免疫蛋白質の産生促進剤、および免疫蛋白質の産生促進方法
【課題】免疫グロブリンおよび/またはサイトカインなどの免疫蛋白質の産生を促進可能な新規な免疫蛋白質産生促進剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、又はβ−クリプトキサンチンを含有する。
【解決手段】本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、又はβ−クリプトキサンチンを含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫蛋白質の産生促進剤、および免疫蛋白質の産生促進方法に関するものである。詳細には本発明は、IgA抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgD抗体、およびIgE抗体の免疫グロブリン;インターロイキン(IL−1〜18など)、インターフェロン(IFN−α,β,γなど)、腫瘍壊死因子(TNF−αなど)、コロニー刺激因子(G−CSF,M−CSF,EPO,SCFなど)、成長因子(EGF,FGF,IGF,NGF,PDGF,TGFなど)などのサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)の免疫蛋白質の産生を促進することが可能な免疫蛋白質の産生促進剤、および当該免疫蛋白質の産生促進方法に関するものである。以下では説明の便宜上、免疫グロブリンを中心に説明するが、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン(Immunoglobulin、略称Ig)は、通常抗体と呼ばれる複合蛋白質であり、ヒトにおいてはIgA、IgG、IgM,IgD、IgEの5種類がある。免疫グロブリンは、体内に入った細菌などを破壊する作用、好中球の食細胞を補助する作用、細菌が産生した毒素を中和する作用を有する他、抗生物質の治療効果を高めて人体を感染から守る役割を果たすなど、免疫のなかで大きな役割を担っており、体内診断薬、治療薬等の医薬分野への応用が強く期待されている。
【0003】
免疫グロブリンは、通常、ヒトリンパ球や、ヒト型親細胞と癌患者のリンパ球とを融合させて得られるヒト型ハイブリドーマ細胞などのヒトリンパ球類から産生されるが、その産生効率は極めて低いという問題がある。そこで、免疫グロブリンの産生能を高めるための研究が行なわれている。
【0004】
本発明者らは、免疫賦活活性を有する生体機能調節因子の研究を長年の間、行なっており、例えば、クラゲのコラーゲン抽出物質が免疫賦活作用を有することを知見して、コラーゲンの存在下でヒトリンパ球類を培養して免疫蛋白質を製造する方法(特許文献1)や、放射線処理したコラーゲンなどの存在下で白血球やリンパ球ハイブリドーマを培養して免疫蛋白質を製造する方法(特許文献2)を開示している。また、特許文献3には、複数種の乳製品と酵母を共生培養して得られる発酵乳が、IgM産生促進作用やIFN−γ産生促進作用を有する生理活性ペプチドを含有することを開示している。更に、特許文献4には、魚類の卵の破砕液を抽出して得られた化合物が免疫調整作用を有することを開示している。
【0005】
一方、特許文献5には、搾汁した温州ミカン果汁を遠心分離して得た上澄み液に所定の処理を施した抽出物が、ヒト型ハイブリドーマ細胞の抗体産生を有することが開示されている。この方法によって得られる抽出物は、分子量が少なくとも1万以上のタンパク質であると推察され、産生効率が低いという問題がある。
【0006】
ところで、柑橘類の果皮などは、古くから漢方の原料として使用されている。例えば、温州みかんなどに多く含まれるβ−カロテノイド類のβ−クリプトキサンチンは、悪性腫瘍抑制作用を有することが報告され、注目されている。
【0007】
β−クリプトキサンチンは、α−カロテン、β−カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、ルテインと共にヒト血液中に存在する6種類のカロテノイド類の一つであり、糖尿病、リウマチに関する疾病リスク低減作用、発がん予防作用、骨粗鬆症予防作用などが見出されている。また、特許文献6には、その特許請求の範囲にクリプトキサンチンなど多くの成分を含む免疫賦活剤が記載されている。しかし、特許文献6の実施例の欄には、クリプトキサンチンを用いた例は全く開示されておらず、そもそも特許文献6は、紫外線による皮膚の免疫機能低下を外用により防止するための皮膚免疫賦活剤およびこれを含有するクリームや乳液などの皮膚外用剤に関するものであり、免疫グロブリンやサイトカインなどの免疫蛋白質の産生能向上は全く意図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−204248号公報
【特許文献2】特開2008−212026号公報
【特許文献3】特開2006−76961号公報
【特許文献4】特開2007−91654号公報
【特許文献5】特開平6−98763号公報
【特許文献6】特開平11−246396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、免疫グロブリンやサイトカインなどに代表される免疫蛋白質の産生を促進させる新規な免疫蛋白質の産生促進剤、および免疫蛋白質の産生促進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、β−クリプトキサンチンを含有するところに要旨を有するものである。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、免疫グロブリンおよび/またはサイトカインの産生を促進するものであり、特にIgA、IgG、IgMの免疫グロブリン;インターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、腫瘍壊死因子TNF−αなどのサイトカインの産生促進に極めて有効である。
【0012】
また、上記課題を解決し得た本発明に係る免疫蛋白質の産生促進方法は、β−クリプトキサンチンを非ヒト動物に投与するところに要旨を有するものである。
【0013】
好ましい実施形態において、上記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである。本発明の方法は特に、IgA、IgG、IgMの免疫グロブリン;インターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、腫瘍壊死因子TNF−αなどのサイトカインの産生促進方法として極めて有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特にIgA、IgG、IgMなどの免疫グロブリンや;インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などのサイトカインの産生能が著しく向上するため、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、免疫蛋白質を用いた種々の医療用途に好適に用いられる。具体的には、例えば、免疫グロブリンやサイトカインを原料とする免疫グロブリン製剤、免疫疾患治療薬、免疫機能薬、免疫促進効果を有する健康食品(機能性食
品)・サプリメント、健康維持を目的とした飲料、魚類用機能性飼料、家畜・家禽用機能
性飼料などの用途に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、β−クリプトキサンチンがヒトハイブリドーマHB4C5細胞のIgM産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】図2は、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓細胞の抗体(IgAおよびIgG)の産生に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はIgAの産生に及ぼす影響を、(b)はIgGの産生に及ぼす影響を、それぞれ示している。
【図3】図3は、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓細胞の抗体遺伝子の転写活性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はIgA−mRNA発現に及ぼす影響を、(b)はIgM−mRNA発現に及ぼす影響を、それぞれ示している。
【図4】図4は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgAの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】図5は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgGの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】図6は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgMの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図7】図7は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、血中の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図8】図8は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、脾臓リンパ球の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図9】図9は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、脾臓細胞のサイトカイン産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図10】図10は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、腸間膜リンパ節リンパ球の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図11】図11は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球の抗体遺伝子の転写活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、新規な免疫蛋白質の産生促進剤を提供するため、検討を重ねてきた。その結果、β−クリプトキサンチンが、免疫蛋白質の産生促進作用を有することを見出し、本発明を完成した。詳細には、β−クリプトキサンチンが、HB4C5細胞[ヒト骨髄腫細胞株とリンパ球(B細胞)とを細胞融合させたものであり、IgM産生能を有する]の抗体産生に及ぼす影響を検討した結果、HB4C5細胞のIgM産生を促進することが判明した。更に、β−クリプトキサンチンは、マウス脾臓リンパ球のIgG及びIgAの産生を促進すると共に、マウス腸間膜リンパ球のIgG、IgA、及びIgMの産生を促進した。更に、抗体の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した結果、β−クリプトキサンチンは転写段階で上方制御していることが明らかとなった。従って、β−クリプトキサンチンによる免疫蛋白質産生促進作用は、転写促進によるタンパク質性合成系の活性化によるものであることが強く示唆された。更に、β−クリプトキサンチンによる上記の免疫蛋白質産生促進作用は、生体外(in vitro)のみならず、生体内(in vivo)においても見られることが確認された。
