説明

内燃機関の冷却構造

【課題】冷却水通路の容積を増加した場合であっても、EGR通路の容積を増加して排気浄化効率を向上させることができる内燃機関の冷却構造を提供する。
【解決手段】内燃機関の冷却構造100は、一側壁14bに冷却水通路14aが開口するシリンダヘッド14と、一側壁14bに連結された配管接続部材20とを備える。配管接続部材20は、供給配管P1−P4が接続された冷却水アウトレット21と、戻り配管P6−P8が接続された冷却水インレット22と、EGRガスが通流する通路部23とを有する。冷却水アウトレット21と冷却水インレット22は、一側壁14bの幅方向に延設され上下に配置される。通路部23は、冷却水アウトレット21の延設方向に形成される。EGRクーラ42・ヒータ46に接続される供給配管P2,P4及び戻り配管P6,P8は、EGRクーラ42・ヒータ46側に偏奇した位置で配管接続部材20に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等のエンジンにおいて排気ガスの一部を吸気側へ還流させる、所謂EGR(Exhaust Gas Recirculation,排気再循環)が知られている。このEGRは、燃焼温度を下げて排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減すること等を目的として用いられている。
【0003】
ところで、エンジンから排出された排気ガスは非常に高温であり、この排気ガスを吸気側へそのまま還流すると、吸気充填効率の低下を招くことから、還流される排気ガス(EGRガス)を極力冷却することが望ましい。そこで、従来、エンジンの冷却水を利用してEGRガスを冷却することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ウォータージャケット(冷却水通路)を区画し、かつシリンダヘッドのシリンダ列方向の一端部となる縦壁部にEGR通路の一部を形成し、このEGR通路の一部をウォータージャケットに沿うようにシリンダヘッドの幅方向に延設した発明が開示されている。すなわち、特許文献1には、ウォータージャケット内を通流する冷却水によりEGRガスを冷却する発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、シリンダヘッドに取り付けられ、かつラジエータ等の他部品へ冷却水を供給する供給配管が接続されてシリンダヘッドから供給配管へ至る冷却水流通通路を形成する配管接続部材を備え、シリンダヘッドと配管接続部材との互いの合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に冷却水流通通路を囲む溝(EGR通路の一部)を形成した発明が開示されている。すなわち、特許文献2には、前記溝にEGRガスを通流させ、冷却水流通通路内を通流する冷却水によりEGRガスを冷却する発明が開示されている。
【0006】
一般的に、冷却水を他部品へ供給する供給配管及び他部品へ供給された冷却水が戻ってくる戻り配管は、シリンダヘッドのシリンダ列方向の一側壁に対して接続され、かつ当該一側壁の幅方向に沿って並設されている(例えば、特許文献3参照)。具体的には、シリンダヘッドのシリンダ列方向の一端には、冷却水アウトレットチャンバー及び冷却水インレットチャンバーが一側壁の幅方向に沿って並設され、前記冷却水アウトレットチャンバーに供給配管が接続される一方、前記冷却水インレットチャンバーに戻り配管が接続されており、供給配管及び戻り配管が同一平面上に配置される構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−45498号公報
【特許文献2】特開2010−84581号公報
【特許文献3】特許第3485158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エンジンの冷却効果を高めるためには、冷却水通路の容積をできる限り増加することが望ましい一方、排気浄化効率を向上させるためには、EGR通路の容積をできる限り増加することが望ましい。ところが、前記特許文献1に記載の発明のように、シリンダヘッドに冷却水通路及びEGR通路を形成した場合、シリンダヘッド内のスペースの都合上、冷却水通路の容積を増加すると、EGR通路の容積を必然的に減少せざるを得ず、EGRガスの流量が減少して排気浄化効率が低下することになる。そこで、EGR通路の容積も増加する必要があるが、そうするとシリンダヘッドが必然的に大型化するという問題があった。
【0009】
一方、前記特許文献1に記載の発明では、EGR通路の容積を増加すると、冷却水通路の容積を必然的に減少せざるを得ず、冷却水の流量が減少してEGRガスに対する冷却効率が低下することになる。
また、前記特許文献2に記載の発明では、EGR通路は、冷却水流通通路の一端を囲む溝で形成されているため、EGR通路と冷却水流通通路との間の伝熱面積が小さくなってしまい、EGR通路と冷却水流通通路との間の熱交換効率が悪いことから、EGRガスに対する冷却効率が悪かった。
【0010】
したがって、前記特許文献1−2に記載の発明では、EGRガスに対する冷却効率が悪いため、吸気充填効率が低下して燃焼効率が悪化していた。そのため、例えば、EGRガスを冷却するEGRクーラを大型化する等の手段を別途講じて、EGRガスを十分に冷却する必要が生じてしまい、内燃機関の大型化や燃費の悪化を招くという問題があった。
【0011】
また、前記特許文献2に記載の発明では、供給配管と配管接続部材との接続部は、シリンダヘッドの一側壁の幅方向中央に配置されているため、ラジエータ等の他部品と供給配管との距離が遠くなってしまい、供給配管が長くなるレイアウトになっていた。
【0012】
更に、前記特許文献3に記載の発明では、冷却水アウトレットチャンバー及び冷却水インレットチャンバーがシリンダヘッドの一側壁の幅方向に沿って並設され、供給配管及び戻り配管が同一平面上に配置されているため、両者が干渉しないように配管レイアウトを定める作業が煩雑になると共に、両者の干渉を防止するために一方の配管を大きく迂回させる必要があり複雑な配管レイアウトになっていた。
【0013】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、冷却水通路の容積を増加した場合であっても、EGR通路の容積を増加して排気浄化効率を向上させることができる内燃機関の冷却構造を提供することを第1の課題とする。
また、EGRガスに対する冷却効率を向上させて燃焼効率が高まる内燃機関の冷却構造を提供することを第2の課題とする。
更に、コンパクトかつ簡素な配管レイアウトを実現できる内燃機関の冷却構造を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため本発明は、冷却水が通流する冷却水通路を内部に有し、かつシリンダ列方向の一側壁に前記冷却水通路の下流端が開口するシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドと別体で構成され、前記一側壁に連結された配管接続部材と、を備えた内燃機関の冷却構造であって、前記配管接続部材は、前記冷却水通路の下流端に連通接続され、かつ前記冷却水を他部品へ供給する供給配管が接続された冷却水アウトレットと、前記他部品へ供給された前記冷却水が戻ってくる戻り配管が接続された冷却水インレットと、一端が排気側に接続され、他端が吸気側に接続されるEGR通路の少なくとも一部を形成する通路部と、を有し、前記冷却水アウトレット及び前記冷却水インレットは、前記一側壁の幅方向に沿って延設され、かつシリンダ軸線方向にて上下に配置され、前記通路部は、前記冷却水アウトレットの延設方向に沿って形成され、少なくとも一つの前記他部品に接続される前記供給配管及び前記戻り配管は、前記一側壁の幅方向において、前記他部品側に偏奇した位置で前記配管接続部材に接続されている。
