説明

共振形センサの異常検知システム

【課題】簡単な電気的構成で、共振形センサとその他異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けがなされる共振形センサの異常検知システムを提供する。
【解決手段】ノックセンサ66(圧電素子、共振形センサ)の異常検知システムは、ノックセンサ66に交流信号を重畳する交流重畳回路101(101a)と、交流信号を重畳後に同重畳を停止することでノックセンサ66に生じる残響振動に基づき、当該ノックセンサ66の異常を検知する信号線回路(異常検知手段)102(102a)と、を備える。ここで、交流重畳回路101及び信号線回路102は、ECC100に内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振形センサの異常検知システムに関し、詳しくは、車両の内燃機関のノッキングの検出に用いられる共振形センサの異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の点火時期をノッキングの直前に設定することで出力や燃費を改善するため、多くの車両で所謂ノック制御システムが採用されている。
このようなノック制御システムでは、内燃機関のシリンダ(気筒)に取り付けられた共振形センサとしてのノックセンサに圧電素子が用いられ、同圧電素子が検出した振動をフィルタでノック周波数のみに分離して、特定クランク角区間において積分した振動レベルの強弱によって、ノッキングの程度を判別する。そして、同振動レベルに応じて点火時期を遅延させることでノッキングを回避するようにしている。
【0003】
図5に示すように、このようなノック制御システムにおいては、ノックセンサ66bから電気信号が出力されているか否かを信号線回路110aにおけるショート検知回路110bによって判定し、出力がゼロの場合にノックセンサ66bにショートが生じ、異常であると判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、同種のノック制御システムとして、圧電素子に並列に接続されている抵抗を介してバイアスすることにより、ノックセンサ66bの出力信号を増幅し、更にコンデンサによって直流成分のみを抽出することによって、天絡、地絡、断線、2線間ショートの各異常状態を判別可能とした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記2つの技術においては、いずれもノックセンサ66bから出力される電気信号のみに基づいて異常検知を行う回路構成としているので、ノックセンサ66bとショート検知回路110bとを接続するハーネス110cや配線110dにショートが生じたり(図5の発生箇所δ1)、異常検知手段としての当該信号線回路110a自身に断線等により異常が生じた場合(図5の発生箇所δ2)でも、ノックセンサ66bに異常が生じたものと判定して誤検知が行われる可能性がある。
【0006】
その一方、該当シリンダのノッキングを検知すべく、複数のノックセンサを内燃機関に配設し、非ノック検知期間においてA/D変換された各ノックセンサのデジタルデータの平均値を互いに比較し、当該ノックセンサの異常を判定する技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、ノック検知位置毎に、所定のクランク角期間内でサンプリングしたノックセンサの出力信号を統計処理してエンジン運転状態に応じた係数を乗じてバックグランドレベルを取得し、該バックグランドレベルに上限値を設定することでノッキング発生の有無を検知するようにした技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−36567号公報
【特許文献2】特開2006−29158号公報
【特許文献3】特公平2−301646号公報
【特許文献4】特開平5−10237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献3及び4記載の技術によれば、複数の圧電素子の検知結果を比較したり、各圧電素子が自身の検知結果を予めサンプリングしておき、指定の値と比較して異常を判定したりするために電気的構成が複雑となる問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単な電気的構成で、共振形センサとその他異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けがなされる共振形センサの異常検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、圧電素子により外部の振動を電気信号に変換する共振形センサに設けられる共振形センサの異常検知システムであって、
前記圧電素子に交流信号を重畳する交流重畳回路と、前記交流信号を重畳後に同重畳を停止することで前記圧電素子に生じる残響振動に基づき、当該共振形センサの異常を検知する異常検知手段と、を備えたこと、を要旨とする。
【0012】
