説明

共鳴式非接触給電システム、受電側装置及び送電側装置

【課題】共鳴式非接触給電システムにおける不要な放射電磁界を低減する技術を提供する。
【解決手段】共鳴式非接触給電システム10は、送電側(一次側)ディバイスとして、高周波電源20と、一次コイル30と、一次共鳴コイル35とを備える。一次コイル30は送電側同軸ケーブル60を用いて高周波電源20に接続されている。さらに、共鳴式非接触給電システム10は、一次コイル30及び一次共鳴コイル35の周囲を覆う送電側金属シールド80と、二次コイル40及び二次共鳴コイル45の周囲を覆う受電側金属シールド90とを備え、充電の際に、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90はケース接続部12により同電位になるように接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴式非接触給電システム、そのような共鳴式非接触給電システムに用いられる受電側装置及び送電側装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触のシステムによって負荷装置に電力を供給する技術が知られている。近年では電気自動車に対する給電システムとしても、非接触の給電システムは実用化のステージに入り、各種の規格が定められるとともに、一般的な使用を想定した安全性が配慮されるようになっている。
【0003】
非接触の給電システムには、様々なタイプがあるが、電気自動車等に対する給電システムとして大きく注目されている種類の一つが、図1(a)に示す共鳴式非接触給電システムであり、MIT(Massachusetts Institute of Technology)により基本的原理が開発・実証されている(例えば、特許文献1参照)。図示の共鳴式非接触給電システムでは、高周波電源、共鳴コイル(一次及び二次共鳴コイル)及び負荷が電力を非接触で伝送する共鳴系を構成している。具体的には、送電側(一次側)ディバイスは、高周波電源、1次コイル、一次共鳴コイルで構成されている。受電側(二次側)ディバイスは、二次共鳴コイル、二次コイル、負荷で構成されている。このシステムでは送電側ディバイスと受電側ディバイスが、共鳴によって磁界結合(電磁結合)することで、数m程度離れた場所に高い伝送効率(時には50%前後)で電力を供給することができるという特長がある。
【0004】
ここで、図1(a)で示したMITによる技術では、「電源部(高周波電源及び1次コイル)、共鳴部(一次共鳴コイル、二次共鳴コイル)、負荷部(2次コイル及び負荷)」が、共鳴系となっている場合を想定している。しかしながら、非接触給電システムを電子機器や自動車給電システムに実装する場合には、追加の構成が必要となる。図1(b)に図1(a)のシステムを現実のシステムに実装する場合のシステム構成例を示す。図示のように、現実のシステムでは、電源と一次側共鳴コイル部の間の伝送路、二次側共鳴コイル部と負荷の間の伝送路が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−40699号公報
【特許文献3】特開平5−344602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2に、図1(b)をより具体的な構成として共鳴式非接触給電システム510を示す。図示のように、同軸ケーブル(送電側及び受電側同軸ケーブル60、70)を使用した場合、次のような課題がある。
(1)伝送路に同軸ケーブルを使用した場合、電流が一次側の同軸ケーブル(送電側同軸ケーブル60)の同軸ケーブル外導体64内側だけでなく外側にも流れてしまい、放射電磁界が発生する。
(2)一次コイル30から一部の電磁界が同軸ケーブル外導体64と結合し、誘導電流が流れることで放射電磁界が発生する。
(3)二次共鳴コイル45からの電磁界の全てが二次コイル40と結合するわけでなく、一部の電磁界が受電側同軸ケーブル70の同軸ケーブル外導体74と結合して誘導電流が流れることで放射電磁界が発生する。
【0007】
図3に、上記の共鳴式非接触給電システム510を電気自動車等への充電システムに適用させた例を示す。送電側(一次側)のディバイス(20、30、35)は地中に配置されている。そして、受電側(二次側)のディバイス(50、40、45)を備えた車両1が、送電側のディバイスの上に配置されると非接触の送電が可能となる。ここで、電気自動車への充電システムでは、短期間で送電を行う必要性から、例えば、1kWを超えるような大電力伝送が求められると考えられている。しかし、図3(a)に示すように、大電力伝送を行うと、一次共鳴コイル35と二次共鳴コイル45の間、つまり車両と路面との間から、ICNIRP人体保護ガイドラインの基準値を超える放射電磁界が発生する恐れがある。