説明

内燃機関用蓄圧システム

【課題】蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制することが可能な内燃機関用蓄圧システムを提供する。
【解決手段】機関本体3に設けられたウォータジャケット21とラジエータ22との間で冷却水を循環させるための冷却水循環経路を備えた内燃機関1に適用され、内部に設けられたガス貯留室32にガスを貯留し、そのガスを内燃機関1のタービン7bに供給可能な蓄圧タンク31を備え、ガス貯留室32内には、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な吸着材42が設けられている内燃機関用蓄圧システム30Aにおいて、蓄圧タンク31は、ガス貯留室32を覆うようにガス貯留室32の外側に設けられ、ウォータジャケット21を通過した後、かつラジエータ22に戻される前の冷却水が導入されるように冷却水循環経路と接続されている冷却水導入室36を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に設けられたガス貯留室にガスを貯留し、そのガスを内燃機関の所定の供給先に供給可能な蓄圧容器を備えた内燃機関用蓄圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機を備えた内燃機関に設けられるエネルギ回収装置において、排気通路と接続された蓄圧タンクに圧力が高められた排気を溜めてその蓄圧タンクに圧力エネルギを蓄え、過給圧を上昇させたり過給機の応答性を向上させる場合に蓄圧タンクに蓄えた圧力エネルギを過給機のタービンに供給するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−315194号公報
【特許文献2】特開2006−105026号公報
【特許文献3】特開2007−77906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知のように排気や空気などには水分が含まれている。そのため、特許文献1の装置のようにこのような水分を含むガスを加圧して貯留するとそのガスに含まれていた水分が液化して凝縮水となり蓄圧タンク(以下、蓄圧容器と称することがある。)内に溜まるおそれがある。この凝縮水は、蓄圧容器に貯留されているガスの温度が低下するほど発生し易くなる。そして、このように凝縮水が蓄圧容器内に溜まるとその分ガスを貯留するための容積が減少する。また、蓄圧容器内に活性炭などのガスを吸着可能な吸着材が設けられている場合は凝縮水が吸着材に吸着されるので、吸着材にて吸着可能なガス量が減少する。そのため、このように蓄圧容器内で凝縮水が発生すると蓄圧容器内に貯留することが可能なガス量が減少し、蓄圧容器に蓄えることが可能なエネルギ量が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制することが可能な内燃機関用蓄圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関用蓄圧システムは、機関本体に設けられたウォータジャケットとラジエータとの間で冷却水を循環させるための冷却水循環経路を備えた内燃機関に適用され、内部に設けられたガス貯留室にガスを貯留し、そのガスを前記内燃機関の所定の供給先に供給可能な蓄圧容器を備え、前記ガス貯留室内には、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な吸着材が設けられている内燃機関用蓄圧システムにおいて、前記蓄圧容器は、前記ガス貯留室を覆うように前記ガス貯留室の外側に設けられ、前記ウォータジャケットを通過した後、かつ前記ラジエータに戻される前の冷却水が導入されるように前記冷却水循環経路と接続されている冷却水導入室を備えている(請求項1)。
【0007】
周知のように内燃機関の冷却水は、排気や空気などのガスよりも熱容量が大きく温度が低下し難い。また、ウォータジャケットを通過した後かつラジエータに戻される前の冷却水は、機関本体にて加熱されているので温度が高い。本発明の内燃機関用蓄圧システムでは、このような温度の高い高温の冷却水をガス貯留室の外側に設けられた冷却水導入室に導入することができるので、この高温の冷却水で蓄圧容器を加熱したり保温したりすることできる。これにより蓄圧容器内の吸着材や貯留されているガスの温度が低下することを抑制できる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制することができる。そして、これにより蓄圧容器内に貯留可能なガス量の減少を抑制し、蓄圧容器に蓄えることが可能なエネルギ量の低下を抑制できる。
【0008】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧容器には、前記冷却水導入室が覆われるように断熱材が設けられていてもよい(請求項2)。この場合、断熱材によって蓄圧容器からの放熱を抑制することができるので、蓄圧容器の温度が低下することをさらに抑制することができる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生をさらに抑制することができる。
【0009】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧容器には、所定の放熱温度以下で熱を放出し、前記所定の放熱温度より高い所定の蓄熱温度以上で熱を蓄えることが可能な蓄熱材が前記冷却水導入室を覆うように設けられていてもよい(請求項3)。この場合、蓄圧容器の温度が放熱温度以下になると蓄熱材から熱が放出されるので、この熱で蓄圧容器を加熱することができる。そのため、吸着材や蓄圧容器に貯留されているガスの温度が低下することを抑制できる。従って、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生をさらに抑制することができる。
【0010】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧容器は、前記ガス貯留室の外側かつ前記冷却水導入室の内側に前記ガス貯留室及び前記冷却水導入室とは区分されるように設けられて前記内燃機関の排気が導入される排気導入室をさらに備えていてもよい(請求項4)。この場合、高温の冷却水に加えて排気によっても蓄圧容器を加熱したり保温したりすることができる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生をさらに抑制することができる。
