説明

内燃機関のコンロッド軸受およびコンロッド軸受装置

【課題】クランク軸の内部潤滑油路を経る潤滑油での異物の排出性に優れる、内燃機関のクランクピン用すべり軸受(コンロッド軸受)を提供する。
【解決手段】半円筒形軸受24、26から成る内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受において、各円周方向端面から、クラッシュリリーフ領域24E、26Eを2つに分断し、円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝24C、26C、各突き合わせ端面に沿って円周方向溝と連通する軸線方向溝40、50が存在する。円周方向溝の円周方向長さは、クラッシュリリーフ領域の円周方向長さよりも大きく、円周方向溝の深さは、軸受円周方向端面から円周方向中心部分に向かって次第に小さく、円周方向溝の幅長は、内部潤滑油路20の潤滑油出口20aの口径の1/4以上かつ口径未満で、円周方向溝と軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸を支える主軸受の内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路を経て、コンロッドとクランク軸を連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受(すべり軸受)の内周面に供給されるように構成された内燃機関のコンロッド軸受に係わり、該コンロッド軸受は一対の半円筒形軸受から成る。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、一対の半円筒形軸受から成る主軸受を介して内燃機関のシリンダブロック下部に支持される。主軸受に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。また、ジャーナル部の直径方向に第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が前記潤滑油溝と連通し、さらにまた、ジャーナル部の直径方向第1潤滑油路から分岐してクランクアーム部を通る第2潤滑油路が形成され、この第2潤滑油路が、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。かくして、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路および第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の端部出口(すなわち、クランクピンの外周面に存在する潤滑油出口)から、クランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に供給される。
【0003】
内燃機関のシリンダブロックからクランク軸のジャーナル部を経てコンロッド軸受部に送られる潤滑油は、各部分の潤滑油路内に存在する異物を伴う可能性があり、この異物が潤滑油に付随してクランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に送られると、コンロッド軸受の摺動面に損傷を与える危惧がある。クランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に進入した異物は、摺動面部分から速やかに外部に排出する必要がある。
【0004】
潤滑油に混入する異物対策として、一対の半円筒形軸受で構成される、クランク軸ジャーナル部を支承する主軸受のうち、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから直接潤滑油の供給を受ける貫通口を有する半円筒形軸受の内周面全長に亘って円周方向の潤滑油溝を設けて、潤滑油に付随する異物を排出することを企図した提案がある。この考え方をコンロッド軸受に適用すると、異物排出効果は得られず、コンロッド軸受の半円筒形軸受の内周面全長に亘って形成した円周方向潤滑油溝内に異物が滞留するだけでなく、軸受摺動面全体に亘って異物が分散して軸受の損傷が起こりやすくなり、むしろ逆効果であることが試験によって確認された。
この理由として、一般に、コンロッド軸受を保持するハウジングは、機関運転時の変形が大きいため、運転時におけるクランクピンとコンロッド軸受間の間隙が、クランク軸ジャーナル部と主軸受との間の間隙に比して大きく、潤滑油溝内に保持された異物が軸受摺動面全体に広がり易く、主荷重部になる「半円筒形軸受の円周方向中央部」における摺動面部分にも異物が分布し、前記円周方向潤滑油溝を設けない従来タイプのコンロッド軸受を使用した場合よりも、軸受損傷が増すからである。このことは試験によって確認された。
【0005】
クランクピン表面の潤滑油出口から潤滑油と共にコンロッド軸受の摺動面に進入する異物を排出するには、コンロッド軸受内周面の、クランクピンの相対的回転方向と同じ方向を向いた円周方向端面に隣接する領域に部分的な周方向溝を形成し、その周方向溝内に異物を捕捉させる構成が考えられる。この構成によれば、前記周方向溝に沿って潤滑油と共に異物を円周方向端面付近まで送り、対を成す相手方半円筒形軸受の円周方向端面(隣接領域に周方向溝が存在しない円周方向端面)が、該相手方半円筒形軸受の摺動面に異物を進入させないための障壁になり、周方向溝を有する半円筒形軸受の円周方向端面領域の軸受内周面側に形成されるクラッシュリリーフ面とクランクピン外周面間の間隙を通じて、軸線方向に効果的に異物を排出させることを企図できる。