【0017】
本明細書において、免疫蛋白質とは、IgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG抗体およびIgM抗体などの免疫グロブリン;インターロイキン(IL−1〜18など)、インターフェロン(IFN−α,β,γなど)、腫瘍壊死因子(TNF−αなど)、コロニー刺激因子(G−CSF,M−CSF,EPO,SCFなど)、成長因子(EGF,FGF,IGF,NGF,PDGF,TGFなど)などのサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)を意味する。
【0018】
本明細書において、「免疫蛋白質産生促進作用を有する」とは、免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞(以下、「免疫蛋白質産生細胞」と呼ぶ。詳細は後述する。)数の増加、または免疫蛋白質産生細胞における免疫グロブリンやサイトカインなどの産生量の増加を意味する。
【0019】
(β−クリプトキサンチン)
β−クリプトキサンチンは、下記の構造式で表わされるカロテノイド類の一種である。前述したように、β−クリプトキサンチンは、発ガン抑制作用などの生理活性を有することは報告されているが、免疫蛋白質の産生促進作用については報告されていない。
【0020】
【化1】
【0021】
β−クリプトキサンチンは、柑橘類の果肉に多く含まれているが、温州ミカンでは、果肉よりも果皮に多く含まれているといわれている。柑橘類としては、例えば、夏みかん、甘夏、イヨカン、温州ミカン、はっさく、夏ダイダイ、ネーブル、柚子、かぼす、グレープフルーツ、すだち、レモン、ポンカン、キンカン、シークワーサーなどのミカン科植物が挙げられる。β−クリプトキサンチンによる高い免疫蛋白質産生促進作用を得るためには、このうち特に、温州ミカン、夏みかん、柚子、イヨカン、ポンカン、キンカン、シークワーサーを使用することが好ましく、より好ましくは温州ミカンである。
【0022】
本発明に用いられるβ−クリプトキサンチンは、柑橘類の果肉を原料とし、公知の方法で抽出することができる。柑橘類の果肉は、予め凍結乾燥した後、できるだけ細かく粉砕してから、抽出を行なうことが好ましい。具体的には、エタノール、メタノール、ヘキサン、酢酸エチル等を用いて抽出すれば良い。β−クリプトキサンチンを効率よく抽出するためには、特に、抽出時間に留意することが好ましく、例えば、室温で6時間以上に制御することが好ましい。
【0023】
あるいは、β−クリプトキサンチンは、本発明者の一人によって発明された独自のパウダー製造方法(特開2009−17822号公報)から得ることもできる。
【0024】
あるいは、温州ミカンを用いる場合は、上述したように果肉のほか果皮中にも多く含まれていることから、以下のようにして抽出することが好ましい。果皮等を凍結乾燥した後、できるだけ細かく粉砕し、有機溶媒を用いて抽出することが好ましく、用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノールなどのアルコール系有機溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式脂肪族炭化水素類を挙げることができる。これらの中でも、エタノール、メタノール、n−ヘキサン、酢酸エチルから選ばれることが好ましく、より好ましくはエタノールを用いる。
【0025】
あるいは、β−クリプトキサンチンは市販品を用いることもできる(例えば、和光純薬工業株式会社)。
【0026】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、上記のβ−クリプトキサンチンを含んでいる。
【0027】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、β−クリプトキサンチンのみから構成されていても良いし、医薬などに通常用いられる公知の担体を組み合わせて用いることもできる。具体的には、製剤学的に許容される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、賦形剤、希釈剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの担体が挙げられる。また、食品分野で慣用されている各種の栄養源、例えば糖質、脂質、蛋白質素材などを添加しても良い。更に、必要に応じて、他の医薬品と併用しても良い。
【0028】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の形態は特に限定されず、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤(懸濁剤、乳剤、注射剤など)、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、軟膏剤などが挙げられる。これら各形態への調製は、上述した慣用の担体を用い、常法に従って行なうことができる。
【0029】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の投与形態は、その製剤形態に応じて適切に選択すれば良い。例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤などの場合は経口投与の形態で用いられ、注射剤などの場合は静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与などの形態で用いられ、坐剤の場合は直腸内投与の形態で用いられる。
【0030】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の投与量は、一律に限定されず、被験者の年齢、性別、疾患の程度などに応じ、所望の効果が発揮されるように適宜調整すれば良いが、例えば、約1〜100mg/kg体重/日(より好ましくは、1〜10mg/kg体重/日)の割合で、おおむね、1週間から2週間程度以上の期間、投与することが推奨される。投与期間は、所望の効果が発揮されるまで、適切な期間、延長することができる。
【0031】
また、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、家畜・家禽、魚類などの非ヒト動物用の飼料の形態で用いても良く、これにより、非ヒト動物の免疫蛋白質産生能が促進される。例えばペット飼料、養殖魚飼料、家畜飼料などとして適用することが挙げられる。具体的には、例えば、非ヒト動物用の飼料中に本発明の免疫蛋白質産生促進剤を、非ヒト動物の症状などに応じ、適切な量だけ配合すれば良い。例えば、前述したヒトを対象とした場合と同様、約1〜100mg/kg体重/日(より好ましくは、1〜10mg/kg体重/日)の割合で、おおむね、1週間から2週間程度以上の期間、投与することが推奨される。投与期間は、所望の効果が発揮されるまで、適切な期間、延長することができる。用いられる非ヒト動物用の飼料の組成は限定されず、例えば、市販品を用いることもできる。また、対象となる非ヒト動物も限定されず、例えば、豚、牛、馬、ヤギ、ウサギ、羊などの家畜類;鶏、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどの家禽類;タイ、ハマチ、マグロ、コイ、エビ、アユ、ヒラメなどの魚類などが代表的に例示される。
【0032】
次に、in vitroにおいて、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤を用い、免疫グロブリンやサイトカインに代表される免疫蛋白質の産生を促進する方法について説明する。本発明では、免疫蛋白質産生促進剤であるβ−クリプトキサンチンの存在下で、免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞(以下、「免疫蛋白質産生細胞」と呼ぶ。)を培養すれば、免疫蛋白質の産生促進剤を添加せずに培養した場合に比べ、上記免疫蛋白質産生細胞中の免疫グロブリンやサイトカインなどの産生が著しく向上する(後記する実施例を参照)。
【0033】
本明細書において、「免疫蛋白質産生細胞」とは、好ましくは免疫グロブリンやサイトカインの免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞であり、例えば、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)やマクロファージなどの白血球;上記リンパ球(特にB細胞)と自立増殖能を有する多発性骨髄腫やリンパ腫などのミエローマ細胞との融合細胞(リンパ球ハイブリドーマ)などが代表的に例示される。後者のリンパ球ハイブリドーマは、例えばセンダイウイルスを用いた細胞融合法、ポリエチレングリコール法、または電気パルスによる電気融合など、慣用方法に従って調製することができる。好ましいリンパ球ハイブリドーマとしては、後記する実施例で用いた、ヒト骨髄腫細胞株とリンパ球(B細胞)とを細胞融合させたヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞が挙げられる。HB4C5細胞を使用すると、当該細胞から分泌されるIgMを指標として、免疫蛋白質産生能を容易に測定することができる。