【0011】
この形態においては、前記排気導入室に導入される排気の流量を変更する排気流量変更手段と、前記ガス貯留室内の温度が低いほど前記排気導入室に導入される排気の流量が増加するように前記排気流量変更手段を制御する排気流量制御手段と、をさらに備えていてもよい(請求項5)。このように排気導入室に導入される排気の流量を変更することにより、ガス貯留室内の吸着材やガスの温度が低下することをより確実に抑制できる。
【0012】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧容器には、前記ガス貯留室内を加熱可能なようにヒータ手段が設けられていてもよい(請求項6)。この場合、ヒータ手段によってもガス貯留室内を加熱することができる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生をさらに抑制することができる。
【0013】
この形態においては、前記ガス貯留室内の温度が予め設定した所定温度以下の場合に前記ヒータ手段が動作し、前記ガス貯留室内の温度が前記所定温度より高い場合には前記ヒータ手段が停止するように前記ヒータ手段を制御するヒータ制御手段と、をさらに備えていてもよい(請求項7)。また、前記所定温度として、前記ガス貯留室内のガスに含まれている水分が液化する温度が設定されていてもよい(請求項8)。このようにヒータ手段を制御することにより、蓄圧容器内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを確実に抑制することができる。
【0014】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記冷却水循環経路から前記冷却水導入室に導入される冷却水の流量を変更可能な冷却水制御弁手段と、前記内燃機関を停止させる所定の機関停止条件が成立した場合、まず前記冷却水導入室内が冷却水で満たされるように前記冷却水制御弁手段を開弁させ、その後前記冷却水導入室内に冷却水が留められるように前記冷却水制御弁手段を全閉にする制御手段と、をさらに備えていてもよい(請求項9)。この場合、内燃機関が停止している間は冷却水導入室に導入された冷却水でガス貯留室内の吸着材やガスを保温することができる。上述したように冷却水は排気などのガスと比較して温度が低下し難いので、このように冷却水を冷却水導入室に留めることによりガス貯留室内の吸着材やガスの温度低下を抑えることができる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを抑制できる。
【0015】
この形態において、前記制御手段は、前記内燃機関が運転されている場合、前記ガス貯留室内の温度が低いほど前記冷却水導入室に導入される冷却水の流量が増加するように前記冷却水制御弁手段を制御してもよい(請求項10)。このように冷却水導入室に導入される冷却水の流量を変更することにより、ガス貯留室内の吸着材やガスの温度が低下することをより確実に抑制できる。
【0016】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記ガス貯留室と前記所定の供給先とが接続される接続位置と前記ガス貯留室と前記所定の供給先との接続が遮断される遮断位置との間で切り替え可能なガス供給弁手段と、前記内燃機関を停止させる所定の機関停止条件が成立した場合、前記ガス貯留室内の圧力が大気圧になるように前記ガス供給弁手段を前記接続位置に切り替えるガス供給弁制御手段と、をさらに備えていてもよい(請求項11)。周知のように圧力が低いほどガス中の水分が液化し始める温度、いわゆる露点が下がる。そのため、このように内燃機関の停止時にガス貯留室内の圧力を大気圧まで低下させることにより、蓄圧容器内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを抑制できる。
【0017】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記ラジエータから前記ウォータジャケットに冷却水を導く冷却水通路と前記冷却水導入室とを接続する接続通路と、前記接続通路を全開する全開位置と前記接続通路を全閉する全閉位置との間で切り替え可能な切替弁手段と、前記内燃機関の始動時に前記切替弁手段が前記全開位置に切り替えられるように前記切替弁手段を制御する切替弁制御手段と、をさらに備えていてもよい(請求項12)。周知のようにラジエータでは冷却水の冷却が促進されるので、冷却水の温度が低下し易い。一方、蓄圧容器の冷却水導入室に溜められていた冷却水は蓄圧容器の保温用に使用されるため、ラジエータの冷却水よりも温度が高い状態で保持される。この形態では、内燃機関の始動時に蓄圧容器の冷却水導入室に溜められていた冷却水がウォータジャケットに供給されるので、この冷却水で内燃機関の暖機を促進させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、本発明の内燃機関用蓄圧システムによれば、蓄圧容器に設けた冷却水導入室にウォータジャケットを通過した高温の冷却水を導入できるので、この高温の冷却水で蓄圧容器を加熱したり保温したりすることできる。そのため、蓄圧容器内に貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関を示している。図1の内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるディーゼルエンジンであり、複数(図1では4つ)のシリンダ2を有する機関本体3と、各シリンダ2にそれぞれ接続される吸気通路4及び排気通路5とを備えている。吸気通路4には、吸気を濾過するエアクリーナ6と、ターボ過給機7のコンプレッサ7aと、吸気を冷却するためのインタークーラ8と、吸入空気量を調整するためのスロットル弁9とが設けられている。排気通路5には、ターボ過給機7のタービン7bと、排気を浄化するための触媒コンバータ10と、排気通路5を流れる排気の流量を調整可能なように排気通路5を全閉する全閉位置と排気通路5を全開する全開位置との間で開度を調整可能な排気遮断弁11とが設けられている。
