説明

内燃機関用過給システム

【課題】補助空気を適切に供給する。
【解決手段】内燃機関用過給システムは、タービン(11)を備える過給器と、タービンに補助空気を供給するタンク(21)と、タンクよりタービンへ供給される補助空気の流量を調整する調整手段(25)と、タンク圧が所定圧以上であるか否かを判定する判定手段(30)と、タンク圧が所定圧以上であると判定された場合に、タンク圧が所定圧以下になるまで補助空気をタービンへ供給するように調整手段を制御する第1制御手段(30)と、タンク圧が所定圧以上でないと判定された場合に、補助空気を一定時間タービンへ供給するように調整手段を制御する第2制御手段(30)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンに搭載されるターボチャージャー等の内燃機関用過給システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力向上を目的として、エンジンにターボチャージャー(過給器)を搭載する技術が知られている。更に、ターボジャージャーの応答性を改善するために、ターボチャージャーの排気タービンに、排気マニホールドから供給される排気ガスに加えて、蓄圧タンクに貯められた補助空気を供給することで、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させて排気ガス温度を上昇させると共に排気ガスの流量を増加させ、その結果、排気タービンの回転数を増大させることにより特に加速初期におけるターボラグを改善する技術が知られている(特許文献1から3参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭58−195021号公報
【特許文献2】実開昭58−127129号公報
【特許文献3】実開昭59−65939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成を有するターボチャージャーにおいては、短時間に大量の補助空気が排気タービンに供給される(つまり、噴き付けられる)。これにより、排気タービンの回転数を増大させることができる一方で、短時間に大量の補助空気が消費されるために蓄圧タンク内の圧力が低下してしまう。その結果、消費された補助空気を蓄圧タンクに回収する(つまり、補助空気を蓄圧タンクに新たに蓄圧する)ために要する時間が増大してしまう。これにより、特に加速が頻繁に行われる場合には、補助空気の回収が遅れ、その結果、排気タービンに補助空気を供給したいタイミングで補助空気を供給することができなくなるおそれがある。つまり、補助空気の供給によるターボラグの改善を期待することができずに、運転性を損ねるおそれがある。
【0005】
本発明は、例えば上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば補助空気を適切に供給することを可能とならしめる内燃機関用過給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関用過給システムは、排気タービンを備える過給器と、該排気タービンに補助空気を供給する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクより前記排気タービンへ供給される前記補助空気の流量を調整する調整手段と、前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が所定の圧力以上であるか否かを判定する判定手段と、前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が前記所定の圧力以上であると判定された場合に、前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が、前記所定の圧力以下になるまで前記補助空気を前記排気タービンへ供給するように前記調整手段を制御する第1制御手段と、前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が前記所定の圧力以上でないと判定された場合に、前記補助空気を一定時間前記排気タービンへ供給するように前記調整手段を制御する第2制御手段とを備える。
【0007】
本発明の内燃機関用過給システムによれば、内燃機関から排出される排気ガスが排気タービンを回転させ、それに伴って排気タービンに接続されたコンプレッサーが吸入空気を圧縮する。この圧縮された吸入空気が内燃機関に供給されることで、内燃機関の出力を向上させることができる。更に、排気ガスに加えて、蓄圧タンクから補助空気(例えば、圧縮空気)が排気タービンに供給され(言い換えれば、噴き付けられる)ることで、排気タービンの回転を更に助長させることができ、その結果、ターボのタイムラグ(つまり、ターボラグ)を改善することができ、吸気圧を高めることができる。このとき、補助空気の流量は、例えば電磁弁等の調整手段により調整される。
