説明

入力装置、携帯装置、および、プログラム

【課題】小型装置で高い操作性と効率的な入力を実現する。
【解決手段】ヒンジ基部HBと2軸ヒンジDHにより、上部筐体100Aと下部筐体100Bを2方向に開閉可能な移動体通信端末100の下部筐体100Bに、入力装置130(キーボード131)が構成されている。キーボード131を構成するキーは、それぞれが上下左右ともに対称であるひし形の形状であり、キーボード131が構成されている面の各辺と、各ひし形の辺とが平行しない方向で配置されている。各キーには、移動体通信端末100が使用される方向に応じた1または2方向の表示が付されている。キーボード131では、このようなキーが千鳥状に配列されており、移動体通信端末100を横長方向で使用する際に用いられるキーには、上下に隣接する2列のキー列の各キーを通る一直線上の位置に表示が付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、携帯装置、および、プログラムに関し、特に、小型装置での入力に好適な入力装置、携帯装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信端末は電話機能が基本機能であるため、その入力キーは電話用のキーを基本に構成されている。また、受話器として機能するために、筐体全体を縦長方向で用いることが一般的であった。そして、キーの操作性の観点から、横長となる形状のキーが一般的に用いられている。
【0003】
一方で、移動体通信端末の高性能化・多機能化により、例えば、動画撮影機能やテレビ受信機能が搭載されたり、パーソナルコンピュータなどといったより上位の情報処理装置と互換する機能(例えば、ビジネス用アプリケーションソフトの実行機能やパーソナルコンピュータ用に作成されたウェブページの表示機能、など)が搭載されたりする場合もある。従来の電話機能を中心とした移動体通信端末では、表示画面を常に縦長方向で使用しても特段の不都合はなかったが、動画像やパーソナルコンピュータ用画面などは横長の画面比率となるので、移動体通信端末の表示画面を横長方向で使用する形態も多くなってきている。
【0004】
このような傾向に鑑み、例えば、筐体構造を工夫することで、縦長方向でも横長方向でも使用できる移動体通信端末も実用化されている。例えば、特許文献1には、折りたたみ式の移動体通信端末において、縦方向にも横方向にも開閉できる構造が開示されており、用途に応じて移動体通信端末を縦長方向にも横長方向にも使用することが可能となっている(いわゆる、2ウェイスタイル)。
【0005】
しかしながら、入力キーのキー配列については考慮されていないため、横長方向で使用する場合の操作性に問題が生じることがある。つまり、従来のキー形状では、筐体を横長方向で使用すると、各キーの形状がユーザに対して縦長になってしまうので、指先での操作性が低下してしまう。また、キー上の表示も縦方向のみに対応しているため、横長方向で使用するときはキーの認識が困難になってしまう。
【0006】
さらに、パーソナルコンピュータなどと互換する機能が搭載されている場合や電子メール機能を利用する場合などといった文字入力が必要となる場面では、移動体通信端末に特有のトグル方式での文字入力では非効率的となることがある。よって、パーソナルコンピュータなどで用いられているフルキーボードと同等のキーボードの搭載が求められるが、従来のキー配列やキー構造では、小型の移動体通信端末にフルキーボードを搭載することは困難であった。
【特許文献1】特開2006−233998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、高い操作性と効率的な入力を実現する入力装置、携帯装置、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる入力装置は、
2方向で使用可能な入力装置であって、
それぞれが上下左右ともに対称となる形状であり、前記入力装置が使用される方向に応じた1または2方向の表示が付されたキーが、千鳥状に配列されている、
ことを特徴とする。
【0009】
この場合、
前記入力装置が使用される2方向のうちの一方に対応する表示は、前記千鳥状配列における長手方向で上下に隣接する2列のキー列の各キーを通る一直線上の位置に付されていることが望ましい。
【0010】
上記入力装置において、
前記キーの形状はひし形であり、前記キーが配列される面を構成する辺と前記ひし形の辺とが平行しない方向で前記キーが配列されていることが望ましい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる携帯装置は、
略長方形の面から構成される筐体と該筐体上の一面上に構成される入力装置とを有し、前記筐体を縦長方向にして使用する機能と前記筐体を横長方向にして使用する機能とを実行可能な携帯装置であって、
前記入力装置は、
