説明

入退出検知装置および入退出検知方法

【課題】無線タグの移動方向を確実に検出することによって、タグ情報を読取るばかりでなく、入退出を確実に検出することが可能な入退出検知装置を提供する。
【解決手段】管理区域2に設けられ、無線タグ7が付された認識対象12が通過する通路13にアンテナビーム15を向けた第1のアンテナ5と、このアンテナ5のアンテナビーム15よりも通路13の上流側又は下流側にアンテナビーム17を向けた第2のアンテナ6と、これらのアンテナ5、6にそれぞれ接続され、無線タグ7のタグ情報を読取る読取部8、9と、これらの読取部8、9の少なくとも一方で読取られたタグ情報により認識対象を特定可能とするとともに、両読取部8、9により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて認識対象12の通過方向を判定する判定部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入退出検知装置および入退出検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲートを通って人が部屋に入ること及び部屋から出ることを検知する入退室管理システムが知られている。入退室を感知するための簡易な手法として部屋の通用口やゲートに送受光素子から成るセンサを設けるシステムが存在するが、例えば赤外線の遮蔽を検出して人の有無を検知する手法では、人を特定できない。赤外線を使った検知手法では、立ち入り許可を与えられていない人の入室や2人が立て続けにゲートを通過したときの伴連れを防ぐことができず、人が後戻りした挙動をとった場合、誤検出が生じることがある。そこで、無線タグを用いたRFIDシステムなど、人を特定する機能が入退室管理システムには求められている。
【0003】
従来、ゲートを通過する可能性のあるタグのタグ情報を、ゲートに設けられた無線タグ情報蓄積装置に蓄え、同じくゲートに設けられたゲート制御装置によりタグ通過の許可、禁止の判断・決定を行うようにしたゲートシステムが提案されている(特許文献1参照)。また、人の出入りが制限されるべき立ち入り制限領域に対する被管理対象者の入退室の管理を高い信頼性をもって確実に行うことを可能にした入退室管理システムが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
この種の入退室管理システムは、入退場の通路に設けられ互いに対向する一対の側壁部を有するゲートと、これらのゲートに設けられた2本のアンテナと、これらのアンテナに無線信号を入出力する無線タグリーダと、部屋への入室を許された人に取付けられるICカードの無線タグのタグIDを保持するデータベースと、このデータベースと無線タグリーダが読取った情報とを用いて人の入退室を判定する無線タグ認識処理部とを有する。
【0005】
ゲートは監視対象の部屋に設けられ対象の検出判定用の通路を形成する。無線タグリーダ、データベース及び無線タグ認識処理部を設けることによって、人の存在を検出することと、予め入室を許された者だけ部屋へ入場することとが行えるようになっている。また、一方のアンテナだけでは、1本のアンテナと無線タグとの間の距離やこれらの位置関係に応じて質問波又は応答波の電界強度レベルが交信可能な電界強度レベルを下回ることがあるため、2本のアンテナを設けることにより、他方のアンテナが同じ無線タグから確実にタグ情報を読取りできるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−276994号公報
【特許文献2】特開2008−156931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来例のものにおいては、ゲートに設けた無線タグ読取装置の読取り可能範囲に無線タグが位置すると、この無線タグのタグ情報を読取る。このため、無線タグ読取可能範囲内である時間内に無線タグが移動して、何回もこのタグ情報を読取ってしまうことがある。この場合、入室したのか、退出したのかの判定が困難となり、適切な入退出管理が行えないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、無線タグの移動方向を確実に検出することによって、タグ情報を読取るばかりでなく、入退出を確実に検出することが可能な入退出検知装置および入退出検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、管理区域に設けられ、無線タグが付された認識対象が通過する通路にアンテナビームを向けた第1のアンテナと、この第1のアンテナの前記アンテナビームよりも前記通路の上流側又は下流側にアンテナビームを向けた第2のアンテナと、これらのアンテナにそれぞれ接続され、前記無線タグのタグ情報を読取る複数の読取部と、これらの読取部の少なくとも一方で読取られたタグ情報により認識対象を特定可能とするとともに、両読取部により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて前記認識対象の通過方向を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする入退出検知装置が提供される。
