特異性を有する。抗体は、血漿、組織の間質性流動体、及び分泌性流動体、例えば、唾液及び粘膜表面の粘液においてBリンパ球の表面上に存在する。全ての天然の抗体は、その全体の構造において類似しており、電荷及び溶解度のような物理化学的特徴においてある程度の類似性をもたらす。全ての抗体は、各々約24キロダルトンである2つの同一の軽鎖及び各々約55から70キロダルトンの2つの同一の重鎖をという共通の核となる構造を有する。1つの軽鎖が各重鎖と結合し、2つの重鎖が互いに結合する。軽鎖及び重鎖の双方が、各々約110アミノ酸残基の長さであり、共通の球状モチーフに独立にフォールディングし、イムノグロブリン(Ig)ドメインと称される一連の相同的な繰り返し単位を含有する。2つの重鎖の結合によって形成される抗体の領域は疎水性である。抗体、特にモノクローナル抗体は、悪性の物理的又は化学的な状態に曝される際に、軽鎖が重鎖に結合する部位において開裂することが知られている。抗体は多数のシステイン残基を含有するため、それらは多数のシステイン−システインジスルフィド結合を有する。全てのIgドメインは、逆平行のポリペプチド鎖の3又は4つのストランドを有するβプリーツシートの2つの層を含有する。
【0050】
それらの全体的な類似性にもかかわらず、抗体分子は、サイズ、電荷、及び溶解度のような物理化学的特徴並びに抗原への結合における挙動に基づいて、少数の異なるクラス及びサブクラスに分類し得る。ヒトでは、抗体分子のクラスは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、各クラスのメンバーは同じアイソタイプであると称される。IgA及びIgGアイソタイプは、更にIgA1及びIgA2、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4と称されるサブタイプに更に細分される。アイソタイプ内の全ての抗体の重鎖は、大半の領域のアミノ酸配列の同一性を共有するが、他のアイソタイプ又はサブタイプに属する抗体とは異なる。IgG、IgE、及びIgDは単量体として循環するが、IgA及びIgMの分泌された形態は二量体又は五量体の各々の形態であり、J鎖によって安定化されている。幾つかのIgA分子は、単量体又は三量体として存在する。
【0051】
「抗体」又は「抗体分子」は、上述のイムノグロブリン全体のみを含むだけでなく、Fab、F(ab’)2、Fv、及びそれらの他の抗原結合部位を保持する断片のような断片を含む。同様に、抗体という用語は、一般的に、抗体の遺伝子操作した誘導体、例えば、単鎖Fv分子(scFV)及びドメイン抗体(dAb)を含む。前記用語は、酸化されたLDL又はその特定領域に結合する分子の他のランダムセレクション技術又はファージディスプレイ技術を用いて生産されて良い抗体様分子も含む。かくして、前記用語「抗体」は、天然の抗体の認識部位の一部(すなわち、エピトープ又は抗原に結合又は固着する抗体の一部)である構造、好ましくはペプチド構造を含有する全ての分子を含む。
【0052】
抗体の重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)は抗原認識にかかわっており、これは初期のプロテアーゼ消化実験によって初めて認識された事実である。更なる知見が、げっ歯類の「ヒト化」によって認められている。げっ歯類起源の可変ドメインは、結果として得られる抗体がげっ歯類の親抗体の抗原特異性を保持するように、ヒト起源の定常ドメインに融合させられて良い(Morrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855)。抗原特異性は可変ドメインによって与えられ、定常領域からは独立していることは、全て1つ又は複数の可変ドメインを含有する抗体断片の細菌による発現を含む実験から既知である。これらの分子は、Fab様分子(Better et al (1988) Science 240, 1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science 240, 1038);V及びVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して結合している単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science 242, 423; Huston et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879);並びに単離されたVドメインを含むシングルドメイン抗体(dAb)(Ward et al (1989) Nature 341, 544)を含む。特異的な結合部位を保持する抗体断片の合成に関与する技術の一般的なレヴューはWinter & Milstein (1991) Nature 349, 293-299において認められる。
【0053】
「ScFv分子」は、V及びVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して結合している分子を意味する。遺伝子操作された抗体、例えば、ScFv抗体は、参照によって本願明細書に取り込まれるJ. Huston et al, (1988) “Protein engineering of antibody binding sites: recovery of specific activity in an anti-digoxin single chain Fv analogue produced in E. coli”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, pp.5879-5883及びA. Pluckthun, (1991) “Antibody engineering; Advances from use of E. coli expression systems”, Bio/technology 9(6): 545-51に開示された技術及び手法を用いて作製されて良い。
【0054】
抗体全体ではなく抗体断片を使用する利点は数倍ある。より小さなサイズの断片は薬理学的特性の改善、例えば、より良好な標的部位への浸透を誘導し得る。抗体全体のエフェクター機能、例えば補体結合は除去される。Fab、Fv、ScFv、及びdAb抗体断片は、E.coliにおいて発現し、分泌され、かくして大量の断片の容易な生産を可能にする。
【0055】
抗体全体及びF(ab’)断片は、「二価」である。「二価」は、抗体及びF(ab’)断片が2つの抗原結合部位を有する事を意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFv、及びdAb断片は単価であり、1つの抗原結合部位のみを有する。
【0056】
抗体はモノクローナル抗体である事が好ましい。ある態様では、特に抗体が反復してヒトの患者に投与される場合には、モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体であるか又はヒト化モノクローナル抗体である事が好ましい。
【0057】
本明細書に記載したような反応性を有する適切なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、“Monoclonal Antibodies; A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988) 及び “Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Application”, SGR Hurrell (CRC Press, 1982)に開示されている技術によって調製されて良い。
【0058】
