説明

入力装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】入力操作を受け付ける入力操作部がチルト機構を介して装置本体に対して揺動可能に設けられ、スライド装置が入力操作部に格納される入力装置であって、スライド装置が格納位置から突出しているときに該スライド装置の破損を防止することが可能な入力装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】入力操作を受け付ける入力操作部6がチルト機構10を介して装置本体2aに対して揺動可能に設けられた入力装置(画像読取装置)2は、入力操作部6の格納位置に格納される一方、該格納位置からスライドして突出可能とされたスライド装置20を備え、スライド装置20が格納位置から突出しているときにはチルト機構10をロックさせる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置や複合機等の画像形成装置に適用できる入力装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置として、入力操作を受け付ける入力操作部がチルト機構を介して装置本体に対して揺動可能に設けられた入力装置を備えた画像形成装置が従来から知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、装置本体の格納位置に格納される一方、該格納位置からスライドして突出可能とされたスライド装置(具体的には装置本体に対してスライド可能な操作パネル)が設けられた入力装置を備えた画像形成装置も従来から知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−290432号公報
【特許文献2】特開2009−204639号公報
【特許文献3】特開2009−139880号公報
【特許文献4】特開平11−258884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景技術に鑑み、入力操作を受け付ける入力操作部がチルト機構を介して装置本体に対して揺動可能に設けられた入力装置において、スライド装置が入力操作部に格納される場合には、次のような不都合がある。
【0006】
すなわち、かかる入力装置及びそれを備えた画像形成装置においては、スライド装置が格納位置から突出している状態で入力操作部がチルト機構によって揺動すると、スライド装置が装置本体の各部に接触し、スライド装置の破損を招くといった事態を招く。
【0007】
そこで、本発明は、スライド装置が格納位置から突出しているときにスライド装置の破損を防止することが可能な入力装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、入力操作を受け付ける入力操作部がチルト機構を介して装置本体に対して揺動可能に設けられた入力装置であって、前記入力操作部の格納位置に格納される一方、該格納位置からスライドして突出可能とされたスライド装置を備え、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているときには前記チルト機構をロックさせる構成とされていることを特徴とする入力装置を提供する。また、本発明は、前記本発明に係る入力装置を備えたことを特徴とする画像形成装置も提供する。
【0009】
本発明によれば、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているときには前記チルト機構をロックさせる構成とされているので、前記スライド装置が前記格納位置から突出している状態では前記入力操作部が前記チルト機構によって揺動されずに固定された状態となるため、該スライド装置が前記装置本体の各部に接触することがない。これにより、前記スライド装置の破損を防止することが可能となる。
【0010】
なお、前記スライド装置は、前記入力操作部に格納して使用できる装置であれば、何れの装置でもあってもよい。前記スライド装置としては、例えば、キーボードを備えたキー入力操作装置や、ICカード等の記録媒体を読み取る読み取り装置(具体的にはカードリーダー)を例示できる。
【0011】
本発明において、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを検知する検知手段と、前記チルト機構をロックさせるロック装置とを備えていることが好ましい。この場合、前記検知手段の検知結果に基づいて前記ロック装置を作動させる態様を例示できる。
【0012】
この特定事項では、前記検知手段によって前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを容易に検知できると共に前記ロック装置によって前記チルト機構を確実にロックすることが可能となる。
【0013】
本発明において、前記ロック装置は、前記チルト機構における可動部材をロックさせるための係合部と、前記係合部を係止させる係止部と、前記係止部を駆動する駆動部とを備えている態様を例示できる。
【0014】
この特定事項では、前記係合部と前記係止部と前記駆動部とを備えるといった簡単な構成で前記ロック装置を容易に実現することが可能となる。
【0015】
前記検知手段としては、次の態様(a)及び(b)を例示できる。すなわち、
態様(a)は、前記検知手段は、光を発光する発光部と、前記スライド装置のスライド動作による変位により前記発光部からの光の有無を検知する受光部とを備えたフォトセンサーを含む態様である。
【0016】
この特定事項では、前記発光部と前記受光部とを備えた前記フォトセンサーを用いることで、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを簡単にかつ容易に検知することが可能となる。しかも、前記フォトセンサーとして、一般に汎用されているフォトセンサーを利用することができ、それだけコストを低減させることができる。
【0017】
態様(b)は、前記検知手段は、前記スライド装置のスライド動作による押圧力により押圧されている間だけオン状態又はオフ状態が維持される自動復帰型プッシュスイッチを含む態様である。
【0018】
この特定事項では、前記自動復帰型プッシュスイッチを用いることで、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを簡単にかつ容易に検知することが可能となる。しかも、前記自動復帰型プッシュスイッチとして、一般に汎用されているプッシュスイッチを利用することができ、それだけコストを低減させることができる。
【0019】
本発明において、前記スライド装置が前記格納位置から突出する突出動作に連動して前記チルト機構をロックさせるロック機構を備えていてもよい。
【0020】
この特定事項では、前記ロック機構によって前記スライド装置が前記格納位置から突出する突出動作に連動して前記チルト機構をロックさせるので、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを検知する検知手段を省くことができ、それだけコストを低減させることが可能となる。
