説明

内燃機関の潤滑油制御装置

【課題】内燃機関の潤滑油制御装置において、内燃機関が冷間始動した場合に、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めると共に、燃費を向上する技術を提供する。
【解決手段】内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時は、オイルヒータ7を、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプ5を、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高流量となるよう駆動して潤滑油を循環させ、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時は、オイルヒータ7を、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時よりも低出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプ5を、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の潤滑油制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油温を検知する油温センサと、潤滑油を加熱するオイルヒータと、を備え、油温センサにより検知された油温が一定温度以下である場合には、オイルヒータで潤滑油を加熱する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、近年では、車両にアイドルストップ制御が搭載されたものが知られている。車両のアイドルストップ制御とは、車両が停止した場合等の規定の停止条件下で内燃機関を自動的に停止させる。一方、アイドルストップ中にアクセルペダルの踏み込み操作があった場合等の規定の始動条件下で内燃機関を自動的に再始動させる。このようなアイドルストップ制御を搭載した車両において、アイドルストップ中に電動オイルポンプを駆動させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
そして出願人は、アイドルストップ中でも、電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータで潤滑油を加熱する技術を出願している(特願2009−175527参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−131732号公報
【特許文献2】特開2004−232587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アイドルストップ中に、電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータで潤滑油を加熱すると、潤滑油が過剰に加熱されてしまう場合がある。潤滑油が過剰に加熱されてしまうと、スラッジやデポジットが発生する可能性があり、最悪の場合には潤滑油が炭化する可能性もあり、潤滑油の劣化が問題となる。このため、潤滑油が過剰に加熱されるおそれがある場合には、オイルヒータの出力を制限しなければならない。オイルヒータの出力を制限すると、潤滑油が過剰に加熱されることを回避できるが、その背反として、内燃機関が冷間始動した場合に潤滑油の昇温が遅れ、内燃機関の各潤滑部におけるフリクションが多い状態が継続してしまい、燃費が悪化してしまう。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、本発明の目的は、内燃機関の潤滑油制御装置において、内燃機関が冷間始動した場合に、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めると共に、燃費を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関を自動的に停止させると共に前記内燃機関を自動的に再始動させる制御を行う自動制御手段と、
油貯留部の潤滑油を前記内燃機関の各潤滑部へ供給し、当該各潤滑部から潤滑油を前記油貯留部へ回収する潤滑油路と、
前記潤滑油路の途中に設けられ、潤滑油を温めるオイルヒータと、
前記潤滑油路の途中に設けられ、前記油貯留部の潤滑油を汲み上げて潤滑油を前記潤滑油路内で循環させる電動オイルポンプと、
前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記オイルヒータを、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時よりも高出力にして潤滑油を温めると共に、前記電動オイルポンプを、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時よりも高流量となるよう駆動して潤滑油を循環させ、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時は、前記オイルヒータを、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時よりも低出力にして潤滑油を温めると共に、前記電動オイルポンプを、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる潤滑油制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑油制御装置である。
【0007】
