説明

内燃機関の診断装置および制御装置

【課題】
リニア空燃比センサの応答劣化とゲイン劣化を分離して検出する内燃機関の診断装置を開示し、かつセンサ異常時の排気悪化や誤診断を防止すること。
【解決手段】
内燃機関の触媒上流に設置され、排気の空燃比をリニアに検知するリニア空燃比センサの異常を判定する内燃機関の診断装置において、前記リニア空燃比センサの応答が遅くなる応答劣化と前記リニア空燃比センサの検出感度の異常であるゲイン劣化とを分離して検出する応答劣化・ゲイン劣化検出手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気空燃比を検知するリニア空燃比センサの異常を検出する内燃機関の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気管に触媒を設置し、前記触媒の上流および下流に排気成分を検出する空燃比センサを取り付け、前記空燃比センサの値に基づいて燃料量を補正し、触媒で排気を効率良く浄化する排気系がある。そしてこの排気系の性能は前記触媒の浄化性能や前記空燃比センサの性能に依存するため、これらの性能をモニタする診断装置が備えられている。
【0003】
ここで前記触媒上流の空燃比センサを診断する方法の一例として、空燃比を強制的に加振した際の上流空燃比センサ出力の応答時間をモニタする方法(例えば特許文献1)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−220051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空燃比センサでは触媒の浄化効率が最も良い三元点(ストイキ)よりも濃い(リッチ)か薄い(リーン)しか分からなかった。一方、リニア空燃比センサではストイキからどの程度リッチあるいはリーンであるかが検出でき、より精密な空燃比フィードバック制御を実現することができる。ここで、リニア空燃比センサの主な劣化モードを2つあげる。一つ目の応答劣化は、センサの目詰まり等が原因で正常時よりも応答が遅れる故障である。二つ目のゲイン劣化は、センサ素子の被毒や電流検知回路の異常が原因で正常時よりも応答が小さくなったり、逆に大きくなったりする故障である。これら応答劣化やゲイン劣化は、触媒診断での誤判定や空燃比フィードバック制御の異常による排気悪化を引き起こす要因となる。
【0006】
しかし、上記発明は上流空燃比センサの応答遅れの異常(応答劣化)のみを検出する診断方法であり、特に排気空燃比をリニアに検知するリニア空燃比センサにおける検出感度の異常(ゲイン劣化)に対しては十分な考慮をなされていない。
【0007】
本発明はこのような事情を鑑みなされたもので、その目的はリニア空燃比センサの応答劣化とゲイン劣化を分離して検出する内燃機関の診断装置を開示し、かつセンサ異常時の排気悪化や誤診断を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、リニア空燃比センサの応答異常である応答劣化と検出感度の異常であるゲイン劣化とを分離して検出する応答劣化・ゲイン劣化検出手段を備え、リニア空燃比センサの診断中は通常の空燃比制御よりも低い(周波数1Hz以下)空燃比変動を与える診断用信号生成手段を備える。
【0009】
さらに、本発明は、前記診断用信号生成手段による空燃比変動を、触媒診断にも用いている。
【0010】
さらに、本発明は、リニア空燃比センサのゲイン劣化を運転に警告する異常警告手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明を実施することにより、リニア空燃比センサの故障による排気悪化および誤診断を防止できる。さらに、本発明を実施することにより、リニア空燃比センサの故障による排気悪化や触媒診断の誤診断を防止できる。さらに、本発明を実施することにより、ゲイン劣化のみが発生した場合であっても運転者に異常を警告できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、筒内噴射内燃機関107の制御システムにおける全体構成図である。シリンダ107bに導入される吸入空気は、エアクリーナ102の入口部102aから取り入れられ、内燃機関の運転状態計測手段の一つである空気流量計(エアフロセンサ)103を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁105aが収容されたスロットルボディ105を通ってコレクタ106に入る。前記エアフロセンサ103からは、前記吸気流量を表す信号が内燃機関制御装置であるコントロールユニット115に出力されている。
