説明

内燃機関のアイドル回転速度制御装置

【課題】冷凍車のキャビンと冷蔵室とのそれぞれを冷却するために要求される冷凍能力の差が大きい状況下において、冷凍装置34のA/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46の開閉操作による冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度の変動が生じること。
【解決手段】エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点のエンジン回転速度を基準として、エンジン回転速度が所定量α低下したことを複数回確認することに基づき、冷媒循環経路が切り替えられている状況であることを判断する。その後、エンジン回転速度の変動態様に基づき冷媒循環経路の切り替え周期を学習する。この学習された周期に基づき切替判定フラグを切り替え、この切り替えに応じてA/C用ISC補正量を庫内用ISC補正量だけ強制的に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて車両の荷室内の空気を冷却する荷室側蒸発器と、前記圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて前記車両の乗員室内の空気を冷却する乗員室側蒸発器と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器及び前記乗員室側蒸発器のそれぞれにつながる冷媒流路と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を切り替える切替手段とを有する冷凍装置について、該冷凍装置を備える車両に適用され、前記内燃機関の回転速度を目標値に一致させるように前記内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを操作する内燃機関のアイドル回転速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドル運転時において、エンジン回転速度を所定の低回転速度に制御すべく、エンジンに供給される吸気量を操作するアイドルスピードコントロール(ISC)を行うことが周知である。ここで、エンジン回転速度の目標値は、例えば下記特許文献1〜3に見られるように、エアコン負荷(例えば、コンプレッサの駆動トルク)に基づいて設定される。すなわち、冷凍サイクルにおいて冷媒を循環させるべくエンジンの動力によってコンプレッサが駆動されるため、これを駆動する分だけエンジンの負荷が増大する。このため、コンプレッサの駆動時における上記目標値がコンプレッサの停止時における目標値よりも大きく設定される。これにより、エンジン回転速度が過度に低下することで、エンジンストールが生じたり、冷凍サイクルの冷媒循環量の減少によって冷凍能力が不足したりする事態を回避することができる。
【0003】
一方、車両の中には、運転席のある乗員室(キャビン)に加えて、冷蔵室を備える車両(冷凍車)もある。この冷凍車においては、キャビンと冷蔵室とのそれぞれを冷却すべく、これらのそれぞれに対応するエバポレータを備え、これらに冷媒を供給することで、キャビンのみならず冷蔵室をも冷却するようにしている。
【0004】
また、上記冷凍車の中には、コスト削減等の目的で、キャビンを冷却するためのエバポレータと冷蔵室を冷却するためのエバポレータとのそれぞれに冷媒を供給するコンプレッサを共有化したものもある。詳しくは、キャビンを冷却するためのエバポレータにコンプレッサから冷媒を吐出供給する冷媒流路(キャビン側冷媒流路)と、冷蔵室を冷却するためのエバポレータにコンプレッサから冷媒を吐出供給する冷媒流路(冷蔵室側冷媒流路)と、これらの冷媒流路を開閉する電磁弁と、冷凍装置の各種制御を行う電子制御装置(冷凍装置ECU)とを備えたものもある。この冷凍装置においては、冷凍装置ECUによって上記電磁弁が開閉操作されることで、冷凍サイクルのキャビン側冷媒流路と冷蔵室側冷媒流路とを交互に切り替えることができ、ひいてはキャビンと冷蔵室との双方を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2539771号公報
【特許文献2】特許第3055445号公報
【特許文献3】特許第3210372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
但し、このような冷凍装置を備えるものにあっては、キャビン及び冷蔵室のそれぞれを冷却するために要求される冷凍能力の差が大きい状況下において、キャビン側冷媒流路と冷蔵室側冷媒流路との切り替えに起因してエンジン回転速度が大きく変動する事態が生じ得る。これは、各室内の温度が高いほど冷却に要求される冷凍サイクルの冷媒循環量が多くなり、ひいてはコンプレッサの駆動トルクが増大することによるものである。すなわち例えば、キャビンが高温であって且つ冷蔵室が低温である状況下、冷凍サイクルの冷媒循環量が冷蔵室冷却時よりもキャビン冷却時の方が多くなることがある。この場合、キャビンを冷却すべく冷媒流路が切り替えられると、冷媒循環量が増大することで、コンプレッサの駆動トルクが増大するおそれがある。このとき、エンジンの負荷が増大することでエンジン回転速度が過度に低下したり、エンジンストールを生じたりするおそれがある。
【0007】
特に、近年、キャビンや冷蔵室における冷凍能力を向上させることを目的として、冷凍サイクルの冷媒循環量を増大させるべく、冷媒吐出容量が多いコンプレッサが備えられている。このようなコンプレッサが備えられるものにあっては、上記要求される冷凍能力の差が大きい状況下において、上記冷媒流路の切り替えに起因して生じるコンプレッサの駆動トルクの増大が顕著となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関の回転速度の変動を好適に抑制することのできる内燃機関のアイドル回転速度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明は、内燃機関の動力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて車両の荷室内の空気を冷却する荷室側蒸発器と、前記圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて前記車両の乗員室内の空気を冷却する乗員室側蒸発器と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器及び前記乗員室側蒸発器のそれぞれにつながる冷媒流路と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を切り替える切替手段とを有する冷凍装置について、該冷凍装置を備える車両に適用され、前記内燃機関の回転速度を目標値に一致させるように前記内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを操作する内燃機関のアイドル回転速度制御装置において、前記切替手段により前記冷媒流路が切り替えられたか否かを判断する切替判断手段と、前記切替判断手段により前記切り替えられたと判断された場合、前記アクチュエータの操作量を強制的に変更する操作量変更手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
車両の荷室及び乗員室のそれぞれの冷却に要求される冷凍能力の差が大きい状況下、圧縮機から荷室側蒸発器又は乗員室側蒸発器に冷媒を吐出供給すべく上記冷媒流路が切り替えられた場合、冷凍サイクルの冷媒循環量が大きく変化する事態が生じ得る。このとき、内燃機関を動力供給源とする圧縮機の駆動トルクが大きく変化することで、内燃機関の負荷が大きく変化し、内燃機関の回転速度が大きく変動するおそれがある。この点、上記発明では、上記冷媒流路が切り替えられたと判断された場合、内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータの操作量を強制的に変更することで、同操作量を内燃機関の回転速度を目標値に一致させるうえで適切なものとすることができる。これにより、内燃機関の回転速度の変動を好適に抑制することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様に基づき、前記切り替えられたか否かを判断することを特徴とする。
