説明

免震構造用水平復元ばね装置の構築方法

【課題】総重量が極端に小さい構造物や機器類など軽量物を免震構造化できる低いバネ定数を有し、且つ数10cm以上の大きな水平変形性能を有する免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法を提供する。
【解決手段】小型のゴム単体で構成されるゴムブロックの上下両端に端部鋼板を備えたゴムブロックユニットを製作する。このゴムブロックユニットを同一レベルに4個以上配置し、それを連結板で一体化したゴム柱階層を構成する。このゴム柱階層を上下方向に複数階積み重ねて多層階ゴム柱骨組みを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震から構造物を安全に守ることのできる免震装置の中で、特に重量の小さな小規模構造物や機器・展示物等の軽量物を主対象とする免震装置に係る免震構造用水平復元ばね装置の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震構造は、大地震時の強い地震動に対して構造物の揺れそのものを低減できるので、建物の構造骨組みだけでなく、家具や設備備品などの内部収容物を含めた建物全体の耐震安全性を高めることができる。
【0003】
免震構造は、積層ゴムの実用化に伴い、ビル建築や橋梁など重量の大きな大型構造物から実現されたが、間もなくその優れた性能を木造戸建て住宅や機器類などの重量の小さい軽量構造物への適用も試みられるようになった。種々の積層ゴム系免震装置の他にも、すべり型免震装置、転がり型免震装置など、各種の免震装置が開発されている。
【0004】
軽量構造物用の免震装置の特徴は、支持重量が小さいので荷重支持は容易になる一方で、必要な変形性能は大型構造物と変わらないことである。小さな重量を支持するには積層ゴムやすべり支承など小型のアイソレータでよいが、小型の積層ゴムアイソレータで大きな水平変形性能を確保することは却って難しい課題になる。
【0005】
また軽量構造物に優れた免震効果を発揮させるためには、免震周期(積層ゴム等の復元材による接線周期)を少なくとも4秒以上、理想的には6秒程度に伸ばすことが必要であるが、構造物重量が小さいためその復元材の水平ばね定数は極めて小さな値にする必要があり、復元材としてのばねを構成するゴム体の断面積を小さくする必要がある。
【0006】
その為に、積層ゴムは使わずに、ゴム紐形状のばねを利用しようとするものがある(特許文献1参照)。また、ゴム体内部に孔をあけて筒状ゴムとしたものがある(特許文献2参照)。同様に、積層ゴム体内部に大きな孔をあけてリング状積層ゴムとしてゴム体(ばね)の断面積を小さくした上で、その内部に鉛直荷重を支持する球体支承を組み合わせたものもある(特許文献3参照)。
【0007】
また、小型の積層ゴム体を上下方向に積み重ねた多段型積層ゴムとして、小型の積層ゴムで大きな水平変形を確保しようとするものがある(特許文献4および5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−307045号公報
【特許文献2】特開2004−028296号公報
【特許文献3】特開平11−125310号公報
【特許文献4】特開2004−28302号公報
【特許文献5】特開2001−263416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のようなこれまでの技術はそれぞれに課題を有しており、完璧といえる軽量構造物用復元装置は実現されていないのが現状である。
【0010】
特許文献1記載のものは、対象構造物の重量に合わせて比較的簡便に復元ばねを提供できるが、引張力に対してしかばね特性が発揮できないので、1方向に対して正負側2組のばねを配置する必要があり、配置や使用性に難点がある。またばねの圧縮方向に変形した場合、ばね自体が折れ曲がったり、取り付け部がぶつかって干渉する恐れもある。
【0011】
特許文献2および3記載のものは、ゴム体が薄い膜状もしくはリング状になっているため、大変形が生じるとゴム膜(リング)面に座掘現象が生じ、ばね特性が崩れ、線形の復元力特性にならない難点がある。
【0012】
特許文献4および5記載の多段型積層ゴムは、その積層段数を増やせば大きな水平変形性能を確保することができるが、小型といえども多数の積層ゴムを必要とし且つ複雑な装置となるので、装置形状が全体としてはかなり大きなものになり小さな軽量構造物には不釣り合いで、現実の配置に困難を伴うことが多い。またコストも高価になり、経済的にも現実的でないという大きな欠陥を有している。
【0013】
また、特許文献2〜5記載の対象構造物は、戸建て住宅などで、軽量構造物といっても総重量が数十トン〜百トン程度はあることが前提となっており、総重量が20トン以下(ねじれ対策で最少4個の装置とすると1基当たりの負担重量は5トンになる)、極端な場合には総重量1トン以下のようになると、それに相応しいバネ定数は設計不可能となる。
【0014】
すなわち、本発明が解決をめざす課題は以下のとおりである。
(1)対象物の総重量が20トン以下、場合によっては1トン以下のような場合にも免震周期数秒(5〜6秒)程度になる極めて小さなばね定数の水平方向復元ばねを提供できること。