一般に、オイルヒータの特性は、同じ出力であれば、潤滑油の流量が低流量である程、油温上昇の程度が高く(また油圧も低く)、内燃機関の各潤滑部のフリクションを低減できる。一方で、潤滑油の流量が低流量である場合には、オイルヒータ内で潤滑油が局所的に過剰に加熱されて劣化(発火)する。このため、潤滑油の流量が低流量である場合には、オイルヒータの出力に制限がかかり、潤滑油を温めることが遅れる問題がある。
【0008】
このような関係に鑑みて、本発明では、一方で、内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時は、オイルヒータを、内燃機関の冷間始動中における内燃機関の作動時よりも高出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプを、内燃機関の冷間始動中における内燃機関の作動時よりも高流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。
また、本発明では、他方で、内燃機関の冷間始動中における内燃機関の作動時は、オイルヒータを、内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時よりも低出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプを、内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。
【0009】
本発明によると、内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時は、内燃機関が停止しており、内燃機関の各潤滑部でのフリクションが無いので、電動オイルポンプを高流量となるよう駆動してオイルヒータ内で潤滑油が局所的に過剰に加熱されることを回避しつつオイルヒータを高出力にして潤滑油を温めることができる。よって、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めることができる。したがって、内燃機関が冷間始動した場合に潤滑油の昇温が促進でき、内燃機関の各潤滑部におけるフリクションは少なくなるので、燃費を向上することができる。
また本発明によると、内燃機関の冷間始動中における内燃機関の作動時は、電動オイルポンプを低流量となるよう駆動し、オイルヒータが低出力であっても、オイルヒータで温められた潤滑油の油温上昇の程度を高くする。これにより、内燃機関の各潤滑部へ供給される潤滑油の粘度が下がるため、各潤滑部でのフリクションを低減できる。また同時に、電動オイルポンプは低流量となるよう駆動されていることから、内燃機関を低油圧化できるため、内燃機関の各潤滑部でのフリクションをさらに低減できる。よって、内燃機関の冷間始動中の燃費を向上することができる。
【0010】
潤滑油の温度を検出する油温検出手段をさらに備え、前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記オイルヒータの出力を一定にした状態で、前記電動オイルポンプの流量を、前記油温検出手段が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御するとよい。
内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時には、内燃機関が停止しているので、電動オイルポンプの流量を急激に変化させても、内燃機関の油圧が急激に変化することはなく内燃機関のトルク変化は生じない。このため、オイル
ヒータの出力を一定にした状態で、電動オイルポンプの流量を潤滑油の温度を用いてフィードバック制御する。これにより、潤滑油の温度を低下させるために、電動オイルポンプを高流量に急激に駆動することも許容でき、応答性の良いフィードバック制御ができる。またこのとき、オイルヒータの出力を一定にした状態であり、オイルヒータの出力を落とさなくてよいので、早期に潤滑油を温めることができる。
【0011】
潤滑油の温度を検出する油温検出手段をさらに備え、前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時は、前記電動オイルポンプの流量を油圧に応じて制御しつつ、前記オイルヒータの出力を、前記油温検出手段が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御するとよい。
内燃機関の冷間始動中における内燃機関の作動時には、内燃機関が作動しているので、電動オイルポンプの流量を急激に変化させると、内燃機関の油圧が急激に変化して内燃機関のトルク変化が生じてしまう。このため、電動オイルポンプの流量を油圧に応じて制御しつつ、オイルヒータの出力を潤滑油の油温を用いてフィードバック制御する。これにより、電動オイルポンプの流量を急激に変化させなくし、内燃機関の油圧が急激に変化することをなくし内燃機関のトルク変化を防止することができる。
【0012】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、をさらに備え、前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すとよい。
