説明

内燃機関とオルタネータ−スタータとを接続する動力伝達機構

本発明は、動力伝達機構に関し、内燃機関(M)のクランクシャフト(V)が、特にベルト式の可撓性のあるリンクを用いて動力伝達装置を介してオルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)に接続される動力伝達機構に関する。本発明は、2状態接続装置を有し、その状態とは、機関を始動させる段階に対応する第1の状態であって、オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)が機関(M)のクランクシャフト(V)を第1の伝達比で駆動させる第1の状態と、機関のクランクシャフト(V)が、オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)を第2の伝達比で駆動させる第2の状態とであって、第1の伝達比は、第2の伝達比より高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、特にベルト型の、可撓性のあるリンクを使用する伝達装置によって、オルタネータ−スタータのシャフトに内燃機関を接続する動力伝達機構である。
【背景技術】
【0002】
オルタネータ−スタータを、直接使用して内燃機関を始動させてスタータモータとして作動させる能力を検討する価値が高まりつつある。
【0003】
明らかな利点は、(重量のある高慣性の環状部と電動機とを備えた)現在のスタータ装置が省略されることと、オルタネータ−スタータにこの機能が直接組み込まれることとである。
【0004】
オルタネータ−スタータは、その動力の点で、この新しい機能への調整が必要であるが、経済的なバランスは、確実なままである。
【0005】
始動中に、クランクシャフトが、ブレーキとして機能し、また、駆動を行うのが、オルタネータ−スタータである。駆動トルクは、オルタネータ−スタータにより供給される。
【0006】
始動モードにおいては、クランクシャフトが、駆動を行い、オルタネータ−スタータが、ブレーキとして機能する。駆動トルクは、クランクシャフトにより供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、機関を始動させるために必要とされるトルクが、非常に高い(例えば90N.mを超え、例えば250N.mと280N.mとの間のトルクである)場合、現在既知のオルタネータ−スタータにより供給される最大トルクは、5から6オーダーの伝達比を必要とし、これは、機関が始動されると、この減速比によって、オルタネータ−スタータのシャフト速度が36000rpmに相当し得ることを意味する。
【0008】
結果として、現在の技術水準では、オルタネータ−スタータは、低い出力または中間の出力であって、そのための始動トルクが約90N.mを下回る機関にしか使用できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、始動トルクが高い内燃機関をオルタネータ−スタータと接続させ得るか、あるいは低出力または中間の出力の機関については、始動トルクが、先行技術におけるよりも低いオルタネータ−スタータを使用し得る動力伝達機構である。
【0010】
したがって、本発明は、特にベルト型のリンクを用いる動力伝達装置を介して、オルタネータ−スターターのシャフトに内燃機関のシャフトを接続する動力伝達機構であって、2状態接続装置を有し、該状態は、機関を始動させるための段階に対応する第1の状態であって、オルタネータ−スタータのシャフトが、機関のシャフトを第1の伝達比で駆動させる第1の状態と、機関のシャフトが、オルタネータ−スタータのシャフトを第2の伝達比で駆動させる第2の状態とであって、第1の伝達比は、第2の伝達比より高い動力伝達機構に関する。
【0011】
接続装置は、接続装置を選択的に第1または第2の状態にするために、駆動トルクの方向を検出する手段を備えることが好ましい。
【0012】
本動力伝達機構は、前記シャフトと同軸の第1のプーリーと第2のプーリーとを有し、可撓性のあるリンクの動力伝達装置は、特に、第1のプーリーと第2のプーリーとそれぞれ協働し、第1の伝達比および第2の伝達比を与えるように装着された第1の可撓性リンクと第2の可撓性リンクとを有し、接続装置が第1の状態になると、第1のプーリーは、オルタネータ−スタータのシャフトに接続されて、前記第1の伝達比を与え、接続装置が第2の状態になると、第2のプーリーは、オルタネータ−スタータのシャフトに接続されて、前記第2の伝達比を与えることを特徴とすることが好ましい。
【0013】
第1のプーリーの直径は、前記第2のプーリーの直径よりも小さいことが好ましい。
【0014】
本機構は、次いで、シャフトの角速度が第2のプーリーの角速度を下回ると、接続装置を第2の状態にする手段を接続装置が備えることを特徴とする。
【0015】
第1の変形によれば、本機構は、第1の可撓性リンクおよび第2の可撓性リンクが、それぞれ、第1のプーリーと、機関のシャフトに締め付け固定されたプーリーの溝との間、ならびに第2のプーリーと、機関のシャフトに固定されたプーリーの溝との間に装着されることを特徴とすることが好ましい。
【0016】
第2の変形によれば、本機構は、第1の可撓性リンクが、第1のプーリーと、二重中間プーリーの第1の溝との間に装着されており、二重中間プーリーの第2の溝は、第2のプーリーと、機関のシャフトに固定されたプーリーの溝との間に装着された第2の可撓性リンクを受け入れることを特徴とする。
【0017】
特に、第1の溝の直径は、第2の溝の直径よりも大きい。
【0018】
特に好ましい一実施形態によれば、本機構は、中間プーリーと、オルタネータ−スタータの第2のプーリーとの間の、第2の可撓性リンクのストランド部分に配置された引っ張り部材を備える。このストランド部分は、実際、(ぴんと張られるストランド部分に対して)たるむストランド部分が、始動モードにおいておよび機関が始動するとたるむという特徴を有している。
【0019】
第1の実施形態の変形によれば、本機構は、オルタネータ−スタータのシャフトに装着された接続装置が、第1の動力伝達装置と第2の動力伝達装置とを備え、それらは、締め付け固定解除可能であり、シャフトと、第1のプーリーとの間に第1の動力伝達装置が、また、シャフトと、第2のプーリーとの間に第2の動力伝達装置が、対向させて装着され、相対的な角速度によって、シャフトと対応のプーリーとを締め付け固定したり締め付け固定解除したりすることを特徴とする。
【0020】
この変形の好ましい実施形態によれば、前記締め付け固定解除可能な動力伝達装置は、自由ホイールを含み、2つの自由ホイールは、逆向きに装着される。
【0021】
第2の変形によれば、本機構は、接続装置が、第1のプーリーと第2のプーリーとの間に配置され、少なくとも1つの接続部材を含み、該接続部材は、前記シャフトの軸線に長手方向に平行に、第1の接続状態と第2の接続状態とに対応する2つの位置の間をそれぞれ移動され得ることを特徴とする。
【0022】
