説明

入浴監視システム

【課題】本発明は入浴者の体調に関する生体情報を正確に取得することを課題とする。
【解決手段】入浴監視システム10は、浴室内における入浴者20の体調あるいは動作状態を監視するシステムであり、浴槽30に設置されるセンサユニット40と、浴室外に設けられセンサユニット40によって検出された振動検出信号を受信して異常の有無を判定し、異常の場合に通報する制御ユニット50とを備える。センサユニット40は、後述するように制御ユニット50と通信を行なう携帯端末42と、携帯端末42にケーブル44を介して接続された振動検出手段46とを有する。振動検出手段46は、浴槽30内の湯水に浮かべられ、入浴者20の生体情報による振動が湯水に伝搬することを利用して非接触で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入浴監視システムに係り、特に浴室における入浴者の体調の変化に伴う異常の有無を監視する入浴監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内における不慮の事故として、入浴中の転倒や心筋梗塞、脳梗塞などの体調不良による浴室における事故が数多く報告されている。また、浴室内は密室であることから、事故の発見が遅れやすく、ひとたび事故が起これば深刻な被害を招きやすいという問題が知られている。このような入浴中の事故を未然に防ぐ、または、事故発生の発見を促すために、浴室内における入浴者の状態を監視し、非常事態とみられる場合には警報を発する監視装置や監視システムなどが多数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の入浴監視システムは、加速度センサが収納された筺体を浴槽内に浮遊させて、入浴者の動作によって発生する浴槽内の湯面の波立ちを計測し、波が静かな状態が所定の期間継続したら、入浴者が活動していないとみなして警報を発するというものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の健康状態監視装置は、浴槽内に配設されたセンサに入浴者の体の一部が接触することで、センサによって入浴者の心拍等の生体データが検知され、この生体データに基づいて入浴者の健康状態を判断し、特に危険がある場合には警報を発して入浴者に浴槽から出るよう促すというものである。
【特許文献1】特開2007−133459号公報
【特許文献2】特開2003−70756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記引用文献1に記載された入浴監視システムによれば、例えば、もともと静かに浴槽に入っていることを好む入浴者の場合は頻繁に不必要な警報が発せられることになる。また、例えば入浴者が何らかの理由で体調不良を生じ苦しくなってもがいている場合などであっても、湯面の波立ちが計測されれば、警報が発せられない恐れがある。このように、動作による湯面の波立ちの有無だけでは、入浴者の状態を正確に判断することは困難である。
【0006】
また、上記引用文献2に記載された監視装置によれば、入浴者の生体データに基づいて精度良く入浴者の健康状態の確認ができる。しかしながら、入浴者の生体データを検知するためには、入浴者の体の一部がセンサに接触している必要がある。したがって、入浴者が浴槽内で自由に移動することができないなど、入浴者の行動が制限されるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した入浴監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0009】
(1)本発明は、浴槽内の湯水に接触するように配置され湯水の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段によって検出された振動信号から入浴者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、該生体情報取得手段により取得された前記生体情報に基づいて前記入浴者の状態が正常か異常かを判断する判断手段と、該判断手段が異常事態と判断した場合に警報を発する警報手段と、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
(2)本発明は、請求項1に記載の入浴監視システムであって、前記振動検出手段は、防水構造とされた移動可能な筺体内に収納されていることにより、上記課題を解決するものである。
【0011】
(3)本発明は、請求項2に記載の入浴監視システムであって、前記筐体は、浴槽内の湯水の液面に浮遊するように浮力を発生させる浮力発生手段を有し、前記振動検出手段は、前記筺体が前記浴槽内の湯水の液面に浮遊した状態で湯水の振動を計測することにより、上記課題を解決するものである。
【0012】
(4)本発明は、請求項2に記載の入浴監視システムであって、前記筐体は、浴槽内の湯水の液中に浮遊するように浮力を発生させる浮力発生手段を有し、前記振動検出手段は、前記筺体が前記浴槽内の湯水の液中に潜った状態で湯水の振動を計測することにより、上記課題を解決するものである。
【0013】
(5)本発明は、請求項2に記載の入浴監視システムであって、前記振動検出手段は、湯水が貯留される浴槽の壁面に配設され、湯水の振動を計測することにより、上記課題を解決するものである。
【0014】
(6)本発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の入浴監視システムであって、前記振動検出手段は、前記浴槽または前記浴槽内の湯水を伝搬する振動による加速度を検出する加速度センサであることにより、上記課題を解決するものである。
【0015】
(7)本発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の入浴監視システムであって、前記振動検出手段は、前記浴槽または前記浴槽内の湯水を伝搬する音波による振動を検出するマイクロホンであることにより、上記課題を解決するものである。
【0016】
(8)本発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の入浴監視システムであって、前記筺体内には、該筺体の外部と無線で通信を行う無線通信手段が収納されていることにより、上記課題を解決するものである。
【0017】
(9)本発明は、請求項8に記載の入浴監視システムであって、前記警報手段は、該判断手段が異常事態と判断した場合に前記無線通信手段を介して警報信号を送信する警報信号生成手段と、該警報信号生成手段により生成された警報信号によって警報を発する報知手段と、を有することにより、上記課題を解決するものである。
【0018】
(10)本発明は、請求項9に記載の入浴監視システムであって、前記報知手段は、浴室の外に設けられ、少なくとも警報音を発するスピーカまたは光を点滅する警告灯の何れか一方を有することにより、上記課題を解決するものである。
【0019】
(11)本発明は、請求項2乃至5の何れかに記載の入浴監視システムであって、前記筺体は、内部に充電式電池が収納され、前記充電式電池は、前記筺体の外部から非接触で充電されることにより、上記課題を解決するものである。
【0020】