【0008】
本発明では特に、判定手段の動作により、特に車両が加速を開始することにより補助空気の供給が開始されるときの蓄圧タンクにおける補助空気の圧力(つまり、蓄圧)が、所定の圧力以上であるか否かが判定される。
【0009】
判定手段による判定の結果、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以上であると判定された場合には、第1制御手段の動作により、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以下になるまでの間、補助空気を排気タービンへ供給するように調整手段が制御される。つまり、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以上である限りは、補助空気を排気タービンへ供給するように調整手段が制御される。蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力未満になる前に、補助空気の供給が停止され、蓄圧タンクへの補助空気の蓄圧が行われる。
【0010】
他方で、判定手段による判定の結果、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以上でないと判定された場合には、第2制御手段の動作により、一定時間の間、補助空気を排気タービンへ供給するように調整手段が制御される。つまり、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力に関わらず、一定時間の間、補助空気を排気タービンへ供給するように調整手段が制御される。一定時間の間補助空気を供給した場合には、補助空気の供給が停止され、蓄圧タンクへの補助空気の蓄圧が行われる。
【0011】
これにより、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が相対的に高い場合(つまり、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以上の場合)には、この圧力が相対的に高い補助空気を排気タービンに供給することで、排気タービンの回転数を増大させることができる。そして、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定圧力未満になる前に、補助空気の排気タービンへの供給が停止されるため、蓄圧された補助空気を使い切ってしまうという不都合を好適に防ぐことができる。
【0012】
特に、排気タービンの回転数が増大することに伴って吸気圧が高まり、それに伴って内燃機関の回転数が増大し、それに伴って排気ガスの圧力が高まった場合には、ある程度高い圧力の補助空気を供給しなければ、排気タービンの回転数の増大には寄与しなくなってしまう。このため、本発明においては、時間の経過と共に蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が低下していくことを考慮して、所定の圧力以上の補助空気を供給することで、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与するような補助空気の有効な供給を実現することができると共に、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与しない補助空気の大量消費を防ぐことができる。
【0013】
他方で、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が相対的に低い場合(つまり、蓄圧タンクにおける補助空気の圧力が所定の圧力以上でない場合)にも、一定時間の間だけ補助空気を供給することで、排気タービンの回転数を相応に増大させることができる。
【0014】
このように、本発明の内燃機関用過給システムによれば、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気を効率的に且つ有効に供給することができる。つまり、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気を排気タービンへ適切に供給することができる。
【0015】
本発明の内燃機関用過給システムの一の態様は、前記所定の圧力は、前記排気ガスの圧力に応じて定められる。
【0016】
この態様によれば、排気ガスの圧力が高まった場合には、ある程度高い圧力の補助空気を供給しなければ、排気タービンの回転数の増大には寄与しなくなってしまうことを考慮して、排気ガスの圧力が相対的に高い場合には、所定の圧力もそれに伴って高くなる。同様に、排気ガスの圧力が相対的に低い場合には、所定の圧力もそれに伴って低くなる。これにより、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与するような補助空気の有効な供給を実現することができると共に、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与しない補助空気の大量消費を防ぐことができる。つまり、補助空気の効率的且つ有効な供給を実現することができる。