同構成によれば、異常検知手段によって、交流信号を印加後に同印加を停止することで生じる圧電素子の残響振動(逆起電力)の振幅に応じて出力される電気信号に基づき、当該共振形センサの異常が検知される。このため、共振形センサには異常がなく、且つ、異常検知手段に断線等の異常が生じたときには、残響振動が検出されない。その一方、共振形センサには異常があり、且つ、異常検知手段に断線等の異常がないときには、残響振動が検知されるので、簡単な電気的構成で、共振形センサとその他異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けがなされるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な電気的構成で、共振形センサとその他異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けがなされる共振形センサの異常検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る共振形センサの異常検知システムが適用される内燃機関の構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る共振形センサの異常検知システムの一部の電気的構成を示すブロック図、(b)は、本発明の変形例に係る共振形センサの異常検知システムの一部の電気的構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施形態において、クランク角、ゲート信号、ノックセンサの出力信号、交流電圧の重畳、ノックセンサの残響振動の時間的流れを示すタイムチャート図。
【図4】本発明の実施形態に係る共振形センサの異常検知システムの動作フローを示すフローチャート図。
【図5】従来例に係る共振形センサの異常検知システムの一部の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態にかかる電子制御手段としてのエンジンコントロールコンピュータ(以下、ECCという。)100とその制御対象である内燃機関(ガソリンエンジン)10の概略構成を示している。
【0016】
図1に示されるように、内燃機関10のシリンダブロック11に形成された気筒12には、ピストン13が摺動可能に収容されている。そして、ピストン13はコネクティングロッド15を介してクランクシャフト16と連結されている。また、シリンダブロック11には各気筒12を取り囲むように機関冷却水が循環するウォータジャケット14が配設されている。
【0017】
図1に示されるようにシリンダブロック11の上部にはシリンダヘッド17が組み付けられており、気筒12の内周面、ピストン13の上面及びシリンダヘッド17の内壁面によって燃焼室18が区画形成されている。シリンダヘッド17には、燃焼室18内に突出するように点火プラグ19が設けられているとともに、燃焼室18と連通する吸気ポート21及び排気ポート22が形成されている。そして、シリンダヘッド17における吸気ポート21の開口部近傍には燃焼室18内にその先端部が突出するようにインジェクタ20が設けられている。
【0018】
吸気ポート21は、図示しない吸気マニホルドと接続されて吸気通路30の一部を形成している。また、排気ポート22は、図示しない排気マニホルドと接続されて排気通路40の一部を形成している。尚、図1に示されるように吸気通路30には、モータ33aによって駆動されて燃焼室18に導入される吸気の量を調量するスロットルバルブ33が設けられている。
【0019】
図1に示されるようにシリンダヘッド17には、吸気通路30と燃焼室18とを連通・遮断する吸気バルブ31と、排気通路40と燃焼室18とを連通・遮断する排気バルブ41とが動作可能に設けられている。各バルブ31,41は図示しないバルブスプリングの付勢力によって閉弁方向に常に付勢されている。また、シリンダヘッド17の内部には、吸気バルブ31を駆動する吸気カムシャフト32と、排気バルブ41を駆動する排気カムシャフト42がそれぞれ回転可能に支持されている。
【0020】
これら吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42は、図示しないタイミングチェーンを介してクランクシャフト16と連結されており、クランクシャフト16が1回転するのに伴ってこれら吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42がそれぞれ2回転するようになっている。これにより、機関運転時にクランクシャフト16が回転すると、吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42が回転し、吸気カムシャフト32の作用により吸気バルブ31が開弁方向にリフトされ、排気カムシャフト42の作用により排気バルブ41が開弁方向にリフトされる。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の内燃機関10には、排気通路40を流れる排気の一部を吸気通路30に還流させる排気還流通路としてEGR通路43が設けられている。そして、EGR通路43には吸気通路30に再循環させる排気の量を調量する調量弁としてEGRバルブ44が設けられており、これらEGR通路43とEGRバルブ44とによって排気還流機構が構成されている。
【0022】
そして、上記インジェクタ20、モータ33a、EGRバルブ44は、ECC100によって制御可能となるように電気的に接続されている。