(12)本発明によれば、請求項11に記載の入浴監視システムであって、前記筺体は、前記入浴者が入浴しないときには、充電装置を有する載置台に載置され、前記充電式電池は、前記充電装置によって充電されることにより、上記課題を解決するものである。
【0021】
(13)本発明によれば、請求項1に記載の入浴監視システムであって、前記判断手段は、前記振動検出手段により検出された振動の加速度が予め設定された閾値以上である場合、異常事態と判断することにより、上記課題を解決するものである。
【0022】
(14)本発明によれば、請求項1乃至6の何れかに記載の入浴監視システムであって、前記生体信号取得手段は、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から所定の周波数成分を取り出すフィルタであり、前記フィルタは、前記入浴者の心拍、呼吸、体の動きに対応する信号を分離生成することにより、上記課題を解決するものである。
【0023】
(15)本発明は、請求項14に記載の入浴監視システムであって、前記判断手段は、前記フィルタにより生成された前記入浴者の心拍、呼吸、体の動きに対応する信号が予め設定された閾値以上である場合、異常事態と判断することにより、上記課題を解決するものである。
【0024】
(16)本発明は、請求項14または15に記載の入浴監視システムであって、前記フィルタは、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の心拍に対応する信号を生成する第1帯域フィルタと、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の呼吸に対応する信号を生成する第2帯域フィルタと、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の体の動きの信号を生成する第3帯域フィルタと、を有することにより、上記課題を解決するものである。
【0025】
(17)本発明は、請求項9に記載の入浴監視システムであって、前記警報手段は、前記浴室の外部に設置されたリセットスイッチが操作されることにより警報の発生を解除することにより、上記課題を解決するものである。
【0026】
(18)本発明は、請求項9に記載の入浴監視システムであって、前記警報手段は、公衆回線を介して各家庭からの情報を管理する管理センタへ前記浴室内における異常発生情報を送信することにより、上記課題を解決するものである。
【0027】
(19)本発明は、請求項9に記載の入浴監視システムであって、前記筐体は、前記警報手段より発生される警報に対して応答信号を出力する応答スイッチを有し、前記応答スイッチが操作されることにより前記無線通信手段を介して応答信号を送信することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る入浴監視システムによれば、振動検出手段により浴槽内の湯水の振動を計測し、この振動信号から浴槽内の湯を介して伝搬される入浴者の生体情報を取得して、この生体情報に基づいて入浴者の状態を判断して異常事態か否かを判断して警報を発するので、入浴者の浴槽内での行動を制限することなく入浴者の生体情報を取得し、この生体情報に基づいて入浴者の状態を精度よく判断することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は本発明の実施例1による入浴監視システムを示すシステム構成図である。図1に示されるように、入浴監視システム10は、浴室内における入浴者20の体調あるいは動作状態を監視するシステムであり、浴槽30に設置されるセンサユニット40と、浴室外に設けられセンサユニット40によって検出された振動検出信号を受信して異常の有無を判定し、異常の場合に通報する制御ユニット50とを備える。
【0031】
センサユニット40は、後述するように制御ユニット50と通信を行なう携帯端末42と、携帯端末42にケーブル44を介して接続された振動検出手段46とを有する。
【0032】
振動検出手段46は、浴槽内の湯水の振動を検出するもので、1軸または多軸方向の湯水の振動の大きさ(振幅)を測定するものである。浴槽内の湯水の振動は、浴槽に入っている入浴者の体の表面から発せられる生体情報を含んだ振動、すなわち、入浴者の心臓の拍動による心拍、脈拍などに関する振動、肺の収縮、膨張による呼吸に関する振動、入浴者の動作に関する振動、および、浴槽の内外からの雑音などを含んでいる。振動検出手段46は、このような湯水の振動をたとえば電圧などの信号(以下、「振動検出信号」と称する。)に変換して出力する。
【0033】
振動検出手段46としては、浴槽30内の湯水に接触するように配置され、湯水の振動を検出する例えば、加速度センサまたは振動センサなどが適用される。尚、加速度センサとしては、例えば、圧電素子を利用した圧電型、コンデンサを利用した静電容量型、ピエゾ抵抗子を利用したピエゾ抵抗型などの加速度センサやジャイロセンサまたは、これらを組み合わせたものなどが適用できる。また、振動センサとしては、電磁誘導を利用したマイクロホンや、コンデンサを利用したもの、圧電効果を利用したものなどが適用できる。
【0034】
本実施例では、センサユニット40の振動検出手段46は、浴槽30内の湯水に浮かべられ、入浴者20の生体情報による振動が湯水に伝搬することを利用して非接触で検出する。
【0035】
また、センサユニット40の携帯端末42は、振動検出手段46により検出された振動信号を制御ユニット50に送信する無線通信装置43(通信手段)を有する。この無線通信装置43は、振動検出手段46から入力される振動信号を変調し、無線で送信する機能を有する電子回路から構成されている。尚、無線通信装置43は、振動信号を増幅するアンプや、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ、信号を符号化するエンコーダなどを含んでいても良い。
【0036】
制御ユニット50は、浴室外、たとえば浴室に隣接された脱衣所などの浴室入り口付近に配置されて、振動検出手段46が検出した振動信号から入浴者の生体情報を取得するとともに、この生体情報に基づいて入浴者の状態を判断し、異常事態と判断したら警報信号を発信する。
【0037】
また、制御ユニット50は、振動検出手段46によって検出された振動信号から入浴者20の生体情報を取得する生体情報取得手段と、生体情報取得手段により取得された生体情報に基づいて入浴者20の状態が正常か異常かを判断する判断手段と、判断手段が異常事態と判断した場合に警報を発する警報手段とを備える。尚、警報手段は、制御ユニット50から離れた場所(例えば、家族が集まる居間やキッチンなど)に設置しても良い。
【0038】
この警報手段は、入浴者20が異常事態と判断した場合に警報信号を生成する警報信号生成手段と、この警報信号生成手段により生成された警報信号によって警報を発する報知手段とを有する。
【0039】
さらに、制御ユニット50にもセンサユニット40との間で無線信号の送受信を行なう無線通信装置が搭載されている。また、制御ユニット50は、入浴者20が一人住まいの場合に設定される外部送信モードが設定された状態で入浴者20に異常があったものと判断した場合、公衆回線(電話回線)60を介して警報信号を管理センサの管理コンピュータ70に送信する手段も有する。
【0040】