【0010】
また、本発明の別の一態様によれば、管理区域に設けられ、無線タグが付された認識対象が通過する通路にアンテナビームを向けた第1のアンテナと、この第1のアンテナの前記アンテナビームよりも前記通路の上流側又は下流側にアンテナビームを向けた第2のアンテナとを設置し、前記第1のアンテナを介して、この第1のアンテナに接続された第1の読取部が、前記無線タグのタグ情報を読取り、前記第2のアンテナを介して、この第2のアンテナに接続された第2の読取部が、この無線タグのタグ情報を読取り、前記認識対象の通過方向を判定する判定部が、これらの読取部の少なくとも一方で読取られたタグ情報により認識対象を特定可能とするとともに、両読取部により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて、前記認識対象の通過方向を判定することを特徴とする入退出検知方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線タグの移動方向を確実に検出し、タグ情報により認識対象を特定することができ、入退出を確実に検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る入退出検知装置の構成図である。
【図2】読取部のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る入退出検知方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る入退出検知装置を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る入退出検知装置および入退出検知方法について、図1乃至図4を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る入退出検知装置の構成図である。入退出検知装置(ゲート入退出管理装置)1はRFIDシステムを用いて人が部屋に入ること及び部屋から出ることを検知するものである。この入退出検知装置1は、管理区域である部屋2の出入口に設けられた一対のゲート3、4と、これらのゲート3、4に設けられたゲートアンテナ5、6(第1のアンテナ、第2のアンテナ)と、それぞれこれらのゲートアンテナ5、6に接続され、移動する無線タグ7のタグ情報を読取る無線タグリーダ本体部8、9(読取部)とを備えている。更に入退出検知装置1は、これらの無線タグリーダ本体部8、9により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて認識対象の通過方向を判定する判定部10と、部屋への入退場を許可したタグ情報を保持するデータベース11とを備えている。認識対象とは無線タグ7を付された物品や人を指し、例えば無線タグ7が組込まれたカード12である。
【0015】
ゲート3、4は、認識対象であるカード12が通過する通路13を区画する。ゲート3が有する4つの側面のうち、ゲート4に面する側面14は通路13の側壁を成し、この側壁の面部に第1のゲートアンテナ5が設けられている。このゲートアンテナ5のアンテナビーム15は、ビーム軸の方位が第2のゲートアンテナ6の側壁に対峙して左方、即ち通路13上で部屋2から遠ざかる方向へ振られた方位に指向性を有する。ゲート4が有する4つの側面のうちのゲート3に面する側面16も通路13の側壁を成し、この側壁の面部にゲートアンテナ6が設けられている。ゲートアンテナ6のアンテナビーム17は、ビーム軸の方位が他方のゲートアンテナ5の側壁に対峙して左方、即ち通路13上で部屋2の奥行方向へ振られた方位に指向性を有する。
【0016】