【0014】
また、前記スロットルボディ105には、電制スロットル弁105aの開度を検出する内燃機関の運転状態計測手段の一つであるスロットルセンサ104が取り付けられており、その信号もコントロールユニット115に出力されるようになっている。
【0015】
前記コレクタ106に吸入された空気は、内燃機関107の各シリンダ107bに接続された各吸気管101に分配された後、前記シリンダ107bの燃焼室107cに導かれる。
【0016】
一方、ガソリン等の燃料は、燃料タンク108から燃料ポンプ109により一次加圧されて燃料圧力レギュレータ110により一定の圧力に調圧されるとともに、高圧燃料ポンプ111でより高い圧力に二次加圧されてコモンレールへ圧送される。
【0017】
前記高圧燃料は各シリンダ107bに設けられているインジェクタ112から燃焼室
107cに噴射される。該燃焼室107cに噴射された燃料は、点火コイル113で高電圧化された点火信号により点火プラグ114で着火される。
【0018】
また、排気弁のカムシャフトに取り付けられたカム角センサ116は、カムシャフトの位相を検出するための信号をコントロールユニット115に出力する。ここで、カム角センサは吸気弁側のカムシャフトの取り付けてもよい。また、内燃機関のクランクシャフトの回転と位相を検出するためにクランク角センサ117をクランクシャフト軸上に設け、その出力をコントロールユニット115に入力する。
【0019】
さらに、排気管119中の触媒120の上流に設けられた空燃比センサ118は、排気ガス中の酸素を検出し、その検出信号をコントロールユニット115に出力する。なおここでは筒内噴射内燃機関について説明したが、本発明ではこれに限らずインジェクタ112を吸気ポートに取り付けたポート噴射内燃機関についても適用できる。
【実施例1】
【0020】
図2から図9を用いて本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
図2は触媒上流のリニア空燃比センサ(LAFセンサ)の異常を検出する内燃機関の診断装置の概要を示す。吸気ポートにインジェクタ203を設ける。排気管207に途中に設置された触媒205の上流側にリニア空燃比センサ204を設ける。また、触媒205の下流側に空燃比センサ206を設ける。通常のA/F制御(空燃比を制御する制御モード時)では、周波数1Hzより大きく3Hz以下の周波数で燃料増減を行っている。ここで、A/F制御における周波数について説明する。図1中のコントロールユニット115は、エンジン内部の空燃比を所定の空燃比とするために、排気管内に設置されたリニア空燃比センサにより排気管内の空燃比を検出し、検出された空燃比に基づいて、インジェクタから供給される燃料量を調整する。このときのインジェクタから供給される燃料量増減の周波数がA/F制御における周波数である。
【0022】
本実施形態の診断装置は診断用信号生成手段B201により1Hz以下の微量な燃料増減を行っているとき(診断モード)の排気空燃比をリニア空燃比センサにより検出し、応答劣化・ゲイン劣化検出手段B202により応答劣化およびゲイン劣化を分離して検出する内燃機関の診断装置を示している。好ましくは、診断モードである低周波範囲は排気悪化,運転性を考慮し、0.3Hz以上であることが望ましい。
【0023】
次に本実施形態の診断原理を説明する。図3はリニア空燃比センサのゲイン特性および位相特性を示す。リニア空燃比センサに関して、それぞれAは正常時、A′は応答劣化時、A″はゲイン劣化時のゲイン特性を示し、また、それぞれBは正常時、B′は応答劣化時、B″はゲイン劣化時の位相特性を示している。つまり、応答劣化とはゲインが正常時よりも図の左(低周波数側)にシフトし(A→A′)、位相が正常よりも遅れる(B→
B′)現象のことである。一方、ゲイン劣化とはゲイン特性が正常時よりも下(低ゲイン側)にシフトする(A→A″)現象である。ゲイン劣化では位相が変化しない(BとB″)。ここで通常のA/F制御の周波数(1Hzより大きく3Hz以下)を用いて劣化検出を行うと、応答劣化とゲイン劣化の両方でゲインが変化するため正常と劣化の識別は可能であるが、応答劣化であるかゲイン劣化であるかの識別が非常に困難である(図3のa)。しかし、低周波数範囲c(例えば1Hz以下)ではゲイン劣化時のみゲインが低下し、応答劣化時のみ位相が遅れる。そこで、ゲイン劣化の検出ではゲイン範囲c′に着目し、応答劣化の検出では位相範囲c″に着目することで、応答劣化とゲイン劣化を容易に分離して検出できる。
【0024】
