説明

内視鏡撮像システム

【課題】送信される同期信号にノイズが混入しても同期ずれの発生を低減ないしは解消できる内視鏡撮像システムを提供する。
【解決手段】光源装置3内の照明タイミング信号生成回路43は、照明タイミング信号を発生して、モータ駆動制御回路35に出力し面順次照明の照明タイミングの決定させると共に、通信ケーブル13を介して撮像装置4に送信し、PLL回路23によりこの照明タイミング信号に位相同期した撮像タイミング信号を生成させる。位相同期後には切替スイッチ48は切り替えられ、撮像装置4は、固定された電圧で発振するVCO49に基づく撮像タイミング信号で、送信される照明タイミング信号とは独立して動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置等による照明光のもとで内視鏡に設けられた撮像素子により撮像を行う内視鏡撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用分野及び工業用分野において内視鏡が広く用いられるようになった。例えば、医療用分野においては、患者等の被検体内に挿入部を挿入し、被検体内を照明光で照明し、照明された患部等の検査対象部位を撮像素子により撮像する。そして、撮像素子により撮像された画像を内視鏡画像としてモニタにカラー表示する。
この場合、照明光としては、白色の照明光で照明し、光学的に色分離を行う色フィルタを備えたカラー撮像素子を用いて撮像を行う同時式のシステムと、面順次の照明光で照明し、その面順次の照明光に同期して、色フィルタを有しないモノクロの撮像素子を用いて撮像を行う面順次式のシステムとの一方が採用される。
前者の同時式の場合には、照明光のタイミングと撮像のタイミングとの同期を必要としない利点を有する。
【0003】
これに対して、後者の面順次式の場合には、面順次の照明光と撮像のタイミングとを同期させることが必要になる制約があるが、同時式の撮像素子の場合よりも解像度が高い内視鏡画像が得られる利点がある。このため、面順次式の場合には、同時式の撮像素子の場合よりも小さい撮像素子で同じ解像度の内視鏡画像が得られる利点があり、挿入部の細径化に適する。
例えば特開2002−315722号公報の第1の従来例には、面順次式の内視鏡撮像システムが開示されている。
【0004】
この第1の従来例は、光源装置は、光源としてのランプによる照明光をR,G,Bフィルタを備えた回転フィルタを回転させることによりR,G,Bの面順次光を発生し、ライトガイドで伝送して、電子内視鏡の挿入部の先端部から出射し、検査対象部位を照明する。照明された検査対象部位を撮像素子で撮像し、CCUにおいて信号処理し、モニタで表示する。CCUは、撮像タイミングと回転フィルタの回転のタイミング、つまり照明タイミングとを一致させるため、垂直同期信号を光源装置内のPLL回路に送る。そして、PLL回路の出力信号で回転フィルタを回転させるモータを駆動する。
また、特開2006−280465号公報の第2の従来例には、挿入部の先端部にR,G,Bで発光する発光ダイオードを用いて面順次照明を行う内視鏡撮像システムが開示されている。
【0005】
この第2の従来例においては、第1の従来例におけるCCUがビデオプロセッサとなり、第1の従来例における光源及び回転フィルタが挿入部の先端部に配置された(発光ダイオードとなる)構成となり、このために第1の従来例における光源装置に相当する構成が発光ダイオード駆動制御部(駆動制御装置と略記)となっている。
この第2の従来例においても、ビデオプロセッサ側のタイミングコントローラからの出力信号に同期して、駆動制御装置内の発光ダイオードドライバに発光ダイオードドライブ信号を出力すると共に、CCDドライバもタイミングコントローラからの出力信号に同期して、CCDドライブ信号をCCDに出力する。
【特許文献1】特開2002−315722号公報
【特許文献2】特開2006−280465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1或いは第2の従来例においては、内視鏡撮像システムの周囲のノイズにより、CCU(或いはビデオプロセッサ、以下、撮像装置と総称)と光源装置(或いは駆動制御装置)間で同期させるための同期信号を送信する通信ケーブル等にノイズが重畳して同期させる動作に影響を及ぼし、同期がずれてしまうこと、つまり同期ずれが発生する。同期ずれが発生すると、表示される内視鏡画像が正常に表示されなくなってしまう。
本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、送信される同期信号にノイズが混入しても同期ずれの発生を低減ないしは解消できる内視鏡撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る1形態の内視鏡撮像システムは、被検体に照射するための照明光を発生させる光源装置と、
内視鏡に設けられた前記被検体を撮像する撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置と、
前記光源装置に設けられ、前記照明光の照明タイミングを決定するための第1の同期信号を発生する第1の同期信号発生部と、
前記撮像装置に設けられ、前記光源装置から送信される前記第1の同期信号を参照する比較動作により、前記第1の同期信号に同期した第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、
前記撮像装置に設けられ、前記第2の同期信号生成部が前記第1の同期信号に同期した前記第2の同期信号の生成後に、前記参照を停止して前記第2の同期信号に基づき前記撮像素子の撮像タイミングを制御する撮像制御部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他の1形態の内視鏡撮像システムは、被検体に照射するための照明光を発生させる光源装置と、