しかしながら、内燃機関の製造において、分割型コンロッド・ハウジンングに半円筒形軸受を組み付ける際に、周方向溝の存在する円周方向端面側が、間違って、クランクピンの相対的回転方向とは反対側を向いた姿勢で組み付けられる懸念がある。そのような誤組み付けが生じると、周方向溝が、摺動面への異物の進入を促進するという悪影響があると考えられる。内燃機関の製造者からは、面対称形状の半円筒形軸受が要求され、さらには、一対の半円筒形軸受が同一形状であっても、異物排出性に優れるコンロッド軸受が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開2005−69283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、クランク軸の内部潤滑油路を経て送られる潤滑油に付随する異物の排出性に優れる、内燃機関のクランクピン用すべり軸受(コンロッド軸受)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的に照らし、本発明の第一の観点によれば、以下の内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受が提供される。
内部潤滑油路を有するクランク軸のクランクピンを回転自在に支承する、内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受であり、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、その一方がコンロッド大端部ハウジングのコンロッド側に位置する上側半円筒形軸受であり、他方がコンロッド大端部ハウジングのキャップ側に位置する下側半円筒形軸受として構成され、前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれクラッシュリリーフとしての軸受壁厚減少領域が付与されており、また前記上側半円筒形軸受は、その半円形断面の円周方向中心部分がコンロッドの中心軸線と一致するように組立てられる形式の前記コンロッド軸受において、
前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれ、前記円周方向端面から、前記軸受壁厚減少領域を2つに分断し、前記円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝が形成され、この円周方向溝の幅中心線と、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口の開口中心とが互いに整合する位置関係にある。なお、内部潤滑油路の典型的横断面形状は円形である。
また、全ての前記円周方向端面の前記軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面として形成され、その結果、前記一対の半円筒形軸受が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する前記円周方向端面に沿って、かつ、前記上側および下側半円筒形軸受の軸線方向幅全長に亘って、4つの前記円周方向溝と連通する2つの軸線方向溝が存在し、
前記円周方向溝の円周方向長さは、前記軸受壁厚減少領域の円周方向長さよりも大きく、
前記円周方向溝の深さは、前記円周方向端面から前記円周方向中心部分に向かって次第に小さくなされ、
前記円周方向溝の幅長は、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされ、
前記円周方向溝と前記軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、次の関係式(1): 円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積 ・・・・・・ (1)
を満たす、内燃機関のコンロッド軸受。
前記軸線方向溝の好適サイズ例は、溝幅=2mm未満、溝深さ=0.1〜0.5mmである。
また、前記軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の好適サイズ例は、円周方向長さ=3mm〜15mm、軸受円周方向の軸受壁厚を基準とする減厚量=0.1〜0.5mmである。
なお、クラッシュリリーフとは、一対の半円筒形状軸受の円周方向端面に近い部分の軸受壁を内周面側で除去することによって形成された「円周方向中央部分を含む半円筒形状軸受のその他の領域における軸受内周面の曲率中心とは異なる曲率中心」を有する軸受壁厚減少領域(円周方向端面に向かって次第に厚さを減じた領域を指し、SAE J506(項目3.26、項目6.4参照)、DIN1497、§3.2で規定されるとおりである)を意味する。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記円周方向端面から少なくとも前記潤滑油出口口径の1/2までの円周方向長さ範囲における前記円周方向溝の深さが0.1〜0.8mmになされる。
【0010】
本発明の別の実施形態では、前記円周方向溝の長さが次の関係式(2):
円周方向溝の円周方向長さ≧軸受壁厚減少領域の円周方向長さ+潤滑油出口口径の
1/2 ・・・・・・ (2)
を満たすように構成される。
【0011】
本発明の更に別の実施形態では、前記円周方向溝の幅長が次の関係式(3):
潤滑油出口口径の1/2>円周方向溝の幅長≧潤滑油出口口径の1/4
・・・・・・ (3)
を満たすように構成される。
【0012】
本発明の更に別の実施形態では、前記円周方向溝の溝底の横断面形状が円弧形状であり、前記円周方向溝の溝幅長が、前記円周方向端面から前記円周方向中央部に向かって次第に小さくなり、前記円周方向中央部側の溝終端部から、前記円周方向端面側に向かって潤滑油出口口径の1/2の距離にある位置で、前記口径の1/4以上かつ1/2未満になされる。
【0013】
本発明の第二の観点によれば、以下の内燃機関のコンロッド軸受装置が提供される。