前記抗体は、例えば、特異性及び交差反応性、アイソタイプ、アフィニティー、及び血漿半減期に関連する所望の特性を備えていて良い。規定の特性を有する抗体を開発することができることは、モノクローナル抗体技術の出現で既に明らかである(Milstein and Kohler, 1975 Nature, 256: 495-7)。この技術は、同一のマウス抗体を大量に生産するマウスハイブリドーマ細胞を使用している。事実、大量の前臨床及び臨床試験が、例えば癌の治療のためにマウスモノクローナル抗体を使用して開始されている。しかしながら、前記抗体は非ヒト起源であるという事実によって、患者の免疫システムはそれらを外来物として認識し、それらに対する抗体を産生する。そのため、マウス抗体の効力及び血漿半減期は低減し、多くの場合においてアレルギー反応に由来する副作用が外来性の抗体によって生じ、治療の成功を阻害する。
【0059】
これらの問題を解決するために、特異的且つ強力な治療抗体のマウス成分を低減する複数の手法が採られている。第一の手法は、マウスの抗体可変ドメインをヒトの定常領域に移して、主にヒトである抗体を生産する、いわゆるキメラ抗体を作製する技術を含む(Neuberger et al, 1985, Nature 314: 268-70; Neuberger et al, 1998, 8th International Biotechnology Symposium Part 2, 792-799)。
【0060】
この手法の更なる改善が、抗原に接触するマウス抗体の領域である相補性決定領域(CDR)をヒトの抗体フレームワークに移すヒト化抗体の開発である。その様な抗体は殆ど完全にヒトであり、患者に投与される際に有害な抗体応答をめったに生じさせない。複数のキメラ抗体又はヒト化抗体が治療剤として登録されて、現在では各種の適応症に対して広範に使用されている(Borrebaeck & Carlsson, 2001, Curr. Opin. Pharmacol. 1: 404-408)。
【0061】
前記抗体はヒト化抗体であることが好ましい。適切な好ましい非ヒト抗体は既知の方法、例えばヒトの抗体フレームワークにマウス抗体のCDR領域を挿入することによって「ヒト化」されて良い。ヒト化抗体は、Verhoeyen et al (1988) Science, 239, 1534-1536及びKettleborough et al, (1991) Protein Engineering, l4(7), 773-783に記載された技術及び手法を用いて作製されて良い。
【0062】
完全なヒト抗体は、組換え技術を使用して生産されて良い。典型的には、数十億もの異なる抗体を含む大きなライブラリーが使用される。例えばマウス抗体のキメラ化又はヒト化を使用する過去の技術と対照的に、この技術は、特異的な抗体を産生する動物の免疫によらない。前記組換えライブラリーは、大多数の事前に作製された抗体バリアントを含み、任意の抗原に対して特異的な少なくとも1つの抗体を有する可能性がある。かくして、その様なライブラリーを使用して、所望の抗体結合特性を有する既存の抗体を同定し得る。効率的な様式でライブラリー中の良好な結合因子を検出するために、フェノタイプ(すなわち、抗体又は抗体断片)が、そのジェノタイプ(すなわちコードする遺伝子)につなげられる各種のシステムが考案されて良い。最も一般的に使用されるその様なシステムは、ディスプレイした分子をコードする遺伝情報を有する、線維状ファージ粒子の表面上のファージ被覆タンパク質との融合体として抗体断片を発現し、ディスプレイする、いわゆるファージディスプレイシステムである(McCafferty et al, 1990, Nature 348: 552-554)。特定の抗原に特異的なファージディスプレイした抗体断片は、問題の抗原に結合することによって選択されて良い。次いで、単離したファージを増幅し、選択した抗体可変ドメインをコードする遺伝子を任意に他の抗体フォーマット、例えば、全長イムノグロブリンに移し、当該技術分野において良く知られた適当なベクター及び宿主細胞を用いて大量発現させる。
【0063】
ファージ粒子上で示される抗体特異性のフォーマットは異なるものであって良い。最も一般的なフォーマットはFab(Griffiths et al, 1994. EMBO J. 13: 3245-3260)及び単鎖(scFv)(Hoogenboom et al, 1992, J Mol Biol. 227: 381-388)であり、その双方が抗体の抗原に結合する可変ドメインを含む。単鎖のフォーマットは、柔軟なリンカーを介して軽鎖可変ドメイン(VL)に結合する重鎖可変ドメイン(VH)からなる(US 4,946,778)。治療剤として使用する前に、前記抗体を可溶性のフォーマット、例えば、Fab又はScFvに移し、その様なものとして分析する。後の工程では、所望の特性を有することを同定した抗体断片を全長抗体のような他のフォーマットに移して良い。
【0064】
近年、抗体ライブラリーの産生のための新規技術が提供された(WO 98/32845; Soderlind et al (2000) Nature BioTechnol. 18:852-856)。このライブラリーに由来する抗体断片は全て、同じフレームワーク領域を有し、それらのCDRのみが異なる。フレームワーク領域は生殖細胞系列の配列であるため、前記ライブラリー又は同じ技術を使用して作製される同様のライブラリーに由来する抗体の免疫原性は、特に低いことが予測される(Soderling er al.2000)。この特性は、治療抗体にとって大きな価値があり、患者が投与された抗体に対する抗体を形成するリスクを低減し、それによって、アレルギー反応、つまり遮断抗体の発生についてのリスクを低減して、抗体の長期血漿半減期を可能にする。
【0065】
かくして、ヒトに使用しようとする治療抗体を開発する際は、現代の組換えライブラリー技術(Soderlind et al, 2001, Comb. Chem. & High Throughput Screen. 4: 409-416)は、先のハイブリドーマ技術に優先して使用される。
【0066】
WO 02/080954において同定され、表1に記載したペプチドは、アテローム斑の抗体を誘導するための治療抗体として特に関連性を有する所定の特性を有する完全なヒト抗体の産生のための抗原として使用されて良いと解される。結果として得られる完全なヒト抗体は、患者に投与された際に、任意の望ましくない免疫応答を生じないことが予想される。
【0067】
ある好ましい抗体は、ApoB−100エピトープP45(アミノ酸残基661−680)及び/又はP143(アミノ酸残基2131−2150)に結合するものを含む。この結合特異性を有する抗体は、IEI−I3(Schiopu et al 2004)及び2D03(実施例2に記載)を含む。
【0068】
抗体IEI−E3は、動物モデルにおける斑の発生を有意に阻害することが示されている(Schiopu et al,2004)。本発明者は、それがアテローム斑の退縮を誘導し得ることを示した(実施例参照)。本発明者は、異なる特異性を有する他の抗酸化LDL抗体、すなわち2D03、LDO−D4、及びKTT−B8が、治療の開始前に動物において認められた大動脈における斑領域と比較して、斑の程度を有意に低減するが、対照抗体FITC−8では低減しないことも示した。前記抗体のCDR配列を表2に記載する。抗体IEI−E3及びKTT−B8のV及びV配列は、WO 2004・030607の図3に挙げられており、参照することによって本願明細書に取り込む。
【0069】
【表2】

【0070】
本発明の他の態様では、前記免疫療法は、LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを個体に投与する工程を含む。LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープは、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導するように、酸化されたエピトープに対する免疫応答を誘導する。換言すると、LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープがワクチンとして作用して、免疫応答を生じさせ、ワクチン接種した個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する。