【0020】
排気通路5と吸気通路4とは、EGR通路12にて接続されている。図1に示したようにEGR通路12は、排気通路5の一部を形成する排気マニホールド5aと吸気通路4の一部を形成する吸気マニホールド4aとを接続している。EGR通路12には、排気通路5から排気通路4に導かれる排気(以下、EGRガスと称することがある。)を冷却するためのEGRクーラ13及びEGRガスの流量を調整するためのEGR弁14が設けられている。各シリンダ2には、シリンダ2内に燃料を噴射するためのインジェクタ15がそれぞれ設けられている。各インジェクタ15は、インジェクタ15に供給される高圧の燃料が蓄えられるコモンレール16に接続されている。
【0021】
また、図2に示したように内燃機関1は冷却水を循環させて機関本体3を冷却する冷却装置20を備えている。冷却装置20は、機関本体3に設けられるウォータジャケット21と、冷却水を冷却するためのラジエータ22と、ラジエータ22からウォータジャケット21に冷却水を送るための冷却水ポンプ23とを備えている。ウォータジャケット21とラジエータ22とは第1冷却水通路24及び第2冷却水通路25で接続されており、冷却水ポンプ23は第1冷却水通路24に設けられている。この冷却装置20では、冷却水ポンプ23によって図2に矢印W1で示したようにラジエータ22からウォータジャケット21に第1冷却水通路24を介して冷却水が送ることができる。また、矢印W2で示したように第2冷却水通路25を介してウォータジャケット21からラジエータ22に冷却水を戻すことができる。そのため、このようにウォータジャケット21とラジエータ22とを第1冷却水通路24及び第2冷却水通路25で接続することにより、ウォータジャケット21とラジエータ22との間で冷却水が循環する冷却水循環経路を形成することができる。そして、このように冷却水循環経路を形成することにより、ラジエータ22からウォータジャケット21に冷却水を送って機関本体3を冷却することができる。また、ウォータジャケット21で加熱された冷却水をラジエータ22に戻して冷却し、その冷却した冷却水を再度ウォータジャケット21に送ることができる。なお、これらウォータジャケット21、ラジエータ22、及び冷却水ポンプ23は、一般にエンジンに設けられる周知のものと同じでよいため、詳細な説明は省略する。また、冷却水もエンジンの冷却に使用される周知のものと同じでよいため、詳細な説明は省略する。
【0022】
図1に示したようにエンジン1は、ターボ過給機6の動作をアシストするための蓄圧システム30Aを備えている。蓄圧システム30Aは、加圧したガスを貯留する蓄圧容器としての蓄圧タンク31を備えている。なお、蓄圧タンク31には、ガスとして空気又は排気の少なくともいずれか一方が貯留される。蓄圧タンク31は、ガスが貯留されるガス貯留室32を形成する内殻33と、内殻33との間に排気導入室34となる隙間が形成されるように内殻33の外側を全面に亘って覆う第1外殻35と、第1外殻35との間に冷却水導入室36となる隙間が形成されるように第1外殻35の外側を全面に亘って覆う第2外殻37とを備えている。すなわち、蓄圧タンク31は三重容器構造を有している。第2外殻37の外側には、第2外殻37の外面を全面に亘って覆うように断熱材38が設けられている。
【0023】
内殻33は、加圧されたガスを溜めることが可能な圧力容器として構成されている。また、内殻33は、ガス貯留室32と排気導入室34との間でガスが移動しないようにガス貯留室32と排気導入室34とを区分している。そして、第1外殻35は、排気導入室34と冷却水導入室36とが区分されるように設けられている。ガス貯留室32内には仕切り部材39が設けられ、ガス貯留室32はその仕切り部材39によって充填室40と、ボトムスペース41とに区切られている。充填室40には、吸着材42が充填されている。仕切り部材39には、吸着材42の移動は阻止し、かつガスは適切に流通可能な程度の孔(不図示)が全面に亘って設けられている。そのため、充填室40とボトムスペース41とは連通している。吸着材42は、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な物質であればよく、例えば活性炭が用いられる。この他、吸着材42としては例えばゼオライト、アルミナ、カーボンモレキュラーシーブなどが用いられる。なお、吸着材42は、単一の物質に限定されず、これらの物質が混合されたものでもよい。
【0024】
蓄圧タンク31には、ガス貯留室32内の温度(以下、タンク内温度と称することがある。)に対応する信号を出力する温度検出手段として温度センサ43と、ガス貯留室32内の圧力(以下、タンク圧と称することがある。)に対応する信号を出力する圧力センサ44とが設けられている。
【0025】
ガス貯留室32には、ガス貯留室32と外部とを連通させるためのガス出入口32aが設けられている。このガス出入口32aは蓄圧タンク31の下方側に設けられている。そして、蓄圧タンク31はこのガス出入口32aが下側になるように車両に取り付けられる。より具体的には、蓄圧タンク31はガス出入口32aが鉛直下方を向くように車両に取り付けられる。ガス出入口32aにはガス通路45が接続されている。そして、ガス貯留室32は、これらガス出入口32a及びガス通路45を介してEGR通路12と接続されている。ガス通路45は、一端がEGR弁14よりも排気通路5寄りのEGR通路12に接続され、他端がガス出入口32aと接続されている。ガス通路45には、ガス供給弁手段としての流量調整弁46が設けられている。流量調整弁46は、ガス貯留室32とEGR通路12とが接続されるようにガス通路45を全開する接続位置(以下、全開位置と称することがある。)とガス貯留室32とEGR通路12との接続が遮断されるようにガス通路45を全閉する遮断位置(以下、全閉位置と称することがある。)との間で切り替え可能であり、ガス通路45を流れるガスの流量を制御することができる。
【0026】
