説明

免震基礎及び車両の固定方法

【課題】停車している車両の免震効果を向上させることができる免震基礎を提供する。
【解決手段】免震基礎1は、免震下部基礎2、免震下部基礎2上に配置された免震下部基礎2に設置された複数の免震装置3、複数の免震装置3に支持された免震上部基礎4、固定壁5、減衰機構7及びばね機構8を備える。対向する固定壁5が免震上部基礎4に設けられる。減衰機構7及びばね機構8が、各固定壁5の対向するそれぞれの側面で固定壁5の長手方向の二箇所に、それぞれ、取り付けられる。牽引車体6a及び被牽引車体6bを有する車両6が免震上部基礎4上を移動し、被牽引車体6bが対向する固定壁5の間に到達したとき、車両6の移動が停止される。その後、それぞれの減衰機構7及びばね機構8が、被牽引車体6bの両側面に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震基礎及び車両の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震床構造が特公平7−939号公報に記載されている。この免震床構造は、水平方向に変位可能に免震支持された可動フロア、この可動フロアのまわりに所定の間隔をおいて配置された固定フロア、両フロアの間に配置されて水平方向相対変位を吸収する緩衝手段を備えている。さらに、緩衝手段が相互にすべる斜面を有する複数ブロックから構成されている。
【0003】
特開2006−44355号公報は、車両の衝突転倒防止装置を記載している。(特許文献2)がある。台車に固定された車体及び車体の先端には下方に取り付けられた排障器を有する鉄道車両において、排障器がレールの上方に配置されるクロスフレームを有しており、車両の衝突転倒防止装置である2つのガイド部がクロスフレームに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−939号公報
【特許文献2】特開2006−44355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のそれぞれの従来技術では、以下に述べるような、免震基礎上に停車している車両が地震によって振動した場合に、車両の免震効果を向上させることについて、必ずしも十分な配慮がなされていない。
【0006】
地震により免震基礎が振動した場合には、免震基礎上に停車している車両が、長周期の水平方向振動及び直下型地震による著大な上下振動の影響で、振動したり、可能性としては非常に低いが横転したりする事態を想定する必要がある。また、地震が収束した後に、その車両が速やかに走行できることが重要である。さらに、例えば、車両に搭載されている車載品であるガスタービン発電機を駆動する場合、車両自体が振動源となることが懸念される。
【0007】
一般に、車両が停車している免震基礎は、平らな構造をしており、車両を免震固定する手段を有していない。このような構造の免震基礎においては、この上に停車している車両が地震によって振動をはじめると、車両を免震固定する手段が無いために、免震基礎上にて、車両が激しく振動したり、最悪の場合には横転したりすることが懸念される。このような事態において、車両が免震基礎に対して剛に固定されている場合には、振動の影響で車両上の車載品が損傷することが懸念される。
【0008】
本発明の目的は、地震時において停車している車両の免震効果を向上させることができる免震基礎及び車両の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、下部基礎部材と、下部基礎部材上に配置された下部基礎部材に設置された複数の免震装置と、複数の免震装置に支持された上部基礎部材と、上部基礎部材に取り付けられた壁状構造物と、車両が上部基礎部材上に存在するとき、壁状構造物の、その車両に対向する側面に取り付けられて車両に取り外し可能に取り付けられる減衰機構及びばね機構とを備えたことにある。
【0010】
上部基礎部材上で壁状構造物に対向して車両が配置されている状態で地震が発生したとき、上部基礎部材上の車両が振動して車両重心点周りの転倒モーメントが発生した場合でも、減衰機構による減衰力及びばね機構によるばね力がそれぞれ作用して転倒モーメントに対抗するため、車両の転倒を防止することができる。このため、車両に対する免震効果が向上する。
【0011】