(2)免震装置に必要な変形量は構造物の規模・重量の大小には依存しないので、片振幅で数十(50〜60)cm以上の大きな水平変形を許容できること。
(3)単純なシステムで、装置形状が過大にならないこと。
(4)低コストで提供できること。
【0015】
本発明の第1の目的は、軽量構造物を高性能の免震構造として実現する際に不可欠となる上記の各条件を備えた復元装置を実現できる「免震構造用水平復元ばね装置の構築方法」を提供することである。
【0016】
本発明の第2の目的は、特殊な状況下でも復元性能を発揮できる免震構造用水平復元ばね装置の構築方法を提供することである。すなわち、非常に特殊な環境下、特に極めて強力な磁性が存在する場所では、磁性を有する普通鋼材には磁力が発生する。このため、その磁力によって、常時において上部構造物に不必要な水平力や鉛直力を作用させたり、本装置の中間のゴム柱階層部が変形したり、あるいは装置全体に変形が生じる可能性がある。その結果、復元力特性が影響を受け、正常な復元力特性を発揮できなくなる恐れがある。 このような特殊環境下でも所定の復元力特性を正常に発揮できる「免震構造用水平復元ばね装置の構築方法」を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
高さ/幅の立面形状(以下、「アスペクト比」という)が1以上2以下となるゴム状弾性体ブロック(以下、「ゴムブロック」という)を作成し、前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックとほぼ同じ大きさの端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、前記連結板の上下両面には、前記ゴムブロックユニットと嵌合する凹型窪みを設け、前記ゴムブロックユニットの上下端部を前記連結板の凹型窪みに挿入し、且つ両者の接触面を接着して一体化し、4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、前記ゴムブロックユニットと嵌合する凹型窪みを有する固定用ベースプレートを配置して接着により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【0018】
〈構成2〉
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックとほぼ同じ大きさの端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、前記連結板の上下両面は平坦面とし、前記ゴムブロックユニットおよびその上下の連結板の接触面を接着して一体化し、4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、固定用ベースプレートを配置して前記ゴムブロックユニットと接着により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【0019】
〈構成3〉
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックより若干大きく、且つ円形平面の端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、前記ゴムブロック上下端の端部鋼板の側面に上下それぞれ逆回転方向の雄ネジを切り、前記連結板には前記ゴムブロックの雄ネジに適合する雌ネジを切り、前記ゴムブロックを鉛直軸周りに回転させ、前記連結板にネジ接合することにより一体化し、4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、雌ネジを有する固定用ベースプレートを配置し、前記ゴムブロックユニットとネジ接合により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【0020】
〈構成4〉
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックより大きく、平面上に突出した端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、前記連結板と前記端部鋼板をボルト接合もしくは溶接接合により一体化し、4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、固定用ベースプレートを配置し、ボルト接合もしくは溶接接合により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【0021】
〈構成5〉
構成4に記載の免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法において、前記ゴムブロックの上下両端に接着する端部鋼板の形状を、ゴムブロックに接触する部分の板厚を厚く、外周部に突出している部分の板厚を薄くし、且つ連結板と接触する面を平坦にしていることを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【0022】
〈構成6〉