【0021】
本発明において、前記ロック機構は、前記チルト機構における可動部材をロックさせるための係合部と、前記係合部を係止する係止部と、前記スライド装置の前記突出動作に連動して前記係止部を前記係合部に係合させる連動部とを備えている態様を例示できる。
【0022】
この特定事項では、前記係合部と前記係止部と前記連動部とを備えるといった簡単な構成で前記ロック機構を容易に実現することが可能となる。
【0023】
本発明において、前記連動部は、前記スライド装置のスライド動作により回転し、かつ、該スライド動作による回転に伴って前記係止部を回動させる回転機構を備えている態様を例示できる。
【0024】
この特定事項では、前記回転機構により、前記スライド装置のスライド動作を前記係止部の係合動作(回動動作)に簡単に変換することができ、これにより、前記スライド装置の前記突出動作に連動して前記係止部を前記係合部に係合させる前記連動部を容易に構成することが可能となる。
【0025】
本発明において、前記スライド装置を前記入力操作部に対してスライド可能に支持するスライド機構を備えていてもよい。この場合、前記スライド機構と前記ロック機構とで構成部材の一部を兼ねている態様を例示できる。
【0026】
この特定事項では、前記スライド機構と前記ロック機構とで構成部材の一部を兼ねているので、前記スライド機構及び前記ロック機構の双方の機能を維持しつつ、部品点数を削減でき、これにより、装置構成の簡略化、装置のコンパクト化、装置コストの低減を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によると、前記スライド装置が前記格納位置から突出しているときには前記チルト機構をロックさせる構成とされているので、前記スライド装置が前記格納位置から突出している状態では前記入力操作部が前記チルト機構によって揺動されずに固定された状態となるため、該スライド装置が前記装置本体の各部に接触することがなく、これにより、該スライド装置の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力装置として画像読取装置を備えた画像形成装置の外観を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の外観を示す概略図であって、(a)は、画像形成装置の左側面図であり、(b)は、画像形成装置の正面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置における画像読取装置を示す側面図であって、(a)は、入力操作部が第1操作位置にある状態を示す図であり、(b)は、入力操作部が収納位置にある状態を示す図であり、(c)は、入力操作部が第1操作位置と収納位置との間の第2操作位置にある状態を示す図である。
【図4】画像読取装置における入力操作部の表示部を説明するための説明図であって、(a)は、該入力操作部における表示部の部分を示す斜視図であり、(b)は、該表示部における表示画面を示す正面図である。
【図5】図1に示す画像読取装置におけるスライド装置を示す概略断面図であって、(a)は、スライド装置が格納位置に格納されている状態を示す図であり、(b)は、スライド装置が格納位置から突出して突出位置に位置している状態を示す図である。
【図6】画像読取装置におけるスライド装置を説明するための説明図であって、(a)は、画像読取装置の入力操作部からスライド装置が突出位置に位置している状態を示す斜視図であり、(b)は、スライド装置におけるキーボードを示す正面図である。
【図7】スライド装置が入力操作部に対して段階的にスライド移動するスライド機構を説明するための概略側面図である。
【図8】入力操作部、チルト機構及びスライド装置を備えた画像読取装置においてチルト機構のロック構成がない場合での不都合を説明するための左側面図であって、(a)は、スライド装置が格納位置から突出している状態で入力操作部が揺動している状態を示す図であり、(b)は、格納位置から突出したスライド装置が装置本体に接触している状態を示す図である。
【図9】入力操作部及びスライド装置に設けられた検知手段の一例である検知部を上から視た概略正面図であって、(a)は、スライド装置が格納位置に格納されている状態を示す図であり、(b)は、スライド装置が格納位置から突出している状態を示す図である。
【図10】図9に示す検知部が設けられた入力操作部及びスライド装置を示す概略断面図であって、(a)は、スライド装置が格納位置に格納されている状態を示す図であり、(b)は、スライド装置が格納位置から突出している状態を示す図である。
【図11】入力操作部に設けられたロック装置を説明するための概略側面図である。
【図12】図1に示す画像読取装置における制御系の一例を示すシステムブロック図である。
【図13】入力操作部及びスライド装置に設けられた検知手段の他の例である検知部を上から視た概略正面図であって、(a)は、スライド装置が格納位置に格納されている状態を示す図であり、(b)は、スライド装置が格納位置から突出している状態を示す図である。
【図14】図1に示す画像読取装置における制御系の他の例を示すシステムブロック図である。
【図15】第1実施形態又は第2実施形態に係る画像読取装置の制御部による動作制御の一例を示すフローチャートである。
【図16】入力操作部及びスライド装置に設けられたロック機構を説明するための概略側面図であって、スライド装置が格納位置に格納されてロック機構によりチルト機構のロック状態が解除されている状態を示す図である。
【図17】入力操作部及びスライド装置に設けられたロック機構を説明するための概略側面図であって、スライド装置が格納位置から突出してロック機構によりチルト機構がロックされている状態を示す図である。
【図18】回転機構における第2回転部材及びその周辺部分を上から視た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0030】
[画像形成装置の全体構成について]
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置として画像読取装置2を備えた画像形成装置1の外観を示す概略斜視図である。
【0031】
図1に示す画像形成装置1は、原稿の画像を読み取る画像読取装置2と、画像読取装置2により読み取られた原稿の画像又は外部から受信した画像を記録用紙等の記録シートに記録形成する画像形成部3と、記録シートを搬送するシート搬送系4と、画像形成装置1全体の動作を制御するための制御部50(後述する図12及び図14参照)とを備えている。
【0032】
画像形成部3は、電子写真方式の画像形成プロセスによって画像を形成する各種ユニットや各種装置(図示せず)を備えている。また、シート搬送系4は、給紙トレイ4a、手差し給紙トレイ4b及び排出トレイ4cを備えている。