下部基礎部材と、下部基礎部材上に配置された下部基礎部材に設置された複数の免震装置と、複数の免震装置に支持された上部基礎部材と、上部基礎部材に互いに対向して取り付けられて相互間に車両が配置可能な間隔をあけて配置され、車両の両側面にそれぞれに設けられた突出部材を別々に保持する、対向する側面に支持部材がそれぞれ設けられる一対の壁状構造物と、その車両が一対の壁状構造物の相互間に配置されるとき、この車両を上下方向に移動させる、上部基礎部材に設けられたリフト装置とを備えることによっても、上記した目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地震時において、免震基礎の上部基礎部材に停車している車両の免震効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の免震基礎の側面図である。
【図2】図1に示す免震基礎の正面図である。
【図3】図2に示された、減衰機構及びばね機構を含む車両固定機構の剛性を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例である実施例2の免震基礎の側面図である。
【図5】本発明の他の実施例である実施例3の免震基礎の正面図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例4の免震基礎の正面図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例5の免震基礎の側面図である。
【図8】図7に示す免震基礎の正面図である。
【図9】実施例4において車両を免震基礎の固定部材で保持した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の好適な一実施例である実施例1の免震基礎を、図1及び図2を用いて説明する。
【0016】
本実施例の免震基礎1は、免震下部基礎(下部基礎部材)2、複数の免震装置3及び免震上部基礎(上部基礎部材)4、固定壁(壁状構造物)5、及び車両固定機構である減衰機構7及びばね機構8を備えている。複数の免震装置3が、免震下部基礎2の上面に所定の間隔で配置され、免震下部基礎2に設置される。免震上部基礎4が、複数の免震装置3に設置され、これらの免震装置によって支持される。
【0017】
車両6は牽引車体6a及び被牽引車体6bを有する。牽引車体6a及び被牽引車体6bには、それぞれ、複数の車輪6bが取り付けられている。
【0018】
一対の固定壁5が、互いに対向して、免震上部基礎4の上面に剛に固定されている。一対の固定壁5間の間隔Wwは、車両6の横幅Wvよりも広くなっている。ここで、車両6の横幅Wvと固定壁5の間隔Wwは、Wv<Wwを満足するように設定される。車両固定機構である減衰機構7及びばね機構8が、各固定壁5の互いに対向する側面に、前後二箇所において向かい合って、それぞれ、取り付けられている。減衰機構7として、例えば、オイルダンパが用いられ、ばね機構8として、例えば、コイルばねが用いられる。
【0019】
免震基礎1を用いた車両の固定方法を以下に説明する。牽引車体6aは、車載品(例えば、ガスタービン発電機)が搭載されている被牽引車体6bを牽引しながら免震上部基礎4の上面を移動し、被牽引車体6bが一対の固定壁5の間に到達したとき(被牽引車体6bが一対の固定壁5に対向したとき)、移動を停止する。車両6が停止した後、一対の固定壁5に取り付けられたそれぞれの減衰機構7及びばね機構8が、固定壁5に対向している、被牽引車体6bの両側の側面に、それぞれ取り外し可能に取り付けられる。減衰機構7及びばね機構8によって車両6、具体的には、被牽引車体6bが、減衰機構7及びばね機構8を取り付けることによって固定壁5に固定される。車載品が搭載されていない被牽引車体6bが対向する固定壁5の間に到達したときにおいても、対向する固定壁5に取り付けられたそれぞれの減衰機構7及びばね機構8が、被牽引車体6bの両側の側面にそれぞれ取り付けられる。
【0020】
車両6が免震上部基礎4上に停車しているときに地震が発生した場合には、以下に述べる理由により、車両6の転倒及び車両6上の車載品の損傷を防止することができる。複数の免震装置3で支持される免震上部基礎4上の車両6が地震によって振動し、車両重心点G周りの転倒モーメントTが発生した場合に、減衰機構7による減衰力Fc及びばね機構8によるばね力Fkが作用して、転倒モーメントTに対抗するため、車両6の転倒及び被牽引車体6bに搭載された車載品の損傷を防止することができる。地震が収束した後において、それぞれの固定壁5に設置された減衰機構7及びばね機構8が被牽引車体6bの両側面から取り外される。減衰機構7及びばね機構8を被牽引車体6bの両側面から取り外すことにより、被牽引車体6bが減衰機構7及びばね機構8による拘束から解放され、車両6を速やかに移動させることができる。また、万が一、免震装置3に不具合が発生して免震機能を喪失した場合にも、減衰機構7及びばね機構8により、車両6への地震入力を軽減することができる。
【0021】