【0034】
これらの白血球またはリンパ球ハイブリドーマは、単一種類のものに限定されず、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、これらの白血球およびリンパ球ハイブリドーマの由来は特に制限されないが、本発明ではヒト由来の免疫蛋白質の産生を促進するという観点から、好ましくはヒト由来である。
【0035】
本発明では、これらの白血球またはリンパ球ハイブリドーマに代表される免疫蛋白質産生細胞を、β−クリプトキサンチンを含有する培地中で培養する。
【0036】
ここで、上記の培地は、上記の免疫蛋白質産生細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、EagleのMEM培地、McCoyの5A培地または7A培地、HamのF10培地またはF12培地、199培地、EDRF培地、RPMI1640培地などや、これらの改良型培地などが挙げられる。これらの培地は、市販品を用いることができる。
【0037】
本発明では、本発明による作用を損なわない限り、上記の培地中に、ウシ血清等の血清を添加しても良い。ただし、血清成分による免疫蛋白質の産生を促進するという観点からは、血清を添加しない無血清培地の使用が好ましい。
【0038】
本発明で使用する上記培地には、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム等の各種添加剤を適宜添加することもできる。例えば、EDRF培地に、上記のインスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、及び亜セレン酸ナトリウム(以下、ITESと呼ぶ場合がある。)を添加すると、血清の影響を受けずに活性を測定できるという利点があることから、後記するハイブリドーマを用いた培養実験では、上記のITESを所定の濃度で添加したEDRF培地(ITES−EDRF培地)を使用している。
【0039】
培地中に添加する免疫蛋白質の産生促進剤(β−クリプトキサンチン)の量は、前述したように、所望の効果を発揮することができる程度に適宜調整すれば良いが、例えば、培養する白血球またはリンパ球ハイブリドーマの量が培地1mLあたり1×104〜5×105cellsである場合、培地1mLあたり、おおむね、0.1〜10,000ng/mL、好ましくは10〜5,000ng/mL、より好ましくは10〜1,000ng/mLの範囲で添加することが望ましい。
【0040】
培養時の温度は、免疫蛋白質を産生できる温度であれば特に制限されず、おおむね、30〜45℃の範囲である。好ましくは35〜42℃であり、より好ましくは36〜38℃である。また、湿度も特に制限されず、相対湿度は、おおむね、80〜100%の範囲であり、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。
【0041】
また、培養に当たり、炭酸ガスを1〜10体積%程度の割合で含む空気の雰囲気下で培養することが好ましい。炭酸ガスの好ましい濃度は、おおむね、3〜8体積%の範囲である。
【0042】
培養時間は、上記免疫蛋白質の産生促進剤の免疫グロブリン産生効率によっても相違するが、おおむね、5時間〜2週間の範囲である。
【0043】
このようにして培地中に免疫蛋白質を効率よく産生した後は、定法に従い、培地から固液分離して免疫蛋白質を単離し、必要に応じてアフィニティクロマトグラフィー等の液体クロマトグラフ法等を用いて精製することにより、所望の免疫蛋白質を取得することができる。
【0044】
このようにして得られる免疫蛋白質、好ましくは前述する免疫グロブリンやサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)、より好ましくは免疫グロブリンは、例えば、免疫疾患治療薬、免疫機能検査薬の有効成分として広く用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0046】
実施例1
本実施例では、β−クリプトキサンチンが、IgMを産生するヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞のIgM産生に及ぼす影響を検討した。
【0047】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−ERDF培地(極東製薬社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチン(和光純薬工業株式会社製)をDMSOに溶解して図1に示すように32〜4000ng/mLの濃度に調整したものを添加すると共に、HB4C5細胞を5×104cells/mLの濃度で接種し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて6時間培養した。培養後、培地中に生成した免疫グロブリン(IgM)の量を、抗ヒトIgMおよびペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgMを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0048】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgMの産生量を測定した。
【0049】
これらの結果を図1に示す。
【0050】
図1より、β−クリプトキサンチンの添加によってIgMは、ほぼ濃度依存的に増加し、最大濃度(4000ng/mL)では、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、HB4C5細胞のIgM産生量が1.6倍に促進された。
【0051】
実施例2
本実施例では、培養系(in vitro)において、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓リンパ球の抗体産生に及ぼす影響を調べた。
【0052】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−RPMI 1640培地(SIGMA社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチンをDMSOに溶解して図2(a)または図2(b)に示す濃度に調整したものを添加すると共に、6週齢雌性BALB/cマウスより摘出した脾臓から脾臓リンパ球(1.0×106cells/mL)を添加し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて24時間培養した。培養後、培養上清中の免疫グロブリン(IgAおよびIgG)の量を、抗マウスIgAおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgA、並びに抗マウスIgGおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0053】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgAおよびIgGの産生量を測定した。
【0054】
IgAの結果を図2(a)に、IgGの結果を図2(b)に示す。
【0055】
図2より、β−クリプトキサンチンの添加により、マウス脾臓リンパ球のIgAおよびIgGの産生は、ほぼ濃度依存的に促進された。詳細には、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、IgAは2500ng/mLの添加で2.5倍に増加し、IgGは2500ng/mLの添加で約3.7倍にまで増加した。
【0056】
実施例3
本実施例では、β−クリプトキサンチンの作用で、マウス脾臓リンパ球内において、IgAおよびIgMをコードする遺伝子のmRNAへの転写活性がどの様に変化するかを検討した。
【0057】
詳細には、DMSOに溶解したβ−クリプトキサンチンを終濃度500ng/mLで添加したITES−RPMI 1640培地で24時間培養したBALB/cマウス脾臓リンパ球からセパゾール(ナカライテスク製)でRNAを抽出し、逆転写後、リアルタイムPCR法によりmRNAの相対発現量を解析した。抽出したmRNAからオリゴdTプライマーを用いてcDNAを調製した、IgAに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:TGCACAGCTTTCTTCTGCAC、リバース:TGCCAGCCTCACATGTACTC、IgMに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:GGGGCACTGGTCACATACTT、リバース:CAGCTCGTGAGCAACTGAACである。本実施例では、βアクチン遺伝子を内部標準物質として用いた。リアルタイムPCRには、ステップワンプラスリアルタイムPCR装置(アプライドバイオサイエンス社製)を用いた。
【0058】
同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0059】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、mRNAの相対発現量を解析した。
【0060】
IgA−mRNAの結果を図3(a)に、IgM−mRNAの結果を図3(b)に、それぞれ示す。
【0061】
図3(a)および図3(b)より、β−クリプトキサンチンの刺激により、脾臓リンパ球のIgA−mRNAおよびIgM−mRNAの転写活性は、いずれも約2倍程度促進されることが分かった。この実験結果より、β−クリプトキサンチンによるIgAおよびIgMの産生促進作用は、mRNAの転写量の増加に起因すると推察される。
【0062】
実施例4
本実施例では、培養系(in vitro)において、β−クリプトキサンチンがマウス腸管膜リンパ節リンパ球の抗体産生に及ぼす影響を調べた。