また、制御ユニット50には、入浴者20が入浴しないとき、携帯端末42に内蔵された充電式バッテリを充電する充電装置80が接続されている。上記充電装置80は浴室入り口付近に設けられているので、入浴者20は充電完了したセンサユニット40を持って浴室に入ることになる。尚、携帯端末42の充電式バッテリ90(図2参照)は、入浴に要する時間を例えば30分とした場合、4〜5回の入浴を行なっても電池切れになることはないが、入浴中に電池切れになることを防ぐには、入浴が終了する度に充電装置80で充電することが望ましい。
【0041】
また、充電式バッテリ90は、振動検出手段46及び無線通信装置43などの各電子機器に電力を供給する。この充電式バッテリ90には、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池を適用することができる。さらに、電磁誘導などにより非接触で充電可能に構成されており、携帯端末42の筺体内に収納された状態で充電される。したがって、携帯端末42の筺体内を防水された状態に保つことができる。
【0042】
図2はセンサユニット40の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、センサユニット40は、サブ制御回路41、携帯端末42に設けられた無線通信装置43、応答スイッチ45、振動検出手段46、受光センサ47、警告ブザー48、警告灯49、充電式バッテリ90を有する。
【0043】
無線通信装置43は、制御ユニット50と微弱電波または近距離無線による無線通信を行なう通信手段である。従って、携帯端末42は、制御ユニット50から離れた浴槽30のどの位置でも設置することが可能であり、入浴者20の座った位置や姿勢に合わせて任意の位置に取り付けられる。また、振動検出手段46は、伸縮可能なケーブル44を介して携帯端末42と接続されているものの浴槽30内の湯水の液面を浮遊することができる。
【0044】
本実施例においては、振動検出手段46は、防水構造とされた球形状の防水ケース(筐体)46cの内部に湯水を伝搬する振動を検出する加速度センサ46aと、音を検出するマイクロホン46bとが収納された構成として以下説明する。また、密閉された筐体を形成する防水ケース46cの内部には、空気が充填されているので、湯水に対して浮力を発生させる浮力発生手段としても機能する。
【0045】
加速度センサ46aは、湯水の波の大きさや入浴者20の心臓の動き、肺の動き、あるいは入浴者20が手足を動かした際に伝搬する振動の加速度を検出する振動検出手段である。また、マイクロホン46bは、入浴者20の心臓の動き、肺の動き、あるいは入浴者20が手足を動かした際に発生した音(湯水を伝搬する振動音)を検出する振動検出手段である。加速度センサ46aは、比較的振幅の大きい振動を検出するのに適しており、マイクロホン46bは、比較的振幅の小さい振動を検出するのに適している。
【0046】
また、携帯端末42は、上面に受光センサ47が設けられ、浴室の照明が点灯されたことが検出された場合に作動状態に切り替わる。また、携帯端末42は、正面に応答スイッチ45が配置されており、応答スイッチ45が押圧操作された場合も作動状態に切り替わるように構成されている。
【0047】
図3は制御ユニット50の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、制御ユニット50は、メイン制御回路51、無線通信装置52、液晶モニタ53、電源スイッチ54、リセットスイッチ55、モード切替スイッチ56、異常警告灯57、スピーカ58、公衆回線60に接続された通信モデム62、メモリ(記憶手段)64、電源回路66を有する。また、制御ユニット50には、携帯端末42の充電式バッテリ90を充電するための充電装置80が接続されている。
【0048】
制御ユニット50は、装置前面に信号波形(例えば、脈拍の波形)を表示したり、作動状態(例えば、入浴者無し、センシング中、入浴者異常有り、入浴者正常など)を報知する表示手段としての液晶モニタ53が設けられている。また、制御ユニット50の装置前面には、電源スイッチ54、警報を解除するためのリセットスイッチ55、家族がいる場合のモード1と家族がいない場合のモード2とを切替えるためのモード切替スイッチ56、予備警告、異常発生時の警報音あるいは操作方法などを音声ガイダンスするためのスピーカ58が設けられている。
【0049】
さらに、制御ユニット50の上部には、無線通信装置52と、異常発生を判断された場合に点滅して報知する異常警告灯57とが設けられている。
【0050】
図4はメイン制御回路51の構成を模式的に示すブロック図である。図4に示されるように、メイン制御回路51は、増幅回路100と、生体情報取得手段110と、判断手段120と、警報信号生成手段130と、報知手段140とを有する。
【0051】
増幅回路100は、無線通信装置52により受信された加速度センサ46a及びマイクロホン46bからの振動検出信号(湯水を伝搬する加速度信号、音信号)を増幅して生体情報取得手段110に出力する。
【0052】
生体情報取得手段110は、増幅回路100で増幅された振動検出信号から心拍、呼吸、入浴者の動作に対応した所定の周波数の生体情報信号を取得するバンドパスフィルタであり、心拍信号を取得する第1帯域フィルタ回路112と、呼吸信号を取得する第2帯域フィルタ回路114と、入浴者20の動作に対応した動作信号を取得する第3帯域フィルタ回路116とを有する。
【0053】
第1帯域フィルタ回路112は、例えば、振動検出信号から心拍信号を含む周波数帯域(例えば、0.05Hz〜2Hz)を通過させて分離生成するためのフィルタである。第2帯域フィルタ回路114は、例えば、振動検出信号から呼吸信号を含む周波数帯域(例えば、0.01Hz〜0.5Hz)を通過させて分離生成するためのフィルタである。第3帯域フィルタ回路116は、例えば、振動検出信号から入浴者20の動作信号を含む周波数帯域(例えば、0.1Hz〜1kHz)を通過させて分離生成するためのフィルタである。
【0054】
判断手段120は、生体情報取得手段110の各帯域フィルタ回路112,114,116により取得された生体情報に基づいて入浴者20の状態が正常か異常かを判断する制御プログラムであり、心拍信号の異常の有無を判定する心拍異常判定手段122と、呼吸信号の異常の有無を判定する呼吸異常判定手段124と、入浴者20の動作の異常の有無を判定する入浴者動作異常判定手段126とを有する。
【0055】
警報信号生成手段130は、判断手段120が異常事態と判断した場合に警報を発するための警報信号を生成する警報手段である。
【0056】
また、報知手段140は、警報信号生成手段130により生成された警報信号によって警報を発する出力手段であって、前述した液晶モニタ53、異常警告灯57、スピーカ58を含むものである。
【0057】
図5は入浴者が浴槽で動作した場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。図5において、グラフ5Aは入浴者20が浴槽30で正常な場合に第1帯域フィルタ回路112によって生成された心拍信号を示し、グラフ5Bは入浴者20が浴槽30で正常な場合に第2帯域フィルタ回路114によって生成された呼吸信号を示し、グラフ5Cは入浴者20が浴槽30で動作した場合に第3帯域フィルタ回路116によって生成された入浴者動作信号を示す。
【0058】