それぞれが上下左右ともに対称となる形状で、前記筐体の使用方向に応じた1または2方向の表示方向となるキートップを有するキーが千鳥状に配列されたキーボードを備える、
ことを特徴とする。
【0012】
上記携帯装置において、
前記キーボードは、
前記携帯装置を横長方向で使用するときに対応する前記キートップの表示が、前記千鳥状配列において上下に隣接する2列のキー列の各キーを通る一直線上の位置に表示されるよう前記キーが配列されていることが望ましい。
【0013】
上記携帯装置において、
前記キーの形状はひし形であり、前記入力装置が構成されている面の辺と前記ひし形の辺とが平行しない方向に前記キーが配列されていることが望ましい。
【0014】
上記携帯装置は、
前記携帯装置が実行する機能に応じて、該機能で使用される前記携帯装置の方向に対応した前記キーの表示を強調するキー強調手段をさらに備えていることが望ましい。
【0015】
この場合、
前記携帯装置の使用方向を検出する方向検出手段をさらに備え、
前記キー強調手段は、前記方向検出手段が検出した方向に基づいて、強調する前記キーを特定することが望ましい。
【0016】
また、
前記携帯装置は、縦方向および横方向のいずれにも開閉可能な2以上の筐体から構成されていてもよく、この場合、
前記キー強調手段は、前記筐体の開閉方向に基づいて、強調する前記キーを特定することが望ましい。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
縦長方向で使用する機能と横長方向で使用する機能とを実行可能な携帯装置であって、該携帯装置の使用方向に応じた1または2方向の表示方向となる表示のキーボードを備えた携帯装置を制御するコンピュータに、
前記携帯装置の使用方向を判別する機能と、
判別した使用方向に基づいて、前記キーボードの強調すべきキーを特定する機能と、
特定したキーが強調されるよう制御する機能と、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い操作性で効率的な入力をおこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
【0020】
(実施形態1)
まず、図1および図2を参照して、本実施形態にかかる移動体通信端末100(携帯装置)の外観構成を説明する。本実施形態にかかる移動体通信端末100は、例えば、縦方向にも横方向にも開閉可能な折りたたみ式の筐体を有する移動体通信端末である。図1は、移動体通信端末100を縦長方向に使用する際の外観構成を示す模式図であり、図2は、移動体通信端末100が閉成状態のときと横長方向に使用する際の外観構成を示す模式図である。
【0021】
まず、図1を参照して、移動体通信端末100の主要構成を説明する。上述したように、本実施形態にかかる移動体通信端末100は折りたたみ式であるため、図1に示すように、上部筐体100Aと下部筐体100Bの2つの筐体から構成されている。図示するように、上部筐体100Aと下部筐体100Bそれぞれの主面は略長方形の形状を有しており、それぞれの長手方向が平行するように構成されている。
【0022】
ここで、移動体通信端末100の電話機能を用いる際には、図1に示すような縦長方向で使用されるものとする。よって、このような形態でユーザの耳部に近接する上部筐体100A側に、受話音声などを出力するためのスピーカ151が配置され、ユーザの口部に近接する下部筐体100B側に、発話音声などを入力するためのマイクロフォン152が配置されている。
【0023】
また、移動体通信端末100を縦長方向で使用する場合は、下部筐体100Bがユーザに保持されるので、下部筐体100B側にキーボード131が配置され、上部筐体100A側に表示部140が配置されている。
【0024】
上部筐体100Aと下部筐体100Bとは、ヒンジ基部HBと2軸ヒンジDHとによって折りたたみ可能に接続されている。ヒンジ基部HBは、下部筐体100Bに固定されるとともに、2軸ヒンジDHを回転可能に保持している。そして、2軸ヒンジDHは、ヒンジ基部HBとの回転軸と直交する回転軸となるように上部筐体100Aを回転可能に保持している。
【0025】
このような構成により、図1に示す軸X−X’を回転軸として上部筐体100Aが回転することで縦方向の開閉が可能となる。つまり、図1に示した状態から、上部筐体100Aを下部筐体100B側に回転させると、図2(a)に示すような閉成状態となる。この閉成状態は、移動体通信端末100を使用しない場合などにとられる形態である。
【0026】
