説明

共通の要求に応答する機能を備える車両の2つのアクチュエータを制御する方法

本発明は、共通の要求に応答する機能を有する車両の複数のアクチュエータ(1、2)であって、これらのアクチュエータの少なくとも一つが、一つの帯域幅及び/又は飽和度を有するアクチュエータの制御方法に関し、本方法は、アクチュエータ(1、2)の少なくとも一つについて、これらのアクチュエータの少なくとも一つの他の出力量(T)、又は他方のアクチュエータの出力量(T、T)を積算する設定値(u、u)を決定することにより、これらのアクチュエータ、又はこれらのアクチュエータの内の少なくとも一部を一緒に動作させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるアクチュエータの制御に関する。
【0002】
車両では、運転者と種々のアクチュエータとの分離が益々頻繁に行われている。約10年前、燃料流量を制御する最初の電動スロットルが自動車の分野に登場し、以降運転者と機械部材の直接的なリンクを断つ傾向が強まっている。ハイブリッドモータでは、普通の運転者はエンジンと電気モータを同時に制御しながら自動車を運転するということができないため、特にこのような分離が必要である。同様に、電気制動系では、運転者がブレーキペダルを踏む操作は、制動指令と解釈される。
このような分離の観点から、アクチュエータの追従に関する新たな問題が生じる。これは、制御が単一のアクチュエータの制御から複数のアクチュエータの制御に移り、これら複数のアクチュエータの各々が固有の動力学及び固有の動作範囲(飽和度)を有するためである。この典型的な事例を説明する例は自動車のブレーキであり、ブレーキは、負のトルクしか伝えることができず、更に主に正のトルクを発生させるエンジンの動力学とは異なる動力学を有する。
【0003】
問題は、入力側(帯域)及び/又は出力側で飽和する多変数系の追従になる(図1参照)。入力側で飽和する系を追従させること自体が問題である。この種類の問題への対処方法が存在する。しかしながら、系が複数の入力を有するということが、「従来の」アプローチを使用した問題の解決を一層困難にしている。規定では、利用可能なアクチュエータの動力学特性を最大限に利用しながら、出力側で得られるトルクを運転者が提供する基準に可能な限り忠実に従わせる必要がある。
密接に関連する問題に対処する解決法を一括し、後述では2つのカテゴリーにグループ化する。第1のカテゴリーは科学論文から構成される。
【0004】
線形制御の一例が、Sei−Bun Choi及びPeter Devlinによる「Throttle and brake combined control for intelligent vehicle highway systems」(SAE Technical Pater Series, p53-60, 1995年8月)に記載されている。モータの追従は、スライディングモードによる制御を援用して行なわれる。この操作の目的は、車間距離だけでなく、2台の自動車の間の速度差を最小にすることにあり、最終目的は、クルーズ制御を行なうことにある。制動は、フィードフォーワード部により制御し、モデルの非線形性(主にヒステリシス)を補償し、運転者の指令をトラッキングするための比例フィードバックを行う。切り替え方式は、正のトルクが要求されるときにエンジンを使用し、制動要求を満たすためにエンジンブレーキが不十分であるときにブレーキを使用するという原理に基づいている。スロットル角の開度に関する2つの閾値を固定して(α>α)、スロットル開度がα未満のとき、ブレーキを作動させる。スロットル開度がαを超えると、エンジンへの切り替えが行なわれる。
【0005】
最適な制御解決法が、Kyongsu Yi、 Youngjoo Cho、 Sejin Lee、 Joonwoong Lee及びNamkyoo Ryooによる「A throttle/brake law for vehicle intelligent cruise control」(FISITA World Automotive Congress, p1-6, 2000年6月)に提案されている。著者等は、3つのレイヤに基づく制御方式を提案している。第1レイヤでは、車両が特定の速度に達し、且つ前後に続いて走行する2台の車両の間に所定の距離を維持するための最適な加速度を計算することにより基準加速度を生成する。この加速度は、2つのアクチュエータの飽和を回避するように飽和する。第2レイヤでは、車両の加速度が所定の閾値よりも小さいか又は大きいかに応じて、これらのアクチュエータ間で加速要求が分配される。パワートレインの追従はPIにより行なわれ、ブレーキの追従はPID及びフィードフォーワード部の補助により行なわれ、これは第3レイヤにおいて行なわれる。
【0006】
これらの解決法では、2つの部材の各々の追従は、互いに独立して行なわれる。従って、制御則は極めて単純であり、且つ計算時間に関してコストが安い。しかしながら、これらの同じ解決法は特定の欠点を呈する。2つのアクチュエータの間で切り替えを行なう方式は実験に基づいたものである。切り替え閾値は、任意の方法で選択される。作業の大部分でアクチュエータの飽和を無視すると、アクチュエータがその動作範囲の限界に達するときに閉ループ特性が劣化する恐れがある。
【0007】
EP0798150、EP0896896、及び米国特許第5054570号は、本明細書において取り扱う問題に密接に関連する主題に関し、これら文献に提案される解決法は、当車両を別の車両から離す距離、及びこれらの車両の間の速度差の関数として車両の速度を制御することを可能にしている。加速アクチュエータと減速アクチュエータとの切り替えは、所定の閾値を跨ぐときに急激に行なわれる。閾値は任意の方法で固定され、閾値の選択に関する基準はない。一方のアクチュエータから他方のアクチュエータに切り替えることで、安定性の分析の問題が単純化される。各アクチュエータを、他方のアクチュエータから独立して追従させる。制御則は極めて単純なままであるので、計算時間はそれ程長くならない。閾値の選択は完全に任意であり、閾値の選択を可能にする基準は示されない。一つの制限は、これらのアクチュエータの各々が該アクチュエータの側で使用される場合のアクチュエータの帯域である。これらのアクチュエータを急激に切り替えることによって、伝達されるトルクに不連続が発生する恐れがある。
【0008】
上述のように、本発明は、同一の要求に応答する2つのアクチュエータの制御を向上させることを目的とする。
この目的を達成するために、本発明は、同一の要求に応答する機能を有する車両の複数のアクチュエータであって、うち少なくとも一つが一つの帯域幅及び/又は飽和度を示すアクチュエータの制御方法を考案し、本方法では、これらのアクチュエータの内の少なくとも一つについて、これらのアクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量、又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定し、よってこれらのアクチュエータ、又はこれらのアクチュエータの内の少なくとも一部を一緒に動作させる。
【0009】
本発明は、後述では非対称(異なる帯域幅及び/又は飽和度)と呼ぶ2つのアクチュエータを制御する問題を解決することを目的とする。後述するように、本明細書に示すアプローチによって、運転者によるトルク要求を種々のアクチュエータに分配することを可能にする制御則を合成することができる。
【0010】
本発明による方法は、更に、以下の特徴の内の少なくとも一つを示すことができる。
−各アクチュエータについて、アクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量、又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定する。
−アクチュエータの少なくとも一つについて、他のアクチュエータの各々の出力量、又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定する。
−各アクチュエータについて、他のアクチュエータの各々の出力量、又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定する。
−前記決定が、マッピングを参照することにより行う。
−マッピングの入力データとして、
−アクチュエータの少なくとも一つの出力量、及び
−アクチュエータの出力量の和
の内の少なくとも一方のデータを使用する。
−整数iを次式:
[T... Tin]=m
に従って決定し、上式中、
及びmはiに関連する所定の行列であり、
はアクチュエータnの出力量であり、
inは要求に対応する量である。
−マッピングは、制約条件を有する最適化アルゴリズムによって生成する。
−マッピングは、マルチパラメトリック二次計画問題によって生成する。
−前記決定を計算により行なう;
−次式:

を計算し、上式中、
(k)は、kをサンプリングパラメータとするアクチュエータnに関連するコマンドであり、
及びlはマッピングによって提供される行列であり、
はアクチュエータnの出力量であり、
inは要求に対応する量である。
−前記又は各出力量(T、T)を決定し、前記又は各コマンドの決定を、決定された前記又は各量を考慮して再開する。
【0011】
本発明はまた、
−同一の要求に応答する機能を備えるアクチュエータであって、少なくともこれらアクチュエータの一つが一つの帯域幅及び/又は飽和度を有するアクチュエータ、及び
−少なくともアクチュエータの一つについて、アクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量、又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定することにより、これらのアクチュエータ、又はこれらのアクチュエータの少なくとも一部を一緒に動作させる制御部材
を備える車両を考案する。
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して非制限的実施例として提示される好適な一実施形態に関する以下の説明により更に明らかになる。
【実施例】
【0012】
本実施形態では、モータ1及び制動装置2によってそれぞれ構成される2つのアクチュエータ1及び2を備える車両について考察する。モータはガソリン又はジーゼル式内燃機関とするか、又は電気モータとすることができるか、場合によってはハイブリッドモータとすることができる。
これらの2つのアクチュエータ1、2はそれぞれ、トルクを生成して、運転者が、例えばアクセルペダル又はブレーキペダルにより生成するトルク要求Trefを満たすことができる。2つのアクチュエータは一緒に動作して、2つのアクチュエータによって提供されるトルクを合算して出力トルクToutputを供給することができる。
【0013】
2つのアクチュエータはそれぞれ、ブロック3、5に示すように独自の帯域幅と独自の動作範囲を有する。従って、図2に示すように、正のトルク要求が形成される場合、モータは正のトルクを発生することができる。負のトルク要求が形成される場合、モータはゼロのトルクを提供する。更に、発生させることができる正のトルクは最大値を超えることはできない。これとは異なり、制動装置は、負のトルクが要求される場合に負のトルクのみを供給することができ、このトルクの絶対値も最大値によって制限される。制動装置は、正のトルクの要求が生成されるとゼロのトルクを提供する。
従って、図示のように、2つのアクチュエータの動作範囲は重なることがない。しかしながら、本発明は、これらのアクチュエータの動作範囲が重なる場合にも適用可能である。本発明は本事例において特に有利である。
【0014】
同様に、アクチュエータの個数は本事例では2に制限される。しかしながら、協働して同じ性質の要求に応えることができるアクチュエータの個数が3以上である車両に本発明を適用することが可能である。
本発明は、これらの2つの非対称なアクチュエータを同時に追従させることを目的とする。この目的を達成するために、本発明は、制約条件を有する二次最適化問題の明白な解を計算することに基づく制御アルゴリズムを実行する。
【0015】
本発明を実施するために、本車両は、コンピュータ又はマイクロコントローラ4のような制御部材を備え、制御部材は、コマンドu及びuを生成してアクチュエータ1及び2をそれぞれ制御することができる。更に、本車両は、応答として、これらのアクチュエータによって実際に生成された出力量T、Tを制御部材4に通知する複数のセンサを備える。
まず、本発明の理論的基礎を示し、次に当該理論の実践について説明する。
【0016】
解決しようとしている問題の図を図1に示す。本発明をモータ及びブレーキの制御に関連して説明する。この場合、2つのアクチュエータを利用して所定のトルクを提供することが望まれている。各アクチュエータは、入力における飽和度を用いて表わされる所定の範囲のトルクを伝達する。このトルクは、各アクチュエータに固有の動力学(帯域幅及び飽和度)により伝達される。
制御方式のブロック図を図2に示す。この追従動作の実行に必要な入力も定義される。
【0017】
制御則の主目的は、系の入力Tinと出力Toutとの間で、可能な限り完全なコマンドトラッキングを行なうことである。この目的を達成するために、次式により表わされる誤差の最小化を試みる。
e=(Tin−Tout
考察対象の2つのアクチュエータの各々は一次近似することができる動力学を持つので、系のモデルを次式で表わすことができる:

上式中の各文字の意味は、
−ζ:i番目のアクチュエータの時定数、
−T:i番目のアクチュエータによって伝達されるトルク、
−U、及びU:i番目のアクチュエータの動作範囲のそれぞれ最小限界値及び最大限界値、
−u:i番目のアクチュエータの入力(制御)
である。
【0018】
サンプリング周期がTで表わされる場合、モデル(1)により推定される離散モデルは次式により与えられる:

追従させたい出力は次式により与えられる:
out(k)=T(k)+T(k) (3)
【0019】
最小化される2次判定基準は次式によって定義される:

上式中、qは判定基準の他方の項に対して一方の項をペナルティー項とするための重みパラメータである。
この問題は、以下の式によって更にコンパクトに書き直すことができる:

上式中、R>0及びQ=0は適切な次数の正方行列である。同様に、行列A及びBは、アクチュエータ1及び2の出力に発生するトルク、及び入力に課される制約に基づいて推定することができる。この公式は、以下のベクトルも含む:
U=[u(0)、u(0)、...、u(N−1)、u(N−1)]’、及び
X=[T(0)、T(0)、...、T(N−1)、T(N−1)]’
【0020】
等式(2)に従って、公式(5)は次式のように書き直すことができる:

上式中、H、F、C、及びDは、行列A、B、R、及びQと、等式(2)、並びにx(0)=[T(0)、T(0)]’から推定される適切な次元の行列であり、
変数が変化する場合、次式が得られる:
Z=U+H−1 F x(0) (5b)
問題(5a)は、マルチパラメトリック二次計画問題の形式で次式のように書き直すことができる:

(特に、Albert Bemporad、 Manfred Morari、 Vivek Dua、及びEfstratios N. Pistikopoulos.による「The explicit linear quadratic regulator for constrained systems」(Automatica, 38:3-20, 2002)を参照されたい)。
【0021】
この問題を解くことにより、考察対象の2つのアクチュエータの許容動作範囲のマッピングを生成することができる。
その後、トルク要求u及びuが、2つのアクチュエータの出力のアフィン関数、及び共通トルク要求Tinのアフィン関数として計算される(図2参照):

【0022】
生成されるマッピングはコンピュータに格納される。センサから返されるトルク測定値、及び運転者が要求するトルクの関数として、コンピュータは2つのアクチュエータの各々に対してコマンドを発行する。
運転者によって車両に要求されるトルクの獲得を可能にする操作の進行を順に、図7で詳細に示す。
【0023】
ステップ10において、制御部材は、運転者が求め、例えば一つ以上のセンサによって当該部材に伝送されたトルク要求を受信する。このトルク要求は量Tinである。次のステップ12ではこの値を考慮しなければならない。2つのアクチュエータの出力トルクに相当する値T及びTも考慮される。これらの値はメモリに保存される直近の値であるか、又は繰り返しを開始するために使用される基準値である。
ステップ12では、制御部材はメモリに格納されるマッピングを使用し、ボックス12に表記される、同一の整数iに対応する等式7の第2部分を満たす2つの行列M及びmを検索する。この特定は、前述の3つのトルク値を入力値として使用することにより行なわれる。
【0024】
その後ステップ14では、制御部材は、整数iに対応する2つの行列L及びlを決定する。次に、制御部材は、ボックス14に表記される等式7の第1部分を利用して、この場合も値T、T、及びTinを用いてコマンド値u及びuを計算する。
その後、次のステップ16において、このようにして決定したトルクコマンド値を2つのアクチュエータu及びuに適用する。
【0025】
次のステップ18では、これら2つのアクチュエータの出力トルクT、Tを実際に測定し、フィードバックループ20によって、T及びTの和に相当する新規の値Tinに再度使用して同じ演算を実行し、追従を実行する。
別の構成として、これらのアクチュエータの出力トルクは、トルク推定器によって取得することができる。
【0026】
本発明の動作のシミュレーションを図3〜6に示す。
図(3)及び(5)には、等式(2)によって表わされるモデルを用いて行なわれるシミュレーションが示される、すなわち発生させたいと考えるトルクと、2つのアクチュエータによって実際に伝達されるトルク(2つのトルクT及びTの和)が示される。
【0027】
図(4)及び(6)は、種々のアクチュエータにトルクを分配する方法を示す。
階段状の変化として要求を表わす図(4)は、50Nmの正のトルクが要求される場合に、マッピングがモータに対して150Nm(最大トルク)のトルク要求を示すことにより、モータによって提供されるトルクが可能な限り迅速に増大することを示している。モータによって提供されるトルクが50Nmの値に達した後、モータトルク要求は50Nmに戻る。この期間に、ブレーキに対するトルク要求は表現されない。要求されるトルクが負である場合も同様である。
【0028】
図(6)では、トルク要求は直線的に変化する。正のトルクが要求される場合、コンピュータは体系的にモータを起動するが、この場合トルク要求が共通の要求に対して大き過ぎない。一方、非常に注目すべきことに、合計トルクの低下が要求され、この低下をモータによって達成することができる場合、コンピュータはモータを起動し続ける。この低下が大き過ぎる場合、コンピュータはブレーキにも負のトルクを要求する。
この手順を2つのアクチュエータの制御に適用することにより、問題を全体として考察する。制御則は、それぞれ飽和する2つのアクチュエータの両方の動力学を含むモデルに基づいて計算される。生成されるマッピングは、制約条件付き最適化問題の厳密解である。一方のアクチュエータから他方のアクチュエータへの切り替えを行なうために閾値を選択する問題はもはや生じない。ループ安定性問題も最適化方法によって解決される。
【0029】
この手順は次のような利点をもたらす。
−アクチュエータを切り替えるための閾値を計算する問題が数学的に解決される。
−各アクチュエータの追従則がマッピングに組み込まれる。
−2つのアクチュエータの各々が、他方のアクチュエータの状態を認識しながら動作する。
−このアプローチは、動作範囲が重なる複数のアクチュエータに適用することができる。
本発明は次の要素を備える。
−アクチュエータによって提供されるトルクを測定又は推定するシステム、
−制約条件付き最適化アルゴリズム(マルチパラメトリック計画)によって計算されるマッピング、及び
−マッピングを格納し、各アクチュエータに送信される要求を計算するコンピュータ。
【0030】
複数のアクチュエータを利用することができる場合、これらのアクチュエータにトルク要求を分配する方法について詳述した。この問題に対する解決法は、制約条件付き最適化問題を解くことにより得られる。
このアプローチは、非常に良好な結果をもたらすが、極めて当然のこととして特定の欠点を有する。具体的には、アクチュエータが1よりも高い次数の動力学を持つ場合、マッピングは、系全体の状態によって変わる。系全体の状態を測定できるか、又は系の状態の再構成を可能にする観測者を合成する必要がある。
【0031】
マッピングのサイズは、等式(4)に与えられる最適化問題の解を求める間の予測区間Nを延ばそうとする場合に非常に大きくなり得る。この結果、計算時間が長くなる。