【0071】
かくして、本発明は、LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを個体に投与する工程を含む、必要とする個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する方法を含む。
【0072】
本発明は、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する医薬の調製におけるLDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの使用も含む。
【0073】
典型的には、前記個体は、哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、イヌ、又はネコである。更に好ましくは、前記個体はヒトの個体である。
【0074】
前記ヒトの個体は、典型的には、アテローム性動脈硬化症に関連する心臓血管疾患を有するか又はその疾患を有するリスクがある患者である。用語「アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患」は、アテローム性動脈硬化症の病変の結果である、アテローム性動脈硬化症に医学的に関連する疾患を含む。アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患は、冠状動脈疾患、心筋梗塞、及び脳卒中であって良い
【0075】
特定の患者が治療よる利益を受けることが予想される者であるかどうかは、医師によって決定されて良い。
【0076】
本発明の方法及び使用は既に存在するアテローム斑の退縮を誘導するため、本発明は、アテローム斑の存在による心臓血管疾患を発症するリスクを有する患者において、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患のリスクを低減することを含むと解される。
【0077】
アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患のリスクを有する患者は、心臓血管疾患又は機能不全を生じさせる又は悪化させ得る血中コレステロールレベルを有する者であって良い。
【0078】
前記患者は、多数のリスクファクター(肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、及び早期冠状動脈性心臓疾患の家族暦を含む)のために肝臓動脈性心臓疾患を発症するリスクを有する者;コレステロール及び/又はトリグリセリドの非常に高い血漿中濃度によって特徴付けられる家族性疾患を有する者;基礎疾患(甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、肝臓疾患、又はアルコール症)に続発しない高脂血症を有する者;LDL−コレステロールの上昇を有する者;あるいは低脂血症の食事療法(相補的な治療)中の者であって良い。
【0079】
本発明の方法及び使用は、既に存在するアテローム斑のサイズの低減を生じさせるため、本発明は、進行したアテローム性動脈硬化症又は重度のアテローム性動脈硬化症並びにアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患の進行した又は重度の形態を有する患者の治療において特に有用である。
【0080】
1つの実施態様では、本発明は、個体におけるアテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度を決定するための事前の工程を含んで良い。これは、個体がアテローム斑の負荷を低減するための治療を必要とするかどうかを評価するか、又はその様な治療の効力を評価するための基準測定を提供するか、あるいはその双方のために実施されて良い。
【0081】
かくして、本発明は、低減する必要があるアテローム斑の負荷を有する患者を同定し、続いてLDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体又はLDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを個体に投与する方法を含むと解されて良い。
【0082】
低減の必要があるアテローム斑の負荷が、斑全体の負荷のサイズ及び/又は程度によるものであって良いと解される。加えて又は代替的に、これは斑の性質、例えば、どの程度不安定であるかによるものであろう。
【0083】
本発明は、個体におけるアテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度を測定することによって治療の必要がある者として評価された個体におけるアテローム斑の退縮を誘導するための医薬の調製における、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体あるいはLDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの使用を含むと解されても良い。
【0084】
任意に、及び典型的には、本発明は、LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体又はLDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの投与後に、患者におけるアテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度を決定して、治療前に得た基準の測定値と比較した治療の効力を評価する後続の工程を含んでも良い。
【0085】
患者に投与されるLDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体の用量は、典型的には、治療しようとする患者のアテローム性動脈硬化症の状態、投与しようとする他の治療剤、並びに患者の年齢、性別、及び大きさなどを考慮して、医師によって決定されるであろう。典型的には、しかしながら、患者に投与するLDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの用量は、治療しようとする患者の体重に基づいて医師によって決定されるであろう。
【0086】
スタチン(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A(HMG−CoA)還元酵素のインヒビター)は、血漿コレステロール含量の低減(及び未だ明らかにされていない他のメカニズム)によって、急性の心臓血管における事象の予防において効果的である事が証明されている。上述の免疫療法と併用するスタチンの投与は、アテローム斑の退縮を補う有用な治療方法であって良い。好ましくは、2つの用法用量が選択されて、相乗的な効果を有する。
【0087】
かくして、本発明の更に別の態様は、
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを個体に投与することによって、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する工程;並びに
個体にスタチンを投与する工程
を含む、必要とする個体におけるアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患に対抗する方法を提供する。
【0088】
本発明の更に別の態様は、個体はスタチンが投与される対象であって、アテローム斑の退縮を誘導することによって、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患に対抗するための医薬の調製における、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの使用を提供する。
【0089】
本発明の関連する態様は、個体に(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを投与してアテローム斑の退縮が誘導されており、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患に対抗するための医薬の調製におけるスタチンの使用を提供する。
