内燃機関の冷却装置
【課題】バイパスバルブレス式のサーモスタットを採用した内燃機関の冷却装置にあって、サーモスタットをハウジングに組み付ける際の作業効率を向上する。
【解決手段】内燃機関10の冷却装置において、内燃機関10からラジエータ12をバイパスした冷却水が流入するバイパス通路13はハウジング40に形成される。サーモスタット20は、冷却水の温度に応じて弁部26を駆動してラジエータ12及び内燃機関10の間における冷却水の循環量を調節する感温駆動部300と、弁部26の駆動に際して変位する感温部27が挿入されバイパス通路13の冷却水を感温部27の近傍に導入する導入管30とを含んで構成されている。導入管30の開口端部31と対向する態様にてバイパス通路13の導入口13aが形成されており、導入管30の開口端部31と導入口13aの形成面との間に間隙d1が形成される。
【解決手段】内燃機関10の冷却装置において、内燃機関10からラジエータ12をバイパスした冷却水が流入するバイパス通路13はハウジング40に形成される。サーモスタット20は、冷却水の温度に応じて弁部26を駆動してラジエータ12及び内燃機関10の間における冷却水の循環量を調節する感温駆動部300と、弁部26の駆動に際して変位する感温部27が挿入されバイパス通路13の冷却水を感温部27の近傍に導入する導入管30とを含んで構成されている。導入管30の開口端部31と対向する態様にてバイパス通路13の導入口13aが形成されており、導入管30の開口端部31と導入口13aの形成面との間に間隙d1が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷却水により内燃機関を冷却する内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の冷却装置では、最適な燃焼状態を実現可能な温度環境のもとで機関運転を行うために、内燃機関を冷却水により冷却する一方、これにより温度上昇した冷却水の熱をラジエータにて外部に放出することで、冷却水の温度を略一定の温度に保持するようにしている。また、こうした冷却装置では、通常、冷却水の温度に応じて開閉することにより同冷却水の流路を切り替えるサーモスタットが設けられている。例えば、暖機完了前のように冷却水の温度が未だ低いときには、このサーモスタットが閉弁状態になっているため、ラジエータには冷却水が流れず、同ラジエータをバイパスするバイパス通路を介して冷却水が循環するようになる。冷却装置では、こうしたサーモスタットの調温機能により、内燃機関が必要以上に冷却されて熱損失が増大する状況、いわゆるオーバークールを避けて内燃機関の暖機を促進することができる。
【0003】
こうした冷却装置の代表例として、例えば、特許文献1に記載されるように、バイパスバルブ式のサーモスタットを備えるものを挙げることができる。図7に示されるように、このサーモスタット120は、バイパス通路113からハウジング140に流入して感温部127に接触する冷却水の温度が上昇すると、その駆動ロッド123の突出量が増大して弁部126が感温部127とともに同図の下方に変位するため、サーモスタット120が閉弁状態から開弁状態となる。これにより、ラジエータ通路111からポンプ通路115に冷却水が流入するようになり、ラジエータ(図示略)を通じた冷却水の循環が行われるようになる。
【0004】
また、冷却水の温度が更に上昇すると、感温部127の下部に設けられたバイパスバルブ150の弁部151がバイパス通路113の開口端部に形成された弁座152に着座して同バイパス通路113が閉鎖されるようになる。このようにバイパスバルブ150が閉弁状態となることにより、ラジエータ通路111に流れる冷却水の流量が増大するため、こうしたバイパスバルブ式のサーモスタットを採用する冷却装置では最大冷却能力を高めることができる。
【0005】
ところで、近年においては、ラジエータの冷却性能が向上する一方、内燃機関の熱損失を低減するための種々の試みがなされていることもあり、こうした冷却装置にあっては従来ほどの冷却能力が要求されない場合も少なくない。即ち、近年の冷却装置では、こうした冷却能力の向上よりも寧ろ機関負荷の変動に伴って機関温度が変化したとき、こうした機関温度の変化に対して高い応答性をもってラジエータ流量を緻密に調節することができ、これにより内燃機関がオーバークール傾向になることを回避してその熱損失の低減を図ることが重要視される傾向にある。この点、バイパスバルブ式のサーモスタットは、その構造上、バイパス通路113から流入した冷却水が感温部127に接触するにはバイパスバルブ150を一旦迂回しなければならないため、感温部127に接触する冷却水を増加させるのには限界があり、これが機関温度変化に対する応答性を高める際の支障となる。
【0006】
そこで、上述したバイパスバルブ式のサーモスタットを備える冷却装置に代えて、特許文献2に記載される冷却装置のように、先の図7にて示したバイパスバルブ150を省略した、いわゆるバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置が提案されている。
【0007】
以下、こうしたバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置の一例について、図8を参照して説明する。
同図8に示すように、冷却装置は大きくは、冷却水が流れる各種通路が形成されるハウジング40と、これに内蔵された態様にて同ハウジング40に組み付けられるサーモスタット20によって構成されている。
【0008】
このハウジング40には、内燃機関10からラジエータ12を通過した冷却水が流入するラジエータ通路11と、内燃機関10からラジエータ12をバイパスした冷却水が流入するバイパス通路13と、ポンプ16の吸入口に冷却水を導入するポンプ通路15とがそれぞれ形成されている。
【0009】
一方、サーモスタット20は、ラジエータ通路11からポンプ通路15に流れる冷却水の量をその開度に基づいて調節する弁部26と、冷却水の温度に応じてこの弁部26を開閉駆動する感温式駆動部300と、この感温式駆動部300の感温部27が挿入される略円筒状の導入管30とを備えている。
【0010】
感温式駆動部300は、銅合金等の熱伝導率の高い材料により有底円筒状に形成されたケース27aにパラフィンワックス等の熱膨張材28が封入されるとともに、この熱膨張材28中に一端部が没入した態様で支持されるとともに他端部がハウジング40に固定された駆動ロッド23を有する感温部27を備えている。この感温部27のケース27aには、その頂部の開口部分を閉塞する態様にて弁部26が固定される一方、底部には同ケース27aの中心軸に沿う方向に延伸するガイドロッド27bが一体形成されている。
【0011】
一方、導入管30は、ハウジング40に形成された導入口13aを介してその内部がバイパス通路13と連通されている。また、導入管30は、その開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様でハウジング40に固定されている。このため、バイパス通路13の冷却水は全て導入口13aを介して導入管30の内部に導入されるようになる。更に、この導入管30の内部には、その開口端部31の近傍に位置して、複数の流通孔35aと感温部27のガイドロッド27bが挿入支持される支持孔35bとを有するガイド部35が形成されている。その他、導入管30の外周面にはフランジ32が一体形成されており、このフランジ32は支持部材24等を介してハウジング40に固定されている。また、このフランジ32と弁部26との間には、ハウジング40に固定された弁座25側に向けて弁部26を付勢するスプリング29が配設されている。
【0012】
こうした構成を備えた冷却装置では、内燃機関10を冷却することにより温度上昇した冷却水は、バイパス通路13、導入口13a、流通孔35aを介して導入管30の内部に導入され、感温部27のケース27aに接触する。そしてこのようにケース27aに接触する冷却水の温度に応じてその内部に封入された熱膨張材28が膨張若しくは収縮し、そうした膨張収縮に伴って駆動ロッド23の突出量を変化させようとする力が同駆動ロッド23に作用する。
【0013】
即ち、熱膨張材28が冷却水の熱により膨張した場合には、駆動ロッド23にはその突出量を増大させようとする力が熱膨張材28から作用する。一方、このように冷却水の熱により熱膨張材28が膨張した状況下で冷却水の温度が低下した場合には、駆動ロッド23にはスプリング29を介してその突出量を減少させようとする力が作用する。即ち、駆動ロッド23の突出量は、熱膨張材28の膨張収縮に伴って発生する力とスプリング29の付勢力とが平衡状態となるように変化する。
【0014】