【0015】
本発明によれば、シリンダヘッドが冷却水通路を内部に有し、かつシリンダヘッドと別体で構成された配管接続部材がEGR通路の少なくとも一部(通路部)を有することにより、冷却水通路とEGR通路とが夫々別部材に形成されるため、冷却水通路の容積を考慮することなくEGR通路の容積を自由に設定できる。
したがって、冷却水通路の容積を増加した場合であっても、EGR通路の容積を増加して、EGRガスの流量を増加できるため、排気浄化効率を向上させることができる。また、EGR通路が配管接続部材に形成されるため、EGR通路の容積を増加した場合であってもシリンダヘッドの大型化を回避できる。
【0016】
また、本発明によれば、冷却水通路とEGR通路とが夫々別部材に形成されるため、EGR通路の容積を考慮することなく冷却水通路の容積を自由に設定できる。したがって、EGR通路の容積を増加した場合であっても、冷却水通路の容積を増加して、冷却水の流量を増加できるため、EGRガスに対する冷却効率を向上させることができる。
しかも、本発明によれば、冷却水アウトレット及び冷却水インレットは、一側壁の幅方向に沿って延設され、かつシリンダ軸線方向にて上下に配置されていることにより、一側壁の略幅方向全長に亘って冷却水アウトレットを設け、冷却水アウトレットの容量を増加させることができるため、シリンダヘッドから冷却水アウトレットへの冷却水の流量を十分に確保できる。
また、通路部は、冷却水アウトレットの延設方向に沿って形成されていることにより、冷却水アウトレットに対し略平行に、かつ一側壁の略幅方向全長に亘って通路部を設けることができるため、冷却水流通通路の一端を囲む溝で通路部を形成した場合(例えば、特許文献2に記載の発明)に比較して、通路部と冷却水アウトレットとの間の伝熱面積が大きくなる。
【0017】
したがって、冷却水アウトレットへの冷却水の流量が増加し、かつ通路部と冷却水アウトレットとの間の伝熱面積が大きくなるため、通路部と冷却水アウトレットとの間の熱交換を効率良く行うことが可能となり、EGRガスに対する冷却効率を向上させることができる。
つまり、本発明によれば、EGRガスに対する冷却効率が向上して、吸気充填効率が高まり燃焼効率が向上することから、EGRクーラを大型化する等の手段を別途講じる必要がなくなり、内燃機関の大型化や燃費の悪化を回避できる。
【0018】
更に、本発明によれば、少なくとも一つの他部品に接続される供給配管及び戻り配管は、一側壁の幅方向において、他部品側に偏奇した位置で配管接続部材に接続されていることにより、当該接続部をシリンダヘッドの幅方向中央に配置した場合(例えば、特許文献2に記載の発明)に比較して、供給配管及び戻り配管と他部品との距離を近付けることができるため、供給配管及び戻り配管を短くしてコンパクトな配管レイアウトを実現できる。
また、冷却水アウトレット及び冷却水インレットは、シリンダ軸線方向にて上下に配置されていることにより、供給配管と戻り配管とが上下に位置するため、両者が干渉しないように配管レイアウトを定める作業が容易になる。
そして、供給配管と戻り配管とが上下に位置するため、一方の配管を大きく迂回させる必要がなくなり、両者の干渉を防止しつつ簡素な配管レイアウトを実現できる。
【0019】
また、前記冷却水アウトレットは、前記冷却水インレットに対してシリンダ軸線方向にて上方かつ隣接して設けられ、前記通路部は、前記冷却水アウトレットに対してシリンダ軸線方向にて上方かつ隣接して設けられ、前記供給配管は、ラジエータへ前記冷却水を供給するラジエータ用供給配管を有し、前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、前記冷却水通路を通流する前記冷却水の流れ方向に対して鈍角を成すように構成するのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、ラジエータ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、冷却水通路を通流する冷却水の流れ方向に対して鈍角を成すことにより、シリンダヘッドから流出した冷却水はラジエータ用供給配管へ流れ込みやすくなるため、ラジエータ用供給配管へ流入する冷却水の流量を増加させ、ひいてはラジエータへの冷却水の供給量を十分に確保できる。
また、通路部は、冷却水アウトレット及び冷却水インレットに対してシリンダ軸線方向にて上方に設けられることにより、通路部の容積を設定する際に冷却水アウトレット及び冷却水インレットによる制約を受け難くなる。
更に、通路部は、冷却水アウトレットに対して隣接して設けられることにより、通路部を通流するEGRガスと冷却水アウトレットを通流する冷却水との間で熱交換を効率良く行うことが可能となり、EGRガスに対する冷却効率が向上するため、EGRクーラの小型化に寄与できる。
【0021】
また、前記供給配管は、前記ラジエータ用供給配管を含む複数の供給配管を有し、前記冷却水アウトレットは、前記供給配管が接続される複数の接続部を有し、複数の前記接続部のうち、前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、最大流入断面積となるように前記一側壁から離間する方向に突出形成されているように構成するのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、ラジエータ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、最大流入断面積となるように一側壁から離間する方向に突出形成されていることにより、ラジエータ用供給配管への冷却水の流量を増加できる。
【0023】
また、前記シリンダヘッドの前記一側壁の幅方向は、車両前後方向に一致しており、前記供給配管は、EGRクーラへ前記冷却水を供給するEGRクーラ用供給配管と、ヒータへ前記冷却水を供給するヒータ用供給配管と、を更に有し、前記ラジエータ用供給配管及び前記EGRクーラ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置され、前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、前記ラジエータ用供給配管、前記EGRクーラ用供給配管、及び前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されているように構成するのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、ラジエータ用供給配管及びEGRクーラ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置される一方、ヒータ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、かつ各供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されていることにより、ラジエータ、EGRクーラ、及びヒータ等の位置(配置)に合わせて複数の供給配管を車両前後に振り分けて配置できるため、供給配管の配管レイアウトをコンパクトかつ簡素にできる。
