説明

入退室管理システムおよび方法

【課題】コスト増大や判定速度の低下を招くことなく、傍聴したタグ情報による不正な入退室を抑止する。
【解決手段】IDタグ10において、入退室判定時に、識別情報構成ルールに基づいて、入退室判定時ごとに異なる逐次情報とタグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより識別情報を生成してタグ端末22へ送信し、制御装置30において、タグ端末22から受信した識別情報を識別情報構成ルールに基づいて部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することによりタグIDと逐次情報とを抽出し、この逐次情報と入退室判定時ごとに異なる照合情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定し、この照合成功に応じて、識別情報から取得したタグIDに基づき入退室可否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入退室管理技術に関し、特にIDタグとしてアクティブタグを用いた際の不正抑止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入退室管理システムでは、個別のタグIDを記録したIDタグを登録者に配布するとともに、これらIDタグのタグIDを正規のタグIDとして予め登録しておき、施設のドアに設置されたタグ端末でIDタグから取得した識別情報のうちからタグIDを抽出し、そのタグIDが正規のタグIDか否かに基づき入退室可否を判定するものがある。
【0003】
このような入退室管理システムで用いられるIDタグは、その操作性から非接触型のIDタグが数多く用いられており、パッシブタグとアクティブタグに大別される。
このうち、パッシブタグは、自ら電池を搭載せず、タグ端末からの電波で発生する電磁誘導などで与えられた電力で動作して、タグIDなどの識別情報をタグ端末との間で無線通信により送受信する。このため、パッシブタグでは、十分な電力が得られないことから、無線通信可能な距離は、数mまでの近距離に制限される。
【0004】
一方、アクティブタグは、自ら電池を搭載していることから、十分な電力を用いて、タグIDなどの識別情報をタグ端末との間で無線通信で送受信することができる。このため、10m以上の遠距離でも無線通信可能となる。したがって、このアクティブタグを用いることにより、鍵やボタン操作、あるいはパッシブタグを操作することなく、タグ端末から比較的離れた場所で、入退室判定を行うことができ、マンションの玄関や駐車場などの大きな施設で利用されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−257407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、入退室管理システムのIDタグとして、アクティブタグなどの無線通信距離の長いタグを用いた場合、入退室判定時にIDタグからタグ端末へ送信する識別情報が傍聴される可能性が高くなり、傍聴した識別情報を後でタグ端末へ送信することにより、不正な入退室が行われる可能性も高くなるという問題点があった。
【0007】
また、このような傍聴を防ぐため、入退室判定時にIDタグとタグ端末との間で双方向にデータを送受信可能とし、高度な暗号化技術を用いて両者間で相互認証を行う方法も考えられる。しかし、この方法では、IDタグでの処理が複雑化するため、電池寿命や処理能力の改善が必要となり、結果としてコスト増大の要因となる。また、処理時間が増大し、入退室判定速度が低下する要因となる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、コスト増大や判定速度の低下を招くことなく、傍聴したタグ情報による不正な入退室を抑止することができる入退室管理システムおよび方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる入退室管理システムは、予め記録されているタグIDを含む識別情報を入退室判定時に無線送信するIDタグと、このIDタグからの識別情報を受信し通信回線を介して制御装置へ転送するタグ端末と、タグ端末から受信した識別情報に含まれるタグIDに基づき入退室可否を判定する制御装置とを備える入退室管理システムであって、IDタグは、識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを記憶する第1の記憶部と、少なくとも入退室判定時ごとに異なる内容の逐次情報を生成する逐次情報生成部と、入退室判定時に、第1の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、逐次情報生成部で生成した当該入退室判定時における逐次情報とタグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより識別情報を生成する識別情報生成部とを備え、制御装置は、識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを記憶する第2の記憶部と、少なくとも入退室判定時ごとに逐次情報と同じ内容の照合情報を生成する照合情報生成部と、第2の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、受信した識別情報を部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより、タグIDと逐次情報とを抽出する識別情報処理部と、照合情報生成部で生成した当該入退室判定時における照合情報と識別情報処理部で抽出した逐次情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定する情報照合部と、情報照合部での照合成功に応じて、識別情報処理部で抽出したタグIDに基づき入退室可否を判定するID判定部とを備えている。