【0013】
冷媒流路が切り替えられることに起因して、冷凍装置の冷凍サイクルの冷媒循環量が大きく変化することで、内燃機関の回転速度が変動し得る。上記発明では、この点に鑑み、内燃機関の回転速度の変動態様に基づいて冷媒流路が切り替えられたか否かを判断することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様として、前記内燃機関の回転速度が所定量変化したことに基づき、前記切り替えが行われたか否かを判断することを特徴とする。
【0015】
上記発明では、内燃機関の回転速度が所定量変化したことに基づいて冷媒流路が切り替えられたか否かを判断するため、この判断処理を簡素な構成で実現することができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の周期的な変動態様に基づき、前記切り替えられたか否かを判断することを特徴とする。
【0017】
車両の荷室及び乗員室のそれぞれの冷却に要求される冷凍能力の差が大きい状況下、圧縮機から荷室側蒸発器又は乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく冷媒流路が周期的に切り替えられる場合、切替手段による周期的な切り替えに応じて冷凍サイクルの冷媒循環量が変化し得る。そして、冷媒循環量が変化する場合、圧縮機の駆動トルクが周期的に変化することで、内燃機関の回転速度が周期的に変動する。上記発明では、この点に鑑み、内燃機関の回転速度の周期的な変動態様に基づいて冷媒流路が切り替えられたか否かを判断するため、冷媒流路が切り替えられた旨を高精度に判断することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、前記操作量変更手段は、前記周期的な切り替えの予測に基づき、前記アクチュエータの操作量を周期的に変更することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、冷媒流路の周期的な切り替えの予測に基づいてアクチュエータの操作量を強制的に変更するため、同操作量の強制的な変更をフィードフォワード制御によって行うことができ、ひいては内燃機関の回転速度の変動をより好適に抑制することができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記内燃機関の回転速度の変動周期を学習する学習手段を更に備え、前記操作量変更手段は、前記学習手段の学習結果に基づき、前記周期的な切り替えを予測することを特徴とする。
【0021】
上記発明では、学習手段によって学習された内燃機関の回転速度の変動周期に基づいて冷媒流路の周期的な切り替えを予測するため、この切り替え周期の予測精度を向上させることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記操作量変更手段により強制的に変更される前記アクチュエータの操作量を、前記内燃機関の回転速度が所定の回転速度以下とならないように規制する規制手段を更に備えることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、規制手段を備えることで、内燃機関の回転速度が所定の回転速度以下とならないようにすることができ、内燃機関の回転速度が過度に低下したり、ストールを生じたりする事態を好適に回避することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記操作量変更手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様に応じて、前記操作量の強制的な変更量を可変設定することを特徴とする。
【0025】
冷媒流路が切り替えられることに起因して内燃機関の回転速度が変動するのは、アクチュエータの操作量が内燃機関の回転速度を目標値に一致させるための適切な操作量からずれるためである。このため、操作量変更手段によって変更されるアクチュエータの操作量と、冷媒流路の切り替えに起因した内燃機関の回転速度の変動態様とは相関を有する。上記発明では、この点に鑑み、内燃機関の回転速度の変動態様に応じてアクチュエータの操作量を設定することで、この操作量を上記適切な操作量とすることができ、ひいては内燃機関の回転速度の変動をいっそう好適に抑制することができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、前記操作量変更手段は、前記切替判断手段により前記周期的な切り替えがなされていると判断された場合、前記操作量の強制的な変更量を徐々に増大させるものであることを特徴とする。
【0027】
車両の荷室及び乗員室のそれぞれの冷却に要求される冷凍能力の差が大きい状況下、荷室と乗員室との双方を冷却すべく冷媒流路が周期的に切り替えられることに起因して、冷凍サイクルの冷媒循環量が周期的に変化し得る。しかし、これらの冷凍能力の大小関係が何らかの理由で短時間のうちに逆転する場合、上記切り替えに起因して冷凍サイクルの冷媒循環量の変化する方向が想定していたものとは異なる事態が生じ得る。このとき、アクチュエータの操作量が強制的に変更されることで、この操作量が内燃機関の回転速度を目標値に一致させるための適切な操作量から大きくずれ、内燃機関の回転速度の変動が顕著となるおそれがある。この点、上記発明では、切替判断手段によって冷媒流路の周期的な切り替えがなされていると判断された場合、アクチュエータの操作量の強制的な変更量を徐々に増大させる。これにより、冷凍サイクルの冷媒循環量の変化する方向が想定していたものとは異なる事態が生じる場合であっても、内燃機関の回転速度の変動が大きくなるのを極力抑制することができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記内燃機関の出力軸には自動変速機の出力軸が接続され、前記操作量変更手段は、前記内燃機関の出力軸と前記自動変速機の出力軸との機械的な連結状態よりも解除状態の方が前記変更量の増大速度を大きく設定するものであることを特徴とする。
【0029】
切替手段の切り替えに起因して生じる内燃機関の回転速度の変動量について、内燃機関の出力軸と自動変速機の出力軸との機械的な連結が解除されている場合における内燃機関の回転速度の変動量は、上記機械的な連結が解除されていない場合よりも大きくなり得る。この点に鑑み、上記発明では、内燃機関の出力軸と自動変速機の出力軸との機械的な連結状態よりも解除状態の方がアクチュエータの操作量の変更量の増大速度が大きく設定される。これにより、上記変更量を内燃機関の出力軸と自動変速機の出力軸との機械的な連結状態に応じた適切なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態にかかるエンジンシステム及び冷凍装置の全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかるアイドル時のエンジン回転速度の制御に関する処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかる冷媒循環経路の切り替えによるエンジン回転速度の変動を例示するタイムチャート。
【図4】同実施形態にかかるISC補正量の算出処理の手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態にかかるISC補正量の変更処理の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態にかかるISC補正量の変更態様を示すタイムチャート。