ここで、2軸ヒンジDHがヒンジ基部HBに対しても回転可能に構成されているので、図2(a)に示す軸Y−Y’を回転軸として上部筐体100Aを横方向に開閉させることができる。つまり、図2(a)に示す状態から上部筐体100Aを軸Y−Y’で回転させることで、図2(b)に示すように横方向に開閉することができる。この場合、図2(b)に示すように、移動体通信端末100の長手方向が横方向となるように使用することで、表示部140が横長方向となるように使用することができる。なお、このような動作を可能とする2軸ヒンジDHやヒンジ基部HBの構成は、例えば、特開2006−233998で開示されているような既知の技術を用いて実現されるものとする。
【0027】
また、図1および図2(b)に示すように、下部筐体100Bの主面上に入力装置130(キーボード131)が構成されている。キーボード131を構成している各キーは、これらの図に示すように、上下対称かつ左右対称のひし形の形状を有している。そして、ひし形の各辺と、キーボード131が配置されている下部筐体100Bの主面(略長方形)を構成している各辺とが平行とならない方向に各キーが配置されている。さらに、このようなひし形形状のキーが千鳥状(互い違い)となるように配列されている。
【0028】
キーボード131の各キーには、割り当てられている文字などを示すキートップが構成されている。このキートップには、図1および図2(b)に示すように、移動体通信端末100を縦長方向で使用したときに対応する方向の表示と、横長方向で使用したときに対応する方向の表示とを含んでいる。図3を参照して、このようなキートップの表示例を説明する。ここでは、理解を容易にするため、縦長方向に対応する表示と横長方向に対応する表示とを別々に説明する。図3(a)は、縦長方向に対応するキートップの表示例を示し、図3(b)は、横長方向に対応するキートップの表示例を示す。
【0029】
図3(a)は、移動体通信端末100を縦長方向で使用したときに対応するキートップの表示例を示す図である。上述したように、本実施形態では、移動体通信端末100の電話機能を使用する際に縦長方向とするので、電話番号入力用のテンキーやフック動作にかかる機能キーの表示が、縦長方向での使用時にユーザが正しく視認できる方向で各キーに付されている。
【0030】
図3(b)は、移動体通信端末100を横長方向で使用したときに対応するキートップの表示例を示す図である。本実施形態では、より効率的な文字入力を可能とするため、パーソナルコンピュータなどで用いられているフルキーボードに相当するキー配列を横長のキーボード31に適用する。この場合、図3(b)に示すような、いわゆるQWERTY配列の文字キーや主要な機能キー(シフトキーなど)などのキー表示が、横長方向での使用時にユーザが正しく視認できる方向で各キーに付されている。
【0031】
上述したように、キーボード131では、ひし形のキーが千鳥状(互い違い)となるように配列されている。つまり、移動体通信端末100を横長方向にした場合、図3(c)に示すように、複数のひし形キーが横方向の一直線上に配列されたキー列が上下方向に千鳥状(互い違い)となるように配列されていることになる。すなわち、図3(c)においてハッチングを施した奇数番目のキー列と、その間の偶数番目のキー列とが千鳥状(互い違い)に配列していることになる。
【0032】
パーソナルコンピュータなどで用いられるQWERTY配列のフルキーボードでは、通常、文字等の入力キーは水平方向のキー列に割り当てられている。本実施形態にかかるキーボード131でも、フルキーボードと同等の利便性を得るため、QWERTY配列と同様の配列で文字等の入力キーを割り当てるものとする。しかしながら、携帯性が要求される移動体通信端末100では、キーを配置するスペースに制約があるので、本実施形態では、ひし形のキーを千鳥状(互い違い)に密接させて配置した上で、上下に隣接する2列のキー列を用いて、通常のキーボードの1列に相当するキー割り当てをおこなう。
【0033】
つまり、図3(c)に示すように、キーボード131の1列目と2列目のキー列を構成している各キーを通る一直線上の位置に、QWERTY配列の1列分の文字等(Q、W、E、R、T、Y、…)の表示を付す。同様にして、キーボード131の3列目と4列目のキー列を構成している各キーを通る一直線上の位置に、QWERTY配列の次列分の文字等(A、S、D、F、G、H、…)の表示を付し、キーボード131の5列目と6列目のキー列を構成している各キーを通る一直線上の位置に、QWERTY配列の次々列分の文字等(Z、X、C、V、B、N、…)の表示を付している。
【0034】
このような構成とすることで、30個のキーでQWERTY配列の主要な文字等のほとんどを含んだキーボードを実現することができる。また、千鳥状(互い違い)に密接させることができるひし形形状とすることで、従来の移動体通信端末の多くで採用されている略長方形のキーと比べ、30個のキーを配置するのに必要な面積が約60%で済むので、小型の移動体通信端末であっても効率的にキーを配置することができる。
【0035】