内燃機関のコンロッドを、内部潤滑油路を有するクランク軸に連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受と、該コンロッド軸受を収容して保持するコンロッド大端部ハウジングとを含む、内燃機関のコンロッド軸受装置において、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、その一方が前記コンロッド大端部ハウジングのコンロッド側に位置する上側半円筒形軸受であり、他方が前記コンロッド大端部ハウジングのキャップ側に位置する下側半円筒形軸受として構成され、前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれクラッシュリリーフとしての軸受壁厚減少領域が付与されており、また前記上側半円筒形軸受は、その半円形断面の円周方向中心部分が前記コンロッドの中心軸線と一致するように組立てられる形式の前記コンロッド軸受において、
前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれ、前記円周方向端面から、前記軸受壁厚減少領域を2つに分断し、前記円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝が形成され、
また、全ての前記円周方向端面の前記軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面として形成され、その結果、前記一対の半円筒形軸受が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する前記円周方向端面に沿って、かつ、前記上側および下側半円筒形軸受の軸線方向幅全長に亘って、4つの前記円周方向溝と連通する2つの軸線方向溝が存在し、
前記円周方向溝の円周方向長さは、前記軸受壁厚減少領域の円周方向長さよりも大きく、
前記円周方向溝の深さは、前記円周方向端面から前記円周方向中心部分に向かって次第に小さくなされ、
前記円周方向溝の幅長は、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされ、
前記円周方向溝と前記軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、次の関係式(1): 円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積 ・・・・・・ (1)
を満たす、内燃機関のコンロッド軸受装置。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明によれば、前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれ、円周方向端面から、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)を2つに分断し、円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝が形成されており、機関作動時に、クランク軸のジャーナル部からクランクピンの直径方向貫通孔に至る内部潤滑油路を経由して送られる潤滑油が、クランクピンの外周面に存在する潤滑油出口からクランクピンとコンロッド軸受との間に供給され、潤滑油に付随する異物と共に、クランクピンの回転方向である半円筒形軸受の円周方向端面側に向かって円周方向溝内を流れる。
(2)また、本発明のコンロッド軸受では、全ての円周方向端面の軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面として形成され、その結果、一対の半円筒形軸受が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する円周方向端面に沿って、かつ、上側および下側半円筒形軸受の軸線方向幅全長に亘って、4つの円周方向溝と連通する2つの軸線方向溝が存在する。
かくして、潤滑油と共に円周方向溝内を移動して円周方向端面領域に達した異物は、潤滑油と共にほぼ直角に方向転換して、円周方向溝と連通する軸線方向溝内に流入し、軸線方向溝の両端部からコンロッド軸受の外部に排出される。この時、円周方向溝と軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、「円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積」という関係になされているため、円周方向溝から軸線方向溝内に流入する潤滑油の流速が増し、軸線方向溝内に入った異物の移動、排出が促進される。
(3)また、本発明では、円周方向溝の円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さよりも大きくなされ、かつ、円周方向溝の幅長が、クランクピンの外周面に存在する、内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされている。この構成によれば、コンロッド軸受に対するクランクピンの相対的回転によって、クランクピンの潤滑油出口が、軸線方向溝を越えて、対をなす相手方半円筒形軸受の領域に移動し、該相手方半円筒形軸受の円周方向溝(以下、第2の円周方向溝と称する)に沿いながら、第2の円周方向溝の端部を通過して、相手方半円筒形軸受の円周方向中央部に向かう。この間、潤滑油出口が第2の円周方向溝の端部に達するまでは、潤滑油出口から第2の円周方向溝内に吐出される潤滑油が第2の円周方向溝内で順方向(すなわち、潤滑油出口の移動方向)に流れる。しかしながら、潤滑油出口が第2の円周方向溝の端部に到達し、次いで該端部を越えるまでの間は、第2の円周方向溝内の潤滑油が逆方向に流れるという現象が生じる。このため、第2の円周方向溝に対する当初の円周方向溝から軸線方向溝内に潤滑油と共に流入することなく、軸線方向溝を横断して第2の円周方向溝内に進入して、第2の円周方向溝の端部側に移動、滞留する異物が存在しても、前記逆流する潤滑油によって、先に横断通過した軸線方向溝に向かって搬送されることになる(逆流による滞留異物の払拭効果)。斯様に、一対の半円筒形軸受の組み合わせで、軸線方向溝を介して連通する対を成す円周方向溝が、協働して異物排出機能を発揮する。