カード12が移動することによって対象移動空間が形成される。ゲートアンテナ5はこの対象移動空間内にアンテナビーム15を向けている。ゲートアンテナ5は、アンテナビーム15が水平方向、仰角方向及び俯角方向のいずれかに向けられた状態でゲート3に固定されている。このゲートアンテナ5を介して無線タグリーダ本体部8が無線タグ7と確実に交信できるようになっている。ゲートアンテナ5のビームの鋭さ、ビーム幅あるいはビーム径、及び送受信感度の指向性パターンはいずれも、このゲートアンテナ5と無線タグ7とが安定して交信を行えるようにして決められている。例えば実験、シミュレーション又はフィールドテストにより、ビームの形状や方向は決定される。
【0017】
第2のゲートアンテナ6はゲートアンテナ5のアンテナビーム15よりも対象移動方向の下流側に位置する対象移動空間内にアンテナビーム17を向けている。ゲートアンテナ6も、このゲートアンテナ6のアンテナビーム17が水平方向、仰角方向及び俯角方向のいずれかに向けられた状態でゲート4に固定されている。ゲートアンテナ6を介して無線タグリーダ本体部9が無線タグ7と確実に交信できるようになっている。
【0018】
つまり、第1のゲートアンテナ5は管理区域の部屋2に設けられ、無線タグ7が付された認識対象が通過する通路13にアンテナビームを向けており、第2のゲートアンテナ6は第1のゲートアンテナ5のアンテナビーム15よりも通路13の上流側又は下流側にアンテナビーム17を向けていることになる。
【0019】
また、無線タグリーダ本体部8、9はそれぞれゲートアンテナ5、6に対して無変調信号を生成して質問波を送信し、ゲートアンテナ5、6が受信した応答波を受信復調するものである。
【0020】
図2は無線タグリーダ本体部8のブロック図であり、無線タグ7のブロック図も示されている。同図に示す符号のうち上述した符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。無線タグリーダ本体部8は、ゲートアンテナ5、高周波信号用のケーブル18により接続されており、これらのゲートアンテナ5、ケーブル18及び無線タグリーダ本体部8が協同して無線タグリーダとして機能するようになっている。
【0021】
無線タグリーダ本体部8は、インターフェース部19、変調部20、送信アンプ21、サーキュレータ22、受信アンプ23、復調部24、制御部25を備える。
【0022】
インターフェース部19はパソコンなどの上位装置26にネットワークケーブル27により接続され、この上位装置26に実装された判定部10との間で信号を入出力する。変調部20は、制御部25からの信号により搬送波を変調する。送信アンプ21は、変調部20により変調された変調波を増幅する。サーキュレータ22は、送信アンプ21にて増幅された無線信号をゲートアンテナ5に出力する。このサーキュレータ22は、ゲートアンテナ5が受信した電波を受信アンプ23に出力する。この受信アンプ23は、受信無線信号を増幅する。復調部24は、受信アンプ23にて増幅された信号を復調し、復調信号を制御部25に出力する。制御部25はCPU、ROM、RAMからなる。
【0023】
また、無線タグ7はICチップ28及びアンテナ29を有する。ICチップ28は、電源生成部30、受信波の復調部31、送信波の変調部32、固有識別情報を記憶するメモリ部33及びこれらを制御する制御部34を有する。
【0024】
電源生成部30は、アンテナ29が受信した電波を整流し電荷を蓄積することによりICチップ28内の各部に電源を供給する。復調部31は対向するゲート3側のゲートアンテナ5からの受信電波を復調して制御部34へ送出する。変調部32は制御部34から送られた情報により搬送波を変調し、変調波をアンテナ29から放射させる。制御部34は復調部31が復調したデータをメモリ部33へ書込み、メモリ部33からデータを読出して変調部32へ送る。メモリ部33はデータ書換えを不能にされた設定用の図示しない記憶エリアと、任意のデータを書込み可能なユーザ記憶エリアとを有し、設定用の記憶エリアに固有のタグ識別情報が書込まれている。アンテナ29は例えばループを有する。
【0025】
無線タグリーダ本体部8が制御部25による制御により送信アンプ21から応答要求を含む質問波を送信させると、無線タグ7は電波の照射によって誘導起電力を生じ、ICチップ28が駆動される。無線タグ7はタグID及び応答メッセージを含む応答波を送信する。無線タグリーダ本体部8のゲートアンテナ5は復調したタグIDを判定部10へ送信する。
【0026】
無線タグリーダ本体部9の構成は無線タグリーダ本体部8の構成と実質同じである。
【0027】
