説明

共凝集阻害剤

【課題】歯肉炎や歯周炎などの歯周病およびう蝕を有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療するのに有用な剤を提供すること。
【解決手段】ボダイジュ、シナモン、ブドウ、チャノキ、バラ、クランベリー、カカオ、リンゴ、イチョウ、ビワおよび月見草(メマツヨイグサ)より選ばれる植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスからなる口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤または食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤に関する。さらに詳しくは、歯肉炎、歯周炎などの歯周病またはう蝕の予防、進行の阻害もしくは遅延、または治療に有用な、口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤、ならびにかかる剤を配合してなる口腔用組成物および食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内には300種を超える細菌が存在し、歯面などの表面では菌の凝集体(プラーク)を作って生存している。このような他菌種間の付着は共凝集と呼ばれている。このプラークの中には、う蝕や歯周病を引き起こす特定の病原性細菌が、他の菌と同様に様々な菌と共凝集して定着しているので、口腔内細菌間の共凝集を阻害することは、う蝕や歯周病の予防や治療にとって重要である。共凝集は菌によりいくつかのメカニズムが知られている。例えば、う蝕の原因菌である、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は、先に歯面に付着しているストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)の線毛様構造を介して共凝集することが知られている。また、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)は、レクチン様タンパク質を介して様々な菌と共凝集し、凝集体の中心的な役割を果たしていると言われている。歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、線毛を介して共凝集する。従って、レクチン様タンパク質や線毛などの重要な共凝集因子を阻害することで、多くの口腔内細菌の共凝集を阻害できると期待される。
【0003】
ここで、「共凝集」とは、2種類以上の細菌が結合する現象をいう。プラークは、多くの細菌が複雑に共凝集を起こして構成されるものであり、複数の菌の結合は、それらの細菌が有するレクチン様タンパク質、線毛などを介して起こる。
【0004】
したがって、口腔内細菌の共凝集を阻害することができれば、歯垢の形成自体を根本的に阻害することができ、したがって、歯垢から放出される種々のう蝕、歯周病の病原因子も阻害することができ、う蝕や歯周病を有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療することができると考えられる。
【0005】
一方、これまでに、天然ポリフェノールを含む種々の植物の溶媒抽出物が抗う蝕および抗歯周病効果を有することが知られている。
バラ属植物の抽出物では、グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)阻害作用(特許文献1)、さらには歯周病原菌およびう蝕原因菌抑制作用(特許文献2)が報告されている。
【0006】
ビワの葉抽出物では、グルコシルトランスフェラーゼ阻害作用(特許文献3および特許文献4)およびメチオナーゼやプロテアーゼ阻害剤(特許文献5)としての効果が報告されている。また、GTF阻害効果を有するビワの葉抽出物と炭素数4または5の糖アルコールとを含有する口腔用組成物が報告されている(特許文献6)。
【0007】
ブドウ果皮色素およびカカオ色素では、偏性嫌気性菌抑制作用が報告されている(特許文献7)。カカオハスク抽出物では、コラゲナーゼ阻害作用(特許文献8)や歯垢形成抑制作用(特許文献9および特許文献10)が報告されている。
【0008】
緑茶抽出物では、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用(特許文献11)およびプロテアーゼ阻害作用(特許文献12)が報告されている。ストレプトコッカス・ミュータンスに対する特異的抗体と茶抽出物の抗う蝕作用が報告されている(特許文献13)。緑茶ポリフェノールの抗ムシ歯作用が報告されている(特許文献14)。茶葉の熱水抽出物を含有するうがい液の口内菌抑制作用が報告されている(特許文献15)。茶ポリフェノール、ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、フッ素からなる群から選択される低う蝕性栄養組成物が報告されている(特許文献16)。チャノキ抽出物では、抗歯周病および口臭予防作用が報告されている(特許文献17)。また、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートおよびガロカテキンガレートが歯周病の原因菌の口腔内細胞への付着に対して阻害作用を示すことが報告されている(特許文献18)。カテキン類の抗歯周病作用が報告されている(特許文献19)。エピガロカテキンガレートの歯垢除去作用および歯石沈着防止作用が報告されている(特許文献20)。ウーロン茶抽出物では、グルコシルトランスフェラーゼ阻害作用が報告されている(特許文献21)。
【0009】
クランベリー抽出物では、泌尿器系疾患予防治療用組成物として報告されている(特許文献22)。
リンゴポリフェノールでは、メチオナーゼおよびプロテアーゼ阻害剤としての効果が報告されている(特許文献5)。また、GTF阻害効果を有するリンゴ抽出物やリンゴタンニンと炭素数4または5の糖アルコールとを含有する口腔用組成物が報告されている(特許文献6)。
【0010】
イチョウ葉抽出物では、口臭の発生に起因するメチオナーゼおよびプロテアーゼの阻害効果(特許文献5)や歯周病における歯周組織破壊に関与するプロテアーゼの阻害効果(特許文献23)が報告されている。
シナモン抽出物では、抗菌香料組成物および口臭抑制香料組成物として報告されている(特許文献24)。
月見草では、月見草種子油を必須成分として含有する、う蝕予防効果を有する口腔用組成物が報告されている(特許文献25)。