構成1乃至構成5に記載したいずれかの免震構造物用水平復元ばね装置に用いる全ての鋼板・鋼材の材料に、SUS304、SUS305等のオーステナイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼、その他のステンレス鋼、スーパーステンレス鋼、アルミニウム合金、その他の非磁性金属を使用したことを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【発明の効果】
【0023】
〈構成1の効果〉
先ず復元力を発現する基本要素として、積層ゴムでなく、ゴム単体の塊であるゴムブロックを採用することにより、装置構成要素の大幅な単純化とコストダウンが可能になる。
更に、ゴムブロックは、例えば直径3cmφといった極めて小径・小型のゴムブロックを容易に、且つ低コストで製造できるだけでなく、極めて小さな水平ばね定数を実現できるので、総重量1トン以下のような超軽量の対象物にも適用できる復元材を製造可能になる。
【0024】
そのゴムブロックを組み合わせて復元力装置を構成するために、ゴムブロックの上下両端に端部鋼板を取り付け、この上下の端部鋼板と連結板を金属用接着剤を用いて接着することにより、1階層4個以上のゴムブロックユニットを有するゴム柱階層を構成し、それを上下方向に複数段積み重ねた多数階ゴム柱骨組みを構成する。
【0025】
大きな水平変形性能を確保するためには、装置全体として目標とする水平変位の33%〜40%以上のゴム柱高さを確保する必要がある。
即ち、ゴム柱高さとして目標水平変位の40%を確保すればゴム柱のせん断変形角250%で目標水平変位をクリアでき、ゴム柱高さ33%でせん断変形角300%程度で目標水平変位に到達する。ゴム柱が破断する限界せん断変形角は一般的には概ね400%前後と考えられているが、ゴム材料の劣化や復元力のハードニング特性(γ≧300%で顕著)等を考慮すると、水平復元ばね装置にせん断歪度で300%以上の変形を作用させることは避けるべきである。
【0026】
その必要ゴム高さを効率的に確保・実現するために、本発明では、装置の基本要素であるゴムブロックの立面形状としてアスペクト比(高さ/幅)が1以上2以下となる形状を採用する。
ゴムブロックの高さを幅以上とすることで、積層ゴムに較べてゴム層の高さ確保が格段に効率化され、コストダウン効果が飛躍的に向上するが、大きな水平変形下における座掘現象を回避するためにアスペクト比2以下という制限を設けている。
尚、ゴムブロックの平面形状は円形でも正方形でもよく、また特殊な場合には長方形等の他の形状でもよいが、その場合のアスペクト比は短辺の長さで評価する。
【0027】
この時、形状係数S1(Shape Factor:拘束部面積/自由表面積)は、S1=0.25(アスペクト比=1)〜 0.125(アスペクト比=2)となり、通常の積層ゴムの形状係数S1≒20〜40の1/100〜1/300という小さな値になり、本装置はそれだけゴム体を簡略化・単純化できることを意味している。
【0028】
しかし、アスペクト比を2を越えて更に大きくしていくと、形状が特許文献1の紐状に近い特性に近づいてゆき、水平変形時の座掘現象や復元力特性が非線形性を示すようになるので、やみくもにアスペクト比を大きくすることはできない。
尚、本発明がこのような形状のゴムブロックを採用できるのは、本装置の目的を水平復元バネの提供のみに限定し、従来の積層ゴムや多段積層ゴムがめざしている鉛直荷重の支持という機能を放棄した見返りとして得られる効果であると捉えることができる。
【0029】
〈構成2の効果〉
近年の接着技術の発達により、金属同志の接着接合が可能になり、その信頼性も向上しているので、接合面および接合材料・接合技術の適切な品質管理を行えば、連結板に設ける嵌合用の凹型窪み部を省略することができ、これによって水平ばね装置の組み立て・構築が一層効率化される。
【0030】
〈構成3の効果〉
ゴムブロックの上下両端に取り付ける端部鋼板を少し厚めにし、その側面に雄ネジを切り、連結板側に雌ネジを切ることにより、ゴムブロックユニットと連結板をネジ接合により一体化することができる。
【0031】
ゴムブロックユニット両端の雄ネジは、上下端で逆回転方向とし、同一階層に存在する4個以上のゴムブロックユニットは同時に回転させながらねじ込むことが組み立て上の要点である。この接合方法により、接合部自体が高い強度を確保できると同時に、ねじ切りに必要となるゴムブロックの部鋼板の厚さ部分を連結板の板厚内に取り込むことが可能となり、装置全体の高さをよりコンパクトに納めることができる。
【0032】
〈構成4の効果〉
ゴムブロックの上下両端に取り付ける端部鋼板の平面寸法をゴムブロックの平面寸法より大きく構成することにより、ゴムブロックユニットと連結板をボルト接合、もしくは溶接接合することが可能となる。
【0033】
ボルト接合を行う場合は、連結板に貫通孔をあけ、連結板の上下に来るゴムブロックユニット2体を1本のボルトで貫通させ、ナットで固定することが可能である。
また、水平復元ばね装置の上下端部にある固定用ベースプレートには雌ねじを切るか、もしくはベースプレートを貫通させてナットで固定することができる。
【0034】
またゴムブロックユニットの端部鋼板と連結板を溶接接合する場合には、溶接熱によりゴムブロックユニットのゴム体が150℃以上にならないように溶接部とゴムブロック間の距離を確保し、また溶接作業と熱・温度管理を適切に行う必要がある。
【0035】
〈構成5の効果〉