そして、感温部27のケース27aに接触する冷却水の温度がサーモスタット20の開弁温度、即ちサーモスタット20が閉弁状態から開弁状態に移行し始める温度以上になると、熱膨張材28の膨張収縮に伴って発生する力がスプリング29の付勢力を上回るようになる。その結果、感温部27及び弁部26は導入管30の開口端部31側(図8の下側)に変位し、弁部26が弁座25から離間してサーモスタット20が開弁状態となる。このようにサーモスタット20が閉弁状態から開弁状態に移行すると、内燃機関10の熱により温度上昇した冷却水はラジエータ12側にも流入するようになる。
【0015】
また、冷却水の温度がサーモスタット20の開弁温度以上の温度領域にある場合、同冷却水の温度が高いときほど、弁部26及び弁座25の間の隙間、即ちサーモスタット20の開度が大きくなる。従って、ラジエータ12を循環する冷却水の量が増大し、ラジエータ12における放熱量が増大するようになるため、冷却水の温度を速やかに低下させて冷却装置の冷却能力を高めることができるようになる。
【0016】
こうしたバイパスバルブレス式のサーモスタットを採用した冷却装置では、導入管30の開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様にて導入管30をハウジング40に固定する構成を採用しているため、バイパス通路13から流入した冷却水を迂回させることなく感温部27に接触させることができる。そのため、冷却水の流線が大きく変化することに伴う圧力損失を抑えつつ、感温部27に接触する冷却水の量を増大させることができる。また、機関負荷が変動して機関温度が変化した場合には、それに伴って温度変化した冷却水がバイパス通路13を通じて速やかに感温部27に接触するようになるため、機関温度の変化に対して高い応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の量を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−193839号公報
【特許文献2】国際公開2007−108273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述した特許文献2に記載の冷却装置のように、導入管30の開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様にて導入管30をハウジング40に固定する構成を採用すれば、バイパス通路13の冷却水を全て導入管30の内部に導入して感温部27に接触する冷却水の量を増大させることができ、サーモスタット20の温度応答性を高める上では望ましいといえる。
【0019】
しかしながら、導入管やその開口端部が固定される導入口等々、サーモスタットやハウジングに形状誤差が存在していたり、サーモスタットをハウジングに組み付ける際に組み付け誤差が存在していたりすると、こうした誤差に起因してハウジングにおける導入口の形成面と導入管の開口端部とが干渉することとなる。このため、サーモスタットをハウジングに組み付ける際には、こうした干渉が生じないように組み付け状態の微調整を繰り返す必要があり、同作業の効率を向上させる際の支障となっていた。
【0020】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイパスバルブレス式のサーモスタットを採用した内燃機関の冷却装置にあって、サーモスタットをハウジングに組み付ける際の作業効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関からラジエータをバイパスした冷却水が流入するバイパス通路を有するハウジングに組み付けられ、冷却水の温度に応じて弁部を駆動しラジエータ及び内燃機関の間における冷却水の循環量を調節する感温式駆動部と前記弁部の駆動に際して変位する同感温式駆動部の感温部が挿入され前記バイパス通路の冷却水を同感温部の近傍に導入する導入管とを含むバイパスバルブレス式のサーモスタットを備え、前記バイパス通路には前記導入管の開口端部に冷却水を導入するための導入口が同開口端部と対向する態様にて設けられる内燃機関の冷却装置において、前記サーモスタットはその導入管の開口端部と前記導入口の形成面との間に間隙を有する態様にて同ハウジングに組み付けられることをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、サーモスタットやハウジングに形状誤差が存在したり、サーモスタットをハウジングに組み付ける際に組み付け誤差が存在したりする場合であっても、そうした形状誤差や組み付け誤差を導入管の開口端部と導入口周縁部との間の間隙により吸収することができ、それら誤差に起因して導入管の開口端部と、ハウジングの導入口周縁部等、ハウジングにおける導入口の形成面が干渉することを回避することができる。その結果、ハウジングにサーモスタットを組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0023】
更に、バイパス通路の導入口から流出した冷却水は導入管に流入する他、その一部は開口端部と導入口の周縁部との間の間隙からリークするようになる。従って、内燃機関からラジエータをバイパスしてバイパス通路に流入するとともにこのバイパス通路を通じてサーモスタット側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータを通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙を設けることで感温部に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタットの温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、前記バイパス通路の導入口から流出した冷却水のうち、前記導入管に流入する量をVa、前記間隙からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように同間隙の大きさが設定されてなることをその要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、導入管を通じて感温式駆動部の近傍に導入される冷却水の量を確保することができ、上記間隙から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部の感温特性低下を抑制することができるようになる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、前記ハウジングは前記導入口の周囲に前記導入管の開口端部の内部に突出する突部が形成されてなることをその要旨とする。
【0027】
上記構成によれば、バイパス通路の冷却水が導入口を介して導入管の開口端部からその内部に導入される際、冷却水の一部は突部の先端部分を迂回するとともに導入管の開口端部と導入口の周縁部との間の間隙からリークするようになる。そして、このように冷却水が突部の先端部分を迂回する態様で流れるようになるため、その迂回部位を冷却水が流れる際の圧力損失が大きくなる。こうした冷却水の迂回部位を形成することにより、冷却水のリーク量が律速(制限)されるようになる。その結果、導入管の開口端部とこれに対向する導入口の形成面との間の間隙の大きさが上述したような各種の誤差に起因して異なる場合であっても、それに伴って冷却水のリーク量が大きく変化することを抑制することができる。
【0028】
特に、請求項4に記載されるように、こうした突部を導入口の全周を囲繞する態様にてハウジングに形成すれば、上述した作用効果を一層顕著なものとすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記間隙の大きさは1.5〜2.5mmの範囲に設定されていることをその要旨とする。
【0029】
内燃機関の冷却装置における各種仕様は排気量等、同内燃機関の各諸元によって異なるものになるが、こと導入管の開口端部とその導入口の形成面との間の間隙についていえば、概ね「1.5〜2.5mm」の範囲、望ましくは「2mm」に設定することにより、感温式駆動部の感温特性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関の冷却装置の全体構成及び同冷却装置に採用されるサーモスタットについてこれが閉弁状態にあるときの断面構造を示す模式図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】同サーモスタットが開弁状態にあるときの断面構造を示す断面図。