従って、上記グラフ5A〜5Cに示す波形が取得された場合には、入浴者20が浴槽30に入っていることを判断することが可能になる。また、グラフ5Aの周期T1に基づいて入浴者20の心拍数を演算することが可能であり、且つグラフ5Bの周期T2に基づいて入浴者20の呼吸状態を認識することが可能である。そして、入浴者20の心拍数及び呼吸状態から入浴者20の体調(健康状態)が正常であることを判断することが可能になる。また、グラフ5Cにより取得された動作信号は、入浴者20が浴槽30内にいて動作した場合に閾値以上の振幅となるので、振幅の大きさに基づいて入浴者20が浴槽30内に入っているか否かを判断することが可能になる。
【0059】
図6は入浴者が浴槽で動かない場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。図5において、グラフ6Aは入浴者20が浴槽30で正常な場合に第1帯域フィルタ回路112によって生成された心拍信号を示し、グラフ6Bは入浴者20が浴槽30で正常な場合に第2帯域フィルタ回路114によって生成された呼吸信号を示し、グラフ6Cは入浴者20が浴槽30で動かない場合に第3帯域フィルタ回路116によって生成された入浴者動作信号を示す。
【0060】
この場合、グラフ6Cの波形が閾値以下であるので、入浴者20が浴槽30内で動かない状態であることが判断されると共に、グラフ6A,6Bの波形により入浴者20の心拍及び呼吸の周期T1、T2が正常であることが判断される。従って、グラフ6A〜6Cに示す波形が取得された場合は、入浴者20が浴槽30内でじっと動かない状態であるものの、健康状態は正常であることが分かる。
【0061】
図7は入浴者が浴槽から出た場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。図5において、グラフ7Aは入浴者20が浴槽30から出た場合に第1帯域フィルタ回路112によって生成された心拍信号を示し、グラフ7Bは入浴者20が浴槽30から出た場合に第2帯域フィルタ回路114によって生成された呼吸信号を示し、グラフ7Cは入浴者20が浴槽30から出て動作した場合に第3帯域フィルタ回路116によって生成された入浴者動作信号を示す。
【0062】
この場合、グラフ7A,7Bの波形が殆ど変化せず、心拍及び呼吸信号が検出されないので、入浴者20が浴槽30の外に出た状態であることが判断される。また、グラフ7Cの波形により入浴者20が浴室で動作していることが分かり、例えば、波形7C1のように閾値レベル1〜レベル2であれば、入浴者20が洗髪、あるいは体の洗浄などの動作を行なっていることを判断することができる。
【0063】
また、波形7C2のように閾値レベル2以上であれば、振動検出信号の振幅が異常に大きいので、入浴者20が脚を滑らせて浴室で転倒、あるいは入浴者20がバランスを崩して浴槽30に衝突したといったような異常な動作を行なったものと判断することができる。従って、入浴監視システム10によれば、入浴者20の浴槽30内での行動を制限することなく入浴者20の生体情報を取得し、この生体情報に基づいて入浴者20の状態を精度よく判断することが可能になる。
【0064】
ここで、センサユニット40のサブ制御回路41が実行する制御処理について図8のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
サブ制御回路41は、S11で充電装置80から外された状態で浴室の照明により受光センサ47がオン、または応答スイッチ45が入浴者20によってオンに操作されると、入浴者20が浴室内にいることを確認してS12に進み、加速度センサ46aが加速度信号(振動検出信号)を出力しているか否かをチェックする。S12において、加速度センサ46aから加速度信号(振動検出信号)が出力されると(YESの場合)、S13に進み、加速度センサ46aから出力された加速度信号(振動検出信号)を無線通信装置43より送信する。これにより、加速度センサ46aによって検出された浴槽30内の加速度信号は、無線信号に変換されて制御ユニット50の無線通信装置52に受信される。また、S12において、加速度センサ46aから加速度信号(振動検出信号)が出力されないときは(NOの場合)、S14に進む。
【0066】
次のS14では、マイクロホン46bが音信号(振動検出信号)を出力しているか否かをチェックする。S14において、マイクロホン46bから音信号(振動検出信号)が出力されると(YESの場合)、S15に進み、マイクロホン46bから出力された音信号(振動検出信号)を無線通信装置43より送信する。これにより、マイクロホン46bによって検出された浴槽30内の音信号は、無線信号に変換されて制御ユニット50の無線通信装置52に受信される。
【0067】
次のS16は、制御ユニット50からの予備警報が受信されたか否かをチェックする。S16において、制御ユニット50からの予備警報が受信されないときは(NOの場合)、上記S11に戻り、S11〜S16の処理を繰り返す。
【0068】
また、S16において、制御ユニット50からの予備警報が受信されたときは(YESの場合)、S17に進み、警告ブザー48からブザー音を発生させると共に、警告灯49を点滅させて入浴者20に予備警報を報知する。これにより、入浴者20は、異常が無い場合、応答スイッチ45をオンに操作する。
【0069】
次のS18では、応答スイッチ45がオンに操作されたか否かをチェックする。S18において、応答スイッチ45が入浴者20によってオンに操作されたときは、S19に進み、応答信号を無線通信装置43より送信する。また、S18において、応答スイッチ45が入浴者20によってオンに操作されないときは、上記S11に戻り、S11〜S18の処理を繰り返す。尚、図8に示すS11〜S19の制御処理は、センサユニット40が浴槽30に取付けられた状態で実行されるため、サブ制御回路41は、充電中であるときは、図8に示す制御処理を行なわないようにプログラムされている。
【0070】
次に制御ユニット50のメイン制御回路51が実行するモード1の制御処理について図9のフローチャートを参照して説明する。メイン制御回路51は、モード切替スイッチ56がモード1に操作されている場合、電源スイッチ54がオンに操作されると、S21でセンサユニット40から送信された振動検出信号(浴槽内の湯水を伝搬した加速度信号、音信号)を読み込む。
【0071】
次のS22では、前述した生体情報取得手段110により振動検出信号から心拍、呼吸、入浴者の動作に対応した所定の周波数の生体情報信号を取得する(図5乃至図7参照)。続いて、S23で取得した生体情報に含まれる心拍信号に基づいて心拍数を演算し、この心拍数(1分間当たりの心臓の動作回数)が予め設定された上限値(例えば、90回/分〜135回/分)以上か否かをチェックする。
【0072】
S23において、検出された心拍数が予め設定された上限値未満のときは(NOの場合)、S24に進み、取得した生体情報に含まれる心拍信号に基づいて心拍数を演算し、この心拍数が予め設定された下限値(例えば、40回/分〜60回/分)以下か否かをチェックする。
【0073】
S24において、心拍数が予め設定された下限値以下でないときは(NOの場合)、S25に進み、呼吸数(1分間当たりの肺の動作回数)が上限値(例えば、20回/分〜40回/分)以上か否かをチェックする。
【0074】