また、図1の判定部10は、上位装置26のハードディスクドライブなどの記憶装置に実装されたアプリケーションプログラムであり、CPU、ROM及びRAM等からなる。無線タグ7がゲート3、4の間を通過する時に、無線タグ7からの応答波をゲートアンテナ5、6が受信する。判定部10はこれらのゲートアンテナ5、6が受信した順番を取得し、この順序に基づき、無線タグ7が室内から室外へ移動したか、あるいは、無線タグ7が室外から室内へ移動したかを判定するようにしている。つまり、判定部10は無線タグリーダ本体部8、9のいずれか一方又は両方で読取られたタグ情報によりカード12を特定可能とするとともに、両無線タグリーダ本体部8、9により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいてカード12の通過方向を判定する。
【0028】
判定部10は、ゲートアンテナ5、6のうちの一方を介してタグ情報を取得すると、このタグ情報を、RAMに記憶し、CPUタイマを用いて予め決められた時間を計測するようにしている。この時間内に、ゲートアンテナ5、6のうちの他方を介して同じタグ情報を取得したと判定部10が判断すると、室内から室外へあるいは室外から室内へ、無線タグ7が移動したことを検知するようになっている。人の歩行速度と、ゲート3、4の各側壁面の通路13に沿う辺の長さで決まる時間よりも極めて長い時間をかけて人がゲート3、4を通過することはないものとして、判定部10はCPUタイマを作動させるようにしている。予め決められた時間とは、一例として、ゲート3の通過に要する平均的な時間や、タグ情報を無線タグリーダ本体部8が読取るために十分な交信時間よりも長い。
【0029】
また、データベース11は、複数の固有なタグ情報を記憶する。ユーザ操作を介して複数のタグ情報が入力されると、上位装置26のアプリケーションソフトウェアが、これらのタグ情報をデータベース11に登録するようになっている。例えば判定部10から登録確認を依頼するメッセージがきたときに、このメッセージに対して照会結果を返す処理等にもデータベース11は用いられるようにされている。
【0030】
このような構成の本実施形態に係る入退出検知装置1を用いたタグ通過方向の検出動作について説明する。データベース11には、予めセキュリティ管理の対象とされている部屋2の部屋番号と、この部屋2に入退室を許可する人物の情報と、各人に配布された識別用のカード2の無線タグ7のタグIDとが紐付けられた状態で登録されている。従業員は配布されたカード2をストラップなどにより首から下げ、あるいは着衣に留め付けている。上位装置26は、無線タグリーダ本体部8、9に対し動作の開始及び停止の指令を与えるためのユーザ対話インターフェースを持つプログラムを実装されている。管理者の操作を介して上位装置26は、無線タグリーダ本体部8、9に対し動作指令を与え、これらの無線タグリーダ本体部8、9は、常時、無線タグ7の通過を検出可能になっている。
【0031】
図3は入退出検知方法(ゲート通過方向検出方法)を説明するためのフローチャートである。図4は入退出検知装置1を上方から見た図である。同図には、ゲートアンテナ5、6の各アンテナビーム15、17と、これらのアンテナビーム15、17を横切る無線タグ7との配置関係が示されている。図4に示す符号のうち、既出の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0032】
人35が通路13を通って部屋2に入る場合の処理について述べる。ゲートアンテナ6は室内側にアンテナビーム17を向けて質問波を送信している。ゲートアンテナ5は室外側にアンテナビーム15を向けて質問波を送信している。人35が通路13を歩行し、ゲート3、4の間を通過する。図3のステップA1において、タグ移動方向で上流側に位置するゲートアンテナ5を介して無線タグリーダ本体部8は無線タグ7のタグ情報を読取り、このタグ情報を判定部10へ通知する。
【0033】
ステップA2において、判定部10は、この受信したタグ情報を、RAM内の予め割当てされた領域に記憶する。
【0034】
ステップA3において、判定部10はCPUタイマを起動する。設定されたタイマ値に達するまでこのCPUタイマはカウント動作を開始する。タイマ値は検知動作に十分な長さの時間に選択されている。
【0035】
引き続き、ステップA4において、下流側に位置するゲートアンテナ6を介して無線タグリーダ本体部9は無線タグ7のタグ情報を読取り、このタグ情報を判定部10へ通知する。人35は部屋2に向かって歩行しており、通路13のタグ移動方向に沿って上流側及び下流側に設けられた2つの無線タグリーダ本体部8、9はそれぞれ同じ無線タグ7の存在を検知する。
【0036】
ステップA5において、判定部10は、ゲートアンテナ5を介して受信した無線タグ情報と、ゲートアンテナ6を介して受信した無線タグ情報とが同一であるか否かを判定する。この処理において、判定部10が同一であると判定した場合、ステップA5のYesルートを通り、ステップA6において判定部10は、1回目に無線タグ情報を検出した時間と、2回目に無線タグ情報を検出した時間との時間差がCPUタイマのカウント開始からタイムアップまでのタイマ時間内であるかどうかを判定する。