この放射電磁界が広範囲にわたって漏洩すると、人体M1や電子機器に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、図3(b)に示すように、電磁界強度がICNIRP人体保護ガイドラインの基準値を超えるような危険区域に進入できないように、送電が行われる区域(危険区域)の周囲に柵2等の遮蔽物で囲う対策が検討されている。しかし、ルールを理解できない子供M2やペットなどの小動物P2が、危険区域に進入してしまい事故が起きる可能性もある。さらに、危険区域への進入を感知するためのセンサを各所に配置し、進入が認められた場合に、充電を即座に中止するシステムを構築することも考えられる。しかし、センサの数が多くなると、危険区域に進入した物体の判断基準の決定などにおいて、対応の難しさがある。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、高周波電源に同軸ケーブルによって接続された送電側共鳴コイル部から受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムに用いられる送電側装置であって、前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記同軸ケーブルの外導体によって前記高周波電源の筐体に電気的に接続される送電側シールド部と、前記送電側シールド部を、前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容する受電側シールド部に対して、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段とを備える。
また、前記シールド接続手段は、充電するときに前記送電側シールド部と前記受電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容されるように構成されてもよい。
本発明の別の態様は、高周波電源に接続された送電側共鳴コイル部から、負荷装置に同軸ケーブルによって接続された受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムに用いられる受電側装置であって、前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記同軸ケーブルの外導体によって前記負荷装置の筐体に電気的に接続される受電側シールド部と、前記受電側シールド部を、前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容する送電側シールド部に対して、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段とを備える。
また、前記シールド接続手段は、充電するときに前記受電側シールド部と前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容されるように構成されてもよい。
また、高周波電源に第1の同軸ケーブルによって接続された送電側共鳴コイル部から、負荷装置に第2の同軸ケーブルによって接続された受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムであって、前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記第1の同軸ケーブルの外導体によって前記高周波電源の筐体に電気的に接続される送電側シールド部と、前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記第2の同軸ケーブルの外導体によって前記負荷装置の筐体に電気的に接続される受電側シールド部と、前記送電側シールド部と前記受電側シールド部とを、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段と、を備える。
また、前記シールド接続手段は、前記受電側シールド部に設けられており、充電するときに前記受電側シールドと前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容可能に構成されてもよい。
また、前記シールド接続手段は、前記送電側シールドに設けられており、充電するときに前記受電側シールド部と前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共鳴式非接触給電システムにおける不要な放射電磁界を低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術に係る、共鳴式非接触給電システムの原理を説明するための図である。
【図2】従来技術に係る、図1の共鳴式非接触給電システムを現実のシステムに実装させた場合の構成を模式的に示す図である。
【図3】従来技術に係る、共鳴式非接触給電システムを電気自動車等への充電システムに適用させた例を示す図である。
【図4】発明の実施形態に係る、送電側及び受電側金属シールドを備えた共鳴式非接触給電システムの構成を示す模式図である。
【図5】発明の実施形態に係る、送電側及び受電側金属シールドを接続した状態の共鳴式非接触給電システムの構成を示す模式図である。