S25において、呼吸数が上限値未満のときは(NOの場合)、S26に進み、呼吸数が下限値(例えば、10回/分〜15回/分)以下か否かをチェックする。
【0075】
S26において、呼吸数が下限値以下でないときは(NOの場合)、S27に進み、入浴者20の体調が正常であると判定する。この後は、上記S21に戻り、S21以降の処理を繰り返す。
【0076】
また、S27において、入浴者20の体調が正常である場合、心拍数及び呼吸数をメモリ64に記憶する。これにより、正常である場合の心拍数及び呼吸数のデータをメモリ64に蓄積してデータベース化することができ、過去及び現在の健康状態の履歴を確認することが可能になる。
【0077】
また、上記S23において、検出された心拍数が予め設定された上限値以上のときは(YESの場合)、S28に進み、当該心拍数をメモリ64に記憶する。これにより、入浴者20の心拍数の異常値を確認することができる。そして、S29において、予備警報として警告音(例えば、異常通報よりも音量を小さく抑えた音)をスピーカ58より出力すると共に、センサユニット40に予備警報信号を無線で送信する。
【0078】
次のS30では、センサユニット40からの応答信号を受信したか否かをチェックする。S30において、入浴者20が警告音に対して携帯端末42の応答スイッチ45をオンに操作した場合(YESの場合)、入浴者20に異常がなかったものと判断し、S31に進み、メモリ64に記憶されたデータ(心拍数、呼吸数)をリセットする。
【0079】
また、上記S25において、呼吸数が上限値以上のときは(YESの場合)、S32に進み、当該呼吸数をメモリ64に記憶する。これにより、入浴者20の呼吸数の異常値を確認することができる。この後は、前述したS29,S30,S31の処理を実行する。
【0080】
また、S24において、心拍数が予め設定された下限値以下のときは(YESの場合)、またはS26において、呼吸数が下限値以下のときは(YESの場合)、S33に進み、加速度センサ46aまたはマイクロホン46bによって入浴者20の存在に伴う検出信号(心拍、呼吸、咳、くしゃみ、湯面の上下変動など)が出力されたか否かをチェックする。
【0081】
S33において、加速度センサ46aまたはマイクロホン46bによって入浴者20の存在に伴う検出信号が出力されたとき(YESの場合)、入浴者20が浴槽30にいるものと判断してS29以降の処理を行なう。
【0082】
また、S33において、加速度センサ46aまたはマイクロホン46bによって入浴者20の存在に伴う検出信号が出力されないとき(NOの場合)、S34に進み、入浴者20が浴槽30の外にいるものと判断する。次のS35では、加速度センサ46aまたはマイクロホン46bによって異常振動が検出されたか否かをチェックする。S35において、例えば、入浴者20が転倒したり、脚を滑らせて浴槽30に衝突した場合に発生するような異常振動(図7の波形7C2)が検出されたときは(YESの場合)、上記S29の処理に移行する。また、S35において、異常振動が検出されないときは、S36に進み、入浴者20の体調が正常であると判定して上記S21の処理に戻る。
【0083】
また、上記S30において、入浴者20が警告音に対して携帯端末42の応答スイッチ45をオンに操作しない場合(NOの場合)、S37に進み、入浴者20に何らかの異常事態が発生しているものと判定する。そして、S38で異常発生警報を出力し、異常警告灯57を点滅させると共に、スピーカ58より警報音を発声させて入浴者20の異常を報知する。これにより、別室にいる家族は、入浴者20の異常を知ることができ、直ちに浴室に移動して入浴者20の介護を行える。また、入浴者20が重体の場合は、救急センタに通報して救急車を呼ぶことができる。
【0084】
次のS39では、リセットスイッチ55がオンに操作されたか否かをチェックしており、リセットスイッチ55がオンに操作されると、S40に進み、異常警告灯57の点滅、及びスピーカ58の警報音を停止させる。
【0085】
次に制御ユニット50のメイン制御回路51が実行するモード2の制御処理について図10のフローチャートを参照して説明する。メイン制御回路51は、モード切替スイッチ56がモード2に操作されている場合、図10の制御処理を実行する。尚、図10において、S41〜S60は、前述した図9のS21〜S40の処理と同じ処理であるので、その説明は省略する。
【0086】
図10のS59において、リセットスイッチ55がオンに操作されないときは、S61に進み、予め設定された所定時間(例えば、3分間)が経過したか否かをチェックする。この所定時間内にリセットスイッチ55がオンに操作されたときは、S60に進み、異常警告灯57の点滅、及びスピーカ58の警報音を停止させる。
【0087】
また、S61において、所定時間が経過してもリセットスイッチ55がオンに操作されないときは、S62に進み、通信モデム62を介して管理センタの管理コンピュータ70に入浴者20に異常が発生したことを通報する。
【0088】
図11は管理コンピュータによる救急情報通報システムを説明するための概念図である。図11に示されるように、制御ユニット50は、通常、モード切替スイッチ56の操作位置に拘わらず、公衆回線60を介して管理センタ側に設置された管理コンピュータ70に入浴者20の正常状態のデータを定期的(例えば、1週間毎)に送信する。よって、制御ユニット50は、メモリ64に記憶された心拍数及び呼吸数のデータを管理センタ側の管理コンピュータ70に送信することにより、管理センタ側で複数の入浴者20の健康状態を集中的に管理することが可能になる。例えば、管理センタ側から各人の心拍数及び呼吸数のデータを転送された医師が定期的にデータチェックして各人の健康状態を管理することが可能になる。
【0089】
制御ユニット50は、モード切替スイッチ56がモード2に操作されている場合、警報が出力されてから所定時間経過してもリセットスイッチ55がオンに操作されないときは、電話回線などからなる公衆回線60を介して管理コンピュータ70に入浴者20の異常状態を通報する。
【0090】
管理コンピュータ70は、複数の家庭の夫々に設置された複数の制御ユニット50を管理しており、一の制御ユニット50から異常発生が送信されると、当該制御ユニット50が設置された家庭の住所、氏名、電話番号などの情報を通信モデム72、公衆回線60を介して救急センタのホストコンピュータ74に送信する。
【0091】
さらに、救急センタ(119番)のホストコンピュータ74は、受信した情報に含まれる住所から当該入浴者20の近くにある消防署の端末装置76に救急車出動要請情報(当該住所、氏名、電話番号などの情報を含む)を送信する。これにより、救急車出動要請情報を受信した当該消防署では、通報された住所に向けて救急車を出動させ、当該入浴者を病院に搬送する。
【0092】
尚、救急情報通報システムにおいては、管理コンピュータ70に制御ユニット50から入浴者20の異常状態が受信されると、管理センタのオペレータが救急センタのオペレータに電話回線を介して通報するようにしても良い。
【0093】
また、公衆回線60としては、電話回線以外の通信回線(例えば、インターネットなど)を用いても良い。
【実施例2】
【0094】