【0017】
上述の如く所定の圧力が排気ガスの圧力に応じて定められる内燃機関用過給システムの態様では、前記排気ガスの圧力の増減の程度を予測する予測手段を更に備え、前記所定の圧力は、前記予測手段により予測される前記排気ガスの圧力の増減の程度に応じて定められるように構成してもよい。
【0018】
このように構成すれば、車両の加速等が続けられた場合に、排気ガスの圧力がどれだけ増大するか(或いは、減少するか)を予測することができる。言い換えれば、将来の排気ガスの圧力を予測することができる。そして、この予測された排気ガスの圧力の増減の程度(つまり、将来の排気ガスの圧力)に応じて、所定の圧力を定めることができる。
【0019】
特に、車両の加速が開始した直後においては、排気ガスの圧力は一般的に低いため、該排気ガスの圧力に応じて所定の圧力を定めたとしても、該所定の圧力は相対的に低くなってしまう。このため、時間の経過と共に排気ガスの圧力が増大していけば、所定の圧力より高いにも関わらず現在の実際の排気ガスの圧力よりも低い圧力の補助空気が供給されるおそれがある。これは、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与しない補助空気の消費につながる。このような事態を考慮して、将来の排気ガスの圧力を予測し且つ該予測された排気ガスの圧力に応じて所定の圧力を定めることで、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与するような補助空気の有効な供給を実現することができると共に、排気タービンの回転数の増大に大きく寄与しない補助空気の大量消費を防ぐことができる。つまり、補助空気の効率的且つ有効な供給を実現することができる。
【0020】
上述の如く予測手段を備える内燃機関用過給システムの態様では、前記予測手段は、吸気圧及び加速初期における内燃機関の回転数の少なくとも1つに基づいて、前記排気ガスの圧力の増減の程度を予測するように構成してもよい。
【0021】
このように構成すれば、排気ガスの圧力の増減の態様に影響する吸気圧及び加速初期における内燃機関の回転数に応じて、排気ガスの圧力の増減の態様を好適に予測することができる。
【0022】
尚、吸気圧や加速初期における内燃機関の回転数に加えて又は代えて、排気ガスの圧力の増減の態様に影響する又は影響し得る各種パラメータ(例えば、スロットル開度等)に基づいて、排気ガスの圧力の増減の態様を予測するように構成してもよい。或いは、直接排気ガスの圧力を検出し、該検出結果に基づいて、所定の圧力を定めるように構成してもよい。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から更に明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0025】
(1)基本構成
初めに、図1を参照して、本発明の内燃機関用過給システムに係る実施形態の基本構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る内燃機関用過給システムに係る実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関用過給システムは、例えば、排気タービン11、コンプレッサー12、ローターシャフト13、エアクリーナー14、インタークーラー15、蓄圧タンク21、逆止弁22、補助圧縮エアー配管23、補助圧縮エアー供給装置24、流量調整電磁弁25、エアーアシスト配管26及びECU(Electric Control Unit)30等を含んで構成される。
【0027】
排気タービン11には、エンジン1のシリンダ2から排出される高圧の排気ガスがエギゾーストマニホールド3を介して噴き付けられる。この排気ガスにより、排気タービン11が回転する。排気タービン11の回転に伴って、排気タービン11とローターシャフト13を介して接続されるコンプレッサー12も同様に回転する。このとき、エアクリーナー14を介してコンプレッサー12に供給される吸入空気は、コンプレッサー12の回転によって圧縮された後、インタークーラー15を通過してその温度が下げられる。その後、圧縮された吸入空気は、インテークマニホールド4を介してエンジン1のシリンダ2内に供給される。
【0028】
これにより、吸気圧を増大させることができるため、エンジン1のシリンダ2内に多量の空気を供給することができる。これにより、エンジン1の出力を向上させることができる。
【0029】
尚、この吸気圧は、吸気圧センサ5により検出され、この検出結果(つまり、検出された吸気圧)は、ECU30へ出力される。更に、エンジン1の回転数は、回転数センサ6により検出され、この検出結果(つまり、検出された回転数)は、ECU30へ出力される。