【図7】第2の実施形態にかかるISC補正量の変更態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるアイドル回転速度制御装置を冷凍車のガソリンエンジンに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に本実施形態にかかるエンジンシステム及び空気調節システム(エアコンシステム)の全体構成を示す。図示されるように、吸気通路10には、この通路を流れる吸気量を調節すべく開度調節されるスロットルバルブ12が設けられている。また、吸気通路10には、スロットルバルブ12の上流側と下流側とが連通するようにバイパス通路14が接続されている。バイパス通路14には、この通路を流れる吸気量を調節するアイドルスピードコントロールバルブ(以下、ISCバルブ16)が設けられている。ISCバルブ16は、電磁ソレノイドで駆動される電磁弁であり、電磁ソレノイドに流れる駆動電流を変化させることで、このバルブの開度を調節し、上記吸気量を調節する。
【0033】
吸気通路10のうち、スロットルバルブ12の下流側には、エンジン18の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が接続されている。吸気マニホールド20の各枝管において、エンジン18の吸気ポート近傍に設けられる図示しない燃料噴射弁によって燃料が噴射され、この燃料が吸気とともに混合気としてエンジン18の燃焼室へ導入される。燃焼室において燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン18の出力軸(クランク軸22)の回転エネルギとして取り出される。ここで、エンジン18には、クランク軸22の近傍でクランク軸22の回転角度を検出するクランク角度センサ24や、エンジン18の冷却水の温度(冷却水温)を検出する水温センサ26が設けられている。
【0034】
一方、上記エアコンシステムを構成する冷凍装置34は、冷凍車のキャビンを冷却するための冷媒循環経路(以下、キャビン側冷媒循環経路)と、この冷凍車の冷蔵室を冷却するための冷媒循環経路(以下、冷蔵室側冷媒循環経路)とを備えている。ここで、本実施形態では、キャビン側冷媒循環経路と冷蔵室側冷媒循環経路とで、これら冷媒循環経路に冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出するコンプレッサ27や、このコンプレッサ27から吐出供給される冷媒が凝縮されるコンデンサ28、凝縮された冷媒が流入するレシーバ30等を共有している。
【0035】
ここで、コンプレッサ27は、エンジン18によって動力を供給されるものである。すなわち、コンプレッサ27は、電磁クラッチ31、ベルト32及びクランクプーリ33を介してクランク軸22と機械的に連結されている。これにより、電磁クラッチ31を接続状態とすることで、クランク軸22の回転エネルギがコンプレッサ27に伝達され、冷凍装置34の冷凍サイクルの冷媒が圧縮され、冷凍サイクルの冷媒を循環させる。ちなみに、コンプレッサ27は、駆動中は吐出容量が一定の固定容量型圧縮機である。また、コンデンサ28は、DCモータ等によって回転駆動されるコンデンサファン38から送風される空気と上記吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。更に、レシーバ30は、コンデンサ28より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。
【0036】
ここで、キャビン側冷媒循環経路と冷蔵室側冷媒循環経路とのいずれに冷媒が循環するかは、A/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46の切り替えに応じて決まる。これらA/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46は、通電の有無に応じて開閉する電子制御式の弁体である。詳しくは、本実施形態では、通電すると開弁し、通電を停止すると閉弁するノーマリークローズタイプのものを想定している。
【0037】
上記A/Cバルブ42,FIRバルブ44が開弁状態とされて且つ、冷凍バルブ46が閉弁状態とされる場合、キャビン側冷媒循環経路を冷媒が循環することで、キャビンが冷却される。すなわち、レシーバ30に貯蔵された液冷媒は、A/Cバルブ42を介して温度式膨張弁であるキャビン側膨張弁52によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、キャビンの空気を冷却するエバポレータ(以下、キャビン側エバポレータ54)に供給される。キャビン側エバポレータ54では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(以下、キャビン側エバファン56)から送風される空気と上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで冷媒が気化する。これにより、キャビン側エバファン56から送風された空気が冷却され、キャビンに設けられる図示しない吹出し口からこの空気がキャビンに供給され、キャビンを冷却することができる。キャビン側エバポレータ54で気化した冷媒は、FIRバルブ44を介してコンプレッサ27の吸入口に吸入される。
【0038】
一方、上記A/Cバルブ42,FIRバルブ44が閉弁状態とされて且つ、冷凍バルブ46が開弁状態とされる場合、冷蔵室側冷媒循環経路を冷媒が循環することで、冷蔵室が冷却される。すなわち、レシーバ30に貯蔵された液冷媒は、冷凍バルブ46を介して温度式膨張弁である冷蔵室側膨張弁58によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、冷蔵室の空気を冷却するエバポレータ(以下、冷蔵室側エバポレータ60)に供給される。冷蔵室側エバポレータ60では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(以下、冷蔵室側エバファン62)から送風される空気と上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで冷媒が気化する。これにより、冷蔵室側エバファン62から送風された空気が冷却され、冷蔵室に設けられる図示しない吹出し口からこの空気が冷蔵室に供給され、冷蔵室を冷却することができる。冷蔵室側エバポレータ60で気化した冷媒は、逆止弁64を介してコンプレッサ27の吸入口に吸入される。ちなみに、逆止弁64は、冷蔵室側冷媒循環経路において、コンプレッサ27の吸入口側から冷蔵室エバポレータ60側への冷媒の逆流を防止するために設けられるものである。
【0039】
冷凍装置34を各種制御する電子制御装置(以下、冷凍装置ECU65)は、周知のCPU、ROM、RAM、タイマ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。冷凍装置ECU65には、冷蔵室の温度(庫内温度)を検出する庫内温度センサ66及び庫内温度の目標値を設定する庫内温度設定スイッチ68の出力信号が入力される。冷凍装置ECU65は、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、各種入力に応じてA/Cバルブ42やFIRバルブ44、冷凍バルブ46、コンデンサファン38、キャビン側エバファン56及び冷蔵室側エバファン62等の各種機器を操作する。そして、これら各種機器が操作されることで、キャビンのみを冷却したり、冷蔵室のみを冷却したり、更にはキャビンと冷蔵室との双方を冷却したりすることができる。
【0040】