【0090】
本発明の更に別の関連する態様は、アテローム斑の退縮を誘導することによってアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患に対抗する医薬の調製における、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ、及びスタチンの使用を提供する。
【0091】
製薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中に、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ、及びスタチンを含む医薬製剤が更に提供される。
【0092】
本発明の更に別の態様は、
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ;及びスタチン
という成分を含むパーツキット(kit of parts)であって、前記成分が他の成分と併用して投与するために適切な形態で各々が提供されるパーツキットを提供する。
【0093】
「併用して」は、前記成分が患者に同時に又は組み合わせて投与するために適切なものであって良いという意味を含む。しかしながら、前記成分は異なる経路又は異なる速度で投与される必要がある可能性があるため、「併用して」は、同じ治療計画内の連続する投与又は別々の投与という意味も含む。
【0094】
適切なスタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンを含む。
【0095】
本発明の1つの実施態様では、前記抗体は、抗炎症剤と結合されて良い。適切な抗炎症剤は、ステロイド化合物、例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソン、プレドニソロン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、アムシノニド、ジフロラソンなど、並びに非ステロイド性抗炎症剤を含む。化合物、例えば上述の抗炎症剤を抗体に結合させる方法は当該技術分野において既知である。
【0096】
本発明の更に別の態様は、
LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する抗体を提供する工程、及び
アテローム斑の退縮についてのアッセイにおいて前記抗体を試験する工程
を含み、前記アッセイにおけるアテローム斑の退縮が、前記抗体がアテローム斑の退縮を誘導するものであることを示す、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する抗体を同定する方法を提供する。
【0097】
アテローム斑の退縮のアッセイは、実施例2又は4に記載した動物モデルのようなin vivoアッセイであって良い。
【0098】
好ましくは、前記試験される抗体は、上述のヒト抗体断片ライブラリーから単離されて良い。
【0099】
更に好ましくは、前記試験される抗体は、ApoB−100由来の酸化された、特にMDA修飾されたペプチドに選択的に結合する。
【0100】
アテローム斑の退縮についても所望の特徴を有する同定された抗体断片は、次いで、他の抗体構造、例えば、全長ヒトイムノグロブリンに再構築されて、治療目的のために使用されて良い。
【0101】
本発明の更に別の態様は、
LDLの酸化されたエピトープを含む薬剤を提供する工程、
アテローム斑を有する個体に前記薬剤を投与する工程、及び
前記薬剤がアテローム斑の退縮を誘導するかどうかを測定する工程
を含み、アテローム斑の退縮が、前記薬剤がアテローム斑の退縮を誘導するものであることを示す、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する薬剤を同定する方法を提供する。
【0102】
適当には、前記個体は、実施例2又は4に記載したようなアテローム性動脈硬化症の動物モデルであって良い。代替的には、前記方法は、薬剤の臨床試験において使用されて良く、その様な場合には、前記個体はアテローム斑を有するヒトの個体であって良い。
【0103】
本発明の最後の態様は、
表2に示す抗体2D03の対応する相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのCDR、又は
表2に示す抗体LDO D4の対応するCDRの配列を有する、少なくとも1つのCDR
を含む抗体を提供する。
【0104】
更に好ましくは、前記抗体は、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列を有する、2又は3又は4又は5つのCDRを有する。
【0105】
前記抗体が、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列を有する3又は4つのCDRを有する場合には、前記抗体は、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列を有する全ての3つの重鎖又は全ての3つの軽鎖CDRを有する場合が好ましい。
【0106】
かくして、本発明のこの態様は、
抗体2D03の対応する3つの軽鎖CDRの配列を有する3つの軽鎖CDR、又は
抗体2D03の対応する3つの重鎖CDRの配列を有する3つの重鎖CDR、又は
抗体LDO D4の対応する3つの軽鎖CDRの配列を有する3つの軽鎖CDR、又は
抗体LDO D4の対応する3つの重鎖CDRの配列を有する3つの重鎖CDR
を含む、抗体を含む。
【0107】
更により好ましくは、前記抗体は、抗体2D03の対応するCDRの配列を有する3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR、又は抗体LDO D4の対応するCDRの配列を有する3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDRを含む。
【0108】
前記抗体が、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列を有する全ての6つのCDRを含まない場合には、1、2、3、4、又は5つの「非同一」のCDRの一部又は全てが、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列の変異体を含むことが好ましい。「変異体」は、前記変異体が、対応するCDRと少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも80%又は少なくとも90%あるいは少なくとも95%の配列同一性を有するという意味を含む。最も好ましくは、前記変異体は、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列と96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。典型的には、前記「変異体」CDR配列は、抗体2D03又はLDO D4の対応するCDRの配列と5、4、3、2、又は1アミノ酸残基のみが異なる。
【0109】
この本発明の態様は、抗体2D03及び抗体LDO D4を含む。
【0110】
本発明は、抗体2D03又は抗体LDO D4によって選択的に結合される酸化されたLDLエピトープに選択的に結合する抗体も含む。所定の抗体が、抗体2D03又は抗体LDO D4によって選択的に結合される酸化されたLDLエピトープに選択的に結合するかどうか測定する方法は、当業者によく知られている。
【0111】
本発明は、本発明の態様に係る抗体及び製薬学的に許容される担体を含む医薬組成物;医薬に使用するためのこの本発明の態様に係る抗体;並びにアテローム斑の退縮を誘導するための医薬の調製における、本発明の態様に係る抗体の使用も含む。
【0112】
本明細書に参照する全ての文献は、参照によって、その全体を本明細書に取り込む。
【0113】