端部鋼板の周辺部の板厚をゴム接触部の板厚より薄くすることにより、ゴム体の水平変形時にボルトやナットの先端部とゴム体との接触を起こり難くする効果がある。これはゴムブロックユニットと連結板をボルト接合により一体化する場合の改善策である。即ち、ボルト接合する場合には、ボルトの頭および裏面のナットが連結板および端部鋼板より突出することになり、ゴムブロックの水平変形が大きくなるとボルトおよびナットの突出部にゴムブロックのゴム体が接触するようになり、場合によってはそのためにゴム体に切傷が生じたり損傷する恐れがある。構成5により、この恐れを避けることができる。
【0036】
〈構成6の効果〉
SUS304、SUS305等のオーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウム合金などの非磁性金属を用いることにより、強力な磁界の中でも磁力の発生と本装置への作用を避けることができ、正常な復元力特性を発揮することができる。
【0037】
この構成は、更に次の2つの効果を有している。第1は本装置を構成する鋼材の耐食性を高め、耐久性能・耐用年数を高めること、第2は本装置の耐用期間中における維持管理・メンテナンスを軽減することである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の基本構成要素であるゴムブロックユニットの構成・形状を示す図であり、 (1)円柱型形状のゴムブロックユニットの横断面図、 (2)円柱型形状のゴムブロックユニットの縦断面図、 (3)角柱型形状のゴムブロックユニットの横断面図、 (4)角柱型形状のゴムブロックユニットの縦断面図である。
【図2】実施例1におけるゴムブロックユニットと連結板の接合方法を示す図であり、 (1)ゴムブロックユニットと連結板の部分の縦断面図、 (2)同横断面である。
【図3】実施例1による免震構造用水平復元ばね装置の全体構成を示す図であり、 (1)縦断面図、 (2)中央部付近からみた横断面図である。
【図4】実施例3(構成3)におけるゴムブロックユニットと連結板のねじ方式による接合方法を示す図であり、 (1)ゴムブロックユニットの構成図で、左側が横断面図、右側が縦断面図、 (2)ゴムブロックユニットと連結板のネジ込みによる接合要領を示す縦断面図である。
【図5】実施例4(構成4の1)におけるゴムブロックユニットと連結板のボルトによる接合状態を示す図であり、 (1)ゴムブロックユニットの構成図で、左側が横断面図、右側が縦断面図、 (2)ゴムブロックユニットと連結板のボルト接合による一体化要領を示す縦断面図である。
【図6】実施例5(構成4の2)におけるゴムブロックユニットと連結板の溶接による接合状態を示す図であり、 (1)ゴムブロックユニットの構成図で、左側が横断面図、右側が縦断面図、 (2)ゴムブロックユニットと連結板の溶接接合による一体化要領を示す縦断面図である。
【図7】実施例6におけるゴムブロックユニットと連結板のボルトによる接合状態を示す図であり、 (1)ゴムブロックユニットの構成図で、左側が横断面図、右側が縦断面図、 (2)ゴムブロックユニットと連結板のボルト接合による一体化要領を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を、実施例を示す図面に基づいて説明する。なお、共通する部分には同一符号を付している。
【実施例1】
【0040】
図1〜図3は、実施例1の免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法を示す図であり、以下に示す方法である。すなわち、先ず、高さ/幅の立面形状(以下、「アスペクト比」という)が1以上2以下となるゴム状弾性体ブロック(以下、「ゴムブロック11」という)を作成する。ゴムブロック11の上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロック11とほぼ同じ大きさの端部鋼板12を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニット1を作成する。ゴムブロックユニット1を少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、ゴムブロックユニット1の上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板2を配置する。連結板2の上下両面には、ゴムブロックユニットの端部鋼板12と嵌合する凹型窪み21を設け、ゴムブロックユニット1の上下端部を連結板2の凹型窪み21に挿入し、且つ両者の接触面を接着して一体化する。4個以上のゴムブロックユニット1と連結板2で一体化されたゴム柱階層4を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組み5を構築する。この多層階ゴム柱骨組み5の上下両端に、最上段および最下段のゴムブロックユニット1と嵌合する凹型窪み21を有する固定用ベースプレート3を配置し、接着により一体化するものである。
【0041】