本実施形態において、内燃機関10には、機関運転状態を検知する各種のセンサが設けられ、ECC100に検知信号を出力すべく、電気的に接続されている。例えば、シリンダブロック11に設けられた水温センサ60はウォータジャケット14を循環している機関冷却水の温度である機関冷却水温を検知する。クランクシャフト16に近接して設けられたクランク角センサ61は機関回転速度及びクランク角CAを検知する。図示しないアクセルペダルに設けられたアクセルポジションセンサ62はアクセル操作量を検知する。スロットルポジションセンサ63はスロットルバルブ33の開度であるスロットル開度を検知する。吸気通路30に設けられるエアフロメータ64は燃焼室18に導入される吸入空気量を検知する。吸気カムシャフト32の近傍に設けられたカムポジションセンサ65は、吸気カムシャフト32の回転位相に対応した信号を出力する。
【0023】
本実施形態では、さらに、シリンダブロック11には、内燃機関10の振動を検出することにより、そのノッキングを検出すべく、共振形センサであるノックセンサ66が配設されている。
【0024】
ECC100は、機関制御にかかる各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、機関制御及び異常検知用の制御プログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。そして、ECC100は、上記各種センサ60〜66の検知信号を読み込み、該検知信号に基づいて各種の演算処理を実行するとともに、上記インジェクタ20、モータ33a、EGRバルブ44の動作を制御し、内燃機関10を統括的に管理している。
【0025】
具体的には、ECC100は、機関回転速度及びアクセル操作量に基づいてモータ33aを制御することにより、スロットルバルブ33を駆動して吸入空気量を調量する。また、これと併せて目標燃料噴射量を設定し、インジェクタ20を駆動して燃料噴射量を調量する。また、ECC100は機関回転速度や負荷率に基づいてEGRバルブ44の開度を制御し、燃焼室18に還流させる量を調量する。
【0026】
本実施形態において、ECC100は、前記ノックセンサ66の検知結果及び判定基準値(図3参照)に基づいて各気筒におけるノッキング発生の有無を判定し、その判定結果に応じて点火時期を調整するノック制御を実行する。
【0027】
このノック制御では、ノッキング発生の有無の判定をすることにより、ノッキングの発生有りと判定された場合には目標点火時期が所定量だけ遅角される一方、ノッキングの発生無しと判定された場合には目標点火時期が徐々に進角される。この目標点火時期は、各気筒で点火を実施させる時期を、各気筒の圧縮上死点を基準としたクランク角(BTDC)で表したものである。ECC100は、目標点火時期により示される時期にオンとなる点火信号を各気筒12のインジェクタ20に出力することにより、点火プラグ19を通じた混合気への点火を実行する。これにより、点火時期がノッキングの発生限界寸前に調整されるようになっている。
【0028】
図2(a)に示すように、本実施形態では、ノックセンサ66に、ピエゾ圧電効果を利用し、外部の振動を電気信号に変換する圧電素子を用いている。そして、このノックセンサ66(圧電素子)と、ECC100に各々内蔵され、同ノックセンサ66に交流信号を重畳(印加)する交流重畳回路101と、交流信号を重畳後に同重畳を停止することでノックセンサ66に生じる逆起電力e[V]に基づき、当該ノックセンサ66の異常を検知する異常検知手段としての信号線回路102と、によって共振形センサ(圧電素子)の異常検知システムを構成している。
【0029】
本実施形態では、交流重畳回路101及び信号線回路102は、切り替えスイッチS/W、ハーネス100c及び配線100dを介して前記ノックセンサ66に電気的に接続されている。
【0030】
そして、図2(a)に示すように、ECC100は、内蔵した切り替えスイッチS/Wを切り替えることにより、交流重畳回路101からノックセンサ66に交流が重畳(印加)される状態と、ノックセンサ66から信号線回路102にセンサ出力信号としての電気信号が送出される状態とが切り替えられるようになっている。
【0031】
図3に示すように、本実施形態では、ゲート信号がオン操作されている期間がノック判定期間に対応している。
このノック判定期間は、ノック判定にかかるノックセンサ66の出力信号のサンプリング及びノッキングの有無の判定を実行する期間であり、ゲート信号がオン操作される時期およびオフ操作される時期はいずれも、各気筒の圧縮上死点を基準としたクランク角(ATDC)で表され、ノッキングの有無の判定に適した所定の時期が予め求められた上でECC100のメモリに記憶されている。本実施の形態では、ノック判定期間として、各気筒の圧縮上死点後の10°CAから90°CAの期間が設定され、図3に示すように、ノックセンサ66の検知結果である電気信号(振動圧力)及び判定基準値に基づいてノッキングの有無の判定が行なわれる。
【0032】
本実施形態のノックセンサ66(共振形センサ)の異常検知システムは以上のように構成され、以下、その動作フローについて図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、ECC100において、車両の始動(イグニッションオン)が検知されると、ノックセンサ66の異常検知処理が開始され、ノック判定期間であるか否かが判定される(ステップS200)。
【0033】