【図4】温度上昇量と出口温度との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる内燃機関の冷却装置に採用されるサーモスタットについてこれが閉弁状態にあるときの断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態に採用されるサーモスタットの変形例についてその断面構造を示す断面図。
【図7】従来の内燃機関の冷却装置に採用されるバイパスバルブ式のサーモスタットについてその断面構造を示す断面図。
【図8】従来の内燃機関の冷却装置及びこれに採用されるバイパスバルブレス式のサーモスタットの断面構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の冷却装置を具体化した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、本実施形態の冷却装置において、先の図8に例示した従来のバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置と同様の機能を有する構成については、同図8と同じ符号を付しており、重複する説明は適宜割愛する。
【0032】
まず、内燃機関の冷却装置の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、冷却水の流れる各種通路が形成されたハウジング40には感温部27を備えるサーモスタット20が内蔵されている。そして、同図1のA−A線における断面図である図2に示すように、感温部27には、その底部に導入管30の冷却水が直接接触可能である他、図3に示すように、感温部27が同図の下方に変位した場合でも、その外周面には同外周面と導入管30の内周面との間に形成される隙間(流通部33)を通過する冷却水が接触可能である。このようにして、感温部27の近傍には導入管30を通じて冷却水が導入される。そして、冷却水が感温部27に接触することにより、冷却水と感温部27との間で熱交換が行われるようになる。
【0033】
また、こうした熱交換により感温部27は、その内部に封入された熱膨張材28の膨張量が変化し、それに伴って駆動ロッド23の突出量が変化することにより、導入管30の内部で上下動する。この結果、感温部27のケース27aに固定された弁部26と弁座25とが近接離間してサーモスタット20の開度が冷却水の温度に応じて変化することとなる。
【0034】
また、図1に示すように、本実施形態の内燃機関10の冷却装置においては、導入管30の開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とが同程度に設定されている一方、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間に間隙d1を有する態様にてサーモスタット20がハウジング40に組み付けられている。バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように、上記間隙d1の大きさが設定されている。なお、導入管30を通じて感温式駆動部300の近傍に導入される冷却水の量を確保するとともに、上記間隙d1から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部300の感温特性低下を抑制するうえで、上記間隙d1は「1.5〜2.5mm」の範囲、望ましくは「2mm」に設定することが望ましい。
【0035】
図4は、内燃機関10の冷却系(ウォータジャケット)においてその入口10a(図1参照)に流入する冷却水の温度とその出口10b(図1参照)から流出する冷却水の温度の差、すなわち機関燃焼時の熱による冷却水の温度上昇量(以下、「温度上昇量Δθ」という)と、同じく冷却系から流出する冷却水の温度(以下「出口温度θo」という)との関係を示すグラフである。またこのグラフにおいて、実線は本実施形態における温度上昇量Δθと出口温度θoとの関係を示している。また、二点鎖線は、本実施形態における導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間の間隙d1の大きさが大きくなるようにこれを変更した場合における同関係を示している。更に、一点鎖線は本実施形態においてこうした間隙d1を形成しない場合における同関係を示している。
【0036】
図4に示すように、温度上昇量Δθが大きくなるほど、即ち冷却水が内燃機関10から受ける熱量が増大するほど、ポンプ通路15に導入される冷却水の温度は高くなる。ここで、同図4に二点鎖線にて示すように、間隙d1の大きさを過度に大きくした構成にあっては、温度上昇量Δθが大きくなった場合に出口温度θoが急激に上昇する傾向にある。これは、導入口13aから導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va≦Vbなる関係が成立する等、リーク量Vbが必要以上に多くなるため、導入管30を介して感温部27の近傍に導入される冷却水の量が少なくなり、同感温部27の感温特性が低下することによるものである。すなわちこのように、感温部27の感温特性が低下すると機関温度の上昇に適応したかたちで弁部26を充分な開度まで開弁させることができず、ラジエータ通路11を通過する冷却水の量が減少してその熱を十分に放熱させることができないため、出口温度θo、換言すれば機関温度の過度な上昇を招くこととなる。
【0037】
一方、こうした間隙d1を形成しない構成にあっては、温度上昇量Δθが大きくなった場合であってもそれに応じて出口温度θoが過度に上昇することはなく、また実線にて示す本実施形態の冷却装置と比較して出口温度θoも低い温度領域で推移する。即ち、上述したようなラジエータ通路11における冷却水流量が減少して機関温度の過度な上昇を招くことはない。しかしながら、こうした構成にあっては、サーモスタット20やハウジング40に形状誤差が存在する等の要因によってハウジング40にサーモスタット20を組み付ける際の作業効率が低下する点については上述したとおりである。
【0038】
即ち、冷却装置の特性としてはこうした作業効率の低下を回避しつつ、機関温度が上昇した場合でも高い応答性をもって弁部26を開弁して機関温度の過度な上昇を抑制する、といった機能を有していることが望まれることとなる。この点、本実施形態にかかる冷却装置では、上記間隙d1を形成し、その間隙d1から適度な量の冷却水をリークさせるようにしているため、内燃機関10からバイパス通路13を通じてサーモスタット20側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙d1を設けることで感温部27に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタット20の温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0039】
以上説明した第1の実施形態では、以下の効果が得られるようになる。
(1)サーモスタット20やハウジング40に形状誤差が存在したり、サーモスタット20をハウジング40に組み付ける際に組み付け誤差が存在したりする場合であっても、そうした形状誤差や組み付け誤差を導入管30の開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙により吸収することができ、それら誤差に起因して導入管30の開口端部31と、ハウジング40の導入口13aの周縁部等、ハウジング40における導入口13aの形成面が干渉することを回避することができる。その結果、ハウジング40にサーモスタット20を組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0040】
更に、バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水は導入管30に流入する一方、その一部は導入管30に流入することなくその開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙d1からリークするようになる。従って、内燃機関10からバイパス通路13を通じてサーモスタット20側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙d1を設けることで感温部27に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタット20の温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0041】