【0030】
更に、本実施形態に係る内燃機関用過給システムでは、排気タービン11には、エンジン1のシリンダ2から排出される高圧の排気ガスに加えて、蓄圧タンク21に蓄圧されている補助圧縮エアー(補助圧縮空気)が噴き付けられる。
【0031】
具体的には、補助圧縮エアーは、例えばポンプ等を含む補助圧縮エアー供給装置24の動作により生成される。該生成された補助圧縮エアーは、補助圧縮エアー配管23を介して蓄圧タンク21内に蓄圧される。このとき、蓄圧タンク21内に蓄圧された補助圧縮エアーが補助圧縮エアー供給装置24に逆流しないように、補助圧縮エアー配管23には、補助圧縮エアー供給装置24から蓄圧タンク21の側へのみ補助圧縮エアーが流れることを許容する逆止弁22が設けられる。
【0032】
蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、エアーアシスト配管26を介して排気タービン11に噴き付けられる。このとき、本発明における「調整手段」の一具体例を構成する流量調整電磁弁25は、本発明における「第1制御手段」及び「第2制御手段」の一具体例を構成するECU30の制御の下に、排気タービン11に噴き付けられる(つまり、供給される)補助圧縮エアーの流量を調整する。例えば、流量調整電磁弁25が閉じた状態にある場合には、排気タービン11には、補助圧縮エアーは噴き付けられない。他方、流量調整電磁弁25が開いた状態にある場合には、排気タービン11には、流量調整電磁弁25の開きの度合い(つまり、開口面積)に応じた流量の補助圧縮エアーが噴き付けられる。この補助圧縮エアーを排気タービン11に噴き付けるタイミング(つまり、供給するタイミング)については、後に詳述する(図2参照)。
【0033】
これにより、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させて排気ガス温度を上昇させると共に排気ガスの流量を増加させ、その結果、タービンの回転数を増大させることができる。特に、車両の加速初期等におけるエンジンの低速回転域のように排気ガスの排出量が少ない場合であっても、排気タービン11の回転数を好適に増加させることができ、結果としていわゆるターボラグを改善することができる。
【0034】
(2)動作原理
続いて、図2を参照して、本実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作原理(補助圧縮エアーを排気タービン11に噴き付ける動作の原理)について説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作(具体的には、補助圧縮エアーを排気タービン11に噴き付ける動作)の流れを概念的に示すフローチャートである。
【0035】
図2に示すように、車両が加速を開始したか否か(つまり、車両が加速しているか否か)が判定される(ステップS101)。例えば、エンジン1が1000から1500rpmの間の任意の低回転数で2/5負荷以下の低付加の定常運転にある状態から、アクセルペダルを踏み込むことでエンジン1が全負荷状態になる場合に、車両が加速を開始したと判定されてもよい。或いは、前後加速度をセンサ等により直接的に検出することで又はスロットル開度速度を検出することで、車両が加速を開始したか否かが判定されてもよい。
【0036】
更に、マニュアルトランスミッション車(M/T車)であれば、加速時にシフトチェンジを伴うため、クラッチ8がOFFからONへ切り替えられた場合に、車両が加速を開始した(つまり、後述するように補助圧縮エアーを供給する)と判定してもよい。
【0037】
ステップS101における判定の結果、車両が加速を開始していない(具体的には、例えば、車両が停止している、車両が概ね等速で走行している、或いは車両が減速している)と判定された場合には(ステップS101:No)、車両が加速を開始したか否かの判定動作が継続される。
【0038】
他方、ステップS101における判定の結果、車両が加速を開始していると判定された場合には(ステップS101:Yes)、まず、本発明における「判定手段」の一具体例を構成するECU30の制御の下に、蓄圧タンク21における補助圧縮エアーの圧力(以下、“タンク圧”と称する)が、所定圧以上であるか否かが判定される(ステップS102)。
【0039】
ステップS102における判定の結果、タンク圧が所定圧以上であると判定された場合には(ステップS102:Yes)、ECU30の制御の下に、流量調整電磁弁25が全開状態に設定される(ステップS103)。つまり、ECU30の制御の下に、流量調整電磁弁25の開口面積がエアーアシスト配管26の管路面積と同一或いは概ね同一となるように、流量調整電磁弁25の開口面積が設定される。言い換えれば、流量調整電磁弁25の開口面積が最大となるように流量調整電磁弁25の開口面積が設定される。このため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、最大の流量を維持しながら排気タービン11に噴き付けられる。
