説明

入力装置及びこれを用いた入力ユニット

【課題】主に自動車の各種電子機器の操作に用いられる入力装置及びこれを用いた入力ユニットに関し、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易なものを提供することを目的とする。
【解決手段】移動及び回動可能な操作体11を設け、制御手段14が操作体11の揺動操作に応じて、所定の電子機器またはそのモードを選択し、回動操作に応じて機器またはそのモードの調整を行うことによって、一つの操作体11の移動及び回動操作で複数の電子機器またはそのモードの選択と調整が行えるため、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易な入力装置20を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に装備された各種電子機器の操作に用いられる入力装置及びこれを用いた入力ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車内にはエアコンやオーディオ等の多数の電子機器が装備され、これらの機器やそのモードを、フロントパネル部に複数のつまみを配置した入力装置によって操作することが多く行われており、誤操作が少なく操作し易いものが求められている。
【0003】
このような従来の入力装置について、図4を用いて説明する。
【0004】
図4は従来の入力ユニットの平面図であり、同図において、1は絶縁樹脂製のパネル、2はパネル1の複数の開口部1Aから突出し押圧可能にパネル1に装着された複数の押釦で、これらの押釦2背面には、押釦2の押圧操作によって電気的接離が行われるプッシュスイッチ(図示せず)が、配線基板(図示せず)等に実装されて配置されている。
【0005】
そして、この配線基板にはマイコン等の電子部品(図示せず)によって制御手段(図示せず)が形成されると共に、この制御手段にプッシュスイッチが接続されて入力装置が構成されている。
【0006】
また、この制御手段がコネクタ等を介して、複数の電子機器が接続された車体の電子回路(図示せず)に接続され、プッシュスイッチの電気的接離信号が電子回路へ送信されるようにして、入力ユニットが構成されている。
【0007】
さらに、このような入力ユニットが運転席前方のフロントパネル部に装着されると共に、パネル1には右端から、運転席側エアコンの温度調整用の押釦2Aと2B、ナビゲーションのディスプレー表示調整用の押釦2Cと2D、オーディオの音量調整用の押釦2Eと2F、助手席側エアコンの温度調整用の押釦2Gと2Hが、各々上下に配置されている。
【0008】
以上の構成において、例えば運転席側エアコンの温度を上げる場合には、複数の押釦2A〜2Hの中から押釦2Aを選び、これを押圧操作すると、押釦2A背面のプッシュスイッチの電気的接離が行われ、この接離信号が制御手段から車体の電子回路へ出力されて、運転席側エアコンの設定温度が高くなる。
【0009】
また、上記とは逆に設定温度を下げる場合には、押釦2Aの下方の押釦2Bを選び押圧操作することによって、同じく押釦2Bに対応した電気的接離信号が電子回路に送信され、エアコンの設定温度が低くなる。
【0010】
同様に、押釦2Gや2Hを押圧操作すると助手席側エアコンの温度調整が、押釦2Cや2Dによってナビゲーションのディスプレー表示画面の拡大や縮小が、押釦2Eや2Fによってオーディオの音量調整が各々行われる。
【0011】
つまり、エアコンやオーディオ等の複数の電子機器毎に、また、その温度や音量等のモード毎に複数の押釦2A〜2Hが配置され、これらから所望の押釦を選び押圧操作することによって、所定の機器のモードを調整するように構成されているものであった。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−318729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、電子機器の種類やそのモード毎に複数の押釦やプッシュスイッチを配置しているため、操作する機器やモードが増えた場合にはスイッチ装置が大きくなると共に、操作の度に操作しようとする機器やモードの押釦を視認し、各々の押釦を操作する必要があるため、操作が煩雑で、押し間違い等の誤操作も生じ易いという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、移動及び回動可能な操作体を設けると共に、制御手段が操作体の移動操作に応じて、所定の電子機器またはそのモードを選択し、操作体の回動操作に応じて、機器またはそのモードの調整を行うようにして入力装置を構成したものであり、一つの操作体を移動及び回動操作することによって、複数の電子機器またはそのモードの選択と調整が行えるため、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易な入力装置を得ることができるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、操作体に押圧可能な押釦を設けると共に、この押釦の押圧を検出する押圧検出手段を設け、この押圧検出手段を制御手段に接続したものであり、さらに多くの機器やモードの操作を行うことができるという作用を有する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の入力装置を、操作体が移動及び