(2)バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するようにその間隙d1を設定したため、導入管30を通じてサーモスタット20を含む感温式駆動部300の近傍に導入される冷却水の量を確保することができ、上記間隙d1から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部300の感温特性低下を抑制することができるようになる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の冷却装置を具体化した第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、上述した第1の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aは周囲のハウジング40と同じ平面上にて開口する構成を採用した。これに対して、本実施形態においては、ハウジング40において導入口13aの周縁部に、導入管30の開口端部31の内部にまで突出する突部14が形成されており、導入口13aは導入管30の開口端部31の内部に開口する態様を有している。本実施形態は、こうした突部14をハウジング40に形成するようにした点で第1の実施形態と異なっている。そこで以下では、第1の実施形態との相違点を中心に本実施形態にかかる冷却装置について説明する。
【0043】
図5は、本実施形態にかかる内燃機関の冷却装置であって、サーモスタット20及びハウジング40の断面構造を示す断面図である。図5に示すように、ハウジング40には導入口13aをその全周にわたって囲繞する円筒状の突部14が形成されている。そして、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間に間隙d3を有する態様にてサーモスタット20がハウジング40に組み付けられている。なお、上述した第1の実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とが同程度に設定されていたが、本実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積よりも導入口13aの開口面積が小さく設定されている。
【0044】
こうした構成によれば、バイパス通路13の冷却水は、突部14により区画された導入口13aから流出して導入管30の内部に導入される。そして、導入管30の内部に導入した冷却水の一部は、突部14を迂回するようにして導入管30から上記間隙d3を通じてその外部にリークするようになる。ここで、バイパス通路13の導入口13aから導入管30に導入された冷却水のうち、感温部27に接触する量をVa1、上記間隙d3からリークする量をVb1としたときに、Va1>Vb1なる大小関係が成立する。換言すれば、こうした関係が成立するように上記間隙d3の大きさが設定されている。
【0045】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態に記載した(1)及び(2)の効果に準ずる効果と併せて、以下の効果が得られるようになる。
(3)バイパス通路13から導入口13aを介して導入管30の内部に導入された冷却水は、その一部が突部14の先端部分を迂回するとともに導入管30の開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙d3からリークするようになる。そして、このように冷却水が突部14の先端部分を迂回する態様で流れるようになるため、その迂回部位を冷却水が流れる際の圧力損失が大きくなる。こうした冷却水の迂回部位を形成することにより、冷却水のリーク量が律速(制限)されるようになる。その結果、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間の間隙d3の大きさが、サーモスタット20やハウジング40の形状誤差及びサーモスタット20をハウジング40に組み付ける際の組み付け誤差といった各種の誤差に起因して異なる場合であっても、それに伴って冷却水のリーク量が大きく変化することを抑制することができる。
【0046】
(4)突部14を導入口13aの全周を囲繞する態様にてハウジング40に形成したため、上記(3)の作用効果を一層顕著なものとすることができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0047】
・上記第2の実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積よりも導入口13aの開口面積を小さく設定した。こうした形態によれば、例えば上記第1の実施形態に記載の冷却装置のように、開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とを同程度に設定する場合と比較して、同導入口13aから流出する冷却水の量が少なくなるため、サーモスタット20における温度応答性の低下が懸念される。そこで、導入管30の開口端部31の形状を変更して同開口端部31の開口面積を大きく設定するといった形態を採用するようにしてもよい。例えば、図6に示すように、導入管30をその軸方向において略中央部分から開口端部31にかけて拡径させるようにすれば、導入口13aの開口面積よりも大きく設定することができる。
【0048】
・上記第2の実施形態において、突部14は円筒状をなすようにしていたが、円筒状に限らずその他の形状をなすようにしてもよい。
・上記第2の実施形態において、導入口13aをその全周にわたって囲繞するようにして突部14を形成するようにしたが、突部14の形成態様はこれに限らず、少なくとも導入口13aの周縁部に形成されて導入管30の内部に突出するものであればよく、例えば導入口13aの全周のうち一部分にのみこれを形成するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記第1の実施形態の効果に準ずる効果と上記第2の実施形態の(3)の効果に準ずる効果を得ることができる。
【0049】
・上記第1の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように間隙d1を設定するようにしていた。また、上記第2の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aから導入管30に導入された冷却水のうち、感温部27に接触する量をVa1、上記間隙d3からリークする量をVb1としたときに、Va1>Vb1なる大小関係が成立するように間隙d3の大きさを設定するようにしていた。導入管の開口端部と導入口の形成面との間の間隙は、上記第1、第2の実施形態に例示した冷却水の流量関係が成立していない場合であっても、上記第1の実施形態の(1)の効果に準ずる効果と上記第2の実施形態の効果は少なくとも得ることができる。
【0050】
・上記第1の実施形態においては、導入管の開口端部と導入口の形成面との間の間隙d1の大きさを「1.5〜2.5mm」の範囲、具体的には2mmに設定するようにしたが、その大きさをこの範囲以外の値に設定することも可能ではある。
【符号の説明】
【0051】
10…内燃機関、10a…入口、10b…出口、11,111…ラジエータ通路、12…ラジエータ、13,113…バイパス通路、13a…導入口、14…突部、15,115…ポンプ通路、16…ポンプ、20,120…サーモスタット、23,123…駆動ロッド、24…支持部材、25,152…弁座、26,126,151…弁部、27,127…感温部、27a…ケース、27b…ガイドロッド、28…熱膨張材、29…スプリング、30…導入管、31…開口端部、32…フランジ、33…流通部、40,140…ハウジング、150…バイパスバルブ、300…感温式駆動部、d1,d3…間隙。
【技術分野】
【0001】
この発明は冷却水により内燃機関を冷却する内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の冷却装置では、最適な燃焼状態を実現可能な温度環境のもとで機関運転を行うために、内燃機関を冷却水により冷却する一方、これにより温度上昇した冷却水の熱をラジエータにて外部に放出することで、冷却水の温度を略一定の温度に保持するようにしている。また、こうした冷却装置では、通常、冷却水の温度に応じて開閉することにより同冷却水の流路を切り替えるサーモスタットが設けられている。例えば、暖機完了前のように冷却水の温度が未だ低いときには、このサーモスタットが閉弁状態になっているため、ラジエータには冷却水が流れず、同ラジエータをバイパスするバイパス通路を介して冷却水が循環するようになる。冷却装置では、こうしたサーモスタットの調温機能により、内燃機関が必要以上に冷却されて熱損失が増大する状況、いわゆるオーバークールを避けて内燃機関の暖機を促進することができる。
【0003】