【0063】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−RPMI 1640培地(SIGMA社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチンをDMSOに溶解して図4〜図6に示す濃度に調整したものを添加すると共に、6週齢雌性BALB/cマウスより摘出した腸間膜リンパ節からリンパ球(1.0×106cells/mL)を添加し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて24時間培養した。培養後、培養上清中の免疫グロブリン(IgA、IgG、およびIgM)の量を、抗マウスIgAおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgA、抗マウスIgGおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG、並びに抗マウスIgMおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgMを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0064】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgA、IgG、およびIgMの産生量を測定した。
【0065】
IgAの結果を図4に、IgGの結果を図5に、IgMの結果を図6に、それぞれ示す。
【0066】
図4〜図6より、β−クリプトキサンチンの添加により、マウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgA、IgG、およびIgMの産生は促進されることが分かった。詳細には、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、IgAは625ng/mLの添加で約2.1倍に増加し、IgGは156ng/mLの添加で約1.7倍に増加し、IgMは625ng/mLの添加で約1.4倍に増加した。
【0067】
実施例5
本実施例では、生体内(in vivo)における、β−クリプトキサンチンによる免疫蛋白質の産生促進効果を調べた。
【0068】
詳細には、β−クリプトキサンチン(フナコシ株式会社製)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して10mg/mLの濃度に調整したものを用意した。次に、雌性BALB/cマウス(約6週齢)を7匹/群に分け、各マウスに対し、下記要領でβ−クリプトキサンチンを14日間経口投与した。
(A)高用量投与群(上記濃度のβ−クリプトキサンチンを1mL/kg/日投与、すなわち10mg/kg/日投与)
(B)低用量投与群(上記濃度のβ−クリプトキサンチン溶液をDMSOで5倍希釈し、濃度を2mg/mLに調整した溶液を1mL/kg/日投与、すなわち2mg/kg/日)
(C)コントロール群(DMSOのみ1mL/kg/日投与)
【0069】
14日間の経口投与終了後、15日目にマウスを屠殺し、血清、脾臓細胞、および腸間膜リンパ節を採取した。脾臓細胞および腸間膜リンパ節から直ちにリンパ球を採取し、1×106cells/mLとなるように、5%牛胎児血清(FBS)添加RPMI 1640培地(SIGMA社製)に接種し、37℃で24時間培養した。このようにして得られた培養後の上清中、および上記血清の各免疫グロブリン(IgA、IgG、IgM)の量を、酵素抗体法(ELISA法)を用いて測定した。これらの結果を図7、8、10に示す。
【0070】
更に、脾臓リンパ球の上記培養後上清中のサイトカイン[詳細にはインターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン4(IL−4)、腫瘍壊死因子TNF−α]の各量を、測定キット(eBioscience社製)を用いて測定した。この測定キットは、酵素抗体法を基本としたものである。これらの結果を図9に示す。
【0071】
また、上記と同様にして、脾臓リンパ球の上記培養後上清中の他のサイトカイン[詳細にはインターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン10(IL−10)]の各量を、測定した結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
上記図7〜図10には、Tukey法による解析を行ってコントロール群と有意差のあった群にp値を示している。また、各図において、「なし」はコントロール群の結果を、「低」は低用量投与群の結果を、「高」は高用量投与群の結果を、それぞれ示している。
【0074】
図7より、β−クリプトキサンチンの添加により、血清中の各抗体量は増加する傾向が見られた。特に高用量投与群のIgA産生量およびIgM産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。なお、いずれの抗体についても、高用量投与群に比べて低用量投与群の方が、概して、抗体産生量が高くなる傾向が見られたが、これは、生体内における至適濃度が存在するためと考察される。
【0075】
また、図8〜10より、β−クリプトキサンチンの添加により、血清中の各抗体量の上昇に加え、脾臓や腸間膜リンパ節リンパ球に存在する免疫蛋白質の産生も上昇することが分かった。
【0076】
詳細には脾臓細胞中の各抗体産生量の結果は図8に示すとおりであり、低用量投与群のIgM産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。IgGでは、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示し、IgAでは、高用量投与群で上昇傾向を示した。
【0077】
また、脾臓細胞中の各サイトカインの産生量の結果は図9および表1に示すとおりである。詳細には図9に示すように、IFN−γの産生量は、低用量投与群および高用量投与群のいずれにおいても、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。TNF−αについても、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示し、IL−4では、低用量投与群で上昇傾向を示した。また、表1に示すように、IL−5、IL−6、およびIL−10のいずれにおいても、低用量投与群で上昇傾向を示し、特にIL-6では、低用量投与群および高用量投与群の両方で有意な上昇が認められた。
【0078】
また、腸間膜リンパ節リンパ球中の各抗体産生量の結果は図10に示すとおりであり、低用量投与群のIgM産生量、並びに低用量投与群および高用量投与群のIgG産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。また、IgAは、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示した。
【0079】
実施例6
本実施例では、β−クリプトキサンチンをマウスに経口投与したとき、腸間膜リンパ節リンパ球内において、IgA、IgG1、およびIgMをコードする遺伝子のmRNAへの転写活性がどの様に変化するかを検討した。
【0080】
詳細には、前述した実施例5において採取した腸間膜リンパ節リンパ球からセパゾール(ナカライテスク製)でRNAを抽出し、逆転写後、リアルタイムPCR法によりmRNAの相対発現量を解析した。抽出したmRNAからオリゴdTプライマーを用いてcDNAを調製した。IgAに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:TGCACAGCTTTCTTCTGCAC、リバース:TGCCAGCCTCACATGTACTC、IgMに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:GGGGCACTGGTCACATACTT、リバース:CAGCTCGTGAGCAACTGAAC、IgG1に対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:CACTGTTGACCCTGCATTTG、リバース:GCACACAGCTCAGACGAAAC、である。本実施例では、βアクチン遺伝子を内部標準物質として用いた。リアルタイムPCRには、ステップワンプラスリアルタイムPCR装置(アプライドバイオサイエンス社製)を用いた。
【0081】
同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0082】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、mRNAの相対発現量を解析した。
【0083】
これらの結果を図11に示す。
【0084】
図11より、β−クリプトキサンチンの経口投与により、腸間膜リンパ節リンパ球のIgA−mRNA、IgG1−mRNA、およびIgM−mRNAの転写活性はいずれも、上昇し、β−クリプトキサンチンの投与量が増加すると、これらの転写活性も上昇することが分かった。この実験結果より、β−クリプトキサンチンによる上記抗体の産生促進作用は、mRNAの転写量の増加に起因すると推察される。すなわち、腸間膜リンパ節リンパ球の上記抗体産生の上昇は、リンパ球内の遺伝子発現レベルの上昇による可能性が示唆された。
【0085】
以上の実験結果より、β−クリプトキサンチンは、生体外(in vitro)のみならず生体内(in vivo)でも免疫蛋白質の産生促進効果を有することが確認された。
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫蛋白質の産生促進剤、および免疫蛋白質の産生促進方法に関するものである。詳細には本発明は、IgA抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgD抗体、およびIgE抗体の免疫グロブリン;インターロイキン(IL−1〜18など)、インターフェロン(IFN−α,β,γなど)、腫瘍壊死因子(TNF−αなど)、コロニー刺激因子(G−CSF,M−CSF,EPO,SCFなど)、成長因子(EGF,FGF,IGF,NGF,PDGF,TGFなど)などのサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)の免疫蛋白質の産生を促進することが可能な免疫蛋白質の産生促進剤、および当該免疫蛋白質の産生促進方法に関するものである。以下では説明の便宜上、免疫グロブリンを中心に説明するが、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン(Immunoglobulin、略称Ig)は、通常抗体と呼ばれる複合蛋白質であり、ヒトにおいてはIgA、IgG、IgM,IgD、IgEの5種類がある。免疫グロブリンは、体内に入った細菌などを破壊する作用、好中球の食細胞を補助する作用、細菌が産生した毒素を中和する作用を有する他、抗生物質の治療効果を高めて人体を感染から守る役割を果たすなど、免疫のなかで大きな役割を担っており、体内診断薬、治療薬等の医薬分野への応用が強く期待されている。