このような配置を可能とするキー形状であるひし形は上下対称かつ左右対称であり、また、いずれの使用方向にした場合でもユーザから見てひし形となる方向(対角線が垂直および水平)でキーが配置されている。よって、移動体通信端末100の使用方向が縦長方向であっても横長方向であっても、操作するユーザの指先にあるキーが上下左右のいずれにも均等な形状となり、良好な操作性を得ることができる。
【0036】
また、移動体通信端末100が使用される2方向のそれぞれに対応したキー表示となるキートップとしているので、いずれの方向で移動体通信端末100を使用しても、ユーザは容易にキー表示を認識することができる。
【0037】
(実施形態2)
上記実施形態1に示したような入力装置130(キーボード131)を用いた場合に、使用方向に応じて、使用すべきキーが明確となるよう強調する動作をおこなってもよい。このような動作を実現するための構成および方法の例を本実施形態で説明する。
【0038】
本実施形態にかかる移動体通信端末(携帯装置)は、実施形態1で例示した移動体通信端末100であり、同一の構成については、実施形態1で用いた参照符号と同一の参照符号を用いる。上述した本実施形態にかかる動作を実現するための、移動体通信端末100の内部構成を、図4を参照して説明する。図4は、移動体通信端末100の内部構成を示すブロック図である。
【0039】
図示するように、移動体通信端末100は、制御部110、通信制御部120、入力装置130、表示部140、音声処理部150、記憶部160、などから構成されている。
【0040】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)などから構成され、移動体通信端末100の各部を制御する。本実施形態では、制御部110がプログラムを実行することで、後述する各処理をおこなうための各機能が実現される。
【0041】
通信制御部120は、移動体通信端末100の通信動作をおこなうための送受信装置などから構成され、アンテナ121による無線送受信動作を制御することで、移動体通信端末100と基地局BSとの通信動作が実現される。
【0042】
入力装置130は、キーボード131とキー強調部132を備える。キーボード131は、実施形態1で例示したキーボード131である。入力装置130は、このようなキーボード131の操作に応じた入力信号を生成して制御部110に入力する。
【0043】
キー強調部132は、キーボード131を構成するキーのうち、制御部110から指示されたキーを強調するための動作をおこなう。本実施形態では、キーボード131のキーを照明する動作(いわゆる、バックライト)により指示されたキーの強調動作をおこなうものとする。本実施形態では、キー強調部132は、キー単位での照明制御をおこなえるものとする。この場合、キー強調部132は、例えば、各キーの下部に配置されたLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などの光源を制御する照明制御装置によって構成されるものとし、制御部110から指定されたキーについての光源を発光させることでそのキーを強調する。
【0044】
表示部140は、例えば、液晶表示装置などから構成され、移動体通信端末100の各機能にかかる画面を表示出力する。
【0045】
音声処理部150は、例えば、音声コーデックなどから構成され、移動体通信端末100の音声通話機能にかかる音声入出力動作をおこなう。すなわち、通信制御部120によって受信されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してスピーカ151から出力するとともに、マイクロフォン152から入力された音声をデジタル音声信号に変換して通信制御部120に供することで、音声通話が実現される。
【0046】
記憶部160は、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置などから構成され、移動体通信端末100の動作に必要なデータやプログラムなどを格納する。本実施形態では、プログラム格納部161、設定情報格納部162、などの記憶領域が用意されており、各記憶領域に所定の情報が格納される。
【0047】
プログラム格納部161は、制御部110が実行するプログラムを格納する領域である。本実施形態では、移動体通信端末100全体の動作を実現するためのプログラム(例えば、OS(Operating System))や移動体通信端末100で実行可能な各種機能を実現するためのプログラム(アプリケーションプログラムなど)の他、キーの強調動作をおこなうためのプログラムが格納される。
【0048】
設定情報格納部162は、キー強調部132によるキー強調動作のための設定情報を格納する。本実施形態では、移動体通信端末100で実行される機能に応じてキーボード131のキー強調動作をおこなうものとする。よって、設定情報格納部162には、移動体通信端末100で実行される機能(アプリケーションなど)と、その機能の実行時の移動体通信端末100の使用方向(縦長方向か横長方向か)を予め対応づけた「機能設定テーブル」と、移動体通信端末100の使用方向とそのときに強調すべきキーとを予め対応づけた「キー設定テーブル」とが格納される。各テーブルに記録される情報の例を図5に示す。