図4は図3の原理に基づいた劣化指標の一例を示す。図2に示した診断用信号生成手段により空燃比を低周波数範囲で周期的に振動させる。この場合、応答劣化では生成手段が与えようとした空燃比(目標空燃比)の周期よりもセンサが検出した空燃比(検出空燃比)の周期の方が位相遅れのために長くなる。一方、ゲイン劣化でゲインが低下する場合は、目標空燃比の振幅に対して検出空燃比の振幅がゲイン低下のために小さくなる。従って応答劣化指標として検出空燃比周期と目標空燃比周期の比(応答劣化指標=検出空燃比の周期/目標空燃比の周期)を用いる。また、ゲイン劣化指標として検出空燃比振幅のピークと目標空燃比振幅のピークの比(ゲイン劣化指標=検出空燃比振幅のピーク/目標空燃比振幅のピ−ク)を用いる。これら2つの指標を用いることにより、応答劣化とゲイン劣化をそれぞれの劣化度合いに応じて容易に分離して診断できる。
【0025】
次に図5,図6を用いて従来の空燃比センサ(O2 センサ)診断と本実施形態のリニア空燃比センサ診断の比較を行う。従来の空燃比センサ診断ではO2 センサを診断対象としていたため、劣化検出対象は応答劣化のみであった。例えば、図5に示すように、横軸を図2に記載の診断用生成信号B201のよって生成される排気空燃比(入力信号)の周波数とし、縦軸を排気管に設置されたセンサが実際に検出するセンサ検出周期(周期)とする。横軸である診断用生成信号B201によって生成される排気空燃比(入力信号)の周波数に対して、縦軸の排気管に設置されたセンサが実際に検出するセンサ検出周期(周期)がある所定値以上であればセンサの応答劣化であると判断する。しかし、従来の方法ではゲイン劣化の検出は正常時と周期がかわらず困難であった。また一方で従来の方法でもゲイン特性から劣化を検出する方法もあり、例えば制御周波数(1Hzより大きく3Hz以下)におけるゲイン特性の低下から劣化を検出する方法がある。しかし、この方法では、図6に示すように、センサが正常であるにもかかわらずゲイン劣化であると判定してしまう可能性がある。bは、わずかな応答劣化が生じているが、センサとしては正常の範囲内である。aは応答劣化は全く生じていないが、ゲイン劣化が顕著に生じており、センサとしては異常の範囲である。従って、ゲイン劣化のみであるaとセンサが正常であるbとの交点Dがある範囲では、正しくゲイン劣化を検出できない。このようなゲイン劣化を検出するためには低周波数(1Hz以下)の入力信号が必要であり、本実施形態では低周波数応答のゲイン特性に着目することで従来の方法では検出できなかったゲイン劣化を検出することができるようになる。
【0026】
図7は本発明を実現するブロック図の一例である。図7のゲイン劣化判定においては
RABF(実空燃比)をB701でハイパスフィルタ(HPF)に通し、直流分やドリフト分を除去する。次にB702で絶対値に変換し、B703で最大値検索をして検出空燃比のピークを演算する。そしてB704の正規化処理で図4に示したゲイン劣化指標を演算し、B705で平均処理によりノイズ除去をして、B706でB705から出力された平均ゲイン劣化指標が所定範囲外にあるときにゲイン劣化と判定し、ゲイン劣化判定フラグを立てる。一方応答劣化判定ではB701のハイパスフィルタ出力をB707のゼロクロス検出でゼロクロス検出を行い、B708の周期演算でゼロクロス検出周期を演算し、B709の正規化処理で図4に示した応答劣化指標を演算し、B710で平均処理によりノイズ除去をしてB711でB710から出力された平均応答劣化指標が所定値よりも大きければ応答劣化と判定し、応答劣化判定フラグを立てる。
【0027】
図8は図7におけるタイムチャートの一例であり、フィルタ出力のゼロクロスを検出し、これをトリガとして最大値および周期を演算している様子を示す。この例では1周期で2回の劣化指標演算を実施できるため、より短い時間で劣化検出が可能である。
【0028】
図9は、実際に様々な車速で図7に示したブロック図によりリニア空燃比センサの劣化を検知したときの一例である。図9の上段は、ゲイン劣化または応答劣化がある時のゲイン劣化指標を示している。一方、下段はゲイン劣化または応答劣化がある時の応答劣化指標を示している。図9の左側図面の横軸であるゲイン劣化が100%である場合、リニア空燃比センサのゲイン劣化がないことを示し、右側図面の横軸である応答劣化が100ms程度の場合、リニア空燃比センサの応答劣化がないことを示している。この結果から仮にゲイン劣化判定の判定基準を0.7〜1.3とした場合50%以下あるいは150%以上のゲイン劣化をゲイン劣化として検出できる。同様に応答劣化判定の判定基準を1.3 とすると300ms以上の応答劣化を応答劣化として検出できる。ここで、応答劣化指標は応答劣化が大きくなるほど増加するがゲイン劣化に対しては感度がないこと、ゲイン劣化指標はゲイン劣化に応じて増減するが応答劣化に関して感度がないことが確認できる。