【0003】
免疫グロブリンは、通常、ヒトリンパ球や、ヒト型親細胞と癌患者のリンパ球とを融合させて得られるヒト型ハイブリドーマ細胞などのヒトリンパ球類から産生されるが、その産生効率は極めて低いという問題がある。そこで、免疫グロブリンの産生能を高めるための研究が行なわれている。
【0004】
本発明者らは、免疫賦活活性を有する生体機能調節因子の研究を長年の間、行なっており、例えば、クラゲのコラーゲン抽出物質が免疫賦活作用を有することを知見して、コラーゲンの存在下でヒトリンパ球類を培養して免疫蛋白質を製造する方法(特許文献1)や、放射線処理したコラーゲンなどの存在下で白血球やリンパ球ハイブリドーマを培養して免疫蛋白質を製造する方法(特許文献2)を開示している。また、特許文献3には、複数種の乳製品と酵母を共生培養して得られる発酵乳が、IgM産生促進作用やIFN−γ産生促進作用を有する生理活性ペプチドを含有することを開示している。更に、特許文献4には、魚類の卵の破砕液を抽出して得られた化合物が免疫調整作用を有することを開示している。
【0005】
一方、特許文献5には、搾汁した温州ミカン果汁を遠心分離して得た上澄み液に所定の処理を施した抽出物が、ヒト型ハイブリドーマ細胞の抗体産生を有することが開示されている。この方法によって得られる抽出物は、分子量が少なくとも1万以上のタンパク質であると推察され、産生効率が低いという問題がある。
【0006】
ところで、柑橘類の果皮などは、古くから漢方の原料として使用されている。例えば、温州みかんなどに多く含まれるβ−カロテノイド類のβ−クリプトキサンチンは、悪性腫瘍抑制作用を有することが報告され、注目されている。
【0007】
β−クリプトキサンチンは、α−カロテン、β−カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、ルテインと共にヒト血液中に存在する6種類のカロテノイド類の一つであり、糖尿病、リウマチに関する疾病リスク低減作用、発がん予防作用、骨粗鬆症予防作用などが見出されている。また、特許文献6には、その特許請求の範囲にクリプトキサンチンなど多くの成分を含む免疫賦活剤が記載されている。しかし、特許文献6の実施例の欄には、クリプトキサンチンを用いた例は全く開示されておらず、そもそも特許文献6は、紫外線による皮膚の免疫機能低下を外用により防止するための皮膚免疫賦活剤およびこれを含有するクリームや乳液などの皮膚外用剤に関するものであり、免疫グロブリンやサイトカインなどの免疫蛋白質の産生能向上は全く意図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−204248号公報
【特許文献2】特開2008−212026号公報
【特許文献3】特開2006−76961号公報
【特許文献4】特開2007−91654号公報
【特許文献5】特開平6−98763号公報
【特許文献6】特開平11−246396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、免疫グロブリンやサイトカインなどに代表される免疫蛋白質の産生を促進させる新規な免疫蛋白質の産生促進剤、および免疫蛋白質の産生促進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、β−クリプトキサンチンを含有するところに要旨を有するものである。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、免疫グロブリンおよび/またはサイトカインの産生を促進するものであり、特にIgA、IgG、IgMの免疫グロブリン;インターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、腫瘍壊死因子TNF−αなどのサイトカインの産生促進に極めて有効である。
【0012】
また、上記課題を解決し得た本発明に係る免疫蛋白質の産生促進方法は、β−クリプトキサンチンを非ヒト動物に投与するところに要旨を有するものである。
【0013】
好ましい実施形態において、上記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである。本発明の方法は特に、IgA、IgG、IgMの免疫グロブリン;インターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、腫瘍壊死因子TNF−αなどのサイトカインの産生促進方法として極めて有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特にIgA、IgG、IgMなどの免疫グロブリンや;インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などのサイトカインの産生能が著しく向上するため、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、免疫蛋白質を用いた種々の医療用途に好適に用いられる。具体的には、例えば、免疫グロブリンやサイトカインを原料とする免疫グロブリン製剤、免疫疾患治療薬、免疫機能薬、免疫促進効果を有する健康食品(機能性食
品)・サプリメント、健康維持を目的とした飲料、魚類用機能性飼料、家畜・家禽用機能
性飼料などの用途に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、β−クリプトキサンチンがヒトハイブリドーマHB4C5細胞のIgM産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】図2は、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓細胞の抗体(IgAおよびIgG)の産生に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はIgAの産生に及ぼす影響を、(b)はIgGの産生に及ぼす影響を、それぞれ示している。
【図3】図3は、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓細胞の抗体遺伝子の転写活性に及ぼす影響を示すグラフであり、(a)はIgA−mRNA発現に及ぼす影響を、(b)はIgM−mRNA発現に及ぼす影響を、それぞれ示している。
【図4】図4は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgAの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】図5は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgGの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】図6は、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgMの産生に及ぼす影響を示すグラフである。
【図7】図7は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、血中の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図8】図8は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、脾臓リンパ球の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図9】図9は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、脾臓細胞のサイトカイン産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図10】図10は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、腸間膜リンパ節リンパ球の抗体産生に及ぼすβ−クリプトキサンチンの影響を示すグラフである。
【図11】図11は、マウスにβ−クリプトキサンチンを経口投与したとき、β−クリプトキサンチンがマウス腸間膜リンパ節リンパ球の抗体遺伝子の転写活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、新規な免疫蛋白質の産生促進剤を提供するため、検討を重ねてきた。その結果、β−クリプトキサンチンが、免疫蛋白質の産生促進作用を有することを見出し、本発明を完成した。詳細には、β−クリプトキサンチンが、HB4C5細胞[ヒト骨髄腫細胞株とリンパ球(B細胞)とを細胞融合させたものであり、IgM産生能を有する]の抗体産生に及ぼす影響を検討した結果、HB4C5細胞のIgM産生を促進することが判明した。更に、β−クリプトキサンチンは、マウス脾臓リンパ球のIgG及びIgAの産生を促進すると共に、マウス腸間膜リンパ球のIgG、IgA、及びIgMの産生を促進した。更に、抗体の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した結果、β−クリプトキサンチンは転写段階で上方制御していることが明らかとなった。従って、β−クリプトキサンチンによる免疫蛋白質産生促進作用は、転写促進によるタンパク質性合成系の活性化によるものであることが強く示唆された。更に、β−クリプトキサンチンによる上記の免疫蛋白質産生促進作用は、生体外(in vitro)のみならず、生体内(in vivo)においても見られることが確認された。
【0017】
本明細書において、免疫蛋白質とは、IgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG抗体およびIgM抗体などの免疫グロブリン;インターロイキン(IL−1〜18など)、インターフェロン(IFN−α,β,γなど)、腫瘍壊死因子(TNF−αなど)、コロニー刺激因子(G−CSF,M−CSF,EPO,SCFなど)、成長因子(EGF,FGF,IGF,NGF,PDGF,TGFなど)などのサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)を意味する。