【0049】
図5(a)は、機能設定テーブルに記録される情報の例を示す図である。図示するように、機能設定テーブルには、移動体通信端末100が実行可能な機能のうち、移動体通信端末100を縦長方向で使用することが好ましい機能(例えば、電話機能など)には、使用方向を示す情報として「縦長」が記録され、移動体通信端末100を横長方向で使用することが好ましい機能(例えば、テレビ受信機能、動画撮影機能、ウェブブラウズ機能、電子メール機能、など)には、使用方向を示す情報として「横長」が記録されている。
【0050】
ここで、いずれの方向で使用することが好適であるかは、例えば、表示部140で表示する画面の比率の他、キーボード131の使い方などに基づいて規定される。つまり、動画像など横長比率の画面表示をおこなう機能(テレビ受信機能や動画撮影機能など)を実行するときは、表示部140が横長方向となるよう、図2(b)に示す形態(少なくとも上部筐体100Aが横長方向となる形態)で使用することが好ましく、文字入力が主となる機能(電子メール機能など)を実行するときも、フルキーボードに相当するキー配列が使用できる図2(b)に示す形態(少なくとも下部筐体100Bが横長方向となる形態)で使用することが好ましいので、このような機能については、使用方向として「横長」が対応づけられる。
【0051】
図5(b)に、キー設定テーブルに記録される情報の例を示す。図示するように、キー設定テーブルには、機能設定テーブルで設定された使用方向のそれぞれについて、強調すべきキーを示すキー番号が対応づけられている。ここで、キーボード131を構成するキーのそれぞれには、一意となるキー番号が予め設定されているものとする。
【0052】
次に、プログラム格納部161に格納されているプログラムを制御部110が実行することで実現される機能構成を説明する。ここでは、制御部110が実行可能な機能のうち、キー強調部132によるキー強調動作にかかる機能を説明する。この場合、制御部110は、図6に示すような構成として機能する。すなわち、制御部110は、機能実行部111、使用方向判別部112、強調キー特定部113、キー強調指示部114、などとして機能する。
【0053】
機能実行部111は、移動体通信端末100の各部と協働し、入力装置130のキーボード131からの指示入力などに応じて、プログラム格納部161に格納されているプログラムを実行することで、指示された機能を実行するとともに、実行する機能がいずれであるかを使用方向判別部112に通知する。
【0054】
使用方向判別部112は、設定情報格納部162の機能設定テーブルに基づいて、機能実行部111が実行した機能に対応づけられている使用方向を判別する。
【0055】
強調キー特定部113は、設定情報格納部162のキー設定テーブルに基づいて、判別された使用方向に応じて強調すべきキーボード131のキーを特定する。
【0056】
キー強調指示部114は、特定されたキーに対応する光源の発光をキー強調部132に指示することで、実行される機能の使用方向に対応したキーの強調動作を実行させる。
【0057】
本実施形態では、制御部110がプログラムを実行することで、図6に示す各機能が実現されるものとするが、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)などのハードウェア構成によってこれらの機能が実現されてもよい。
【0058】
以上の構成は、本発明を実現するために必要な構成であり、移動体通信端末としての基本機能や付加機能のために必要なその他の構成(例えば、撮影用カメラ、テレビ受信用チューナ、など)については、必要に応じて備えられているものとする。
【0059】
以上のような構成を有する移動体通信端末100の動作を以下説明する。ここでは、移動体通信端末100で実行可能なアプリケーションなどの機能の実行が指示された際に実行される「キー強調処理」を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。このキー強調処理は、移動体通信端末100のユーザがキーボード131を操作するなどして、所望する機能の実行を指示したことを契機に開始される。
【0060】
この場合、指示された機能を機能実行部111が実行することで処理が開始され、機能実行部111が実行した機能がいずれであるかを使用方向判別部112に通知する。
【0061】
使用方向判別部112は、設定情報格納部162の機能設定テーブルにアクセスし、実行した機能に対応する移動体通信端末100の使用方向が縦長方向であるか否かを判別する(ステップS101)。
【0062】