この第2の変形の好ましい実施形態によれば、本機構は、長手方向に可動な接続部材が、選択装置を含み、該選択装置は、第1の螺旋状接続部、特に、ねじ溝または螺旋状ランプあるいは螺旋状カム経路を、オルタネータ−スタータのシャフトに締め付け固定された相補的な第2の螺旋状接続部と協働させ、少なくとも1つの側面で、動力伝達部材に、特に、摩擦ライニングまたは噛み合い部に当接するとともに、第1のプーリーおよび第2のプーリーの一方の側面に面することを特徴とする。
【0023】
よって、本機構は、選択装置が、第1のプーリーの側面に面し且つ第1の動力伝達部材に当接する第1の側面と、前記シャフトの軸線に平行移動し得る制御部材に当接する第2の側面とを有するとともに、第2のプーリーの側面の方を向き、かつ摩擦ライニングからなる第2の動力伝達部材を当接する端面を有し、選択装置は、ばねのような少なくとも1つの弾性戻し部材に当接し、該弾性戻し部材は、前記摩擦ライニングが、第2のプーリーの前記側面を押圧するように制御部材に押圧力をかけることを特徴とする。
【0024】
または、選択装置が、動力伝達部材に当接しかつ第1のプーリーの側面に面する第1の側面と、動力伝達部材に当接しかつ第2のプーリーの側面に面する第2の側面とを有し、前記シャフトの軸線に平行に選択装置に対して長手方向に移動し得る制御部材を有し、該制御部材は、第2のプーリーの側面に面し、また、摩擦ライニングからなる第2の動力伝達部材に当接する側面を有し、選択装置は、ばねのような弾性戻し部材に当接し、該弾性戻し部材は、前記摩擦ライニングが第2のプーリーの前記側面を押圧するように制御部材に押圧力をかけることを特徴とする。
【0025】
あるいは、選択装置が、動力伝達部材に当接し且つ第1のプーリーの側面に面する第1の側面と、動力伝達部材に当接しかつ第2のプーリーの側面に面する第2の側面とを有し、また、制御部材であって、選択装置に締め付け固定され、選択装置を任意の長手方向位置に対し、選択装置と、第1のプーリーおよび第2のプーリーの少なくとも一方との間における相対角度位置に応じたトルクを生じさせる制御部材を有することを特徴とする。
【0026】
この最後の場合、制御部材は、弾性変形可能な部材を有し、該弾性変形可能な部材は、長手方向の両端部に、変形可能な領域を有し、該変形可能な領域は、少なくとも前記選択装置が長手方向の1つの位置になると第1のプーリーの側面と、第2のプーリーの側面と、それぞれ接触し得る。
【0027】
または、制御部材は、少なくとも1つの側面に、磁気部材を有し、該磁気部材は、第1のプーリーおよび第2のプーリーの一方の側面が当接する相補的な磁気部材に面し得る。
【0028】
あるいは、選択装置は、反対側の2つの側面に、動力伝達部材を有し、一方の動力伝達部材は、第1のプーリーの側面に面し、他方の動力伝達部材は、第2のプーリーの側面に面し、制御部材には、環状磁気部材が、選択装置の周縁に配置され、第2のプーリーに締め付け固定された相補的な環状磁気部材に面して配置され得る。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、選択装置に締め付け固定される制御部材は、摩擦部材に、特に、変形可能であって、第2のプーリーの環状領域の周縁に配置されそれと接触する摩擦部材にすることができる。
【0030】
本機構は、選択装置が、動力伝達部材に当接しかつ前記第1のプーリーの側面に面する第1の側面と、動力伝達部材に当接しかつ前記第2のプーリーの側面に面する第2の側面とを有し、また、制御部材であって、前記選択装置に対して平行移動可能であり、少なくとも1つの側面に、磁気部材を具え、該磁気部材は、前記第1のプーリーの側面および前記第2のプーリーの側面の一方が当接する相補的な磁気部材に面する、制御部材を有する特徴を具え得る。
【0031】
前記第1および第2のプーリーの少なくとも1つ、または中間二重プーリーを、接続解除プーリーにすることができる。
【0032】
さらに別の変形によれば、接続装置は、第1の動力伝達装置および第2の動力伝達装置を含み、該動力伝達装置は、締め付け固定解除可能であり、反対に作用するように装着され、第1の動力伝達装置は、第1のプーリーと同軸であり、第2の動力伝達装置は、二重中間プーリーと同軸である。特に、これらの締め付け固定解除可能な動力伝達装置は、前記第1および第2の装置を反対方向に作動させるために、反対方向に作動する螺旋状の接続部を有上述の種々のタイプのものにすることができる。それらはまた、反対方向のトルクに機能的に応答する自由ホイールにしてもよい。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、図面と関連して、以下の説明を読むことにより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1Aおよび図1Bに示した機構は、クランクシャフトVに装着された二重のプーリー30と、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着され直径が異なる2つのプーリー2および3とを備え、本アセンブリは、2つのベルト4および5により接続されている。
【0035】
2つのプーリー2および3は、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に対して自由に回転する。オルタネータ−スタータのシャフト1に装着されている6番めの部材である選択装置Sは、そのシャフトに対する回転を制限されている。前記「選択装置」は、トルクの方向によって反応し、プーリー2または3の一方または他方に自動的に接続されて、シャフト1とクランクシャフトVとを2つの速度伝達比にする。
【0036】
始動段階において、オルタネータ−スタータのシャフト1が、駆動され、選択装置は、プーリー2に接続される。その後、プーリー2は、高い速度伝達比で、ベルト4を介してクランクシャフトVを駆動する。プーリー3は、接続されておらず、本機構には作用しない。
【0037】
一度機関が始動すると、クランクシャフトVが、駆動する。ベルト5は、直径が異なるためにプーリー3をプーリー2より遅い角速度で駆動する。したがって、選択装置は、より低い速度伝達比でプーリー3に接続される。プーリー3は、駆動して、オルタネータ−スタータATDを駆動させ、今度は、このオルタネータ−スタータATDが、オルタネータとして機能する。プーリー2は、シャフト1への接続を解除されると、ベルト4により駆動されたままではあるが、オルタネータ−スタータATDにもはや動力を伝達しない。
【0038】
これによって、複数の速度伝達比を有する動力伝達機構を得られ、一方から他方への切り換えは、駆動トルクの方向に基づいて、このトルクがオルタネータ−スタータATDまたは機関Mのいずれにより生成されるかによって、行われる。
【0039】
したがって、クランクシャフトVの端部にプーリー30が設けられた内燃機関Mは、オルタネータ−スタータATDを、始動機構として、また一度機関Mが始動すると発電機として使用する。
【0040】