本発明によると、内燃機関の冷間始動中における自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた時には、潤滑油はバイパス油路を流れ、内燃機関の各潤滑部には至らない。よって、バイパス油路を流れる温められた潤滑油は、内燃機関の各潤滑部で放熱しなくなるので、早期に潤滑油を温めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、内燃機関が冷間始動した場合に、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めることができると共に、燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る内燃機関の潤滑油制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る潤滑油流量と温度上昇程度と投入可能ヒータ出力との関係を示す図である。
【図3】実施例1に係る潤滑油制御の概要を示す図である。
【図4】実施例1に係る潤滑油制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係る潤滑油制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】他の実施例に係る内燃機関の潤滑油制御装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0016】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る内燃機関の潤滑油制御装置の概略構成を示している。図1に示す内燃機関1は、車両に搭載された4つの気筒を有する水冷式の4ストロークサイクル・ガソリンエンジンである。なお、本実施例ではガソリンエンジンを例に挙げて説明するが、他の周知のエンジン(例えばディーゼルエンジン)であっても同様に適用することができる。
【0017】
内燃機関1には、最下部に潤滑油を溜めておく油貯留部としてのオイルパン2が設けられている。油貯留部としては、オイルパンの他オイルタンク等でもよい。潤滑油路3は、オイルパン2の潤滑油を内燃機関1の各潤滑部4へ供給し、当該各潤滑部4から潤滑油をオイルパン2へ回収する。なお、各潤滑部4とは、内燃機関1における潤滑油が供給されて潤滑される部位であり、例えばクランクシャフト 、シリンダ壁、動弁機構等の内燃機
関1内の各部位である。また、潤滑油路3の図1に示す矢印は、潤滑油の流れる向きを示している。
【0018】
潤滑油路3の途中には、各潤滑部4よりも上流側に、電動オイルポンプ5が配置されている。電動オイルポンプ5は、バッテリ6から電力が供給されることにより作動し、オイルパン2の潤滑油を汲み上げて潤滑油を潤滑油路内で循環させる。
【0019】
潤滑油路3の途中には、電動オイルポンプ5よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側に、オイルヒータ7が配置されている。オイルヒータ7は、バッテリ6から電力が供給されることにより発熱し潤滑油を温める電気加熱式のヒータである。
【0020】
潤滑油路3の途中においてオイルヒータ7よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側で潤滑油路3から分岐し、オイルパン2へ至るバイパス油路8が設けられている。潤滑油がバイパス油路8を流れると、潤滑油は各潤滑部4には供給されずにオイルパン2へ直接回収される。バイパス油路8は、電動オイルポンプ5及びオイルヒータ7よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側の潤滑油路3から分岐するものであればよい。バイパス油路8の図1に示す矢印は、潤滑油の流れる向きを示している。
【0021】
バイパス油路8の途中には、バイパス油路8へ潤滑油を流す油路切替手段としての油路切替弁9が配置されている。油路切替弁9が開弁されると、バイパス油路8へ潤滑油を流し、潤滑油は各潤滑部4には供給されなくなる。油路切替弁9が閉弁されると、潤滑油はバイパス油路8を流れない。なお、油路切替手段としては、開閉弁の他に、油路を切り替える切替弁や、バイパス油路8を開閉可能な機構等種々の機構を用いることができる。
【0022】
バイパス油路8との分岐位置よりも上流側の潤滑油路3の途中には、潤滑油の温度を検知する油温センサ10が配置されている。油温センサ10により潤滑油路3内の潤滑油の温度が検知できる。油温センサ10が、本発明の油温検出手段に対応する。
【0023】
以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU11が併設されている。ECU11には、油温センサ10等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU11に入力される。また、ECU11には電動オイルポンプ5、オイルヒータ7及び油路切替弁9が電気配線を介して接続され、これらの機器をECU11が制御する。
【0024】
また、ECU11は、車両が停止した場合等の規定の停止条件が成立すると運転者の意思によらず内燃機関1を自動的に停止させる。一方、ECU11は、内燃機関1を自動的に停止させた最中にアクセルペダルの踏み込み操作があった場合等の規定の始動条件が成立すると運転者の意思によらず内燃機関1を自動的に再始動させる。このような制御をアイドルストップ制御といい、内燃機関1を自動的に停止させた状態をアイドルストップという。アイドルストップ制御を行うECU11が、本発明の自動制御手段に対応する。
【0025】
なお、ハイブリッド車両でも、アイドルストップ制御と同様な自動制御が適用される。ハイブリッド車両の場合には、モータで走行する低速域では運転者の意思によらず内燃機関1が自動的に停止され、中高速域に移行したときに運転者の意思によらず内燃機関1が自動的に再始動される。この場合、電動オイルポンプ5及びオイルヒータ7に供給される