【図6】発明の実施形態に係る、送電側及び受電側金属シールドを接続可能とした共鳴式非接触給電システムを電気自動車等への充電システムに適用させた例を示す図である。
【図7】発明の実施形態に係る、ケース接続部により接続される送電側及び受電側金属シールドの一例を模式的に示す図である。
【図8】発明の実施形態に係る、ケース接続部により接続される送電側及び受電側金属シールドの一例を模式的に示す図である。
【図9】発明の実施形態に係る、ケース接続部により接続される送電側及び受電側金属シールドの一例を模式的に示す図である。
【図10】発明の実施形態に係る、比較例である従来の共鳴式非接触給電システムにおける電磁界強度の測定系の構成を示す図である。
【図11】発明の実施形態に係る、発明の実施形態に係る、共鳴式非接触給電システムにおける電磁界強度の測定系の構成を示す図である。
【図12】発明の実施形態に係る、共鳴式非接触給電システムにおける共鳴コイル中心部からの距離と電界強度の関係を示す測定データを示す図である。
【図13】発明の実施形態に係る、共鳴式非接触給電システムにおける共鳴コイル中心部からの距離と磁界強度の関係を示す測定データを示す図である。
【図14】発明の実施形態に係る、比較例である従来の共鳴式非接触給電システムにおける同軸ケーブル近傍の電磁界強度の測定データを示す図である。
【図15】発明の実施形態に係る、共鳴式非接触給電システムにおける同軸ケーブル近傍の電磁界強度の測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の概要は次の通りである。本実施形態の共鳴式非接触給電システムでは、一次側及び二次側の共鳴コイル部の周囲を金属ケース(金属シールド)で覆い、その金属ケースを同軸線ケーブルの外導体と電気的に接続する。さらに、共鳴式非接触給電システムを電気自動車等の充電システムに提供した場合に、充電時にガイドラインの基準値を超える電磁界強度の領域を低減し、センサ等を極力設置せずに安全区域を確保する。そのために、給電時(充電時)に、送電側及び受電側の金属ケース同士を電気的に接続させ、両金属ケース間の電位差をゼロにする。さらに充電時の車両配置の自由度を確保するために、金属ケース同士を電気的に接続する際に、位置ズレを吸収する構造の手段を採用する。
【0013】
まず、図4を参照して電気自動車の充電システムに適用する共鳴式非接触給電システム10のモデルを説明する。図2の共鳴式非接触給電システム510と異なる構成は、送電側金属シールド(金属ケース)80及び受電側金属シールド(金属ケース)90を設けた構成にあり、他の構成については同様の構成となっており、同様の構成要素については一部同一符号をしている。また、共鳴式非接触給電システムにおける電力伝送原理については、引用文献1に開示の技術を用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0014】
共鳴式非接触給電システム10は、送電側(一次側)ディバイスとして、高周波電源20と、一次コイル30と、一次共鳴コイル35とを備える。送電側(一次側)ディバイスは、電気自動車の充電システムに実装された場合に、路面に埋め込まれる。一次コイル30は送電側同軸ケーブル60を用いて高周波電源20に接続されている。より具体的には、高周波電源20は、電源筐体24の内部に発振源22を備え、送電側同軸ケーブル60によって一次コイル30に接続されている。また、電源筐体24はグランドGNDに接地されている。接地の態様については、専用アース線で接地されてもよいし、ACケーブルのFG線等で接地されてもよい。
【0015】
さらに、共鳴式非接触給電システム10は、送電側金属シールド80を備え、一次コイル30及び一次共鳴コイル35の周囲を覆っている。送電側金属シールド80は、例えば、受電側(二次側;図示右側)が開口となっているスチール製や銅製等の良導体の金属でできたケース状(筒状)を呈している。つまり送電側金属シールド80のシールド側面82は、一次コイル30及び一次共鳴コイル35の周囲を前記の開口を除いて完全に覆っている。なお、送電側金属シールド80の形状は、シールドケースとして機能する形状であればよく、円筒状、角柱状等を適宜採用することができる。また、材質についても導電体であればよい。
【0016】
また、送電側金属シールド80のシールド底面84には、高周波電源20と一次コイル30との間の伝送路のための伝送用開口が設けられており、その伝送用開口に送電側同軸ケーブル60が接続されている。より具体的には、送電側同軸ケーブル60の同軸ケーブル外導体64の一方の端部(図示右側)が、送電側金属シールド80のシールド底面84に接続されている。また、同軸ケーブル外導体64の他方の端部(図示左側)が、高周波電源20の電源筐体24に接続されている。さらに、同軸ケーブル内導体62は、高周波電源20の発振源22と一次コイル30とを直接接続している。
【0017】