【0040】
その後、ECU30の制御の下に、タンク圧が所定圧以上であるか否かが再度判定される(ステップS104)。
【0041】
ステップS104における判定の結果、タンク圧が所定圧以上であると判定された場合には(ステップS104:Yes)、ステップS103へ戻り、排気タービン11への補助圧縮エアーの供給が継続されたまま、タンク圧が所定圧以上であるか否かが再度判定される。
【0042】
他方、ステップS104における判定の結果、タンク圧が所定圧以上でないと判定された場合には(ステップS104:No)、ECU30の制御の下に、流量調整電磁弁25が全閉状態に設定される(ステップS105)。つまり、排気タービン11には補助圧縮エアーが噴き付けられなくなり、その結果、排気タービン11の回転数は減少する。
【0043】
その後、補助圧縮エアー供給装置24の動作により、補助圧縮エアーが蓄圧タンク21に蓄圧される(ステップS106)。
【0044】
他方、ステップS102における判定の結果、タンク圧が所定圧以上でないと判定された場合には(ステップS102:No)、ECU30の制御の下に、流量調整電磁弁25が全開状態に設定される(ステップS107)。このため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、最大の流量を維持しながら排気タービン11に噴き付けられる。
【0045】
その後、ECU30の制御の下に、開弁時間が一定時間(例えば、2秒)以上であるか否かが判定される(ステップS108)。より具体的には、流量調整電磁弁25を全開状態に設定した後、一定時間が経過したか否かが判定される。
【0046】
ここで、ステップS108における「一定時間」は、タンク圧が過度に低下しないように、好適な値が設定されることが好ましい。
【0047】
ステップS108における判定の結果、開弁時間が一定時間以上でない(つまり、流量調整電磁弁25を全開状態に設定した後、一定時間が経過していない)と判定された場合には(ステップS108:No)、ステップS107へ戻り、排気タービン11への補助圧縮エアーの供給が継続されたまま、開弁時間が一定時間以上であるか否かが再度判定される。
【0048】
他方で、ステップS108における判定の結果、開弁時間が一定時間以上である(つまり、流量調整電磁弁25を全開状態に設定した後、一定時間が経過している)と判定された場合には(ステップS108:Yes)、流量調整電磁弁25が全閉状態に設定された後(ステップS105)、補助圧縮エアーが蓄圧タンク21に蓄圧される(ステップS106)。
【0049】
ここで、実際のタンク圧について、図3及び図4を参照しながら説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る内燃機関用過給システムにおいて、加速開始時におけるタンク圧が所定圧よりも大きい場合のタンク圧の時間変化を概念的に示すグラフであり、図4は、本実施形態に係る内燃機関用過給システムにおいて、加速開始時におけるタンク圧が所定圧よりも小さい場合のタンク圧の時間変化を概念的に示すグラフである。
【0050】
図3の上側に示すように、加速開始時における(つまり、図2のステップS101において、「Yes」の判定がなされたときにおける)タンク圧が所定圧よりも大きい場合には、タンク圧が所定圧に低下するまで補助圧縮エアーの供給が継続される。その結果、タンク圧は徐々に低下していく。タンク圧が所定圧にまで低下した後は、補助圧縮エアーの供給が停止され、蓄圧タンク21に補助圧縮エアーが蓄圧されていく。その結果、タンク圧は徐々に増加していく。
【0051】
このように、加速開始時における(つまり、図2のステップS101において、「Yes」の判定がなされたときにおける)タンク圧が所定圧よりも大きい場合には、タンク圧が所定圧よりも大きい状態が維持される。
【0052】
このとき、図3の下側のグラフ中の実線にて示すように、排気タービン11の回転数は、過大に増大することなく、定常回転数(より具体的には、例えば、エンジン1が1000rpmから1500rpmの間の任意の低回転数で且つ2/5負荷以下の低負荷の定常運転状態から、アクセルペダルを強く踏み込むことでエンジン全負荷状態となる加速運転における、補助圧縮エアーを排気タービン11に噴きつけない場合の排気タービン11の定常ターボ回転数)まで滑らかに増大する。
【0053】
他方で、タンク圧を考慮することなく、連続的に(つまり、途中で停止することなく)補助圧縮エアーを供給し続けた場合には、図3の下側のグラフ中における破線にて示すように、排気タービン11の回転数は、定常回転数を超えるほど過大に増大してしまう。
【0054】