一方、エンジンシステムを各種制御するための電子制御装置(以下、エンジンECU70)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。エンジンECU70には、キャビンの温度を検出するキャビン温度センサやキャビンの温度の目標値を設定するキャビン温度設定スイッチ等の各種センサ78やキャビンを冷却すべくコンプレッサ27の駆動指令となるA/Cスイッチ72、キャビン側エバファン56の送風量を設定するA/Cブロワスイッチ74、外気温度を検出する外気温センサ76、クランク角度センサ24及び水温センサ26からの出力信号や、クランク軸22と接続される図示しない自動変速機の操作状態が入力される。エンジンECU70は、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、各種入力に応じて、コンプレッサ27を駆動させるべく電磁クラッチ31への通電を制御したり、アイドル時におけるエンジン回転速度を制御すべくISCバルブ16を操作したりする。
【0041】
上記キャビンや冷蔵室の冷却に関する制御は、エンジンECU70と冷凍装置ECU65とが双方向の通信を行うことで情報のやりとりを行いつつ行われる。図2に、エンジンECU70や冷凍装置ECU65の行う処理のうち、特に上記冷却に関する処理を示す。
【0042】
冷凍装置ECU65において、冷蔵要求判断部B1は、庫内温度設定スイッチ68の出力信号と、庫内温度センサ66の検出値に基づく庫内温度とから冷蔵室の冷却要求があるか否かを判断する。具体的には、庫内温度が庫内温度の目標値(例えば5〜20℃)よりも高い場合、冷蔵室の冷却要求があると判断する。また、冷蔵要求判断部B1は、エンジンECU70の後述するA/Cオン要求判断部B2の出力値(A/Cオン要求信号)や上記冷蔵室の冷却要求の有無に基づいてキャビン及び冷蔵室のうち少なくとも一方の冷却要求があると判断する場合、コンプレッサ27の駆動に備えてエンジン回転速度の目標値(目標回転速度)を大きくするように補正(アイドルアップ)することを要求する信号(アイドルUP要求信号)をエンジンECU70の後述する目標回転速度算出部B4へ出力する。
【0043】
一方、エンジンECU70において、A/Cオン要求判断部B2は、A/Cスイッチ72、A/Cブロワスイッチ74及びキャビン温度設定スイッチの出力信号と、キャビン温度センサの検出値に基づくキャビン温度とから、キャビンの冷却要求があるか否かを判断する。具体的には、A/Cスイッチ72とA/Cブロワスイッチ74との双方がオン操作されて且つキャビンの温度がキャビンの温度の目標値(例えば20〜30℃)よりも高い場合、キャビンの冷却要求があると判断する。
【0044】
目標回転速度算出部B4は、水温センサ26の検出値に基づく冷却水温と、外気温センサ76の検出値に基づく外気温度と、A/Cオン要求判断部B2及び冷蔵要求判断部B1の出力値に基づいて、目標回転速度を算出する。詳しくは、まず、冷却水温に基づいて基本となる目標回転速度を算出する。次に、キャビン及び冷蔵室のうち少なくとも一方の冷却要求がある場合、外気温度に基づいてアイドルアップする。ちなみに、上記目標回転速度は、外気温度が高いほど大きい値に設定される。これは、外気温度が高いほどコンプレッサ27の吐出口側の冷媒圧力が高くなることで、コンプレッサ27の駆動トルクが増大し、エンジン18の負荷が増大することに基づくものである。また、上記アイドルアップは、上記冷却要求のみならず、車載補機(例えば、オルタネータ)の操作状態をも加味して行われる。
【0045】
フィードバック制御部B8は、クランク角度センサ24の検出値に基づくエンジン回転速度と、目標回転速度算出部B4で算出される上記目標回転速度との偏差に基づいて、ISCバルブ16のフィードバック操作量を算出する。詳しくは、上記偏差に基づく比例積分制御によってフィードバック操作量を算出する。
【0046】
フィードフォワード制御部B10は、目標回転速度算出部B4で算出される上記目標回転速度に基づいて、ISCバルブ16のフィードフォワード操作量を算出する。
【0047】
A/C用ISC補正量算出部B12は、目標回転速度算出部B4で算出される上記目標回転速度と、外気温度とに基づいて、ISCバルブ16のフィードフォワード操作量の補正量(以下、A/C用ISC補正量dac)を算出する。
【0048】
フィードフォワード加算部B14は、フィードフォワード制御部B10で算出されたフィードフォワード操作量と、A/C用ISC補正量算出部B12で算出されたA/C用ISC補正量dacとを加算することで、最終的なフィードフォワード操作量を算出する。
【0049】
ISCバルブ操作量加算部B16は、フィードバック制御部B8で算出される出力値と、フィードフォワード加算部B14の出力値とを加算する。このISCバルブ操作量加算部B16の出力がISCバルブ16に対する開度の指令値となる。
【0050】
駆動電流換算部B18は、上記指令値を、ISCバルブ16の開度が上記指令値に対応したものとなるように要求される電磁ソレノイドの駆動電流値に換算する。
【0051】
一方、冷凍装置ECU65において、バルブ操作部B19は、上記冷蔵要求判断部B1の出力値に基づいて、A/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46を操作する。詳しくは、キャビンの冷却要求がある場合、A/Cバルブ42,FIRバルブ44を開弁して且つ、冷凍バルブ46を閉弁する。また、冷蔵室の冷却要求がある場合、A/Cバルブ42,FIRバルブ44を閉弁して且つ、冷凍バルブ46を開弁する。
【0052】
更に、キャビンと冷蔵室との双方の冷却要求がある場合、1台のコンプレッサ27でキャビン側エバポレータ54と冷蔵室側エバポレータ60とのそれぞれに冷媒を吐出供給すべく、冷凍装置ECU65のタイマのカウントに基づいて、A/Cバルブ42及びFIRバルブ44と冷凍バルブ46とを交互に周期的に開閉操作する。これにより、キャビン側冷媒循環経路と冷蔵室側冷媒循環経路とが交互に周期的に切り替えられる。詳しくは、キャビンの冷却要求がある場合と同一のバルブ操作によってキャビン側冷媒循環経路に所定期間T1冷媒を循環させる処理と、冷蔵室の冷却要求がある場合と同一のバルブ操作によって冷蔵室側冷媒循環経路に所定期間T2冷媒を循環させる処理を交互に行う。これにより、キャビン側冷媒循環経路と冷蔵室側冷媒循環経路とに交互に冷媒を循環させることができ、ひいてはキャビンと冷蔵室との双方を冷却することができる。なお、上記処理の周期は、アイドル時におけるエンジン18の燃焼制御(例えば、燃料噴射量の空燃比フィードバック制御等)に起因して生じるエンジン回転速度の変動周期よりも十分に長い時間である。ここで、本実施形態では、上記所定期間T1は4秒に設定され、上記所定期間T2は9.5秒に設定されるものとする。また、上記所定期間T2は、上記所定期間T1よりも長く設定されている。これは、冷蔵室の冷却に要求される最大の冷凍能力がキャビンの冷却に要求される最大の冷却能力よりも大きいことに基づくものである。
【0053】
ところで、キャビンと冷蔵室との双方の冷却要求がある状況下、キャビン及び冷蔵室のそれぞれを冷却するために要求される冷凍能力の差が大きい場合、冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度が大きく変動する事態が生じ得る。すなわち、各室内の温度が高いほど冷却に要求される冷凍サイクルの冷媒循環量が多くなり、ひいてはコンプレッサ27の駆動トルクが増大する。このため、例えばキャビンが高温であって且つ冷蔵室が低温である状況下においては、キャビン冷却時における冷媒循環量は、冷蔵室冷却時における冷媒循環量よりも大きくなる。ここで、図3に、冷媒循環経路の切り替えに起因して生じるエンジン回転速度の変動の一例を示す。詳しくは、図3(a)に、A/Cバルブ42の開閉操作信号の推移を示し、図3(b)に、冷凍バルブ46の開閉操作信号の推移を示し、図3(c)に、エンジン回転速度の推移を示し、図3(d)に、ISCバルブ16の操作量の推移を示す。なお、図3(d)におけるISCバルブ16の操作量については、ISCバルブ16の全閉状態に対応する操作量を0%、全開状態に対応する操作量を100%としている。
【0054】