一方、共鳴式非接触給電システム10は、受電側(二次側)ディバイスとして、負荷装置50と、二次コイル40と、二次共鳴コイル45とを備える。受電側(二次側)ディバイスは、電気自動車の充電システムに実装された場合に、車両に搭載される。負荷装置50の負荷筐体54の内部には充電池等の負荷52が設けられる。負荷装置50と二次コイル40とは受電側同軸ケーブル70によって接続されている。
【0018】
また、送電側の送電側金属シールド80と同様に、共鳴式非接触給電システム10は、二次コイル40と二次共鳴コイル45とを覆う受電側金属シールド90を備える。具体的には、受電側金属シールド90は、例えば、送電側(一次側;図示左側)が開口となっているスチール製や銅製等の良導体金属でできたケース状(筒状)を呈している。つまり受電側金属シールド90のシールド側面92は、二次コイル40及び二次共鳴コイル45の周囲を前記の開口を除いて完全に覆っている。なお、受電側金属シールド90の形状は、シールドケースとして機能する形状であればよく、円筒状、角柱状等を適宜採用することができる。また、材質についても導電体であればよい。
【0019】
また、受電側金属シールド90のシールド底面94には、負荷装置50と二次コイル40との間の伝送路のための伝送用開口が設けられており、その伝送用開口に受電側同軸ケーブル70が接続されている。より具体的には、受電側同軸ケーブル70の同軸ケーブル外導体74の一方の端部(図示左側)が、受電側金属シールド90のシールド底面94に接続されている。同軸ケーブル外導体74の他方の端部(図示右側)が、負荷装置50の負荷筐体54に接続されている。同軸ケーブル内導体72は、負荷筐体54内部の負荷52と直接接続している。
【0020】
そして、以上の構成を有する共鳴式非接触給電システム10では、発振源22から一次コイル30への伝送路及び負荷52から二次コイル40への伝送路が形成された状態において、発振源22は、例えば数MHz〜数10MHzの高周波を発振し、発振出力は一次コイル30に供給される。一次共鳴コイル35は一次コイル30の電力を増幅し、二次共鳴コイル45に向けた電磁界を発生させる。二次共鳴コイル45は、一次共鳴コイル35で発生した電磁界と結合し、二次コイル40に誘導電流を生じさせる。その結果、負荷52に電力が供給されることになる。
【0021】
このとき、上述したように従来の共鳴式非接触給電システム510の送電側では、送電側同軸ケーブル60の同軸ケーブル外導体64内側だけでなく外側をも通じて接地GNDに誘導電流が流れ込むことから、送電側同軸ケーブル60の周囲に放射電磁界が発生していた。共鳴式非接触給電システム510の受電側では、二次共鳴コイル45からの電磁界の全てが二次コイル40と結合せずに、一部の電磁界が同軸ケーブル外導体74と結合し伝送損失となる誘導電流を発生させ、その結果、受電側同軸ケーブル70の周囲に放射電磁界を発生させていた。
【0022】
しかし、本実施形態では、送電側同軸ケーブル60及び受電側同軸ケーブル70内への伝送エネルギの収集が向上している。つまり、送電側(一次側)の共鳴部(一次コイル30及び一次共鳴コイル35)の周囲を送電側金属シールド80で覆い、送電側金属シールド80と送電側同軸ケーブル60の同軸ケーブル外導体64を電気的に接続しているので、送電側の同軸ケーブル外導体64の外側に流れ出ていた電流を内側に収集することができる。同様に、受電側(二次側)の共鳴部(二次コイル40及び二次共鳴コイル45)の周囲を受電側金属シールド90で覆い、受電側金属シールド90と受電側同軸ケーブル70の同軸ケーブル外導体74を電気的に接続しているので、受電側の同軸ケーブル外導体74の外側に流れ出ていた電流を同軸ケーブル外導体74の内側に収集することができる。その結果、伝送効率の向上と放射電磁界の低減を実現することができる。
【0023】
ところで、図4で示した構成により、放射電磁界の発生の低減を実現できるが、電気自動車の充電システムにおいては、上述したように大電力伝送が想定されるため、一層の低減が必要となる。上記の構成では、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の間に電位差が生じる可能性ある。電位差が発生すると電界が発生する。また、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90との間の空間S1から外部に電磁界が漏れる可能性はある。従来と比較すると大きく低減することができているが、ゼロに近づけることが望ましい。
【0024】
そこで、図5に示すように、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90とを電気的に接続するケース接続部12を設けることで、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90との電位差を解消し、電位差に起因する電界発生を防止する。
【0025】
つぎに、図6の共鳴式非接触給電システム110を参照して、電気自動車の充電システムに適用した際の具体例について説明する。基本的な構成は上述の共鳴式非接触給電システム10と同一である。