機関Mとオルタネータ−スタータATDとの間の動力伝達は、それぞれ、可撓性のあるリンク4(特にベルト)による始動モードで、また可撓性のあるリンク5(特にベルト)による始動後モードで、行われる。これらは、一方で、機関MのクランクシャフトVの、二重のプーリーであるプーリー30に接続され、他方では、可撓性のあるリンク4および5用のオルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着されたプーリー2および3に接続される。
【0041】
このリンクは、シャフト1とプーリー2との間、よってシャフト1とプーリー3との間に対向させて装着されており締付固定を解除し得る伝達機構により得ることができ、その結果、動力は、始動モードでは、プーリー2および可撓性のあるリンク4により、シャフト1とクランクシャフトVのプーリー30との間に、動力が伝達され、また、始動後モードでは、プーリー3および可撓性のあるリンク5により、クランクシャフトVのプーリー30とシャフト1との間に、動力が伝達される(図3および図4)。
【0042】
可撓性のあるリンク4および5を使用して、様々な付属品を作動させ得る。図1Bに、プーリー8が、可撓性のあるリンク5により駆動され付属品9に接続された駆動系の一例を示す。
【0043】
同様に、ベルト4とともに回転するプーリー6と、ベルト5とともに回転するプーリー7とは、付属品(図示していないが、例えばパワーステアリング、エアコンディショニング、ウォータポンプなど)を駆動する場合があるし、あるいは可撓性のあるリンク4および5に張力をかけるための機構として機能する場合がある。
【0044】
(オルタネータ−スタータATDのシャフト1上に動力伝達選択機構を使用して)前述した解決法を改良するために、またクランクシャフトVのプーリー30へ最小限の変更を行うために、中間二重プーリー23を使用し得る(図2Aおよび図2Bを参照)。こうすることによって、プーリー2により供給された始動動力が、直径D1のプーリー23に装着され可撓性のあるリンク4から、直径D2のプーリー23に装着され可撓性のあるリンク5を経て、クランクシャフトVのプーリー30へ伝達され得る。
【0045】
オルタネータ−スタータATDが、オルタネータモードで使用されるとき、クランクシャフトVのプーリー30と、オルタネータ−スタータATDのプーリー3との間の動力の伝達は、前のように、可撓性のあるリンク5により行われる。次に、二重プーリー23は、アイドラープーリーとして作動する。
【0046】
D1とD2との間の直径の比は、内燃機関Mを始動させ、また、それと同時に、可撓性のあるリンク4とプーリー2および23と、並びに可撓性のあるリンク5とプーリー23とに十分な接触面積を維持し得るようなものにする必要がある。
【0047】
この構成では、クランクシャフトV用の通常のプーリー30を使用し得る。二重プーリー23は、付属品を駆動させ得る。2つの可撓性のある各リンク4および5は、必要な回転速度で、付属品を(例:プーリー8から9を経て)駆動させ得る。プーリー23は、テンショナタイプの引っ張り機構に装着してもよく、あるいは、直接弾性ベルトによりこのように機能させてもよい。プーリー7は、引っ張り機構に装着してもよく、こうすることの利点は、可撓性のあるリンク5に張力をかけて(このリンク5が、クランクシャフトVのプーリー30に動力を伝達する)、オルタネータ−スタータATDの作動モードとは無関係に、最適な張力にする機構を得られることである。始動モード中に、動力が、プーリー23からクランクシャフトVのプーリー30へ伝達され、また、引っ張り部材として作動するプーリー7は、プーリー23とプーリー2との間の、可撓性のあるリンク5のたるんだストランド部分に配置される。さらに、オルタネータモードでは、クランクシャフトVのプーリー30から、可撓性のあるリンク5を経て、オルタネータ−スタータATDのプーリー3へ、動力が伝達され、引っ張り部材として作動するプーリー7が、再度、リンク5のたるんだストランド部分に配置される。可撓性のあるリンクを、張力のかかった状態に維持するために、引っ張り部材を、最良の位置に、ここに示した2つの作動モードにおけるように、(ぴんと張られたストランド部分に対して)たるんだストランド部分上に配置する。
【0048】
図3から図8に、シャフト1(またはそれの延長部)とプーリー2との間と、シャフト1(またはそれの延長部)とプーリー3との間とに、それぞれ対向させて装着した自由ホイール装置41および42による駆動トルクが検出される一実施形態を示す。
【0049】
始動モード(図5および図6)
内燃機関は作動しておらず、プーリー2および3は、可撓性のあるリンク4および5を介して、クランクシャフトVのプーリー30にそれぞれ接続されて、静止している。電圧がオルタネータ−スタータATDに印加されると、オルタネータ−スタータATDのシャフト1は、角速度ω1で回転し始める。シャフト1とプーリー2との間に動力を伝達する動力伝達装置41は、シャフト1をプーリー2に締め付け固定するように係合する(図5)。動力が、シャフト1からプーリー2に伝達される。したがって、プーリー2は、角速度ω2=ω1で回転する。プーリー2は、内燃機関を始動させるために、可撓性のあるリンク4により、半径Rを有するクランクシャフトVのプーリー30を速度ωで回転させる。クランクシャフトVのプーリー30は、角速度ωで回転し、可撓性のあるリンク5によってプーリー3に接続されるので、プーリー3は、角速度ω3で回転する。速度計算は、以下の通りである。
【数1】

【0050】
したがって、計算は、ω3がω1よりも小さいことを示し、これは、動力伝達機構が、プーリー3と係合せず、シャフト1との締め付け固定を解除していることを意味する。よって、シャフト1とプーリー3とに動力は伝達されない(図6)。
【0051】
オルタネータ作動モード(図7および図8)
内燃機関が、始動し、クランクシャフトVのプーリー30が、角速度ωで回転している。プーリー2および3は、速度ω2およびω3でそれぞれ駆動される。オルタネータ−スタータATDは、オルタネータモードに切り替わり、動力はもはや供給されず、速度ω1は減少傾向にある。シャフト1とプーリー2との間に動力を伝達する動力伝達装置41が、それらの締め付け固定を解除する。プーリー2とシャフト1との間には、もはや動力が伝達されない(図7)。速度ω1が、速度ω3よりも低くなった瞬間に、プーリー3とシャフト1との間に動力を伝達する動力伝達装置42が、これら2つの部材を締め付け固定する。よって、動力が、プーリー3とシャフト1との間に伝達される(図8)。
【0052】
以下の実施形態では、自動選択装置10(図9を参照)を実施しており、この装置は、例えばプーリー2の側面2’とプーリー3の側面3’との間に配置されて、作動モードがそれぞれスタータモードであるかまたはオルタネータモードであるかによって、動力を、一方ではシャフト1とプーリー2との間に、他方ではプーリー3とシャフト1との間に伝達させ得る。
【0053】
選択装置は、中間の伝達部材として使用されると、シャフト1の軸線に沿って移動して、摩擦面、嵌合機構、磁気伝動、または他の種々のタイプの機構であって、選択装置10を備え付けて、シャフト1とプーリー2との間、またシャフト1とプーリー3との間にトルクを伝達し得る機構を用いることによって、動力を伝達させ得る。