【0011】
ボダイジュ抽出物では、コラゲナーゼ阻害作用(特許文献26)、歯周病原菌またはう蝕原因菌抑制作用(特許文献2)、さらには抗菌香料組成物および口臭抑制香料組成物として報告されている(特許文献24)。
【0012】
【特許文献1】特許第2887696号
【特許文献2】特開平7−316064号公報
【特許文献3】特許第2763824号
【特許文献4】特開平4−95020号公報
【特許文献5】特開2002−3353公報
【特許文献6】特開2000−297022公報
【特許文献7】特開2003−89641公報
【特許文献8】特開平3−44331号公報
【特許文献9】特許第2527788号
【特許文献10】特許第3112794号
【特許文献11】特開平11−302142号公報
【特許文献12】特開2003−335648公報
【特許文献13】特許第1948510号
【特許文献14】特許第2588031号
【特許文献15】特許第2667422号
【特許文献16】特許第3396009号
【特許文献17】特開平3−218320号公報
【特許文献18】特開平5−944号公報
【特許文献19】特公平7−25670号公報
【特許文献20】特公平8−13738号公報
【特許文献21】特開平6−263646号公報
【特許文献22】特開2001−342142公報
【特許文献23】特開2001−89386公報
【特許文献24】特開2004−18470公報
【特許文献25】特開昭61−268613号公報
【特許文献26】特開2003−12531公報
【0013】
【非特許文献1】最新口腔微生物学、奥田克爾、一世出版、平成14年3月10日発行、第372〜384頁
【非特許文献2】Microbiology and Molecular Biology Reviews, Sept. 2002, p.486-505.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、現在までに、このような口腔内細菌の共凝集を阻害することにより、歯周病およびう蝕を根本的かつ有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療することについての提案はまったく見当たらない。
また、現在、歯周病やう蝕予防の目的で抗菌剤、GTF阻害剤、プロテアーゼ阻害剤が使用されている。しかし、抗菌剤を使用しても、細菌が単独で浮遊している場合は高い殺菌作用を示すが、多数の細菌の凝集体であるプラーク内に浸透して殺菌することは容易でなく、死滅した細菌であっても、細菌の凝集における核となる可能性がある。さらに、GTF阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤を配合した歯磨剤などを使用しても、薬効成分の口腔内滞留時間が短く、持続的な阻害効果を期待することは容易でなく、また、安定化が難しく配合に限定が生じてしまうことや、反応特異性の高さから有効性が限定されるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明者らは、口腔内細菌の共凝集を阻害することにより歯周病およびう蝕を根本的かつ有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療し得る剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、ある種の植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスがかかる作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、ボダイジュ、シナモン、ブドウ、チャノキ、バラ、クランベリー、カカオ、リンゴ、イチョウ、ビワおよび月見草(メマツヨイグサ)からなる群より選ばれる1種または2種以上の植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスを含む、口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、口腔内細菌の共凝集を有効に阻害することができ、したがって共凝集によって発生する歯周病およびう蝕を有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療することができる。
【0018】
また、本発明の共凝集を阻害するための剤は、口腔内の細菌が凝集し、プラーク形成を始める初期の段階で阻害作用を示すことから、従来の歯周病およびう蝕予防剤よりもさらに高いバイオフィルム形成阻害能を有し得る。
また、植物抽出エキスを用いることは、抗菌剤などが多用され問題となっている薬剤耐性菌の出現がなく、人体への使用や食品への配合など幅広い用途で使用可能で、また環境中への放出などにおいて問題がないという有利な効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書で用いる「口腔内細菌」なる語は、口腔内に存在する細菌をいい、それらの病原性により、歯周病原菌、う蝕原因菌、さらにはそれら以外の細菌で、特に病原性を示さない常在性細菌に大きく分類される。本明細書中で用いる「歯周病原菌」なる語は、歯周病に関与することが知られている細菌をいい、例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、バクテロイデス・フォーサイサス(Bacteroides forsythus)、セレノモナス・スプチゲナ(Selenomonas sputigena)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)などのグラム陰性菌やトレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)などのスピロヘータがある。本明細書中で用いる「う蝕原因菌」なる語は、う蝕に関与することが知られている細菌をいい、例えば、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、さらには乳酸桿菌などのグラム陽性菌がある。常在性細菌は、宿主と共生関係を保っている細菌をいい、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius )、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)などがある。
【0020】