【0033】
画像読取装置2は、画像形成部3の上部において画像形成装置1の装置本体1aに組み込まれている。画像形成部3では、画像読取装置2で読み取られた原稿の画像全体は、画像データとして画像形成装置1の画像形成部3へと送られ、画像形成部3において画像データに基づき形成された画像が記録シートに記録される。
【0034】
そして、画像読取装置2は、入力操作部6がチルト機構10(後述する図2及び図3参照)を介して装置本体2aに対して揺動可能に設けられている。
【0035】
(チルト機構について)
図2は、図1に示す画像形成装置1の概観を示す概略図である。図2(a)は、画像形成装置1の左側面図を示しており、図2(b)は、画像形成装置1の正面図を示している。図3は、図1に示す画像形成装置1における画像読取装置2を示す側面図である。図3(a)は、入力操作部6が第1操作位置にある状態を示しており、図3(b)は、入力操作部6が収納位置にある状態を示しており、図3(c)は、入力操作部6が第1操作位置と収納位置との間の第2操作位置にある状態を示している。
【0036】
図2及び図3に示すように、画像読取装置2は、装置全体の各種設定情報や各機能を動作させるための情報の入力操作を受け付ける入力操作部(具体的には入力操作パネル)6と、入力操作部6を画像読取装置2の装置本体2aに対して幅方向(副走査方向)Yに沿った軸線回りに回動可能に取り付けるチルト機構10とをさらに備えている。なお、入力操作部6は、画像形成装置1の入力操作部としても作用する。
【0037】
入力操作部6は、一端部が装置本体2aの上部の奥行き方向(主走査方向)Xにおける手前側端部においてチルト機構10によって回転可能に支持されている。すなわち、画像読取装置2は、ユーザー等の操作者の入力操作部6への揺動操作によって入力操作部6の上下方向Zの傾きを変更できるようになっている。
【0038】
本実施の形態では、入力操作部6は、図示を省略した保持機構によって傾斜姿勢が段階的に保持されるようになっている。すなわち、画像読取装置2は、操作者の入力操作部6への揺動操作によって入力操作部6が段階的に回動されるようになっている。入力操作部6は、ここでは、装置本体2aの上面2bに対する所定の角度θ(図3参照)の範囲(具体的には13.5°〜83.5°)の間で装置本体2aの上面2bに対して、最も小さい角度(具体的には13.5°)にある第1操作位置(図3(a)参照)と、最も大きい角度(具体的には83.5°)にある収納位置(図3(b)参照)と、これらの間の角度(例えば中央付近の48.5°)にある第2操作位置(図3(c)参照)との複数段階に傾斜するようになっている。
【0039】
詳しくは、チルト機構10は、幅方向Yに沿った回転支軸11と、回転支軸11を回動自在に支持する軸受け部12を備えている。
【0040】
回転支軸11は、先端端が正面より視て一方側(図2(b)の右側)に向くように基端側が正面より視て他方側(図2(b)の左側)で入力操作部6に片持ち支持されている。軸受け部12は、画像読取装置2の装置本体2aの幅方向Xにおける両側に設けられた一対の軸受け部12,12とされている。そして、チルト機構10は、入力操作部6側に設けられた回転支軸11が装置本体2a側に設けられた軸受け部12,12に回動自在に挿通されるようになっている。
【0041】
また、回転支軸11の両端部の軸受け部12,12に対応する外周面には、内側へ後退可能な突出部(図示省略)が設けられており、軸受け部12,12の内周面には、該突出部を受け入れる複数の受け入れ部(図示省略)が設けられている。これら突出部及び受け入れ部で、入力操作部6の傾斜姿勢を段階的に保持する保持機構(図示省略)を構成している。
【0042】
入力操作部6は、制御部50の出力系に接続されて表示情報が表示される表示部61(図12及び図14も参照)を有している。
【0043】
図4は、画像読取装置2における入力操作部6の表示部61を説明するための説明図である。図4(a)は、入力操作部6における表示部61の部分を示す斜視図であり、図4(b)は、表示部61における表示画面61aを示す正面図である。
【0044】
図4に示すように、表示部61は、入力内容や装置全体の動作状況等の表示情報(図4(b)参照)を表示することが可能な表示画面61aを有する表示パネルとされている。表示パネルとしては、代表的には、液晶表示(LCD:Liquid Crystal Display)パネルを例示できる。ここでは、表示部61の表示画面61aには、操作者によるタッチ操作を受け付けるタッチパネルが設けられている。このタッチパネルは、入力操作装置62(図12及び図14参照)として作用する。そして、画像読取装置2は、入力操作部6の内部の格納位置に格納される一方、該格納位置からスライドして突出可能とされたスライド装置(ここではキー入力操作装置)20をさらに備えている。
【0045】
(スライド装置について)
図5は、図1に示す画像読取装置2におけるスライド装置20を示す概略断面図である。図5(a)は、スライド装置20が格納位置に格納されている状態を示しており、図5(b)は、スライド装置20が格納位置から突出して突出位置に位置している状態を示している。図6は、画像読取装置2におけるスライド装置20を説明するための説明図である。図6(a)は、画像読取装置2の入力操作部6からスライド装置20が突出位置に位置している状態を示す斜視図であり、図6(b)は、スライド装置20におけるキーボード21を示す正面図である。
【0046】
図5及び図6に示すように、スライド装置20は、操作者によりキー入力操作可能な入力操作装置とされており、キーボード21(図6(b)参照)を備えている。
【0047】
画像読取装置2は、スライド装置20を入力操作部6に対してスライド可能に支持するスライド機構22を備えている。スライド機構22は、スライド方向S及び厚み方向Wに直交する幅方向Tの両端部に設けられた一対のスライド機構22,22とされており、一対の固定スライド部22a,22aと、一対の中間スライド部22b,22bと、一対の支持スライド部22c,22cとをそれぞれ備えている。なお、図5及び図6において、一対のスライド機構22,22のうち、片側のみを示しており、もう片側については図示を省略している。
【0048】
固定スライド部22a,22aは、入力操作部6の内部における幅方向Tの両端部6a,6aに固定されて設けられている。中間スライド部22b,22bは、固定スライド部22a,22aに対してスライド方向Sに沿って一方側(奥側)S1と他方側(手前側)S2との間で摺動自在とされている。支持スライド部22c,22cは、スライド装置20における幅方向Tの両端部20a,20aを支持し、かつ、中間スライド部22bに対してスライド方向Sに沿って一方側(奥側)S1と他方側(手前側)S2との間で摺動自在とされている。すなわち、画像読取装置2は、操作者のスライド装置20へのスライド操作によって入力操作部6を突出位置からスライド方向Sの一方側(奥側)S1の格納位置へ格納したり、或いは、格納位置からスライド方向Sの他方側(手前側)S2の突出位置へ引き出したりできるようになっている。