図12は実施例2の入浴監視システムを示すシステム構成図である。尚、図12において、上記実施例1と同一部分には、同一符号を付してその説明は省略する。図12に示されるように、入浴監視システム200では、振動検出手段210が浴槽30内に貯留された湯水中に潜らせた状態に設置されている。振動検出手段210は、防水構造とされた防水ケース212の内部に加速度センサ46a及びマイクロホン46bが収納されている。また、防水ケース212の側面には、湯水を伝搬する入浴者20の心拍、呼吸、動作による振動を受けるための振動板214が設けられている。振動板214は、例えば、極めて薄い金属板により形成されており、振動検出感度を高めるためにセンサよりも受圧面積を大きくしてある。
【0095】
振動検出手段210は、湯水を伝搬して振動する振動板214の振動状態を加速度センサ46a及びマイクロホン46bによって検出することで、入浴者20の心拍、呼吸、動作による振動を高精度に検出するように構成されている。
【0096】
振動検出手段210は、携帯端末42とケーブル44を介して接続されている。そして、振動検出手段210によって検出された振動検出信号は、無線信号に変換されて制御ユニット50に送信される。
【0097】
制御ユニット50では、前述した実施例1と同様に、振動検出手段210から得られた検出信号から各生体情報を抽出して入浴者20の状態を判定し、異常があれば警報を出力する。
【実施例3】
【0098】
図13は実施例3の入浴監視システムを示すシステム構成図である。尚、図13において、上記実施例1、2と同一部分には、同一符号を付してその説明は省略する。図13に示されるように、入浴監視システム300では、複数の振動検出手段310が浴槽30の内壁の複数箇所(少なくとも3箇所)に設けられた凹部32に挿入されている。また、浴槽30の上縁部34には、枕型の生体情報検出手段320が設置されている。
【0099】
複数の振動検出手段310は、湯水を伝搬する入浴者20の心拍、呼吸、動作による振動を検出するものである。生体情報検出手段320は、入浴者20の後頭部が接することで入浴者20の心拍だけでなく、体温や血圧なども検出することが可能になる。
【0100】
複数の振動検出手段310及び生体情報検出手段320は、浴槽30の内壁に固定された携帯端末42とケーブル330(破線で示す)を介して接続されている。そして、複数の振動検出手段310及び生体情報検出手段320によって検出された各検出信号は、無線信号に変換されて制御ユニット50に送信される。
【0101】
制御ユニット50では、前述した実施例1と同様に、複数の振動検出手段310及び生体情報検出手段320から得られた検出信号から各生体情報を抽出して入浴者20の状態を判定し、異常があれば警報を出力する。
【0102】
入浴監視システム300は、主に浴室または浴室外に介護士が待機している介護施設あるいは病院などに設置され、入浴者20に異常が生じると、制御ユニット50が警報を出力して介護士に異常を報知するように構成されている。また、入浴監視システム300では、複数の振動検出手段310及び生体情報検出手段320からの検出信号及び生体情報を分析して入浴者20の健康状態を判定することが可能になるので、より正確に異常の有無を判定することが可能になる。
【実施例4】
【0103】
図14は実施例4の入浴監視システムを示すシステム構成図である。尚、図14において、上記実施例1、2、3と同一部分には、同一符号を付してその説明は省略する。図14に示されるように、入浴監視システム400では、センサユニット410と、前述した制御ユニット50とを有する。制御ユニット50には、非接触で充電を行える充電装置420が接続されている。センサユニット410は、入浴が行なわれない場合、充電装置420の載置凹部422に載置される。
【0104】
センサユニット410は、充電式バッテリ90を内蔵している。充電装置420は載置凹部422にセンサユニット410が載置されると、1次コイルへの通電が行なわれるように構成されている。そのため、センサユニット410は、使用されないときは、充電装置420の電磁誘導によりバッテリ側の2次コイルに2次電流が発生して充電式バッテリ90が充電される。
【0105】
センサユニット410は、前述した実施例の携帯端末と振動検出手段とを一体化したものであり、浴槽30に貯留された湯水の液面に浮遊させながら入浴者20の心拍、呼吸、動作を検出する。
【0106】
図15は実施例4のセンサユニット410の縦断面図である。図16は実施例4のセンサユニット410の平面図である。図15及び図16に示されるように、センサユニット410は、円盤状に形成された防水ケース430の内部中央に防水区画440が形成されている。この防水区画440には、バッテリ収納室441、センサ収納室442、回路収納室443、スイッチ収納室444が各隔壁445によって画成されている。
【0107】
防水区画440の周囲には、浮力発生室450,452が形成されている。浮力発生室450,452は、上下2段に形成されている。浮力発生室450,452は、気密構造であるので、防水区画440の内側に形成されたバッテリ収納室441、センサ収納室442、回路収納室443、スイッチ収納室444は、2重の防水壁に囲まれており、湯水の進入を確実に防止される。
【0108】
バッテリ収納室441は、防水区画440の底部に形成されており、内部には重量を有する複数本の充電式バッテリ90が収納されている。充電式バッテリ90の収納位置を低い位置にしたため、センサユニット410の重心位置が充電式バッテリ90によって低重心となっている。これにより、センサユニット410が上下逆向きになっても反転することができる。
【0109】
センサ収納室442には、加速度センサ46aが収納されている。
【0110】
回路収納室443には、サブ制御回路41等の制御系部品が収納されている。
【0111】
スイッチ収納室444には、各スイッチ類が収納されている。
【0112】
また、防水ケース430の上面側には、無線通信装置43、応答スイッチ45、受光センサ47、警告ブザー48、警告灯49、マイクロホン46bが設けられている。尚、応答スイッチ45は、プッシュ式スイッチで、操作しやすいように表面積を他の部品よりも大きく形成してある。また、警告灯49は、周方向90°間隔で4箇所に設けられており、センサユニット410のどの方向からも視認することができるように配置されている。
【0113】
また、防水ケース430の下面側には、水中マイクロホン470が設けられている。
【0114】
防水ケース430は、浴槽30内の湯水に浮遊されるため、入浴者20に接触した際に怪我を与えないようにゴム材のような比較的柔らかい樹脂材により成形されており、さらに最外周部分の全周に亘り緩衝部材460が取り付けられている。緩衝部材460は、ゴム材により環状で断面が半円形状に成形されており、入浴者20との接触時の衝撃を緩衝する。
【0115】
センサユニット410は、浴槽30の液面に浮遊した状態で使用されるもので、入浴者20の動きを加速度センサ46aにより検出し、入浴者20の呼吸、心拍をマイクロホン46bまたは水中マイクロホン470により検出することができる。
【0116】
センサユニット410の制御回路41の演算処理は前述した実施例1と同様なため、その説明は省略する。
【0117】
制御ユニット50では、前述した実施例1と同様に、センサユニット410から得られた検出信号から各生体情報を抽出して入浴者20の状態を判定し、異常があれば警報を出力する。
【0118】