排気導入室34には、排気導入室34に排気を導入するための排気導入部34aと、排気導入室34から排気を排出するための排気排出部34bとが設けられている。排気導入部34aは充填室40側に設けられ、排気排出部34bはボトムスペース41側に設けられている。排気導入部34aには、排気遮断弁11より上流、かつ触媒コンバータ10より下流の排気通路5と排気導入室34とを連通する排気導入通路47が接続されている。そして、排気導入通路47には、排気導入通路47を流通する排気の流量を調整することが可能な排気流量変更手段としての第1タンク加熱弁48が設けられている。排気排出部34bには、排気遮断弁11より下流の排気通路5と排気導入室34とを連通する排気排出通路49が接続されている。排気排出通路49には、排気排出通路49を全開する全開位置と排気排出通路49を全閉する全閉位置との間で切り替え可能な第2タンク加熱弁50が設けられている。
【0027】
冷却水導入室36には、冷却水導入室36に冷却水を導入するための冷却水導入部36aと、冷却水導入室36から排気を排出するための冷却水排出部36bとが設けられている。図1に示したように冷却水排出部36bは、蓄圧タンク31の頂部付近に設けられている。図2に示したように冷却水導入部36aには、第2冷却水通路25と冷却水導入室36とを連通する冷却水導入通路51が接続されている。冷却水導入通路51には、冷却水導入通路51を流通する冷却水の流量を調整することが可能な冷却水制御弁手段としての第1冷却水制御弁52が設けられている。冷却水排出部36bには、第1冷却水通路24と冷却水導入室36とを連通する接続通路としての冷却水排出通路53が接続されている。冷却水排出通路53には、冷却水排出通路53を全開する全開位置と冷却水排出通路53を全閉する全閉位置との間で切り替え可能な切替弁手段としての第2冷却水制御弁54が設けられている。
【0028】
流量調整弁46、第1タンク加熱弁48、第2タンク加熱弁50、第1冷却水制御弁52、及び第2冷却水制御弁54の動作は、エンジンコントロールユニット(ECU)60にてそれぞれ制御される。ECU60は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータとして構成され、エンジン1に設けられた各種センサからの出力信号に基づいてスロットル弁9、排気遮断弁11、EGR弁14、及びインジェクタ15などの動作をそれぞれ制御し、これによりエンジン1の運転状態を制御する周知のコンピュータユニットである。ECU60は、例えばエンジン1の回転数が予め設定した所定の燃料カット回転数以上であり、かつアクセル開度が0%すなわちアクセルペダルが踏まれていない場合、各シリンダ2への燃料供給が停止されるように各インジェクタ15の動作を制御する。以下、この制御を燃料カット制御と称することがある。また、ECU60は、エンジン1の運転状態に応じて適正な量のEGRガスが吸気通路4に導入されるようにEGR弁14の開度を調整する。以下、EGR弁14のこの制御を通常制御と称することがある。この他、ECU50はエンジン1の運転状態に応じて排気遮断弁11の開度を調整する。このような制御を行う際に参照するセンサとしてECU60には、例えばエンジン1のクランク軸の回転速度(回転数)に対応する信号を出力するクランク角センサ61、アクセル開度に対応する信号を出力するアクセル開度センサ62、及びインタークーラ8より下流の吸気通路4の圧力(以下、過給圧と称することがある。)に対応する信号を出力する吸気圧センサ63等が接続される。また、ECU60には、温度センサ43及び圧力センサ44も接続される。なお、これらの他にもECU60には種々のセンサが接続されているがそれらの図示は省略した。
【0029】
ECU60は、燃料カット制御が実行されているときに蓄圧タンク31内にガスを貯留し、ターボ過給機7の動作をアシストする必要がある場合にそのガスがタービン7bに供給されるように蓄圧システム30Aを制御する。具体的に説明すると、蓄圧タンク31内にガスを貯留する場合、まずECU60はEGR弁14を全閉にする。次に、ECU60は流量調整弁46を全開位置に切り替える。これにより、蓄圧タンク31内にEGR通路12及びガス通路45を介して排気通路5のガスを充填することができる。なお、燃料カット制御の実行中は、シリンダ2から排気通路5にほぼ空気が排出されるので、蓄圧タンク31に殆ど空気のガスを充填することができる。その後、ECU60は、タンク圧が予め設定した貯留終了圧力に達すると流量調整弁46を全閉位置に切り替える。これによりガス貯留室32内に加圧されたガスを貯留することができる。なお、EGR弁14の制御は、流量調整弁46が全閉位置に切り替えられた後に通常制御に切り替えられる。
【0030】
ターボ過給機7の動作をアシストする必要がある場合、まずECU60はEGR弁14を全閉にする。次に、ECU60は流量調整弁46を全開位置に切り替える。これにより、ガス貯留室32内のガスをガス通路45、EGR通路12、及び排気マニホールド5aを介してタービン7bに供給することができる。そのため、ターボ過給機7の動作をこのガスでアシストすることができる。その後、ECU60は、タンク圧が予め設定した供給終了圧力に達すると流量調整弁46を全閉位置に切り替える。また、ECU60は、EGR弁14の制御を通常制御に切り替える。なお、このようにガス貯留室32のガスをタービン7bに供給するため、タービン7bが本発明の所定の供給先に相当する。
【0031】
周知のように空気や排気には水分が含まれている。そのため、ガス貯留室32内にこれらのガスが貯留されている際にタンク内温度が低下すると水分が凝縮して凝縮水となる。タンク内温度は、例えばエンジン1の停止時などに低下する。そこで、ECU60は、このような場合にタンク内温度の低下を抑制すべく図3に示したタンク内温度制御ルーチンをエンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行する。
【0032】
図3の制御ルーチンにおいてECU60は、まずステップS11で車両の走行状態及びエンジン1の運転状態を取得する。車両の走行状態としては、例えばアクセル開度等が取得される。エンジン1の運転状態としては、例えばエンジン1の回転数、過給圧、タンク内温度、及びタンク圧等が取得される。続くステップS12においてECU60は、エンジン1を停止させるべき所定の機関停止条件が成立したか否か判断する。機関停止条件は、例えばイグニッションスイッチがオフに切り替えられるなど運転者からエンジン1の停止が要求された場合に成立したと判断される。また、エンジン1が所定の停止条件が成立した場合に運転が停止されるいわゆるアイドルストップ制御の対象である場合は、その所定の停止条件が成立した場合に機関停止条件が成立したと判断される。なお、所定の停止条件は、例えば車速が0であり、かつその状態が所定時間継続した場合などに成立したと判断される。