図4の上側に示すように、加速開始時におけるタンク圧が所定圧よりも小さい場合には、一定時間だけ補助圧縮エアーが排気タービン11へ供給される。一定時間が経過した後は、補助圧縮エアーの供給が停止され、蓄圧タンク21に補助圧縮エアーが蓄圧されていく。その結果、加速開始から一定時間は、タンク圧は徐々に低下し、その後、タンク圧は徐々に増加してく。
【0055】
このように、加速開始時における(つまり、図2のステップS101において、「Yes」の判定がなされたときにおける)タンク圧が所定圧よりも小さい場合においても、一定時間は補助圧縮エアーの供給が行われる。
【0056】
このとき、図4の下側のグラフ中の実線にて示すように、排気タービン11の回転数は、過大に増大することなく、定常回転数まで滑らかに増大する。他方で、タンク圧を考慮することなく、連続的に(つまり、途中で停止することなく)補助圧縮エアーを供給し続けた場合には、図4の下側のグラフ中における破線にて示すように、排気タービン11の回転数は、定常回転数を超えるほど過大に増大してしまう。
【0057】
ここで、本実施形態における「所定圧」は、車両の加速が続いた場合において、排気ガスの圧力(つまり、排圧)がどれだけ増大するかに応じて定められる。つまり、「所定圧」は、車両の加速が続いた場合における、将来の予測される排気ガスの圧力に応じて定められる。排気ガスの圧力が高まった場合には、該排気ガスの圧力よりも高い圧力の補助圧縮エアーを供給しなければ、排気タービンの回転数の増大には大きく寄与しなくなってしまうことを考慮すれば、将来の予測される排気ガスの圧力が相対的に高い場合には、「所定圧」もそれに伴って高くなる。同様に、将来の予測される排気ガスの圧力が相対的に低い場合には、「所定圧」もそれに伴って低くなる。つまり、「所定圧」は、将来の予測される排気ガスの圧力よりも高い(或いは、概ね同一である)圧力となる。
【0058】
より具体的に説明すると、車両が加速を開始した直後においては、排気ガスの圧力は一般的に低いため、車両が加速を開始した直後の排気ガスの圧力に応じて所定圧を定めたとしても、該所定圧は相対的に低くなってしまう。このため、時間の経過と共に排気ガスの圧力が増大していけば、所定圧より高いにも関わらず現在の実際の排気ガスの圧力よりも低い圧力の補助圧縮エアーが排気タービン11へ供給されるおそれがある。これは、排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与しない補助圧縮エアーの消費につながる。このような事態を考慮して、排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与するような補助圧縮エアーの有効的な供給を実現すると共に排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与しない補助圧縮エアーの大量消費を防ぐために、将来の予測される排気ガスの圧力に応じて所定圧が定められる。
【0059】
将来の予測される排気ガスの圧力は、吸気圧センサ5により検出される吸気圧や、回転数センサ6により検出される車両が加速を開始した時点におけるエンジン1の回転数等に基づいて、車両の特性やエンジン1の特性や内燃機関用過給システムの特性や車両の加速特性等を考慮しながら算出されることが好ましい。
【0060】
以上説明したように、タンク圧が相対的に高い場合(つまり、タンク圧が所定圧以上の場合)には、圧力が相対的に高い補助圧縮エアーを排気タービン11に供給することで、排気タービン11の回転数を増大させることができる。特に、蓄圧された補助圧縮エアーの消費によってタンク圧が低下していったとしても、排気ガスの圧力よりも高い所定圧以上の補助圧縮エアーを供給することができるため、排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与するような補助圧縮エアーの有効な供給を実現することができる。そして、タンク圧力が所定圧未満になる前に、補助圧縮エアーの排気タービン11への供給が停止されるため、蓄圧された補助圧縮エアーを使い切ってしまうという不都合を好適に防ぐことができる。従って、排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与しない補助圧縮エアーの大量消費を防ぐことができると共に、次の加速に備えて補助圧縮エアーを蓄圧することができる。
【0061】
他方で、タンク圧が相対的に低い場合(つまり、タンク圧が所定圧以上でない場合)にも、一定時間の間だけ補助圧縮エアーを供給することで、排気タービン11の回転数を相応に増大させることができる。
【0062】
そして、排気タービン11の回転数の増大に大きく寄与するような態様で補助圧縮エアー供給するため、排気タービン11の回転数を過度に増大させることがない(つまり、排気タービン11の回転数がオーバーシュート状態にならない)という効果をも享受することができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る内燃機関用過給システムによれば、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーを効率的に且つ有効に供給することができる。つまり、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーを排気タービン11へ適切に供給することができる。