電力は、バッテリ6だけでなくモータジェネレータが発電する電力でもよい。このハイブリッド車両の場合の自動制御もアイドルストップ制御に包含される制御として以下扱う。
【0026】
このような車両を用い、アイドルストップ制御によるアイドルストップ中に、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を加熱することが考えられている。しかしながら、アイドルストップ中に、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を加熱すると、潤滑油が過剰に加熱されてしまう場合がある。潤滑油が過剰に加熱されてしまうと、スラッジやデポジットが発生する可能性があり、最悪の場合には潤滑油が炭化する可能性もあり、潤滑油の劣化が問題となる。このため、潤滑油が過剰に加熱されるおそれがある場合には、オイルヒータ7の出力を制限しなければならない。オイルヒータ7の出力を制限すると、潤滑油が過剰に加熱されることを回避できるが、その背反として、内燃機関1が冷間始動した場合に潤滑油の昇温が遅れ、内燃機関1の各潤滑部におけるフリクションが多い状態が継続してしまい、燃費が悪化してしまう。
【0027】
そこで、本実施例では、図2に示すように、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ制御により内燃機関1を自動的に停止させたアイドルストップ時は、オイルヒータ7を、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプ5を、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。
また、本実施例では、図2に示すように、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時は、オイルヒータ7を、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時よりも低出力にして潤滑油を温めると共に、電動オイルポンプ5を、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。
なお、図2は、潤滑油の流量と、温度上昇の程度と、投入可能なオイルヒータの出力との関係を示した図である。
【0028】
本実施例によると、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時は、内燃機関1が停止しており、内燃機関1の各潤滑部でのフリクションが無いので、電動オイルポンプ5を高流量となるよう駆動してオイルヒータ7内で潤滑油が局所的に過剰に加熱されることを回避しつつオイルヒータ7を高出力にして潤滑油を温めることができる。よって、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めることができる。したがって、内燃機関1が冷間始動した場合に潤滑油の昇温が促進でき、内燃機関1の各潤滑部4におけるフリクションは少なくなるので、燃費を向上することができる。
また本実施例によると、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時は、電動オイルポンプ5を低流量となるよう駆動し、オイルヒータ7が低出力であっても、オイルヒータ7で温められた潤滑油の油温上昇の程度を高くする。これにより、内燃機関1の各潤滑部4へ供給される潤滑油の粘度が下がるため、各潤滑部4でのフリクションを低減できる。また同時に、電動オイルポンプ5は低流量となるよう駆動されていることから、内燃機関1を低油圧化できるため、内燃機関1の各潤滑部4でのフリクションをさらに低減できる。よって、内燃機関1の冷間始動中における燃費を向上することができる。
【0029】
そして本実施例では、図3に示すように、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時は、オイルヒータ7の出力を一定の最大にした状態で、電動オイルポンプ5の流量を、油温センサ10が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御する。
図3は、本実施例に係る潤滑油制御の概要を示す図である。
内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時には、内燃機関1が停止しているので、電動オイルポンプ5の流量を急激に変化させても、内燃機関1の油圧が急激に変化することはなく内燃機関1のトルク変化は生じない。このため、オイルヒータ7の出力を最大(100%)にした状態で、電動オイルポンプ5の流量を潤滑油の温度を用いてフィ
ードバック制御する。これにより、潤滑油の温度を低下させるために、電動オイルポンプ5を高流量に急激に駆動することも許容でき、応答性の良いフィードバック制御ができる。またこのとき、オイルヒータ7の出力を最大にした状態であり、オイルヒータ7の出力を落とさなくてよいので、早期に潤滑油を温めることができる。
【0030】
また本実施例では、図3に示すように、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時は、電動オイルポンプ5の流量を油圧に応じて制御しつつ、オイルヒータ7の出力を、油温センサ10が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御する。