【0033】
所定の機関停止条件が成立していないと判断した場合はステップS13に進み、ECU60はタンク内温度に基づいて排気導入室34に導入される排気の流量及び冷却水導入室36に導入される冷却水の流量をそれぞれ調整するタンク加熱制御を実行する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。このタンク加熱制御では、第2タンク加熱弁50及び第2冷却水制御弁54がそれぞれ全開に制御される。そして、第1タンク加熱弁48で排気導入室34に導入される排気の流量が、第1冷却水制御弁52で冷却水導入室36に導入される冷却水の流量がそれぞれ制御される。図4はタンク内温度と第1タンク加熱弁48の開度との関係の一例を示し、図5はタンク内温度と第1冷却水制御弁52の開度との関係の一例を示している。図4に示したように第1タンク加熱弁48は、タンク内温度が低いほど開度が大きくなるように制御される。すなわち、第1タンク加熱弁48は、タンク内温度が低いほど排気導入室34に導入される排気の流量が増加するように制御される。なお、第1タンク加熱弁48が全開に達した後は、その全開の状態に維持される。このように第1タンク加熱弁48の開度を制御することにより、排気導入室32に導入した排気によってタンク内温度を適切に制御することができる。なお、図4中において第1タンク加熱弁48が全開に制御される温度T1としては、例えば蓄圧タンク31に貯留されているガス中の水分の凝縮を十分に抑制可能な温度が設定される。なお、このように第1タンク加熱弁48の開度を制御して排気導入室34に導入される排気の流量を制御することにより、ECU60が本発明の排気流量制御手段として機能する。
【0034】
図5に示したように第1冷却水制御弁52も同様に、タンク内温度が低いほど開度が大きくなるように制御される。すなわち、第1冷却水制御弁52は、タンク内温度が低いほど冷却水導入室36に導入される冷却水の流量が増加するように制御される。なお、第1冷却水制御弁52が全開に達した後は、その全開の状態に維持される。冷却水導入室36は第2冷却水通路25と接続されているため、この冷却水導入室36にはウォータジャケット21で加熱された高温の冷却水が導入される。そのため、この高温の冷却水で蓄圧タンク31を加熱することができる。従って、このように第1冷却水制御弁52の開度を制御することにより、冷却水導入室36に導入した高温の冷却水によってタンク内温度を適切に制御することができる。なお、図5中において第1冷却水制御弁52が全開に制御される温度T2としては、例えば蓄圧タンク31に貯留されているガス中の水分の凝縮を十分に抑制可能な温度が設定される。
【0035】
一方、所定の機関停止条件が成立していると判断した場合はステップS14に進み、ECU60は第1タンク加熱弁48及び第2タンク加熱弁50をそれぞれ全閉にする。これにより、排気導入室34内に高温の排気を留めることができる。次のステップS15においてECU60は、冷却水導入室36が高温の冷却水で満たされているか否か判断する。冷却水導入室36が高温の冷却水で満たされているか否かは、例えば冷却水排出部36bから排出される冷却水の流量にて判断すればよい。冷却水導入室36が空の状態から冷却水を導入し始めた場合、冷却水排出部36bから排出される冷却水の流量は最初0で、その後徐々に増加する。そして、冷却水導入室36が冷却水で満たされた後は、冷却水排出部36bから排出される冷却水の流量が殆ど変動しなくなる。そこで、冷却水排出部36bに流量計を設け、その流量計からの出力信号が殆ど変動しない場合、冷却水導入室36が冷却水で満たされていると判断すればよい。冷却水導入室36が冷却水で満たされていないと判断した場合はステップS16に進み、ECU60は第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54をそれぞれ全開にする。なお、各冷却水制御弁52、54が既に全開であった場合は、その状態を維持する。一方、冷却水導入室36が冷却水で満たされていると判断した場合はステップS17に進み、ECU60は第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54をそれぞれ全閉にする。これにより冷却水導入室36に高温の冷却水を留めることができる。なお、各冷却水制御弁52、54が既に全閉であった場合は、その状態を維持する。
【0036】
ステップS16又はステップS17で第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54を制御した後はステップS18に進み、ECU60はタンク圧Ptが大気圧Pa以下か否か判断する。タンク圧Ptが大気圧Paより高いと判断した場合はステップS19に進み、ECU60はEGR弁14を全開にするとともに流量調整弁46を全開位置に切り替える。なお、既にEGR弁14及び流量調整弁46がそれぞれ全開であった場合はその状態を維持する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、タンク圧Ptが大気圧Pa以下であると判断した場合はステップS20に進み、ECU60は流量調整弁46を全閉位置に切り替える。その後、今回の制御ルーチンを終了する。なお、ステップS18〜S20の処理を実行することにより、ECU60が本発明のガス供給弁制御手段として機能する。また、ステップS13及びS15〜S17の処理を実行することにより、ECU60が本発明の制御手段として機能する。
【0037】
図6は、ECU60がエンジン1の始動時にエンジン1の暖機を促進させるべく実行する暖機制御ルーチンである。この制御ルーチンは、エンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行される。なお、図6において図3と同じ処理には同一の参照符号を付して説明を省略する。この制御ルーチンを実行することにより、ECU60が本発明の切替弁制御手段として機能する。
【0038】