本明細書中の先行文献の記載及び議論は、必ずしも、最新技術の一部であり、一般的な通常の知識である事を認めるものとして受け取られるべきではない。
【実施例】
【0114】
(実施例1)
酸化されたLDL上に存在するエピトープについて高いアフィニティー及び特異性を有するヒト抗体の産生
酸化されたLDLに特異的に結合するヒト抗体断片を、本質的には既に開示されているようにn−CoDeRライブラリーから選択した(Schiopu et al,2004)。簡単には、ファージディスプレイを使用して前記ライブラリーを発現させ、ApoB−100に由来するビオチン化酸化ペプチドの混合物に対する結合について選択した。2,3回の選択においてアビジン被覆磁性ビーズを使用して結合するファージを単離し(Soderlind et al,(2000)Nature BioTechnol,18:852−856)、最後に、MDA酸化形態及びCu酸化形態のLDL及びApoB−100に対する結合についてスクリーニングした。前記抗体は、MDA酸化形態及びCu酸化形態のLDL及びApoB−100に結合したが、天然の非酸化形態には結合しなかった(図1)。抗体の結合及びアフィニティーは、抗体2D03の結合を抗体IEI−E3の結合と比較した図2に例示している。2D03とIEI−E3の結合特異性の比較によって、それらは類似しているが同一ではないMDA修飾ApoB−100由来ペプチドについての特異性を有し、2D03は前記アッセイにおいてより高いシグナルを与えることが見出された(図3)。
【0115】
図4に示すように、前記抗体は、免疫組織化学によって評価されるように、ヒトアテローム斑にも特異的に結合するが、正常な組織には結合しない。
【0116】
(実施例2)
受動的免疫に基づく免疫療法を用いる動物モデルにおけるアテローム斑の退縮
方法
抗体
所望の特性を有する選択されたScFvを、過去に開示されている方法(Schiopu et al,2004)を使用して全長IgG1抗体フォーマットに移した。
【0117】
マウス受動的免疫及び組織調製
Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME,USA)からのC57BL/6背景のオスのLDLR−/−ApoBecマウスを本試験において使用した。4週齢から、マウスを高コレステロールの食餌(0.15%コレステロール,21%脂肪、ラクタミンAB、Kimstad,Sweden)を随意に提供して与えた。一回目の免疫の一週間前に、食餌を通常の固形飼料に変えた。25週齢では、1つの群のマウスを屠殺して、実験の開始時の斑の形成の程度についての対照を得て、3つの群の残りのマウスは、MDA修飾ApoB−100ペプチドに対するヒトIgG1抗体又は対照抗体の各々1mg/用量(0.5mL)で腹腔内注射した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC−8)に対する非特異的ヒトIgG1抗体は対照として使用した。1週間の間隔で、注射を二回繰り返した。
【0118】
300μLの蒸留水、フェンタニル/フルアニソン、及びミダゾラム(2:2:1、用量/用量/用量)を腹腔内投与する麻酔条件下において心穿刺による失血によって、マウスを29週齢で人道的に屠殺した。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、続いてHistochoice(Amresco,Solon,Ohio)で身体全体を灌流した後に、心臓を解剖し、処理するまでHistochoice 中で4℃において保存した。下行大動脈を外部の脂肪及び結合組織から切り離し、縦に切断して、オボアルブミン(Sigma,St.Louis,Missouri)被覆スライドに対して内腔表面を上にして乗せた(平面試料とも称される)(Branen et al,2001)。地域のAnimal Care and Use Committeeは、本試験で使用した実験プロトコルを認可した。
【0119】
斑の領域の分析
解剖した大動脈の平面試料における斑の領域の染色及び定量を、過去に開示されているように実施した(Fredriksson et al,2003)。斑の領域は、形態計測用の顕微鏡及びコンピューター(Image Pro Plus)によって直接測定し、結果を斑の領域/切片の平均として表わした。
【0120】
統計分析
データは平均±標準偏差として与える。データ分析は両側Mann−Whitney試験を用いて実施した。統計的な有意性は、≧0.05のレベルであると解された。
【0121】
結果
酸化されたLDLに対する組換えヒトIgG1抗体を本試験において比較した。本発明者は、過去に、IEI−E3抗体がApoE−/−マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の初期の発生を効果的に阻害することを示した(Schiopu et al,2004)。天然又は酸化されたLDLに結合しないフルオレセインイソチオシアネート、つまりFITC−8に対するヒトIgG1抗体をアイソタイプ対照として使用した。
【0122】
アテローム性動脈硬化症の発症に対する抗体の効果を、LDLR−/−ApoBecマウスに対して試験した。前記マウスに、25、26、及び27週齢において1回の用量あたり1mgの抗体の腹腔内注射を三回受けさせ、最後の注射の2週間後の29週齢で屠殺した。マウスの一般的な健康状態は、抗体治療によって影響を与えられなかった。コレステロール及びトリアシルグリセロールの血漿レベル及び重量に関しては、試験及び対象群の間で有意な差は存在しなかった(データは示さず)。1つの群の動物は実験の開始時に屠殺して、斑の負荷の基準レベルを測定した。
【0123】
アテローム性動脈硬化症の程度を、胸大動脈及び腹大動脈のOil Red O染色した表面の試料において測定した。図5に示すように、全ての試験抗体は、対照の抗体及び25週齢のマウスから得られた基準値と比較して、治療した動物における斑の負荷の有意な退縮を誘導した。2D03抗体は、FITC−8抗体と比較して51%、及び基準値と比較して60%(p=0.003)の効果で最高の退縮を示した。FITC−8の群又は基準値のいずれかと比較して、他の抗体も斑の負荷を有意に低減した(p<0.01)。
【0124】
考察
本試験は、酸化されたLDL上のエピトープに対する組換えヒトIgG1抗体を使用する治療が、動物モデルにおいて解剖した大動脈のアテローム斑の負荷を有意に低減することを示した。より有効な結合因子である2D03は、IEI−E3又は他の抗体よりも強力な効果を有するようであったが、前記抗体で処理した群における斑の領域の間には有意な差が無かった。この知見は、LDLの酸化された形態に結合する抗体がアテローム斑の退縮を誘導する能力を有することを初めて示したものである。
【0125】
ヒトの個体に由来する血漿において認められる、酸化されたLDLに対する抗体は、多数の試験において疾患の程度、進行、及び活性の程度と関連している(Tsimikas et al.2001、Salonen et al,1992,Maggi et al,1993)。抗体のレベルは、将来的に、心臓血管の患者における不安定な斑の存在を検出するためのマーカーとして有用になる可能性がある(Nilsson and Fredriksson,2004,Nilsson and Kovanen,2004)。
【0126】
心筋梗塞及び脳卒中の高いリスクを有する患者は、直ちに即効性且つ有効な治療を必要とする。スタチン(HMG−CoAインヒビター)は、血漿コレステロール含量を低減すること及び未だ明らかではない更なるメカニズムによって急性の心臓血管における事象の予防において有効である。絶えない努力によって、スタチンと置き換えるよりもむしろ、異なる補完的なメカニズムを使用して効力を追加する治療の新しい手段が開発されている。
【0127】
そのため、直接的な即効性の抗体治療が、生命を脅かす心臓血管又は心臓において発症しようとする脆弱な患者のための解決策であろう。本発明者は、マウスを西洋型の食餌から通常の固形飼料に移し、抗体を3回投与して治療する試験において、4週間の期間に亘って50%までのアテローム性動脈硬化症の低減の程度を示した。上述のように、前記マウスは、治療の開始時には複合的なアテローム斑を既に有していた。