図示されるように、時刻t1において、A/Cバルブ42(及びFIRバルブ44)が開弁されるとともに冷凍バルブ46が閉弁され、冷凍サイクルの冷媒循環量が増大し、コンプレッサ27の駆動トルクが増大することで、エンジン回転速度が大きく低下し始める。その後、時刻t1から所定期間T1が経過した時刻t2において、A/Cバルブ42(及びFIRバルブ44)が閉弁されるとともに冷凍バルブ46が開弁され、冷凍サイクルの冷媒循環量が減少し、コンプレッサ27の駆動トルクが減少することで、エンジン回転速度が目標回転速度に対して大きく上昇し始める。その後、時刻t2から所定期間T2が経過した時刻t3において、再びA/Cバルブ42(及びFIRバルブ44)が開弁されるとともに冷凍バルブ46が閉弁される。このように、これらのバルブが周期的に開閉操作されることで冷媒循環量が周期的に変化すると、コンプレッサ27の駆動トルクが周期的に変化することで、エンジン回転速度が周期的に変動する。
【0055】
ここで、本実施形態では、先の図2に示したように、エンジンECU70が、冷媒循環経路を切り替えるべく冷凍装置ECU65から出力されるA/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46の開閉操作信号を取得する手段を備えない構成となっている。これは、冷凍装置34の更なるコスト削減等を目的とするものである。このため、エンジンECU70のA/C用ISC補正量算出部B12において、上記開閉操作信号に基づいて最適なA/C用ISC補正量dacを算出することができない。これにより、コンプレッサ27の駆動トルクの変化に対応することができず、エンジン回転速度が大きく変動する事態を回避することができなくなる懸念がある。
【0056】
更に、本実施形態のコンプレッサ27においては、キャビンや冷蔵室における冷凍能力を向上させることを目的として、冷凍サイクルの冷媒循環量を増大させるべく、冷媒吐出容量が多いものとなっている。そして、このようなコンプレッサ27を備えるものにあっては、冷媒循環経路の切り替えに起因した冷媒循環量の変化が顕著となり、コンプレッサ27の駆動トルクの変化が更に顕著となる懸念がある。
【0057】
そこで本実施形態では、このような事態を回避すべく、先の図2に示すように、エンジンECU70に判断処理部B20を備え、エンジン回転速度の変動態様に応じてA/C用ISC補正量dacを強制的に変更することでエンジン回転速度の変動を抑制する。
【0058】
図4及び図5に、A/C用ISC補正量dacの強制的な変更にかかる処理の手順を示す。この処理は、エンジンECU70によって、例えばエンジン回転速度の低下速度が所定値以上となることをトリガとして所定周期で繰り返し実行される。
【0059】
図4に、A/C用ISC補正量dacの変更量の算出処理の手順を示す。
【0060】
この一連の処理では、まずステップS10において、基本A/C用ISC補正量dac0と、変動判定フラグxacfrzとを0に初期化する。ここで、基本A/C用ISC補正量dac0は、ISCバルブ16のフィードフォワード操作量の補正量の基本値に相当するものであり、目標回転速度と外気温度とに基づいて算出される。また、変動判定フラグxacfrzは、冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度が変動し、A/C用ISC補正量dacの変更が要求されているか否かを示すものである。変動判定フラグxacfrzは、「0」によって上記変更が要求されていないことを示し、「1」によって上記変更が要求されていることを示す。
【0061】
続くステップS12では、先の図2に示した冷蔵要求判断部B1の出力値に基づいて、冷凍装置ECU65からの冷蔵要求があるか否かを判断する。この処理は、冷蔵室の冷却要求があるか否かを判断するためのものである。
【0062】
ステップS12において冷蔵要求がないと判断された場合には、ステップS14に進み、先の図2に示したA/Cオン要求判断部B2の出力値に基づいて、キャビン側のA/Cオン要求があるか否かを判断する。この処理は、キャビンの冷却要求があるか否かを判断するためのものである。ステップS14においてA/Cオン要求があると判断された場合には、ステップS16に進み、先の図2に示したA/C用ISC補正量算出部B12において、基本A/C用ISC補正量dac0をdacbaseとする。
【0063】
一方、上記ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS18に進み、上記ステップS16の処理と同様に、基本A/C用ISC補正量dac0をdacbaseとする。
【0064】
ステップS18の処理の完了後、ステップS20では、上記ステップS14の処理と同様に、キャビン側のA/Cオン要求があるか否かを判断する。この処理は、冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度の変動が生じ得る状況であるか否かを判断するためのものである。
【0065】
ステップS20においてキャビン側のA/Cオン要求があると判断された場合には、ステップS22に進み、エンジン回転速度の周期的な変動があるか否かを判断する。この処理は、エンジン回転速度の変動態様に基づいて、冷媒循環経路が切り替えられている状況にあるか否かを判断するためのものである。すなわち、エンジン回転速度は、コンプレッサ27とは異なる他の車載補機(例えば、オルタネータ)が駆動されることによっても変動し得る。このため、冷媒循環経路が周期的に切り替えられることに着目して、上記切り替えられている旨を高精度に判断することができる。ここで、本実施形態では、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点のエンジン回転速度を基準として、エンジン回転速度が所定量α低下したことを複数回確認することで、冷媒循環経路が切り替えられている状況にあると判断する。
【0066】
ステップS22において周期的な変動があると判断された場合には、ステップS24に進み、冷媒循環経路の切り替え周期の学習を行う。ここで、切り替え周期の学習とは、キャビン側冷媒循環経路に冷媒を循環させる上記所定期間T1と、冷蔵室側冷媒循環経路に冷媒を循環させる上記所定期間T2とを学習することをいう。ここで、本実施形態では、エンジン回転速度の変動態様に基づいて切り替え周期としての上記所定期間T1、T2を学習する。具体的には、例えば、先の図3に示したエンジン回転速度の変動態様において、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時刻t1、t3と、エンジン回転速度が目標回転速度を上回る時刻t2とに基づいて所定期間T1、T2を算出すればよい。なお、上記所定期間T1、T2は、何らかの要因によってばらつくことがある。このため、上記所定期間T1、T2のそれぞれを複数回測定し、これらの平均値(例えば、単純移動平均値)のそれぞれを切り替え周期として学習することで、切り替え周期の学習精度を向上させることが望ましい。
【0067】
続くステップS26では、切替判定フラグxchfrzの周期的なオン・オフ処理を行う。この処理は、キャビン側又は冷蔵室側冷媒循環経路のうち、冷媒が循環している冷媒循環経路を推定把握する処理である。切替判定フラグxchfrzは、「0」によってキャビン側冷媒循環経路に冷媒が循環している旨を示し、「1」によって冷蔵室側冷媒循環経路に冷媒が循環している旨を示す。ここで、切替判定フラグxchfrzの切り替え手法としては、例えば、エンジン回転速度が目標回転速度を上回る時点(先の図3に示した時刻t2)や、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点(先の図3に示した時刻t1、t3)に応じて基準を定め、上記ステップS24の処理で学習された所定期間T1、T2に基づいて、切替判定フラグxchfrzを交互に切り替えればよい。具体的には、上記基準は、エンジン回転速度が目標回転速度を上回る時点やエンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点よりも早いタイミングとすることが望ましい。これは、ISCバルブ16によって吸気量が調節されてからその影響がエンジン18に生じるまでには時間差(吸気の応答遅れ)が生じることに基づくものである。この応答遅れ分を見込んで、上記冷媒循環経路が切り替えられると予測されるタイミングよりも早いタイミングで切替判定フラグxchfrzを切り替えることで、吸気の応答遅れを補償することができる。