図1は、本発明の免震構造物用水平復元ばね装置を構成する上で基本要素であるゴムブロックユニット1の形状と構成例を示している。ゴムブロックユニット1は、ゴムブロック11とその上、下端面に設けられる端部鋼板12とから構成されている。ゴムブロック11はゴム材料の塊であり、積層ゴムではない。ゴムブロック11と端部鋼板12は加硫接着により一体成形することを基本とするが、両者を接着剤で接合してもよい。
【0042】
図1の(1)および(2)には、ゴムブロック11が円柱型形状の場合の例を示している。円柱型のゴムブロック11の上端、下端にそれぞれ端部鋼板12を配している。この場合、端部鋼板12はゴムブロック11に合わせて平面が円形とされている。
【0043】
図1の(3)および(4)にはゴムブロック11が角柱型形状の場合の例を示している。端部鋼板12はゴムブロック11に合わせて平面が正方形とされている。
【0044】
図2は、本発明の構成1におけるゴムブロックユニット1と連結板2の接合要領を示している。連結板2の平面4箇所に、ゴムブロックユニット1の端部鋼板12の平面形状より僅かに大きな平面形状の凹型窪み部21が設けられている。凹型窪み部21にゴムブロックユニット1の端部鋼板12が嵌合され、端部鋼板12と連結板2の凹型窪み部21との接触面が金属用接着剤により接着される。その接着面となる金属面は予めブラスト処理しておき、表面を清浄にした上で接着剤を塗布することが重要である。
【0045】
図3は、構成1による免震構造物用水平復元ばね装置の全体形状を示している。図3に示されるように、同装置の上端、下端にそれぞれ固定用ベースプレート3が配置されている。固定用ベースプレート3の4隅近傍に設けられたアンカーボルト用孔31にアンカーボルト(図示せず)を挿入することにより同装置の全体を所定の基礎(下側)および上部構造物(上側)に固定することができる。なお、符号4はゴム柱階層、符号5は多層階ゴム柱骨組みをそれぞれ示している。
【実施例2】
【0046】
図2および図3に示すとおり、実施例1では連結板2および固定用ベースプレート3に、ゴムブロックユニット1の端部鋼板12と嵌合するための凹型窪み21を設けている。しかし、金属用接着剤の信頼性が高い場合には、この凹型窪み部21を省略することが可能であり、それが構成2である。それ以外の構成は実施例1と同じである。
すなわち、構成2は、ゴムブロックユニット1の上下端部を、上記の凹型窪み21を設けることを省略し、平坦面とされた連結板2および固定用ベースプレート3上に直接配置して、両者の接触面を接着して一体化するものである。
【実施例3】
【0047】
図4は、本発明の構成3を示している。
実施例3の免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法は次に示す方法である。すなわち、先ず、立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロック11を作成する。ゴムブロック11の上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックより若干大きく、且つ円形平面の端部鋼板13を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニット1を作成する。このゴムブロックユニット1を少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置する。ゴムブロックユニット1の上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板2を配置する。ゴムブロック上下端の端部鋼板13の側面に上下それぞれ逆回転方向の雄ネジを切り、連結板2にはゴムブロック端部鋼板13の雄ネジに適合する雌ネジを切る。ゴムブロックユニット1を鉛直軸周りに回転させ、連結板2にネジ接合することにより一体化する。4個以上のゴムブロックユニット1と連結板2で一体化されたゴム柱階層4を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組み5を構築する。その多層階ゴム柱骨組み5の上下両端に、雌ネジを有する固定用ベースプレート3を配置し、ゴムブロックユニットとネジ接合により一体化することにより、免震構造物用水平復元ばね装置全体が構築される。
【0048】
構成3では、ゴムブロックユニット1と連結板2および固定用ベースプレート3がねじ込みにより接合されている。すなわち、ゴムブロック11の両端に付ける端部鋼板13は、図4に示すように、図2および図3に示した端部鋼板12より板厚が少し厚めにされ、その外周面にネジ切りされて雄ネジが設けられている。一方、連結板2および固定用ベースプレート3には端部鋼板13が螺合される雌ネジ孔23が設けられている。この時、端部鋼板13のネジ切りの方向は、ゴムブロック11の上端側と下端側で逆回転方向にしておくことが、ゴムブロックユニット1と連結板2および固定用ベースプレート3とを組み立てていく上で重要である。
【0049】
図4(2)は、構成3におけるゴムブロックユニット1と連結板2のねじ込みによる接合要領を示している。同一柱階層4におけるゴムブロックユニット1は全数ほぼ同時に回転させ、連結板2の板厚の半分まで同じ深さでねじ込んでいき、連結板2の上下のゴムブロックユニット1がほぼ同一深さでねじ込まれているようにすることが大切である。
【実施例4】
【0050】