ここで、図2(b)に示すように、キーボード131を横長方向のフルキーボードとして用いる場合、対応するキートップ表示は、ほぼすべてのキーに付されているので、移動体通信端末100の使用方向が横長方向の場合は、すべてのキーを強調すればよい。一方、図2(a)に示すように、キーボード131を縦長方向の電話用入力キーとして用いる場合、対応するキートップ表示は、一部のキーに付されている。よって、この場合、表示が付されているキーのみを強調する必要がある。
【0063】
つまり、移動体通信端末100の使用方向が縦長方向である場合(ステップS101:Yes)、使用方向判別部112は、その旨を強調キー特定部113に通知する。この場合、強調キー特定部113は、設定情報格納部162のキー設定テーブルにアクセスし、縦長方向に対応づけられているキー番号を取得してキー強調指示部114に通知する。
【0064】
キー強調指示部114は、強調キー特定部113から通知されたキー番号に対応する光源の発光をキー強調部132に指示することで、図8(a)に示すように、移動体通信端末100を縦長方向で使用する際に用いられるキーのみが照明され、使用するキーが強調されて(ステップS102)、処理を終了する。
【0065】
一方、判別された使用方向が横長方向の場合、使用方向判別部112はその旨をキー強調指示部114に通知する。この場合、キー強調指示部114は、キーボード131のすべてのキーに対応する光源の発光をキー強調部132に指示することで、図8(b)に示すように、移動体通信端末100を横長方向で使用する際に用いられるすべてのキーが照明され、使用するキーが強調される(ステップS103)。
【0066】
以上のように、移動体通信端末100で実行する機能に対応づけられている使用方向に基づいて、使用すべきキーが自動的に強調されるので、移動体通信端末100のユーザは、操作対象となるキーを容易に認識することができる。
【0067】
(実施形態3)
上記実施形態2では、実行する機能に基づいて強調するキーを特定したが、移動体通信端末100の開閉方向に基づいて強調するキーを特定することもできる。このような動作を実現するための構成を図9に示す。図9は、本実施形態にかかる移動体通信端末100(携帯装置)の構成を示すブロック図である。
【0068】
ここで、本実施形態にかかる移動体通信端末100のハードウェア構成は、実施形態2で示した移動体通信端末100の構成に開閉検出部170を加えたものである。また、設定情報格納部162には、実施形態2で示した機能設定テーブルは格納されていなくてもよい。以下、実施形態2の移動体通信端末100との差異である開閉検出部170についてのみ説明する。
【0069】
開閉検出部170は、例えば、2軸ヒンジDHやヒンジ基部HBなどの開閉動作にかかる機構部や、上部筐体100Aおよび下部筐体100B内などに配置されるセンサによって構成され、移動体通信端末100の開閉方向を検出する。本実施形態では、2軸ヒンジDHによって、縦方向にも横方向にも開閉可能であるので、少なくとも、2軸ヒンジDHにおける回転方向を検出できるセンサが開閉検出部170に含まれているものとする。このような開閉検出部170は、検出信号を随時110に入力する。
【0070】
このような構成の場合、開閉検出部170からの検出信号に基づいて、使用方向判別部112が使用方向を判別することができる。すなわち、図1に示す軸X−X’を回転軸とした上部筐体100Aの開閉動作が検出された場合、移動体通信端末100が縦方向に開閉したことになる。この方向の動作が、図2(a)に示すような閉成状態からおこなわれた場合、移動体通信端末100が縦方向に開かれ、図1に示すような状態になったと判別できる。この場合、使用方向判別部112は、移動体通信端末100の使用方向が「縦長方向」であると判別することができる。よって、図7に示したキー強調処理と同様の処理によって、縦長方向に対応したキー強調をおこなうことができる。
【0071】
また、図2(a)に示す軸Y−Y’を回転軸とした上部筐体100Aの開閉動作が検出された場合は、移動体通信端末100が横方向に開閉したことになる。この方向の動作が、図2(a)に示すような閉成状態からおこなわれた場合、移動体通信端末100が横方向に開かれ、図2(b)に示すような状態になったと判別できる。この場合、使用方向判別部112は、移動体通信端末100の使用方向が「横長方向」であると判別することができる。よって、図7に示したキー強調処理と同様の処理によって、横長方向に対応したキー強調をおこなうことができる。
【0072】
上記各実施形態で例示した移動体通信端末100のように、2方向に開閉可能な筐体を有する装置の場合、その開閉方向によって使用方向を判別することができるので、例えば、縦長方向でも横長方向でも使用できるような機能が実行された場合でも、適切なキー強調動作をおこなうことができる。
【0073】