【0128】
前記抗体治療は、マウスよりもヒトにおいて更に効果的である可能性がある。本発明者が使用した抗体は、ヒトoxLDL ApoB−100に対して産生させたヒトIgG1抗体であった。ヒトApoB−100とマウスApoB−100との間の相同性は完全ではなく、マウスoxLDLに対するヒト抗体の結合がある程度弱められる。本発明者が過去に示したように(Schipou et al,2004)、マウスの免疫システムは、外来性のヒトタンパク質に対して反応し、安楽死の時間で血漿に依然として存在する注射された抗体の量と負に相関するマウス抗ヒトIgG1抗体を産生する。これらの抗体は、それらの結合部位をブロックするか又は循環からのクリアランスを誘導することによって、マウスにおけるヒトIgG1治療の有効性を低減するであろう。
【0129】
(実施例3)
LDL上の酸化されたエピトープに対する抗体を用いるマクロファージ炎症活性の調節
抗酸化ApoB−100(oxApoB−100)抗体治療のアテローム保護効果の基礎を成す分子メカニズムは、完全には特徴付けられていない。しかしながら、斑発生及び斑の恒常性におけるマクロファージの役割(Li and Glass,2002)及び抗oxApoB−100抗体治療がin vivoにおける斑のマクロファージ含量を低減するという観察(Schiopu et al,2004)が、マクロファージのリクルートメント及び機能を制御する機構を示す。MCP−1及びその受容体であるCCR2からなるMCP−1経路は、最も重要な単球及びマクロファージの浸潤及び移動の走化性の誘導因子であり、各種のレベルでアテローム発生過程における関連性を示す(Charo and Taubman,2004)。したがって、本発明者は、抗oxApoB−100IgGのアテローム保護効果(Atheroprotective effect)が、MCP−1シグナル伝達経路の阻害を含む可能性について試験した。
【0130】
抗oxApoB−100 IgGを用いるヒト単球由来のマクロファージの治療は、対照IgGを用いて治療した細胞と比較して、60%までMCP−1の放出を低減することが認められた(図6)。その阻害効果は滴定可能であり、30から60μg/mlで認められる最大の効果を有した。成熟したマクロファージに対する抗oxApoB−100抗体のMCP−1阻害効果は、急速であり、且つ、経時的に安定していた(図7)。
【0131】
高oxApoB−100 IgGと共にインキュベートした24、48、72、又は96時間後に単離した上清のMCP−1濃度は、低レベルで一定のままであった。対照的に、対照IgGを用いた治療は、経時的にMCP−1濃度における安定した増大があった。MCP−1阻害効果は、新しく単離した単球と共に抗体をインキュベートした際に明白であった(図7)。48時間に亘る抗oxApoB−100 IgGを用いた単球の処理は、対照のIgGで処理した細胞と比較して、MCP−1濃度において60倍という顕著な低減を生じさせた。
【0132】
抗oxApoB−100 IgG処理は、転写レベルにおいてMCP−1合成を制御することも認められた。新しく単離した単球を、抗oxApoB−100 IgG又は対照IgGを用いて二日間に亘ってインキュベートした。細胞を回収して、mRNAを単離し、リアルタイムPCRによって定量した。遺伝子発現は18S RNAに関連した。抗oxApoB−100 IgGと共に二日間に亘ってインキュベートした単球は、対象IgGで処理した細胞と比較して、MCP−1 mRNAレベルにおける80%の低減を示した。(データ示さず)
【0133】
高oxApoB−100 IgGのMCP−1阻害効果は、一般的な細胞毒性の効果によるものではなかった。抗oxApoB−100 IgGで処理した後に回収したマクロファージは、トリパンブルー染色及び光学顕微鏡によって測定されるように完全に生存可能であった。
【0134】
本発明者の発見によって、抗oxApoB−100抗体のアテローム保護効果が、単球及びマクロファージによるMCP−1放出に対する阻害効果を含む事が示される。MCP−1は、健康及び疾患の状態における単球及びマクロファージのリクルートメント及び移動において極めて重要である。具体的には、単球/マクロファージ向性CCケモカインであるMCP−1(Gu et al,1998)又はその対応する受容体であるCCR2(Boring et al,1998)の欠失は、in vivoにおいてアテローム性動脈硬化症からマウスを保護する。MCP−1を用いた単球のin vitro刺激は単球の経内皮移動を促進し、oxLDLの存在下において、マクロファージの細胞形質転換を促進した(Tangirala et al,1997)。理論に繋げることを望まないが、本発明者は、抗oxApoB−100抗体を用いる処理は、MCP−1放出の選択的な阻害を提供する可能性があり、かくしてアテローム斑とは関係のない炎症部位への単球の移動を阻害するという潜在的な副作用を最小化していると推測している。
【0135】
(実施例4)
能動的免疫に基づく免疫療法を用いた動物モデルにおけるアテローム斑の退縮の誘導
oxLDLを用いた免疫(Palinski et al,1995、Ameli et al,1996、Freigang et al,1998、Zhou et al,2001、Nilsson et al,1997)又はApo−100ペプチドを用いた免疫(Fredriksson et al,2003)が過去にマウスにおいて有効であり、アテローム性動脈硬化症に対するワクチンを作製するための試験が現在進行中である(Nilsson et al,2004;Hansson 2002;Sherer & Shoenfeld 2002;Zhou & Hansson 2004)。
【0136】
アテローム斑のサイズを低減する酸化されたApoB−100由来ペプチドに対するワクチン接種の機能を試験するために、LDLR−/− ApoBecマウスに高脂肪の食餌を4週目から開始して21週に亘って与えた。マウスが25週齢になった際に、1つの群の動物を屠殺して、それらの解剖した大動脈におけるアテローム性動脈硬化症の程度を測定した。この群は基準の群として役立った。他の群のアテローム性動脈硬化症の程度は、この基準と比較することができる。ペプチド又はPBSのみでワクチン接種した試験動物は高脂肪の食餌を止めて、数週間に亘って注射をし、その後に動物を屠殺してアテローム性動脈硬化症の程度を試験する。
【0137】
上述の実施例2では、本発明者は、斑の負荷の程度は、25週から高脂肪の食餌を止めた29週までの4週間の期間に亘って安定であることを示した。分析によって、25週齢では、10%という解剖した大動脈の斑に覆われた領域を有することが明らかになった。ワクチン接種した動物は、対照群及び基準の群と比較して斑の負荷の低減を有することが示される。これは、LDLの酸化された形態上に認められるエピトープに対する免疫が、既に存在する斑の負荷の低減を生じさせ得ることを示し、ワクチン接種が、患者が苦しめられている斑を減少させる有効な態様であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】LDL及びApoB−100の酸化された形態及び天然の形態に対する、2D03及びIEI−E3抗体の結合を示す発光ELISA。MDAという接頭辞は、LDL及びApoB−100のMDA修飾された形態を表わし、Naは、これらの天然の形態を表わす。Cu−LDLは、銅酸化されたLDLを表わす。結合は、過酸化酵素に結合した抗ヒトIgGを使用して検出した(RLU=相対発光単位)。
【図2】MDA修飾されたヒトApoB−100に対する、2D03及びIEI−E3の結合のELISAに基づく分析。対照は、同じ抗原に対するFITC−8の結合に相当する。アフィニティーはBiacore分析によって測定した。