【0010】
この際、逐次情報生成部として、時刻を計時する計時部を用い、識別情報生成部は、当該入退室判定時点を示す時刻情報からなる逐次情報を逐次情報生成部から取得し、照合情報生成部として、時刻を計時する計時部を用い、情報照合部は、当該入退室判定時点を示す時刻情報からなる照合情報を照合情報生成部から取得し、照合情報と逐次情報との時刻差と正当な許容時間差とを比較することにより、照合の成否を判断するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明にかかる入退室管理方法は、予め記録されているタグIDを含む識別情報を入退室判定時に無線送信するIDタグと、このIDタグからの識別情報を受信し通信回線を介して制御装置へ転送するタグ端末と、タグ端末から受信した識別情報に含まれるタグIDに基づき入退室可否を判定する制御装置とを備える入退室管理システムで用いられる入退室管理方法であって、IDタグが、識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを第1の記憶部で記憶する記憶ステップと、少なくとも入退室判定時ごとに異なる内容の逐次情報を生成する逐次情報生成ステップと、入退室判定時に、第1の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、逐次情報生成ステップで生成した当該入退室判定時における逐次情報とタグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより識別情報を生成する識別情報生成ステップとを実行し、制御装置が、識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを第2の記憶部で記憶する記憶ステップと、少なくとも入退室判定時ごとに逐次情報と同じ内容の照合情報を生成する照合情報生成ステップと、第2の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、受信した識別情報を部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより、タグIDと逐次情報とを抽出する識別情報処理ステップと、照合情報生成ステップで生成した当該入退室判定時における照合情報と識別情報処理ステップで抽出した逐次情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定する情報照合ステップと、情報照合ステップでの照合成功に応じて、識別情報処理ステップで抽出したタグIDに基づき入退室可否を判定するID判定ステップとを実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、IDタグにおいて、入退室判定時ごとに異なる逐次情報を用いてタグIDをスクランブルした識別情報を生成することができ、高度な暗号化技術を用いて両者間で相互認証を行うことなく、容易に抽出不可能な状態でIDタグから制御装置へタグIDを通知することが可能となるとともに、同一入退室判定時に生成された識別情報か否かを制御装置で容易に判定することが可能となる。したがって、コスト増大や判定速度の低下を招くことなく、傍聴したタグ情報による不正な入退室を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[実施の形態の構成]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムについて説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
この入退室管理システム100には、IDタグ10、タグ端末22、電気錠23、および制御装置30が含まれている。各部屋20のドア21に対して設置されているタグ端末22および電気錠23は、通信回線L1を介してそれぞれデータ通信可能に制御装置30と接続されている。
【0015】
IDタグ10は、アクティブタグなど、非接触でタグ端末22とデータ通信を行う、携帯可能な情報処理用のタグからなり、当該IDタグを所持する利用者の入退室可否を判定するために必要なタグIDなどのタグ情報を記録する機能を有している。
タグ端末22は、部屋20のドア21ごとに設けられた、タグリーダなどのタグ処理装置からなり、利用者が所持するIDタグ10から無線通信を介して送信されたタグ情報を受信する機能と、当該タグ情報を制御装置30へ通信回線L1を介して送信する機能とを有している。
【0016】
電気錠23は、部屋20のドア21ごとに設けられた電動式の錠前からなり、通信回線L1を介して受信した制御装置30からの開錠/施錠の指示に応じて、ドア21の開錠/施錠を行う機能を有している。なお、電気錠23は、常時、施錠されており、制御装置30から開錠指示が到来した場合にのみ所定期間だけ開錠するものとする。
制御装置30は、設備の管理・監視を行う各種制御システムで用いられるコントローラなどの制御装置からなり、タグ端末22でIDタグ10から読み取られたタグ情報に基づき、入退室可否の判定を行う機能を有している。
