説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気中の窒素酸化物についての排気特性の悪化を好適に抑制することのできるエンジン12の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】タンク46内に貯蔵された吸収液体Aを排気通路38に供給する添加弁50と、一対の電極66a,66bを備えて且つこれら電極間に電圧を印加してタンク46内に貯蔵された吸収液体Aの電気分解を行う還元浄化装置54とを備えるNOx除去装置44がある。ここでアイドリング運転が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件と、プラグイン充電が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件との論理和が真であるとの条件を安定条件とし、安定条件が成立したと判断された場合、上記電気分解を行うことで、吸収液体A中の窒素酸化物を還元浄化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載内燃機関から排気通路へと排出される排気中の窒素酸化物を浄化する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物(NOx)を除去する排気浄化装置としては例えば、NOx吸蔵還元型触媒や、尿素選択還元型触媒が知られている。詳しくは、NOx吸蔵還元型触媒は、未燃燃料HCを還元剤として、自身に吸蔵させたNOxを還元して浄化するものである。また、尿素選択還元型触媒は、尿素を還元剤として排気中のNOxを選択的に還元して浄化するものである。
【0003】
しかしながら、これら装置では、内燃機関が始動され、触媒の暖機が開始されてから、触媒温度が活性温度に上昇するまでは、触媒の浄化能力が低く、排気中の窒素酸化物を適切に浄化することができない。このため、内燃機関の燃費低減効果の向上を目的として、内燃機関の熱効率を向上させる等の技術が導入される場合、触媒温度が上昇しにくくなることで、窒素酸化物の浄化度合いの低下が顕著となるおそれがある。
【0004】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるような窒素酸化物の除去装置も知られている。詳しくは、この除去装置では、まず、排気中の一酸化窒素(NO)を酸化して易吸着性の窒素酸化物(NO2等)に改質し、その改質された窒素酸化物に噴霧装置によって水を噴霧することで、改質された窒素酸化物のイオン化を促進する。そして、イオン化された窒素酸化物を吸着材に吸着させるとともに、吸着材の一部に電界を形成することで窒素酸化物イオンを電気泳動によって濃縮する。そして、濃縮された窒素酸化物イオンを三元触媒によって還元することで、窒素酸化物を還元浄化する。これにより、排気温度によらず、排気中の窒素酸化物を浄化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−233161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された窒素酸化物の除去装置によっても、排気中の窒素酸化物を適切に浄化することができない状況が生じ得る。こうした状況としては例えば、車両の走行に伴う振動で上記除去装置が動揺すること等に起因して、窒素酸化物イオンの電気泳動が妨げられ、吸着材の一部に窒素酸化物イオンを適切に濃縮させることができない状況がある。この場合、窒素酸化物の浄化能力が低下し、内燃機関の排気特性が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気中の窒素酸化物についての排気特性の悪化を好適に抑制することのできる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車載内燃機関から排気通路へと排出される排気中の窒素酸化物を吸収する浄化用液体を貯蔵する貯蔵手段と、前記貯蔵された浄化用液体中の窒素酸化物の濃度を低下させるべく、前記浄化用液体に電圧を印加するための対となる電極間に通電する処理である還元浄化処理を行う還元浄化手段と、前記貯蔵手段に貯蔵された前記浄化用液体の挙動が安定したか否かを判断する安定判断手段と、前記安定判断手段によって前記浄化用液体の挙動が安定したと判断された場合、前記還元浄化処理を実行させる実行手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、排気中の窒素酸化物を吸収する浄化用液体を貯蔵する貯蔵手段を備えることで、排気特性の悪化を抑制している。ここで貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体中の窒素酸化物の濃度が上昇すると、浄化用液体の単位量あたりの窒素酸化物の吸収量(吸収密度)等、浄化用液体による窒素酸化物の吸収能力が低下するおそれがある。この場合、浄化用液体によって窒素酸化物を適切に吸収することができず、排気特性が悪化するおそれがある。
【0011】
この点、上記発明では、還元浄化手段を備えることで、浄化用液体に電圧を印加するための対となる電極間に通電する処理(還元浄化処理)によって、浄化用液体中の窒素酸化物の濃度を低下させる。これにより、浄化用液体による窒素酸化物の吸収能力の低下を好適に回避することができる。
【0012】
ここで、還元浄化手段を備える場合であっても、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定していないときには、還元浄化処理によって浄化用液体中の窒素酸化物の濃度を適切に低下させることができなくなるおそれがある。
【0013】
この点、上記発明では、安定判断手段及び実行手段を備えることで、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定する状況下において、還元浄化処理によって浄化用液体中の窒素酸化物の濃度を適切に低下させることができ、ひいては排気特性の悪化を好適に回避することができる。