図17に示されるように、センサユニット410は、浮力発生室450,452のうち何れか一方に注水することにより浮力を半減することができる。これにより、センサユニット410は、浴槽30の液面480(1点鎖線で示す)に対して全容積の3/4を水中に潜らせることが可能なる。この場合、液面280に生じる波の影響を軽減することが可能になる。例えば、浴槽30内の湯水を桶で汲み出す際の波による加速度を検出しにくくできる。また、この状態においては、防水ケース430の上面側に配置された無線通信装置43、応答スイッチ45、受光センサ47、警告ブザー48、警告灯49、マイクロホン46bが液面480より露出されているので、操作性に影響はない。
【0119】
図18に示されるように、浮力発生室450,452の両方に注水した場合、センサユニット410の浮力が大幅に減少することになり、センサユニット410は浴槽30の液面480(2点鎖線で示す)より下方に潜ることができる。この場合、センサユニット410全体が湯水中に潜った状態で浮遊しながら、入浴者20の心拍、呼吸、体の動きを検出することになり、液面480に生じる波の影響を受けないで済む。
【実施例5】
【0120】
図19は実施例5のセンサユニット510を示す縦断面図である。尚、図19において、上記実施例1〜4と同一部分には、同一符号を付してその説明は省略する。図19に示されるように、入浴監視システム500では、浮き型のセンサユニット510を有する。
【0121】
センサユニット510は、円筒型の防水ケース512の内部に、上から警告灯49、受光センサ47、無線通信装置43、応答スイッチ45、フロート520、サブ制御回路41、加速度センサ46b、充電式バッテリ90、水中マイクロホン470の順に収納されている。防水ケース512は、半透明の樹脂材により成形されており、内部には各部品間の接触を防止すると共に、各部品間を絶縁するため絶縁性を有する透明なゲル状物質530(図19中梨地模様で示す)を注入してある。尚、防水ケース512の内部の各隙間には、ゲル状物質530が充填されているので、防水ケース512が損傷しても内部の各部品が湯水から保護される。
【0122】
応答スイッチ45は、円筒形状に形成されたメンブレンスイッチからなり、外周を抑えることでオンに切り替わり、応答信号を出力する。
【0123】
また、フロート520は、防水ケース512の中心より上方に配置されており、センサユニット510の上部1/3が液面480の上方に起立した状態で突出するように浮力が設定されている。また、防水ケース512の底部には、比較的重量の大きい充電式バッテリ90が収納されているので、センサユニット510は、低重心構造になっている。そのため、センサユニット510は、液面480に波が起きても傾斜した状態に揺動するが、何れ垂直状態に復帰することができる。
【0124】
また、センサユニット510は、垂直状態であるので、液面480の上下動を敏感検出することができるので、入浴者20が浴槽30内で異常な動作をしたか否かを正確に検出することができる。
【0125】
センサユニット510及び制御ユニット50は、前述した実施例4のものと同じ機能を有しているので、その説明は省略する。
【実施例6】
【0126】
図20は実施例6のセンサユニット610の構成を示す構成図である。尚、図20において、上記実施例1〜5と同一部分には、同一符号を付してその説明は省略する。図20に示されるように、入浴監視システム600では、分散型のセンサユニット610を有する。
【0127】
センサユニット610は、液面480に浮遊する第1ユニット620と、浴槽30内の湯水中に潜る第2ユニット630と、浴槽30内の底部付近に潜る第3ユニット640と、浴槽30の底面に接する第4ユニット650とを有する。第1ユニット620と第2ユニット630との間は可撓性を有するフレキシブルケーブルなどからなる第1連結部材660により連結されている。第2ユニット630と第3ユニット640との間はフレキシブルケーブルなどからなる第2連結部材670により連結されている。第3ユニット640と第4ユニット650との間はフレキシブルケーブルなどからなる第3連結部材680により連結されている。
【0128】
各第1ユニット620、第2ユニット630、第3ユニット640、第4ユニット650は、夫々防水ケースの内部に各機器を収納しており、夫々が前述したセンサユニット410と同一構成として複数のセンサユニットを一列に連結した構成としても良い。
【0129】
あるいは、各第1ユニット620、第2ユニット630、第3ユニット640、第4ユニット650に各機器を分散配置しても良い。例えば、第1ユニット620には、警告灯49、受光センサ47、無線通信装置43、応答スイッチ45が収納され、第2ユニット630には、サブ制御回路41、加速度センサ46bが収納され、第3ユニット640には充電式バッテリ90、水中マイクロホン470が収納される構成としても良い。そして、第4ユニット650には、比重の重い材料からなる錘が収納される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施例1による入浴監視システムを示すシステム構成図である。
【図2】センサユニット40の構成を示すブロック図である。
【図3】制御ユニット50の構成を示すブロック図である。
【図4】メイン制御回路51の構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】入浴者が浴槽で動作した場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。
【図6】入浴者が浴槽で動かない場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。
【図7】入浴者が浴槽から出た場合に検出される振動検出信号を示す波形図である。
【図8】サブ制御回路41が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】制御ユニット50のメイン制御回路51が実行するモード1の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】制御ユニット50のメイン制御回路51が実行するモード2の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】管理コンピュータによる救急情報通報システムを説明するための概念図である。
【図12】実施例2の入浴監視システムを示すシステム構成図である。
【図13】実施例3の入浴監視システムを示すシステム構成図である。
【図14】実施例4の入浴監視システムを示すシステム構成図である。
【図15】実施例4のセンサユニット410の縦断面図である。
【図16】実施例4のセンサユニット410の平面図である。
【図17】実施例4のセンサユニット410の浮力発生室452に水を注入した状態を示す縦断面図である。
【図18】実施例4のセンサユニット410の浮力発生室450,452に水を注入した状態を示す縦断面図である。
【図19】実施例5のセンサユニット510を示す縦断面図である。
【図20】実施例6のセンサユニット610の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0131】
10,200,300,400,500,600 入浴監視システム