【0049】
本実施の形態では、スライド装置20は、操作者によるスライド操作によって入力操作部6に対して段階的にスライド移動されるようになっている。
【0050】
図7は、スライド装置20が入力操作部6に対して段階的にスライド移動するスライド機構22を説明するための概略側面図である。なお、図7は、スライド装置20が入力操作部6の格納位置に格納されている状態を示している。
【0051】
図7に示すように、スライド機構22は、入力操作部6が傾斜しても、スライド装置20が自重により出て来ないようにスライド装置20を段階的に保持するストッパー機構23を備えている。
【0052】
ストッパー機構23は、スライド装置20の幅方向Tの両端部20a,20a(図6(a)参照)の側面20bにそれぞれ設けられた一対のストッパー機構23,23とされている。なお、図5及び図6ではストッパー機構23,23は図示を省略している。また、図7において、一対のストッパー機構23,23のうち、片側のみを示しており、もう片側については図示を省略している。また、図7において、固定スライド部22a、中間スライド部22b及び支持スライド部22cは図示を省略している。
【0053】
ストッパー機構23は、スライド方向Sに沿って凹凸状とされた凹凸面を有するスライド係合部231と、スライド係合部231を係止させるスライド係止部232とを備えている。
【0054】
スライド係合部231は、第1凹部231aと、第2凹部231bと、ラックギア部231cと、スライド方向Sに長くなっている係合支持部231dとを有している。
【0055】
係合支持部231dは、第1及び第2凹部231a,231b並びにラックギア部231cを支持している。第1凹部231aは、スライド方向Sにおいて係合支持部231dの一方側(奥側)S1の端部に設けられている。第2凹部231bは、スライド方向Sにおいて係合支持部231dの他方側(手前側)S2の端部に設けられている。ラックギア部231cは、スライド方向Sに沿って並設されている。
【0056】
スライド係止部232は、スライド係合部231の凹凸面と摺接する摺接部232aと、摺接部232aをスライド係合部231の凹凸面に向けて付勢する付勢部232bとを備えている。詳しくは、摺接部232a及び付勢部232bは、金属部材等の弾力性を有する弾性部材で形成されている。具体的には、摺接部232a及び付勢部232bは、一体的に形成されており、板バネで構成されている。すなわち、摺接部232aは、スライド係合部231側とは反対側が開いた湾曲状とされている。付勢部232bは、一端部が摺接部232aの一端部に連結された板状とされており、他端部が入力操作部6に固定されて支持されている。
【0057】
ここでは、スライド係止部232は、スライド方向Sの一方側(奥側)S1の端部と、他方側(手前側)S2の端部と、スライド方向Sの中間部との3箇所に設けられている。また、ラックギア部231cは、スライド方向Sの一方側(奥側)S1の端まで形成されており、第1及び第2凹部231a,231bは、幅方向Tにおいてラックギア部231cの配列位置とは外れた位置(具体的には幅方向Tにおいてラックギア部231cの配列位置よりも内側)に配設されている。
【0058】
かかる構成を備えることにより、画像読取装置2では、スライド装置20が操作者によりスライド操作されたときに、ストッパー機構23,23において、スライド方向Sの両端部に設けられたスライド係止部232の摺接部232aが第1及び第2凹部231a,231bにそれぞれ係止されることで、スライド装置20を格納位置で保持することができる。また、画像読取装置2では、スライド方向Sの手前側の端部に設けられたスライド係止部232の摺接部232aが第1凹部231aに係止されることで、スライド装置20を突出位置で保持することができる。さらに、画像読取装置2では、スライド方向Sの中間部に設けられたスライド係止部232の摺接部232aがラックギア部231cの何れかのギア間で係止されることで、スライド装置20を格納位置と突出位置との間で保持することができる。
【0059】
ここでは、第1凹部231a及び第2凹部231bは、大きな静止力を生み出すという観点から、スライド方向Sにおける長さがラックギア部231cのギアの間隔よりも広くなっており、高さがラックギア部231cのギアの高さよりも高くなっている。こうすることで、ストッパー機構23は、ラックギア部231cよりも第1凹部231a及び第2凹部231bでスライド装置20を確実にかつ安定的に維持することができるようになっている。
【0060】
このように、入力操作部6、チルト機構10及びスライド装置20を備えた画像読取装置2は、後述するように、チルト機構10をロックさせるロック構成とされていないと、次のような不都合がある。
【0061】
図8は、入力操作部6、チルト機構10及びスライド装置20を備えた画像読取装置2においてチルト機構10のロック構成がない場合での不都合を説明するための左側面図である。図8(a)は、スライド装置20が格納位置から突出している状態で入力操作部6が揺動している状態を示しており、図8(b)は、格納位置から突出したスライド装置20が装置本体2aに接触している状態を示している。
【0062】
図8に示すように、スライド装置20が格納位置から突出している状態で入力操作部6がチルト機構10によって揺動する場合には(図8(a)参照)、スライド装置20が装置本体2aの構成部材αに接触し(図8(b)参照)、スライド装置20の破損を招くといった事態を招く。
【0063】
そこで、本実施の形態の画像読取装置2は、スライド装置20が格納位置から突出したときにチルト機構10をロックさせる構成とされている。
【0064】
次に、スライド装置20が格納位置から突出したときにチルト機構10をロックさせる第1から第3実施形態の構成について以下に説明する。
【0065】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る画像読取装置2は、後述する図9から図11に示すように、スライド装置20が格納位置から突出しているか否かを検知する検知部30(検知手段の一例)と、チルト機構10をロックさせるロック装置40とをさらに備えている。
【0066】
図9は、入力操作部6及びスライド装置20に設けられた検知手段の一例である検知部30を上から視た概略正面図である。図10は、図9に示す検知部30が設けられた入力操作部6及びスライド装置20を示す概略断面図である。図9(a)及び図10(a)は、スライド装置20が格納位置に格納されている状態を示している。図9(b)及び図10(b)は、スライド装置20が格納位置から突出している状態を示している。また、図11は、入力操作部6に設けられたロック装置40を説明するための概略側面図である。
【0067】