本実施例によれば、免震装置3で支持された免震上部基礎4上に停車している車両6が、免震上部基礎4上に設置された固定壁5に設けられた減衰機構7及びばね機構8によって固定壁5に固定されるの、地震によって免震上部基礎4上の車両6が振動して車両重心点周りの転倒モーメントが発生した場合でも、減衰機構7による減衰力及びばね機構8によるばね力が作用して転倒モーメントに対抗するため、地震時において免震上部基礎4上に停車している車両6の転倒及び車両6上の車載品の損傷を防止することができる。この結果、車両6に対する免震効果が向上する。
【0022】
車載品を搭載していない車両6が免震上部基礎4上に停車しており、この車両6の被牽引車体6bの両側面にそれぞれ減衰機構7及びばね機構8を取り付けても、地震時において車両6の転倒を防止することができる。
【0023】
また、ばね機構8のばねとして、図3に示された折れ線Lの特性、すなわち、変位に対してAという不感帯を有する剛性Kの特性を有するばねを用いてもよい。
【0024】
本実施例の免震基礎1では、減衰機構7及びばね機構8が別体になっているが、減衰及びばねの両作用を併せ持つ防振ゴムまたは液体封入式の防振ゴムを用いてそれらを一体化しても良い。
【0025】
本実施例では一対の固定壁5を免震上部基礎4に設置しているが、1つの固定壁5を免震上部基礎4に設置してこの固定壁5に設置された減衰機構7及びばね機構8を、車両6の被牽引車体6bの1つの側面に取り外し可能に取り付けても良い。この場合には、車両6が免震上部基礎4上を移動して1つの固定壁5に対向したとき、車両6を停止させて固定壁5に設置された減衰機構7及びばね機構8を車両6の1つの側面に取り外し可能に取り付ける。
【0026】
また、車両6をマスとし,減衰機構7,ばね機構8を介して,固定壁5に設置された振動系は、免震基礎の免震周期(固有振動数)と共振しないように設定しても良く、具体的には、10Hz以上あるいは、0.1Hz以下に設定するとよい。
【実施例2】
【0027】
本発明の他の実施例である実施例2の免震基礎を、図4を用いて説明する。
【0028】
本実施例の免震基礎1Aは、実施例1の免震基礎1において固定壁5を固定壁5Aに替えた構成を有する。免震基礎1Aの他の構成は免震基礎1の構成と同じである。固定壁5Aの長さ(免震上部基礎4上に停車した被牽引車体6bの長手方向における長さ)は、実施例1で用いられる固定壁5の長さよりも短くなっている。固定壁5Aの高さは固定壁5の高さと同じである。互いに対向して配置された一対の固定壁5Aが、2組、免震上部基礎4の上面に設置される。これら2組の固定壁5Aは、免震上部基礎4上に停車した被牽引車体6bの長手方向において、間隔をおいて配置される。これら二対の固定壁5Aの互いに対向する各側面に、減衰機構7及びばね機構8がそれぞれ取り外し可能に取り付けられる。
【0029】
免震基礎1Aを用いた車両の固定方法を以下に説明する。牽引車体6aは、車載品(例えば、ガスタービン発電機)が搭載されている被牽引車体6bを牽引しながら免震上部基礎4の上面を移動し、被牽引車体6bが一対の固定壁5ごとに固定壁5Aの間に到達したとき(被牽引車体6bが各固定壁5に対向したとき)、移動を停止する。車両6が停止した後、停車された被牽引車体6bが対向している二対の固定壁5Aに取り付けられたそれぞれの減衰機構7及びばね機構8が、被牽引車体6bの両側の側面にそれぞれ取り付けられる。減衰機構7及びばね機構8によって車両6、具体的には、被牽引車体6bが、減衰機構7及びばね機構8を取り付けることによって二対の固定壁5Aに固定される。
【0030】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、被牽引車体6bの側面の開放部分が広くなるため、停車状態での車両6、特に、被牽引車体6bの側面へのアクセスが容易となる。この結果、車両6の保守が容易となって保守作業効率が向上する。
【実施例3】
【0031】
本発明の他の実施例である実施例3の免震基礎を、図5を用いて説明する。
【0032】
本実施例の免震基礎1Bは、実施例1の免震基礎1において固定壁5をトンネル状固定壁52に替えた構成を有する。免震基礎1Bの他の構成は免震基礎1の構成と同じである。トンネル状固定壁52は、免震上部基礎4の上面に設置されて互いに対向して配置される一対の固定壁5、これらの固定壁5の上端部に取り付けられた天井部52Aを有している。各固定壁5はトンネル状固定壁52の側壁である。トンネル状固定壁52において、対向する固定壁5間の距離がWtであり、免震上部基礎4の上面から天井部52Aの下面までの高さはHtである。
【0033】