【0017】
[IDタグの構成]
次に、図2を参照して、IDタグ10の構成について詳細に説明する。図2は、IDタグの構成例を示すブロック図である。
IDタグ10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、逐次情報生成部12、記憶部13、識別情報生成部14、および電文処理部15が設けられており、内部バスを介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0018】
通信I/F部11は、専用の無線通信回路からなり、タグ端末22との間で無線通信によりデータ通信を行う機能を有している。
逐次情報生成部12は、時刻を計時する計時部などからなり、少なくとも入退室判定ごとに異なる逐次情報を生成する機能を有している。
記憶部13は、メモリ回路からなり、IDタグ10内の各機能部での処理に用いる各種処理情報を記憶する機能を有している。主な処理情報としては、予め設定された当該IDタグ10に固有のタグIDや、後述する識別情報構成ルールなどがある。
【0019】
識別情報生成部14は、記憶部13から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、記憶部13から読み出したタグIDおよび逐次情報生成部12で生成された逐次情報を、それぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び代えて連結することにより、入退室判定に用いる識別情報を生成する機能を有している。
電文処理部15は、入退室判定時に、識別情報生成部14で生成された識別情報を含む電文を、通信I/F部11を介してタグ端末22へ送信する機能を有している。
【0020】
IDタグ10のうち、逐次情報生成部12、識別情報生成部14、および電文処理部15については、CPUとプログラムを協働させてなる演算処理部で構成してもよく、専用の演算回路部で構成してもよい。
【0021】
[制御装置の構成]
次に、図3を参照して、制御装置30の構成について説明する。図3は、制御装置の構成例を示すブロック図である。
制御装置30には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)31、照合情報生成部32、記憶部33、識別情報処理部34、情報照合部35、およびID判定部36が設けられており、これら機能部は、内部バスを介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0022】
通信I/F部31は、専用の無線通信回路からなり、IDタグ10との間で無線通信によりデータ通信を行う機能を有している。
照合情報生成部32は、時刻を計時する計時部などからなり、少なくとも入退室判定ごとに異なる逐次情報を生成する機能を有している。
記憶部33は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、制御装置30内の各機能部での処理に用いる各種処理情報を記憶する機能を有している。主な処理情報としては、IDタグ10に登録されているものと対応する識別情報構成ルール、後述する許容情報、登録者に配布したIDタグに記録した正規タグIDなどがある。
【0023】
識別情報処理部34は、記憶部33から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、IDタグ10から通知された識別情報を部分データに分解した後、これら部分データを並び替えることにより、タグIDと逐次情報とを抽出する機能を有している。
情報照合部35は、記憶部33から読み出した許容情報に基づいて、識別情報処理部34で抽出された逐次情報と、照合情報生成部32で生成した照合情報とを比較することにより、逐次情報の正否を確認する機能を有している。
【0024】
ID判定部36は、記憶部33の正規タグIDを参照して、識別情報処理部34で抽出されたタグIDの正当性を確認することにより、入退室の可否を判定する機能と、入退室可の判定に応じて、通信I/F部31を介してタグ端末22に対応する電気鍵23へ開錠を指示する機能とを有している。
【0025】
[実施の形態の動作]
次に、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの動作として、IDタグ10と制御装置30に関する入退室判定時の動作をそれぞれ説明する。
【0026】
[IDタグの動作]
まず、図4を参照して、IDタグ10の動作について説明する。図4は、IDタグの識別情報送信動作を示すフローチャートである。
IDタグ10は、タグ端末22から間欠的に送信されているポーリング信号を通信I/F部11で受信した場合、あるいはIDタグ10に設けられているスイッチ(図示せず)などの操作に応じて、図4の識別情報送信動作を開始する。
【0027】
IDタグ10は、まず、識別情報生成部14により、記憶部13からタグIDを読み出すとともに(ステップ100)、逐次情報生成部12で生成された逐次情報を取得する(ステップ101)。
続いて、識別情報生成部14は、記憶部33から読み出した記憶部13から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、タグIDと逐次情報とから、入退室判定に用いる識別情報を生成する(ステップ102)。
【0028】