【0025】
また、前記戻り配管は、前記EGRクーラへ供給された前記冷却水が戻ってくるEGRクーラ用戻り配管と、前記ヒータへ供給された前記冷却水が戻ってくるヒータ用戻り配管と、を有し、前記冷却水インレットは、前記戻り配管が接続される複数の接続部を有し、前記EGRクーラ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置され、前記ヒータ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、前記EGRクーラ用戻り配管及び前記ヒータ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されているように構成するのが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、EGRクーラ用戻り配管に対する冷却水インレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置される一方、ヒータ用戻り配管に対する冷却水インレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、かつ各戻り配管に対する冷却水インレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されていることにより、EGRクーラ及びヒータ等の位置に合わせて複数の戻り配管を車両前後に振り分けて配置できるため、戻り配管の配管レイアウトをコンパクトかつ簡素にできる。
また、前記した通り、冷却水アウトレット及び冷却水インレットは、シリンダ軸線方向にて上下に隣接して設けられるため、供給配管と戻り配管との上下間の距離を近付けることが可能となり、供給配管及び戻り配管を含む全体の配管レイアウトをコンパクトかつ簡素にできると共に、組立時の作業性が向上する。
【0027】
また、前記通路部は、前記一側壁から離間する方向に突出形成されているように構成するのが好ましい。
【0028】
かかる構成によれば、通路部は、一側壁から離間する方向に突出形成されていることにより、突出量を調節することで通路部の容積を増加し、EGRガスの流量を簡易に増加できる。
【0029】
また、前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部には、前記冷却水の温度を検出する水温センサが設けられているように構成するのが好ましい。
【0030】
前記した通り、シリンダヘッドから流出した冷却水はラジエータ用供給配管へ流れ込みやすいところ、かかる構成によれば、冷却水が流れ込みやすいラジエータ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部に水温センサが設けられるため、冷却水の温度を精度良く検出できる。
【0031】
また、前記冷却水通路は、燃焼室の上方においてシリンダ列方向に沿って前記冷却水を通流させる主流部を有し、前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、前記主流部の下流側に設けられているように構成するのが好ましい。
【0032】
かかる構成によれば、ヒータ用供給配管に対する冷却水アウトレットの接続部は、燃焼室の上方においてシリンダ列方向に沿って冷却水を通流させる主流部の下流側に設けられていることにより、シリンダヘッドから流出した冷却水がヒータ用供給通路へ流れ込みやすくなる。これにより、ヒータ用供給配管へ流入する冷却水の流量を増加させ、ひいてはヒータへの冷却水の供給量を十分に確保できる。
【0033】
また、前記配管接続部材と、前記シリンダヘッドに回転可能に支持されるカムシャフトの回転角を検出するカム角度センサとは、前記一側壁にボルトで共締めされているように構成するのが好ましい。
【0034】
かかる構成によれば、内燃機関の運転時において、配管接続部材は、内部に冷却水が通流して比較的大きな重量を有するため振動しにくい部材であることから、当該配管接続部材及びカム角度センサがシリンダヘッドの一側壁に共締めされることにより、カム角度センサが振動の影響を受けにくくなるため、カムシャフトの回転角の検出精度を向上させることができる。
また、配管接続部材及びカム角度センサがシリンダヘッドの一側壁にボルトで共締めされることにより、配管接続部材及びカム角度センサをシリンダヘッドに同時に固定できるため、組立時の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、冷却水通路の容積を増加した場合であっても、EGR通路の容積を増加して排気浄化効率を向上させることができる内燃機関の冷却構造を提供することができる。
また、本発明によれば、EGRガスに対する冷却効率を向上させて燃焼効率が高まる内燃機関の冷却構造を提供することができる。
更に、本発明によれば、コンパクトかつ簡素な配管レイアウトを実現できる内燃機関の冷却構造を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】エンジンの冷却システムを示す模式図である。
【図2】EGRガス還流システムを示す模式図である。
【図3】シリンダヘッドに配管接続部材を組み付けた状態を示す左側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3のI−I線断面図である。
【図6】図3のII−II線断面図である。
【図7】シリンダヘッドのウォータージャケットの出口を示す左側面図である。
【図8】(a)は、配管接続部材を表側から見た状態を示す正面図であり、(b)は、配管接続部材を(a)と反対側から見た状態を示す背面図である。
【図9】(a)は、水温センサ周辺を下方から見上げた状態を示す図3のIII−III線断面図であり、(b)は、(a)のIV−IV線断面図である。
【図10】図3のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
本発明の実施形態に係るエンジンの冷却構造100の説明に先立って、図1を参照しながら冷却システムS1について説明する。図1は、冷却システムS1を示す模式図である。なお、図1中の実線矢印は、冷却水の流れを示す。
図1に示すように、冷却システムS1は、シリンダブロック12及びシリンダヘッド14のウォータージャケット12a,14a等を通流するように冷却水を循環させ、シリンダブロック12等(エンジン10)を冷却するシステムである。
シリンダブロック12及びシリンダヘッド14は、エンジン10のエンジン本体11を構成し、本実施形態のエンジン本体11は、4つの気筒#1−#4が列状に配置された直列4気筒エンジンであって、図示しないエンジンルーム内に横置きで搭載される。