図5は、本発明の構成4において、ゴムブロックユニット1と連結板2をボルト接合する方法を示している。図5の(1)は構成4によるゴムブロックユニット1の構成方法を示している。構成4では、ゴムブロック11の両端に付ける端部鋼板12の平面寸法をゴムブロック11の平面より大きくし、これにボルト接合用の孔14を設けている。
【0051】
図5の(2)は部分断面図であり、構成4におけるゴムブロックユニット1と連結板2をボルトにより接合する要領を示している。連結板2にも同径・同ピッチのボルト接合用の孔22をあけておき、ボルト15を挿入し、連結板2とその両側に配されるゴムブロックユニット1の3部材を一体に接合する。尚、ボルト15とそれに螺合されるナットの位置関係は、万一、ナットが緩んだ場合でもボルト15が脱落しないように、ボルト15が上側、ナットが下側にそれぞれ配置されることを基本構成とする。
【実施例5】
【0052】
図6は、本発明の構成4において、ゴムブロックユニット1と連結板2を溶接接合する要領を示している。図6の(1)は構成4によるゴムブロックユニット1の構成方法を示している。この場合もゴムブロック11の両端に付ける端部鋼板12の平面寸法をゴムブロック11の平面より大きくするが、図5に示したボルト接合用の孔22は不要である。
【0053】
図6の(2)は、構成4におけるゴムブロックユニット1と連結板2を溶接接合する場合の縦断面図を示している。溶接接合の場合には、溶接部16からの溶接熱がゴムブロック11に伝達されることをできるだけ回避することが望ましい。このため、原則として全周溶接することを回避し、溶接長は必要最小限とする。溶接位置は、図6の(1)に示すように、端部鋼板12の隅角部近傍とすることが好ましい。
【実施例6】
【0054】
図7は、本発明の構成5において、ゴムブロックユニット1と連結板2をボルト接合する方法を示しており、実施例4の改良型である。図7の(1)は構成5によるゴムブロックユニット1の構成方法を示している。構成5では、ゴムブロック11の両端に付ける端部鋼板12の平面寸法をゴムブロック11の平面寸法より大きくし、且つ端部鋼板12のゴム接触部の板厚を周辺部の板厚より厚くしている。
【0055】
図7の(2)は部分断面図であり、構成5におけるゴムブロックユニット1と連結板2をボルトにより接合する要領を示している。端部鋼板12は厚の異なる2枚の板を重ね合わせて一体化したような構成とされている。すなわち、端部鋼板12は、中央のゴムブロック11に接触する部分の板厚が厚く、その外側の周囲部分の板厚が薄く構成されている。図7の(2)に示すように、ボルト、ナットを取付けたとき、ボルトやナットの頭部がゴムブロック11の高さまであまり突出しないようになっている。このため、ゴムブロック11が大きく水平せん断変形した場合でもゴムブロック11がボルトやナットの先端部に接触して損傷することを防止できる。
【実施例7】
【0056】
実施例7は、図1〜図7に示した本発明に係る免震構造物用平復元ばね装置に用いる全ての鋼板・鋼材の材料に、SUS304、SUS305等のオーステナイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼、その他のステンレス鋼、スーパーステンレス鋼、アルミニウム合金、その他の非磁性金属を使用するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 :ゴムブロックユニット
11:ゴムブロック
12:端部鋼板
13:側面にネジ切りをした端部鋼板
14:ボルト接合用孔
15:接合用ボルト
16:溶接部
2 :連結板
21:連結板の嵌合用凹型窪み部
22:連結板のボルト接合用孔
23:連結板内に設けたネジ接合用ネジ孔
3 :固定用ベースプレート
31:アンカ−ボルト用孔
4 :ゴム柱階層
5 :多層階ゴム柱骨組み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ/幅の立面形状(以下、「アスペクト比」という)が1以上2以下となるゴム状弾性体ブロック(以下、「ゴムブロック」という)を作成し、
前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックとほぼ同じ大きさの端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、
前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、
前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、
前記連結板の上下両面には、前記ゴムブロックユニットと嵌合する凹型窪みを設け、
前記ゴムブロックユニットの上下端部を前記連結板の凹型窪みに挿入し、且つ両者の接触面を接着して一体化し、
4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、
その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、前記ゴムブロックユニットと嵌合する凹型窪みを有する固定用ベースプレートを配置して接着により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【請求項2】