(4)このような作用効果は、前記のとおり、「円周方向溝の円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さよりも大きく、かつ、円周方向溝の幅長が、クランクピンの外周面に存在する、内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされる」ことによって得られる。仮に、円周方向溝の円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さと同等以下であれば、潤滑油出口位置と、第2の円周方向溝の端部との関係で生じる潤滑油の逆流減少は生じることはなく、潤滑油出口から吐出された潤滑油の圧力が、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)とクランクピンとの間の間隙を通じて逃がされる。その結果、第2の円周方向溝位置から軸受摺動面領域に向かって潤滑油が発散し、それまで第2の円周方向溝内に滞留していた異物が潤滑油と共に軸受摺動面領域に進入して、コンロッド軸受とクランクピンの間で転動し、両部材の表面を損傷する惧れがある。また、逆流現象によって第2の円周方向溝内を流れる潤滑油の速度が低下するため、第2の円周方向溝内に依然として滞留する異物を、潤滑油によって軸線方向溝側に搬送する能力も低下し、異物排出能力が低下する。
(5)円周方向溝の深さを、半円筒形状軸受の円周方向端面から少なくとも前記潤滑油出口口径の1/2までの円周方向長さ範囲において、0.1〜0.8mmにすると、クランクピンの外周面に存在する潤滑油出口からクランクピンとコンロッド軸受との間に供給される潤滑油に付随する異物が円周方向溝内に進入しやすくなる。潤滑油には、最大で0.1mm程度の大きさ(長さ)の異物が混入している場合があるが、第1、第2の円周方向溝が連通する部分には、深さが0.1mm以上であり、潤滑油出口口径に相当する円周方向長さ以上の領域が形成されるため、大きな異物も円周方向溝に進入させることができる。また、円周方向溝の深さを過度に大きくすると、円周方向溝内の容積が大きくなり、第2の円周方向溝内を流れる潤滑油の逆流速度が低下する。逆流速度の低下を防ぐため円周方向溝の深さは0.8mm以下とすることが好ましい。
(6)円周方向溝の幅長を、潤滑油出口口径の1/2未満にすると、円周方向溝内を潤滑油が逆流する速度がより大きくなり効果的である。
(7)円周方向溝の円周方向長さを、「軸受壁厚減少領域の円周方向長さ+潤滑油出口口径の1/2」以上にすると、潤滑油出口が第2の円周方向溝の端部に到達し、次いで該端部を越えるまでの間、潤滑油出口が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)とクランクピンとの間の間隙に開放(または連通)されず、潤滑油の圧力が円周方向溝内から失なわれ難いため、第2の円周方向溝内で生じる逆流潤滑油の速度を大きくすることができる。
(8)本発明では、円周方向溝およびこれに連通する軸線方向溝を通じて、潤滑油に付随する異物を軸受外部に排出できるようにしているため、特許文献2に記載されるようにクラッシュリリーフとクランクジャーナルとの間の間隙を大きくして異物の通過、排出を容易にする必要がない。本発明の構成によれば、従来のクランク軸用すべり軸受と同様に、半円筒形軸受の円周方向中央部の軸受壁厚さに対して、円周方向端面領域の軸受壁厚さを0.010〜0.050mm程度小さく(薄く)すれば十分であり、それによって小間隙の軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)を形成することができ、もって、間隙部分からの潤滑油漏れ量の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部でそれぞれ截断した模式図。
【図2】本発明の一実施例に係るコンロッド軸受の正面図。
【図3】図2に示すコンロッド軸受の半体である半円筒形軸受の内周面を見た平面図。
【図4】図2に示すコンロッド軸受の局所拡大図。
【図5】図2に示すコンロッド軸受の機能説明図。
【図6】図2に示すコンロッド軸受の図5と同様な機能説明図。
【図7】本発明の別実施例において、コンロッド軸受の一対の半体を組み合わせた箇所を軸受内周面側から見た機能説明図。
【図8】図2に示すコンロッド軸受の一対の半体を組み合わせた箇所を軸受内周面側から見た機能説明図。
【図9】本発明の別実施例に係る図7、図8と同様な機能説明図。
【図10】本発明の別実施例に係る図8、図9と同様な機能説明図。
【図11】本発明の別実施例に係る図8、図9と同様な機能説明図。
【図12】比較例に係る、図5、図6と同様な機能説明図。
【図13】図12に示す比較例に係る、図8〜図11と同様な機能説明図。
【実施例】
【0016】
以下、添付図面を見ながら本発明の実施例について説明する。
図1は、内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部でそれぞれ截断した模式図であり、ジャーナル10、クランクピン12およびコンロッド14を示す。これら三部材の紙面奥行き方向での位置関係は、ジャーナル10が紙面の最も奥側にあり、手前側にクランクピン12があって、クランクピン12が、他端にピストンを担持するコンロッド14の大端部ハウジング16で包囲されている。
ジャーナル10は、一対の半円筒形軸受18A、18Bを介して、内燃機関のシリンダブロック下部に支持されている。図面で上側に位置する半円筒形軸受18Aは、その内周面全長に亘って潤滑油溝18aが形成されている。
また、ジャーナル10は、その直径方向貫通孔10aを有し、ジャーナル10が矢印X方向に回転すると、貫通孔10aの両端開口が交互に潤滑油溝18aに連通する。
さらに、ジャーナル10、図示されないクランクアーム、および、クランクピン12を貫通して潤滑油路20が、クランク軸内部に形成されている。
【0017】