【0026】
図示のように、高周波電源20や一次共鳴コイル35等の送電側ディバスは路面に埋め込まれている。一次共鳴コイル35は、路面近傍に配置されている。一次共鳴コイル35の周囲は、図4や図5で示したように送電側金属シールド80で覆われている。ここでは、送電側金属シールド80の図示上側(車両1側)がシールド材が無く開口となっている。ただし、その開口は、樹脂等の材質のフタ体88で覆われている。フタ体88の材質は、電界等の結合に影響を与えない材質が好ましい。
【0027】
また、送電側金属シールド80のシールド側面82の上側先端部近傍には、ケース接続部12として送電側ケース接続部14が設けられている。具体例については図7〜9で説明するが、送電側ケース接続部14は、導電体であって、その形状が変形可能に構成されている。より具体的には、送電側ケース接続部14は、板状体であって、充電していない通常は所望の形状を維持しつつ、車両1の受電側金属シールド90に接した際に、接続が確実になされるように変形可能になっている。例えば、導電性ゴムや表面を導電性加工した樹脂材などがある。また、送電側ケース接続部14は、通常は、路面に水平に配置され、充電時にモータ等により鉛直方向に駆動される。なお、送電側ケース接続部14は、車両1の停車位置誤差や、受電側金属シールド90の形状の多様性等を考慮して、複数で構成されることが好ましい。
【0028】
一方、バッテリ装置である負荷装置50や二次共鳴コイル45等の受電側ディバイスは、車両1に搭載されている。二次共鳴コイル45は、車両1の床面近傍に配置されている。二次共鳴コイル45の周囲は、図4や図5で示したように受電側金属シールド90で覆われている。ここでは、受電側金属シールド90の図示下側(路面側)がシールド材が無く開口となっている。ただし、その開口は、樹脂等の材質のフタ体98で覆われている。フタ体98の材質は、電界等の結合に影響を与えない材質が好ましい。
【0029】
また、受電側金属シールド90のシールド側面92の下側先端部近傍には、ケース接続部12として受電側ケース接続部13が設けられている。具体例については図7〜9で説明するが、受電側ケース接続部13は、導電体であって形状が変形可能に構成されている。より具体的には、受電側ケース接続部13は、板状体であって、充電していない通常は所望の形状を維持しつつ、充電位置である送電側金属シールド80に接した際に、接続が確実になされるように変形可能になっている。例えば、導電性ゴムや表面を導電性加工した樹脂材などがある。また、受電側ケース接続部13は、通常は、車両1の床面(下側外面)に水平に配置され、充電時にモータ等により鉛直方向になるように駆動される。なお、受電側ケース接続部13は、送電側ケース接続部14と同様に、車両1の停車位置誤差や送電側金属シールド80の形状の多様性等を考慮して、複数で構成されることが好ましい。
【0030】
なお、ここでは、受電側ケース接続部13及び送電側ケース接続部14の両方について備える共鳴式非接触給電システム110については説明したが、いずれか一方のみが備わる構成であってもよい。
【0031】
そして、車両1が充電のために一次共鳴コイル35等の送電側ディバイスの上に位置したときに、一次共鳴コイル35と二次共鳴コイル45は対向する。そして、充電のための送電に先立ち、ケース接続部12である受電側ケース接続部13及び送電側ケース接続部14がその位置を駆動制御される。その結果、図6に示したように、受電側ケース接続部13は受電側金属シールド90に接続し、送電側ケース接続部14は送電側金属シールド80に接続する。このとき、受電側ケース接続部13及び送電側ケース接続部14は、車両1と路面との間隔よりも長く形成されており、接続時に押しつけられるように撓むことで、電気的接続状態が良好に維持される。一般に、充電に先立ち、車両1と送電側ディバイスを管理する装置の間で、通信によるユーザ認証処理が行われると考えられる。その認証処理の1プロセスに、ケース接続部12の接続が確保されているか否かの判断を組み込ませることで、接続がなされていない場合に充電処理に移らないように制御する等して、安全な充電システムを実現できる。
【0032】
つぎに、受電側ケース接続部13及び送電側ケース接続部14の構成バリエーションについて図7〜9を参照して説明する。
【0033】
図7は、車両1側の受電側金属シールド90に受電側ケース接続部13(13a、13b)を設け、送電側金属シールド80にはケース接続部12(送電側ケース接続部14)を設けない構成を示している。
【0034】
送電側金属シールド80では、シールド側面82の上側端部、つまり路面側の端部に、開口端部を外側に所定長だけ延出し車両1の床面と対向するような形成された面形状のシールド前面部86(86a、86b)が設けられている。延出する長さは、車両1の停止位置のずれについて許容できる範囲を想定して設定される。
【0035】