減衰機構7及びばね機構8が、実施例1と同様に、各固定壁5の互いに対向する側面に、前後二箇所において向かい合って、それぞれ、取り付けられている。
【0034】
免震基礎1Bを用いた車両の固定方法を以下に説明する。牽引車体6aは、車載品が搭載されている被牽引車体6bを牽引しながら免震上部基礎4の上面を移動し、被牽引車体6bがトンネル状固定壁52内に到達したとき(被牽引車体6bがトンネル状固定壁52の固定壁5に対向したとき)、移動を停止する。車両6が停止した後、対向する固定壁5に取り付けられたそれぞれの減衰機構7及びばね機構8が、被牽引車体6bの両側の側面にそれぞれ取り外し可能に取り付けられる。減衰機構7及びばね機構8によって車両6、具体的には、被牽引車体6bが、減衰機構7及びばね機構8を取り付けることによってトンネル状固定壁52、すなわち、免震基礎1に固定される。車載品が搭載されていない被牽引車体6bがトンネル状固定壁52内に到達したときにおいても、対向する固定壁5に取り付けられたそれぞれの減衰機構7及びばね機構8が、被牽引車体6bの両側の側面にそれぞれ取り付けられる。
【0035】
車両6の幅をWv、及び車両6の高さをHvとしたとき、トンネル状固定壁52における距離Wt及び高さHtを、距離WtがWv<Wtを満足して高さHtがHv<Htを満足するように、設定する。
【0036】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、対向している各固定壁5が天井部52Aによって連結されているので、地震時に発生する車両6の転倒モーメントTに対抗する減衰力Fc及びばね力Fkを受ける固定壁52の強度が増加し、固定壁52の耐震性を高めることができる。
【実施例4】
【0037】
本発明の他の実施例である実施例4の免震基礎を、図6を用いて説明する。
【0038】
本実施例の免震基礎1Cは、実施例1の免震基礎1において固定壁5を免震建屋10に替えた構成を有する。免震基礎1Cの他の構成は免震基礎1の構成と同じである。免震建屋10は、対向する2つの側壁10及び屋根10Bを有する。各側壁10Aが免震上部基礎4の上面に設置され、屋根10Bが各側壁部10Aの上端部に設置される。1組の減衰機構7A及びばね機構8Aが一方の側壁10Aの内面に取り付けられ、他の1組の減衰機構7B及びばね機構8Bが屋根10Bの下面に取り付けられる。
【0039】
免震基礎1Cを用いた車両の固定方法を以下に説明する。牽引車体6aは、車載品が搭載されている被牽引車体6bを牽引しながら免震建屋10内に入り、免震上部基礎4の上面を移動して、被牽引車体6bが減衰機構及びばね機構の位置に到達したとき(被牽引車体6bがその側壁10A及び屋根10Bにそれぞれもお受けられているそれぞれの減衰機構及びばね機構に対向したとき)、移動を停止する。車両6が停止した後、側壁10Aに設けられた減衰機構7A及びばね機構8Aを、被牽引車体6bの、この側壁10Aに対向している側面に取り外し可能に取り付ける。さらに、屋根10Bに設けられた減衰機構7B及びばね機構8Bを、被牽引車体6bの屋根に取り付ける。これらの減衰機構7及びばね機構8を被牽引車体6bに取り付けるよって、車両6、すなわち、被牽引車体6bが、ト免震建屋10、すなわち、免震基礎1に固定される。車載品が搭載されていない被牽引車体6bが免震建屋10内に到達したときにおいても、減衰機構7A,7B及びばね機構8A,8Bが被牽引車体6bの1つの側面及び屋根にそれぞれ取り付けられる。
【0040】
本実施例の免震基礎1Cを用いることによって、免震上部基礎4上に停車している車両6が地震によって振動し、車両重心点G周りの転倒モーメントTが発生した場合に、免震建屋10の側壁10Aと車両6の間においては、減衰機構7Aによる減衰力Fc1及びばね機構8Aによるばね力Fk1がそれぞれ作用し、免震建屋10の屋根10Bと車両6の間においては、減衰機構7Bによる減衰力Fc2及びばね機構8Bによるばね力Fk2がそれぞれ作用し、車両6の転倒モーメントTに対抗するため、車両6の転倒を防止することができる。
【0041】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、免震建屋10の側壁10A及び屋根10Bを、車両6の固定に活用することで、設備の簡略化を図ることができる。
【実施例5】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例5の免震基礎を、図7及び図8を用いて説明する。
【0043】
本実施例の免震基礎1Dは、実施例1の免震基礎17において、固定壁5を固定壁5Bに替え、さらに、支持部材11及びリフト機構(リフト装置)12を新たに設けた構成を有する。なお、免震基礎1は、免震上部基礎として免震上部基礎4Aを有している。免震基礎1Dの他の構成は免震基礎1の構成と同じである。