クランクピン12は、一対の半円筒形軸受24、26を介して、コンロッド14の大端部ハウジング16(これは、コンロッド側大端部ハウジング16Aとキャップ側大端部ハウジング16Bから成る)に保持されている。半円筒形軸受24、26は、それらの突き合せ端面を互いに突き合わせて組立てて円筒形のコンロッド軸受22になされている。
【実施例1】
【0018】
図2〜図4に、コンロッド軸受22を構成する半円筒形軸受24、26の詳細を示す。半円筒形軸受24、26は、同一形状を有するので(両半円筒形軸受の間の符号の類似性については、明細書末尾の「符号の説明」欄参照)、一方の形状のみについて説明する。
半円筒形軸受24は、図面において左右対称形状体である。
円周方向溝: 半円筒形軸受24の円周方向端面24A、24Bから、半円筒形軸受24の円周方向中央部に向かって、半円筒形軸受24の内周面に、横断面矩形の潤滑油用円周方向溝24C、24Dが形成されている。円周方向溝24C、24Dは、その幅中心線が半円筒形軸受24の幅中心線と整合しており、それらは、クランクピン12の外周面に存在する潤滑油出口20a(潤滑油路20の出口)の開口中心(穴中心)と整合する。また、円周方向溝24C、24Dは、円周方向端面24A、24Bから前記円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で形成される(図2における角度θ参照)。円周方向溝24C、24Dの円周方向長さは、後記軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さよりも大きく、深さは、円周方向端面24A、24Bから前記円周方向中心部分に向かって次第に小さくなされ、かつ、溝幅長は、クランクピン12の外周面に存在する、潤滑油出口20a(潤滑油路20の出口)の口径(d)の1/4以上かつ該口径未満になされる。なお、本実施例では、円周方向溝24C、24Dの横断面形状を矩形としたが、これに限定されず、円周方向溝の両側面を傾斜面にして、溝底面に向かって溝幅が狭くなるような横断面逆台形形状の溝を採用してもよい。
【0019】
壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域): 半円筒形軸受24の円周方向端面24A、24Bに近い位置から、半円筒形軸受24の円周方向中央部に向かって、軸受内周面に、従来のクランク軸用すべり軸受と同様に軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)24E、24Fが形成されている。軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)24E、24Fの円周方向長さは、円周方向溝24C、24Dの円周方向長さよりも小さい。壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)24E、24Fは、半円筒形軸受24の全幅に亘って軸受内周面に形成されているため、円周方向溝24C、24Dが壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)24E、24Fを2つに分断している(図3)。
壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)24E、24Fの寸法例: 円周方向長さ=3mm〜15mm、円周方向中央部の軸受壁厚さを基準とする円周方向端部における減厚量=0.01〜0.05mm。
【0020】
軸線方向溝: 円周方向端面24A、24Bの軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面24G、24Hとして形成されている。この傾斜面24G、24Hは、これらに対応する半円筒形軸受26の傾斜面26G、26Hと協働して、それぞれ軸線方向溝40、50を形成する。この軸線方向溝40、50は、半円筒形軸受24、26の全幅に亘って形成されている。軸線方向溝40、50と円周方向溝24C、24Dは、半円筒形軸受24、26の幅中央部で、それぞれ連通している(図3)。軸線方向溝40、50は、その横断面積が、円周方向溝24C、24Dとの連通部において、円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積という関係を満たすように構成されている。
【0021】
以上の構成において、内燃機関の作動時には、コンロッド軸受22に支承されたクランクピン12が、コンロッド軸受に対する相対回転によって、図2における矢印Aで示す方向に回転する。クランクピン12の回転にともなって、クランクピン12の外周面に存在する潤滑油出口20aは、半円筒形軸受24の円周方向端面24Aに向かって動く。その間、潤滑油出口20aからは、潤滑油路20を経て、継続的に潤滑油が吐出されており、円周方向溝24C位置に達すると、円周方向溝24C内に直接潤滑油が流入する(図5)。流入した潤滑油は、これに付随する異物Fと共に、軸線方向溝40に向かって流れ、円周方向溝24Cと軸線方向溝40の連通部に達すると、潤滑油は異物Fと共に方向転換して、軸線方向溝40に沿って流れ、コンロッド軸受22の軸線方向端部(軸受幅方向端部)から軸受外部に向かって排出される。
円周方向溝24Cの深さは、円周方向中心側から円周方向端面24Aに向かって次第に大きくなされており、さらには、軸線方向溝40は、その横断面積が、円周方向溝24Cとの連通部において、円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積という関係を満たすように構成されているため、円周方向溝24C内を流れる潤滑油は、円周方向中心側から円周方向端面24Aに向かって次第に緩やかになり、軸線方向溝40内に進入した後は、流速を増して軸受外部に排出される。このような潤滑油の流速変化は、2つの点で有利である。すなわち、(1)円周方向溝24C内を流れる潤滑油に付随する異物が慣性力により軸線方向溝40を横断して相手側半円筒形軸受26の円周方向溝26C内に進入する傾向を緩和でき、軸線方向溝40内への進入を円滑にすることができる。(2)軸線方向溝40内に進入した異物は、軸線方向溝40内で流速を増した潤滑油に付随して迅速に、かつ、軸受内周面に沿って円周方向に流れる潤滑油の流れの影響を受け難い状態で、軸受外部に円滑に排出される。