【0068】
ステップS26の処理の完了後、ステップS28では、庫内用ISC補正量dfrzをdfrz0とするとともに、変動判定フラグxacfrzを「1」に設定する。ここで、庫内用ISC補正量dfrzは、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更(減少)させるための補正量である。
【0069】
上記ステップS20、S22で否定判断された場合には、ステップS30に進み、庫内用ISC補正量dfrzを0とする。すなわち、冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度の変動が生じ得る状況でない場合や冷媒循環経路が切り替えられてもエンジン回転速度に大きな変動が生じていない場合には、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更しない。
【0070】
なお、上記ステップS14において否定判断される場合や、ステップS16、S28、S30の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0071】
図5に、切替判定フラグxchfrzの切り替えに応じたA/C用ISC補正量dacの強制的な変更処理の手順を示す。
【0072】
この一連の処理では、まずステップS40において、変動判定フラグxacfrzが「1」であるか否かを判断する。
【0073】
変動判定フラグxacfrzが「1」であると判断された場合には、ステップS42に進み、切替判定フラグxchfrzが「1」であるか否かを判断する。切替判定フラグxchfrzが「1」であると判断された場合には、ステップS44に進み、先の図4に示したステップS18の処理で算出された基本A/C用ISC補正量dac0から先の図4に示したステップS28の処理で算出された庫内用ISC補正量dfrz0を減算した値をA/C用ISC補正量dacとする。すなわち、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更する。
【0074】
一方、上記ステップS40、S42で否定判断された場合には、ステップS46に進み、A/C用ISC補正量dacを基本A/C用ISC補正量dac0とする。
【0075】
なお、ステップS44、S46の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0076】
図6に、上記処理によるA/C用ISC補正量dacの強制的な変更の一例を示す。詳しくは、図6(a)に、A/Cバルブ42の開閉操作信号の推移を示し、図6(b)に、冷凍バルブ46の開閉操作信号の推移を示し、図6(c)に、エンジン回転速度の推移を示し、図6(d)に、切替判定フラグxchfrzの状態の推移を示し、図6(e)に、ISCバルブ16の操作量の推移を示す。
【0077】
図示されるように、時刻t1において、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となった後、時刻t2において、エンジン回転速度が所定量α低下したことが複数回確認されると、先の図5に示したステップS22で肯定判断され、時刻t3から時刻t4までの期間である所定期間T2に渡って切替判定フラグxchfrzが「1」に設定される。そして、この期間に渡ってISCバルブ16の操作量を庫内用ISC補正量dfrz0だけ強制的に減少させる。その後、時刻t4から時刻t5までの期間である所定期間T1に渡って切替判定フラグxchfrzが「0」に設定され、ISCバルブ16の操作量の強制的な変更が解除される。
【0078】
ここで、図6(c)では、切替判定フラグxchfrzに応じてA/C用ISC補正量dacを強制的に変更したものを実線で示すとともに、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更しないものを点線で併記した。A/C用ISC補正量dacを強制的に変更しない場合は、吸気量がエンジン回転速度を目標回転速度に一致させるための適切な量から大きくずれるため、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更する場合よりもエンジン回転速度の変動が大きくなる。
【0079】
このように、本実施形態では、A/C用ISC補正量dacを切替判定フラグxchfrzに応じて強制的に変更することで、エンジン回転速度の変動を好適に抑制することができる
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0080】
(1)エンジン回転速度の変動態様に基づいて学習された所定期間T1、T2に応じて切替判定フラグxchfrzを切り替え、この切替判定フラグxchfrzの切り替えに応じてA/C用ISC補正量dacを強制的に変更した。これにより、エンジン回転速度の変動をより好適に抑制することができる。更に、エンジン回転速度の変動に起因するキャビン内振動や騒音を抑制することができ、ひいてはドライバビリティを向上させることができる。
【0081】
(2)エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点のエンジン回転速度を基準として、エンジン回転速度が所定量α低下したことを複数回確認することに基づいて、冷媒循環経路が切り替えられている状況であることを判断した。これにより、上記判断を簡素な構成で且つ高精度に行うことができる。
【0082】
(3)エンジンECU70が、A/Cバルブ42、FIRバルブ44及び冷凍バルブ46の開閉操作信号を取得する手段を備えない構成とした。このため、エンジンECU70が冷媒循環経路の切り替えタイミングを把握できず、これらのバルブの開閉操作信号に応じてA/C用ISC補正量dacを変更できないため、切替判定フラグxchfrzに応じてA/C用ISC補正量dacを強制的に変更する処理の利用価値が特に大きい。
【0083】
(4)冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度の大きな低下が生じるおそれのある状況下において、更なるアイドルアップを行うことなくA/C用ISC補正量dacを変更することでエンジン回転速度が大きく低下する事態を回避した。これにより、エンジン回転速度の大きな低下を見込んだアイドルアップの継続を回避することができ、ひいては燃費の悪化を回避することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
冷媒循環経路が切り替えられることに起因してエンジン回転速度が変動するのは、吸気量がエンジン回転速度を目標回転速度に一致させるための適切な量からずれるためである。このため、A/C用ISC補正量dacと、冷媒循環経路の切り替えに起因したエンジン回転速度の変動量とは相関を有する。
【0086】
そこで本実施形態では、冷媒循環経路の切り替えに起因して生じるエンジン回転速度の低下量に応じて、A/C用ISC補正量dacの強制的な変更量を設定する。
【0087】
図7に、本実施形態にかかるA/C用ISC補正量dacの強制的な変更の一例を示す。ここで、図7(a)〜図7(e)は、先に示した図6(a)〜図6(e)に対応している。但し、図7(e)には、ISCバルブ16の操作量のうち、フィードフォワード操作量のみを示している。
【0088】
図示されるように、時刻t1において、先の図4、図5に示した処理が開始され、時刻t2から時刻t3までの期間である所定期間T2に渡って、上記所定量α1に基づいてISCバルブ16の操作量を庫内用ISC補正量dfrzだけ強制的に減少させる。但し、時刻t3において、エンジン回転速度の低下量α2が未だ所定以上となるため、時刻t4から時刻t5までの期間である所定期間T2に渡って上記庫内用ISC補正量dfrzを所定量Δだけ増加させる。同様に、時刻t5において、エンジン回転速度の低下量α3が未だ所定以上となるため、t6から時刻t7までの期間である所定期間T2に渡って上記庫内用ISC補正量dfrzを更に所定量Δだけ増加させる。