【0054】
完全自律式に作動し得るように、自動選択装置は、オルタネータ−スタータATDの作動モードを決定し、かつ一時的なモードを管理するように自己制御を行う必要があり、スタータモードからオルタネータモードへの切り換えおよびその逆の切り換えを行う必要がある。
【0055】
選択装置10を案内するための(図10Bに示すねじ、またはカム経路を用いた)螺旋状のガイド装置12を使用することによって、作動モードの変化を検知可能である。また、制御部材11は、選択装置10、特に選択装置10の側面10”に締め付け固定される場合もあるしされない場合もある制御部材11によって、シャフト1とプーリー2との間に、またシャフト1とプーリー3との間に動力を伝達するための正確な位置(必要な作動モードにより異なる)に選択装置を配置可能である。制御装置は、選択装置10を、(作動停止になった場合には)螺旋状のガイド12から外し、また螺旋状のガイド12内に転置するのに必要なトルクを提供する。
【0056】
摩擦ライニングを有する選択装置を備えた機構(図10A)
プーリー2および3は、ベアリング17および17’によりそれぞれシャフト1’とピボット接続されている。
【0057】
摩擦ライニングを有する選択装置を備えた機構が、図4に示した機構のものと同じ位置に、かつ類似した状態で配置されている。選択装置10は、シャフト1’に接続され、このシャフト1’は、それ自体が、螺旋状の接続部12によりオルタネータ−スタータATDのシャフト1に完全に接続されている。制御部材11は、選択装置10に対する軸方向への転置をガイド部材13により制限されている。選択装置10および制御部材11からなるアセンブリの各側には、摩擦ライニング15および16が、(選択装置10の側面10’に、また制御部材11の側面11’にそれぞれ)固定されている。これらの摩擦ライニング15および16は、選択装置10および制御部材11のアセンブリによって、プーリー2と、シャフト1に完全接続されたシャフト1’との間に、またプーリー3と、シャフト1に完全接続されたシャフト1’との間に必要なトルクを伝達し得るようなものと定められる。
【0058】
1つまたは複数の弾性部材14(特にばね)は、制御部材11と摩擦ライニング16とからなるアセンブリに圧力をかけてそれをプーリー3の側面3’に押し付けて、選択装置10がその作動モードによって正確に配置され得るように、螺旋状の接続部12に沿って選択装置10を正確に転置するのに要する最低限のトルクを制御部材11に永続的に伝達する。
【0059】
スタータ作動モード(図10Aおよび図10B)
内燃機関は、作動しておらず、また、プーリー2および3は、可撓性のあるリンク4および5を介してクランクシャフトVのプーリー30にそれぞれ接続されており、静止している。オルタネータ−スタータに電力が印加された瞬間、オルタネータ−スタータATDのシャフト1およびシャフト1’が、回転し始める。弾性部材14の圧力が制御部材11にかけられて、制御部材11が摩擦ライニング16を介してプーリー3に接続されることによって生じる抵抗トルクは、ガイド部材13を介して、選択装置10がプーリー3に対して固定され回転しない状態を維持し得る。シャフト1が回転しているので、選択装置10は、シャフト1’の螺旋状の接続部12に沿って軸方向に転置されて、プーリー2に接しよってプーリー2の側面2’と螺旋状の接続部12との間に押し込められ、最終的に、押し込み圧力を摩擦ライニング15にかけることによって、シャフト1に締め付け固定されたシャフト1’と同じ速度でプーリー2を回転させる。プーリー2は、シャフト1と同じ速度で回転駆動させられ、したがって、可撓性のあるリンク4によりクランクシャフトVのプーリー30がプーリー2に接続されることによって、機関が、始動し作動する。
【0060】
オルタネータ作動モードへの切換
内燃機関が、点火され、クランクシャフトVのプーリー30が、速度ωで回転している。プーリー2および3は、速度ω2およびω3でそれぞれ駆動されている。オルタネータ−スタータATDは、オルタネータモードへ切り換えられ、もはや電力が供給されず、速度ω1は、減少傾向にあり、また、速度ω2は、一定のままかまたはさらに増加する傾向にある。その後、選択装置10と摩擦ライニング15とからなるアセンブリは、プーリー2と、シャフト1’の螺旋状の接続部12とから外される。制御部材11および摩擦ライニング16を含むアセンブリは、弾性部材14が押圧して力をかける結果として、なおプーリー3に接している。プーリー3の速度ω3は、一定のまま、または増加傾向にあり、よって、ω2>ω1>ω3であることから、シャフト1と、可動なアセンブリ10、11、15、16とに滑りが生じる。螺旋状の接続部12は、ω2>ω1であることから、選択装置10をプーリー2と係合させず、また同じ理由で、選択装置10は、ω1>ω3であることから、プーリー3と係合しない。したがって、シャフト1とプーリー2との間、およびシャフト1とプーリー3との間に滑りがある。したがって、シャフト1のω1がプーリー3の速度ω3を下回ると、制御部材11と摩擦ライニング16とからなるアセンブリは、選択装置10に駆動トルクをかけ、その速度は、シャフト1の速度と等しく、選択装置10が、プーリー3へ向かって軸方向に転置され、その後、選択装置アセンブリ10が、プーリー3の側面3’とシャフト1’の螺旋状接続部12との間に、制御部材11および摩擦ライニング16を介して押し込まれる。その場合、動力が、プーリー3と、シャフト1’に固定されたシャフト1との間に伝達される。
【0061】
したがって、機構12は、下記機能を果たす。選択装置10の回転が、(例えば、制御部材11とともに回転するガイド部材13によって)制限されるとき、また、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に締め付け固定されたシャフト1’が、前者とは異なる速度で回転するとき、選択装置10が、螺旋状の接続部12において軸方向に転置され、これは、シャフト1’の、選択装置10に対する相対的な回転によって行われる。それに必要なのは、選択装置10とシャフト1’との間のトルクの差を、図10Bにさらに詳細を示した螺旋状の接続部12の内側摩擦による一般に小さい力に打ち勝つのに十分な大きさにすることである。
【0062】
図10Cに、例えば本出願人の会社によるフランス国特許発明第2 734 034号明細書、または欧州特許第12669号明細書におけるように、1つまたはそれ以上のエラストマーブロック24からなる接続解除装置24をオルタネータプーリー3内へ組み込んだ、図10Aのものと同様の機構を示す。そのような装置は、オルタネータモードで接続解除する機能を果たし得るプーリー2などの他のある部材内に容易に組み込まれる。それは、既知の既存の機構または新規な機構からなる場合がある。
【0063】