【0014】
なお、上記発明は、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体を排気通路に供給する供給手段と、上記供給された浄化用液体を貯蔵手段に回収して貯蔵する手段とを備えてもよい。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記安定判断手段は、当該排気浄化装置が搭載される車両が停止してから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする。
【0016】
停車してからの時間が長いほど、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定する傾向にある。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にて貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定したか否かを適切に判断することができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記内燃機関は、車載主機となるものであり、前記安定判断手段は、前記内燃機関のアイドリング運転が開始されてから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする。
【0018】
内燃機関がアイドリング運転される期間は、内燃機関の発生トルクが車両の力行に用いられないため、浄化用液体の挙動が安定する蓋然性が高いと考えられる。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にて浄化用液体の挙動が安定したか否かを判断する。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記内燃機関は、車載主機となるものであり、前記安定判断手段は、前記内燃機関が停止されてから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする。
【0020】
内燃機関が停止されてからの時間が長いほど、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定する傾向にある。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にて貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体が安定したか否かを判断する。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記車両には、車載主機として、前記内燃機関とともに、車載蓄電池を電力供給源として駆動される回転機が備えられ、前記蓄電池は、外部電源から供給される電力によって充電可能なものであり、前記安定判断手段は、前記外部電源から供給される電力によって前記蓄電池が充電されていると判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする。
【0022】
車載主機として、内燃機関とともに、車載蓄電池を電力供給源として駆動される回転機を備える車両(いわゆるハイブリッド車両)において、外部電源から供給される電力によって蓄電池が充電される間は、内燃機関を含む車載主機が停止されて停車される。ここで、停車してからある程度の時間が経過した時点で蓄電池の充電が開始されたり、蓄電池の充電にある程度の時間が要求されたりすることに鑑みると、蓄電池の充電中においては浄化用液体の挙動が安定している蓋然性が高いと考えられる。
【0023】
この点に鑑み、上記発明では、外部電源から供給される電力によって蓄電池が充電されていると判断された場合、浄化用液体の挙動が安定したと判断する。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記実行手段は、前記対となる電極間に電圧を印加するための電気エネルギを前記外部電源の電力で賄うことを特徴とする。
【0025】
上記発明では、還元浄化処理を実行するための電力供給源として外部電力を用いて、蓄電池の充電中に浄化用液体に吸収された窒素酸化物の濃度を低下させることができる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記貯蔵手段に貯蔵される浄化用液体の挙動を検出する挙動検出手段を更に備え、前記安定判断手段は、前記挙動検出手段の検出値に基づき、前記浄化用液体の挙動が安定したか否かを判断することを特徴とする。
【0027】
上記発明では、挙動検出手段によって浄化用液体の挙動を直接検出することができるため、貯蔵手段に貯蔵された浄化用液体の挙動が安定したか否かを的確に判断することができる。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記浄化用液体による窒素酸化物の吸収量又は該浄化用液体中の窒素酸化物の濃度が所定以上になると判断された場合、前記還元浄化処理を強制的に実行させる強制手段を更に備えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、強制手段を備えることで、浄化用液体に吸収された窒素酸化物の量が過度に多くなることに起因して、排気中の窒素酸化物の浄化能力が低下する事態の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる窒素酸化物の還元浄化が妨げられる様子を示す図。
【図3】同実施形態にかかる還元浄化処理の手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図5】同実施形態にかかる窒素酸化物の還元浄化が妨げられる様子を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図7】同実施形態にかかる窒素酸化物の還元浄化が妨げられる様子を示す図。