また、本明細書中で用いる「植物体」なる語は、植物を構成するいずれの組織をもいい、例えば、採取した全体の植物のほか、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、または種子もしくは全草などをいう。
【0021】
本発明の剤に用いる植物は、ポリフェノール類を含有する植物であれば特に限定されるものではないが、例えば、ボダイジュ(例えばTilia cordata Mill)、シナモン(例えばCinnamomum cassia Blume)、ブドウ(例えばVitis vinifera L. (Vitaceae))、チャノキ(例えばThea sinensis L. (Theaceae))、バラ(例えばRosa centifolia L.)、クランベリー(例えばVaccinium L.)、カカオ(例えばTheobroma cacao)、リンゴ(例えばMalus domestica Borkhausen (Rosaceae)、イチョウ(例えばGinkgo biloba L. (Ginkgoaceae))、ビワ(例えばEriobotrya japonica Lindley(Rosaceae))および月見草(例えばOenothera biennis L.)などの植物が好ましい。なかでも、ボダイジュ、シナモン、ブドウ、チャノキおよびバラは、高い共凝集阻害効果を示すので特に好ましい。これらの植物は、通常、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、または種子もしくは全草などの植物体を乾燥し粉砕した乾燥粉末の形態または溶媒抽出エキスの形態で本発明の剤に用いることができる。また、溶媒抽出エキスとしては、上記の植物体または乾燥粉末を、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、ブタノール、アセトン、ピリジン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、四塩化炭素などから選ばれる1種または2種以上の溶媒に浸漬し、1〜7日静置するか、あるいは0℃〜200℃にて適当な時間攪拌して抽出し、ろ過して得られた液体を濃縮乾固することにより得ることができる。
【0022】
本発明の剤においては、かかる植物体の乾燥粉末および/または溶媒抽出エキスの1種または2種以上を組み合わせて配合することにより、所望の効果を得ることができる。
【0023】
かかる植物体の市販されている乾燥粉末および溶媒抽出エキスとしては、
ボダイジュのボダイジュエキスパウダーMF(丸善製薬株式会社)、ボダイジュ抽出液BG(丸善製薬株式会社)、シナノキ抽出液BG(丸善製薬株式会社)、オーデアロマボダイジュ(一丸ファルコス株式会社)、ファテレンEG−023(一丸ファルコス株式会社/Laboratories Galeniques Vernin)、ファテレンEGX−244<BP>(一丸ファルコス株式会社/INDENA Inc.)、ファルコレックスボダイジュ(一丸ファルコス株式会社)、チエール(伊那貿易商会/Laserson & Sabetay)、ベゲトール水溶性ボダイジュ(サントレード)、ボダイジュエキストラクト(サントレード/ガテフォッセ)、ハーバソルエキストラクトライムブラッサム(山本香料/コスメトケムAG)、フィテレンEGX−244<PG>(一丸ファルコス株式会社/Laboratories Galeniques Vernin)、西洋菩提樹抽出液BG(香栄興業/エスペリス)、ボダイジュウォーター(長谷川香料株式会社)、ボダイジュ水K(香栄興業)、エキストラポンライムブロッサム(ドラゴコジャパン)、エムエスエキストラクト(丸善製薬株式会社)、フィトデセンシタイザー(一丸ファルコス株式会社)、ライムブロッサムCL(ドラゴコジャパン)、Lindeu Extract(日本シイベルヘグナー)、HBシナノキエキス(山本香料株式会社)、HWシナノキエキス(山本香料)、Lライムブロッサムディストレート(ドラゴコジャパン)、VEGETOL LINDEN GR374 HYDRO(池田物産)、VEGETOL LINDEN MCF762 HYDRO(池田物産)など;
シナモンのシナモンポリフェノールTH(長谷川香料株式会社)、ケイヒエキス(小城製薬株式会社)、ケイヒ抽出液(丸善製薬株式会社)など;
ブドウの粉末サンレッドNo.2(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、ハイレッドG−150(ダイワ化成)、ブドウ果皮抽出色素(日本バイオコン)など;
チャノキのサンフラボンP(太陽化学株式会社)、緑茶抽出物MF(丸善製薬株式会社)、サンフェノンCK(太陽化学株式会社)、サンフェノン100S(太陽化学株式会社)、サンフェノンBG(太陽化学株式会社)、カメリアエキスAS(太陽化学株式会社)、サンフード水性(三共株式会社)、サンフード末(30%)茶抽出物(三共株式会社)、サンフード100S(三共株式会社)、サンフードCD(三共株式会社)、テアフラン90S(株式会社伊藤園)、ポリフェノンCH(東京フードテクノ株式会社)、ポリフェノン70A(東京フードテクノ株式会社)、ポリフェノンPF(東京フードテクノ株式会社)、チャノキ(ウーロン茶)のサンウーロン粉末(サントリー株式会社)、ウーロン茶抽出液(丸善製薬株式会社)など;
バラのバラの花びらエキス末(日本油脂株式会社)など;
クランベリーのクランベリーパウダー(キッコーマン株式会社)など;
カカオのカカオ抽出物(株式会社ロッテ中央研究所)など;
リンゴのアップルフェノン粉末50(ニッカウヰスキー株式会社)、アップルフェノンSH 100%粉末(ニッカウヰスキー株式会社)、アップルフェノン5水性(ニッカウヰスキー株式会社)、ベゲトール水溶性アップル(サントレード)、ファルコレックスリンゴB(一丸ファルコス株式会社)、リンゴ抽出液BG(丸善製薬株式会社)、リンゴ抽出液G(丸善製薬株式会社)、ホーモフルーツアップル(香栄興業)など;
イチョウのイチョウハエキスパウダー(一丸ファルコス株式会社)、ファルコレックス イチョウ(一丸ファルコス株式会社)、イチョウ葉エキスパウダー(日本粉末薬品株式会社)、イチョウ葉抽出液(丸善製薬株式会社)、イチョウ葉抽出液BG(丸善製薬株式会社)、イチョウ葉抽出液PG80(丸善製薬株式会社)、イチョウ抽出液(香栄興業)、イチョウ抽出液ET−50(香栄興業)など;