検知部30は、被検知部31と、被検知部31を検知するセンサー部32とを備えている。入力操作部6及びスライド装置20のうち、一方(ここではスライド装置20)には被検知部31が固定されて設けられており、他方(ここでは入力操作部6)にはセンサー部32が固定されて設けられている。被検知部31は、スライド装置20のスライド方向Sにおける一方側(奥側)S1の端部に設けられた被検知片とされている。
【0068】
センサー部32は、ここでは、光を発光する発光部32aと、スライド装置20のスライド動作による変位により発光部32aからの光の有無を検知する受光部32bを備えた透過型のフォトセンサーとされている(図9参照)。
【0069】
詳しくは、センサー部32は、発光部32aから受光部32bに入射される入射光をスライド装置20のスライド方向Sの移動に伴う被検知部31の移動によって被検知部31で遮断又は通過させることで、該入射光の有無を受光部32bで検知するようになっている。センサー部32は、制御部50の入力系に接続されている(図12参照)。なお、センサー部32は、反射型のフォトセンサーであってもよい。
【0070】
本実施の形態では、図11に示すように、ロック装置40は、幅方向Tの両端部に設けられた一対のロック装置40,40とされている。なお、図11において、一対のロック装置40,40のうち、片側のみを示しており、もう片側については図示を省略している。また、図11において、スライド機構22等は図示を省略している。
【0071】
ロック装置40は、チルト機構10における可動部材(ここでは回転支軸11)をロックさせるための係合部41と、係合部41を係止させる係止部42と、係止部42を駆動する駆動部(具体的には電磁ソレノイド)43とを備えている。
【0072】
詳しくは、係合部41は、複数の凹部41a,…及び複数の凸部41b,…からなっている。係合部41は、画像読取装置2の装置本体2a側に設けられた軸受け部12の外周面の少なくとも入力操作部6の回動範囲に対応する部分(ここでは全周)に設けられている。係止部42は、先端部(具体的には爪)42aが係合部41の凹部41aに対応する形状とされており、幅方向Tに沿った回動軸42bを支点として回動自在とされている。係止部42の先端部42aは、凹部41a,…の何れか一つに係入されるようになっている。係止部42は、回動軸42bと先端部42aとの間の部分が駆動部43の往復移動可能な(本例では上下方向に移動可能な)可動部43a(具体的にはプランジャ)に幅方向Tに沿った回動軸42cを支点として回動自在に設けられている。回動軸42bは、入力操作部6に固定されて設けられている。付勢部材43bは、バネ等の弾性部材で構成されており、係止部42が係合部41に対して解除される方向(接離方向Bにおける離反方向B1)へ可動部43aを付勢するように、駆動部43と係止部42との間に介挿(具体的には可動部43aに挿通)されている。
【0073】
駆動部43は、入力操作部6に固定されて設けられている。駆動部43は、制御部50の出力系に接続されており(図12参照)、制御部50からの指示信号に基づき、係止部42の先端部42aを係合部41の凹部41aに係入させるロック状態と、係止部42の先端部42aを係合部41の凹部41aから離間させるロック解除状態とを切り替えできるようになっている。具体的には、駆動部43は、制御部50から非作動信号(オフ信号)の指示があると、付勢部材43bの付勢力によって係止部42が接離方向Bにおける離反側B1へ回動する。これにより、ロック装置40は、係止部42が係合部41を係止しないロック解除状態とされる。一方、駆動部43は、制御部50から作動信号(オン信号)の指示があると、付勢部材43bの付勢力に抗して係止部42が接離方向Bにおける当接方向B2へ回動する。これにより、ロック装置40は、係止部42が係合部41を係止するロック状態とされる。
【0074】
図12は、図1に示す画像読取装置2における制御系の一例を示すシステムブロック図である。
【0075】
画像読取装置2は、検知部30の検知結果に基づいてロック装置40を作動させる制御部50をさらに備えている。
【0076】
制御部50は、画像読取装置2全体の制御を行うものであり、CPU等の処理装置50aと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む記憶部50bとを備えている。ROMは、処理装置50aが実行する処理の手順である制御プログラムを格納することができる。RAMは、作業用のワークエリアを提供することができる。不揮発性メモリは、制御に必要なデータをバックアップして保持したり、各種データを保持したり書き換えたりすることができる。なお、制御部50は、画像形成装置1に設けられた画像形成動作全体を制御する主制御部(図示せず)にて指示されるようになっている。
【0077】
制御部50は、入力系に検知部30におけるセンサー部32と、入力操作部6における入力操作装置(ここではタッチパネル)62と、スライド装置20のキーボード21とがそれぞれ電気的に接続されている。また、制御部50は、出力系に入力操作部6における表示部61と、チルト機構10をロックさせるロック装置40の駆動部43とがそれぞれ電気的に接続されている。そして、制御部50は、検知部30の検知結果に基づいてロック装置40の駆動部43を作動させるようになっている。
【0078】
制御部50は、センサー部32における発光部32aから受光部32bへ光を照射し(図9及び図10参照)、スライド装置20が格納位置にあって被検知部31が発光部32aからの光を遮っている場合、すなわち受光部32bが発光部32aからの光を受光していない場合(図9(a)及び図10(a)の状態)には、受光部32bからスライド装置20が格納位置にある(受光していない)ことを示す出力信号(具体的にはオフ信号)が送信される。一方、制御部50は、スライド装置20が格納位置から突出して被検知部31が発光部32aからの光を遮っていない場合、すなわち受光部32bが発光部32aからの光を受光している場合(図9(b)及び図10(b)の状態)には、受光部32bからスライド装置20が格納位置から突出している(受光している)ことを示す出力信号(具体的にはオン信号)が送信される。制御部50は、受光部32bから受けたスライド装置20の格納状態を示す出力信号(具体的にはオフ信号又はオン信号)によって、スライド装置20が格納位置から突出しているか否かを検出するようになっている。
【0079】
そして、制御部50は、検知部30にてスライド装置20が格納位置にあることを検出したときには、ロック装置40をロック解除状態に切り替え、検知部30にてスライド装置20が格納位置から突出していることを検出したときには、ロック装置40をロック状態に切り替えるようになっている。
【0080】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る画像読取装置2は、第1実施形態において、検知部30に代えて検知部70(検知手段の他の例)が設けられている。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図13は、入力操作部6及びスライド装置20に設けられた検知手段の他の例である検知部70を上から視た概略正面図である。図13(a)は、スライド装置20が格納位置に格納されている状態を示している。図13(b)は、スライド装置20が格納位置から突出している状態を示している。