【0064】
尚、上述の実施形態では、流量調整電磁弁25を「調整手段」の一具体例として説明と進めたが、必ずしも電磁弁である必要はなく、補助圧縮エアーの流量を調整することができる弁であれば、流量調整電磁弁25の代わりに使用することができる。更には、弁でなくとも、エアーアシスト配管を流れる補助圧縮エアーの流量を調整できる構造物であれば、流量調整電磁弁25の代わりに使用することができる。
【0065】
更に、上述の実施形態では、流量調整電磁弁25を全開状態に設定することで補助圧縮エアーの流量を増加させ、且つ流量調整電磁弁25を全閉状態に設定することで補助圧縮エアーの流量を減少させている。しかしながら、流量調整電磁弁25の開口面積を適宜設定することで(つまり、流量調整電磁弁25の開きの度合いに応じて)、補助圧縮エアーの流量が任意の流量となるように、補助圧縮エアーの流量を増減させてもよい。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関用過給システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態に係る内燃機関用過給システムに係る実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る内燃機関用過給システムにおいて、加速開始時におけるタンク圧が所定圧よりも大きい場合のタンク圧の時間変化を概念的に示すグラフである。
【図3】本実施形態に係る内燃機関用過給システムによるタービンの回転数及び補助圧縮エアーの流量の時間変化を概念的に示すグラフである。
【図4】本実施形態に係る内燃機関用過給システムにおいて、加速開始時におけるタンク圧が所定圧よりも小さい場合のタンク圧の時間変化を概念的に示すグラフである
【符号の説明】
【0068】
1 エンジン
3 エギゾーストマニホールド
4 インテークマニホールド
11 排気タービン
12 コンプレッサー
13 ロータリーシャフト
14 エアクリーナー
15 インタークーラー
21 蓄圧タンク
22 逆止弁
23 補助圧縮エアー配管
24 補助圧縮エアー供給装置
25 流量調整電磁弁
26 エアーアシスト配管
30 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気タービンを備える過給器と、
該排気タービンに補助空気を供給する蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクより前記排気タービンへ供給される前記補助空気の流量を調整する調整手段と、
前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が所定の圧力以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が前記所定の圧力以上であると判定された場合に、前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が、前記所定の圧力以下になるまで前記補助空気を前記排気タービンへ供給するように前記調整手段を制御する第1制御手段と、
前記蓄圧タンクにおける前記補助空気の圧力が前記所定の圧力以上でないと判定された場合に、前記補助空気を一定時間前記排気タービンへ供給するように前記調整手段を制御する第2制御手段と
を備えることを特徴とする内燃機関用過給システム。
【請求項2】
前記所定の圧力は、前記排気ガスの圧力に応じて定められることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項3】
前記排気ガスの圧力の増減の程度を予測する予測手段を更に備え、
前記所定の圧力は、前記予測手段により予測される前記排気ガスの圧力の増減の程度に応じて定められることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項4】
前記予測手段は、吸気圧及び加速初期における内燃機関の回転数の少なくとも1つに基づいて、前記排気ガスの圧力の増減の程度を予測することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用過給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2277(P2008−2277A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169868(P2006−169868)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】