回動可能にパネルへ装着すると共に、パネルの操作体周囲に、複数の表示部を設けて入力ユニットを構成したものであり、小型化が図れ、操作の容易な入力ユニットを実現することができるという作用を有する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、表示部背面に発光部を設け、制御手段が操作体の移動操作に応じて、所定の表示部を照光するものであり、操作体の移動操作に対応して表示部を照光することによって、表示部が見易くなり、さらに容易に操作を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、小型化が図れ、操作の容易な入力装置及びこれを用いた入力ユニットを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置のブロック回路図であり、同図において、11は絶縁樹脂製の操作体で、軸部11Aの上端に略円筒状のつまみ11Bが回動可能に装着されると共に、軸部11A下端が略箱状のケース12内に前後左右の各方向に揺動可能に保持されている。
【0023】
そして、つまみ11B上面の略中央には、下方向へ押圧可能な押釦11Cが設けられている。
【0024】
また、13Aは操作体11の揺動方向を検出する移動検出手段で、操作体11の揺動によって、ケース12内の軸部11A下端に前後左右方向へ延出した押圧部(図示せず)に押圧され、電気的接離を行うプッシュスイッチ(図示せず)等の複数のスイッチ接点から形成されている。
【0025】
なお、軸部11A下端には節度カムやばね(図示せず)等によって、操作体11が揺動した際に、その傾いた状態に操作体11を保持する節度手段が設けられている。
【0026】
さらに、13Bは操作体11の回動方向や回動量を検出する回動検出手段で、つまみ11B内に設けられ、つまみ11Bの回動操作に応じて所定のパルス波形信号を入力する回転式エンコーダ等によって形成されている。
【0027】
そして、13Cは押釦11Cの押圧を検出する押圧検出手段で、つまみ11B内に設けられ押釦11C下方に配置された、プッシュスイッチ(図示せず)等によって形成されている。
【0028】
また、14はマイコン等の電子部品(図示せず)によって形成された制御手段で、この制御手段14が移動検出手段13Aや回動検出手段13B、押圧検出手段13Cに電気的に接続されると共に、車体の電子回路(図示せず)を介してエアコンやオーディオ、ナビゲーション等の複数の電子機器に接続されて、入力装置20が構成されている。
【0029】
さらに、このような入力装置20が運転席前方のフロントパネル部に、図2の平面図に示すように、暗色のパネル16に、軸部11Aが開口部16Aを挿通しつまみ11Bがパネル16前面から突出するように装着されて、入力ユニットが構成されている。
【0030】
そして、パネル16前面のつまみ11B周囲には、操作体11の操作方向に対応して、各電子機器やそのモード等を示す透光性の文字や記号等の表示部17が形成されると共に、これら表示部17背面には発光ダイオード等によって発光部18が形成され、この発光部18が制御手段14に電気的に接続されている。
【0031】
以上の構成において、例えば運転席側エアコンの温度を上げる場合には、図2に示すような、操作体11が直立して中立位置に保持された状態から、図3の平面図に示すように、つまみ11Bを右方向へ揺動操作すると、操作体11が軸部11A下端を支点として揺動し、これによってケース12内の所定のプッシュスイッチが、軸部11A下端の押圧部に押圧されて電気的接離を行う。
【0032】
そして、このスイッチ接点の電気的接離信号、即ち移動検出手段13Aからの検出信号が制御手段14へ出力され、運転席側エアコンの温度の調整が可能な状態になる。
【0033】
また、この時、制御手段14が操作体11の揺動操作に応じて、表示部17の「運転席TEMP」背面の発光部18を発光させ、「運転席TEMP」が照光されるため、どの機器のどのモードが選択されているかを容易に確認することができる。
【0034】
そして、操作体11が右方向に傾いた状態で、つまみ11Bを持ったまま、例えば時計方向につまみ11Bを回動操作すると、回転式エンコーダ等の回動検出手段13Bが電気的接離を行い、この検出信号が制御手段14から車体の電子回路へ出力されて、運転席側エアコンの設定温度が高くなる。
【0035】
また、設定温度を下げるには、操作体11を「運転席TEMP」方向へ傾けたままで、つまみ11Bを上記とは逆に反時計方向に回動操作すると、この検出信号が出力されてエアコンの設定温度が低くなる。
【0036】
同様に、操作体11を左方向に揺動操作すると助手席側エアコンの温度調整が、上方向に揺動操作するとナビゲーションのディスプレー表示画面の拡大や縮小が、下方向に揺動操作するとオーディオの音量調整が各々可能な状態となり、操作体11を各方向へ傾けたままで、つまみ11Bを回動操作することによって、これらの機器の温度や表示画面、音量等の調整が行われる。
【0037】
つまり、操作体11のつまみ11Bを揺動操作して、エアコンやオーディオ等の電子機器とその温度や音量等のモードを選択し、このつまみ11Bを持ったまま回動操作して、これらのモードの調整を行うことによって、一つのつまみ11Bから手を放さず複数の電子機器やそのモードの選択と調整が行えるため、操作の度にいちいち視認する必要がなく、押し間違い等の誤操作もなく容易に操作を行うことができるように構成されている。