【0082】
図13に示すように、検知部70は、被検知部71と、被検知部71を検知するスイッチ部72とを備えている。入力操作部6及びスライド装置20のうち、一方(ここではスライド装置20)には被検知部71が設けられており、他方(ここでは入力操作部6)にはスイッチ部72が設けられている。被検知部71は、スライド装置20のスライド方向Sにおける奥側S1端部に設けられている。なお、被検知部71は、スライド装置20の構成部材(例えばスライド装置20の側板)と兼ねていてもよい。
【0083】
スイッチ部72は、スライド装置20のスライド動作による押圧力により押圧されている間だけオン状態又はオフ状態が維持される自動復帰型プッシュスイッチとされている。
【0084】
詳しくは、スイッチ部72は、可動部72aを有し、スライド装置20が格納位置から突出して押圧力が加わらない状態では、図示しないバネ等の付勢手段によって可動部72aが突出した状態となっている。すなわち、スイッチ部72は、スライド装置20が格納位置にあって可動部72aに押圧力が加わっていると、オン状態となる一方、スライド装置20が格納位置から突出して可動部72aへの押圧力が解除されると、オフ状態となる。なお、スイッチ部72はオン状態とオフ状態とが逆になるようになっていてもよい。
【0085】
図14は、図1に示す画像読取装置2における制御系の他の例を示すシステムブロック図である。なお、図14において、図12に示す構成と同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図14に示すシステムブロック図は、図12に示すシステムブロック図において、検知部30に代えて検知部70を設けたものである。すなわち、制御部50は、入力系に検知部70におけるスイッチ部72が電気的に接続されている。そして、制御部50は、検知部70の検知結果に基づいてロック装置40を作動させるようになっている。
【0087】
制御部50は、スライド装置20が格納位置にあって可動部72aに押圧力が加わっている場合(図13(a)状態)には、スイッチ部72からスライド装置20が格納位置にあることを示す出力信号(具体的にはオン信号)が送信される。一方、制御部50は、スライド装置20が格納位置から突出して可動部72aへの押圧力が解除されている場合(図13(b)状態)には、スイッチ部72からスライド装置20が格納位置から突出していることを示す出力信号(具体的にはオフ信号)が送信される。制御部50は、スイッチ部72から受けたスライド装置20の格納状態を示す出力信号(具体的にはオン信号又はオフ信号)によって、スライド装置20が格納位置から突出しているか否かを検出するようになっている。
【0088】
そして、制御部50は、検知部70にてスライド装置20が格納位置にあることを検出したときには、ロック装置40をロック解除状態に切り替え、検知部70にてスライド装置20が格納位置から突出していることを検出したときには、ロック装置40をロック状態に切り替えるようになっている。
【0089】
[制御部による動作制御の制御例について]
次に、第1実施形態又は第2実施形態に係る画像読取装置2の制御部50による動作制御の制御例について図15を参照しながら説明する。
【0090】
図15は、第1実施形態又は第2実施形態に係る画像読取装置2の制御部50による動作制御の一例を示すフローチャートを示している。
【0091】
図15に示す制御例では、先ず、検知部30,70にてスライド装置20の突出状態を検知する(ステップS1)。
【0092】
次に、検知部30,70の検知結果に基づきスライド装置20が突出しているか否かを判断する(ステップS2)。スライド装置20が突出していると判断した場合には(ステップS2:Yes)、ロック装置40をロック状態に切り替えてチルト機構10をロックする(ステップS3)。一方、スライド装置20が格納位置に位置していると判断した場合には(ステップS2:No)、ロック装置40をロック解除状態に切り替えてチルト機構10のロック状態を解除する(ステップS4)。
【0093】
次に、ステップS5にて処理終了の指示があるまで(ステップS5:No)、ステップS1〜S4の処理を繰り返し、処理終了の指示があると(ステップS5:Yes)、処理を終了する。
【0094】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る画像読取装置2は、第1又は第2実施形態において、検知部30,70及びロック装置40に代えてロック機構80が設けられている。
【0095】
図16及び図17は、入力操作部6及びスライド装置20に設けられたロック機構80を説明するための概略側面図である。図16は、スライド装置20が格納位置に格納されてロック機構80によりチルト機構10のロック状態が解除されている状態を示しており、図17は、スライド装置20が格納位置から突出してロック機構80によりチルト機構10がロックされている状態を示している。なお、図16及び図17に示す第3実施形態の構成において、第1又は第2実施形態と同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略する。また、図18は、回転機構84における第2回転部材842及びその周辺部分を上から視た概略断面図である。
【0096】
ロック機構80は、スライド装置20が格納位置から突出する突出動作に連動してチルト機構10をロックさせるようになっている。
【0097】
本実施の形態では、ロック機構80は、幅方向Tの両端部に設けられた一対のロック機構80,80とされている。なお、図16及び図17において、一対のロック機構80,80のうち、片側のみを示しており、もう片側については図示を省略している。また、図16及び図17において、スライド機構22等は図示を省略している。
【0098】
ロック機構80は、チルト機構10における可動部材(ここでは回転支軸11)をロックさせるための係合部81と、係合部81を係止する係止部82と、スライド装置20の突出動作に連動して係止部82を係合部81に係合させる連動部83とを備えている。
【0099】
詳しくは、係合部81は、複数の凹部81a,…及び複数の凸部81b,…からなっている。係合部81は、画像読取装置2の装置本体2a側に設けられた軸受け部12の外周面の少なくとも入力操作部6の回動範囲に対応する部分(ここでは全周)に設けられている。係止部82は、先端部(具体的には爪)82aが係合部81の凹部81aに対応する形状とされており、幅方向Tに沿った回動軸82bを支点として回動自在とされた軸受け部82cを有している(図18参照)。回転軸82bは、入力操作部6に固定されて設けられている。係止部82の先端部82aは、凹部81a,…の何れか一つに係入されるようになっている。
【0100】