図6の制御ルーチンにおいてECU60は、まずステップS11で車両の走行状態及びエンジン1の運転状態を取得する。次のステップS31においてECU60は、エンジン1を始動すべき所定の機関始動条件が成立したか否か判断する。所定の機関始動条件は、例えばイグニッションスイッチが始動位置に切り替えられるなど運転者からエンジン1の始動が要求された場合に成立したと判断される。また、エンジン1がアイドルストップ制御の対象であり、そのアイドルストップ制御でエンジン1が停止している場合は、アクセルペダル、ブレーキペダル、又はシフトレバーなどが運転者によって操作された場合に所定の機関始動条件が成立したと判断される。
【0039】
所定の機関始動条件が成立していないと判断した場合はステップS32に進み、ECU60は第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54をそれぞれ全閉にする。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、所定の機関始動条件が成立したと判断した場合はステップS33に進み、ECU60は第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54をそれぞれ全開にする。これにより、エンジン1の停止時に冷却水導入室36に留められていた冷却水をウォータジャケット21に供給することができる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0040】
以上に説明したように、第1の形態に係る蓄圧システム30Aによれば、蓄圧タンク31に設けられた冷却水導入室36に高温の冷却水を導入したり、排気導入室34に高温の排気を導入することができるので、これら冷却水や排気で蓄圧タンク31を加熱することができる。そのため、タンク内温度の低下を抑制し、蓄圧タンク31内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを抑制できる。また、これにより蓄圧タンク31内に貯留可能なガス量の減少を抑制できるので、蓄圧タンク31に蓄えることが可能なエネルギ量の低下を抑制できる。
【0041】
第1の形態に係る蓄圧システム30Aでは、エンジン1を停止させる所定の機関停止条件が成立した場合、冷却水導入室36に高温の冷却水が留められるとともに排気導入室34に高温の排気が留められる。また、この際にはガス貯留室32からガスを排出させてタンク圧を大気圧まで下げる。エンジン1の停止中は蓄圧タンク31への熱の供給が停止されるが、このようにエンジン1を停止させる際に高温の冷却水及び排気を蓄圧タンク31に留めることにより、図7に線L1で示したようにこれら冷却水及び排気でエンジン1の停止中におけるタンク内温度の低下を抑制することができる。なお、図7中の実線Lは、冷却水及び排気が留められていない場合のタンク内温度の時間変化の一例を示している。また、この際にタンク圧を大気圧まで下げるので、ガス中の水分が凝縮を始める温度(以下、露点と称することがある。)を下げることができる。そのため、エンジン1の停止中においても貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制できる。
【0042】
さらに第1の形態に係る蓄圧システム30Aでは、エンジン1の始動時に蓄圧タンク31に留められていた冷却水がウォータジャケット21に供給される。蓄圧タンク31の最も外側は断熱材38で覆われているため、エンジン1の停止中に蓄圧タンク31内に留められていた冷却水は、エンジン1の停止中にラジエータ22にあった冷却水よりも温度が高い。そのため、この冷却水をエンジン1の始動時に機関本体2に供給することにより、エンジン1の暖機を促進することができる。
【0043】
(第2の形態)
図8は、本発明の第2の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関の概略を示している。なお、図8において第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。図8に示したようにこの形態の蓄圧システム30Bでは、蓄圧タンク31から排気導入室が省略される点が第1の形態と異なる。また、この形態では、所定の放熱温度以下で熱を放出し、その放熱温度より高い所定の蓄熱温度以上で熱を蓄えることが可能な蓄熱材70が断熱材38の代わりに第2外殻37の外面を全面に亘って覆っている。
【0044】
図9は、この形態のECU60が実行するタンク内温度制御ルーチンを示している。なお、図9において図3と同一の処理には同一の参照符号を付して説明を省略する。図9の制御ルーチンにおいてECU60は、ステップS12まで図3の制御ルーチンと同様に処理を進める。ステップS12で所定の機関停止条件が成立していないと判断した場合はステップS41に進み、ECU60はタンク加熱制御を実行する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。この形態では蓄圧タンク31に排気導入室が無いため、このタンク加熱制御では第1冷却水制御弁52及び第2冷却水制御弁54がそれぞれ制御される。なお、これら冷却水制御弁52、54の制御方法は図3のステップS13と同じ制御方法でよいため、詳細な説明は省略する。一方、所定の機関停止条件が成立したと判断した場合はステップS15に進み、以降は図3と同様に処理が進められる。
【0045】
第2の形態に係る蓄圧システム30Bによれば、冷却水導入室36に高温の冷却水を導入することができるので、この高温の冷却水で蓄圧タンク31を加熱することができる。そのため、タンク内温度の低下を抑制し、蓄圧タンク31内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを抑制できる。所定の機関停止条件が成立した場合には、冷却水導入室36に高温の冷却水を留める。また、蓄熱材70の温度が所定の放熱温度以下に低下すると蓄熱材70から熱が放出される。そのため、この高温の冷却水及び蓄熱材70に蓄えられている熱で蓄圧タンク31を保温することができる。これにより、図10に線L2で示したようにエンジン1の停止中におけるタンク内温度の低下を抑制することができる。なお、図10中の実線Lは、蓄熱材70が無く、かつ冷却水が留められていない場合のタンク内温度の時間変化の一例を示している。また、所定の機関停止条件が成立した場合は、ガス貯留室32からガスを排出させてタンク圧を大気圧まで下げるので、露点を下げることができる。従って、エンジン1の停止中においても貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制できる。