【図8】第4の実施形態にかかる還元浄化処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる排気浄化装置を、車載主機としてエンジン及び回転機が搭載されたハイブリッド車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0033】
図示されるように、車両には、車載主機としての回転機(以下、モータジェネレータ10)及びエンジン12と、モータジェネレータ10等の電力供給源となるバッテリ14(例えば数百Vのもの)と、排気後処理装置とが備えられている。詳しくは、バッテリ14は、車載充電装置16及びこれに備えられるプラグPGを介して外部電源18(例えば急速充電器や家庭用電源)によって充電(プラグイン充電)される。
【0034】
モータジェネレータ10は、これを制御するためのインバータ20を介してバッテリ14の電力が供給されることで駆動される。なお、モータジェネレータ10は、車両の減速時において、車両の運動エネルギを発電エネルギに変換してバッテリ14に充電する回生発電機能を有している。
【0035】
エンジン12は、圧縮点火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。エンジン12の各気筒の燃焼室22には、燃焼室22に突出する電磁駆動式の燃料噴射弁24が設けられている。燃料噴射弁24には、図示しない蓄圧容器(コモンレール)から高圧の燃料(軽油)が供給され、燃料噴射弁24から燃焼室22に高圧の燃料が噴射供給される。そして、燃焼室22に噴射供給された燃料と、吸気通路26から燃焼室22に導入された吸気とは、燃焼室22の圧縮により燃焼に供される。そして、燃焼によって発生するエネルギは、エンジン12の出力軸(クランク軸28)の回転エネルギとして取り出される。なお、クランク軸28付近には、クランク軸28の回転角度を検出するクランク角度センサ30が設けられている。
【0036】
上記モータジェネレータ10によって生成された駆動エネルギや、クランク軸28の回転エネルギは、減速機構等からなる動力伝達機構32を介して駆動輪34へと伝達される。なお、駆動輪34付近には、車両の走行速度を検出する車輪速センサ36が設けられている。
【0037】
上記燃焼室22で燃焼に供された吸気及び燃料は、排気として排気通路38に排出される。排気通路38には、上記排気後処理装置として、上流側から順に、排気中に含まれている窒素酸化物(NOx)を酸化させる酸化触媒(DOC40)、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF42)、及び排気中のNOxを除去するNOx除去装置44が備えられている。なお、DOC40は、排気中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO2)とする機能を有する部材である。また、本実施形態において、NOxには、一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2及び硝酸イオン等の少なくともいずれかが含まれるものとする。
【0038】
上記NOx除去装置44は、タンク46、循環ポンプ48、添加弁50、接触器52、及びNOxを還元浄化する機能を有する還元浄化装置54を備えて構成されている。
【0039】
詳しくは、タンク46は、NOxを吸収する浄化用液体としての吸収液体Aを貯蔵する貯蔵手段である。なお本実施形態では、吸収液体Aとして、イオン液体や、アルカリ水溶液(例えば、NaOH水溶液、NH3水溶液)、水(例えばエンジン冷却水)等であって且つ、化学変化を伴ってNOxを吸収(化学吸着)する物質を想定している。
【0040】
また、タンク46には、タンク46内の吸収液体Aの挙動を検出する挙動検出センサ56が備えられている。ここで挙動検出センサ56としては、具体的には例えば、吸収液体A中に浸された一対の電極を有して且つ、これら電極が吸収液体Aに浸される度合いに応じて電極間の抵抗値が変化することで出力電圧を変化させるセンサや、吸収液体Aに浮くフロート部材を有して且つ、フロート部材の浮き位置に応じて吸収液体Aの挙動を検出するセンサを採用すればよい。すなわち、本実施形態では、吸収液体Aの液面高さの時間変化が所定量よりも大きい場合(すなわち、液面が揺れている)は、挙動が安定していないと見なしている。
【0041】
タンク46内と添加弁50とは、循環通路58を介して接続されており、循環通路58上には、循環ポンプ48が設けられている。詳しくは、循環ポンプ48は、タンク46内に貯蔵されている吸収液体Aを汲み上げて添加弁50に圧送する電動式のものである。
【0042】
添加弁50は、タンク46に貯蔵された吸収液体Aを排気通路38に供給する供給手段である。詳しくは、添加弁50は、吸収液体Aを排気通路38に噴射供給する電磁駆動式の弁体である。より具体的には、添加弁50は、接触器52に向かって吸収液体Aを噴射するように設けられている。
【0043】
接触器52は、吸収液体Aを保持する保持体52a及び保持体52aを内部に収容するケース52bを備えて構成されており、吸収液体Aと排気とを接触させる機能を有する部材である。詳しくは、接触器52は、排気通路38のうち添加弁50下流側に設けられている。具体的には、接触器52が備えるケース52bは、排気通路38に接続されており、ケース52b内には排気が流通するようになっている。また、保持体52aは、例えば排気の流通方向に平行に延びる複数の壁を有して且つ排気が流通可能なように構成されるものであり、ケース52b内を流通する排気に晒されるように配置されている。
【0044】
こうした構成において、添加弁50から排気通路38へと吸収液体Aが噴射供給されると、吸収液体Aと排気とが接触することで、排気中のNOxが吸収液体Aに吸収される。詳しくは、噴射供給された吸収液体Aによって排気中のNOxが直接吸収される。また、噴射供給された吸収液体Aが保持体52aに接触して保持され、保持体52aに保持されている吸収液体Aに排気が接触することでNOxが吸収される。
【0045】