ビワのビワリーフエキスパウダーW(一丸ファルコス株式会社)、ファルコレックス ビワリーフE(一丸ファルコス株式会社)、ファルコレックス ビワリーフB(一丸ファルコス株式会社)、ビワ抽出液−J(丸善製薬株式会社)、ハーベックスビワ抽出液(香栄興産)、ビワ抽出液BG(丸善製薬株式会社)、ビワ抽出液BG100(丸善製薬株式会社)、ビワ抽出液SQ(丸善製薬株式会社)、ビワ抽出液W(丸善製薬株式会社)、ビワ抽出液LA(丸善製薬株式会社)など;
月見草のルナホワイトB(一丸ファルコス株式会社)、月見草エキス−P(オリザ油化株式会社)、月見草エキス−WSPS(オリザ油化株式会社)などがある。
【0024】
本発明の歯周病原菌の共凝集を阻害するための剤は、乾燥粉末または溶媒抽出エキスをそのまま用いてもよく、溶媒抽出エキスが液体の場合は減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段により濃縮、あるいは乾固して用いてもよい。また、向流分配法、液体クロマトグラフィーなどを用いて精製して使用することもできる。これらの植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスは、その産地、製法、形態、成分組成などには特に限定はなく、通常の市販品またはその加工品を使用することができる。
【0025】
また、本発明の口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤は、口腔用組成物または食品組成物の有効成分として配合することができ、かかる口腔用組成物または食品組成物においては、上記の植物体の乾燥粉末および/または溶媒抽出エキスの1種または2種以上を組み合わせて、組成物の全量に対して乾燥重量として0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%配合することにより、口腔内細菌の共凝集阻害効果が得られ、その結果、歯周病およびう蝕を有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延し、または治療することができる。剤の配合量が0.001重量%よりも少ない場合は満足する効果が得られず、一方10重量%よりも多い場合は組成物の着色・変色の原因となるので好ましくない。
かかる口腔用組成物または食品組成物も本発明の範囲内である。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、例えば、練歯磨、または液体歯磨剤、マウスウォッシュ、リンスなどの液体剤型や、低粘度ジェル、歯磨剤、シート状剤などの形態、さらには、口腔用パスタ、クリーム、うがい液、軟膏剤、貼付剤、口腔用ゲル、糖衣錠などに処方化することができる。
【0027】
また、本発明の食品組成物は、例えば、トローチ、タブレット、カプセル、顆粒、粉末ジュース、飲料、チューインガム、キャンディ、グミキャンディ、ゼリー飲料などの形態にすることができる。
【0028】
本発明の口腔用組成物および食品組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、可溶化剤、界面活性剤、香味剤、甘味剤、粘結剤、研磨剤、湿潤剤、pH調整剤、賦形剤、滑沢剤、懸濁剤、皮膜形成物質、矯味剤または矯臭剤、着色料、保存剤、その他ビタミン類などの医薬組成物や口腔用組成物に用いられる薬効成分、食品処方設計に通常用いられる添加剤や食品素材などを常法に従って配合することができる。
【0029】
可溶化剤としては、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどを配合することができる。この中で、特に、エタノールおよびプロピレングリコールが、使用感の点で好ましい。
【0030】
可溶化剤の配合量は、本発明の口腔用組成物または食品組成物の全量に対して0.1〜30重量%程度が好ましく、1〜10重量%程度が特に好ましい。0.1重量%に満たないと、充分な可溶化力が得られない場合があり、30重量%を超えると、使用感の点で好ましくない。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。
【0032】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルサルコシン酸ナトリウムなどのアシルサルコシン酸塩、アシルグルタミン酸塩、パルミトイルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン塩、N−メチル−N−アシルアラニン塩などのアシルアミノ酸塩、ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0033】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン付加モル数が8〜10であってアルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤、アルキルグリコシドなどが挙げられる。
【0034】
両性イオン界面活性剤としては、例えば、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−[アルキル(12,14)オキシ−2−ヒドロキシプロピル]−L−アルギニン塩酸塩、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0035】
これらの界面活性剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0036】
香味剤としては、例えば、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油などを配合することができる。
【0037】
これらの香味剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、組成物全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度である。
【0038】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒドなどを配合することができる。
【0039】
これらの甘味剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、組成物全量に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0040】