図11に示した本機構は、図10Aから図10Cのそれと類似しているが、動力伝達部材15および16が、選択装置10の各側に配置されている。それらは、摩擦型または噛み合い型にしてもよい。制御部材11は、永続的にトルクを提供することを目的とする摩擦ライニング18が設けられた面11’を有し、そのトルクによって、制御部材11が、選択装置10をガイド部材13により螺旋状の接続部12に沿って軸方向に移動させる必要がある。オルタネータ−スタータATDとプーリー2との間、ならびにオルタネータ−スタータATDとプーリー3との間に動力を伝達する機能と、制御部材11へ最小量のトルクを伝達する機能とは、このように分けられた。
【0064】
図12および図13に示した機構は、選択装置10内に部材18(エラストマータイプの変形可能な材料、特にゴムから形成される場合がある)を組み込み、その部材は、その形状によって、プーリー2との接触面19と、プーリー3との接触面19’とを有する。変形可能な部材18は、変形可能な部材18とプーリー2、ならびに変形可能な部材18とプーリー3との間にトルクを得られるように、選択装置10が占める各位置において、2つのプーリー2および3の一方または他方と(または同時に両方と)の19または19’における接触を可能にし、変形可能な部材18に締め付け固定されている選択装置10を、作動モードによって、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に接続されたシャフト1’に沿って螺旋状の接続部12上に移動させる。
【0065】
スタータモード(図13)
ここに示した本機構の作動は、弾性部材18とプーリー3とが、始動モードにおいて、永続的接触はせず、よって、不必要な摩擦が回避されることを除いて、図10Aから図10Cのそれと類似している。
【0066】
弾性部材18とプーリー2との間の接触部19によって、内燃機関Mが始動するときに、選択装置10に十分なトルクを供給することができ、シャフト1の角速度ω1は、プーリー2の角速度ω2を下回って、選択装置10と弾性部材18とからなるアセンブリの、プーリー2との締め付け固定が、解除される。
【0067】
オルタネータモードへの切換
プーリー2から締め付け固定を解除された、選択装置10および弾性部材18を含むアセンブリは、再度、弾性部材18を介して接触面19’においてプーリー3に接する。プーリー3が、ω1より速い角速度ω3で回転していると、シャフト1のその速度によって、接触部19’で摩擦して、螺旋状ガイド12上を選択装置10が移動する。選択装置10および弾性部材18のアセンブリは、プーリー3から締め付け固定が解除されて、動力が、動力伝達部材16を介してシャフト1により伝達され得る。
【0068】
図14に、磁気制御機構を示す。この機構は、図10Aから図10Cのものと類似する制御を用いるが、選択装置の機構に作用を及ぼすために摩擦力の代わりに磁力を用いる。
【0069】
選択装置10は、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に締め付け固定されたシャフト1’の螺旋状接続部12にある。制御部材11は、選択装置10との滑動接続部13内にあり、プーリー2および3の側面近くには磁気部材22および22’(多極永久磁石にしてもよい)が設けられている。同様に、プーリー2および3の側面上の磁気部材に面して配置されているのは、部材20および20’(ヒステリシスを示す材料から作製可能)であって、それらは、エアギャップ21および21’(磁気絶縁材料から作製可能)により部材20および20’からそれぞれ隔てられている。この磁気アセンブリ20から22、および20’から22’によって、制御部材11に、図12に示した例のような作動をするように、作動モードによって駆動または抵抗トルクが与えられ得る。部材20および20’のように、回転磁界にさらされる、ヒステリシスを示す材料から作製された部材が、動きと逆のトルクを作り出し、これは、図12の摩擦部材18と同等の作動に相当する。さらに、選択装置10が、螺旋状ガイド12上を移動し得るのに十分な制御トルクを有する必要もある。
【0070】
この機構の変形が、制御に十分なトルクを生成する、磁気制御アセンブリ(例えば、20’、21’および22’)を1つのみ使用することである。
【0071】
図15に、組み込み型の磁気制御機構を使用する実施形態を示す。この機構の動作原理は、前のもの(図14)と類似している。違いは、個別の制御部材がなく、磁気部材22および22’が、選択装置10内に組み込まれていることである。この場合、磁気部材22および22’が選択装置10とともに移動するので、エアギャップを用いる必要はもはやない。磁気部材22および22’と、それらに対向して、プーリー2にある部材20とプーリー3にある部材20’とは、可変エアギャップを伴ってシャフト1’を有する螺旋状接続部12上において選択装置10を移動させ得るのに十分な制御トルクを提供する。
【0072】
前の機構の場合と同様に、磁気アセンブリ(例えば20’および22’)を1つのみ使用して、選択装置10を移動させ得る。
【0073】
図16では、全体が円筒形の磁気制御機構を使用している。図15の機構の場合と同様に、選択装置10は、その外周に磁気部材22(多極磁化されたリング型にし得る)を有し、また、対向して、部材20(ヒステリシスを示す材料から作製される場合がある)がプーリー3に固定されている。前のものを超えるそのような機構の利点は、一方では、一定のエアギャップの間隔を維持することであり、また、磁気部材22が、常に、それと対向して配置された部材20上の、それ自体に相当する領域に「対面」しているということである。この構成では、磁気アセンブリ20および22により生成される制御トルクによって、選択装置が、作動モード(始動モードまたは始動済みモード)により螺旋状ガイド12上を移動する。
【0074】
図17に、外周接触を用いる選択装置を有する機構を実施する実施形態を示す。この機構の動作原理は、図16のものに類似しているが、磁気アセンブリではなく摩擦部材18を使用している。変形可能な材料、例えばエラストマーからなる環状摩擦部材18が、選択装置10に固定され、部材18の周囲の少なくとも一部分を延びる接触部19”において、プーリー3と摩擦接触している。19”において生成される摩擦トルクによって、選択装置10が、作動モードにより移動され得る。さらに、始動モードにおいてプーリー3上の部材18の摩擦を制限するために、プーリー3上に傾斜した摩擦面35を用いることができる。
【0075】
図18では、(前の方法の)可撓性のあるリンク5は、クランクシャフトVのプーリー30と、オルタネータ−スタータATDのプーリー3と、付属品Cの3c(それのシャフト1cにより特定されるが、図示せず)との間に動力をそれぞれ伝達する。同様に、可撓性のあるリンク4(色を濃くしている)は、オルタネータ−スタータATDのプーリー2と、付属品Cのプーリー2cとの間に、動力をそれぞれ伝達する。図面では、また理解しやすいように、付属品3Cに装着された機構の部材には、文字cを添えている。
【0076】