【0044】
実施例1で用いられる固定壁5よりも高さが低い一対の固定壁5Bが、互いに離されて対向して免震上部基礎4の上面に設置される。固定壁5Bの高さは牽引車体6aの高さよりも低くい。支持部材11が、固定壁5Bの上面よりも下方の位置で各固定壁5Bの互いに対向する側面に取り付けられる。免震上部基礎4Aには、上方に向かって解放された孔部15が形成されている。この孔部15は免震上部基礎4Aを貫通していない。
【0045】
リフト機構12は、長方形をした板状の車両支持部材13及び駆動アクチェータ(駆動装置)14を有する。車両支持部材13が駆動アクチェータ14の上に取り付けられている。リフト機構12が、免震上部基礎4Aに形成された孔部15内に配置される。駆動アクチェータ14が孔部15の底部で免震上部基礎4Aに取り付けられている。
【0046】
免震基礎1Dを用いた車両の固定方法を以下に説明する。車両6が車両支持部材13の上に載ることができるように、駆動アクチェータ14を駆動して車両支持部材13の高さが調節される。その後、牽引車体6aは、車載品(例えば、ガスタービン発電機)が搭載されている被牽引車体6bを牽引しながら車両支持部材13上を移動し、被牽引車体6bが対向する固定壁5Bの間に位置するまで(被牽引車体6bが固定壁5Bに対向する位置まで)移動する。被牽引車体6bが対向する固定壁5Bの間に達したとき、牽引車体6aが停止する。免震上部基礎4の上面を移動し、被牽引車体6bが一対の固定壁5ごとに固定壁5Aの間に到達したとき、移動を停止する。車両6が車両支持部材13上を移動しているとき、車両支持部材13は、図8に示すように、車両支持部材13の上面が免震上部基礎4Aの上面よりも上方に位置している。この状態で、車両6が車両支持部材13の上面に上がりやすくするために、車両支持部材13の前方及び後方のそれぞれの端部には、免震上部基礎4Aの上面に向かう傾斜面が形成されている。
【0047】
平板状の突出部材6Dが、高さ方向において車両6の重心点Gの高さで、被牽引車体6bの長手方向に伸びる両側面にそれぞれ取り付けられている。これらの突出部材6dは、被牽引車体6bの長手方向の全長に亘って存在している。図8の状態で、車両6が車両支持部材13上を移動しているとき、各突出部材6dは、対向している各固定壁5Bに設けた支持部材11よりも間隙L1だけ上方に位置している。この状態は、駆動アクチェータ14が車両支持部材13を上方に向かって押し上げることによって形成される。
【0048】
リフト機構12の車両支持部材13が駆動アクチェータ14により押し上げられるので、車両支持部材13上の車両6も上方に向かって持ち上げられた状態になっている。突出部材6dと支持部材11の間に間隙L1が形成されるので、車両6が車両支持部材13上を移動するとき、突出部材6dの下面が支持部材11の上面に接触しない。このため、車両6が車両支持部材13上で容易に移動することができる。
【0049】
被牽引車体6bが対向する固定壁5間に完全に入ったとき、車両6の移動を停止すると共に、駆動アクチェータ14を駆動して車両支持部材13を下降させる。図9に示すように、車両支持部材13の上面が、高さ方向において、免震上部基礎4Aの上面と同じ高さになったとき、車両6の車輪6cと車両支持部材13の上面の間に間隙L2が形成され、被牽引車体6bの両側面に設けられたそれぞれの突出部材6dが、対向する固定壁5に設けられた各支持部材11によって支持される。このため、被牽引車体6bが各支持部材11を介して固定壁5に保持される。被牽引車体6bの重量Fnが各固定壁5に負荷される。
【0050】
地震が終息した後、車両6を免震上部基礎4Aの外へ移動させるときには、駆動アクチェータ14を駆動して車両支持部材13を上昇させて、突出部材6dの下面と支持部材11の上面の間に間隙L1を形成した後に、車両8を車両支持部材13の上面から免震上部基礎4Aの上面に向かって移動させ、さらに、免震上部基礎4Aの外へ移動させる。
【0051】
地震時において、被牽引車体6bの水平方向における振動を、互いに接触している支持部材11の上面と突出部材6dの下面との間の摩擦により減衰することができる。本実施例においても、被牽引車体6bの重量が重心点Gの高さ付近で支持されるため、重心点G周りの転倒モーメントTに対抗する車両6の静的自重が有効に活用され、車両6の転倒及び車両6上の車載品の損傷を防止することができる。この結果、車両6に対する免震効果が向上する。本実施例は、車載品を搭載していない被牽引車体6bに対しても、同様な効果を得ることができる。
【0052】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0053】