そして、充電しない際には、図7(a)に示すように、受電側ケース接続部13(13a、13b)は、水平状態に維持される。充電する際には、受電側ケース接続部13が垂直になるように駆動され、図7(b)に示すように、図示右側の受電側ケース接続部13aが図示右側のシールド前面部86aに撓みつつ接続している。一方、図示左側の受電側ケース接続部13bは、鉛直状態に制御されても、直下にシールド前面部86が位置していないため、水平状態に収容される。直下にシールド前面部86が存在するか否かは、シールド前面部86が導電体であることから、既知のセンシング技術で実現ができる。
【0036】
図8は、図7の構成とは逆に、ケース接続部12(送電側ケース接続部14a、14b)を送電側金属シールド80にのみ設けた構成を示している。
【0037】
受電側金属シールド90では、シールド側面92の下側端部、つまり床面側端部に、開口端部を外側に所定長だけ延出し路面と対向するような形成された面形状のシールド前面部96(96a、96b)が設けられている。延出する長さは、車両1の停止位置のずれについて許容できる範囲を想定して設定される。
【0038】
そして、充電しない際には、図8(a)に示すように、送電側ケース接続部14(14a、14b)は、床面と平行(水平)状態に維持される。充電する際には、送電側ケース接続部14が垂直になるように駆動され、図8(b)に示すように、図示右側の送電側ケース接続部14aが図示右側のシールド前面部96aに撓みつつ接続している。一方、図示左側の送電側ケース接続部14bは、鉛直状態に制御されても、真上にシールド前面部86bが位置していないため、水平状態に収容される。真上にシールド前面部96が存在するか否かは、シールド前面部96が導電体であることから、既知のセンシング技術で実現できる。
【0039】
図9は、ケース接続部12を送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の両方に設けた構成を示している。送電側金属シールド80は、シールド前面部86を備えるとともに送電側ケース接続部14を備える。同様に、受電側金属シールド90は、シールド前面部96を備えるとともに受電側ケース接続部13を備える。そして、充電の際には、受電側ケース接続部13と送電側ケース接続部14が垂直になるように駆動して、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90が電気的に接続される。ここでは、図示右側の送電側ケース接続部14aと左側の受電側ケース接続部13bが垂直になって撓みつつ接続されている。一方、接続に使用されない破線で示す図示左側の送電側ケース接続部14bと右側の受電側ケース接続部13aは、水平に維持されている。
【0040】
なお、どのケース接続部12を垂直するか、または水平にするかについては、上述の通りシールド前面部86、96のセンシング結果を利用することができる。また、受電側ケース接続部13、送電側ケース接続部14の両方とも接続に使用できる場合も想定できる。そのような場合には、予め優先的に動かすケース接続部12を設定しておけば円滑な運用が可能となる。
【0041】
つづいて、図10〜15を参照して、送電側金属シールド80(送電側ケース)と受電側金属シールド90(受電側ケース)とをケース接続部12で電気的に接続した共鳴式非接触給電システム110と、ケース接続部12で接続していない共鳴式非接触給電システム10において、放射電磁界を計測したのでその結果を説明する。図10はケース接続部12で接続していない共鳴式非接触給電システム10に対応する測定系のシステム構成を示し、図11はケース接続部12で接続した共鳴式非接触給電システム110に対応する測定系のシステム構成を示している。
【0042】
図10と図11の測定系のシステム構成の概要は以下の通りである。
(1)高周波電源20:
周波数13.56MHZ(±1MHz)、出力電力3kW。
(2)同軸ケーブル1(送電側同軸ケーブル60):
同軸ケーブル(3m)を高周波電力の伝送線として利用し、高周波電源20とループコイル(一次コイル30)とを接続する。
電磁界測定箇所…5箇所(50cm間隔)
(3)同軸ケーブル2(受電側同軸ケーブル70):
同軸ケーブル(2m)を高周波電力の伝送線として利用し、受電側ループコイル(二次コイル40)とアッテネータ(負荷)とを接続。
(4)ループコイル(30、40):
銅製 直径150mm、銅線直径5mm。
送電側と受電側は同構造である。
(5)共鳴コイル(35、45):
銅製 直径300mm 内径185mm、銅線直径5mm、ピッチ5mm 渦巻き型。
送電側と受電側とは同構造であり、コイル間距離200mm。
(6)金属ケース(送電側及び受電側金属シールド80、90):
送電側及び受電側同軸ケーブル60、70の同軸ケーブル外導体64、74に接続されて、ループコイル(30、40)と共鳴コイル(35、45)を覆う。
(7)負荷装置50:
アッテネータで受電側の高周波電力を所定量減衰させ、スペクトラムアナライザにて信号レベルを測定する。