潤滑油の一部は、異物の一部を伴なって、軸線方向溝40を越え、相手側半円筒形軸受26の円周方向溝26C内に流入し、矢印A方向側に位置する円周方向溝26Cの円周方向端部に向かって流れる。この時、複数個の異物Fのうちの一部も、軸線方向溝40を越えて、潤滑油と共に円周方向溝26C内に進入する可能性がある。
【0022】
潤滑油出口20aが、円周方向溝26Cの端部位置に達した図6に示される状態では、潤滑油出口20aの一部が半円筒形軸受26の内周面(軸受摺動面)で塞がれており、潤滑油出口20aから吐出される潤滑油は、噴流として円周方向溝26C内に流入して、それまでの順方向流に対する逆流(矢印B方向への流れ)として、円周方向溝26C内に滞留している異物Fを軸線方向溝40に向かって勢いよく押し流す(図6における矢印B参照)。この逆流が発生するおかげで、円周方向溝26C内に滞留する可能性のある異物Fが潤滑油と共に軸線方向溝40側に流れ、軸線方向溝40を通じて軸受外部に排出される機会が増大する(以上、段落0012の項目(3)参照)。この逆流現象を可能にするには、円周方向溝26Cの円周方向長さを、「軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さ」よりも大きくする必要がある。この条件を満たさない場合には、円周方向溝26Cの端部位置が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さ範囲内にあり、潤滑油出口20aから吐出される潤滑油が、円周方向溝26Cの存在しない位置で、クランクピン12の外周面と半円筒形軸受26の外周面(軸受壁厚減少領域の外周面)との比較的大きい間隙を通じて、半円筒形軸受26の幅方向(軸線方向)に発散状に流れる。
【実施例2】
【0023】
図7は、半円筒形軸受24、26の変形例を示す。変形例に係わる半円筒形軸受34、36は、円周方向溝の形状が半円筒形軸受24、26のそれと異なる。半円筒形軸受34、36の円周方向溝34C、36Cは、溝底面の横断面形状が円弧形状であり、また、溝幅が、半円筒形軸受34、36の円周方向端面から円周方向中央部に向かって次第に小さくなり、円周方向中央部側の終端において最も小さくなっている。この溝幅は、前記終端から、クランクピン12の潤滑油出口20aの口径(d)の1/2(=d/2)に相当する位置で、潤滑油出口20aの口径(d)よりも小さくする必要がある。円周方向溝の溝幅は小さいほどよく、クランクピン12の相対的回転にともなって、潤滑油出口20aが円周方向溝36Cの終端位置を通過する際に、潤滑油出口20aから円周方向溝36C内に流入して逆流方向(矢印B)に流れる潤滑油の速度を大きくすることができる。より望ましい溝幅は、d/4以上、d/2未満である。
円周方向溝34C、36Cの最も溝幅の大きい部分、すなわち半円筒形軸受24、26の突き合わせ端面領域における溝幅についても、前記と同様に潤滑油出口20aの口径(d)よりも小さくすることが望ましい。ただし、クランクピン12の相対的回転方向に対して後ろ側に位置する円周方向溝内に異物(潤滑油出口20aから吐出された異物)を捕捉するためには、円周方向溝の溝幅を、d/4以上にすることが推奨される。
【0024】
なお、いずれの実施例においても、円周方向溝の幅中心線は、クランクピンの外周面に存在する潤滑油出口の開口中心(穴中心)と整合しなければならない。
【0025】
以下、円周方向溝の溝幅と、潤滑油出口20aの口径(d)との関係、および、円周方向溝の円周方向長さと、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さとの関係について議論する。
【0026】
円周方向溝の溝幅と、潤滑油出口20aの口径(d)との関係(図8、図9)
本発明では、円周方向溝(24C、34C、26C、36C)の溝幅(W)が潤滑油出口の口径(d)未満になされる。クランクピンの潤滑油出口が、クランクピンの相対的回転にともなって、円周方向溝の終端部分を通過する時に、円周方向溝内で、軸受軸線方向に向かう潤滑油流成分も生じるので、その分だけ円周方向に向かう潤滑油流成分(逆流成分)の勢いが弱くなる(図8)。この軸線方向流と円周方向流との関係を考慮すると、溝幅(W)≧潤滑油出口の口径(d)という関係は望ましくない。
図9に示す例では、円周方向溝(26C、36C)の溝幅(W)が潤滑油出口の口径(d)よりも小さく、クランクピンの潤滑油出口が、クランクピンの相対的回転にともなって、円周方向溝の終端部分を通過する時に、円周方向溝内に生じる逆向き潤滑油流はもっぱら円周方向に向かう潤滑油流成分である。ただし、クランクピンの相対的回転方向に対して後ろ側に位置する円周方向溝内に異物(潤滑油出口20aから吐出された異物)を捕捉するためには、円周方向溝の溝幅をd/4以上にする必要がある。
【0027】
円周方向溝の円周方向長さと、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さとの関係(図10、図11)
(1)本発明では、円周方向溝の円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さよりも大きくなされる。図10に示される例では、円周方向溝の円周方向長さ(L1)が、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さ(L2)よりも僅かに大きい。この場合、クランクピンの潤滑油出口が、クランクピンの相対的回転にともなって、円周方向溝の終端部分を通過する時に、潤滑油出口の一部が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)にかかっているため、吐出潤滑油の一部が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)における軸受内周面とクランクピンとの間の比較的大きな間隙部分を通じて軸受軸線方向に流れる(軸受軸線方向に向かう潤滑油流成分による)。一方、クランクピンの潤滑油出口の中心部分が、円周方向溝にかかっているため、円周方向溝に向かう相対的に大きな潤滑油流成分が生じ、勢いは比較的弱いものの、潤滑油の逆流発生を期待できる。