【0039】
エンジン本体11の一端側には、冷却水ポンプ30が配設されている。冷却水ポンプ30は、ベルト伝達機構(図示省略)を介して、クランク軸(図示省略)から動力を伝達されて駆動し、シリンダブロック12へ冷却水を供給する。冷却水ポンプ30の下流側には、シリンダブロック12のウォータージャケット12aの入口12a1が接続されている。
【0040】
ウォータージャケット12aは、気筒#1−#4の略外周を囲むように形成されている。ウォータージャケット12a,14aは、排気側及び吸気側に設けられた連通部18,18を介して、互いに連通している。冷却水通路たるウォータージャケット14aの出口(下流端)14a1は、シリンダ列方向の一側壁14bに開口している。
【0041】
この場合、冷却水は、吸気側のウォータージャケット12aをシリンダ列方向に沿って通流した後、Uターンして排気側のウォータージャケット12aをシリンダ列方向に沿って通流する。また、冷却水は、連通部18,18を介して、ウォータージャケット12aからウォータージャケット14aへ供給され、ウォータージャケット14aをシリンダ列方向に沿って通流する。
なお、本実施形態では、シリンダ列方向は車幅方向(左右方向)に一致し、一側壁14bの幅方向は車両前後方向に一致する。
【0042】
シリンダヘッド14の一側壁14bには、冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22を有する配管接続部材20が配設されている。冷却水アウトレット21は、配管P1−P4を介して、ウォータージャケット14aとラジエータ32等とを接続する。また、冷却水アウトレット21は、バイパス通路34及びサーモスタット36を介して、シリンダブロック12に設けられた流路12bに連通している。
【0043】
冷却水インレット22は、配管P6−P8を介して、ヒータ46等に接続されると共に、流路12bに連通している。なお、流路12bの下流端は、配管P9を介して、冷却水ポンプ30の上流側に接続されている。
【0044】
ラジエータ32は、エンジン本体11の前方に配設されており、冷却水アウトレット21とラジエータ32との間には、ラジエータ32へ冷却水を供給する配管P1が配設されている。ラジエータ32とサーモスタット36を収容するサーモハウジング40との間には、ラジエータ32へ供給された冷却水が排出される配管P5が配設されている。サーモスタット36によって配管P5と流路12bとの連通を許容する状態及び遮断する状態に切り替えることが可能になっている。
【0045】
冷却水アウトレット21とEGRクーラ42との間には、EGRクーラ42へ冷却水を供給する配管P2が配設されている。冷却水インレット22とEGRクーラ42との間には、EGRクーラ42へ供給された冷却水が戻る配管P6が配設されている。
【0046】
冷却水アウトレット21とスロットルボディ44との間には、スロットルボディ44へ冷却水を供給する配管P3が配設されている。冷却水インレット22とスロットルボディ44との間には、スロットルボディ44へ供給された冷却水が戻ってくる配管P7が配設されている。
【0047】
ヒータ46は、エンジン本体11の後方に配設されており、冷却水アウトレット21とヒータ46との間には、ヒータ46へ冷却水を供給する配管P4が配設されている。冷却水インレット22とヒータ46との間には、ヒータ46へ供給された冷却水が戻る配管P8が配設されている。配管P4と配管P8との間には、配管P4の途中から分岐し、配管P8の下流側に連通する分岐管P11が配設されている。配管P4において、分岐管P11との分岐部分には、三方弁48が配設されており、三方弁48によってヒータ46へ冷却水を通流する状態と分岐管P11へ冷却水を通流する状態とに切り替えることが可能になっている。配管P4中には、その他に冷却水ポンプ50が配設されている。
【0048】
この場合、エンジン10の暖機運転が完了する前(低温時)には、サーモスタット36によってラジエータ32と流路12bとの連通状態を遮断する一方、バイパス通路34と流路12bとの連通状態を許容し、冷却水アウトレット21からバイパス通路34を経由して流路12bへ冷却水を供給する。その結果、冷却水は、冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21→バイパス通路34→サーモスタット36→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30の順に通流する。したがって、冷却水はラジエータ32を通流しないため、冷却水の温度を速やかに上昇させてエンジン10の暖機を円滑に行うことができる。
【0049】
エンジン10の暖機運転が完了した後(高温時)には、サーモスタット36によってラジエータ32と流路12bとの連通状態を許容する一方、バイパス通路34と流路12bとの連通状態を遮断し、ラジエータ32から配管P5を経由して流路12bへ冷却水を供給する。その結果、冷却水は、冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21→配管P1→ラジエータ32→配管P5→サーモスタット36→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30の順に通流する。したがって、冷却水はラジエータ32を通流するため、大気との熱交換により冷却水の温度を低下させてエンジン10のオーバーヒートを抑制できる。
【0050】
また、エンジン10の暖機運転が完了する前には、三方弁48によって冷却水アウトレット21とヒータ46との連通状態を遮断し、分岐管P11へ冷却水を供給する。その結果、冷却水は、冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21→配管P4→分岐管P11→配管P8→冷却水インレット22→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30の順に通流する。したがって、冷却水はヒータ46を通流しないため、冷却水の温度を速やかに上昇させてエンジン10の暖機を円滑に行うことができる。
【0051】
エンジン10の暖機運転が完了した後には、三方弁48によって冷却水アウトレット21とヒータ46との連通状態を許容し、ヒータ46へ冷却水を供給する。その結果、冷却水は、冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21→配管P4→ヒータ46→配管P8→冷却水インレット22→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30の順に通流する。したがって、冷却水はヒータ46を通流するため、ヒータ46を加温することができる。
【0052】
また、冷却水アウトレット21へ流入した冷却水は、配管P2→EGRクーラ42→配管P6→冷却水インレット22→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21の順に通流する。したがって、冷却水はEGRクーラ42を通流するため、EGRガスの冷却を行うことができる。
【0053】