(8)ケース接続部12<図11;本実施形態のみ>:
送電側及び受電側金属シールド80、90をケース接続部12で接続して、両金属シールド間の電位差をゼロとする。
【0043】
図12に、一次共鳴コイル35と二次共鳴コイル45との中心からの距離と電界強度の関係に関する測定結果を示す。図示のように、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90とをケース接続部12で接続しない場合、計測された電界は位置P6で初めてICNIRP人体保護ガイドライン(以下、「ガイドライン」という)である27.5V/mを下回る。これは、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の間から漏れる電界が大きいためであり、危険区域が広くなっている。一方、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90とをケース接続部12で接続して電位差をゼロとした場合、外部に漏れる電界は大幅に低減される。電界は位置P2(概ね500mm地点)でほぼガイドラインと同じ値となり、位置P3(概ね600mm地点)では下回っている。このように、電界がガイドラインを上回る危険な区域を大幅に縮小させることができる。
【0044】
図13に、一次共鳴コイル35と二次共鳴コイル45との中心からの距離と磁界強度の関係に関する測定結果を示す。図示の計測結果では、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90を接続した条件において、接続しない条件と比較して、大幅な変化はないものの一定の低減が見られる。これは、磁界は、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の電位差に起因するのではなく、一次共鳴コイル35と二次共鳴コイル45の間での電磁結合エネルギとして発生し、漏れ出す量は、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の距離に大きく依存するためである。したがって、送電側金属シールド80と受電側金属シールド90の距離が固定であるために、磁界の変動はあまり観測されない。
【0045】
図14及び図15に、送電側及び受電側同軸ケーブル60、70の近傍の電磁界強度(電界及び放射電磁界)の測定結果を示す。図14は送電側金属シールド80と受電側金属シールド90とをケース接続部12で電気的に接続していない共鳴式非接触給電システム10の測定結果を、図15はケース接続部12で電気的に接続した共鳴式非接触給電システム110の測定結果を示す。
【0046】
測定条件の概要は以下の通りである。
・各測定点に電磁界センサを設置する。測定点から電磁界センサ面までの垂直距離を50mmとする。
・高周波電源20から、周波数13.56MHzの3kW電力を出力し、電磁界センサにより測定された電界の最高値、及び磁界の最高値を取得する。
【0047】
まず、図14に示すように、ケース接続部12を有していない共鳴式非接触給電システム10では、送電側の電界に関して、400〜800V/mの値が計測されている。受電側では、概ね200〜400V/mの値が計測されている。また、磁界に関しては、概ね0.2〜0.5A/mの値が測定されている。
【0048】
一方で、ケース接続部12を備えた共鳴式非接触給電システム110に関しては、図15に示す測定結果となり、電界及び磁界のいずれも、ほぼゼロの値となった。このように、ケース接続部を備えた共鳴式非接触給電システム110を採用することで、放射電磁界を大幅に低減することができる。
【0049】
以上、本実施の形態によると、簡易的かつ低コストで伝送効率を向上させることができ、さらに放射電磁界を低減できる。また、共鳴コイル部の周囲にのみ金属ケースを配置することで、システム全体をシールドするよりも、重量を軽量化することができる。これによって、車両等の移動体に搭載された場合であっても、重量増によるエネルギ消費量の増加を抑制することができる。さらに、充電の際にも、危険区域を大幅に減少させることができ、危険区域への進入等に対する対策が容易となる。つまり、人感センサ等の装置を大幅に少なくすることができ、また、運用も簡易的なものとすることができる。
【0050】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。上記の実施形態は例示であり、各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、一次共鳴コイル35や二次共鳴コイル45は、一次コイル30や二次コイル40を用いたループ給電タイプ(間接タイプ)であるが、直接給電するタイプの構成であってもよい。また、設けられているケース接続部12(受電側ケース接続部13及び送電側ケース接続部14)のうち、接続している数に応じて送電出力を変更してもよいし、所定数以下の場合に、送電出力を低下させてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10、110、510 共鳴式非接触給電システム