図11に示す例では、円周方向溝の円周方向長さ(L1)が、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さ(L2)よりも、潤滑油出口口径の1/2(=d/2)だけ大きい。そのため、クランクピンの潤滑油出口が、クランクピンの相対的回転にともなって、円周方向溝の終端部分を通過する時に、潤滑油出口が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)にかかっておらず、潤滑油出口から吐出された潤滑油は、もっぱら円周方向溝内に流入し、円周方向に向かう潤滑油流成分により、大きな速度の逆流が生じる。
【0028】
(2)ここでは、円周方向溝の円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)の円周方向長さよりも小さい比較例について議論する(図12、図13)。この比較例では、半円筒形軸受64、66を組み合わせてコンロッド軸受を構成している。半円筒形軸受64、66の内周面に、潤滑油用円周方向溝64C、66C、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)64E、66Eが形成され、半円筒形軸受64、66の突き合わせ端面位置に軸線方向溝40が存在する。この比較例としてのコンロッド軸受が本発明例と異なる点は、半円筒形軸受64、66の円周方向端面からの円周方向溝64C、66Cの円周方向長さが、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)64E、66Eの円周方向長さに比して小さいことである。図中、クランクピン12の潤滑油出口20aが、クランクピン12の相対的回転(矢印A参照)にともなって、円周方向溝66Cの終端部分を通過する時に、潤滑油出口20aの大部分が、円周方向溝66Cの外側で、軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)66Eにかかっているため、吐出潤滑油の大部分が軸受壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)66Eにおける軸受内周面とクランクピン12との間の比較的大きな間隙部分を通じて軸受軸線方向(図13における横方向)に流れる。円周方向溝66C内に滞留していた異物は、この軸受軸線方向に流れによって軸受摺動面とクランクピン12との間に進入し、コンロッド軸受およびクランクピン12の摺動面を損傷させる結果となる。一方、吐出潤滑油の極く一部が円周方向溝66C内に流入するが、円周方向溝64C内で逆流を生じさせるほどの圧力は得られない。
【符号の説明】
【0029】
10 ジャーナル
10a ジャーナルの直径方向貫通孔
12 クランクピン
14 コンロッド
16 大端部ハウジング
16A コンロッド側大端部ハウジング
16B キャップ側大端部ハウジング
18A 半円筒形軸受
18B 半円筒形軸受
18a 潤滑油溝
20 潤滑油路
20a 潤滑油出口
22 コンロッド軸受
24 半円筒形軸受
24A 円周方向端面
24B 円周方向端面
24C 円周方向溝
24D 円周方向溝
24E 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
24F 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
24G 傾斜面
24H 傾斜面
26 半円筒形軸受
26A 円周方向端面
26B 円周方向端面
26C 円周方向溝
26D 円周方向溝
26E 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
26F 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
26G 傾斜面
26H 傾斜面
34 半円筒形軸受
34C 円周方向溝
36 半円筒形軸受
36C 円周方向溝
40 軸線方向溝
50 軸線方向溝
64 半円筒形軸受
64A 円周方向端面
66A 円周方向端面
64C 円周方向溝
64E 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
66 半円筒形軸受
66C 円周方向溝
66E 壁厚減少領域(クラッシュリリーフ領域)
d 潤滑油出口の口径
A 矢印
B 矢印
F 異物
W 軸線方向溝の溝幅
円周方向溝の溝幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部潤滑油路を有するクランク軸のクランクピンを回転自在に支承する、内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受であり、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、その一方がコンロッド大端部ハウジングのコンロッド側に位置する上側半円筒形軸受であり、他方がコンロッド大端部ハウジングのキャップ側に位置する下側半円筒形軸受として構成され、前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれクラッシュリリーフとしての軸受壁厚減少領域が付与されており、また前記上側半円筒形軸受は、その半円形断面の円周方向中心部分がコンロッドの中心軸線と一致するように組立てられる形式の前記コンロッド軸受において、