【0046】
なお、この形態においても、第1の形態と同様にエンジン1の始動時に冷却水導入室36に留められていた冷却水をウォータジャケット21に供給してもよい。これによりエンジン1の暖機を促進させることができる。
【0047】
(第3の形態)
図11は、本発明の第3の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関の概略を示している。この形態の蓄圧システム30Cでは、蓄圧タンク31から排気導入室が省略されるとともに第2外殻37と断熱材38との間にヒータ層80が設けられる点が第1の形態と異なる。すなわち、この形態では蓄圧タンク31に内側から順にガス貯留室32、冷却水導入室36、ヒータ層80が設けられる。このヒータ層80には、第2外殻37の外面を覆うように複数の電気ヒータが設けられている。そのため、これら複数の電気ヒータを動作させることにより、ヒータ層80で熱を発生させてガス貯留室32内を加熱することができる。従って、このヒータ層80が本発明のヒータ手段に相当する。なお、電気ヒータの仕様は、例えば蓄圧タンク31の容量などに基づいて定めればよい。ヒータ層80に設けられている複数の電気ヒータの動作は、コントローラ80aを介してECU60にて制御される。
【0048】
図12は、この形態のECU60が実行するタンク内温度制御ルーチンを示している。なお、図12において図3又は図9と同一の処理には同一の参照符号を付して説明を省略する。図12の制御ルーチンにおいてECU60は、ステップS18まで図9と同様に処理を進める。ステップS18でタンク圧Ptが大気圧Paではないと判断した場合、ECU60はステップS19の処理を実行した後、ステップS51に進む。一方、タンク圧Ptが大気圧Paであると判断した場合、ECU60はステップS20の処理を実行した後、ステップS51に進む。ステップS51においてECU60は、タンク内温度Ttが予め設定した判定温度Ts以下か否か判断する。判定温度Tsとしては、例えば圧力が大気圧の場合の露点が設定される。タンク内温度Ttが判定温度Tsより高いと判断した場合はステップS52に進み、ECU60はヒータ層80の複数の電気ヒータを停止させる。なお、既にこれら複数の電気ヒータが停止していた場合はその状態を維持する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、タンク内温度Ttが判定温度Ts以下と判断した場合はステップS53に進み、ECU60はヒータ層80の複数の電気ヒータを起動させる。なお、既にこれら複数の電気ヒータが動作していた場合は、その状態を維持する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。なお、これらステップS51〜S53の処理を実行することにより、ECU60が本発明のヒータ制御手段として機能する。
【0049】
第3の形態に係る蓄圧システム30Cによれば、第2の形態と同様に冷却水導入室36に高温の冷却水を導入することができるので、この高温の冷却水でタンク内温度の低下を抑制し、蓄圧タンク31内に貯留されているガスから凝縮水が発生することを抑制できる。所定の機関停止条件が成立した場合には、冷却水導入室36に高温の冷却水を留める。そのため、この高温の冷却水で蓄圧タンク31を保温することができる。また、所定の機関停止条件が成立した場合は、ガス貯留室32からガスを排出させてタンク圧を大気圧まで下げるので、露点を下げることができる。さらに、タンク内温度Ttが判定温度Ts以下の場合はヒータ層80の電気ヒータが起動されるので、図13に線L3で示したようにタンク内温度が露点以下に低下することを確実に防止できる。そのため、エンジン1の停止中においても貯留されているガスからの凝縮水の発生を抑制できる。なお、図13中の実線Lはヒータ層80が無く、かつ冷却水が留められていない場合のタンク内温度の時間変化の一例を示している。
【0050】
この形態の蓄圧システム30Cにおいても上述した各形態と同様にエンジン1の始動時に冷却水導入室36に留められていた冷却水をウォータジャケット21に供給してもよい。これによりエンジン1の暖機を促進させることができる。
【0051】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明の蓄圧システムはディーゼルエンジンに限らず、ガソリンその他の燃料を利用する各種の内燃機関に適用してよい。蓄圧タンクに主に貯留されるガスは空気に限定されず、排気を貯留してもよい。また、蓄圧タンクに貯留されているガスの供給先はターボ過給機のタービンに限定されない。蓄圧タンクのガスは、内燃機関に設けられて加圧されたガスを使用する種々の機器に供給してよい。
【0052】
上述した各形態で示した蓄圧タンクを加熱する加熱手段のうち冷却水導入室の他に蓄圧タンクに設けるもの、すなわち排気導入室、ヒータ層、蓄熱材は適宜に組み合わせて蓄圧タンクに設けてよい。例えば、これら全てが蓄圧タンクに設けられてもよいし、これらから2つを選択して設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関の概略を示す図。
【図2】図1の内燃機関が備える冷却装置の概略を示す図。
【図3】図1のECUが実行するタンク内温度制御ルーチンを示すフローチャート。
【図4】タンク内温度と第1タンク加熱弁の開度との関係の一例を示す図。
【図5】タンク内温度と第1冷却水制御弁の開度との関係の一例を示す図。
【図6】図1のECUが実行する暖機制御ルーチンを示すフローチャート。
【図7】図3のタンク内温度制御ルーチンを実行した場合におけるタンク内温度の時間変化の一例を示す図。
【図8】本発明の第2の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関の概略を示す図。
【図9】図8のECUが実行するタンク内温度制御ルーチンを示すフローチャート。
【図10】図9のタンク内温度制御ルーチンを実行した場合におけるタンク内温度の時間変化の一例を示す図。