【0018】
本明細書において、「免疫蛋白質産生促進作用を有する」とは、免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞(以下、「免疫蛋白質産生細胞」と呼ぶ。詳細は後述する。)数の増加、または免疫蛋白質産生細胞における免疫グロブリンやサイトカインなどの産生量の増加を意味する。
【0019】
(β−クリプトキサンチン)
β−クリプトキサンチンは、下記の構造式で表わされるカロテノイド類の一種である。前述したように、β−クリプトキサンチンは、発ガン抑制作用などの生理活性を有することは報告されているが、免疫蛋白質の産生促進作用については報告されていない。
【0020】
【化1】
【0021】
β−クリプトキサンチンは、柑橘類の果肉に多く含まれているが、温州ミカンでは、果肉よりも果皮に多く含まれているといわれている。柑橘類としては、例えば、夏みかん、甘夏、イヨカン、温州ミカン、はっさく、夏ダイダイ、ネーブル、柚子、かぼす、グレープフルーツ、すだち、レモン、ポンカン、キンカン、シークワーサーなどのミカン科植物が挙げられる。β−クリプトキサンチンによる高い免疫蛋白質産生促進作用を得るためには、このうち特に、温州ミカン、夏みかん、柚子、イヨカン、ポンカン、キンカン、シークワーサーを使用することが好ましく、より好ましくは温州ミカンである。
【0022】
本発明に用いられるβ−クリプトキサンチンは、柑橘類の果肉を原料とし、公知の方法で抽出することができる。柑橘類の果肉は、予め凍結乾燥した後、できるだけ細かく粉砕してから、抽出を行なうことが好ましい。具体的には、エタノール、メタノール、ヘキサン、酢酸エチル等を用いて抽出すれば良い。β−クリプトキサンチンを効率よく抽出するためには、特に、抽出時間に留意することが好ましく、例えば、室温で6時間以上に制御することが好ましい。
【0023】
あるいは、β−クリプトキサンチンは、本発明者の一人によって発明された独自のパウダー製造方法(特開2009−17822号公報)から得ることもできる。
【0024】
あるいは、温州ミカンを用いる場合は、上述したように果肉のほか果皮中にも多く含まれていることから、以下のようにして抽出することが好ましい。果皮等を凍結乾燥した後、できるだけ細かく粉砕し、有機溶媒を用いて抽出することが好ましく、用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノールなどのアルコール系有機溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式脂肪族炭化水素類を挙げることができる。これらの中でも、エタノール、メタノール、n−ヘキサン、酢酸エチルから選ばれることが好ましく、より好ましくはエタノールを用いる。
【0025】
あるいは、β−クリプトキサンチンは市販品を用いることもできる(例えば、和光純薬工業株式会社)。
【0026】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、上記のβ−クリプトキサンチンを含んでいる。
【0027】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、β−クリプトキサンチンのみから構成されていても良いし、医薬などに通常用いられる公知の担体を組み合わせて用いることもできる。具体的には、製剤学的に許容される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、賦形剤、希釈剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの担体が挙げられる。また、食品分野で慣用されている各種の栄養源、例えば糖質、脂質、蛋白質素材などを添加しても良い。更に、必要に応じて、他の医薬品と併用しても良い。
【0028】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の形態は特に限定されず、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤(懸濁剤、乳剤、注射剤など)、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、軟膏剤などが挙げられる。これら各形態への調製は、上述した慣用の担体を用い、常法に従って行なうことができる。
【0029】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の投与形態は、その製剤形態に応じて適切に選択すれば良い。例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤などの場合は経口投与の形態で用いられ、注射剤などの場合は静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与などの形態で用いられ、坐剤の場合は直腸内投与の形態で用いられる。
【0030】
本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤の投与量は、一律に限定されず、被験者の年齢、性別、疾患の程度などに応じ、所望の効果が発揮されるように適宜調整すれば良いが、例えば、約1〜100mg/kg体重/日(より好ましくは、1〜10mg/kg体重/日)の割合で、おおむね、1週間から2週間程度以上の期間、投与することが推奨される。投与期間は、所望の効果が発揮されるまで、適切な期間、延長することができる。
【0031】
また、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤は、家畜・家禽、魚類などの非ヒト動物用の飼料の形態で用いても良く、これにより、非ヒト動物の免疫蛋白質産生能が促進される。例えばペット飼料、養殖魚飼料、家畜飼料などとして適用することが挙げられる。具体的には、例えば、非ヒト動物用の飼料中に本発明の免疫蛋白質産生促進剤を、非ヒト動物の症状などに応じ、適切な量だけ配合すれば良い。例えば、前述したヒトを対象とした場合と同様、約1〜100mg/kg体重/日(より好ましくは、1〜10mg/kg体重/日)の割合で、おおむね、1週間から2週間程度以上の期間、投与することが推奨される。投与期間は、所望の効果が発揮されるまで、適切な期間、延長することができる。用いられる非ヒト動物用の飼料の組成は限定されず、例えば、市販品を用いることもできる。また、対象となる非ヒト動物も限定されず、例えば、豚、牛、馬、ヤギ、ウサギ、羊などの家畜類;鶏、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどの家禽類;タイ、ハマチ、マグロ、コイ、エビ、アユ、ヒラメなどの魚類などが代表的に例示される。
【0032】
次に、in vitroにおいて、本発明に係る免疫蛋白質の産生促進剤を用い、免疫グロブリンやサイトカインに代表される免疫蛋白質の産生を促進する方法について説明する。本発明では、免疫蛋白質産生促進剤であるβ−クリプトキサンチンの存在下で、免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞(以下、「免疫蛋白質産生細胞」と呼ぶ。)を培養すれば、免疫蛋白質の産生促進剤を添加せずに培養した場合に比べ、上記免疫蛋白質産生細胞中の免疫グロブリンやサイトカインなどの産生が著しく向上する(後記する実施例を参照)。
【0033】
本明細書において、「免疫蛋白質産生細胞」とは、好ましくは免疫グロブリンやサイトカインの免疫蛋白質を産生する能力を有する細胞であり、例えば、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)やマクロファージなどの白血球;上記リンパ球(特にB細胞)と自立増殖能を有する多発性骨髄腫やリンパ腫などのミエローマ細胞との融合細胞(リンパ球ハイブリドーマ)などが代表的に例示される。後者のリンパ球ハイブリドーマは、例えばセンダイウイルスを用いた細胞融合法、ポリエチレングリコール法、または電気パルスによる電気融合など、慣用方法に従って調製することができる。好ましいリンパ球ハイブリドーマとしては、後記する実施例で用いた、ヒト骨髄腫細胞株とリンパ球(B細胞)とを細胞融合させたヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞が挙げられる。HB4C5細胞を使用すると、当該細胞から分泌されるIgMを指標として、免疫蛋白質産生能を容易に測定することができる。
【0034】
これらの白血球またはリンパ球ハイブリドーマは、単一種類のものに限定されず、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、これらの白血球およびリンパ球ハイブリドーマの由来は特に制限されないが、本発明ではヒト由来の免疫蛋白質の産生を促進するという観点から、好ましくはヒト由来である。
【0035】
本発明では、これらの白血球またはリンパ球ハイブリドーマに代表される免疫蛋白質産生細胞を、β−クリプトキサンチンを含有する培地中で培養する。
【0036】
ここで、上記の培地は、上記の免疫蛋白質産生細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、EagleのMEM培地、McCoyの5A培地または7A培地、HamのF10培地またはF12培地、199培地、EDRF培地、RPMI1640培地などや、これらの改良型培地などが挙げられる。これらの培地は、市販品を用いることができる。
【0037】
本発明では、本発明による作用を損なわない限り、上記の培地中に、ウシ血清等の血清を添加しても良い。ただし、血清成分による免疫蛋白質の産生を促進するという観点からは、血清を添加しない無血清培地の使用が好ましい。
【0038】
本発明で使用する上記培地には、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム等の各種添加剤を適宜添加することもできる。例えば、EDRF培地に、上記のインスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、及び亜セレン酸ナトリウム(以下、ITESと呼ぶ場合がある。)を添加すると、血清の影響を受けずに活性を測定できるという利点があることから、後記するハイブリドーマを用いた培養実験では、上記のITESを所定の濃度で添加したEDRF培地(ITES−EDRF培地)を使用している。