連動部83は、スライド装置20が格納位置から突出するときには係止部82を係合部81に係合させる一方、スライド装置20が格納位置に格納されるときには係止部82の係合部81への係合を解除させる構成とされている。
【0101】
詳しくは、連動部83は、スライド装置20のスライド動作により回転し、かつ、該スライド動作による回転に伴って係止部82を回動させる回転機構84を備えている。
【0102】
回転機構84は、スライド装置20のスライド方向Sにおける一方向側(奥側)S1及び他方向側(手前側)S2のスライド動作に伴い一方向A1及び他方向A2の回転方向Aに回転する第1回転部材841と、一方向A1及び他方向A2の回転方向A(図16参照)に回転によって係止部82を係合部81に対して離反(接離方向B(図16参照)における離反側B1へ回動)及び当接(接離方向Bにおける当接側B2へ回動)させる第2回転部材842と、第1回転部材841から第2回転部材842へ一方向A1及び他方向A2の回転駆動を伝達する駆動伝達機構843とを備えている。そして、本実施の形態では、スライド機構22とロック機構80とで構成部材の一部を兼ねる構成とされている。
【0103】
具体的には、第1回転部材841は、入力操作部6のスライド方向Sの他方側(手前側S2)において回転軸841aに回転自在に支持されている。回転軸841aは、入力操作部6に固定されて設けられている。第1回転部材841は、外周面にストッパー機構23におけるスライド係合部231のラックギア部231cと噛合するピニオンギア841bが設けられている。これにより、第1回転部材841は、スライド装置20のスライド動作に伴い、一方向A1及び他方向A2の回転方向Aに回転するようになっている。
【0104】
ロック機構80の係止部82は、先端部82aが係合部81側に向くように軸受け部82cを介して回動軸82bに回転自在に設けられている。
【0105】
第2回転部材842は、入力操作部6のスライド方向Sの一方側(奥側S1)において滑りクラッチ842aを介して軸受け部82cに設けられている(図18参照)。ここで、滑りクラッチ842aは、従動側である軸受け部82c(係止部82)側が低負荷時には、駆動側である第2回転部材842の回転に伴い軸受け部82cを回転させ(係止部82を回動させ)、従動側である軸受け部82c(係止部82)側に所定以上の負荷がかかると、軸受け部82c(係止部82)が停止したまま駆動側である第2回転部材842の回転を許容する部材である。
【0106】
本実施の形態では、回転機構84は、規制部材844をさらに備えている。規制部材844は、係止部82の係合部81から離間する方向(接離方向Bの離反側B1)への移動を規制するものとされている。規制部材844は、入力操作部6に固定されて設けられている。なお、規制部材844は、入力操作部6の構成部材(例えば入力操作部6のフレーム)と兼ねていてもよい。
【0107】
駆動伝達機構843は、第1回転部材841に連結される第1伝達部材843aと、第2回転部材842に連結される第2伝達部材843bと、第1伝達部材843aから第2伝達部材843bへの回転駆動を伝達する第3伝達部材843cとを備えている。
【0108】
具体的には、第1伝達部材843aは、回転プーリー又は回転ギア(ここは回転プーリー)とされており、第1回転部材841に固定されて設けられている。ここでは、第1伝達部材843aと第1回転部材841とは一体的に形成されている。第2伝達部材843bは、回転プーリー又は回転ギア(ここは回転プーリー)とされており、第2回転部材842に固定されて設けられている(図18参照)。ここでは、第2伝達部材843bと第2回転部材842とは一体的に形成されている。第3伝達部材843cは、無端ベルト又は回転ギア(ここでは無端ベルト)とされており、第1伝達部材843a及び第2伝達部材843bに巻き掛けられている。なお、駆動伝達機構843は、ここでは、プーリー及び無端ベルトで構成されているが、複数のギア列で構成されていてもよい。
【0109】
かかる構成を備えることにより、ロック機構80では、スライド装置20が操作者によりスライド方向Sの一方側(奥側)S1へスライド操作されて格納位置に格納されるときには(図16参照)、スライド係合部231のラックギア部231cのスライド方向Sにおける一方側S1への移動により係止部82の先端部82aが係合部81の凹部81aとは離間する方向(一方向A1)に第1回転部材841のピニオンギア841bが回転し、さらに駆動伝達機構843を介して一方向A1に第2回転部材842が回転して係止部82が離反方向B1へ回動する。これにより、ロック機構80は、係止部82が係合部81を係止しないロック解除状態とされる。このとき、操作者によるスライド装置20のスライド操作が終了する前に、係止部82が規制部材844に当接して停止することがある。しかし、このように係止部82が停止しても、滑りクラッチ842aにより第2回転部材842の一方向A1への回転を許容させることができる。これにより、操作者によるスライド装置20のスライド方向Sの一方側(奥側)S1へのスライド操作を継続させることが可能となる。
【0110】
一方、スライド装置20が操作者によりスライド方向Sの他方側(手前側)S2へスライド方向Sにスライド操作されて格納位置から突出するときには(図17参照)、スライド係合部231のラックギア部231cのスライド方向Sにおける他方側S2への移動により係止部82の先端部82aが係合部81の凹部81aに向かう方向(他方向A2)に第1回転部材841のピニオンギア841bが回転し、さらに駆動伝達機構843を介して他方向A2に第2回転部材842が回転して係止部82が当接方向B2へ回動する。これにより、ロック機構80は、係止部82が係合部81を係止するロック状態とされる。このとき、操作者によるスライド装置20のスライド操作が終了する前に、係止部82が係合部81に当接して停止することがある。しかし、このように係止部82が停止しても、滑りクラッチ842aにより第2回転部材842の他方向A2への回転を許容させることができる。これにより、操作者によるスライド装置20のスライド方向Sの他方側(手前側)S2へのスライド操作を継続させることが可能となる。
【0111】
(第1から第3実施形態について)
以上説明した第1から第3実施形態によれば、スライド装置20が格納位置から突出したときにチルト機構10をロックさせる構成とされているので、スライド装置20が格納位置から突出している状態では入力操作部6がチルト機構10によって揺動されずに固定された状態となるため、スライド装置20が装置本体6aの構成部材αに接触することがない。これにより、スライド装置20の破損を防止することが可能となる。
【0112】
また、第1及び第2実施形態では、スライド装置20が格納位置から突出しているか否かを検知する検知部30,70と、チルト機構10をロックさせるロック装置40とを備えていることで、検知部30,70によってスライド装置20が格納位置から突出しているか否かを容易に検知できると共にロック装置40によってチルト機構10を確実にロックすることが可能となる。