こうした冷却装置の代表例として、例えば、特許文献1に記載されるように、バイパスバルブ式のサーモスタットを備えるものを挙げることができる。図7に示されるように、このサーモスタット120は、バイパス通路113からハウジング140に流入して感温部127に接触する冷却水の温度が上昇すると、その駆動ロッド123の突出量が増大して弁部126が感温部127とともに同図の下方に変位するため、サーモスタット120が閉弁状態から開弁状態となる。これにより、ラジエータ通路111からポンプ通路115に冷却水が流入するようになり、ラジエータ(図示略)を通じた冷却水の循環が行われるようになる。
【0004】
また、冷却水の温度が更に上昇すると、感温部127の下部に設けられたバイパスバルブ150の弁部151がバイパス通路113の開口端部に形成された弁座152に着座して同バイパス通路113が閉鎖されるようになる。このようにバイパスバルブ150が閉弁状態となることにより、ラジエータ通路111に流れる冷却水の流量が増大するため、こうしたバイパスバルブ式のサーモスタットを採用する冷却装置では最大冷却能力を高めることができる。
【0005】
ところで、近年においては、ラジエータの冷却性能が向上する一方、内燃機関の熱損失を低減するための種々の試みがなされていることもあり、こうした冷却装置にあっては従来ほどの冷却能力が要求されない場合も少なくない。即ち、近年の冷却装置では、こうした冷却能力の向上よりも寧ろ機関負荷の変動に伴って機関温度が変化したとき、こうした機関温度の変化に対して高い応答性をもってラジエータ流量を緻密に調節することができ、これにより内燃機関がオーバークール傾向になることを回避してその熱損失の低減を図ることが重要視される傾向にある。この点、バイパスバルブ式のサーモスタットは、その構造上、バイパス通路113から流入した冷却水が感温部127に接触するにはバイパスバルブ150を一旦迂回しなければならないため、感温部127に接触する冷却水を増加させるのには限界があり、これが機関温度変化に対する応答性を高める際の支障となる。
【0006】
そこで、上述したバイパスバルブ式のサーモスタットを備える冷却装置に代えて、特許文献2に記載される冷却装置のように、先の図7にて示したバイパスバルブ150を省略した、いわゆるバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置が提案されている。
【0007】
以下、こうしたバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置の一例について、図8を参照して説明する。
同図8に示すように、冷却装置は大きくは、冷却水が流れる各種通路が形成されるハウジング40と、これに内蔵された態様にて同ハウジング40に組み付けられるサーモスタット20によって構成されている。
【0008】
このハウジング40には、内燃機関10からラジエータ12を通過した冷却水が流入するラジエータ通路11と、内燃機関10からラジエータ12をバイパスした冷却水が流入するバイパス通路13と、ポンプ16の吸入口に冷却水を導入するポンプ通路15とがそれぞれ形成されている。
【0009】
一方、サーモスタット20は、ラジエータ通路11からポンプ通路15に流れる冷却水の量をその開度に基づいて調節する弁部26と、冷却水の温度に応じてこの弁部26を開閉駆動する感温式駆動部300と、この感温式駆動部300の感温部27が挿入される略円筒状の導入管30とを備えている。
【0010】
感温式駆動部300は、銅合金等の熱伝導率の高い材料により有底円筒状に形成されたケース27aにパラフィンワックス等の熱膨張材28が封入されるとともに、この熱膨張材28中に一端部が没入した態様で支持されるとともに他端部がハウジング40に固定された駆動ロッド23を有する感温部27を備えている。この感温部27のケース27aには、その頂部の開口部分を閉塞する態様にて弁部26が固定される一方、底部には同ケース27aの中心軸に沿う方向に延伸するガイドロッド27bが一体形成されている。
【0011】
一方、導入管30は、ハウジング40に形成された導入口13aを介してその内部がバイパス通路13と連通されている。また、導入管30は、その開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様でハウジング40に固定されている。このため、バイパス通路13の冷却水は全て導入口13aを介して導入管30の内部に導入されるようになる。更に、この導入管30の内部には、その開口端部31の近傍に位置して、複数の流通孔35aと感温部27のガイドロッド27bが挿入支持される支持孔35bとを有するガイド部35が形成されている。その他、導入管30の外周面にはフランジ32が一体形成されており、このフランジ32は支持部材24等を介してハウジング40に固定されている。また、このフランジ32と弁部26との間には、ハウジング40に固定された弁座25側に向けて弁部26を付勢するスプリング29が配設されている。
【0012】
こうした構成を備えた冷却装置では、内燃機関10を冷却することにより温度上昇した冷却水は、バイパス通路13、導入口13a、流通孔35aを介して導入管30の内部に導入され、感温部27のケース27aに接触する。そしてこのようにケース27aに接触する冷却水の温度に応じてその内部に封入された熱膨張材28が膨張若しくは収縮し、そうした膨張収縮に伴って駆動ロッド23の突出量を変化させようとする力が同駆動ロッド23に作用する。
【0013】
即ち、熱膨張材28が冷却水の熱により膨張した場合には、駆動ロッド23にはその突出量を増大させようとする力が熱膨張材28から作用する。一方、このように冷却水の熱により熱膨張材28が膨張した状況下で冷却水の温度が低下した場合には、駆動ロッド23にはスプリング29を介してその突出量を減少させようとする力が作用する。即ち、駆動ロッド23の突出量は、熱膨張材28の膨張収縮に伴って発生する力とスプリング29の付勢力とが平衡状態となるように変化する。
【0014】
そして、感温部27のケース27aに接触する冷却水の温度がサーモスタット20の開弁温度、即ちサーモスタット20が閉弁状態から開弁状態に移行し始める温度以上になると、熱膨張材28の膨張収縮に伴って発生する力がスプリング29の付勢力を上回るようになる。その結果、感温部27及び弁部26は導入管30の開口端部31側(図8の下側)に変位し、弁部26が弁座25から離間してサーモスタット20が開弁状態となる。このようにサーモスタット20が閉弁状態から開弁状態に移行すると、内燃機関10の熱により温度上昇した冷却水はラジエータ12側にも流入するようになる。
【0015】
また、冷却水の温度がサーモスタット20の開弁温度以上の温度領域にある場合、同冷却水の温度が高いときほど、弁部26及び弁座25の間の隙間、即ちサーモスタット20の開度が大きくなる。従って、ラジエータ12を循環する冷却水の量が増大し、ラジエータ12における放熱量が増大するようになるため、冷却水の温度を速やかに低下させて冷却装置の冷却能力を高めることができるようになる。
【0016】
こうしたバイパスバルブレス式のサーモスタットを採用した冷却装置では、導入管30の開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様にて導入管30をハウジング40に固定する構成を採用しているため、バイパス通路13から流入した冷却水を迂回させることなく感温部27に接触させることができる。そのため、冷却水の流線が大きく変化することに伴う圧力損失を抑えつつ、感温部27に接触する冷却水の量を増大させることができる。また、機関負荷が変動して機関温度が変化した場合には、それに伴って温度変化した冷却水がバイパス通路13を通じて速やかに感温部27に接触するようになるため、機関温度の変化に対して高い応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の量を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−193839号公報
【特許文献2】国際公開2007−108273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述した特許文献2に記載の冷却装置のように、導入管30の開口端部31が導入口13aの周縁部全体を囲繞する態様にて導入管30をハウジング40に固定する構成を採用すれば、バイパス通路13の冷却水を全て導入管30の内部に導入して感温部27に接触する冷却水の量を増大させることができ、サーモスタット20の温度応答性を高める上では望ましいといえる。
【0019】
しかしながら、導入管やその開口端部が固定される導入口等々、サーモスタットやハウジングに形状誤差が存在していたり、サーモスタットをハウジングに組み付ける際に組み付け誤差が存在していたりすると、こうした誤差に起因してハウジングにおける導入口の形成面と導入管の開口端部とが干渉することとなる。このため、サーモスタットをハウジングに組み付ける際には、こうした干渉が生じないように組み付け状態の微調整を繰り返す必要があり、同作業の効率を向上させる際の支障となっていた。