【0037】
ステップA6において、タグ情報の検出時間差がタイマ時間内であると判定部10が判定すると、YESルートを通り、ステップA7において、判定部10は、受信順番がアンテナビーム15からアンテナビーム17であると判定し処理を終える。無線タグ7が、アンテナビーム15によって決まる電界強度が分布する空間領域と、アンテナビーム17によって決まる電界強度が分布する空間領域とを、アンテナビーム15からアンテナビーム17へ向かう方向に進みながら横切ったことが検知される。従って、人35は、ゲート3、4の間を、図4中D2で表される方向に移動したことが検知される。
【0038】
また、ステップA5において、ゲートアンテナ5、6を介してそれぞれ受信した無線タグ情報が異なる場合、Noルートを通り、判定部10は、例えば伴連れが起きた等と判定し処理を終える。この場合、無線タグ7の通過方向は検出されない。
【0039】
また、ステップA6において、時間差がタイマ時間内でない場合、Noルートを通り、判定部10は、例えば人35が後戻りしたと判定し処理を終える。あるいは判定部10はゲート3、4の近くを偶然通りかかった人のカード2の無線タグ7を誤読みしたと判定する。この場合も無線タグ7の通過方向は検出されない。即ち、判定部10は、各無線タグ情報を検出した時間の時間差がタイマ設定時間内であるかどうかを判定し、この時間差がこのタイマ設定時間内である場合、通過方向の判定を行わない。あるいは、判定部10は、通過方向の判定を行っても、その通過方向を判定した結果を出力しない。
【0040】
以上の説明は、人35が通路13を通って部屋2に入る場合の例であったが、同じ人35が部屋2から通路13を通って退室する場合の処理も実質同様である。無線タグ7の移動方向は上記の例と逆である。退出時、タグ移動方向上流側となるゲートアンテナ6を介して無線タグリーダ本体部9は無線タグ7のタグ情報を読取り(ステップA1)、判定部10はこのタグ情報をRAMに記憶し(ステップA2)、CPUタイマを起動する(ステップA3)。
【0041】
続いて、下流側となるゲートアンテナ5を介して無線タグリーダ本体部8は無線タグ7のタグ情報を読取る(ステップA4)。判定部10は、ゲートアンテナ6からの無線タグ情報と、ゲートアンテナ5からの無線タグ情報とが同一であるか否かを判定し(ステップA5)、同一であると判定した場合、Yesルートを通り、1回目に無線タグ情報を検出した時間と、2回目に無線タグ情報を検出した時間との時間差が設定したタイマ時間内であるかどうかを判定する(ステップA6)。タグ情報の検出時間差がタイマ時間内である場合、YESルートを通り、判定部10は受信順番がアンテナビーム17からアンテナビーム15であると判定し処理を終える(ステップA7)。人35が図4中D1で表される方向に移動したことが検知される。
【0042】
このように、本実施形態に係る入退出検知装置1では、指向性を持ったゲートアンテナ5、6と、人や物などの通過方向を判定するアプリケーションソフトウェアとを設けることにより、RFIDタグ通過時に各ゲートアンテナ5、6へ送信されるRFIDタグの応答波の受信順番を検出することができるようになる。アンテナビーム17及びアンテナビーム15のうち、どちらが先であるかが把握されるようになる。
【0043】
本実施形態に係る入退出検知装置1では、予めゲートアンテナ5、6の角度調整が行われる。つまり、ゲートアンテナ5のアンテナ素子は、垂直軸周りに所定の方位角方向を向くよう方位角を調整され、この垂直軸に直交する平面内の一つの水平軸周りに所定の仰角方向を向くよう仰角を調整される。この角度調整により、通過方向D1では退室(アンテナビーム17からアンテナビーム15)であり、通過方向D2では入室(アンテナビーム15からアンテナビーム17)であるといったことの管理を行うことが可能になる。
【0044】
また、アンテナビーム17、15の両方を無線タグ7が受信しないとアプリケーションソフトウェアが起動しないため、人35がゲート3、4に近づいただけで判定部10が反応してしまうといった誤読みも防ぐことが可能になる。
【0045】
通路13を通過する無線タグ7が移動したとき、タグ情報の誤読みを軽減でき、安定して無線タグ7のゲート3、4の間の通過方向を検出することができるようになる。これにより、簡単な入退室管理等が可能になる。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る入退出検知装置および入退出検知方法によれば、無線タグ7の移動方向を確実に検出し、タグ情報により認識対象を特定することができるのみならず、入退出を確実に検出することができるようになる。