粘結剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルヒドロキシセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、カラギーナンなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機粘結剤などを配合することができる。
【0041】
これらの粘結剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して10.0重量%以下である。
【0042】
研磨剤としては、例えば、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、水酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリンなどを配合することができる。
【0043】
これらの研磨剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、組成物全量に対して1〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0044】
湿潤剤としては、例えば、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチットなどを配合することができる。
【0045】
これらの湿潤剤は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して3〜70重量%である。
【0046】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、パントテン酸、リン酸塩、リンゴ酸、クエン酸などを配合することができる。
【0047】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンCおよびその塩、ビタミンE、ビタミンAならびにβ−カロテン、ビタミンD群、ビタミンK群、ビタミンPなどを配合することができる。
【0048】
賦形剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、デンプン、ブドウ糖、結晶性セルロース、マンニット、ソルビット、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、パラチノース、マルチトール、トレハロース、ラクチトール、還元澱粉糖、還元イソマルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ガムベース、アラビアガム、ゼラチン、セチルメチルセルロース、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸、カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムなどを配合することができる。
【0049】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを配合することができる。
【0050】
懸濁剤としては、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、パセリ油、パセリ種子オイル、乳酸カルシウム、紅花油、大豆リン脂質などを配合することができる。
【0051】
皮膜形成物質としては、例えば、酢酸フタル酸セルロースなどの炭水化物誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチルなどのアクリル系共重合体、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチルなどのメタアクリル系共重合体などを配合することができる。
【0052】
矯味剤または矯臭剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビアエキス、グラニュー糖、粉糖、水飴、食塩、オレンジ油、水溶性カンゾウエキス、メントール、ユーカリ油などを配合することができる。
【0053】
薬効成分としては、例えば、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなどのアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫などのフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物などを配合することができる。
【0054】
これらの成分は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0055】
上述した添加剤は、特に断らない限り、目的とする用途や、組成物の形態、使用方法などに応じて、適宜含量を調整して配合することによりう蝕や歯周病の予防または治療効果を一層高めることができる。
【実施例】
【0056】
試験例
つぎに試験例および処方例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明をこれらに限定することを意図するものではない。また、[%]は特に断らない限り[重量%]である。
試験例1
(1)供試試料
ボダイジュ ボダイジュエキスパウダーMF(丸善製薬株式会社)
シナモン シナモンポリフェノールTH(長谷川香料株式会社)
ブドウ 粉末サンレッドNo.2(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
チャノキ(緑茶) サンフラボンP(太陽化学株式会社)
チャノキ(ウーロン茶)サンウーロン粉末(サントリー株式会社)
バラ バラの花びらエキス末(日本油脂株式会社)
クランベリー クランベリーパウダー(キッコーマン株式会社)
カカオ カカオ抽出物(株式会社ロッテ中央研究所)
リンゴ アップルフェノン粉末50(ニッカウヰスキー株式会社)
イチョウ イチョウハエキスパウダー(一丸ファルコス株式会社)
ビワ ビワリーフエキスパウダーW(一丸ファルコス株式会社)
月見草 ルナホワイトB(一丸ファルコス株式会社)
【0057】
赤シソ 明治赤シソポリフェノール(明治製菓株式会社)
ドクダミ ファルコレックス ドクダミE
シソ シソの実エキス-PO(オリザ油化株式会社)
アロエベラ ベラゲルパウダーF(一丸ファルコス株式会社)
タンニン酸 タンニン酸AL(富士化学工業株式会社)
黒豆 クロマニン-10(株式会社 素材機能研究所)
ブルーベリー ブルーベリーエキス末(松浦薬業株式会社)