そして、ノック判定期間である場合には(ステップS200:YES)、ECC100は、そのまま待機状態を継続する一方、ノック判定期間でない場合には(ステップS200:NO)、図2(a)及び図3を参照して、交流重畳回路101からノックセンサ66に交流の重畳を開始する(ステップS210)。
【0034】
その後、一定時間が経過すると、ECC100は、交流の重畳を停止するとともに、ノックセンサ66から残響振動(逆起電力e)が送出されたかどうかを判定する(ステップS220)。
【0035】
その結果、残響振動が出力されていない場合には(ステップS220:NO)、図2(a)を参照して、ハーネス100c・配線100dのショート(短絡)検知が実行されるとともに(ステップS230)、図示しない車両室内のアラーム装置を介して、運転者に当該ショート異常が報知され、関係する部品の修理・交換への注意が喚起されるとともに、ここでの処理を一旦終了する(ステップS240)。
【0036】
他方、図3を参照して、上記ステップS220において残響振動が送出されている場合には、ECC100は、逆起電力e[V]である同残響振動から、所定のフィルタ処理、A/D変換、フーリエ変換を経て共振周波数fs[Hz]を演算、取得するとともに、所定のフィルタ処理、A/D変換を経ることにより、所定のタイミングにおける同残響振動の振幅A[V]を演算、取得する(ステップS250)。
【0037】
続いて、これら共振周波数fs及び振幅Aが、いずれも予め設定した許容範囲内であるか否かが判定される(ステップS260)。
そして、共振周波数fs及び振幅Aの少なくとも一方が許容範囲外である場合には(ステップS260:NO)、ECC100は、ノックセンサ異常検知を行なうとともに(ステップS270)、点火時期の遅角制御を行なう(ステップS280)。その後さらに、図示しない車両室内のアラーム装置を介して、運転者にノックセンサ異常が報知され、当該ノックセンサ66(図1参照)の修理・交換への注意が喚起されるとともに、ここでの処理を一旦終了する(ステップS290)。
【0038】
他方、上記ステップS260において、共振周波数fs及び振幅Aがいずれも許容範囲内である場合には(ステップS260:YES)、ノックセンサが正常と判定され、上記したノック制御が通常とおりに行われる(ステップS300)。
【0039】
なお、図4のノックセンサ66の異常検知処理は、本実施形態では車両の始動時のアイドル運転時に1回のみ行なわれる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
【0040】
(1)ECC100によって、交流信号を印加後に同印加を停止することで生じるノックセンサ66(圧電素子)の残響振動(逆起電力e)の振幅に応じて出力される電気信号に基づき、当該ノックセンサ66の異常が検知される。このため、ノックセンサ66には異常がなく、且つ、ECC100に断線等の異常が生じたときには、残響振動が検出されない。その一方、ノックセンサ66には異常があり、且つ、ECC100に断線等の異常がないときには、残響振動が検知されるので、簡単な電気的構成で、ノックセンサ66とその他の部位(信号線回路102、ハーネス100c・配線100d)における異常発生の切り分けがなされるようになる。
【0041】
(2)ノックセンサ66(圧電素子)が外部の振動を検出して発生する電気信号(センサ出力信号)の伝送に用いる配線100dと、同圧電素子に交流信号を重畳するときに用いる配線100dを共用することになる。このため、図2(b)に示すように、配線100f,100h及びハーネス100e,100gを共用していない場合では、配線100fの発生箇所β、及び、配線100hの発生箇所γのいずれかで断線が生じた場合の切り分け(判別)ができないのに対して、本実施形態のように配線100dを共用した場合では、当該共用の配線100dが、例えば発生箇所α(図2(a)参照)で断線したときには、常に残響振動が検出されないことで一意的に原因を特定できる(図4のステップS230及びS240参照)ので、ノックセンサ66とその他の部位(信号線回路102、ハーネス100c・配線100d)における異常発生の切り分けがさらに明確になされるようになる。
【0042】
(3)ノックセンサ66の異常検知システムを車両のノック制御システムに用いることで、ノックセンサ66とその他の部位(信号線回路102、ハーネス100c・配線100d)における異常発生の切り分けが明確になされ、異常原因の特定が容易となるとともに、共振形センサの異常検知時には、点火時期を遅らせる等のフェールセイフ処理が的確に行われるようになる。
【0043】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記実施形態では、本発明の技術的思想をガソリンエンジンである内燃機関10のノックセンサに適用した。しかしこれに限られず、その他のアクチュエータ、例えば、ディーゼルエンジンのインジェクタの振動検知に用いる共振形センサに適用することもできる。
【0044】
・上記実施形態では、車両の始動(イグニッションオン)時のアイドル運転時において、ノック判定期間以外の期間でノックセンサ66及びハーネス100c・配線100dの異常を検知するようにした。しかしこれに限られず、例えば、車両の走行時において、ノック判定期間以外の期間でノックセンサ66及びハーネス100c・配線100dの異常を検知することも勿論可能である。
【0045】