【0047】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、人の入退室のチェックについての例であるが、本発明の実施形態に係るシステムは、物品の通過の確認を行うシステムに用いても良い。通路13は前後方向のほかに、左右方向や上下方向に用いても良い。上記実施形態では、入退出検知装置1は2本の支柱と、これらの支柱の下部に連結されたステップ部とから構成されていたが、例えば2本の支柱の代わりに2本の起立立壁部を有する1基の成型体及びステップ部によって構成されてもよい。
【0048】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0049】
また、本実施の形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…入退出検知装置(ゲート入退出管理装置)、2…部屋(管理区域)、3,4…ゲート、5,6…ゲートアンテナ(アンテナ)、7…無線タグ、8,9…無線タグリーダ本体部(読取部)、10…判定部、11…データベース、12…カード(認識対象)、13…通路、14,16…側面、15,17…アンテナビーム、18…ケーブル、19…インターフェース部、20…変調部、21…送信アンプ、22…サーキュレータ、23…受信アンプ、24…復調部、25…制御部、26…上位装置、27…ネットワークケーブル、28…ICチップ、29…アンテナ、30…電源生成部、31…復調部、32…変調部、33…メモリ部、34…制御部、35…人(認識対象)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理区域に設けられ、無線タグが付された認識対象が通過する通路にアンテナビームを向けた第1のアンテナと、
この第1のアンテナの前記アンテナビームよりも前記通路の上流側又は下流側にアンテナビームを向けた第2のアンテナと、
これらのアンテナにそれぞれ接続され、前記無線タグのタグ情報を読取る複数の読取部と、
これらの読取部の少なくとも一方で読取られたタグ情報により認識対象を特定可能とするとともに、両読取部により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて前記認識対象の通過方向を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする入退出検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記各タグ情報を検出した時間の時間差が予め設定された所定時間内であるかどうかを判定し、この時間差がこの所定時間内である場合、前記通過方向の判定を行わない、あるいは前記通過方向を判定した結果を出力しないことを特徴とする請求項1記載の入退出検知装置。
【請求項3】
管理区域に設けられ、無線タグが付された認識対象が通過する通路にアンテナビームを向けた第1のアンテナと、この第1のアンテナの前記アンテナビームよりも前記通路の上流側又は下流側にアンテナビームを向けた第2のアンテナとを設置し、
前記第1のアンテナを介して、この第1のアンテナに接続された第1の読取部が、前記無線タグのタグ情報を読取り、
前記第2のアンテナを介して、この第2のアンテナに接続された第2の読取部が、この無線タグのタグ情報を読取り、
前記認識対象の通過方向を判定する判定部が、これらの読取部の少なくとも一方で読取られたタグ情報により認識対象を特定可能とするとともに、両読取部により読取られた各タグ情報が検出された順序に基づいて、前記認識対象の通過方向を判定することを特徴とする入退出検知方法。
【請求項4】
前記判定部による判定は、前記各タグ情報を検出した時間の時間差が予め設定された所定時間内であるかどうかを判定するものであり、この時間差がこの所定時間内である場合、前記通過方向の判定を行わない、あるいは前記通過方向を判定した結果を出力しないことを特徴とする請求項3記載の入退出検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−60125(P2011−60125A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210832(P2009−210832)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】