更に、冷却水アウトレット21へ流入した冷却水は、配管P3→スロットルボディ44→配管P7→冷却水インレット22→流路12b→配管P9→冷却水ポンプ30→シリンダブロック12のウォータージャケット12a→シリンダヘッド14のウォータージャケット14a→冷却水アウトレット21の順に通流する。したがって、冷却水はスロットルボディ44を通流するため、スロットルボディ44の暖気を行うことができる。
【0054】
次に、図2を参照しながらEGRガス還流システムS2について説明する。図2は、EGRガス還流システムS2を示す模式図である。なお、図2中の実線矢印は、冷却水の流れを示し、点線矢印は、EGRガスの流れを示す。
【0055】
EGRガス還流システムS2は、排気ガスの一部を吸気側へ還流させるシステムである。
シリンダヘッド14には、燃焼室14cと、燃焼室14cに空気を供給する吸気ポート14dと、燃焼室14cから排気を排出する排気ポート14eと、吸気ポート14d及び排気ポート14eを開閉するバルブ14fと、EGR通路の一部を構成する通路14gと、が設けられている。シリンダヘッド14の側部には、吸気ポート14dに空気を導入するための吸気マニホールド52が設置される一方、反対側の側部には、排気ポート14eからの排気を外部に導出するための排気マニホールド(図示省略)が設置される。
【0056】
シリンダヘッド14の一側壁14b寄りの排気ポート14eには、通路14gの上流端が連通している。通路14gの下流端14g1は、後記する配管接続部材20の通路部23に連通している。通路部23の上流端には、EGR制御弁54が取り付けられている。EGR制御弁54は、配管P12を介して、EGRクーラ42に接続され、EGRクーラ42は、配管P13を介して、吸気マニホールド52に接続されている。
【0057】
この場合、EGRガスは、排気ポート14e→通路14g→配管接続部材20の通路部23→EGR制御弁54→配管P12→EGRクーラ42→配管P13→吸気マニホールド52の順に通流し、吸気マニホールド52から吸気ポート14dへ導入される。また、EGRガスは、通路部23を通過する際に、冷却水アウトレット21内の冷却水との間で熱交換が行われて冷却される。
【0058】
次に、図3−図10を適宜参照しながら、エンジンの冷却構造100の実施形態について詳細に説明する。
【0059】
図3は、シリンダヘッド14に配管接続部材20を組み付けた状態を示す左側面図であり、図4は、図3の平面図である。
エンジンの冷却構造100は、エンジン10及びEGRガスを冷却するための構造であって、図3及び図4に示すように、シリンダヘッド14と、配管接続部材20と、複数の配管P1−P4,P6−P8と、を主に備える。
なお、図3及び図4中の符号16は、シリンダヘッドカバーを示す。
【0060】
図5は、図3のI−I線断面図であり、図6は、図3のII−II線断面図であり、図7は、シリンダヘッド14のウォータージャケット14aの出口14a1を示す左側面図である。なお、図5では、説明の便宜上、配管を省略して描いている。
図5及び図6に示すように、シリンダヘッド14の一側壁14bは、配管接続部材20が固定される取付面を構成する。一側壁14bには、図7に示すように、複数のボルト挿通孔14h,14hが形成されると共に、ウォータージャケット14aの出口14a1及び通路14gの下流端14g1が開口している。
【0061】
ウォータージャケット14aの出口14a1は、上下に延びるリブ14iによって前後に区画されており、前方の第1出口14a2及び後方の第2出口14a3を有する。第1出口14a2は、第2出口14a3よりも開口面積が大きく形成されている。リブ14iを設けることにより、ウォータージャケット14aの出口14a1の開口面積を大きく確保した場合であっても、シリンダヘッド14の剛性低下を軽減できる。また、冷却水はリブ14iを境にして前後に分流されるため、リブ14iは冷却水を案内する案内部としても機能する。
【0062】
通路14gの下流端14g1は、仕切壁14jによってウォータージャケット14aの出口14a1と区画されている。通路14gの下流端14g1は、ウォータージャケット14aの出口14a1に対し後方に所定間隔離間して設けられている。
【0063】
図8(a)は、配管接続部材20を表側から見た状態を示す正面図であり、(b)は、配管接続部材20を(a)と反対側から見た状態を示す背面図である。なお、図8(b)のハッチング部分は、シリンダヘッド14との接触面を示す。
配管接続部材20は、シリンダヘッド14と別体で構成された金属製部材であり、図5及び図8(a)に示すように、冷却水アウトレット21と、冷却水インレット22と、通路部23と、複数の締結部24,24と、を有する。
【0064】
冷却水アウトレット21は、図5及び図8(a),(b)に示すように、ウォータージャケット14aの出口14a1に連通接続されるアウトレットチャンバー21aと、配管P1−P4が接続される接続部21b−21eと、を有する。
【0065】
アウトレットチャンバー21aは、一側壁14bの幅方向に沿って延設された部分である。アウトレットチャンバー21aは、一側壁14bから離間する方向に向けて突出形成され、所定容積の空間を有する。アウトレットチャンバー21aの裏面には、図8(b)に示すように、開口部21a1が形成されており、この開口部21a1は、ウォータージャケット14aの出口14a1の開口形状に対応している。
【0066】
接続部21b−21eは、図8(a)に示すように、アウトレットチャンバー21aに連通する円筒状の部分である。接続部21b−21eは、アウトレットチャンバー21aの外壁から外方に突出形成されている。本実施形態では、車両前方から、配管P1に接続される接続部21b、配管P2に接続される接続部21c、配管P3に接続される接続部21d、配管P4に接続される接続部21e、の順に配置されている。詳しくは、接続部21b,21cは、車両前方に偏奇して配置される一方、接続部21d,21eは、車両後方に偏奇して配置されている。接続部21b−21eは、車両前後方向に沿って直線上に配置されている。接続部21bについては、後に詳しく説明する。
【0067】
冷却水インレット22は、図5及び図8(a),(b)に示すように、冷却水アウトレット21に対しシリンダ軸線方向にて下方かつ隣接して設けられた部分である。
冷却水インレット22は、インレットチャンバー22aと、配管P6−P8が接続される接続部22b−22dと、を有する。
【0068】
インレットチャンバー22aは、一側壁14bの幅方向に沿って延設された部分である。インレットチャンバー22aは、一側壁14bから離間する方向に向けて突出形成され、所定容積の空間を有する。
【0069】
接続部22b−22dは、図8(a)に示すように、インレットチャンバー22aに連通する円筒状の部分である。接続部22b−22dは、インレットチャンバー22aの外壁から外方に突出形成されている。本実施形態では、車両前方から、配管P6が接続される接続部22b、配管P7が接続される接続部22c、配管P8が接続される接続部22d、の順に配置されている。詳しくは、接続部22bは、車両前方に偏奇して配置され、接続部22c,22dは、車両後方に偏奇して配置されている。接続部22b−22dは、車両前後方向に沿って直線上に配置されている。