最後に、このアプローチは、線形動力学を持ち、飽和が依然として区分ごとに直線的であるアクチュエータにのみ適用することができる。アクチュエータの動力学を、線形動力学を用いて近似することが可能である場合があることに注意されたい。
【0032】
当然ながら、本発明の技術範囲から逸脱することなく、本発明に多数の変更を加えることができる。
本発明はモータ及びブレーキ以外のアクチュエータに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用されるアクチュエータの構造を示すフローチャートである。
【図2】本発明のフレームワーク内で発生するフィードバックループを示す、図1と類似の図である。
【図3】階段状に変化によりトルク要求、及び本発明の動作のシミュレーションの間に出力で得られるトルクを示すチャートである。
【図4】モータ及びブレーキに送出されるコマンド信号、並びにそれらによって生成される、図3のチャートに対応する出力トルクを示す。
【図5】直線的な変化により示すトルク要求に対応する図3に類似のチャートである。
【図6】直線的な変化により示すトルク要求に対応する図4に類似のチャートである。
【図7】本発明による方法の進行を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の要求に応答する機能を有する車両の複数のアクチュエータ(1、2)を制御する方法であって、これらのアクチュエータの少なくとも一つは一つの帯域幅及び/又は飽和度を示し、これらのアクチュエータ(1、2)の内の少なくとも一つについて、これらのアクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量又は他方のアクチュエータの出力量(T、T)を考慮したコマンド(u、u)を決定して、これらのアクチュエータ、又はこれらのアクチュエータの内の少なくとも一部を一緒に動作させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
各アクチュエータについて、これらのアクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
これらのアクチュエータの少なくとも一つについて、他のアクチュエータの各々の出力量又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各アクチュエータについて、他のアクチュエータの各々の出力量又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
マッピングを参照することにより前記決定を行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
マッピングの入力データとして、
−これらのアクチュエータの少なくとも一つの出力量(T、T)、及び
−これらのアクチュエータの出力量の和(Tout
の内の少なくとも一方のデータを使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
整数iを次式:
[T... Tin]≦m
に従って決定し、上式中、
及びmはiに関連する所定の行列であり、
はアクチュエータnの出力量であり、
inは要求に対応する量である
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
マッピングは、制約条件付き最適化アルゴリズムによって生成することを特徴とする、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マッピングは、マルチパラメトリック二次計画法によって生成することを特徴とする、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
計算により前記決定を行なうことを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
次式:

を計算し、上式中、
(k)は、kをサンプリングパラメータとするアクチュエータnに関連するコマンドであり、
及びlはマッピングによって与えられる行列であり、
はアクチュエータnの出力量であり、
inは要求に対応する量である
ことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記出力量(T、T)又は各出力量(T、T)を決定し、前記コマンド又は各コマンドの決定を、決定された前記量又は各量を考慮することにより再開することを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
−同一の要求に応答する機能を備えるアクチュエータ(1、2)であって、これらのアクチュエータの少なくとも一つが一つの帯域幅及び/又は飽和度を示すアクチュエータ(1、2)、及び
−制御部材(4)
を備え、制御部材が、これらのアクチュエータの少なくとも一つについて、これらのアクチュエータの内の少なくとも一つの他のアクチュエータの出力量又は他方のアクチュエータの出力量を考慮したコマンドを決定し、これらのアクチュエータ又はこれらのアクチュエータの内の少なくとも一部のアクチュエータを一緒に動作させるように構成されることを特徴とする、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−508463(P2009−508463A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530576(P2008−530576)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050824
【国際公開番号】WO2007/031665
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】