赤キャベツ 粉末サンレッドRC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
紫コーン 粉末サンレッドNo.5(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
ゲンノショウコ ファルコレックス ゲンノショウコB(一丸ファルコス株式会社)
ウコン ファルコレックス ウコンE(一丸ファルコス株式会社)
タイム ファルコレックス タイムE(一丸ファルコス株式会社)
シャクヤク ファルコレックス シャクヤクE(一丸ファルコス株式会社)
ルイボス ファルコレックス ルイボスB(一丸ファルコス株式会社)
スイカズラ ファルコレックス スイカズラFB(一丸ファルコス株式会社)
【0058】
オウレン ファルコレックス オウレンE(一丸ファルコス株式会社)
ヒバマタ ファルコレックス ヒバマタ(一丸ファルコス株式会社)
サイシン ファルコレックス サイシンE(一丸ファルコス株式会社)
チョウジ ファルコレックス チョウジ(一丸ファルコス株式会社)
クマザサ ファルコレックス クマザサE(一丸ファルコス株式会社)
セージ ファルコレックス セージE(一丸ファルコス株式会社)
ボタンピ ファルコレックス ボタンピE(一丸ファルコス株式会社)
カノコソウ ファルコレックス カノコソウE(一丸ファルコス株式会社)
【0059】
ウイキョウ ファルコレックス ウイキョウME(一丸ファルコス株式会社)
シコン シコニックス リキッドBG(一丸ファルコス株式会社)
トウキ トウキ リキッド(一丸ファルコス株式会社)
オウバク オウバク リキッドE(一丸ファルコス株式会社)
チンピ チンピ リキッド(一丸ファルコス株式会社)
ニンニク ガリオンゼット(一丸ファルコス株式会社)
シラカバ シラカバ抽出液(丸善製薬株式会社)
バーチ エキストラクト(一丸ファルコス株式会社)
【0060】
コケモモ コケモモ実エキスパウダー(日本粉末薬品株式会社)
ハマメリス ハマメリス抽出液20(丸善製薬株式会社)
クロレラ ビオセルアクト クロレラB(一丸ファルコス株式会社)
オタネニンジン シンホングギニシンLV(一丸ファルコス株式会社)
オウゴン オウゴン リキッドE(一丸ファルコス株式会社)
ヨモギ ヨモギ乾燥エキスF(丸善製薬株式会社)
【0061】
これらの各供試試料を共凝集バッファー[トリスヒドロキシメチルアミノメタン(1mmol/L)、塩化カルシウム(0.1mmol/L)、塩化マグネシウム(0.1mmol/L)、塩化ナトリウム(0.15mol/L)、アジ化ナトリウム(0.02%)、pH8.0]に溶解し、それぞれ1.0、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001%(wt/wt)水溶液を作製し、試験液とした。
【0062】
(2)供試菌
フゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC25586(F.n)
アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス Y4(A.a)
ポルフィロモナス・ジンジバリス(臨床分離株)(P.g)
【0063】
P.gおよびA.aをトリプチケース・ソイ・ブロス[酵母抽出物(1mg/mL)、ビタミンK(0.5mg/L)、ヘミン(5mg/L)を添加]培地に植菌し、37℃で48時間嫌気培養した。F.nは、GAMブイヨン培地に植菌し、37℃で48時間嫌気培養した。それぞれの培養液を遠心分離(7000rpm、10分、4℃)し、菌体を得た。これらの菌体に共凝集バッファー[トリスヒドロキシメチルアミノメタン(1mmol/L)、塩化カルシウム(0.1mmol/L)、塩化マグネシウム(0.1mmol/L)、塩化ナトリウム(0.15mol/L)、アジ化ナトリウム(0.02%)、pH8.0]を添加し、遠心分離(7000rpm、10分、4℃)し、菌体を洗浄した。得られた菌体に共凝集バッファーを添加し懸濁後、注射針(23G)に2回通過させ、吸光度(400nm)を1.5±0.1(2〜4×10cells/mL)に調整した。これら懸濁液を菌液とした。
【0064】
(3)共凝集阻害活性の測定方法
共凝集とは、違う2つ以上の細菌を合わせることにより得られる凝集物である。実験においては、P.gおよびA.a、F.nおよびA.aの2通りの組み合わせで共凝集を誘導した。白濁した2菌株の菌液を0.5mLずつ、さらに試験液0.5mLをフタ付きバイアル(15m/m×45m/m NICHIDEN−RIKA)に添加し、10秒間激しく攪拌後、100回転/分で30分間攪拌した。なお、2菌株の菌液を0.5mLずつ、さらに共凝集バッファー0.5mLを混合したものを対照とした。共凝集阻害の判定は、対照と同等に菌液が透明で菌の凝集体が沈殿した場合(共凝集体形成)を阻害効果なしとし、菌液が白濁し、凝集体が生じない場合を阻害効果ありとして肉眼で判定した。共凝集阻害を示す最小の試験液の濃度を最小共凝集阻害濃度(Z%)とし、Z≦1.0を○、1.0<Zを×として判定した。n=2で2回試験を行い、得られた最小共凝集阻害濃度結果の平均値を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表1から明らかなように、検討した多くの植物体の抽出物のうち、ボダイジュ、シナモン、ブドウ、バラ、クランベリー、カカオ、リンゴ、イチョウ、ビワおよび月見草(メマツヨイグサ)の植物体の上記したいずれの市販されている乾燥粉末または溶媒抽出エキス、緑茶およびウーロン茶の乾燥粉末にも、口腔内細菌の共凝集を特異的に阻害する効果が認められた。一方、表1中の赤シソからヨモギの植物体の上記したすべての市販されている乾燥粉末または溶媒抽出エキスに、口腔内細菌の共凝集を阻害する効果は認められなかった。
【0068】
つぎに、口腔内細菌の共凝集阻害効果が実際に認められた本発明の共凝集阻害剤を、以下の口腔用組成物および食品組成物に処方した。
【0069】
処方例1 マウスウォッシュ
以下の処方により、常法に従い、マウスウォッシュを製造した。
成分名 配合量(%)
グリセリン 15.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 4.0
ポリエチレングリコール400 3.0
香料 0.1
サッカリンナトリウム 0.01
塩化セチルピリジニウム 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.02
フッ化ナトリウム 0.05
ボダイジュエキスパウダーMF(丸善製薬株式会社) 0.05
精製水 残部