以上説明したように、本発明にかかる上記各実施形態によれば、移動体通信端末などの小型装置であっても、フルキーボードに相当するキー配置を、操作性を損なわずに実現することができる。
【0074】
また、用途に応じて筐体や装置全体を縦横などの2方向のいずれかにして使用する場合、使用方向に適した表示方向のキーを配置することができる。
【0075】
さらに、実行する機能や筐体の開閉方向に基づいて使用方向を判別し、その使用方向で用いられるキーを自動的に強調するので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0076】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0077】
例えば、上記各実施形態では、キー形状としてひし形を例示したが、上下左右がともに対称で千鳥状(互い違い)に配列可能であれば、例えば、正円や正六角形などといった他の形状であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態2および実施形態3では、キー単位の照明によってキー強調動作をおこなう場合を例示したが、使用すべきキー表示が強調されるのであれば、強調方法はこれに限られず任意である。例えば、一つのキーを部分的に照明することが可能であれば、使用すべきキー表示部分(文字等が印字されている部分)を照明することで強調してもよい。あるいは、キー表示を印字によらず、例えば、各キーにELディスプレイを構成して文字等を表示させる場合は、使用方向に対応する文字等のみを表示させるようにしてもよい。
【0079】
上記各実施形態におけるキー表示(キートップ)は一例であり、キー数や配列方式、キートップに表示される文字等は任意である。また、実行する機能に対応する使用方向や、使用方向により強調すべきキーがいずれであるかも任意である。この場合、キー設定テーブルに適宜に設定することで、適切なキー強調動作をおこなうことができる。すなわち、上記実施形態2および実施形態3においては、縦長方向と判別された場合はすべてのキーを強調したが、この動作に限られるものではない。
【0080】
また、上記実施形態では、本発明にかかる携帯装置を移動体通信端末で実現した例を示したが、2方向で使用可能な装置であれば、本発明を適用可能な携帯装置は移動体通信端末に限られるものではない。
【0081】
なお、上述した移動体通信端末100のように、キーボード131を有する入力装置130を予め備えている携帯装置として提供できることはもとより、入力装置130のみを部品として提供することもできる。この場合、既存の携帯装置(移動体通信端末など)の入力装置のみを改変するなどにより、上述した移動体通信端末100と同等の装置とすることができる。
【0082】
このような場合、上述した移動体通信端末100の制御部110が実行したようなプログラムを適用して実行させることで、上述した移動体通信端末100と同等の機能を実現することができる。
【0083】
この場合、上述した各処理を実行させるためのプログラムを適用し、当該装置(移動体通信端末など)を制御するコンピュータ(CPUなど)がそのプログラムを実行することで、本発明にかかる移動体通信端末として機能させることができる。
【0084】
このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して提供することで任意の装置に適用できる他、所定の記録媒体(例えば、メモリカード、CD−ROM、DVD、など)にプログラムを格納して配布することでも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態にかかる移動体通信端末を縦長方向で使用する場合の外観構成を示す図である。
【図2】図1に示す移動体通信端末の外観構成を示す図であり、(a)は、移動体通信端末が閉成状態のときの外観構成を示し、(b)は、移動体通信端末を横長方向で使用する場合の外観構成を示す。
【図3】図1および図2(b)に示した入力装置(キーボード)を説明するための図であり、(a)は、移動体通信端末を縦長方向で使用する場合に用いられるキー表示(キートップ)を例示した図であり、(b)は、移動体通信端末を横長方向で使用する場合に用いられるキー表示(キートップ)を例示した図であり、(c)は、(b)に示したキー表示(キートップ)の表示位置を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施形態2にかかる移動体通信端末の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す設定情報格納部に格納される情報を説明するための図であり、(a)は、設定情報格納部に格納される機能設定テーブルの例を示し、(b)は、設定情報格納部に格納されるキー設定テーブルの例を示す。