内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時には、内燃機関1が作動しているので、電動オイルポンプ5の流量を急激に変化させると、内燃機関1の油圧が急激に変化して内燃機関1のトルク変化が生じてしまう。このため、電動オイルポンプ5の流量を油圧に応じて制御しつつ、オイルヒータ7の出力を潤滑油の油温を用いてフィードバック制御する。これにより、電動オイルポンプ5の流量を急激に変化させなくし、内燃機関1の油圧が急激に変化することをなくし内燃機関1のトルク変化を防止することができる。
【0031】
さらに本実施例では、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時は、油路切替弁9で潤滑油をバイパス油路8へ流す。
本実施例によると、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時には、潤滑油はバイパス油路8を流れ、内燃機関1の各潤滑部4には至らない。よって、バイパス油路8を流れる温められた潤滑油は、内燃機関1の各潤滑部4で放熱しなくなるので、早期に潤滑油を温めることができる。
【0032】
次に、本実施例に係る潤滑油制御について説明する。図4、図5は、本実施例に係る潤滑油制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返し実行される。本ルーチンを実行するECU11が本発明の潤滑油制御手段に相当する。
図4に示す潤滑油制御ルーチンにおいて、ステップS101では、内燃機関1の冷間始動中か否かを判別する。なお、内燃機関1の冷間始動中とは、内燃機関1がアイドルストップ制御ではなく停止されていた状態から冷間始動し、内燃機関1の潤滑油が内燃機関1の通常運転に用いる程度に温められて内燃機関1の暖機が完了するまでの期間をいう。ステップS101において肯定判定された場合には、ステップS102へ移行する。ステップS101において否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
ステップS102では、オイルヒータ7を駆動して潤滑油を温める。また、電動オイルポンプ5を潤滑油の流量が高流量となるよう駆動する。
ステップS103では、内燃機関1がアイドルストップ制御によってアイドルストップ中か否かを判別する。ステップS103において否定判定された場合には、ステップS104へ移行する。ステップS103において肯定判定された場合には、Aから図5に示すステップS111へ移行する。
ステップS104では、電動オイルポンプ5の流量を、内燃機関1で要求される油圧に応じて制御する。このとき、電動オイルポンプ5は、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる。
ステップS105では、油温センサ10で潤滑油の温度を検出する。
ステップS106では、ステップS105で検出した潤滑油の温度が、所定温度以下であるか否かを判別する。所定温度とは、潤滑油の温度がそれ以下の温度であると、オイルヒータ7の出力を上昇させて潤滑油をさらに加熱する必要のある温度であり、オイルヒータ7の出力を上昇させるか低下させるかの閾値となる温度である。ステップS106において肯定判定された場合には、ステップS107へ移行する。ステップS106において否定判定された場合には、ステップS108へ移行する。
ステップS107では、オイルヒータ7の出力を上昇させる。本ステップの処理の後、ステップS109へ移行する。
ステップS108では、オイルヒータ7の出力を低下させる。本ステップの処理の後、
ステップS109へ移行する。
ステップS109では、本ルーチンが実行されて一定時間経過したか否かを判別する。ステップS109において肯定判定された場合には、ステップS110へ移行する。ステップS109において否定判定された場合には、ステップS105へ移行する。
このように、オイルヒータ7の出力を潤滑油の油温を用いてフィードバック制御する。このとき、オイルヒータ7の出力は可変であるので、オイルヒータ7は、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時の最大出力よりも低出力にして潤滑油を温めている。
ステップS110では、オイルヒータ7を停止する。また、電動オイルポンプ5の流量を増加させる。この処理は、潤滑油が過剰に加熱されることを回避する、いわゆる退避モードの処理である。本ステップの処理の後、本ルーチンを一旦終了する。
一方、アイドルストップ中である図5に示すステップS111では、油路切替弁9を開弁する。これにより、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時には、潤滑油はバイパス油路8を流れ、内燃機関1の各潤滑部4には至らなくなる。
ステップS112では、オイルヒータ7の出力を、一定の最大出力(100%)にする。このため、オイルヒータ7は、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高出力にして潤滑油を温める。
ステップS113では、油温センサ10で潤滑油の温度を検出する。
ステップS114では、ステップS113で検出した潤滑油の温度が、所定温度以下であるか否かを判別する。所定温度とは、ステップS106と同じものであり、潤滑油の温度がそれ以下の温度であると、電動オイルポンプ5の流量を現状に維持させて潤滑油をさらに加熱する必要のある温度であり、電動オイルポンプ5の流量を維持させるか増加させるかの閾値となる温度である。なお、本ステップの所定温度を、ステップS106での所定温度とは異なる温度に変更しても良い。ステップS114において肯定判定された場合には、ステップS116へ移行する。ステップS114において否定判定された場合には、ステップS115へ移行する。
ステップS115では、電動オイルポンプ5の流量を増加させる。本ステップの処理の後、ステップS116へ移行する。