合計 100.0
得られたマウスウォッシュについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0070】
処方例2 液体歯磨剤
以下の処方により、常法に従い、液体歯磨剤を製造した。
成分名 配合量(%)
ソルビット 10.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 5.0
香料 0.05
サッカリンナトリウム 0.01
グルコン酸クロルヘキシジン 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.02
フッ化ナトリウム 0.05
ルナホワイトB(一丸ファルコス株式会社) 1.00
精製水 残部

合計 100.0
得られた液体歯磨剤について、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0071】
処方例3 低粘度ジェル
以下の処方により、常法に従い、低粘度ジェルを製造した。
成分名 配合量(%)
ソルビット 10.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
香料 0.2
サッカリンナトリウム 0.01
グルコン酸クロルヘキシジン 0.05
ヒドロキシエチルセルロース 0.01
酢酸トコフェロール 0.05
フッ化ナトリウム 0.05
サンフラボンP(太陽化学株式会社) 0.10
精製水 残部

合計 100.0
得られた低粘度ジェルについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0072】
処方例4 歯磨剤
以下の処方により、常法に従い、歯磨剤を製造した。
成分名 配合量(%)
第二リン酸カルシウム 30.0
グリセリン 20.0
カラギーナン 1.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
塩酸クロルヘキシジン 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1
バラの花びらエキス末(日本油脂株式会社) 0.10
精製水 残部

合計 100.0
得られた歯磨剤について、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0073】
処方例5 練歯磨
以下の処方により、常法に従い、練歯磨を製造した。
成分名 配合量(%)
第二リン酸カルシウム 20.0
グリセリン 20.0
塩化セチルピリジニウム 0.1
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
ブロックコポリマー 40.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 4.0
塩化ラウリルピリジニウム 1.0
酢酸トコフェロール 0.1
サンウーロン粉末(サントリー株式会社) 0.1
精製水 残部

合計 100.0
得られた練歯磨について、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0074】
処方例6 タブレット
以下の処方により、常法に従い、タブレットを製造した。
成分名 配合量(%)
キシリトール 25.0
香料 0.9
シュガーエステル 3.0
ポリデキストロース 7.0
クランベリーパウダー(キッコーマン株式会社) 0.5
ビタミンC 10.0
パラチノース 残部