【0020】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイパスバルブレス式のサーモスタットを採用した内燃機関の冷却装置にあって、サーモスタットをハウジングに組み付ける際の作業効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関からラジエータをバイパスした冷却水が流入するバイパス通路を有するハウジングに組み付けられ、冷却水の温度に応じて弁部を駆動しラジエータ及び内燃機関の間における冷却水の循環量を調節する感温式駆動部と前記弁部の駆動に際して変位する同感温式駆動部の感温部が挿入され前記バイパス通路の冷却水を同感温部の近傍に導入する導入管とを含むバイパスバルブレス式のサーモスタットを備え、前記バイパス通路には前記導入管の開口端部に冷却水を導入するための導入口が同開口端部と対向する態様にて設けられる内燃機関の冷却装置において、前記サーモスタットはその導入管の開口端部と前記導入口の形成面との間に間隙を有する態様にて同ハウジングに組み付けられることをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、サーモスタットやハウジングに形状誤差が存在したり、サーモスタットをハウジングに組み付ける際に組み付け誤差が存在したりする場合であっても、そうした形状誤差や組み付け誤差を導入管の開口端部と導入口周縁部との間の間隙により吸収することができ、それら誤差に起因して導入管の開口端部と、ハウジングの導入口周縁部等、ハウジングにおける導入口の形成面が干渉することを回避することができる。その結果、ハウジングにサーモスタットを組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0023】
更に、バイパス通路の導入口から流出した冷却水は導入管に流入する他、その一部は開口端部と導入口の周縁部との間の間隙からリークするようになる。従って、内燃機関からラジエータをバイパスしてバイパス通路に流入するとともにこのバイパス通路を通じてサーモスタット側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータを通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙を設けることで感温部に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタットの温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、前記バイパス通路の導入口から流出した冷却水のうち、前記導入管に流入する量をVa、前記間隙からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように同間隙の大きさが設定されてなることをその要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、導入管を通じて感温式駆動部の近傍に導入される冷却水の量を確保することができ、上記間隙から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部の感温特性低下を抑制することができるようになる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、前記ハウジングは前記導入口の周囲に前記導入管の開口端部の内部に突出する突部が形成されてなることをその要旨とする。
【0027】
上記構成によれば、バイパス通路の冷却水が導入口を介して導入管の開口端部からその内部に導入される際、冷却水の一部は突部の先端部分を迂回するとともに導入管の開口端部と導入口の周縁部との間の間隙からリークするようになる。そして、このように冷却水が突部の先端部分を迂回する態様で流れるようになるため、その迂回部位を冷却水が流れる際の圧力損失が大きくなる。こうした冷却水の迂回部位を形成することにより、冷却水のリーク量が律速(制限)されるようになる。その結果、導入管の開口端部とこれに対向する導入口の形成面との間の間隙の大きさが上述したような各種の誤差に起因して異なる場合であっても、それに伴って冷却水のリーク量が大きく変化することを抑制することができる。
【0028】
特に、請求項4に記載されるように、こうした突部を導入口の全周を囲繞する態様にてハウジングに形成すれば、上述した作用効果を一層顕著なものとすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記間隙の大きさは1.5〜2.5mmの範囲に設定されていることをその要旨とする。
【0029】
内燃機関の冷却装置における各種仕様は排気量等、同内燃機関の各諸元によって異なるものになるが、こと導入管の開口端部とその導入口の形成面との間の間隙についていえば、概ね「1.5〜2.5mm」の範囲、望ましくは「2mm」に設定することにより、感温式駆動部の感温特性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関の冷却装置の全体構成及び同冷却装置に採用されるサーモスタットについてこれが閉弁状態にあるときの断面構造を示す模式図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】同サーモスタットが開弁状態にあるときの断面構造を示す断面図。
【図4】温度上昇量と出口温度との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる内燃機関の冷却装置に採用されるサーモスタットについてこれが閉弁状態にあるときの断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態に採用されるサーモスタットの変形例についてその断面構造を示す断面図。
【図7】従来の内燃機関の冷却装置に採用されるバイパスバルブ式のサーモスタットについてその断面構造を示す断面図。
【図8】従来の内燃機関の冷却装置及びこれに採用されるバイパスバルブレス式のサーモスタットの断面構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の冷却装置を具体化した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、本実施形態の冷却装置において、先の図8に例示した従来のバイパスバルブレス式のサーモスタットを備える冷却装置と同様の機能を有する構成については、同図8と同じ符号を付しており、重複する説明は適宜割愛する。
【0032】
まず、内燃機関の冷却装置の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、冷却水の流れる各種通路が形成されたハウジング40には感温部27を備えるサーモスタット20が内蔵されている。そして、同図1のA−A線における断面図である図2に示すように、感温部27には、その底部に導入管30の冷却水が直接接触可能である他、図3に示すように、感温部27が同図の下方に変位した場合でも、その外周面には同外周面と導入管30の内周面との間に形成される隙間(流通部33)を通過する冷却水が接触可能である。このようにして、感温部27の近傍には導入管30を通じて冷却水が導入される。そして、冷却水が感温部27に接触することにより、冷却水と感温部27との間で熱交換が行われるようになる。
【0033】
また、こうした熱交換により感温部27は、その内部に封入された熱膨張材28の膨張量が変化し、それに伴って駆動ロッド23の突出量が変化することにより、導入管30の内部で上下動する。この結果、感温部27のケース27aに固定された弁部26と弁座25とが近接離間してサーモスタット20の開度が冷却水の温度に応じて変化することとなる。
【0034】
また、図1に示すように、本実施形態の内燃機関10の冷却装置においては、導入管30の開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とが同程度に設定されている一方、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間に間隙d1を有する態様にてサーモスタット20がハウジング40に組み付けられている。バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように、上記間隙d1の大きさが設定されている。なお、導入管30を通じて感温式駆動部300の近傍に導入される冷却水の量を確保するとともに、上記間隙d1から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部300の感温特性低下を抑制するうえで、上記間隙d1は「1.5〜2.5mm」の範囲、望ましくは「2mm」に設定することが望ましい。