【図6】図4に示す制御部によって実現される機能構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2および実施形態3にかかる「キー強調処理」を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示す処理によるキー強調を説明するための図であり、(a)は、縦長方向で使用する際のキー強調の例を示し、(b)は、横長方向で使用する際のキー強調の例を示す。
【図9】本発明の実施形態3にかかる移動体通信端末の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0086】
100…移動体通信端末、100A…上部筐体、100B…下部筐体、HB…ヒンジ基部、DH…2軸ヒンジ、110…制御部、111…機能実行部、112…使用方向判別部、113…強調キー特定部、114…キー強調指示部、120…通信制御部、121…アンテナ、130…入力装置、131…キーボード、132…キー強調部、140…表示部、150…音声処理部、151…スピーカ、152…マイクロフォン、160…記憶部、161…プログラム格納部、162…設定情報格納部、170…開閉検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2方向で使用可能な入力装置であって、
それぞれが上下左右ともに対称となる形状であり、前記入力装置が使用される方向に応じた1または2方向の表示が付されたキーが、千鳥状に配列されている、
ことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記入力装置が使用される2方向のうちの一方に対応する表示は、前記千鳥状配列における長手方向で上下に隣接する2列のキー列の各キーを通る一直線上の位置に付されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記キーの形状はひし形であり、前記キーが配列される面を構成する辺と前記ひし形の辺とが平行しない方向で前記キーが配列されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
略長方形の面から構成される筐体と該筐体上の一面上に構成される入力装置とを有し、前記筐体を縦長方向にして使用する機能と前記筐体を横長方向にして使用する機能とを実行可能な携帯装置であって、
前記入力装置は、
それぞれが上下左右ともに対称となる形状で、前記筐体の使用方向に応じた1または2方向の表示方向となるキートップを有するキーが千鳥状に配列されたキーボードを備える、
ことを特徴とする携帯装置。
【請求項5】
前記キーボードは、
前記携帯装置を横長方向で使用するときに対応する前記キートップの表示が、前記千鳥状配列において上下に隣接する2列のキー列の各キーを通る一直線上の位置に表示されるよう前記キーが配列されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記キーの形状はひし形であり、前記入力装置が構成されている面の辺と前記ひし形の辺とが平行しない方向に前記キーが配列されている、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記携帯装置が実行する機能に応じて、該機能で使用される前記携帯装置の方向に対応した前記キーの表示を強調するキー強調手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記携帯装置の使用方向を検出する方向検出手段をさらに備え、
前記キー強調手段は、前記方向検出手段が検出した方向に基づいて、強調する前記キーを特定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記携帯装置は、縦方向および横方向のいずれにも開閉可能な2以上の筐体から構成され、
前記キー強調手段は、前記筐体の開閉方向に基づいて、強調する前記キーを特定する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の携帯装置。
【請求項10】
縦長方向で使用する機能と横長方向で使用する機能とを実行可能な携帯装置であって、該携帯装置の使用方向に応じた1または2方向の表示方向となる表示のキーボードを備えた携帯装置を制御するコンピュータに、
前記携帯装置の使用方向を判別する機能と、
判別した使用方向に基づいて、前記キーボードの強調すべきキーを特定する機能と、
特定したキーが強調されるよう制御する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−225678(P2008−225678A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60627(P2007−60627)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】