【図3】多数の異なるMDA修飾された抗原に対するIEI−E3および2D03の単鎖断片(scFv)の結合。P2(アミノ酸[aa]16−21);P45(aa661−680);P129(aa1921−1940);P143(aa2131−2150);P210(aa3136−3155);並びにP301(aa4502−4521)は、ヒトApoB−100配列の特定の領域に相当するペプチドである。対照ペプチドは、非関連のリジン含有ペプチド(MDA修飾、黒色)であった。データは、シグナル/10としてプロットした。接頭辞は文中に規定している。
【図4】2D03、IEI−E3、及び対照FITC−8抗体を使用するヒトの斑の免疫組織化学染色。結合した抗体は、セイヨウワサビ過酸化酵素を結合させた抗抗体及びジアミノベンジジン染色を使用して検出した。
【図5】酸化されたLDLに特異的な2D03、IEI−E3、LDO−D4、及びKTT B8抗体を使用して治療したアテローム性動脈硬化症のApoBecマウスの下行大動脈における斑の領域。アイソタイプに適合した(isotype matched)FITC−8を対照として使用した。斑の領域はOil Red O染色によって評価した。値は、下行大動脈の全領域当たりの斑全体の割合として表わす。
【図6】抗酸化ApoB−100 IgGを使用するヒト単球由来マクロファージの治療はMCP−1の放出を阻害する。ヒト単球由来マクロファージは、ヒト血清の存在下で10日間に亘って事前培養して、示されているように60μg/mlの抗酸化ApoB−100 IgG1クローン、負の対照のIgG、又は血清のみで4日間に亘って処理した。上清を単離して、市販のELISAを使用してMCP−1含量について分析した。データは、4人のドナーから得られた三回重複試験の値の平均値とSEMである。
【図7】アテローム様マクロファージに対する抗酸化ApoB−100 IgGのMCP−1による阻害効果は、急速且つ経時的に安定である。ヒトの単球又はヒトの単球由来のマクロファージは、2人のドナーから得た(各々、丸又は四角)。細胞は、60μg/mlの2D03抗体(黒)、又は対照抗体(白)を即時(グラフの左側)又はヒト血清の存在下で14日間に亘って単球を事前培養してから(グラフの右側)処理した。上清を単離して、市販のELISAを使用してMCP−1CCケモカイン含量について分析した。データは、三回重複試験の値の平均値とSEMである。(参考文献)1. Ameli S, et al (1996) Effect of immunization with homologous LDL and oxidized LDL on early atherosclerosis in hypercholesterolemic rabbits. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1996 Aug;16(8):1074-92. Boring, L., et al (1998) Decreased lesion formation in CCR2-/- mice reveals a role for chemokines in the initiation of atherosclerosis. Nature 394, 894-73. Branen L., et al, A procedure for obtaining whole mount mouse aortas that allows atherosclerotic lesions to be quantified. Histochem J, 2001. 33: p. 227-2294. Carr AC, McCall MR, Frei B. Oxidation of LDL by myeloperoxidase and reactive nitrogen species: reaction pathways and antioxidant protection. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Jul;20(7):1716-235. 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【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるアテローム斑の退縮を誘導するための、酸化された低密度リポタンパク質(LDL)に対する免疫療法の使用。
【請求項2】
前記免疫療法が、酸化されたLDLには存在するが天然のLDLには存在しないエピトープを対象とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記免疫療法が、少なくとも1つの酸化されたApoB−100エピトープを対象とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ApoB−100エピトープが、表1に記載したペプチドから選択されるか、又は表1に記載したペプチドの少なくとも6つの連続するアミノ酸残基を含む断片である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記免疫療法が、酸化されたLDLに存在する少なくとも1つの酸化された脂質エピトープを対象とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体、又は
(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ
を個体に投与する工程を含む、必要がある個体においてアテローム斑の退縮を誘導する方法。
【請求項7】
個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する医薬の調製における、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの使用。
【請求項8】
前記LDLの酸化されたエピトープが、ApoB−100の酸化されたエピトープを含む、請求項6又は7に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記ApoB−100のエピトープが、表1に記載したペプチドから選択されるか、又は表1に記載したペプチドの少なくとも6つの連続するアミノ酸残基を含む断片である、請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記LDLの酸化されたエピトープが、LDLの酸化された脂質エピトープを含む、請求項6又は7に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記LDLの酸化されたエピトープが、銅に対する曝露又はマロンデアルデヒド(MDA)によって酸化されているLDLのエピトープを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記抗体が抗体断片である、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記抗体断片が単鎖抗体断片(scFv)である、請求項13に記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記個体がヒトの個体である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記ヒトの個体が、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患を有するか又は有するリスクがある、請求項15に記載の方法又は使用。
【請求項17】
前記アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患が、冠状動脈疾患、心筋梗塞、及び脳卒中から選択される、請求項16に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記ヒトの個体が、進行した又は重度のアテローム性動脈硬化症、あるいはアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患の進行した又は重度の形態である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項19】