【0070】
通路部23は、図5及び図8(a),(b)に示すように、冷却水アウトレット21に対しシリンダ軸線方向にて上方かつ隣接し、冷却水アウトレット21の延設方向に沿って設けられた部分である。通路部23は、EGRガス還流システムS2の一部を構成し、EGRガスが通流するEGR通路として機能している。通路部23は、一側壁14bから離間する方向に向けて突出形成され、所定容積の空間を有する。通路部23の裏面には、図8(b)に示すように、開口部23aが形成されており、この開口部23aは、通路14gの下流端14g1の開口形状に対応している。
【0071】
複数の締結部24,24は、図8(a)に示すように、配管接続部材20の適所に設けられ、ボルト挿通孔24a,24aを有する。配管接続部材20は、図3に示すように、締結部24を介して、一側壁14bにボルトで固定される。また、配管接続部材20は、締結部24を介して、一対のカム角度センサ56a,56bのうち一方のカム角度センサ56aと、一側壁14bにボルトBで共締めされている。なお、カム角度センサ56a,56bは、シリンダヘッド14に回転可能に支持されるカムシャフト(図示省略)の回転角を検出する機能を有する。
【0072】
配管P1−P4は、図1及び図3に示すように、冷却水アウトレット21とラジエータ32等とを繋ぎ、冷却水アウトレット21からラジエータ32等へ冷却水を供給するための供給配管である。図3に示すように、配管P1は、一端が接続部21bに接続され、ラジエータ32へ冷却水を供給するラジエータ用供給配管であり、配管P2は、一端が接続部21cに接続され、EGRクーラ42へ冷却水を供給するEGRクーラ用供給配管である。また、配管P3は、一端が接続部21dに接続され、スロットルボディ44へ冷却水を供給するスロットルボディ用供給配管であり、配管P4は、一端が接続部21eに接続され、ヒータ46へ冷却水を供給するヒータ用供給配管である。配管P1−P2の冷却水アウトレット21に対する接続部分は、車両前方に偏奇して配置される一方、配管P3−P4の冷却水アウトレット21に対する接続部分は、車両後方に偏奇して配置されている。配管P1−P4の冷却水アウトレット21に対する接続部分は、車両前後方向に沿って直線上に配置されている。
【0073】
配管P6−P8は、図1及び図3に示すように、冷却水インレット22とEGRクーラ42等とを繋ぎ、EGRクーラ42等から冷却水インレット22へ冷却水を戻すための戻り配管である。図3に示すように、配管P6は、一端が接続部22bに接続され、EGRクーラ42へ供給された冷却水が戻るEGRクーラ用戻り配管であり、配管P7は、一端が接続部22cに接続され、スロットルボディ44へ供給された冷却水が戻るスロットルボディ用戻り配管であり、配管P8は、一端が接続部22dに接続され、ヒータ46へ供給された冷却水が戻るヒータ用戻り配管である。配管P6の冷却水インレット22に対する接続部分は、車両前方に偏奇して配置される一方、配管P7,P8の冷却水インレット22に対する接続部分は、車両後方に偏奇して配置されている。配管P6−P8の冷却水インレット22に対する接続部分は、車両前後方向に沿って直線上に配置されている。
【0074】
続いて、接続部21bについて、図3、図4、図6を適宜参照して詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、接続部21bは、他の接続部21c−21eよりも流出断面積が大きくなるように形成されている。図6に示すように、接続部21bは、比較的大きい開口面積を有する第1出口14a2寄りに配置されている。接続部21bの突出方向Xは、ウォータージャケット14aを通流する冷却水の流れ方向Yに対して鈍角を成している。つまり、接続部21bの突出方向Xと冷却水の流れ方向Yとの成す角度θは、90度よりも大きい鈍角を成している。これにより、接続部21bの突出方向Xと冷却水の流れ方向Yとの成す角度θが90度以下の場合に比較して、冷却水の圧力損失を低減できるため、接続部21bへ流入する冷却水の流量を増加させ、ひいてはラジエータ32への冷却水の供給量を十分に確保できる。
【0075】
一方、接続部21eは、シリンダ列方向に沿って冷却水を通流させる主流部Tの下流側に設けられている。これにより、冷却水が接続部21bへ流れ込みやすくなるため、ヒータ46への冷却水の供給量を十分に確保できる。なお、主流部Tは、ウォータージャケット14aのうち、燃焼室14c(図2参照)の上方に位置する部分である。この場合、主流部T内の冷却水は、燃焼室14cの上方を通過して、冷却水アウトレット21へ流入する。
【0076】
図9(a)は、水温センサ58周辺を下方から見上げた状態を示す図3のIII−III線断面図であり、(b)は、(a)のIV−IV線断面図である。
接続部21bには、図9(a)に示すように、バイパス通路34の一部を形成するバイパス部21fが連通する一方、このバイパス部21fの近傍において、水温センサ58が装着される孔部21gが貫通形成されている。なお、バイパス通路34は、バイパス部21fと、シリンダヘッド14のバイパス部14kとによって形成されている。
【0077】
水温センサ58は、図9(b)に示すように、冷却水の温度を検出するためのセンサであって、孔部21gの外部に露出する本体部58aと、孔部21gに挿入され接続部21b内へ突出するセンサ部58bと、を有する。このように接続部21bに水温センサ58を設け、かつバイパス部21fを連通することにより、常時冷却水が流れる部分に水温センサ58を設けたので、エンジン10の暖機中及び暖機後であっても(サーモスタット36の開閉状態に関わらずに)冷却水の温度を精度良く確実に検出できる。
【0078】
図10は、図3のV−V線断面図である。なお、図10中の実線矢印は、冷却水の流れを示し、点線矢印は、エアの流れを示す。
ここで、図10に示すように、ウォータージャケット14aと接続部21bとの間には、ウォータージャケット14a内のエア(気泡)を抜くためのエア抜き孔60が設けられている。エア抜き孔60は、ウォータージャケット14aの途中から分岐して、接続部21bに連通している。エア抜き孔60の上流端近傍には、サーモハウジング40内のエアを抜くためのエア抜き孔40aが設けられ、このエア抜き孔40aは、ウォータージャケット14aに連通している。これにより、エア抜き孔40a,60を介して、ウォータージャケット14a内及びサーモハウジング40内のエアを接続部21bに抜くことができる。また、製造時にエア抜き孔60を利用して、ウォータージャケット14a内のバリを確認し、バリの除去作業を行うことができる。
【0079】
本発明の実施形態に係るエンジンの冷却構造100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0080】
本実施形態によれば、シリンダヘッド14がウォータージャケット14aを内部に有し、かつシリンダヘッド14と別体で構成された配管接続部材20が通路部23を有することにより、ウォータージャケット14aと通路部23とが夫々別部材に形成されるため、ウォータージャケット14aの容積を考慮することなく通路部23の容積を自由に設定できる。したがって、ウォータージャケット14aの容積を増加した場合であっても、通路部23の容積を増加して、EGRガスの流量を増加できるため、排気浄化効率を向上させることができる。また、通路部23が配管接続部材20に形成されるため、通路部23の容積を増加した場合であってもシリンダヘッド14の大型化を回避できる。