ステップS116では、本ルーチンが実行されて一定時間経過したか否かを判別する。ステップS116において肯定判定された場合には、ステップS117へ移行する。ステップS116において否定判定された場合には、ステップS113へ移行する。
このように、電動オイルポンプ5の流量を潤滑油の油温を用いてフィードバック制御する。このとき、電動オイルポンプ5の流量は初めから高流量であるので、電動オイルポンプ5は、内燃機関1の冷間始動中における内燃機関1の作動時よりも高流量となるよう駆動されて潤滑油を循環させている。
ステップS117では、油路切替弁9を閉弁させる。これにより、潤滑油はバイパス油路8を流れなくなり、内燃機関1の各潤滑部4に至る。
ステップS118では、オイルヒータ7の出力を低下させる。また、電動オイルポンプ5の流量を最大流量へ増加させる。この処理(及びステップS117の処理も含む)は、潤滑油が過剰に加熱されることを回避する、いわゆる退避モードの処理である。本ステップの処理の後、本ルーチンを一旦終了する。
【0033】
以上説明した本ルーチンによれば、内燃機関1が冷間始動した場合に、潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ早期に潤滑油を温めることができると共に、燃費を向上することができる。
【0034】
なお、本実施例では、内燃機関1の冷間始動中におけるアイドルストップ時は、油路切替弁9で潤滑油をバイパス油路8へ流すようにしていた。しかしこれに限られない。例えば、図6に示すように、バイパス油路8と油路切替弁9が無い構成の潤滑油制御装置に本発明を適用しても良い。この場合には、潤滑油制御ルーチンとしては、図5に示すステッ
プS111、S117の処理が無くなるだけである。
【0035】
本発明に係る内燃機関の潤滑油制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:内燃機関、2:オイルパン、3:潤滑油路、4:各潤滑部、5:電動オイルポンプ、6:バッテリ、7:オイルヒータ、8:バイパス油路、9:油路切替弁、10:油温センサ、11:ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を自動的に停止させると共に前記内燃機関を自動的に再始動させる制御を行う自動制御手段と、
油貯留部の潤滑油を前記内燃機関の各潤滑部へ供給し、当該各潤滑部から潤滑油を前記油貯留部へ回収する潤滑油路と、
前記潤滑油路の途中に設けられ、潤滑油を温めるオイルヒータと、
前記潤滑油路の途中に設けられ、前記油貯留部の潤滑油を汲み上げて潤滑油を前記潤滑油路内で循環させる電動オイルポンプと、
前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記オイルヒータを、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時よりも高出力にして潤滑油を温めると共に、前記電動オイルポンプを、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時よりも高流量となるよう駆動して潤滑油を循環させ、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時は、前記オイルヒータを、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時よりも低出力にして潤滑油を温めると共に、前記電動オイルポンプを、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時よりも低流量となるよう駆動して潤滑油を循環させる潤滑油制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項2】
潤滑油の温度を検出する油温検出手段をさらに備え、
前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記オイルヒータの出力を一定にした状態で、前記電動オイルポンプの流量を、前記油温検出手段が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項3】
潤滑油の温度を検出する油温検出手段をさらに備え、
前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記内燃機関の作動時は、前記電動オイルポンプの流量を油圧に応じて制御しつつ、前記オイルヒータの出力を、前記油温検出手段が検出する潤滑油の温度を用いてフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項4】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、
前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、
をさらに備え、
前記潤滑油制御手段は、前記内燃機関の冷間始動中における前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた時は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163305(P2011−163305A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29984(P2010−29984)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】