【0038】
また、操作体11を揺動操作した際、この揺動方向を制御手段14が検出し、揺動された箇所の表示部17、例えば「運転席TEMP」や「AUDIO VOL」等が照光されるため、どの機器のどのモードが選択されているかの確認も容易に行うことができる。
【0039】
さらに、つまみ11B上面略中央の押釦11Cの押圧操作によって、例えば、操作体11の揺動操作でナビゲーションのディスプレーを選択し、回動操作でその表示画面に表示された複数のメニューを選択した後、押釦11Cを押圧操作することで、プッシュスイッチ等の押圧検出手段13Cからの検出信号を制御手段14が検出し、選択したメニューを確定する等、一つのつまみ11Bを持ったままで、さらに多くの機器やモードの操作を行うこともできる。
【0040】
このように本実施の形態によれば、揺動及び回動可能な操作体11を設け、制御手段14が操作体11の揺動操作に応じて、所定の電子機器またはそのモードを選択し、回動操作に応じて機器またはそのモードの調整を行うことによって、一つの操作体11の移動及び回動操作で複数の電子機器またはそのモードの選択と調整が行えるため、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易な入力装置、及びこれを用いた入力ユニットを得ることができるものである。
【0041】
そして、操作体11に押圧可能な押釦11Bを設けると共に、この押釦11Bの押圧を検出する押圧検出手段13Cを設けることによって、さらに多くの機器やモードの操作を行うことができる。
【0042】
また、表示部17背面に発光部18を設け、制御手段14が操作体11の移動操作に応じて、所定の表示部17を照光することによって、操作方向が確認し易くなり、さらに容易に操作を行うことができる。
【0043】
なお、夜間等、周囲が暗い場合には、全ての表示部17を照光した状態にしておき、操作体11が揺動操作された所定方向のみ、より明るい輝度で照光するようにしてもよい。
【0044】
また、以上の説明では、操作体11が軸部11A下端を支点として揺動する構成について説明したが、軸部11Aが開口部16A内を水平方向に摺動して、操作体11がパネル16に対し平行移動する構成としても、本発明の実施は可能である。
【0045】
さらに、移動検出手段13Aや回動検出手段13B、押圧検出手段13Cは、上記のようなプッシュスイッチや回転式エンコーダの他、これらとは操作形態の異なるスイッチやフォトインタラプタ等の光検出素子、あるいはホール素子等の磁気検出素子等、様々な電子部品で形成することが可能である。
【0046】
そして、操作体11は上下左右の4方向の他、2方向あるいは6方向等、用途に応じた様々な方向へ操作可能なものとしてもよく、また、移動操作によって一つの機器の複数のモード、例えば、エアコンの温度や風量、オーディオの音量やトーン等を選択する構成としてもよい。
【0047】
さらに、操作体11が揺動した際に、その傾いた状態に操作体11を保持する節度手段を設けた構成として説明したが、傾けた後、手を放すと中央位置に自動復帰する構成としても、あるいは制御手段14を車体の電子回路と一体に設けても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による入力装置及びこれを用いた入力ユニットは、小型化が図れ、誤操作が少なく操作の容易なものが得られ、主に自動車に装備された各種電子機器の制御操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置のブロック回路図
【図2】同平面図
【図3】同操作時の平面図
【図4】従来の入力ユニットの平面図
【符号の説明】
【0050】
11 操作体
11A 軸部
11B つまみ
11C 押釦
12 ケース
13A 移動検出手段
13B 回動検出手段
13C 押圧検出手段
14 制御手段
16 パネル
16A 開口部
17 表示部
18 発光部
20 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動及び回動可能な操作体と、この操作体の移動を検出する移動検出手段と、前記操作体の回動を検出する回動検出手段と、これらの検出手段及び複数の電子機器に接続された制御手段からなり、前記制御手段が前記操作体の移動操作に応じて、所定の電子機器またはそのモードを選択すると共に、前記操作体の回動操作に応じて、機器またはそのモードの調整を行う入力装置。
【請求項2】
操作体に押圧可能な押釦を設けると共に、この押釦の押圧を検出する押圧検出手段を設け、この押圧検出手段を制御手段に接続した請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
請求項1記載の入力装置を、操作体が移動及び回動可能にパネルへ装着すると共に、前記パネルの前記操作体周囲に、複数の表示部を設けた入力ユニット。
【請求項4】
表示部背面に発光部を設け、制御手段が操作体の移動操作に応じて、所定の表示部を照光する請求項3記載の入力ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−79407(P2006−79407A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263596(P2004−263596)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】