【0081】
また、本実施形態によれば、通路部23は、冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22に対してシリンダ軸線方向にて上方に設けられることにより、通路部23の容積を設定する際に冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22による制約を受け難くなる。
【0082】
また、本実施形態によれば、通路部23は、一側壁14bから離間する方向に突出形成されていることにより、突出量を調節することで通路部23の容積を増加し、EGRガスの流量を簡易に増加できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、ウォータージャケット14aと通路部23とが夫々別部材に形成されるため、通路部23の容積を考慮することなく、ウォータージャケット14aの容積を自由に設定できる。そのため、通路部23の容積を増加した場合であっても、ウォータージャケット14aの容積を増加して、冷却水の流量を増加できるため、EGRガスに対する冷却効率を向上させることができる。
【0084】
しかも、本実施形態によれば、冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22は、一側壁14bの幅方向に沿って延設され、かつシリンダ軸線方向にて上下に配置されていることにより、一側壁14bの幅方向略全長に亘って冷却水アウトレット21を設け、冷却水アウトレット21の容量を増加させることができるため、シリンダヘッド14から冷却水アウトレット21への冷却水の流量を十分に確保できる。
【0085】
また、本実施形態によれば、通路部23は、冷却水アウトレット21に対して隣接し、かつ冷却水アウトレット21の延設方向に沿って形成されていることにより、冷却水流通通路の一端を囲む溝で通路部を形成した場合(例えば、特許文献2に記載の発明)に比較して、通路部23と冷却水アウトレット21との間の伝熱面積が大きくなる。
【0086】
したがって、冷却水アウトレット21への冷却水の流量が増加し、かつ通路部23と冷却水アウトレット21との間の伝熱面積が大きくなるため、通路部23と冷却水アウトレット21との間の熱交換を効率良く行うことが可能となり、EGRガスに対する冷却効率を向上させることができる。
つまり、本実施形態によれば、EGRガスに対する冷却効率が向上して、吸気充填効率が高まり燃焼効率が向上することから、EGRクーラ42を大型化する等の手段を別途講じる必要がなくなり、エンジン10の大型化や燃費の悪化を回避できる。
【0087】
また、本実施形態によれば、EGRクーラ42に接続される配管P2及び配管P6が車両前方に偏奇した位置で配管接続部材20に接続され、ヒータ46に接続される配管P4及び配管P8が車両後方に偏奇した位置で配管接続部材20に接続されるため、シリンダヘッド14の幅方向中央に接続した場合(例えば、特許文献2に記載の発明)に比較して、配管P2及び配管P6とEGRクーラ42との距離並びに配管P4及び配管P8とヒータ46との距離を近付けることができるため、配管P2,P4,P6,P8を短くしてコンパクトな配管レイアウトを実現できる。
【0088】
また、本実施形態によれば、ラジエータ32、EGRクーラ42、スロットルボディ44及びヒータ46等の位置(配置)に合わせて複数の配管P1−P4,P6−P8を車両前後に振り分けて配管接続部材20に接続できるため、配管レイアウトをコンパクトかつ簡素にできる。
しかも、本実施形態によれば、冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22は、シリンダ軸線方向にて上下に隣接して設けられるため、供給用の配管P2−P4と戻り用の配管P6−8との上下間の距離を近付けることが可能となり、全体の配管レイアウトをコンパクトかつ簡素にできると共に、組立時の作業性が向上する。
【0089】
また、本実施形態によれば、冷却水アウトレット21及び冷却水インレット22は、シリンダ軸線方向にて上下に配置されていることにより、供給用の配管P1−P4と戻り用の配管P6−P8とが上下に位置するため、両者が干渉しないように配管レイアウトを定める作業が容易になる。
そして、供給用の配管P1−P4と戻り用の配管P6−P8とが上下に位置するため、供給用の配管P1−P4及び戻り用の配管P6−P8のうち、一方の配管を大きく迂回させる必要がなくなり、両者の干渉を防止しつつ簡素な配管レイアウトを実現できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、ラジエータ32用の配管P1に接続される接続部21bの突出方向Xは、ウォータージャケット14aを通流する冷却水の流れ方向Yに対して鈍角を成すことにより、シリンダヘッド14から流出した冷却水は、接続部21bへ流れ込みやすくなるため、配管P1へ流入する冷却水の流量を増加させ、ひいてはラジエータ32への冷却水の供給量を十分に確保できる。
【0091】
また、本実施形態によれば、接続部21bは、他の接続部21c−21eに対し最大流入断面積となるように形成されていることにより、配管P1へ流入する冷却水の流量を増加できる。
【0092】
また、本実施形態によれば、冷却水アウトレット21の接続部21eは、燃焼室14cの上方においてシリンダ列方向に沿って冷却水を通流させる主流部Tの下流側に設けられていることにより、冷却水がヒータ46用の配管P4へ流れ込みやすくなる。これにより、配管P4へ流入する冷却水の流量を増加させ、ひいてはヒータ46への冷却水の供給量を十分に確保できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、冷却水は冷却水アウトレット21の接続部21bへ流れ込みやすいところ、冷却水が流れ込みやすい接続部21bに水温センサ58が設けられるため、冷却水の温度を精度良く検出できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、エンジン10の運転時において、配管接続部材20は、内部に冷却水が通流して比較的大きな重量を有するため振動しにくい部材であることから、当該配管接続部材20及びカム角度センサ56aがシリンダヘッド14の一側壁14bに共締めされることにより、カム角度センサ56aが振動の影響を受けにくくなるため、カムシャフトの回転角の検出精度を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、配管接続部材20及びカム角度センサ56aがシリンダヘッド14の一側壁14bにボルトBで共締めされることにより、配管接続部材20及びカム角度センサ56aをシリンダヘッド14に同時に固定できるため、組立時の作業性が向上する。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0097】