添加弁50から噴射供給され、NOxを吸収した吸収液体Aは、タンク46に再び回収されて貯蔵される。詳しくは、噴射供給された後の吸収液体Aは、ケース52bの下部に移動したり、ケース52b内の排気下流側に設けられたデミスタ60によって捕集されたりした後、ケース52b内の下部に設けられた回収通路62を介してタンク46内に回収される。すなわち、デミスタ60及び回収通路62は、排気通路38に供給された吸収液体Aをタンク46に回収する手段となる。なお、デミスタ60は、吸収液体Aが大気へと放出されることを回避するための部材である。
【0046】
還元浄化装置54は、電源装置64と、この電源装置64と電気的に接続されて且つタンク46内の吸収液体Aに一部(又は全部)が浸された対となる(1対の)電極(正極66a,負極66b)とを備えて構成されている。
【0047】
タンク46には、還元浄化装置54によって後述する電気分解が行われた際に発生するN2及びO2を放出させるべく、排気通路38のうちケース52bの排気下流側と連通する放出通路68が設けられている。
【0048】
こうした構成において、電源装置64によって両電極66a,66b間に電圧が印加されると、電気分解によって吸収液体A中に吸収されたNOx(例えばNO2や硝酸イオン)が還元されることで、正極66a付近からO2が発生するとともに、負極66bからはN2が発生する。そして、これらO2及びN2は、放出通路68を介して排気通路38に放出される。これにより、吸収液体A中のNOxが還元浄化されて除去され、吸収液体A中のNOxの濃度を低下させることができる。
【0049】
なお、電極66a,66bとしては、吸収液体Aによって電極が腐食したり、吸収液体Aと電極との反応によって塩が生成されたりすることで電気分解が促進されなくなる事態の発生を回避すべく、イオン化傾向が小さい金属(例えば銅、銀、白金、金)を用いることが望ましい。また、吸収液体Aとしては、NOxの吸収能力が電気分解によって低下しない(耐電圧が高い)ものを採用することが望ましい。
【0050】
電子制御装置(以下、ECU70)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU70には、クランク角度センサ30や、車輪速センサ36の出力信号等が入力される。ECU70は、上記各センサからの入力信号に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁24による燃料噴射制御処理等のエンジン12の燃焼制御処理や、インバータ20によるモータジェネレータ10の駆動制御処理、更にはNOxの浄化制御処理を行う。
【0051】
上記燃焼制御処理及びモータジェネレータ10の駆動制御処理は、協調して行われる。詳しくは、車両の走行速度が所定の低速度領域(停車を含む)となる場合等、エンジン12の熱効率が低い場合にエンジン12を自動的に停止させ、モータジェネレータ10のみを車両の走行動力源とすべく、エンジン12及びモータジェネレータ10の制御がなされる。なお、停車中であっても、バッテリ14の蓄電量が低くて充電要求がある場合や、エンジン12の廃熱を利用した暖房要求がある場合等には、エンジン12をアイドリング運転させる。ここでアイドリング運転とは、エンジン12の発生トルクを、自身の運転を維持したり、車載補機を駆動させたりするために用い、車両の力行に用いないエンジン12の運転状態のことをいう。
【0052】
上記NOxの浄化制御処理は、循環ポンプ48の駆動制御や、添加弁50による噴射制御等からなる処理である。この処理によれば、タンク46→循環通路58→添加弁50→接触器52→回収通路62→タンク46の経路で吸収液体Aを循環させつつ、吸収液体Aによって排気中のNOxを吸収することが可能となる。こうした制御によれば、例えばエンジン12の始動時等、排気系の温度が低い運転領域において排気中のNOxを適切に除去することが可能となる。
【0053】
ここで本実施形態では、上記NOxの浄化制御処理として更に、還元浄化処理を行う。還元浄化処理は、電気分解によって吸収液体A中のNOxを還元浄化すべく、電極66a,66b間の通電状態を操作し、吸収液体A中のNOxの濃度を低下させるための処理である。この処理は、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなることを回避するための処理である。つまり、上記経路を吸収液体Aが循環しつつ排気中のNOxを吸収する状況が継続されると、吸収液体A中のNOxの濃度が上昇する。吸収液体A中のNOxの濃度が上昇すると、吸収液体Aによる単位時間あたりのNOx吸収量(NOx吸収速度)や、吸収液体Aの単位量あたりのNOx吸収量(NOx吸収密度)が低下することで、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなることが懸念される。このため、還元浄化処理を行うことで、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなることを回避する。
【0054】
ところで、車両の走行に伴いタンク46が動揺したり、循環ポンプ48が駆動されたりすることに起因して、タンク46内の吸収液体Aに流れが生じ、タンク46内の吸収液体Aの挙動が不安定となることがある。この場合、還元浄化処理によって吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができなくなるおそれがある。以下、このことについて、図2を用いて詳述する。
【0055】
図2は、還元浄化装置54及びその付近を拡大したものである。なお、図中、放出通路68及び挙動検出センサ56の図示を省略している。
【0056】
図示される例では、循環ポンプ48が駆動され、吸収液体Aがタンク46から循環通路58へと吸い込まれることに起因して、負極66b側から正極66a側へと向かう(循環通路58へと向かう)吸収液体Aの流れが生じ、吸収液体Aの挙動(液中・液面の挙動)が不安定になっている。この場合、吸収液体A中に吸収されたNOxがイオン化することによって生成された陽イオンの負極66b側へと向かう電気泳動が妨げられることに起因して、還元浄化処理によって吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができなくなるおそれがある。