提案された解決法では、選択装置を単純にして2つのプーリーを使用する(図19および図20では複数のプーリーを示している)。図2Aの解決法に基づいて、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着される自動選択機構を単純化することができ、これは、一方を、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に、また他方を、付属品C(図18には図示せず)のシャフトである場合があるシャフト1cに装着する、2つの選択機構を用いることにより、行う。この解決法には、ほぼ同様の2つの選択機構を使用し、構成部品の数が減少し大きさが小さくなるという利点がある。この構成では、付属品Cのシャフト1cは、(最新の駆動系内における場合)オルタネータ−スタータATDのシャフト1より遅い標準角速度で回転する。
【0077】
始動モード
オルタネータ−スタータATD(図19)において。
【0078】
内燃機関Mは、作動しておらず、クランクシャフトVは、静止しており、オルタネータ−スタータATDは、駆動され、シャフト1が、回転を開始する。シャフト1に固定されたシャフト1’は、ガイド24によってプーリー2を回転させる。
【0079】
弾性部材14は、プーリー3のベアリング17に軽く押圧力をかけて、選択装置10に固定された摩擦ライニング15にこのプーリーを接触させる。その後、プーリー3は、選択装置アセンブリ10および15から部分的に固定を解除可能であり、この固定解除は、クランクシャフトVのプーリー30に固定され可撓性のあるリンク5による抵抗トルクを作用させた状態で、かつ、螺旋状接続部12を介した選択装置10へのシャフト1’の駆動トルクによって、行われ、これらは、両方とも、弾性部材14により提供される押圧力と関連する。よって、プーリー3と、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着された自動選択装置アセンブリとが滑動する。
【0080】
付属品C(図20)において、プーリー2cは、プーリー2の速度ω2および各半径に比例して、可撓性のあるリンク4によって速度ω2cで回転駆動される。したがって、計算により、以下の結果が得られる。
【0081】
【数2】

【0082】
図20では、図19のものと相応の部材には、文字cを添えた同じ参照番号をつけている。
【0083】
付属品Cのシャフト1cに装着され図20に示した自動選択装置は、2つの違いを除いて、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着されたものと類似する。
−プーリー2cの直径が、プーリー2より大きいこと、
−螺旋状接続部12cの方向が、螺旋状接続部12とは逆であること。
【0084】
上述した第2の違いには、選択装置10と逆に選択装置10cを作動させるという効果がある。プーリー2cが、ガイド24cによりシャフト1cおよび1’cに始動トルクを伝達するとき、プーリー3cの押圧力が、クランクシャフトVのプーリー30に固定された可撓性のあるリンク5により提供される抵抗トルクに関連して、弾性部材14cによって提供され、このことには、選択装置アセンブリ10cおよび15cを、プーリー3cが摩擦ライニング15’cに押し付けられるまで移動させる効果があり、摩擦ライニング15’cは、フランジ25cに固定され、フランジ25cは、ナットアセンブリ26cによりここでもシャフト1’cに対して固定されている。
【0085】
プーリー3cは、シャフト1’cに、かつ付属品Cのシャフト1cに装着された自動選択装置アセンブリにこのように締め付け固定される。最後に、駆動トルクが、シャフト1’cから、クランクシャフトVのプーリー30に伝達される。プーリー3cは、オルタネータ−スタータAのシャフト1に選択的に自動装着されるプーリー2および3の直径と同様の直径であって、比kにより異なる速度ω3c=ω2cで回転し、よって、それはω1より遅い。これによって、トルクC3cが得られる。
【0086】
【数3】

このモードにおける駆動トルクは、オルタネータ−スタータATDのトルクである。この場合、kが小さいほど、クランクシャフトVのプーリー30に伝達されるトルクが大きくなる。
【0087】
この構成では、付属品Cの回転速度は、比kに比例し、したがって、オルタネータ−スタータATDのシャフトの回転速度ω1より遅い。
【0088】
オルタネータモード
内燃機関Mが、始動し、伝達部全体に駆動トルクを伝達している。トルクの方向が逆になるので、付属品Cおよびオルタネータ−スタータATDは、受け手である。
【0089】
この例では、オルタネータ−スタータATDのシャフト1上の自動選択装置と、付属品C(またはそれの延長部)のシャフト1c上の自動選択装置とは、始動モードと逆に作動する。
【0090】
オルタネータ−スタータATD(図19)では、可撓性のあるリンク5により回転駆動されるプーリー3が、選択装置アセンブリ10および15に押圧力をかけ、その力は、弾性部材14によるものであり、また、シャフト1’と選択装置10との間の螺旋状接続部12への、オルタネータ−スタータATDのシャフト1の抵抗トルクに関連している。このトルクによって、選択装置10が、プーリー3を摩擦ライニング15’に押しつけるように螺旋状接続部12上を軸方向に移動される。摩擦ライニング15’に固定されるフランジ25は、ナットアセンブリ26によりシャフト1に対して不動にされ、これによって、選択装置アセンブリ10および15を使用して、プーリー3をシャフト1’に固定し、クランクシャフトVのプーリー30からオルタネータ−スタータATDのシャフト1へ動力を伝達する。同様に、シャフト1’に固定されたプーリー2は、可撓性のあるリンク4により付属品Cのプーリー2cへ動力を伝達する。
【0091】
付属品C(図20)では、可撓性のあるリンク5により回転駆動されるプーリー3cが、選択装置アセンブリ10cおよび15cに駆動トルクをかける。同時に、シャフト1cが、シャフト1’cを有する螺旋状接続部12cを介して、選択装置10cに抵抗トルクをかける。これによって、選択装置10cが、螺旋状接続部12c上を軸方向に、付属品Cのシャフト1cに装着された自動アセンブリからプーリー3cのような部分が固定解除されるまで転置されることになる。この段階において、弾性部材14cによって、選択装置10cが、選択装置10cに固定された摩擦ライニング15cの上においてプーリー3cが最も滑動する場所へ連続して軸方向に転置されることが保証されて、接触部品の加熱が抑制され得る。
【0092】
この場合、プーリー2cは、シャフト1’cに固定されていて、可撓性のあるリンク4と、オルタネータ−スタータATDのシャフト1に装着された自動選択装置アセンブリとによって、クランクシャフトVのプーリー30から付属品Cに動力を伝達する。シャフト1cの回転速度ω1cが、比kに比例することに留意すべきであり、よって、それは、オルタネータ−スタータATDの速度ω1より遅い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1A】本発明に係る第1の動力伝達機構を示す。
【図1B】本発明に係る第1の動力伝達機構を示す。
【図2A】本発明に係る第2の動力伝達機構を示す。
【図2B】本発明に係る第2の動力伝達機構を示す。