・上記実施形態では、ノック判定期間以外の期間で1回のみノックセンサ66及び/又はハーネス100c・配線100dの異常を検知したこと(1トリップ検出)を条件として、ショート異常報知及び/又はノックセンサ異常報知を行なうようにした(図4参照)。しかしこれに限られず、1回目の異常検知で仮フラグを立てるとともに、該仮フラグを検知し、2回連続で異常検知したこと(2トリップ検出)を条件として、ショート異常報知及び/又はノックセンサ異常報知を行なうようにすることもできる。これによれば、1回目の異常検知がノイズ等の誤検知である場合に誤ってショート異常報知及び/又はノックセンサ異常報知が行なわれることが効果的に排除でき、ノックセンサ66の異常検知システムの信頼性をさらに高めることができる。
【0046】
・上記実施形態では、交流重畳回路101を電子制御装置であるECC100の内部に内蔵されるようにした。しかしこれに限られず、交流重畳回路101は、ECC100の外部であって、例えば、ノックセンサ66の近傍に配設することも可能である。
【0047】
・上記実施形態では、ノックセンサ66(圧電素子)が外部の振動を検出して発生する電気信号(センサ出力信号)の伝送に用いる配線100dと、同圧電素子に交流信号を重畳するときに用いる配線100dを共用した。しかしこれに限られず、図2(b)に示すように、配線100f,100h及びハーネス100e,100gを共用しない構成を採用することも可能である。この構成によれば、配線100fの発生箇所βと、配線100hの発生箇所γのいずれかで断線が生じた場合の切り分け(判別)ができないものの、ノックセンサ66aと、その他の部位(信号線回路102、配線100f,100h及びハーネス100e,100g)に断線等の異常が生じた場合の切り分けは明確になされるようになる。
【0048】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○前記圧電素子が外部の振動を検出して発生する電気信号の伝送に用いる配線を、同圧電素子に交流信号を重畳するときにも用いるようにした請求項1に記載の共振形センサの異常検知システム。
【0049】
同構成によれば、圧電素子が外部の振動を検出して発生する電気信号(センサ出力信号)の伝送に用いる配線と、同圧電素子に交流信号を重畳するときに用いる配線を共用することになる。このため、配線を共用していない場合では、圧電素子が外部の振動を検出して発生する電気信号の伝送に用いる配線と、同圧電素子に交流信号を重畳するときに用いる配線のいずれかに断線が生じた場合の切り分け(判別)ができないのに対して、このように配線を共用した場合では、当該共用の配線が断線したときには、常に残響振動が検出されないことで一意的に原因を特定できるので、共振形センサとその他異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けがさらに明確になされるようになる。
【0050】
○前記共振形センサが車両の内燃機関のノッキングの検出に用いるノックセンサである請求項1又は請求項2に記載の共振形センサの異常検知システム。
同構成によれば、共振形センサの異常検知システムを車両のノック制御システムに用いることで、共振形センサとその他の異常検知手段等の部位における異常発生の切り分けが明確になされ、異常原因の特定が容易となるとともに、共振形センサの異常検知時には、点火時期を遅らせる等のフェールセイフ処理が的確に行われるようになる。
【0051】
○前記圧電素子の残響振動に基づく共振形センサの異常検知が車両の始動時に実行される請求項3に記載の共振形センサの異常検知システム。
同構成によれば、車両の始動時のアイドル運転時に、圧電素子の残響振動に基づく共振形センサの異常検知が実行されるので、車両を走行させる前のみに当該異常検知が行なわれ、車両の走行中に当該異常検知が煩雑に行なわれることによる無駄を排除できるとともに、異常検知の必要十分性を担保することができる。
【0052】
○前記圧電素子の残響振動に基づく共振形センサの異常検知がノック判定期間以外の期間で実行される請求項3又は請求項4に記載の共振形センサの異常検知システム。
同構成によれば、ノック判定期間においてECC100(CPU)が制御プログラムを実行してビジー状態でないときに共振形センサの異常検知が行なわれるので、CPUによって、制御プログラムを当該異常検知のために効率的且つ安全に実行させることができる。
【符号の説明】
【0053】
66,66a…ノックセンサ(共振形センサ)、101…交流重畳回路、102…信号線回路(異常検知手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子により外部の振動を電気信号に変換する共振形センサに設けられる共振形センサの異常検知システムであって、
前記圧電素子に交流信号を重畳する交流重畳回路と、
前記交流信号を重畳後に同重畳を停止することで前記圧電素子に生じる残響振動に基づき、当該共振形センサの異常を検知する異常検知手段と、を備えたことを特徴とする共振形センサの異常検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−164447(P2010−164447A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7377(P2009−7377)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】