【0029】
次に図10において、センサ劣化と排気悪化の関係を示す一実験結果を示す。図10はリニア空燃比センサによる空燃比フィードバック制御中にリッチあるいはリーンのステップ外乱を与えた際の排気悪化代を示す。このとき、排気管に設置された触媒は正常である。左側の2つの図がゲイン劣化時、一方、右側の2つ図が応答劣化時の結果である。応答劣化はステップ外乱に対して感度がないのに対して、ゲイン劣化ではステップ外乱に対してHCが3倍、NOxが2倍悪化した。これはリニア空燃比センサによるフィードバック制御は偏差をもとに制御しており、ゲイン劣化により偏差が実際とは異なっているため排気が悪化したと考えられる。しかし、触媒は正常であるので、この排気悪化はセンサのゲイン劣化により引き起こされたものである。そこで、これらの劣化度合いに応じてセンサ出力を補正すればゲイン劣化による排気悪化を防止できる。
【0030】
次に、図11にセンサ補正によりゲイン劣化による排気悪化を防止するシステムの一例を示す。従来のシステムでは空燃比センサの出力を直接空燃比補正手段B1103に用いることで排気空燃比を補正しているが、図11のセンサ劣化検出手段B1101によりゲイン劣化度合いを検出し、センサ出力補正手段B1102により空燃比センサの出力をゲイン劣化度合いに応じて補正する。例えばゲイン劣化指標が正常値から半分になった場合、検出した空燃比の出力を倍にすれば正常時と同様な排気性能が実現できる。このようにゲイン劣化指標をもちいてセンサ出力を補正することで、ゲイン劣化が発生しても排気の悪化を防止するセンサ劣化に対してロバストなシステムを構築できる。また、センサ劣化検出手段B1101によって検出したゲイン劣化に基づいて、警告灯B1106を点灯させ、運転者へ異常を通知する。ここで、警告灯は例えば、トラブルコードの出力やミルの点灯させること等が含まれる。また、音声を用いて運転者に告知しても良い。これらにより、検出感度の異常であるゲイン劣化のみが発生している場合であっても、その劣化を運転者へ警告することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
次に図12から図14を用いて本発明の別の実施形態を説明する。
【0032】
図12は触媒診断方式の一例を示す。本方式は、リッチリーン反転手段(B1202)に基づいて診断用生成手段(B1203)によりインジェクタから噴射する燃料を増減させることでセンサの異常を分離して検出する手段を備えるとともに、このときの上流リニア空燃比センサおよび下流空燃比センサの出力から触媒劣化を検出する触媒劣化検出手段
(B1201)を備えるものである。なお触媒劣化検出手段(B1201)の触媒劣化指標としては、例えば上流下流センサの軌跡長の比,反転周期の比,反転回数の比,相関などを用いることができる。
【0033】
図13は図12に示した触媒診断方式においてセンサが劣化したときの触媒劣化指標を実験により求めた結果を示す。本実験では劣化指標として相関を用い、相関が大きいほど触媒が劣化していることを表す。これは、触媒が劣化すると触媒の酸素吸着能力の低下により下流空燃比センサ出力の振れが大きくなり、この振れと上流空燃比センサ出力の振れとの相関が大きくなることに基づいている。すべての実験において同じ正常触媒を用いた。ゲイン劣化に対しては触媒劣化指標(相関)の感度はないが、応答劣化では応答劣化度合いが大きくなるほど劣化指標(相関)が大きくなっている。そのため、正常触媒においても応答劣化によって触媒劣化と誤判定されてしまう場合がある。これは応答劣化によりリッチリーン反転の周期が長くなり、正常触媒の酸素吸着能力を超える長い周期で空燃比を制御したためである。このときも応答劣化度合いに応じてセンサ出力を補正することで誤診断を防止できる。
【0034】
図14にセンサの補正により触媒の誤判定を防止するシステムの一例を示す。図11と同様なものは説明を省略する。B1401のセンサ劣化検出手段により応答劣化指標を演算して応答劣化度合いを求め、B1402のセンサ出力補正手段によって応答劣化指標に応じてセンサ出力を補正する。例えば、正常なセンサに対して、応答が100ms遅れたならば、位相進み補償により100ms応答を進めればよい。このようにして補正したセンサ出力と下流空燃比センサの出力を用いてB1403の触媒劣化検出手段により触媒劣化指標を演算することにより応答劣化に対してロバストな触媒劣化が実現できる。
【0035】
なお図12に示した触媒診断方式において、B1203の診断用信号生成手段において1Hz以下の空燃比変動を生成すれば触媒診断だけでなくリニア空燃比センサの診断も実施できるため、診断時間の短縮および排気低減が実現できる。