図5は、識別情報の構成例を示す説明図である。ここでは、タグID51が「19991008」という数字情報から構成されており、逐次情報52が「06281437」という日時情報から構成されている。この際、識別情報構成ルールが、タグIDと逐次情報を2桁ごとに交互に配置する旨を内容とする場合、識別情報生成部14は、識別情報構成ルールに基づいて、まず、タグID51と逐次情報52を2桁ごとの部分データ53に分解する。次に、識別情報生成部14は、これら部分データ53を交互に並び替えて連結することにより、「1906992810140837」という識別情報54を生成する。
【0029】
この際、タグID51や逐次情報52が数字やアルファベットなどの文字で構成されている場合には、これら文字の桁を単位として部分データ53へ分解してもよい。また、タグID51や逐次情報52が二進データ(ビット列)で構成されている場合には、これらビットを単位として部分データへ分解してもよい。
【0030】
この後、IDタグ10は、電文処理部15により、識別情報生成部14で生成された識別情報を含む電文を生成し、通信I/F部11からタグ端末22へ送信する(ステップ103)。これにより、IDタグ10は、一連の識別情報送信動作を終了する。
【0031】
[制御装置の動作]
次に、図6を参照して、制御装置30の動作について説明する。図6は、制御装置の入退室判定動作を示すフローチャートである。
制御装置30は、タグ端末22で転送されたIDタグ10からの電文を通信I/F部31で受信した場合、図6の入退室判定動作を開始する。
【0032】
制御装置30は、まず、識別情報処理部34により、記憶部33から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、受信電文内の識別情報を部分データに分解し、これら部分データを並び替えて連結することにより、タグIDと逐次情報とを抽出する(ステップ110)。識別情報処理部34におけるタグIDと逐次情報の抽出処理については、図5の識別情報の構成手順を逆順に実行することになる。
【0033】
次に、制御装置30は、情報照合部35により、照合情報生成部32から照合情報を取得し(ステップ111)、この照合情報と識別情報処理部34で抽出した逐次情報とを、記憶部33から読み出した許容情報に基づいて比較する(ステップ112)。
【0034】
例えば、図5の例のように、逐次情報として識別情報送信時の時刻を用い、照合情報として電文受信時の時刻を用いる場合、許容情報として、正常なIDタグ10と正常な制御装置30との許容時差と、IDタグ10での識別情報送信時点から制御装置30での識別情報と照合情報との比較までに要する最大所要時間とを加えた正当な許容時間差を設定しておけばよい。これにより、逐次情報と照合情報の時刻差が許容情報の許容時間差以下であれば、受信電文は正当なものであると判断でき、逐次情報と照合情報の時刻差が許容情報の許容時間差より大きい場合、受信電文は、傍聴後に再送信された不正なものであると判断できる。
【0035】
したがって、逐次情報と照合情報の差異が許容情報で規定された許容誤差範囲外である場合(ステップ113:NO)、情報照合部35は、入退室不可の旨を通信I/F部31からタグ端末22へ通知することにより、エラー処理を行う(ステップ114)。これに応じて、タグ端末22では、入退室不可である旨を表示して利用者に通知することになる。
【0036】
一方、逐次情報と照合情報の差異が許容情報で規定された許容誤差範囲内である場合(ステップ113:YES)、制御装置30は、ID判定部36により、記憶部33の正規タグIDを参照して、識別情報処理部34で抽出されたタグIDの正当性を確認する(ステップ115)。
ここで、識別情報処理部34で抽出されたタグIDが、記憶部33の正規タグIDとして登録されていない場合(ステップ115:NO)、ID判定部36は、入退室不可の旨を通信I/F部31からタグ端末22へ通知することにより、エラー処理を行う(ステップ114)。これに応じて、タグ端末22では、入退室不可である旨を表示して利用者に通知することになる。
【0037】
一方、識別情報処理部34で抽出されたタグIDが、記憶部33の正規タグIDとして登録されている場合(ステップ115:YES)、ID判定部36は、入退室可能の旨を通信I/F部31からタグ端末22へ通知するとともに、タグ端末22と対応する電気錠23へ開錠を指示する(ステップ116)。これに応じて、タグ端末22では、入退室可能である旨を表示して利用者に通知するとともに、電気錠23が一時的に開錠され、利用者がドア21から部屋20の入退室を行うことが可能となる。
【0038】
[実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、IDタグ10において、入退室判定時に、識別情報構成ルールに基づいて、入退室判定時ごとに異なる逐次情報とタグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより識別情報を生成してタグ端末22へ送信し、制御装置30において、タグ端末22から受信した識別情報を識別情報構成ルールに基づいて部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することによりタグIDと逐次情報とを抽出し、この逐次情報と入退室判定時ごとに異なる照合情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定し、この照合成功に応じて、識別情報から取得したタグIDに基づき入退室可否を判定している。
【0039】