【0035】
図4は、内燃機関10の冷却系(ウォータジャケット)においてその入口10a(図1参照)に流入する冷却水の温度とその出口10b(図1参照)から流出する冷却水の温度の差、すなわち機関燃焼時の熱による冷却水の温度上昇量(以下、「温度上昇量Δθ」という)と、同じく冷却系から流出する冷却水の温度(以下「出口温度θo」という)との関係を示すグラフである。またこのグラフにおいて、実線は本実施形態における温度上昇量Δθと出口温度θoとの関係を示している。また、二点鎖線は、本実施形態における導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間の間隙d1の大きさが大きくなるようにこれを変更した場合における同関係を示している。更に、一点鎖線は本実施形態においてこうした間隙d1を形成しない場合における同関係を示している。
【0036】
図4に示すように、温度上昇量Δθが大きくなるほど、即ち冷却水が内燃機関10から受ける熱量が増大するほど、ポンプ通路15に導入される冷却水の温度は高くなる。ここで、同図4に二点鎖線にて示すように、間隙d1の大きさを過度に大きくした構成にあっては、温度上昇量Δθが大きくなった場合に出口温度θoが急激に上昇する傾向にある。これは、導入口13aから導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va≦Vbなる関係が成立する等、リーク量Vbが必要以上に多くなるため、導入管30を介して感温部27の近傍に導入される冷却水の量が少なくなり、同感温部27の感温特性が低下することによるものである。すなわちこのように、感温部27の感温特性が低下すると機関温度の上昇に適応したかたちで弁部26を充分な開度まで開弁させることができず、ラジエータ通路11を通過する冷却水の量が減少してその熱を十分に放熱させることができないため、出口温度θo、換言すれば機関温度の過度な上昇を招くこととなる。
【0037】
一方、こうした間隙d1を形成しない構成にあっては、温度上昇量Δθが大きくなった場合であってもそれに応じて出口温度θoが過度に上昇することはなく、また実線にて示す本実施形態の冷却装置と比較して出口温度θoも低い温度領域で推移する。即ち、上述したようなラジエータ通路11における冷却水流量が減少して機関温度の過度な上昇を招くことはない。しかしながら、こうした構成にあっては、サーモスタット20やハウジング40に形状誤差が存在する等の要因によってハウジング40にサーモスタット20を組み付ける際の作業効率が低下する点については上述したとおりである。
【0038】
即ち、冷却装置の特性としてはこうした作業効率の低下を回避しつつ、機関温度が上昇した場合でも高い応答性をもって弁部26を開弁して機関温度の過度な上昇を抑制する、といった機能を有していることが望まれることとなる。この点、本実施形態にかかる冷却装置では、上記間隙d1を形成し、その間隙d1から適度な量の冷却水をリークさせるようにしているため、内燃機関10からバイパス通路13を通じてサーモスタット20側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙d1を設けることで感温部27に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタット20の温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0039】
以上説明した第1の実施形態では、以下の効果が得られるようになる。
(1)サーモスタット20やハウジング40に形状誤差が存在したり、サーモスタット20をハウジング40に組み付ける際に組み付け誤差が存在したりする場合であっても、そうした形状誤差や組み付け誤差を導入管30の開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙により吸収することができ、それら誤差に起因して導入管30の開口端部31と、ハウジング40の導入口13aの周縁部等、ハウジング40における導入口13aの形成面が干渉することを回避することができる。その結果、ハウジング40にサーモスタット20を組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0040】
更に、バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水は導入管30に流入する一方、その一部は導入管30に流入することなくその開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙d1からリークするようになる。従って、内燃機関10からバイパス通路13を通じてサーモスタット20側に流通する冷却水の量がこのリーク量の分だけ増大するようになる。その結果、例えば機関負荷の急激な変動に伴って機関温度が大きく変化したような場合であっても、その機関温度の変化に追従するように高い温度応答性をもってラジエータ12を通過する冷却水の流量を調節することができる。そしてこれにより、上記間隙d1を設けることで感温部27に接触する冷却水の量が減少する場合であれ、それに起因するサーモスタット20の温度応答性の低下を抑制することができるようになる。
【0041】
(2)バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するようにその間隙d1を設定したため、導入管30を通じてサーモスタット20を含む感温式駆動部300の近傍に導入される冷却水の量を確保することができ、上記間隙d1から冷却水がリークすることに起因する感温式駆動部300の感温特性低下を抑制することができるようになる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の冷却装置を具体化した第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、上述した第1の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aは周囲のハウジング40と同じ平面上にて開口する構成を採用した。これに対して、本実施形態においては、ハウジング40において導入口13aの周縁部に、導入管30の開口端部31の内部にまで突出する突部14が形成されており、導入口13aは導入管30の開口端部31の内部に開口する態様を有している。本実施形態は、こうした突部14をハウジング40に形成するようにした点で第1の実施形態と異なっている。そこで以下では、第1の実施形態との相違点を中心に本実施形態にかかる冷却装置について説明する。
【0043】
図5は、本実施形態にかかる内燃機関の冷却装置であって、サーモスタット20及びハウジング40の断面構造を示す断面図である。図5に示すように、ハウジング40には導入口13aをその全周にわたって囲繞する円筒状の突部14が形成されている。そして、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間に間隙d3を有する態様にてサーモスタット20がハウジング40に組み付けられている。なお、上述した第1の実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とが同程度に設定されていたが、本実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積よりも導入口13aの開口面積が小さく設定されている。
【0044】
こうした構成によれば、バイパス通路13の冷却水は、突部14により区画された導入口13aから流出して導入管30の内部に導入される。そして、導入管30の内部に導入した冷却水の一部は、突部14を迂回するようにして導入管30から上記間隙d3を通じてその外部にリークするようになる。ここで、バイパス通路13の導入口13aから導入管30に導入された冷却水のうち、感温部27に接触する量をVa1、上記間隙d3からリークする量をVb1としたときに、Va1>Vb1なる大小関係が成立する。換言すれば、こうした関係が成立するように上記間隙d3の大きさが設定されている。
【0045】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態に記載した(1)及び(2)の効果に準ずる効果と併せて、以下の効果が得られるようになる。