【実施例3】
【0036】
次に図15を用いて本発明の別の実施形態について説明する。
【0037】
図15は燃料系の異常が検知されたときにLAFセンサ診断を禁止するフローチャートである。ステップS1501においては燃料系に異常がないかを判定する。ここでは例えば空燃比フィードバック補正係数が、所定時間の間、その上限あるいは下限値となること、またはアイドル時のアクセル開度フィードバック補正係数が、所定時間の間、その上限あるいは下限値となることによって燃料系の異常を判断すれば良い。ステップS1502において燃料系に異常があるか否かを判定し、異常がある場合はステップS1503に進みLAF診断禁止フラグを1にする。そしてステップS1504ではLAF診断禁止フラグが1であるか否かを判定し、LAF診断禁止フラグが1であればそのまま処理を終了する。LAF診断禁止フラグが1でなければステップS1505に進み、例えば実施例1で説明したようなLAFセンサ診断を実施する。本発明によれば燃料系異常のときにはLAFセンサ診断を禁止することにより燃料系異常によるLAFセンサ診断の誤診断を防止できる。
【0038】
また以上の説明においては図4に示すような周期的な信号をLAFセンサの診断に用いていたが、本発明は周期的信号だけではなく図16のようなステップ応答でも適用できる。すなわちオープンループで目標空燃比をステップ状に変化させたときの検出空燃比において、応答劣化指標を検出空燃比の時定数、ゲイン劣化指標をステップ変化後の目標空燃比と検出空燃比の平均としても応答劣化とゲイン劣化を分離して検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】筒内噴射内燃機関の全体構成図。
【図2】本実施形態における内燃機関の診断装置の概要。
【図3】本実施形態の原理を説明する図。
【図4】本実施形態における劣化指標の一例。
【図5】従来の診断方法の一例。
【図6】本実施形態の特徴を説明する図。
【図7】本実施形態を実現するブロック図の一例。
【図8】図7におけるタイムチャートの一例。
【図9】本実施形態による劣化検出の一例。
【図10】センサ劣化と排気悪化の関係を示す一実験結果。
【図11】ゲイン劣化に対してロバストな内燃機関の制御装置の概要。
【図12】触媒診断方式の概要。
【図13】センサ劣化と触媒診断の関係を示す一実験結果。
【図14】応答劣化に対してロバストな内燃機関の制御装置の概要。
【図15】燃料系異常のときLAFセンサ診断を禁止するフローチャートの一例。
【図16】本実施形態における劣化指標の別の一例。
【符号の説明】
【0040】
101…吸気管、102…エアクリーナ、103…エアフロセンサ、104…スロットルセンサ、105…スロットルボディ、106…コレクタ、107…筒内噴射内燃機関、109…燃料ポンプ、111…高圧燃料ポンプ、112…インジェクタ、113…点火コイル、114…点火プラグ、115…コントロールユニット、116…カム角センサ、
117…クランク角センサ、118…空燃比センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に設置され、排気の空燃比を検知するリニア空燃比センサを診断する内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサの応答劣化とゲイン劣化とを分離して検出する手段を備える内燃機関の診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の診断装置であって、
空燃比を制御する制御モードと前記リニア空燃比センサを診断する診断モードとを有し、前記診断モードは前記制御モードよりも低い周波数である空燃比変動を与える診断用信号生成手段を備える内燃機関の診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記診断用信号生成手段によるリニア空燃比センサを診断する診断モードの空燃比変動の周波数が0Hzより大きく1Hz以下である内燃機関の診断装置。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記診断用信号生成手段によるリニア空燃比センサを診断する診断モードの空燃比変動の周波数が0.3Hz 以上1Hz以下である内燃機関の診断装置。
【請求項5】