【図11】本発明の第3の形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関の概略を示す図。
【図12】図11のECUが実行するタンク内温度制御ルーチンを示すフローチャート。
【図13】図12のタンク内温度制御ルーチンを実行した場合におけるタンク内温度の時間変化の一例を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1 内燃機関
3 機関本体
21 ウォータジャケット
22 ラジエータ
24 第1冷却水通路
30A、30B、30C 蓄圧システム
31 蓄圧タンク(蓄圧容器)
32 ガス貯留室
34 排気導入室
36 冷却水導入室
38 断熱材
42 吸着材
46 流量調整弁(ガス供給弁手段)
48 第1タンク加熱弁(排気流量変更手段)
52 第1冷却水制御弁(冷却水制御弁手段)
53 冷却水排出通路(接続通路)
54 第2冷却水制御弁(切替弁手段)
60 エンジンコントロールユニット(排気流量制御手段、ヒータ制御手段、制御手段、ガス供給弁制御手段、切替弁制御手段)
70 蓄熱材
80 ヒータ層(ヒータ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関本体に設けられたウォータジャケットとラジエータとの間で冷却水を循環させるための冷却水循環経路を備えた内燃機関に適用され、
内部に設けられたガス貯留室にガスを貯留し、そのガスを前記内燃機関の所定の供給先に供給可能な蓄圧容器を備え、前記ガス貯留室内には、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な吸着材が設けられている内燃機関用蓄圧システムにおいて、
前記蓄圧容器は、前記ガス貯留室を覆うように前記ガス貯留室の外側に設けられ、前記ウォータジャケットを通過した後、かつ前記ラジエータに戻される前の冷却水が導入されるように前記冷却水循環経路と接続されている冷却水導入室を備えていることを特徴とする内燃機関用蓄圧システム。
【請求項2】
前記蓄圧容器には、前記冷却水導入室が覆われるように断熱材が設けられている請求項1に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項3】
前記蓄圧容器には、所定の放熱温度以下で熱を放出し、前記所定の放熱温度より高い所定の蓄熱温度以上で熱を蓄えることが可能な蓄熱材が前記冷却水導入室を覆うように設けられている請求項1に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項4】
前記蓄圧容器は、前記ガス貯留室の外側かつ前記冷却水導入室の内側に前記ガス貯留室及び前記冷却水導入室とは区分されるように設けられて前記内燃機関の排気が導入される排気導入室をさらに備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項5】
前記排気導入室に導入される排気の流量を変更する排気流量変更手段と、前記ガス貯留室内の温度が低いほど前記排気導入室に導入される排気の流量が増加するように前記排気流量変更手段を制御する排気流量制御手段と、をさらに備えている請求項4に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項6】
前記蓄圧容器には、前記ガス貯留室内を加熱可能なようにヒータ手段が設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項7】
前記ガス貯留室内の温度が予め設定した所定温度以下の場合に前記ヒータ手段が動作し、前記ガス貯留室内の温度が前記所定温度より高い場合には前記ヒータ手段が停止するように前記ヒータ手段を制御するヒータ制御手段と、をさらに備えている請求項6に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項8】
前記所定温度として、前記ガス貯留室内のガスに含まれている水分が液化する温度が設定されている請求項7に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項9】
前記冷却水循環経路から前記冷却水導入室に導入される冷却水の流量を変更可能な冷却水制御弁手段と、前記内燃機関を停止させる所定の機関停止条件が成立した場合、まず前記冷却水導入室内が冷却水で満たされるように前記冷却水制御弁手段を開弁させ、その後前記冷却水導入室内に冷却水が留められるように前記冷却水制御弁手段を全閉にする制御手段と、をさらに備えている請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記内燃機関が運転されている場合、前記ガス貯留室内の温度が低いほど前記冷却水導入室に導入される冷却水の流量が増加するように前記冷却水制御弁手段を制御する請求項9に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項11】
前記ガス貯留室と前記所定の供給先とが接続される接続位置と前記ガス貯留室と前記所定の供給先との接続が遮断される遮断位置との間で切り替え可能なガス供給弁手段と、前記内燃機関を停止させる所定の機関停止条件が成立した場合、前記ガス貯留室内の圧力が大気圧になるように前記ガス供給弁手段を前記接続位置に切り替えるガス供給弁制御手段と、をさらに備えている請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項12】
前記ラジエータから前記ウォータジャケットに冷却水を導く冷却水通路と前記冷却水導入室とを接続する接続通路と、前記接続通路を全開する全開位置と前記接続通路を全閉する全閉位置との間で切り替え可能な切替弁手段と、前記内燃機関の始動時に前記切替弁手段が前記全開位置に切り替えられるように前記切替弁手段を制御する切替弁制御手段と、をさらに備えている請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−96053(P2010−96053A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266360(P2008−266360)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】