前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれ、前記円周方向端面から、前記軸受壁厚減少領域を2つに分断し、前記円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝が形成され、この円周方向溝の幅中心線と、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口の開口中心とが互いに整合する位置関係にあり、
また、全ての前記円周方向端面の前記軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面として形成され、その結果、前記一対の半円筒形軸受が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する前記円周方向端面に沿って、かつ、前記上側および下側半円筒形軸受の軸線方向幅全長に亘って、4つの前記円周方向溝と連通する2つの軸線方向溝が存在し、
前記円周方向溝の円周方向長さは、前記軸受壁厚減少領域の円周方向長さよりも大きく、
前記円周方向溝の深さは、前記円周方向端面から前記円周方向中心部分に向かって次第に小さくなされ、
前記円周方向溝の幅長は、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされ、
前記円周方向溝と前記軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、次の関係式(1): 円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積 ・・・・・・ (1)
を満たすことを特徴とする内燃機関のコンロッド軸受。
【請求項2】
前記円周方向端面から少なくとも前記潤滑油出口口径の1/2までの円周方向長さ範囲における前記円周方向溝の深さが0.1〜0.8mmであることを特徴とする請求項1に記載された内燃機関のコンロッド軸受。
【請求項3】
前記円周方向溝の長さが次の関係式(2):
円周方向溝の円周方向長さ≧軸受壁厚減少領域の円周方向長さ+潤滑油出口口径の
1/2 ・・・・・・ (2)
を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された内燃機関のコンロッド軸受。
【請求項4】
前記円周方向溝の幅長が次の関係式(3):
潤滑油出口口径の1/2>円周方向溝の幅長≧潤滑油出口口径の1/4
・・・・・・ (3)
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された内燃機関のコンロッド軸受。
【請求項5】
前記円周方向溝の溝底の横断面形状が円弧形状であり、前記円周方向溝の溝幅長が、前記円周方向端面から前記円周方向中央部に向かって次第に小さくなり、前記円周方向中央部側の溝終端部から、前記円周方向端面側に向かって潤滑油出口口径の1/2の距離にある位置で、前記口径の1/4以上かつ1/2未満になされていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された内燃機関のコンロッド軸受。
【請求項6】
内燃機関のコンロッドを、内部潤滑油路を有するクランク軸に連結するクランクピンを回転自在に支承するコンロッド軸受と、該コンロッド軸受を収容して保持するコンロッド大端部ハウジングとを含む、内燃機関のコンロッド軸受装置において、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、その一方が前記コンロッド大端部ハウジングのコンロッド側に位置する上側半円筒形軸受であり、他方が前記コンロッド大端部ハウジングのキャップ側に位置する下側半円筒形軸受として構成され、前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれクラッシュリリーフとしての軸受壁厚減少領域が付与されており、また前記上側半円筒形軸受は、その半円形断面の円周方向中心部分が前記コンロッドの中心軸線と一致するように組立てられる形式の前記コンロッド軸受において、
前記上側および下側半円筒形軸受の全ての円周方向端面に隣接する軸受内周面に、それぞれ、前記円周方向端面から、前記軸受壁厚減少領域を2つに分断し、前記円周方向中央部に向かって最大円周角45度の範囲内で円周方向溝が形成され、この円周方向溝の幅中心線と、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口の開口中心とが互いに整合する位置関係にあり、
また、全ての前記円周方向端面の前記軸受内周面に連なる角縁部が面取り加工による傾斜面として形成され、その結果、前記一対の半円筒形軸受が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する前記円周方向端面に沿って、かつ、前記上側および下側半円筒形軸受の軸線方向幅全長に亘って、4つの前記円周方向溝と連通する2つの軸線方向溝が存在し、
前記円周方向溝の円周方向長さは、前記軸受壁厚減少領域の円周方向長さよりも大きく、
前記円周方向溝の深さは、前記円周方向端面から前記円周方向中心部分に向かって次第に小さくなされ、
前記円周方向溝の幅長は、前記クランクピンの外周面に存在する、前記内部潤滑油路の潤滑油出口口径の1/4以上かつ該口径未満になされ、
前記円周方向溝と前記軸線方向溝との連通部における両溝の横断面積が、次の関係式(1): 円周方向溝の横断面積>軸線方向溝の横断面積 ・・・・・・ (1)
を満たすことを特徴とする内燃機関のコンロッド軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−285966(P2010−285966A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142200(P2009−142200)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】