【0113】
また、第1及び第2実施形態では、チルト機構10における回転支軸11をロックさせるための係合部41と、係合部41を係止させる係止部42と、係止部42を駆動する駆動部43とを備えるといった簡単な構成でロック装置40を容易に実現することが可能となる。
【0114】
また、第3実施形態では、ロック機構80によってスライド装置20が格納位置から突出する突出動作に連動してチルト機構10をロックさせるので、第1及び第2実施形態に設けたような、スライド装置20が格納位置から突出しているか否かを検知する検知部30,70を省くことができ、それだけコストを低減させることが可能となる。
【0115】
また、第3実施形態では、チルト機構10における回転支軸11をロックさせるための係合部81と、係合部81を係止する係止部82と、スライド装置20の突出動作に連動して係止部82を係合部81に係合させる連動部83とを備えるといった簡単な構成でロック機構80を容易に実現することが可能となる。
【0116】
また、第3実施形態では、回転機構84により、スライド装置20のスライド動作を係止部82の係合動作(回動動作)に簡単に変換することができ、これにより、スライド装置20の突出動作に連動して係止部82を係合部81に係合させる連動部83を容易に構成することが可能となる。
【0117】
また、第3実施形態では、スライド機構22とロック機構80とで構成部材の一部を兼ねるので、スライド機構22及びロック機構80の双方の機能を維持しつつ、部品点数を削減でき、これにより、装置構成の簡略化、装置のコンパクト化、装置コストの低減を実現することができる。
【0118】
なお、第1から第3実施形態では、スライド装置20が突出した時点でチルト機構10をロックするようにしたが、ある程度突出したスライド装置20が揺動により障害物に当たり得る位置でチルト機構10をロックするようにしてもよい。
【0119】
また、第1から第3実施形態では、入力装置を画像読取装置として画像形成装置に適用したが、何れの電子機器に適用してもよい。
【0120】
また、第1から第3実施形態では、スライド装置20を、キーボードを備えたキー入力操作装置としたが、ICカード等の記録媒体を読み取る読み取り装置(具体的にはカードリーダー)としてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 画像形成装置
2 画像読取装置(入力装置の一例)
2a 装置本体
6 入力操作部
10 チルト機構
20 スライド装置
22 スライド機構
23 ストッパー機構
30 検知部(検知手段の一例)
31 被検知部
32 センサー部(フォトセンサー)
32a 発光部
32b 受光部
40 ロック装置
41 係合部
42 係止部
43 駆動部
50 制御部
70 検知部(検知手段の他の例)
71 被検知部
72 スイッチ部(自動復帰型プッシュスイッチ)
80 ロック機構
81 係合部
82 係止部
83 連動部
84 回転機構
841 第1回転部材
842 第2回転部材
842a 滑りクラッチ
843 駆動伝達機構
843a 第1伝達部材
843b 第2伝達部材
843c 第3伝達部材
844 規制部材
A 回転方向
B 接離方向
S スライド方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力操作を受け付ける入力操作部がチルト機構を介して装置本体に対して揺動可能に設けられた入力装置であって、
前記入力操作部の格納位置に格納される一方、該格納位置からスライドして突出可能とされたスライド装置を備え、
前記スライド装置が前記格納位置から突出しているときには前記チルト機構をロックさせる構成とされていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記スライド装置が前記格納位置から突出しているか否かを検知する検知手段と、前記チルト機構をロックさせるロック装置とを備え、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記ロック装置を作動させることを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力装置であって、
前記ロック装置は、前記チルト機構における可動部材をロックさせるための係合部と、前記係合部を係止させる係止部と、前記係止部を駆動する駆動部とを備えていることを特徴とする入力装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の入力装置であって、
前記検知手段は、光を発光する発光部と、前記スライド装置のスライド動作による変位により前記発光部からの光の有無を検知する受光部とを備えたフォトセンサーを含むことを特徴とする入力装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の入力装置であって、
前記検知手段は、前記スライド装置のスライド動作による押圧力により押圧されている間だけオン状態又はオフ状態が維持される自動復帰型プッシュスイッチを含むことを特徴とする入力装置。
【請求項6】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記スライド装置が前記格納位置から突出する突出動作に連動して前記チルト機構をロックさせるロック機構を備えていることを特徴とする入力装置。
【請求項7】
請求項6に記載の入力装置であって、
前記ロック機構は、前記チルト機構における可動部材をロックさせるための係合部と、前記係合部を係止する係止部と、前記スライド装置の前記突出動作に連動して前記係止部を前記係合部に係合させる連動部とを備えていることを特徴とする入力装置。
【請求項8】
請求項7に記載の入力装置であって、
前記連動部は、前記スライド装置のスライド動作により回転し、かつ、該スライド動作による回転に伴って前記係止部を回動させる回転機構を備えていることを特徴とする入力装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8までの何れか一つに記載の入力装置であって、
前記スライド装置を前記入力操作部に対してスライド可能に支持するスライド機構を備え、
前記スライド機構と前記ロック機構とで構成部材の一部を兼ねていることを特徴とする入力装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までの何れか一つに記載の入力装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−98385(P2012−98385A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244243(P2010−244243)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】