これにより、IDタグ10において、入退室判定時ごとに異なる逐次情報を用いてタグIDをスクランブルした識別情報を生成することができ、高度な暗号化技術を用いて両者間で相互認証を行うことなく、容易に抽出不可能な状態でIDタグ10から制御装置30へタグIDを通知することが可能となるとともに、同一入退室判定時に生成された識別情報か否かを制御装置30で容易に判定することが可能となる。したがって、コスト増大や判定速度の低下を招くことなく、傍聴したタグ情報による不正な入退室を抑止することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、具体的な構成として、IDタグ10において、入退室判定時点を示す時刻情報からなる逐次情報を用いて識別情報を生成し、制御装置30において、入退室判定時点を示す時刻情報からなる照合情報と逐次情報との時刻差と正当な許容時間差とを比較することにより、照合の成否を判断している。
【0041】
このため、逐次情報の時刻と照合情報の時刻との時刻差が許容時間差より大きい場合、入退室不可と判定される。したがって、IDタグ10から送信された識別情報が傍聴された後に再送信された場合には、逐次情報の時刻と照合情報の時刻との時刻差が許容時間差より大きくなって、識別情報と照合情報の照合が失敗するため、入退室不可と判定することが可能となる。
【0042】
[実施の形態の拡張]
以上では、逐次情報および照合情報の具体例として、入退室判定時の時刻情報を用いた場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、IDタグ10と制御装置30との間で、入退室判定の同一性を確認できる情報であれば、時刻情報以外の情報を逐次情報および照合情報として用いてもよい。
【0043】
入退室判定の同一性を確認できる情報の具体例としては、制御装置30の照合情報生成部32で生成する照合情報がある。この場合、照合情報は制御装置30で生成されるため、例えば一定周期(ポーリング)やランダム周期などで規定される各入退室判定区間の開始時に、制御装置30の照合情報生成部32で照合情報を生成して、タグ端末22からIDタグ10へ送信すればよい。IDタグ10では、通信I/F部11により照合情報を受信して記憶部13に逐次保存しておき、入退室判定時において、逐次情報生成部12により、記憶部13から読み出した最新の照合情報を逐次情報として出力すればよい。
【0044】
これにより、制御装置30の情報照合部35において、IDタグ10からの逐次情報と照合情報生成部32から取得した照合情報とを照合する場合、IDタグ10から正当な識別情報が届いた場合には、その逐次情報と照合情報とが一致するため、両者の照合が成功する。一方、IDタグ10から送信された識別情報が傍聴された後に再送信された場合には、その逐次情報と照合情報とが不一致となるため、両者の照合が失敗し、入退室不可と判定される。
【0045】
この例では、制御装置30からIDタグ10へ送信された照合情報は、制御装置30の情報照合部35における逐次情報との照合時に再び同じものが用いられるため、許容誤差は存在しない。したがって、照合情報としては時刻情報以外の情報、例えば各入退室判定区間ごとに発生させた乱数を用いてもよい。
なお、入退室判定区間の切り替わり時に、入退室判定が行われた場合を想定して、許容情報で指定されている数だけ遡った過去の入退室判定区間で送信した各照合情報を記憶部33に保存しておき、これら各照合情報についても、情報照合部35において逐次情報と照合するようにしてもよい。
【0046】
また、以上の例では、制御装置30で照合情報を生成する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、タグ端末22やその他の外部装置で生成した照合情報を入退室判定区間ごとに、IDタグ10や制御装置30へそれぞれ送信するようにしてもよい。例えば、通信回線L1に外部装置を接続して、タグ端末22を介してIDタグ10へ照合情報を送信するとともに、制御装置30へ照合情報を送信してもよい。あるいは、通信回線L1とは別個に設けた外部装置から無線通信で照合情報を送信し、IDタグ10でこれを受信するとともに、タグ端末22で受信した照合情報を制御装置30へ転送するようにしてもよい。
【0047】
また、本発明で用いるIDタグ10に計時部を内蔵する場合、計時部で計時する時刻を調整する必要がある。この時刻調整方法については、例えば図7に示すように、IDタグに時刻表示用のLCDと時刻調整操作用の操作ボタンを設け、利用者がIDタグの時刻を調整するようにしてもよい。このほか、IDタグ10がタグ端末22と通信を行う際、タグ端末22から通知された時刻情報を受信して、自己の計時部で計時する時刻を調整するようにしてもよい。これにより、LCDや操作ボタンを省くことができ、安価で小型あるいはカード状の薄型のIDタグを提供できる。また、利用者による時刻の改ざんを防止でき、高いセキュリティ性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】IDタグの構成例を示すブロック図である。
【図3】制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】IDタグの識別情報送信動作を示すフローチャートである。
【図5】識別情報の構成例を示す説明図である。
【図6】制御装置の入退室判定動作を示すフローチャートである。
【図7】IDタグの外観図である。
【符号の説明】
【0049】