20 入浴者
30 浴槽
40,410,510,610 センサユニット
42 携帯端末
41 サブ制御回路
43,52 無線通信装置
45 応答スイッチ
46,210,310 振動検出手段
46a 加速度センサ
46b マイクロホン
46c 防水ケース
47 受光センサ
48 警告ブザー
49 警告灯
50 制御ユニット
51 メイン制御回路
53 液晶モニタ
54 電源スイッチ
55 リセットスイッチ
56 モード切替スイッチ
57 異常警告灯
58 スピーカ
60 公衆回線
64 メモリ
70 管理コンピュータ
80,420 充電装置
90 充電式バッテリ
100 増幅回路
110 生体情報取得手段
112 第1帯域フィルタ回路
114 第2帯域フィルタ回路
116 第3帯域フィルタ回路
120 判断手段
130 警報信号生成手段
140 報知手段
212,430,512 防水ケース
320 生体情報検出手段
440 防水区画
441 バッテリ収納室
442 センサ収納室
443 回路収納室
444 スイッチ収納室
445 隔壁
450,452 浮力発生室
470 水中マイクロホン
480 液面
520 フロート
620 第1ユニット
630 第2ユニット
640 第3ユニット
650 第4ユニット
660 第1連結部材
670 第2連結部材
680 第3連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の湯水に接触するように配置され湯水の振動を検出する振動検出手段と、
該振動検出手段によって検出された振動信号から入浴者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
該生体情報取得手段により取得された前記生体情報に基づいて前記入浴者の状態が正常か異常かを判断する判断手段と、
該判断手段が異常事態と判断した場合に警報を発する警報手段と、
を備えることを特徴とする入浴監視システム。
【請求項2】
前記振動検出手段は、防水構造とされた移動可能な筺体内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の入浴監視システム。
【請求項3】
前記筐体は、浴槽内の湯水の液面に浮遊するように浮力を発生させる浮力発生手段を有し、
前記振動検出手段は、前記筺体が前記浴槽内の湯水の液面に浮遊した状態で湯水の振動を計測することを特徴とする請求項2に記載の入浴監視システム。
【請求項4】
前記筐体は、浴槽内の湯水の液中に浮遊するように浮力を発生させる浮力発生手段を有し、
前記振動検出手段は、前記筺体が前記浴槽内の湯水の液中に潜った状態で湯水の振動を計測することを特徴とする請求項2に記載の入浴監視システム。
【請求項5】
前記振動検出手段は、湯水が貯留される浴槽の壁面に配設され、
湯水の振動を計測することを特徴とする請求項2に記載の入浴監視システム。
【請求項6】
前記振動検出手段は、前記浴槽または前記浴槽内の湯水を伝搬する振動による加速度を検出する加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の入浴監視システム。
【請求項7】
前記振動検出手段は、前記浴槽または前記浴槽内の湯水を伝搬する音波による振動を検出するマイクロホンであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の入浴監視システム。
【請求項8】
前記筺体内には、該筺体の外部と無線で通信を行う無線通信手段が収納されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の入浴監視システム。
【請求項9】
前記警報手段は、
該判断手段が異常事態と判断した場合に前記無線通信手段を介して警報信号を送信する警報信号生成手段と、
該警報信号生成手段により生成された警報信号によって警報を発する報知手段と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の入浴監視システム。
【請求項10】
前記報知手段は、浴室の外に設けられ、少なくとも警報音を発するスピーカまたは光を点滅する警告灯の何れか一方を有することを特徴とする請求項9に記載の入浴監視システム。
【請求項11】
前記筺体は、内部に充電式電池が収納され、
前記充電式電池は、前記筺体の外部から非接触で充電されることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の入浴監視システム。
【請求項12】
前記筺体は、前記入浴者が入浴しないときには、充電装置を有する載置台に載置され、
前記充電式電池は、前記充電装置によって充電されることを特徴とする請求項11に記載の入浴監視システム。
【請求項13】
前記判断手段は、前記振動検出手段により検出された振動の加速度が予め設定された閾値以上である場合、異常事態と判断することを特徴とする請求項1に記載の入浴監視システム。
【請求項14】
前記生体信号取得手段は、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から所定の周波数成分を取り出すフィルタであり、
前記フィルタは、前記入浴者の心拍、呼吸、体の動きに対応する信号を分離生成することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の入浴監視システム。
【請求項15】
前記判断手段は、前記フィルタにより生成された前記入浴者の心拍、呼吸、体の動きに対応する信号が予め設定された閾値以上である場合、異常事態と判断することを特徴とする請求項14に記載の入浴監視システム。
【請求項16】
前記フィルタは、前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の心拍に対応する信号を生成する第1帯域フィルタと、
前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の呼吸に対応する信号を生成する第2帯域フィルタと、
前記振動検出手段から出力された前記振動検出信号から前記入浴者の体の動きの信号を生成する第3帯域フィルタと、
を有することを特徴とする請求項14または15に記載の入浴監視システム。
【請求項17】
前記警報手段は、前記浴室の外部に設置されたリセットスイッチが操作されることにより警報の発生を解除することを特徴とする請求項9に記載の入浴監視システム。
【請求項18】
前記警報手段は、公衆回線を介して各家庭からの情報を管理する管理センタへ前記浴室内における異常発生情報を送信することを特徴とする請求項9に記載の入浴監視システム。
【請求項19】
前記筐体は、前記警報手段より発生される警報に対して応答信号を出力する応答スイッチを有し、
前記応答スイッチが操作されることにより前記無線通信手段を介して応答信号を送信することを特徴とする請求項9に記載の入浴監視システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−122967(P2009−122967A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296267(P2007−296267)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】