(3)バイパス通路13から導入口13aを介して導入管30の内部に導入された冷却水は、その一部が突部14の先端部分を迂回するとともに導入管30の開口端部31と導入口13aの周縁部との間の間隙d3からリークするようになる。そして、このように冷却水が突部14の先端部分を迂回する態様で流れるようになるため、その迂回部位を冷却水が流れる際の圧力損失が大きくなる。こうした冷却水の迂回部位を形成することにより、冷却水のリーク量が律速(制限)されるようになる。その結果、導入管30の開口端部31とこれに対向する導入口13aの形成面との間の間隙d3の大きさが、サーモスタット20やハウジング40の形状誤差及びサーモスタット20をハウジング40に組み付ける際の組み付け誤差といった各種の誤差に起因して異なる場合であっても、それに伴って冷却水のリーク量が大きく変化することを抑制することができる。
【0046】
(4)突部14を導入口13aの全周を囲繞する態様にてハウジング40に形成したため、上記(3)の作用効果を一層顕著なものとすることができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0047】
・上記第2の実施形態においては、導入管30の開口端部31における開口面積よりも導入口13aの開口面積を小さく設定した。こうした形態によれば、例えば上記第1の実施形態に記載の冷却装置のように、開口端部31における開口面積と導入口13aの開口面積とを同程度に設定する場合と比較して、同導入口13aから流出する冷却水の量が少なくなるため、サーモスタット20における温度応答性の低下が懸念される。そこで、導入管30の開口端部31の形状を変更して同開口端部31の開口面積を大きく設定するといった形態を採用するようにしてもよい。例えば、図6に示すように、導入管30をその軸方向において略中央部分から開口端部31にかけて拡径させるようにすれば、導入口13aの開口面積よりも大きく設定することができる。
【0048】
・上記第2の実施形態において、突部14は円筒状をなすようにしていたが、円筒状に限らずその他の形状をなすようにしてもよい。
・上記第2の実施形態において、導入口13aをその全周にわたって囲繞するようにして突部14を形成するようにしたが、突部14の形成態様はこれに限らず、少なくとも導入口13aの周縁部に形成されて導入管30の内部に突出するものであればよく、例えば導入口13aの全周のうち一部分にのみこれを形成するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記第1の実施形態の効果に準ずる効果と上記第2の実施形態の(3)の効果に準ずる効果を得ることができる。
【0049】
・上記第1の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aから流出した冷却水のうち、導入管30に流入する量をVa、導入管30に流入することなく間隙d1からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように間隙d1を設定するようにしていた。また、上記第2の実施形態においては、バイパス通路13の導入口13aから導入管30に導入された冷却水のうち、感温部27に接触する量をVa1、上記間隙d3からリークする量をVb1としたときに、Va1>Vb1なる大小関係が成立するように間隙d3の大きさを設定するようにしていた。導入管の開口端部と導入口の形成面との間の間隙は、上記第1、第2の実施形態に例示した冷却水の流量関係が成立していない場合であっても、上記第1の実施形態の(1)の効果に準ずる効果と上記第2の実施形態の効果は少なくとも得ることができる。
【0050】
・上記第1の実施形態においては、導入管の開口端部と導入口の形成面との間の間隙d1の大きさを「1.5〜2.5mm」の範囲、具体的には2mmに設定するようにしたが、その大きさをこの範囲以外の値に設定することも可能ではある。
【符号の説明】
【0051】
10…内燃機関、10a…入口、10b…出口、11,111…ラジエータ通路、12…ラジエータ、13,113…バイパス通路、13a…導入口、14…突部、15,115…ポンプ通路、16…ポンプ、20,120…サーモスタット、23,123…駆動ロッド、24…支持部材、25,152…弁座、26,126,151…弁部、27,127…感温部、27a…ケース、27b…ガイドロッド、28…熱膨張材、29…スプリング、30…導入管、31…開口端部、32…フランジ、33…流通部、40,140…ハウジング、150…バイパスバルブ、300…感温式駆動部、d1,d3…間隙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からラジエータをバイパスした冷却水が流入するバイパス通路を有するハウジングに組み付けられ、冷却水の温度に応じて弁部を駆動しラジエータ及び内燃機関の間における冷却水の循環量を調節する感温式駆動部と前記弁部の駆動に際して変位する同感温式駆動部の感温部が挿入され前記バイパス通路の冷却水を同感温部の近傍に導入する導入管とを含むバイパスバルブレス式のサーモスタットを備え、前記バイパス通路には前記導入管の開口端部に冷却水を導入するための導入口が同開口端部と対向する態様にて設けられる内燃機関の冷却装置において、
前記サーモスタットはその導入管の開口端部と前記導入口の形成面との間に間隙を有する態様にて同ハウジングに組み付けられる
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
前記バイパス通路の導入口から流出した冷却水のうち、前記導入管に流入する量をVa、前記間隙からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように同間隙の大きさが設定されてなる
請求項1に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記ハウジングは前記導入口の周囲に前記導入管の開口端部の内部に突出する突部が形成されてなる
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
前記突部は前記導入口の全周を囲繞する態様にて前記ハウジングに形成されてなる
請求項3に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項5】
前記間隙の大きさは1.5〜2.5mmの範囲に設定されている
請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項1】
内燃機関からラジエータをバイパスした冷却水が流入するバイパス通路を有するハウジングに組み付けられ、冷却水の温度に応じて弁部を駆動しラジエータ及び内燃機関の間における冷却水の循環量を調節する感温式駆動部と前記弁部の駆動に際して変位する同感温式駆動部の感温部が挿入され前記バイパス通路の冷却水を同感温部の近傍に導入する導入管とを含むバイパスバルブレス式のサーモスタットを備え、前記バイパス通路には前記導入管の開口端部に冷却水を導入するための導入口が同開口端部と対向する態様にて設けられる内燃機関の冷却装置において、
前記サーモスタットはその導入管の開口端部と前記導入口の形成面との間に間隙を有する態様にて同ハウジングに組み付けられる
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
前記バイパス通路の導入口から流出した冷却水のうち、前記導入管に流入する量をVa、前記間隙からリークする量をVbとしたとき、Va>Vbなる大小関係が成立するように同間隙の大きさが設定されてなる
請求項1に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記ハウジングは前記導入口の周囲に前記導入管の開口端部の内部に突出する突部が形成されてなる
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
前記突部は前記導入口の全周を囲繞する態様にて前記ハウジングに形成されてなる
請求項3に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項5】
前記間隙の大きさは1.5〜2.5mmの範囲に設定されている
請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−67850(P2012−67850A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213519(P2010−213519)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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