個体におけるアテローム斑のサイズ及び/又は量及び/又は程度を測定する事前の工程を更に含む、請求項6及び8から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
個体におけるアテローム斑の退縮の程度を測定する後続の工程を更に含む、請求項6及び8から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープを個体に投与することによって、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する工程;並びに
個体にスタチンを投与する工程
を含む、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患を対抗する方法。
【請求項22】
個体はスタチンが投与される対象であって、アテローム斑の退縮を誘導することによってアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患を対抗するための医薬の調製における、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープの使用。
【請求項23】
個体に、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子、又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープが投与されて、アテローム斑の退縮が誘導されている、アテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患を対抗するための医薬の調製におけるスタチンの使用。
【請求項24】
アテローム斑の退縮を誘導することによってアテローム性動脈硬化症と関連する心臓血管疾患を対抗するための医薬の調製における、(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ、及びスタチンの使用。
【請求項25】
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体分子又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ、及びスタチン、並びに製薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体を含む、医薬製剤。
【請求項26】
(a)LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する少なくとも1つの抗体又は(b)LDLの少なくとも1つの酸化されたエピトープ;及び
スタチン
を含むパーツキットであって、各成分が、他の成分と併用して投与するために適切な形態で提供される、パーツキット。
【請求項27】
前記スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンから選択される、請求項21から26のいずれか一項に記載の、方法、使用、医薬製剤、又はパーツキット。
【請求項28】
LDLの酸化されたエピトープに選択的に結合する抗体を提供する工程、及び
アテローム斑の退縮についてのアッセイにおいて抗体を試験する工程
を含み、前記アッセイにおけるアテローム斑の退縮によって、抗体がアテローム斑の退縮を誘導するものであることが示される、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する抗体を同定する方法。
【請求項29】
前記アテローム斑の退縮についてのアッセイが、アテローム性動脈硬化症の動物モデルを使用するin vivoアッセイである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、ヒト抗体断片ライブラリーから単離されている、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体が、ApoB−100の酸化されたエピトープに選択的に結合する、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
LDLの酸化されたエピトープを含む薬剤を提供する工程、
アテローム斑を有する個体に前記薬剤を投与する工程、及び
前記薬剤が、アテローム斑の退縮を誘導するかどうかを測定する工程
を含み、アテローム斑の退縮によって、前記薬剤がアテローム斑の退縮を誘導するものである事が示される、個体におけるアテローム斑の退縮を誘導する薬剤を同定する方法。
【請求項33】
前記薬剤がアテローム斑の退縮を誘導するかどうかを測定する工程が、アテローム性動脈硬化症の動物モデルを使用するin vivoアッセイを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記薬剤がアテローム斑の退縮を誘導するかどうかを測定する工程が、アテローム斑を有するヒトの個体において前記薬剤を試験する工程を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
アテローム斑の退縮が、個体の大動脈におけるアテローム斑の領域の少なくとも5%の減少を含む、請求項1から34に記載の、方法、使用、医薬製剤、又はパーツキット。
【請求項36】
表2に示した抗体2D03の対応する相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、又は
表2に示した抗体LDO D4の対応するCDRの配列を有する少なくとも1つのCDR
を含む、抗体。
【請求項37】
抗体2D03の対応する3つの軽鎖CDRの配列を有する3つの軽鎖CDR、
抗体2D03の対応する3つの重鎖CDRの配列を有する3つの重鎖CDR、
抗体LDO D4の対応する3つの軽鎖CDRの配列を有する3つの軽鎖CDR、又は
抗体LDO D4の対応する3つの重鎖CDRの配列を有する3つの重鎖CDR、
を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項38】
抗体2D03の対応するCDRの配列を有する3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR、又は
抗体LDO D4の対応するCDRの配列を有する3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR、
を含む、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
抗体2D03又は抗体LDO D4。
【請求項40】
抗体2D03又は抗体LDO D4によって選択的に結合される酸化されたLDLのエピトープに選択的に結合する、抗体。
【請求項41】
請求項36から40のいずれか一項に記載の抗体及び製薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項42】
医薬において使用するための、請求項36から40のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項43】
アテローム斑の退縮を誘導する医薬の調製における、請求項36から40のいずれか一項に記載の抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−506995(P2009−506995A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528431(P2008−528431)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008594
【国際公開番号】WO2007/025781
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(506209743)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (9)
【Fターム(参考)】