【0039】
培地中に添加する免疫蛋白質の産生促進剤(β−クリプトキサンチン)の量は、前述したように、所望の効果を発揮することができる程度に適宜調整すれば良いが、例えば、培養する白血球またはリンパ球ハイブリドーマの量が培地1mLあたり1×104〜5×105cellsである場合、培地1mLあたり、おおむね、0.1〜10,000ng/mL、好ましくは10〜5,000ng/mL、より好ましくは10〜1,000ng/mLの範囲で添加することが望ましい。
【0040】
培養時の温度は、免疫蛋白質を産生できる温度であれば特に制限されず、おおむね、30〜45℃の範囲である。好ましくは35〜42℃であり、より好ましくは36〜38℃である。また、湿度も特に制限されず、相対湿度は、おおむね、80〜100%の範囲であり、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。
【0041】
また、培養に当たり、炭酸ガスを1〜10体積%程度の割合で含む空気の雰囲気下で培養することが好ましい。炭酸ガスの好ましい濃度は、おおむね、3〜8体積%の範囲である。
【0042】
培養時間は、上記免疫蛋白質の産生促進剤の免疫グロブリン産生効率によっても相違するが、おおむね、5時間〜2週間の範囲である。
【0043】
このようにして培地中に免疫蛋白質を効率よく産生した後は、定法に従い、培地から固液分離して免疫蛋白質を単離し、必要に応じてアフィニティクロマトグラフィー等の液体クロマトグラフ法等を用いて精製することにより、所望の免疫蛋白質を取得することができる。
【0044】
このようにして得られる免疫蛋白質、好ましくは前述する免疫グロブリンやサイトカイン(リンフォカイン、モノカイン)、より好ましくは免疫グロブリンは、例えば、免疫疾患治療薬、免疫機能検査薬の有効成分として広く用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0046】
実施例1
本実施例では、β−クリプトキサンチンが、IgMを産生するヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞のIgM産生に及ぼす影響を検討した。
【0047】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−ERDF培地(極東製薬社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチン(和光純薬工業株式会社製)をDMSOに溶解して図1に示すように32〜4000ng/mLの濃度に調整したものを添加すると共に、HB4C5細胞を5×104cells/mLの濃度で接種し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて6時間培養した。培養後、培地中に生成した免疫グロブリン(IgM)の量を、抗ヒトIgMおよびペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgMを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0048】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgMの産生量を測定した。
【0049】
これらの結果を図1に示す。
【0050】
図1より、β−クリプトキサンチンの添加によってIgMは、ほぼ濃度依存的に増加し、最大濃度(4000ng/mL)では、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、HB4C5細胞のIgM産生量が1.6倍に促進された。
【0051】
実施例2
本実施例では、培養系(in vitro)において、β−クリプトキサンチンがマウス脾臓リンパ球の抗体産生に及ぼす影響を調べた。
【0052】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−RPMI 1640培地(SIGMA社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチンをDMSOに溶解して図2(a)または図2(b)に示す濃度に調整したものを添加すると共に、6週齢雌性BALB/cマウスより摘出した脾臓から脾臓リンパ球(1.0×106cells/mL)を添加し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて24時間培養した。培養後、培養上清中の免疫グロブリン(IgAおよびIgG)の量を、抗マウスIgAおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgA、並びに抗マウスIgGおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0053】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgAおよびIgGの産生量を測定した。
【0054】
IgAの結果を図2(a)に、IgGの結果を図2(b)に示す。
【0055】
図2より、β−クリプトキサンチンの添加により、マウス脾臓リンパ球のIgAおよびIgGの産生は、ほぼ濃度依存的に促進された。詳細には、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、IgAは2500ng/mLの添加で2.5倍に増加し、IgGは2500ng/mLの添加で約3.7倍にまで増加した。
【0056】
実施例3
本実施例では、β−クリプトキサンチンの作用で、マウス脾臓リンパ球内において、IgAおよびIgMをコードする遺伝子のmRNAへの転写活性がどの様に変化するかを検討した。
【0057】
詳細には、DMSOに溶解したβ−クリプトキサンチンを終濃度500ng/mLで添加したITES−RPMI 1640培地で24時間培養したBALB/cマウス脾臓リンパ球からセパゾール(ナカライテスク製)でRNAを抽出し、逆転写後、リアルタイムPCR法によりmRNAの相対発現量を解析した。抽出したmRNAからオリゴdTプライマーを用いてcDNAを調製した、IgAに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:TGCACAGCTTTCTTCTGCAC、リバース:TGCCAGCCTCACATGTACTC、IgMに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:GGGGCACTGGTCACATACTT、リバース:CAGCTCGTGAGCAACTGAACである。本実施例では、βアクチン遺伝子を内部標準物質として用いた。リアルタイムPCRには、ステップワンプラスリアルタイムPCR装置(アプライドバイオサイエンス社製)を用いた。
【0058】
同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0059】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、mRNAの相対発現量を解析した。
【0060】
IgA−mRNAの結果を図3(a)に、IgM−mRNAの結果を図3(b)に、それぞれ示す。
【0061】
図3(a)および図3(b)より、β−クリプトキサンチンの刺激により、脾臓リンパ球のIgA−mRNAおよびIgM−mRNAの転写活性は、いずれも約2倍程度促進されることが分かった。この実験結果より、β−クリプトキサンチンによるIgAおよびIgMの産生促進作用は、mRNAの転写量の増加に起因すると推察される。
【0062】
実施例4
本実施例では、培養系(in vitro)において、β−クリプトキサンチンがマウス腸管膜リンパ節リンパ球の抗体産生に及ぼす影響を調べた。
【0063】
詳細には、10μg/mLインスリン、20μg/mLトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したITES−RPMI 1640培地(SIGMA社製)を用意し、これに、β−クリプトキサンチンをDMSOに溶解して図4〜図6に示す濃度に調整したものを添加すると共に、6週齢雌性BALB/cマウスより摘出した腸間膜リンパ節からリンパ球(1.0×106cells/mL)を添加し、37℃、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下にて24時間培養した。培養後、培養上清中の免疫グロブリン(IgA、IgG、およびIgM)の量を、抗マウスIgAおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgA、抗マウスIgGおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG、並びに抗マウスIgMおよびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgMを用いた酵素抗体法(ELISA法)によって測定した。同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0064】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、IgA、IgG、およびIgMの産生量を測定した。
【0065】
IgAの結果を図4に、IgGの結果を図5に、IgMの結果を図6に、それぞれ示す。
【0066】
図4〜図6より、β−クリプトキサンチンの添加により、マウス腸間膜リンパ節リンパ球のIgA、IgG、およびIgMの産生は促進されることが分かった。詳細には、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べ、IgAは625ng/mLの添加で約2.1倍に増加し、IgGは156ng/mLの添加で約1.7倍に増加し、IgMは625ng/mLの添加で約1.4倍に増加した。
【0067】
実施例5
本実施例では、生体内(in vivo)における、β−クリプトキサンチンによる免疫蛋白質の産生促進効果を調べた。
【0068】
詳細には、β−クリプトキサンチン(フナコシ株式会社製)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して10mg/mLの濃度に調整したものを用意した。次に、雌性BALB/cマウス(約6週齢)を7匹/群に分け、各マウスに対し、下記要領でβ−クリプトキサンチンを14日間経口投与した。