【0057】
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、タンク46に貯蔵された吸収液体Aの挙動が安定したと判断された場合、還元浄化処理を行うことで、吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができなくなる事態を回避する。
【0058】
図3に、本実施形態にかかる還元浄化処理の手順を示す。この処理は、ECU70によって実行される。
【0059】
この一連の処理では、まずステップS10において、クランク角度センサ30の出力値に基づくエンジン回転速度NEと、燃料噴射弁24からの燃料噴射量Qとから、吸収液体AのNOxの総吸収量Gtotalを算出する。本実施形態では、還元浄化処理を前回実行したタイミングから現在までの吸収液体AによるNOx吸収量を総吸収量Gtotalとして算出する。ここで総吸収量Gtotalは、具体的には例えば、エンジン回転速度NE及び燃料噴射量QとNOx排出量とが関係付けられたマップを用いてエンジン12の都度のNOx排出量を算出し、この都度のNOx排出量の積算値として算出すればよい。なお、NOxの総吸収量Gtotalの算出に際し、エンジン回転速度NE及び燃料噴射量Qを用いるのは、これらパラメータによればエンジン12からのNOxの排出量を推定することが可能であるためである。
【0060】
続くステップS12では、窒素酸化物の総吸収量Gtotalが規定量G1以下であるか否かを判断する。この処理は、吸収液体A中のNOxの総吸収量Gtotalが過度に増大しているか否かを把握するためのものである。なお、上記規定量G1は、例えば、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなる程度にNOxの総吸収量Gtotalが増大したことを把握可能な値として設定すればよい。
【0061】
続くステップS14では、タンク46内の吸収液体Aの挙動が安定しているか否かを判断するための安定条件が成立したか否かを判断する。本実施形態では、安定条件を、アイドリング運転が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件と、プラグイン充電が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件との論理和が真であるとの条件とする。これら条件は、停車してからの時間が長いほど、タンク46内の吸収液体Aの挙動が安定する傾向にあることに鑑みて設定されたものである。
【0062】
詳しくは、エンジン12がアイドリング運転される期間は、エンジン12の発生トルクが車両の力行に用いられず、停車される期間となる。また、プラグイン充電される期間は、エンジン12が停止されて停車される期間となる。このため、上記安定条件によってタンク46内の吸収液体Aの挙動が安定したか否かを判断することが可能となる。
【0063】
なお本実施形態では、プラグイン充電中において、電源装置64に供給される電力を外部電源18の電力で賄う。このため、例えばコストが低い深夜電力を利用するならば、吸収液体A中のNOx浄化に要するコストを低減させることが可能となる。
【0064】
ステップS14において安定条件が成立していると判断された場合には、タンク46内の吸収液体Aの挙動が安定していると判断し、ステップS16において還元浄化処理を行う。詳しくは、この処理は、電源装置64によって両電極66a,66b間に電圧を印加させて通電させる処理となる。ここで還元浄化処理を行う期間(浄化処理実行期間)は、例えば、NOxの総吸収量Gtotalを、上記規定量G1よりも小さい閾値(例えば0近傍の値)とするのに要する時間として予め実験等によって定めればよい。なお、還元浄化処理が開始されてから浄化処理実行期間が経過する前に、エンジン12が運転されたと判断された場合、後述する強制処理を行えばよい。
【0065】
一方、上記ステップS12においてNOxの総吸収量Gtotalが規定量G1を上回ると判断された場合には、ステップS18に進み、安定条件が成立しない場合であっても還元浄化処理を強制的に実行する強制処理を行う。この処理は、吸収液体Aに吸収されたNOxの量が過度に多くなることに起因して、排気中のNOxの浄化能力が低下する事態の発生を回避するための処理である。ここで強制処理としては、具体的には例えば、還元浄化処理を規定時間(固定値又は可変値)だけ強制的に実行する処理とすればよい。
【0066】
ちなみに、強制処理が行われる場合、この処理後の総吸収量Gtotalを算出する処理を行う。詳しくは、まず、還元浄化処理によるNOx総吸収量Gtotalの単位時間あたりの減少量(NOx浄化速度Vnox、Vnox>0)を予め実験等で定めておき、上記規定時間とNOx浄化速度Vnoxとの乗算値に基づき、NOx総吸収量Gtotalの減少量であるNOx還元浄化量(>0)を算出する。そして、総吸収量GtotalからNOx還元浄化量を減算することで、強制処理後の総吸収量Gtotalを算出する。
【0067】
なお、上記ステップS14において否定判断された場合や、ステップS16、S18の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
(1)アイドリング運転が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件と、プラグイン充電が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件との論理和が真であるとの安定条件が成立したと判断された場合、還元浄化処理を行った。これにより、還元浄化装置54の電気分解によってNOxを適切に還元浄化することができ、ひいては排気特性の悪化を好適に回避することができる。
【0070】