請求項2に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサの検出空燃比のピークと前記診断用信号生成手段により制御する空燃比変動のピークの比(ゲイン劣化指標)が所定範囲外のときにゲイン劣化と判定する内燃機関の診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記ゲイン劣化指標にもとづいて前記リニア空燃比センサのゲイン特性を補正する内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサの検出空燃比の周期と前記診断用信号生成手段により制御する空燃比変動の周期の比(応答劣化指標)が所定値より大きいときに応答劣化と判定する内燃機関の診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記応答劣化指標にもとづいて前記リニア空燃比センサの応答特性を補正する内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の内燃機関の診断装置であって、
内燃機関の燃料系の異常を検知した場合には前記リニア空燃比センサの診断を禁止する内燃機関の診断装置。
【請求項10】
内燃機関の排気通路に設置された触媒と、前記触媒上流に設置されたリニア空燃比センサと、前記触媒下流に設置された空燃比センサと、前記リニア空燃比センサと前記空燃比センサに基づいて前記触媒の劣化を検出する触媒劣化診断を有するとともに、前記リニア空燃比センサの診断をする診断モードは空燃比を制御する制御モードよりも低い周波数である前記リニア空燃比センサの劣化診断を有する内燃機関の診断装置であって、
前記触媒劣化診断と前記リニア空燃比センサの劣化診断の双方を行う内燃機関の診断装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記空燃比センサの劣化診断による前記リニア空燃比センサを診断する診断モードの空燃比変動の周波数が0Hzより大きく1Hz以下である内燃機関の診断装置。
【請求項12】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記空燃比センサの劣化診断による前記リニア空燃比センサを診断する診断モードの空燃比変動の周波数が0.3Hz 以上1Hz以下である内燃機関の診断装置。
【請求項13】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記触媒劣化診断と前記リニア空燃比センサの劣化診断の同時に行う内燃機関の診断装置。
【請求項14】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサの検出空燃比のピークと前記リニア空燃比センサの劣化診断により制御する空燃比変動のピークの比(ゲイン劣化指標)が所定範囲外のときにゲイン劣化と判定する内燃機関の診断装置。
【請求項15】
請求項14に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記ゲイン劣化指標にもとづいて前記リニア空燃比センサのゲイン特性を補正する内燃機関の制御装置。
【請求項16】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサの検出空燃比の周期と前記リニア空燃比センサの劣化診断により制御する空燃比変動の周期の比(応答劣化指標)が所定値より大きいときに応答劣化と判定する内燃機関の診断装置。
【請求項17】
請求項16に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記応答劣化指標にもとづいて前記リニア空燃比センサの応答特性を補正する内燃機関の制御装置。
【請求項18】
請求項10に記載の内燃機関の診断装置であって、
内燃機関の燃料系の異常を検知した場合には前記リニア空燃比センサの診断を禁止する内燃機関の診断装置。
【請求項19】
内燃機関の排気管に設置され、排気の空燃比を検知するリニア空燃比センサを備え、少なくとも該センサを含む内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比センサのゲイン劣化を表示または音声により告知する異常警告手段を備える内燃機関の診断装置。
【請求項20】
請求項19に記載の内燃機関の診断装置であって、
前記リニア空燃比の異常警告手段はトラブルコードの出力またはミルの点灯させることである内燃機関の診断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−233831(P2006−233831A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48166(P2005−48166)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】