【0089】
ちなみに、A/C用ISC補正量dacを大きく減少させると、エンジン18に供給される吸気量が過度に減少し、エンジン回転速度が過度に低下したり、エンジンストールを生じたりするおそれがある。このため、このような事態を好適に回避すべく庫内用ISC補正量dfrzに上限値を設けるのが望ましい。ここで、庫内用ISC補正量dfrzの上限値は、エンジンストールが生じる直前の吸気量に基づいて予め実験等により設定すればよい。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0091】
(5)A/C用ISC補正量dacを庫内用ISC補正量dfrzだけ強制的に減少させた後、未だエンジン回転速度の低下量が所定以上となる場合、庫内用ISC補正量dfrzを所定量Δずつ増加させた。これにより、エンジン回転速度の変動をいっそう好適に抑制することができる。
【0092】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0093】
・第1の実施形態では、アイドル時の吸気量を調節すべくISCバルブ16が備えられるエンジンシステムを対象としたがこれに限らない。例えば、アイドル時の吸気量をスロットルバルブ12のみによって調節するエンジンシステムを対象としてもよい。
【0094】
・第1の実施形態では、キャビンと冷蔵室との双方の冷却要求がある状況下、所定期間T1、T2に基づいて冷媒循環経路が交互に周期的に切り替えられる冷凍装置を対象としたがこれに限らない。例えば、冷媒循環経路が交互に非周期的に切り替えられる冷凍装置を対象としてもよい。この場合、例えば切替判定フラグxchfrzを、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となることを入力として「0」に切り替え、エンジン回転速度が目標回転速度を上回ることを入力として「1」に切り替えればよい。
【0095】
・第1の実施形態では、冷媒循環経路の切り替えに起因してエンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点を基準として、学習された所定期間T1、T2に基づいて切替判定フラグxchfrzを交互に切り替えたがこれに限らない。例えば、エンジンECU70に冷凍装置ECU65のタイマによる切り替え周期(T1、T2)を記憶しておき、これに基づいて切り替えてもよい。
【0096】
・第1の実施形態では、エンジン回転速度の低下速度が所定値以上となる時点のエンジン回転速度を基準として、エンジン回転速度が所定量α低下したことを複数回確認することで、冷媒循環経路が切り替えられている状況にあると判断したがこれに限らない。例えば、エンジン回転速度の上昇速度が所定値以上となる時点のエンジン回転速度を基準として判断してもよい。
【0097】
・第1の実施形態では、コンプレッサ27を固定容量型圧縮機としたがこれに限らない。例えば、駆動中に冷媒の吐出容量を可変設定可能な可変容量型圧縮機であってもよい。
【0098】
・第1の実施形態では、エンジン回転速度が所定量α低下したことを複数回確認することで、冷媒循環経路が切り替えられている状況にあると判断したがこれに限らない。例えば、エンジン回転速度が所定量α低下したことを1回確認することで判断してもよい。
【0099】
・第1の実施形態では、キャビンと冷蔵室との双方の冷却要求がある場合、A/Cバルブ42及びFIRバルブ44と冷凍バルブ46とが交互に周期的に開閉操作されるエアコンシステムを対象としたがこれに限らない。例えば、冷凍バルブ46が開弁されたままで、A/Cバルブ42及びFIRバルブ44が周期的に開閉操作されるエアコンシステムを対象としてもよい。また例えば、A/Cバルブ42及びFIRバルブ44が開弁されたままで、冷凍バルブ46が周期的に開閉操作されるエアコンシステムを対象としてもよい。
【0100】
・第1の実施形態では、A/C用ISC補正量dacを、切替判定フラグxchfrzが「0」から「1」に切り替えられるタイミングで庫内用ISC補正量dfrz0だけ変更したがこれに限らない。例えば、冷媒循環経路の切り替えがなされていると判断されることでA/C用ISC補正量dacの周期的な変更処理を開始するに際し、A/C用ISC補正量dacの変更量を切り替え周期毎に庫内用ISC補正量dfrz0へと徐々に変更するようにしてもよい。これは次の要因に基づくものである。すなわち、冷蔵室及びキャビンのそれぞれの冷却に要求される冷凍能力の差が大きい状況下、冷媒循環経路が交互に周期的に切り替えられることに起因して、冷凍サイクルの冷媒循環量が変化する。しかしながら、冷蔵室及びキャビンのそれぞれに要求される冷凍能力の大小関係が何らかの理由で短時間のうちに逆転する場合、冷媒循環経路の切り替えに起因して冷凍サイクルの冷媒循環量の変化する方向が想定していたものとは異なる事態が生じ得る。例えば冷蔵室の扉が開放されると、短時間のうちに庫内温度が上昇し、冷蔵室に要求される冷凍能力がキャビンに要求される冷凍能力よりも大きくなる。この場合、冷蔵室の扉が開放されるまでのエンジン回転速度の変動態様に基づいてA/C用ISC補正量dacを急激に変更すると、吸気量がエンジン回転速度を目標回転速度に一致させるための適切な量から大きくずれることで、エンジン回転速度の変動が顕著となるおそれがある。
【0101】
また、この際、自動変速機の操作状態がNレンジ(及びPレンジ)の場合における上記変更量の変化速度を自動変速機の操作状態がDレンジの場合におけるものよりも大きく設定してもよい。これは、エンジン回転速度の変動量が、自動変速機の操作状態によって変化し得ることに基づくものである。すなわち、エンジン18の出力軸であるクランク軸22と自動変速機の出力軸との機械的な連結状態によってクランク軸22の負荷が変化する。例えば自動変速機の操作状態がNレンジ(及びPレンジ)である場合におけるクランク軸22の負荷は、Dレンジである場合におけるものよりも小さい。このため、冷媒循環経路の切り替えに起因するエンジン回転速度の変動量は、Dレンジの場合よりもNレンジ(及びPレンジ)の場合のほうが多くなる。このため、上記変更量の変化速度を自動変速機の操作状態がDレンジの場合におけるものの方が小さくなるように設定することで、冷蔵室及びキャビンのそれぞれに要求される冷凍能力の大小関係が想定したである場合におけるエンジン回転速度の変動の抑制を図ることができる。
【0102】
更に、自動変速機の操作状態がPレンジやNレンジの場合に限って、A/C用ISC補正量dacを徐々に変更する処理を行ってもよい。これは、Dレンジの場合の冷媒循環経路の切り替えに起因して生じるエンジン回転速度の変動量がNレンジやPレンジの場合よりも小さいため、ISCバルブ16のフィードフォワード操作量が不適切に低減されたとしても、その影響が小さいと考えられることに基づくものである。
【0103】
・第2の実施形態では、キャビン側冷媒循環経路への切り替えに起因してエンジン回転速度の低下量が所定値以上となることに基づいて庫内用ISC補正量dfrzを増量補正する処理を行ったがこれに限らない。例えば、キャビン側冷媒循環経路への切り替えに起因してエンジン回転速度の上昇量が所定値以上となることに基づいて庫内用ISC補正量dfrzを減量補正する処理を行ってもよい。
【0104】
・第2の実施形態では、庫内用ISC補正量dfrzをエンジン回転速度の変動態様(エンジン回転速度の低下量)に基づいて算出したがこれに限らない。例えば、エンジンECU70が庫内温度センサ66の検出値や庫内温度設定スイッチ68の出力信号等を取得する手段を備える場合、庫内温度や庫内温度の目標値等に基づいて算出してもよい。
【0105】
・第2の実施形態において、エンジン回転速度の低下量に応じて庫内用ISC補正量dfrzを算出したがこれに限らない。例えば、自動変速機の操作状態も加味して算出してもよい。また、庫内用ISC補正量dfrzを変更するための所定量Δを自動変速機の操作状態を加味して算出してもよい。