(A)高用量投与群(上記濃度のβ−クリプトキサンチンを1mL/kg/日投与、すなわち10mg/kg/日投与)
(B)低用量投与群(上記濃度のβ−クリプトキサンチン溶液をDMSOで5倍希釈し、濃度を2mg/mLに調整した溶液を1mL/kg/日投与、すなわち2mg/kg/日)
(C)コントロール群(DMSOのみ1mL/kg/日投与)
【0069】
14日間の経口投与終了後、15日目にマウスを屠殺し、血清、脾臓細胞、および腸間膜リンパ節を採取した。脾臓細胞および腸間膜リンパ節から直ちにリンパ球を採取し、1×106cells/mLとなるように、5%牛胎児血清(FBS)添加RPMI 1640培地(SIGMA社製)に接種し、37℃で24時間培養した。このようにして得られた培養後の上清中、および上記血清の各免疫グロブリン(IgA、IgG、IgM)の量を、酵素抗体法(ELISA法)を用いて測定した。これらの結果を図7、8、10に示す。
【0070】
更に、脾臓リンパ球の上記培養後上清中のサイトカイン[詳細にはインターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン4(IL−4)、腫瘍壊死因子TNF−α]の各量を、測定キット(eBioscience社製)を用いて測定した。この測定キットは、酵素抗体法を基本としたものである。これらの結果を図9に示す。
【0071】
また、上記と同様にして、脾臓リンパ球の上記培養後上清中の他のサイトカイン[詳細にはインターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン10(IL−10)]の各量を、測定した結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
上記図7〜図10には、Tukey法による解析を行ってコントロール群と有意差のあった群にp値を示している。また、各図において、「なし」はコントロール群の結果を、「低」は低用量投与群の結果を、「高」は高用量投与群の結果を、それぞれ示している。
【0074】
図7より、β−クリプトキサンチンの添加により、血清中の各抗体量は増加する傾向が見られた。特に高用量投与群のIgA産生量およびIgM産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。なお、いずれの抗体についても、高用量投与群に比べて低用量投与群の方が、概して、抗体産生量が高くなる傾向が見られたが、これは、生体内における至適濃度が存在するためと考察される。
【0075】
また、図8〜10より、β−クリプトキサンチンの添加により、血清中の各抗体量の上昇に加え、脾臓や腸間膜リンパ節リンパ球に存在する免疫蛋白質の産生も上昇することが分かった。
【0076】
詳細には脾臓細胞中の各抗体産生量の結果は図8に示すとおりであり、低用量投与群のIgM産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。IgGでは、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示し、IgAでは、高用量投与群で上昇傾向を示した。
【0077】
また、脾臓細胞中の各サイトカインの産生量の結果は図9および表1に示すとおりである。詳細には図9に示すように、IFN−γの産生量は、低用量投与群および高用量投与群のいずれにおいても、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。TNF−αについても、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示し、IL−4では、低用量投与群で上昇傾向を示した。また、表1に示すように、IL−5、IL−6、およびIL−10のいずれにおいても、低用量投与群で上昇傾向を示し、特にIL-6では、低用量投与群および高用量投与群の両方で有意な上昇が認められた。
【0078】
また、腸間膜リンパ節リンパ球中の各抗体産生量の結果は図10に示すとおりであり、低用量投与群のIgM産生量、並びに低用量投与群および高用量投与群のIgG産生量は、β−クリプトキサンチンを添加しないコントロール群に比べて有意に上昇した。また、IgAは、低用量投与群および高用量投与群の両方で上昇傾向を示した。
【0079】
実施例6
本実施例では、β−クリプトキサンチンをマウスに経口投与したとき、腸間膜リンパ節リンパ球内において、IgA、IgG1、およびIgMをコードする遺伝子のmRNAへの転写活性がどの様に変化するかを検討した。
【0080】
詳細には、前述した実施例5において採取した腸間膜リンパ節リンパ球からセパゾール(ナカライテスク製)でRNAを抽出し、逆転写後、リアルタイムPCR法によりmRNAの相対発現量を解析した。抽出したmRNAからオリゴdTプライマーを用いてcDNAを調製した。IgAに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:TGCACAGCTTTCTTCTGCAC、リバース:TGCCAGCCTCACATGTACTC、IgMに対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:GGGGCACTGGTCACATACTT、リバース:CAGCTCGTGAGCAACTGAAC、IgG1に対するcDNA増幅のために用いたプライマー配列は、フォワード:CACTGTTGACCCTGCATTTG、リバース:GCACACAGCTCAGACGAAAC、である。本実施例では、βアクチン遺伝子を内部標準物質として用いた。リアルタイムPCRには、ステップワンプラスリアルタイムPCR装置(アプライドバイオサイエンス社製)を用いた。
【0081】
同様の実験を3回繰り返して行い(n=3)、平均値±標準偏差(SD)を算出した。
【0082】
比較のため、β−クリプトキサンチンを添加せずに上記と同様に培養を行い、mRNAの相対発現量を解析した。
【0083】
これらの結果を図11に示す。
【0084】
図11より、β−クリプトキサンチンの経口投与により、腸間膜リンパ節リンパ球のIgA−mRNA、IgG1−mRNA、およびIgM−mRNAの転写活性はいずれも、上昇し、β−クリプトキサンチンの投与量が増加すると、これらの転写活性も上昇することが分かった。この実験結果より、β−クリプトキサンチンによる上記抗体の産生促進作用は、mRNAの転写量の増加に起因すると推察される。すなわち、腸間膜リンパ節リンパ球の上記抗体産生の上昇は、リンパ球内の遺伝子発現レベルの上昇による可能性が示唆された。
【0085】
以上の実験結果より、β−クリプトキサンチンは、生体外(in vitro)のみならず生体内(in vivo)でも免疫蛋白質の産生促進効果を有することが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−クリプトキサンチンを含有することを特徴とする免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項2】
前記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである請求項1に記載の免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項3】
前記免疫グロブリンはIgA、IgG、IgMであり、前記サイトカインはインターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、または腫瘍壊死因子TNF−αである請求項2に記載の免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項4】
β−クリプトキサンチンを非ヒト動物に投与して免疫蛋白質の産生を促進する方法。
【請求項5】
前記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫グロブリンはIgA、IgG、IgMであり、前記サイトカインはインターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、または腫瘍壊死因子TNF−αである請求項5に記載の方法。
【請求項1】
β−クリプトキサンチンを含有することを特徴とする免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項2】
前記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである請求項1に記載の免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項3】
前記免疫グロブリンはIgA、IgG、IgMであり、前記サイトカインはインターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、または腫瘍壊死因子TNF−αである請求項2に記載の免疫蛋白質の産生促進剤。
【請求項4】
β−クリプトキサンチンを非ヒト動物に投与して免疫蛋白質の産生を促進する方法。
【請求項5】
前記免疫蛋白質は免疫グロブリンおよび/またはサイトカインである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫グロブリンはIgA、IgG、IgMであり、前記サイトカインはインターフェロン−γ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン10、または腫瘍壊死因子TNF−αである請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−180303(P2012−180303A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43850(P2011−43850)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(507192378)伊方サービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(507192378)伊方サービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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