(2)NOxの総吸収量Gtotalが規定量G1以上になることを条件として還元浄化処理を行った。これにより、例えば還元浄化処理を常時行う制御ロジックを採用する場合と比較して、還元浄化処理の電気分解に要する単位電気エネルギあたりのNOxの還元浄化量を増大させることができる等、吸収液体A中のNOxを効率よく還元浄化することができる。
【0071】
(3)NOxの総吸収量Gtotalが規定量G1を上回ると判断された場合、安定条件が成立しないときであっても還元浄化処理を強制的に実行する強制処理を行った。これにより、排気中のNOxの浄化能力が低下する事態の発生を回避することができる。
【0072】
(4)プラグイン充電中において、電源装置64に供給される電力を外部電源18の電力で賄った。これにより、例えばコストが低い深夜電力を利用する場合、吸収液体A中のNOxの浄化に要するコストを低減させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0074】
図4に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図4では、先の図1と共通である一部の構成について省略している。また、先の図1と同一の部材については、便宜上同一の番号を付している。
【0075】
図示されるように、本実施形態にかかる還元浄化装置54は、一対の電極72a,72b及びこれら電極に高電圧を印加する高電圧発生装置72cを有するプラズマ発生装置72と、N2分離器74とを備えて構成されている。詳しくは、一対の電極72a,72bのうち、接地電極72aは吸収液体A中に浸されている。また、放電用電極72bは、吸収液体Aの静止状態において、吸収液体Aの表面から露出している。
【0076】
N2分離器74は、排気通路38のうちケース52bの排気下流側と接続され、排気中のN2を分離してプラズマ発生装置72に供給するためのものである。詳しくは、N2分離器74からN2供給通路76を介して放電用電極72bにN2が供給される。
【0077】
ECU70は、還元浄化処理として、高電圧発生装置72c及びN2分離器74を通電操作する処理を行う。ここで本実施形態にかかる浄化還元手法について説明すると、高電圧発生装置72cによって放電用電極72b及び接地電極72a間に高電圧が印加されると、放電用電極72bから吸収液体Aの水面に向かってストリーマ放電が生じる。この放電が生じる状況下、N2分離器74からプラズマ発生装置72にN2が供給されると、ストリーマ放電によってN2が解離してNラジカルが生成され、Nラジカルが吸収液体Aの表面に吹き付けられる。これにより、吸収液体A中のNOxが還元浄化され、吸収液体A中のNOxの濃度を低下させることができる。
【0078】
ここで本実施形態において、安定条件が成立したと判断されたことを条件として還元浄化処理を行うことのメリットについて、図5を参照しつつ説明する。
【0079】
図5は、還元浄化装置54及びその付近を拡大したものである。
【0080】
図示される例では、車両の走行に伴いタンク46が動揺したり、循環ポンプ48が駆動されたりすることに起因して、タンク46内の吸収液体Aの表面が波打つことで、タンク46内の吸収液体Aの挙動が不安定となっている。この場合、図中αで示すように、放電用電極72bと吸収液体Aとの間のギャップが変化することに起因して、放電を適切に発生させることができなくなり、還元浄化処理によって吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができなくなるおそれがある。
【0081】
これに対し、安定条件が成立したと判断された場合に還元浄化処理を行う場合、放電用電極72bと吸収液体Aとの間のギャップを、放電のための適切なギャップとすることができ、吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができるというメリットがある。
【0082】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0083】
図6に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図6では、先の図4と同一の部材については、便宜上同一の番号を付している。
【0084】
図示されるように、本実施形態にかかる還元浄化装置54において、プラズマ発生装置72の放電用電極72dは、その一部(又は全部)が吸収液体Aに浸されている。
【0085】
次に、本実施形態にかかる吸収液体A中のNOxの浄化還元手法について説明する。
【0086】
高電圧発生装置72cによって放電用電極72d及び接地電極72a間に高電圧が印加されて放電が生じる状況下、N2分離器74からプラズマ発生装置72にN2が供給されると、放電によってN2が解離してNラジカルが生成される。そして生成されたNラジカルやN2は、N2供給通路76から吸収液体A中に供給される。吸収液体Aに供給されたN2ラジカルやN2は気泡となり、気泡と吸収液体Aとの境界面においてNOxが還元浄化されることとなる。これにより、吸収液体A中のNOxが還元浄化され、吸収液体A中のNOxの濃度を低下させることができる。
【0087】
なお、本実施形態にかかるNOxの還元浄化手法によれば、上記第2の実施形態で示した手法と比較して、N2ラジカルが吸収液体Aと接触する面積を増大させることができるため、NOxを効率よく還元浄化することが期待できる。
【0088】
ここで本実施形態において、安定条件が成立したと判断されたことを条件として還元浄化処理を行うことのメリットについて、図7を参照しつつ説明する。
【0089】
図7は、還元浄化装置54及びその付近を拡大したものである。
【0090】
図示される例では、車両の走行に伴うタンク46の動揺等によってタンク46内の吸収液体Aの挙動が不安定となっている。この場合、N2供給通路76から供給されたN2ラジカル等の気泡の形状が崩れることに起因して、放電を適切に発生させることができなくなり、還元浄化処理によって吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができなくなるおそれがある。