20 高周波電源
22 発振源
24 電源筐体
30 一次コイル
35 一次共鳴コイル
40 二次コイル
45 二次共鳴コイル
50 負荷装置
52 負荷
54 負荷筐体
60 送電側同軸ケーブル
62、72 同軸ケーブル内導体
64、74 同軸ケーブル外導体
66 同軸オスコネクタ部
88、98 フタ体
70 受電側同軸ケーブル
80 送電側金属シールド
82、92 シールド側面
84、94 シールド底面
86、96 シールド前面部
90 受電側金属シールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源に同軸ケーブルによって接続された送電側共鳴コイル部から受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムに用いられる送電側装置であって、
前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記同軸ケーブルの外導体によって前記高周波電源の筐体に電気的に接続される送電側シールド部と、
前記送電側シールド部を、前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容する受電側シールド部に対して、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段と
を備えることを特徴とする共鳴式非接触給電システムの送電側装置。
【請求項2】
前記シールド接続手段は、充電するときに前記送電側シールド部と前記受電側シールド部とを接続し、充電しないときには収容されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の共鳴式非接触給電システムの送電側装置。
【請求項3】
高周波電源に接続された送電側共鳴コイル部から、負荷装置に同軸ケーブルによって接続された受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムに用いられる受電側装置であって、
前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記同軸ケーブルの外導体によって前記負荷装置の筐体に電気的に接続される受電側シールド部と、
前記受電側シールド部を、前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容する送電側シールド部に対して、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段と
を備えることを特徴とする共鳴式非接触給電システムの受電側装置。
【請求項4】
前記シールド接続手段は、充電するときに前記受電側シールド部と前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の共鳴式非接触給電システムの送電側装置。
【請求項5】
高周波電源に第1の同軸ケーブルによって接続された送電側共鳴コイル部から、負荷装置に第2の同軸ケーブルによって接続された受電側共鳴コイル部へ非接触の共鳴作用によって電力を伝送する共鳴式非接触給電システムであって、
前記送電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記第1の同軸ケーブルの外導体によって前記高周波電源の筐体に電気的に接続される送電側シールド部と、
前記受電側共鳴コイル部を良導体で外側から覆って収容するとともに、前記第2の同軸ケーブルの外導体によって前記負荷装置の筐体に電気的に接続される受電側シールド部と、
前記送電側シールド部と前記受電側シールド部とを、位置ズレを吸収可能に電気的に接続するシールド接続手段と、
を備えることを特徴とする共鳴式非接触給電システム。
【請求項6】
前記シールド接続手段は、前記受電側シールド部に設けられており、充電するときに前記受電側シールド部と前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の共鳴式非接触給電システム。
【請求項7】
前記シールド接続手段は、前記送電側シールド部に設けられており、充電するときに前記受電側シールド部と前記送電側シールド部とを電気的に接続し、充電しないときには収容可能に構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の共鳴式非接触給電システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−228148(P2012−228148A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96362(P2011−96362)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】