【0106】
・上記各実施形態では、A/C用ISC補正量dacから庫内用ISC補正量dfrzを減算することで、A/C用ISC補正量dacを強制的に変更したがこれに限らない。例えば、キャビン冷却時のA/C用ISC補正量と冷蔵室冷却時のA/C用ISC補正量とを個別に算出し、切替判定フラグxchfrzの切り替えに応じて、これらの補正量を割り当てることでA/C用ISC補正量を強制的に変更してもよい。
【0107】
・フィードバック操作量を算出する手段としては、エンジン回転速度と目標回転速度との偏差の比例積分演算によるものに限らない。例えば積分演算や比例積分微分演算によって操作量を算出するものであってもよい。この場合であっても、上記各実施形態の効果を得ることはできる。
【0108】
・冷媒循環経路が切り替えられている状況にあるか否かを判断する手法としては、上記各実施形態において例示したものに限らず、例えば所定期間におけるエンジン回転速度の測定データをメモリに記憶させ、記憶させたエンジン回転速度の波形パターンと、予め実験等で求められた冷媒循環経路の切り替えに起因したエンジン回転速度の波形パターンとを比較することに基づいて判断するものであってもよい。
【0109】
・上記各実施形態では、アイドル回転速度制御のための操作量をエンジン18の燃焼室に供給される吸気量としたがこれに限らない。換言すれば、アイドル回転速度制御のために利用する内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータとしては、吸気通路の流路面積を調節する手段に限らない。例えば、内燃機関の燃焼室における点火時期等を調節する手段であってもよい。この際、応答性の低いトルクパラメータ(例えば、吸気量)と応答性の高いトルクパラメータ(例えば、点火時期)とについて、内燃機関のトルク増大側に所定トルク余裕分(リザーブトルク)だけ余裕を持たせた状態で基準となる点火時期を設定し、点火時期と吸気量とを協調制御することで実トルクを目標トルクに制御する技術(トルクリザーブ制御)を用いてもよい。この場合、点火時期が調節されてからその影響がエンジン18に生じるまでの時間差は、吸気量が調節されてからその影響がエンジン18に生じるまでの時間差よりも短くなるため、A/C用ISC補正量dacの変更処理がなされるときのエンジン回転速度の応答性を向上させることができる。
【0110】
・上記各実施形態では、冷媒流路の周期的な切替の予測に基づき、アイドル回転速度制御のための操作量をフィードフォワード補正したがこれに限らない。例えば冷媒流路の周期的な切り替えについての情報が取得可能なアイドル回転速度制御装置にあっては、この情報に基づいてフィードフォワード補正してもよい。
【0111】
・上記実施形態では、内燃機関として火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)を対象としたがこれに限らない。例えば圧縮着火式内燃機関を対象としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
16…ISCバルブ、18…エンジン、27…コンプレッサ、34…冷凍装置、42…A/Cバルブ、46…冷凍バルブ、54…キャビン側エバポレータ、60…冷蔵室側エバポレータ、70…エンジンECU(内燃機関のアイドル回転速度制御装置の一実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて車両の荷室内の空気を冷却する荷室側蒸発器と、前記圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて前記車両の乗員室内の空気を冷却する乗員室側蒸発器と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器及び前記乗員室側蒸発器のそれぞれにつながる冷媒流路と、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を切り替える切替手段とを有する冷凍装置について、該冷凍装置を備える車両に適用され、
前記内燃機関の回転速度を目標値に一致させるように前記内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを操作する内燃機関のアイドル回転速度制御装置において、
前記切替手段により前記冷媒流路が切り替えられたか否かを判断する切替判断手段と、
前記切替判断手段により前記切り替えられたと判断された場合、前記アクチュエータの操作量を強制的に変更する操作量変更手段とを備えることを特徴とする内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項2】
前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様に基づき、前記切り替えられたか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項3】
前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様として、前記内燃機関の回転速度が所定量変化したことに基づき、前記切り替えが行われたか否かを判断することを特徴とする請求項2記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、
前記切替判断手段は、前記内燃機関の回転速度の周期的な変動態様に基づき、前記切り替えられたか否かを判断することを特徴とする請求項2又は3記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項5】
前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、
前記操作量変更手段は、前記周期的な切り替えの予測に基づき、前記アクチュエータの操作量を周期的に変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の回転速度の変動周期を学習する学習手段を更に備え、
前記操作量変更手段は、前記学習手段の学習結果に基づき、前記周期的な切り替えを予測することを特徴とする請求項5記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項7】
前記操作量変更手段により強制的に変更される前記アクチュエータの操作量を、前記内燃機関の回転速度が所定の回転速度以下とならないように規制する規制手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項8】
前記操作量変更手段は、前記内燃機関の回転速度の変動態様に応じて、前記操作量の強制的な変更量を可変設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項9】
前記切替手段は、前記圧縮機から前記荷室側蒸発器又は前記乗員室側蒸発器に交互に冷媒を吐出供給すべく前記冷媒流路を周期的に切り替えるものであり、
前記操作量変更手段は、前記切替判断手段により前記周期的な切り替えがなされていると判断された場合、前記操作量の強制的な変更量を徐々に増大させるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項10】
前記内燃機関の出力軸には自動変速機の出力軸が接続され、
前記操作量変更手段は、前記内燃機関の出力軸と前記自動変速機の出力軸との機械的な連結状態よりも解除状態の方が前記変更量の増大速度を大きく設定するものであることを特徴とする請求項9記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−174713(P2010−174713A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17509(P2009−17509)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】