100…入退室管理システム、10…IDタグ、11…通信I/F部、12…逐次情報生成部、13…記憶部、14…識別情報生成部、15…電文処理部、20…部屋、21…ドア、22…タグ端末、23…電気錠、30…制御装置、31…通信I/F部、32…照合情報生成部、33…記憶部、34…識別情報処理部、35…情報照合部、36…ID判定部、51…タグID、52…逐次情報、53…部分データ、54…識別情報、L1…通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め記録されているタグIDを含む識別情報を入退室判定時に無線送信するIDタグと、このIDタグからの識別情報を受信し通信回線を介して前記制御装置へ転送するタグ端末と、前記タグ端末から受信した前記識別情報に含まれるタグIDに基づき入退室可否を判定する制御装置とを備える入退室管理システムであって、
前記IDタグは、
前記識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを記憶する第1の記憶部と、
少なくとも前記入退室判定時ごとに異なる内容の逐次情報を生成する逐次情報生成部と、
前記入退室判定時に、前記第1の記憶部から読み出した前記識別情報構成ルールに基づいて、前記逐次情報生成部で生成した当該入退室判定時における逐次情報と前記タグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより前記識別情報を生成する識別情報生成部と
を備え、
前記制御装置は、
前記識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを記憶する第2の記憶部と、
少なくとも前記入退室判定時ごとに前記逐次情報と同じ内容の照合情報を生成する照合情報生成部と、
前記第2の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、受信した前記識別情報を部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより、前記タグIDと前記逐次情報とを抽出する識別情報処理部と、
前記照合情報生成部で生成した当該入退室判定時における照合情報と前記識別情報処理部で抽出した前記逐次情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定する情報照合部と、
前記情報照合部での照合成功に応じて、前記識別情報処理部で抽出した前記タグIDに基づき入退室可否を判定するID判定部と
を備える
ことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の入退室管理システムにおいて、
前記逐次情報生成部は、時刻を計時する計時部からなり、
前記識別情報生成部は、当該入退室判定時点を示す時刻情報からなる前記逐次情報を前記逐次情報生成部から取得し、
前記照合情報生成部は、時刻を計時する計時部からなり、
前記情報照合部は、当該入退室判定時点を示す時刻情報からなる前記照合情報を前記照合情報生成部から取得し、前記照合情報と前記逐次情報との時刻差と正当な許容時間差とを比較することにより、前記照合の成否を判断する
ことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項3】
予め記録されているタグIDを含む識別情報を入退室判定時に無線送信するIDタグと、このIDタグからの識別情報を受信し通信回線を介して前記制御装置へ転送するタグ端末と、前記タグ端末から受信した前記識別情報に含まれるタグIDに基づき入退室可否を判定する制御装置とを備える入退室管理システムで用いられる入退室管理方法であって、
前記IDタグが、
前記識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを第1の記憶部で記憶する記憶ステップと、
少なくとも前記入退室判定時ごとに異なる内容の逐次情報を生成する逐次情報生成ステップと、
前記入退室判定時に、前記第1の記憶部から読み出した前記識別情報構成ルールに基づいて、前記逐次情報生成ステップで生成した当該入退室判定時における逐次情報と前記タグIDとをそれぞれ部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより前記識別情報を生成する識別情報生成ステップと
を実行し、
前記制御装置が、
前記識別情報の構成を示す識別情報構成ルールを第2の記憶部で記憶する記憶ステップと、
少なくとも前記入退室判定時ごとに前記逐次情報と同じ内容の照合情報を生成する照合情報生成ステップと、
前記第2の記憶部から読み出した識別情報構成ルールに基づいて、受信した前記識別情報を部分データに分解した後、これら部分データを並び替えて連結することにより、前記タグIDと前記逐次情報とを抽出する識別情報処理ステップと、
前記照合情報生成ステップで生成した当該入退室判定時における照合情報と前記識別情報処理ステップで抽出した前記逐次情報とを照合し、この照合失敗に応じて入退室不可と判定する情報照合ステップと、
前記情報照合ステップでの照合成功に応じて、前記識別情報処理ステップで抽出した前記タグIDに基づき入退室可否を判定するID判定ステップと
を実行する
ことを特徴とする入退室管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−79836(P2010−79836A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250402(P2008−250402)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】