合計 100.0
得られたタブレットについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0075】
処方例7 口腔用パスタ
以下の処方により、常法に従い、口腔用パスタを製造した。
成分名 配合量(%)
流動パラフィン 18.00
セタノール 12.00
グリセリン 23.00
ソルビタンモノパルミテート 0.80
ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタンモノステアレート 4.00
ラウリル硫酸ナトリウム 0.10
塩化ベンゼトニウム 0.10
サリチル酸メチル 0.10
サッカリンナトリウム 0.20
香料 0.30
イチョウハエキスパウダー(一丸ファルコス株式会社) 1.00
精製水 残部

合計 100.0
得られた口腔用パスタについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0076】
処方例8 口腔用ゲル
以下の処方により、常法に従い、口腔用ゲルを製造した。
成分名 配合量(%)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.10
グリセリン 50.00
ビワリーフエキスパウダーW(一丸ファルコス株式会社) 1.00
精製水 残部

合計 100.0
得られた口腔用ゲルついて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0077】
処方例9 チューインガム
以下の処方により、常法に従い、チューインガムを製造した。
成分名 配合量(%)
炭酸カルシウム 7.00
粉末サンレッドNo.2(三栄源エフ・エフ・アイ) 0.50
キシリトール 58.00
マルチトール 8.00
香料 1.00
ガムベース 残部

合計 100.0
得られたチューインガムについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0078】
処方例10 ゼリー飲料
以下の処方により、常法に従い、ゼリー飲料を製造した。
成分名 配合量(%)
アップルフェノン粉末50(ニッカウヰスキー株式会社) 1.0
ローズマリーエキス 0.50
ジェランガム 1.00
パインファイバー 4.00
クエン酸 0.50
キシリトール 20.00
香料 0.20
果汁 15.00
精製水 残部

合計 100.0
得られたゼリー飲料について、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0079】
処方例11 糖衣錠
以下の処方により、常法に従い、糖衣錠を製造した。下記の錠剤部200重量部を糖衣部100重量部で糖衣した。
(錠剤部)
成分名 配合量(%)
シマリン 4.00
シュガーエステル 1.00
グアーガム 0.20
アスパルテーム 0.01
香料 1.00
パラチノース 残部

合計 100.0

(糖衣部)
成分名 配合量(%)
シナモンポリフェノールTH(長谷川香料株式会社) 0.10
リン酸3カルシウム 0.80
アスパルテーム 0.02
アラビアガム 1.00
香料 0.50
カルナウバワックス 0.10
シェラック 0.10
マルチトール 残部

合計 100.0
得られた糖衣錠について、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0080】
処方例12 キャンディ
以下の処方により、常法に従い、キャンディを製造した。
成分名 配合量(%)
カカオ抽出物(株式会社ロッテ中央研究所) 0.50
桑白皮エキス 1.00
キシリトール 8.00
マルチトール 10.00
アスパルテーム 0.10
香料 0.20
パラチニット 残部

合計 100.0
得られたキャンディについて、上記の共凝集評価試験法で評価したところ、優れた共凝集阻害効果を示した。
【0081】
上述したように、口腔内細菌の共凝集は歯垢の形成、う蝕、歯周病につながるため、上記の共凝集を特異的に阻害する植物体の乾燥粉末および溶媒抽出エキス自体やそれを配合する口腔用組成物および食品組成物は、歯周病およびう蝕の予防、進行の阻害もしくは遅延、および治療効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤ならびにそれを配合してなる口腔用組成物および食品用組成物は、歯周病およびう蝕を有効に予防し、進行を阻害もしくは遅延させることができ、あるいは歯周病を治療することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボダイジュ、シナモン、ブドウ、チャノキ、バラ、クランベリー、カカオ、リンゴ、イチョウ、ビワおよび月見草(メマツヨイグサ)からなる群より選ばれる1種または2種以上の植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスからなる、口腔内細菌の共凝集を阻害するための剤。
【請求項2】
植物体が、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、または種子もしくは全草からなる群より選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の剤を配合してなる口腔用組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の剤を配合してなる食品組成物。
【請求項5】
歯周病予防または治療用である請求項3記載の口腔用組成物。
【請求項6】
歯周病予防または治療用である請求項4記載の食品組成物。
【請求項7】
う蝕予防または治療用である請求項3記載の口腔用組成物。
【請求項8】
う蝕予防または治療用である請求項4記載の食品組成物。


【公開番号】特開2006−199661(P2006−199661A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15726(P2005−15726)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】