【図3】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図4】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図5】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図6】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図7】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図8】2つの自由ホイールを対向させて装着した、本発明に係る動力伝達機構を示す。
【図9】本発明に係る摩擦ライニングを有する選択装置の機構を示す。
【図10A】図9のA−Aにおける断面を示す。
【図10B】図9のA−Aにおける部分断面を示す。
【図10C】図9のA−Aにおける断面を示す。
【図11】制御に摩擦ライニングを使用し、噛み合い部により動力を接続する、本発明に係る機構を示す。
【図12】制御に少なくとも1つの変形可能な部材を使用する、本発明に係る機構を示す。
【図13】制御に少なくとも1つの変形可能な部材を使用する、本発明に係る機構を示す。
【図14】電磁結合と軸方向の転置とにより制御を行い、制御によって、選択装置に対する移動が可能である本発明の実施を示す。
【図15】電磁結合と軸方向の転置により制御を行い、制御によって、選択装置への締め付け固定を行い得る本発明の実施を示す。
【図16】周縁を機械的に接続することにより制御を行う、本発明の1つの実施を示す。
【図17】摩擦を利用して周縁を接続することによって制御を行う、本発明の実施を示す。
【図18】図2Aの変形である動力伝達機構(図18)のための、本発明の別の実施を示す。
【図19】図2Aの変形である動力伝達機構(図18)のための、本発明の別の実施を示す、図18のA−Aにおける断面である。
【図20】図2Aの変形である動力伝達機構(図18)のための、本発明の別の実施を示す、図18のB−Bにおける断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にベルト型の可撓性リンクを用いる動力伝達装置を介して、オルタネータ−スターターのシャフトに内燃機関のシャフトを接続する動力伝達機構であって、
2状態接続装置を有し、該状態は、前記機関を始動させるための段階に対応する第1の状態であって、前記オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)が、前記機関(M)のクランクシャフト(V)を第1の伝達比で駆動させる前記第1の状態と、前記機関(M)のクランクシャフト(V)が、前記オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)を第2の伝達比で駆動させる第2の状態とであり、
前記第1の伝達比は、前記第2の伝達比より高いことを特徴とする前記動力伝達機構。
【請求項2】
前記接続装置は、前記接続装置を選択的に第1または第2の状態にするために、駆動トルクの方向を検出する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項3】
前記シャフト(1)と同軸の第1のプーリー(2)と第2のプーリー(3)とを有し、
前記動力伝達装置は、特に、前記第1のプーリー(2)と第2のプーリー(3)とそれぞれ協働し、前記第1の伝達比および第2の伝達比を与えるように装着されたベルトである、第1の可撓性リンク(4)と第2の可撓性リンク(5)とを有し、
前記接続装置が第1の状態になると、前記第1のプーリー(2)は、前記オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)に接続されて、前記第1の伝達比を与え、前記接続装置が第2の状態になると、前記第2のプーリー(3)は、前記オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)に接続されて、前記第2の伝達比を与えることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の動力伝達機構。
【請求項4】
前記接続装置は、前記シャフト(1)の角速度(ω1)が、前記第2のプーリー(3)の角速度(ω3)を下回ると、前記接続装置を第2の状態にする手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の機構。
【請求項5】
前記第1のプーリー(2)の直径は、前記第2のプーリー(3)の直径よりも小さいことを特徴とする請求項3および4のいずれかに記載の機構。
【請求項6】
前記第1の可撓性リンク(4)および前記第2の可撓性リンク(5)は、それぞれ、前記第1のプーリー(2)と、前記機関(M)のクランクシャフト(V)に固定されたプーリー(30)の溝との間、ならびに前記第2のプーリー(3)と、前記機関(M)のクランクシャフト(V)に締め付け固定されたプーリー(30)の溝との間に装着されていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の機構。
【請求項7】
前記第1の可撓性リンク(4)は、前記第1のプーリー(2)と、二重中間プーリー(23)の第1の溝(23)との間に装着されており、前記二重中間プーリー(23)の第2の溝(23)は、前記第2のプーリー(3)と、前記機関(M)のクランクシャフト(V)に締め付け固定されたプーリー(30)の溝との間に装着された前記第2の可撓性リンク(5)を受け入れることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の機構。
【請求項8】
前記第1の溝(23)の直径は、前記第2の溝(23)の直径よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記中間プーリー(23)と前記第2のプーリー(3)との間の、前記第2の可撓性リンク(5)のストランド部分に配置された引っ張り部材(7)を備えることを特徴とする請求項7および8のいずれかに記載の機構。
【請求項10】
前記接続装置は、第1の動力伝達装置(41)と第2の動力伝達装置(42)とを備え、前記シャフト(1)またはその延長部と、前記第1のプーリー(2)との間に第1の動力伝達装置(41)が、また、シャフト(1)またはその延長部と、前記第2のプーリー(3)との間に第2の動力伝達装置が、締め付け固定解除可能に対向して装着され、相対的な角速度によって、前記シャフト(1)と対応のプーリー(2、3)とを締め付け固定したり締め付け固定解除したりすることを特徴とする請求項3から9のいずれかに記載の機構。
【請求項11】
前記固定解除可能な動力伝達装置は、自由ホイールを含み、前記2つの自由ホイール(41、42)は、逆向きに装着されることを特徴とする請求項10に記載の機構。
【請求項12】