【0091】
これに対し、安定条件が成立したと判断された場合に還元浄化処理を行うとき、気泡の形状が崩れることを回避することができ、吸収液体A中のNOxを適切に還元浄化することができるというメリットがある。
【0092】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0093】
本実施形態では、還元浄化処理における上記安定条件を、挙動検出センサ56の検出値に基づき吸収液体Aの挙動が安定したとの条件とする。
【0094】
図8に、本実施形態にかかる還元浄化処理の手順を示す。この処理は、ECU70によって実行される。なお、図8において、先の図3に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0095】
この一連の処理では、ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS14aに進み、安定条件が成立しているか否かを判断する。ここで挙動検出センサ56の検出値に基づく判断手法としては、具体的には例えば、上記検出値に基づき吸収液体Aの液面の変動量が所定以下であると判断された場合、吸収液体Aの挙動が安定していると判断する手法を採用すればよい。
【0096】
ステップS14aにおいて肯定判断された場合には、ステップS16に進む。
【0097】
なお、上記ステップS14aにおいて否定判断された場合や、ステップS16、S18の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0098】
このように、本実施形態では、挙動検出センサ56の検出値を用いることで、吸収液体Aの挙動が安定したか否かを的確に判断することができる。
【0099】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0100】
・上記第1の実施形態では、先の図3のステップS12において、吸収液体A中のNOxの吸収量が過度に増大していないか否かを、総吸収量Gtotalが規定量G1以下であるか否かで判断したがこれに限らない。例えば、吸収液体A中のNOxの濃度を検出するセンサ又は上記NOxの濃度を推定する手段を備え、検出又は推定されたNOxの濃度Cnが規定濃度β以下であるか否かで判断してもよい。ここで規定濃度βは、上記規定量G1の設定手法と同様の観点から設定すればよい。
【0101】
・吸収液体Aの挙動を検出するセンサとしては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、吸収液体Aの流速を検出する流速センサを備え、このセンサの出力値に基づき吸収液体Aの挙動を検出してもよい。この場合、流速センサの出力値から算出される流速が規定速度以下であると判断されたときに吸収液体Aの挙動が安定していると判断すればよい。
【0102】
・吸収液体Aの挙動が安定したか否かを判断する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、車輪速センサ36の出力値から算出される車両の走行速度が0である(停車している)と判断されてから所定時間経過したと判断された場合、吸収液体Aの挙動が安定していると判断してもよい。ただし、車両の走行速度が低速度となる状況における車輪速センサ36の検出精度が低い場合には、上記各実施形態にて示した手法を採用することが望ましい。
【0103】
また例えば、プラグイン充電されてから所定時間経過したとの条件に代えて、プラグイン充電されているとの条件を安定条件としてもよい。これは、停車してからある程度の時間が経過した時点でプラグイン充電が開始され得ることに鑑み、プラグイン充電されているならば吸収液体Aが安定している蓋然性が高いと考えられることによるものである。
【0104】
・本願発明が適用される車両としては、ハイブリッド車両に限らない。例えば、車載主機として、エンジンのみを備える車両(先の図1において、モータジェネレータ10、バッテリ14、充電装置16及びインバータ20を除いた車両)に適用してもよい。この場合、安定条件を、アイドリング運転が開始されたと判断されてから所定時間経過したとの条件とすればよい。なお、上記車両に、停車中であるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させるアイドルストップ機能が備えられる場合、エンジンが自動停止されたと判断されてから所定時間経過したとの条件を安定条件としてもよい。
【0105】
また例えば、車載主機として回転機を備えて且つ、回転機の電力供給源となるバッテリと、バッテリに充電するための補機発電機と、補機発電機の動力供給源となるエンジンとを備えるシリーズハイブリッド車両(いわゆるレンジエクステンダ車両)に適用してもよい。
【0106】
・吸収液体Aとしては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、イオン液体や、アルカリ水溶液、水等であって且つ化学変化を伴わずに窒素酸化物を吸収(物理吸着)する物質であってもよい。
【0107】
・上記各実施形態では、NOxの総吸収量Gtotalの算出に際し、NOx排出量の推定値を用いたがこれに限らない。例えば、排気通路38のうち、DPF42と添加弁50との間にNOxを検出するNOxセンサを備え、このセンサの検出値を用いてもよい。
【0108】
・吸収液体Aを排気通路38に供給するための構成としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、接触器52のケース52b内に保持体52aを備えない構成としてもよい。また例えば、添加弁50を備えず、ケース52b内の保持体52aに循環通路58を介して吸収液体Aが直接供給される構成としてもよい。この場合、鉛直上方からケース52b内に排気を流入させるべく、ケース52bの入口が鉛直上方に向くようにケース52bを排気通路38に接続し、ケース52bの入口に向かって鉛直上方から循環通路58を介して吸収液体Aを供給する構成とすることが望ましい。これにより、循環通路58を介して供給された吸収液体Aが保持体52aの水平方向に延びるように広がることで、保持体52aに吸収液体Aを適切に保持させることなどが期待できる。