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、
前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックとほぼ同じ大きさの端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、
前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、
前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、
前記連結板の上下両面は平坦面とし、
前記ゴムブロックユニットおよびその上下の連結板の接触面を接着して一体化し、
4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、
その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に固定用ベースプレートを配置して、前記ゴムブロックユニットと接着により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【請求項3】
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、
前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックより若干大きく、且つ円形平面の端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、
前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、
前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、
前記ゴムブロック上下端の端部鋼板の側面に上下それぞれ逆回転方向の雄ネジを切り、
前記連結板には前記ゴムブロックの雄ネジに適合する雌ネジを切り、
前記ゴムブロックを鉛直軸周りに回転させ、前記連結板にネジ接合することにより一体化し、
4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、
その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、雌ネジを有する固定用ベースプレートを配置し、前記ゴムブロックユニットとネジ接合により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【請求項4】
立面形状のアスペクト比が1以上2以下となるゴムブロックを作成し、
前記ゴムブロックの上下両端面に平面寸法が当該ゴムブロックより大きく、平面上に突出した端部鋼板を接着剤接着もしくは加硫接着により一体化したゴムブロックユニットを作成し、
前記ゴムブロックユニットを少なくとも4個、互いに離間距離をもって平面配置し、
前記ゴムブロックユニットの上下に、分離配置された各ゴムブロックユニットを同一平面上(同一高さ)で連結する連結板を配置し、
前記連結板と前記端部鋼板をボルト接合もしくは溶接接合により一体化し、
4個以上の前記ゴムブロックユニットと連結板で一体化されたゴム柱階層を上下方向に2段以上積み重ねた多層階ゴム柱骨組みを構築し、
その多層階ゴム柱骨組みの上下両端に、固定用ベースプレートを配置し、ボルト接合もしくは溶接接合により一体化することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【請求項5】
請求項4に記載の免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法において、
前記ゴムブロックの上下両端に接着する端部鋼板の形状を、ゴムブロックに接触する部分の板厚を厚く、外周部に突出している部分の板厚を薄くし、且つ連結板と接触する面を平坦にしていることを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載したいずれかの免震構造物用水平復元ばね装置に用いる全ての鋼板・鋼材の材料に、SUS304、SUS305等のオーステナイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼、その他のステンレス鋼、スーパーステンレス鋼、アルミニウム合金、その他の非磁性金属を使用することを特徴とする免震構造物用水平復元ばね装置の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−61010(P2013−61010A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199645(P2011−199645)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【特許番号】特許第5009431号(P5009431)
【特許公報発行日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(596129352)株式会社ダイナミックデザイン (14)
【出願人】(596129363)
【Fターム(参考)】