前記接続装置は、前記第1のプーリー(2)と前記第2のプーリー(3)との間に配置され、少なくとも1つの接続部材(10)を含み、該接続部材(10)は、前記シャフトの軸線に長手方向に平行に、前記第1の接続状態と第2の接続状態とに対応する2つの位置の間をそれぞれ移動され得ることを特徴とする請求項3から9のいずれかに記載の機構。
【請求項13】
前記長手方向に可動な接続部材は、選択装置(10)を含み、該選択装置(10)は、第1の螺旋状接続部(12)、特にねじ溝または螺旋状カム経路を、前記オルタネータ−スタータ(ATD)のシャフト(1)に固定された相補的な第2の螺旋状接続部(12)と協働させ、少なくとも1つの側面(10’、10”)が、動力伝達部材(15、16)、特に摩擦ライニングまたは噛み合い部に当接し、かつ前記第1のプーリー(2)および第2のプーリー(3)の一方の側面(2’、3’)に面することを特徴とする請求項12に記載の機構。
【請求項14】
前記選択装置(10)は、前記第1のプーリー(2)の側面(2’)に面し且つ第1の動力伝達部材(15)に当接する第1の側面(10’)と、前記シャフト(1)の軸線に平行移動し得る制御部材(11)に当接する第2の側面(10”)とを有するとともに、前記第2のプーリー(3)の側面(3’)の方を向き、かつ摩擦ライニングからなる第2の動力伝達部材(16)に当接する端面を有し、
前記選択装置(10)は、ばねのような少なくとも1つの弾性戻し部材(14)に当接し、該弾性戻し部材(14)は、前記摩擦ライニング(16)が前記第2のプーリー(3)の前記側面(3’)を押圧するように前記制御部材(11)に押圧力をかけることを特徴とする請求項13に記載の機構。
【請求項15】
前記選択装置(10)は、前記第1のプーリー(2)の側面(2’)に面し動力伝達部材(15)に当接する第1の側面(10’)と、前記第2のプーリー(3)の側面(3’)に面し動力伝達部材(16)に当接する第2の側面(10”)とを有し、前記シャフト(1、1’)の軸線に平行に前記選択装置(10)に対して長手方向に移動可能な制御部材(11)を有し、該制御部材(11)は、前記第2のプーリー(3)の側面(3’)に面し摩擦ライニング(18)に当接する側面(11’)を有し、前記選択装置(10)は、ばねのような弾性戻し部材(14)に当接し、該弾性戻し部材(14)は、前記制御部材(11)の前記摩擦ライニング(18)が前記第2のプーリー(3)の前記側面(3’)を押圧するように、前記制御部材(11)に押圧力をかけることを特徴とする請求項13に記載の機構。
【請求項16】
前記選択装置は、動力伝達部材(15)に当接し且つ前記第1のプーリー(2)の側面(2’)に面する第1の側面(10’)と、動力伝達部材(16)に当接しかつ前記第2のプーリー(3)の側面(3’)に面する第2の側面(10”)とを有し、また、制御部材(11)であって、前記選択装置(10)とともに回転し、前記選択装置(10)の任意の長手方向位置に対し、前記選択装置(10)と前記第1のプーリー(2)及び前記第2のプーリー(3)の少なくとも一方との間における相対角度位置に応じたトルクを生じさせる前記制御部材(11)を有することを特徴とする請求項13に記載の機構。
【請求項17】
前記制御部材(11)は、弾性変形可能な部材(18)を有し、該弾性変形可能な部材(18)は、長手方向の両端部に、変形可能な領域(19、19’)を有し、該変形可能な領域(19、19’)は、少なくとも前記選択装置(10)が長手方向の1つの位置になると、前記第1のプーリー(2)の側面(2’)と、前記第2のプーリー(3)の側面(3’)と、それぞれ接触することを特徴とする請求項16に記載の機構。
【請求項18】
前記制御部材(11)は、少なくとも1つの側面に、磁気部材(22、22’)を有し、該磁気部材(22、22’)は、前記第1のプーリー(2)および前記第2のプーリー(3)の一方の前記側面(2’、3’)が当接する相補的な磁気部材(20、20’)に面することを特徴とする請求項16に記載の機構。
【請求項19】
前記選択装置(10)は、反対側の2つの側面(10’、10”)に、動力伝達部材(15、16)を有し、一方の動力伝達部材(15)は、前記第1のプーリー(2)の側面(2’)に面し、他方の動力伝達部材(16)は、前記第2のプーリー(3)の側面(3’)に面し、前記選択装置(10)には、環状磁気部材(22)が、周縁に配置され、前記第2のプーリー(3)に固定された相補的な環状磁気部材(20)に面して配置されることを特徴とする請求項16に記載の機構。
【請求項20】
前記選択装置(10)は、摩擦部材(18)、特に、変形可能であって、前記第2のプーリー(3)の環状領域(19”)の周縁に配置されそれと接触する前記摩擦部材(18)を有することを特徴とする請求項16に記載の機構。
【請求項21】
前記選択装置(10)は、動力伝達部材(15)に当接しかつ前記第1のプーリー(2)の側面(2’)に面する第1の側面(10’)と、動力伝達部材(16)に当接しかつ前記第2のプーリー(3)の側面(3’)に面する第2の側面(10”)とを有し、また、制御部材(11)であって、前記選択装置(10)に対して平行移動可能であり、少なくとも1つの側面(11’、11”)に、磁気部材(22’、22”)を具え、該磁気部材(22’、22”)は、前記第1のプーリー(2)の側面(2’)および前記第2のプーリー(3)の側面(3’)の一方が当接する相補的な磁気部材(20、20’)に面する、制御部材(11)を有することを特徴とする請求項13に記載の機構。
【請求項22】
前記接続装置は、第1の動力伝達装置および第2の動力伝達装置を含み、該動力伝達装置は、締め付け固定解除可能であり、逆に作用するように装着され、前記第1の動力伝達装置は、前記第1のプーリー(2)と同軸に装着され、前記第2の動力伝達装置は、前記二重中間プーリー(23)と同軸に装着されることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
締め付け固定解除可能な前記第1の動力伝達装置および前記第2の動力伝達装置は、前記第1および第2の装置を反対方向に作動させるために、反対方向に作動する螺旋状の接続部を有することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
締め付け固定解除可能な前記第1の動力伝達装置及び前記第2の動力伝達装置は、自由ホイールを含む請求項22に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2006−509154(P2006−509154A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558143(P2004−558143)
【出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003539
【国際公開番号】WO2004/053327
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591136931)
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
【Fターム(参考)】