【0109】
・上記各実施形態では、排気中のNOxを吸収させる役割と、吸収されたNOxを還元浄化装置54まで移動させる役割とを単一の浄化用液体(吸収液体A)に担わせたがこれに限らない。例えば、浄化用液体として、吸収液体Aに加えて、吸収液体と異種の液体であって且つNOxを吸収する貯蔵液体を採用し、排気中のNOxを吸収させる役割を吸収液体Aに担わせ、吸収されたNOxを還元浄化装置54まで移動させる役割を貯蔵液体に担わせる構成を採用してもよい。この構成は、例えば、吸収液体Aの耐電性が低い場合であっても、還元浄化処理に供される貯蔵液体として吸収液体Aよりも耐電性の高い物質を採用してNOxを還元浄化できるという点で有効な構成である。
【0110】
なお、上記構成について詳述すると、貯蔵手段(タンク46)内を、吸収液体を貯蔵する吸収液体貯蔵部(第1貯蔵手段)と、貯蔵液体を貯蔵する貯蔵液体貯蔵部(第2貯蔵手段)とに仕切る透過膜を備える。ここで透過膜は、例えば有機高分子からなり、透過膜には、その厚み方向に貫通される多数の細孔が形成されている。これら細孔の直径は、吸収液体Aに吸収されたNOxの大きさ(例えば0.22nm)よりも大きくて且つ、吸収液体A及び貯蔵液体の分子の大きさよりも小さいもの(例えば0.3nm)となっている。すなわち、透過膜は、吸収液体Aに吸収されたNOxを貯蔵液体側へと選択的に透過させる機能を有する。なお、還元浄化装置54は、貯蔵液体に還元浄化処理を施すべく、貯蔵液体に電圧を印加するために設けられる。
【0111】
こうした構成におけるNOxの還元浄化手法について説明すると、まず、貯蔵液体中のNOxが還元浄化装置54によって還元浄化されることで、貯蔵液体中のNOxの濃度が低下する。そして、吸収液体Aと貯蔵液体との濃度差が大きくなり、吸収液体A中のNOxが透過膜を介して貯蔵液体側へと透過することで、貯蔵液体中にNOxが拡散する。これにより、吸収液体A及び貯蔵液体のNOxの濃度について平衡状態となり、これら液体中のNOxの濃度が略同一となる。すなわち、吸収液体AのNOxの濃度を低下させることが可能となる。
【0112】
・排気通路38に設けられる添加弁50としては、1つに限らず、例えば複数であってもよい。
【0113】
・エンジン12としては、圧縮点火式エンジンに限らず、例えば筒内直噴式の火花点火式エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
10…モータジェネレータ、12…エンジン、14…バッテリ、38…排気通路、44…NOx除去装置(内燃機関の排気浄化装置の一実施形態)、46…タンク、50…添加弁、54…還元浄化装置、56…挙動検出センサ、A…吸収液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載内燃機関から排気通路へと排出される排気中の窒素酸化物を吸収する浄化用液体を貯蔵する貯蔵手段と、
前記貯蔵された浄化用液体中の窒素酸化物の濃度を低下させるべく、前記浄化用液体に電圧を印加するための対となる電極間に通電する処理である還元浄化処理を行う還元浄化手段と、
前記貯蔵手段に貯蔵された前記浄化用液体の挙動が安定したか否かを判断する安定判断手段と、
前記安定判断手段によって前記浄化用液体の挙動が安定したと判断された場合、前記還元浄化処理を実行させる実行手段とを備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記安定判断手段は、当該排気浄化装置が搭載される車両が停止してから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、車載主機となるものであり、
前記安定判断手段は、前記内燃機関のアイドリング運転が開始されてから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、車載主機となるものであり、
前記安定判断手段は、前記内燃機関が停止されてから所定時間経過したと判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする請求項2又は3記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記車両には、車載主機として、前記内燃機関とともに、車載蓄電池を電力供給源として駆動される回転機が備えられ、
前記蓄電池は、外部電源から供給される電力によって充電可能なものであり、
前記安定判断手段は、前記外部電源から供給される電力によって前記蓄電池が充電されていると判断された場合、前記浄化用液体の挙動が安定したと判断することを特徴とする請求項4記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記実行手段は、前記対となる電極間に電圧を印加するための電気エネルギを前記外部電源の電力で賄うことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記貯蔵手段に貯蔵される浄化用液体の挙動を検出する挙動検出手段を更に備え、
前記安定判断手段は、前記挙動検出手段の検出値に基づき、前記浄化用液体の挙動が安定したか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記浄化用液体による窒素酸化物の吸収量又は該浄化用液体中の窒素酸化物の濃度が所定以上になると判断された場合、前記還元浄化処理を強制的に実行させる強制手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159040(P2012−159040A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19407(P2011−19407)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】