本実施形態では、本発明のエンジンの冷却構造を直列4気筒エンジンに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、気筒数や気筒配列が異なるエンジンに適用してもよいし、ガソリンエンジンやディーゼル等に適用してもよい。
【0098】
本実施形態のサーモスタット36は、エンジン本体11の入口とラジエータ32の出口とを連通する箇所に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、エンジン本体11の出口とラジエータ32の入口とを連通する箇所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0099】
S1 冷却システム
S2 EGRガス還流システム
100 冷却構造
10 エンジン
14 シリンダヘッド
14a ウォータージャケット(冷却水通路)
14a1 出口(下流端)
T 主流部
14b 一側壁
14c 燃焼室
14d 吸気ポート(吸気側)
14e 排気ポート(排気側)
14h ボルト挿通孔
20 配管接続部材
21 冷却水アウトレット
21a アウトレットチャンバー
21b−21e 接続部
22 冷却水インレット
22a インレットチャンバー
22b−22d 接続部
23 通路部
24 締結部
24a ボルト挿通孔
32 ラジエータ(他部品)
42 EGRクーラ(他部品)
44 スロットルボディ(他部品)
46 ヒータ(他部品)
52 吸気マニホールド(吸気側)
56a,56b カム角度センサ
58 水温センサ
58a 本体部
58b センサ部
P1 配管(ラジエータ用供給配管)
P2 配管(EGRクーラ用供給配管)
P4 配管(ヒータ用供給配管)
P6 配管(EGRクーラ用戻り配管)
P8 配管(ヒータ用戻り配管)
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が通流する冷却水通路を内部に有し、かつシリンダ列方向の一側壁に前記冷却水通路の下流端が開口するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドと別体で構成され、前記一側壁に連結された配管接続部材と、
を備えた内燃機関の冷却構造であって、
前記配管接続部材は、
前記冷却水通路の下流端に連通接続され、かつ前記冷却水を他部品へ供給する供給配管が接続された冷却水アウトレットと、
前記他部品へ供給された前記冷却水が戻ってくる戻り配管が接続された冷却水インレットと、
一端が排気側に接続され、他端が吸気側に接続されるEGR通路の少なくとも一部を形成する通路部と、
を有し、
前記冷却水アウトレット及び前記冷却水インレットは、前記一側壁の幅方向に沿って延設され、かつシリンダ軸線方向にて上下に配置され、
前記通路部は、前記冷却水アウトレットの延設方向に沿って形成され、
少なくとも一つの前記他部品に接続される前記供給配管及び前記戻り配管は、前記一側壁の幅方向において、前記他部品側に偏奇した位置で前記配管接続部材に接続されていることを特徴とする内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記冷却水アウトレットは、前記冷却水インレットに対してシリンダ軸線方向にて上方かつ隣接して設けられ、
前記通路部は、前記冷却水アウトレットに対してシリンダ軸線方向にて上方かつ隣接して設けられ、
前記供給配管は、ラジエータへ前記冷却水を供給するラジエータ用供給配管を有し、
前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、前記冷却水通路を通流する前記冷却水の流れ方向に対して鈍角を成すことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項3】
前記供給配管は、前記ラジエータ用供給配管を含む複数の供給配管を有し、
前記冷却水アウトレットは、前記供給配管が接続される複数の接続部を有し、
複数の前記接続部のうち、前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、最大流入断面積となるように前記一側壁から離間する方向に突出形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項4】
前記シリンダヘッドの前記一側壁の幅方向は、車両前後方向に一致しており、
前記供給配管は、EGRクーラへ前記冷却水を供給するEGRクーラ用供給配管と、ヒータへ前記冷却水を供給するヒータ用供給配管と、を更に有し、
前記ラジエータ用供給配管及び前記EGRクーラ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置され、
前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、
前記ラジエータ用供給配管、前記EGRクーラ用供給配管、及び前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項5】
前記戻り配管は、前記EGRクーラへ供給された前記冷却水が戻ってくるEGRクーラ用戻り配管と、前記ヒータへ供給された前記冷却水が戻ってくるヒータ用戻り配管と、を有し、
前記冷却水インレットは、前記戻り配管が接続される複数の接続部を有し、
前記EGRクーラ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両前方に偏奇して配置され、
前記ヒータ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両後方に偏奇して配置され、
前記EGRクーラ用戻り配管及び前記ヒータ用戻り配管に対する前記冷却水インレットの接続部は、車両前後方向に沿って直線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項6】
前記通路部は、前記一側壁から離間する方向に突出形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項7】
前記ラジエータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部には、前記冷却水の温度を検出する水温センサが設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項8】
前記冷却水通路は、燃焼室の上方においてシリンダ列方向に沿って前記冷却水を通流させる主流部を有し、
前記ヒータ用供給配管に対する前記冷却水アウトレットの接続部は、前記主流部の下流側に設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項9】
前記配管接続部材と、前記シリンダヘッドに回転可能に支持されるカムシャフトの回転角を検出するカム角度センサとは、前記一側壁にボルトで共締めされていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−83206(P2013−83206A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223874(P2011−223874)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】