なお、本実施例で用いる駆動アクチュエータ14の駆動源には、電動機または油圧を用いるとよい。また、停電により、電力が使用できなくなることを想定して、機械的な倍力機構により、リフト機構11の車両支持部材13を手動で上下動させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C,1D…免震基礎、2…免震下部基礎、3…免震装置、4、4A…免震上部基礎、5、5A、5B…固定壁、6…車両、6a…牽引車体、6b…被牽引車体、6d…突出部材、7、7A、7B…減衰機構、8、8A、8B…ばね機構、10…免震建屋、10A…側壁、10B…屋根、11…支持部材、12…リフト機構、13…車両支持部材、14…駆動アクチュエータ、52…トンネル状固定壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部基礎部材と、前記下部基礎部材上に配置された前記下部基礎部材に設置された複数の免震装置と、前記複数の免震装置に支持された上部基礎部材と、前記上部基礎部材に取り付けられた壁状構造物と、車両が前記上部基礎部材上に存在するとき、前記壁状構造物の、前記車両に対向する側面に取り付けられて前記車両に取り外し可能に取り付けられる減衰機構及びばね機構とを備えたことを特徴とする免震基礎。
【請求項2】
前記壁状構造物を、複数、前記車両の長手方向において、一列に並べて前記上部基礎部材に設けた請求項1に記載の免震基礎。
【請求項3】
前記壁状構造物が、前記上部基礎部材に設けられたトンネル状構造物の側壁部である請求項1に記載の免震基礎。
【請求項4】
前記壁状構造物が、前記上部基礎部材に設けられた免震建屋の側壁部であり、前記減衰機構及び前記ばね機構が、1つの前記側壁部、及び前記免震建屋の屋根の下面にそれぞれ取り付けられている請求項1に記載の免震基礎。
【請求項5】
前記壁状構造物が、前記上部基礎部材に互いに対向して取り付けられて相互間に車両が配置可能な間隔をあけて配置される一対の壁状構造物であり、前記減衰機構及び前記ばね機構が前記一対の壁状構造物にそれぞれ設けられる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の免震基礎。
【請求項6】
下部基礎部材と、前記下部基礎部材上に配置された前記下部基礎部材に設置された複数の免震装置と、前記複数の免震装置に支持された上部基礎部材と、前記上部基礎部材に互いに対向して取り付けられて相互間に車両が配置可能な間隔をあけて配置され、車両の両側面にそれぞれに設けられた突出部材を別々に保持する、対向する側面に支持部材がそれぞれ設けられる一対の壁状構造物と、前記車両が前記一対の壁状構造物の相互間に配置されるとき、この車両を上下方向に移動させる、前記上部基礎部材に設けられたリフト装置とを備えたことを特徴とする免震基礎。
【請求項7】
前記リフト装置が、上方に向かって解放されて底部を有する、前記上部基礎部材に形成された孔部の前記底部に設置された駆動装置、及び駆動装置によって上下動する車両支持部材を有する請求項6に記載の免震基礎。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された免震基礎を用いた車両の固定方法であって、
前記車両が前記上部基礎部材上を移動して対向する前記一対の壁状構造物の間に到達して停車された前記車両のそれぞれの側面に、前記減衰機構及び前記ばね機構を取り外し可能に取り付けることを特徴とする車両の固定方法。
【請求項9】
停車している前記車両を移動させるとき、前記減衰機構及び前記ばね機構を前記車両の各側面から取り外す請求項8に記載の車両の固定方法。
【請求項10】
請求項6または7に記載された免震基礎を用いた車両の固定方法であって、
前記車両が前記上部基礎部材上を移動して対向する前記一対の壁状構造物の間に到達して停車された後、前記車両が載っている前記リフト装置を下降させ、
前記車両に設けられた前記突出部材を前記壁状構造物に設けられた前記支持部材によって保持することを特徴とする車両の固定方法。
【請求項11】
停車している前記車両を移動させるとき、前記リフト装置を上昇させて前記突出部材と前記支持部材の間に間隙を形成する請求項10に記載の車両の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−53463(P2013−53463A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192566(P2011−192566)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】