内視鏡に設けられた前記被検体を撮像する撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置と、
前記撮像装置に設けられ、前記撮像素子の撮像タイミングを決定する第1の同期信号を発生する第1の同期信号発生部と、
前記光源装置に設けられ、前記撮像装置から送信される前記第1の同期信号を参照する比較動作により、前記第1の同期信号に同期した第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、
前記光源装置に設けられ、前記第2の同期信号生成部が前記第1の同期信号に同期した前記第2の同期信号の生成後に、前記参照を停止して前記第2の同期信号に基づき前記照明タイミングを制御する照明制御部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信される同期信号にノイズが混入しても同期ずれの発生を低減ないしは解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
図1から図5は、本発明の実施例1に係り、図1は、本発明の実施例1の内視鏡撮像システムを示し、図2は、図1における撮像装置及び光源装置の構成を示し、図3は本実施例の動作説明用のタイミングチャートを示し、図4はロック前とロック後に切り替えられる切替スイッチの設定状態を示し、図5は変形例のタイミングチャートを示す。
図1に示すように本発明の実施例1の内視鏡撮像システム1は、被検体内に挿入され、内視鏡検査を行うための電子内視鏡2と、この電子内視鏡2が接続され、照明光を発生する光源装置3と、電子内視鏡2に内蔵された撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置(或いは信号処理装置)4と、撮像装置4から出力される映像信号が入力されることにより、対応する内視鏡画像を表示するモニタ5とを有する。
電子内視鏡2は、細長の挿入部6と、この挿入部6の後端に設けられた操作部7と、この操作部7から延出されたユニバーサルケーブル8とを有し、このユニバーサルケーブル8の端部に設けられたコネクタ9は、光源装置3に着脱自在に接続される。
【0011】
また、このコネクタ9には、信号ケーブル11が接続又は延出され、この信号ケーブル11の端部の信号コネクタ12は、撮像装置4に着脱自在に接続される。この信号ケーブル11内には、撮像素子に接続された信号線が挿通されている。
なお、光源装置3と撮像装置4とは、光源装置3から撮像装置4に第1の同期信号としての照明タイミング信号及び基準位置信号を送信する通信ケーブル13により接続されている。
挿入部6内、操作部7内、及びユニバーサルケーブル8内にはライトガイド14が挿通されている。そして、コネクタ9を光源装置3に接続することにより、図2に示すように光源装置3内のランプ15で発生した照明光が、回転フィルタ33を介して面順次照明光としてライトガイド14の入射端面に入射される。
【0012】
この面順次照明光は、ライトガイド14により伝送され、挿入部6の先端部16(図1参照)の照明窓に固定された(ライトガイド)先端面から外部に照射され、患部等の被写体は、照明される。照明された被写体は、先端部16の観察窓に取り付けられた対物レンズ17により、その結像位置に配置された撮像素子としての例えば電荷結合素子(CCDと略記)18に結像される。
図2に示すように、このCCD18は、信号線により撮像装置4内のCCD駆動回路21とプロセス回路22とに接続される。CCD駆動回路21は、CCD18を駆動し、プロセス回路22はCCD18の出力信号に対する信号処理を行う。
この撮像装置4は、光源装置3から送信される(第1の同期信号としての)照明タイミング信号に同期した(第2の同期信号としての)撮像タイミング信号を(第2の同期信号生成部としての)位相同期回路(Phase Locked Loop Circuit、以下PLL回路と略記)23により生成する。
【0013】
また、撮像装置4は、このPLL回路23の動作制御と、その動作制御を介して撮像タイミング等の制御を行う撮像制御部24を有する。そして、この撮像制御部24はPLL回路23からの出力される撮像タイミング信号と、基準位置信号とに同期した撮像制御信号をCCD駆動回路21とプロセス回路22に送り、CCD駆動と信号処理を制御する撮像制御を行う。
一方、光源装置3は、ランプ点灯回路31により点灯されるランプ15の照明光路上に、モータ32により回転される回転フィルタ33が配置されている。この回転フィルタ33には、その周方向にR,G,Bの各波長の光を透過する色フィルタとしてR,G,Bフィルタ34R,34G,34Bが(例えば周方向を3等分するように)扇形状に設けられている。なお、回転フィルタ33を回転するこのモータ32は、モータ駆動制御回路35によるモータ駆動信号により、所定の回転速度で回転する。
【0014】
そして、ランプ15からの白色の照明光を、この回転フィルタ33を通すことによりR,G,Bの面順次照明光(R,G,B照明光、或いはR,G,B光と略記)が生成され、さらに集光レンズ36で集光されてライトガイド14の入射端面に入射する。
また、光源装置3における回転フィルタ33における光路上に配置される基準となる色フィルタ(例えばのRフィルタ34R)のタイミングを検出するために、回転フィルタ33の周方向における基準となる1箇所に孔37が設けてあり、かつその孔37の位置を検出するための位置センサとして、例えばフォトインタラプタ38が回転フィルタ33の外周に近接して配置されている。
このフォトインタラプタ38は、発光素子と受光素子とがU字形状における対向する位置に設けられている。そして、その対向する両素子間に孔37が位置すると、受光素子は、発光素子の光を受光して、回転フィルタ33における光路上に配置される基準の色フィルタ(この場合Rフィルタ34R)の位置を検出し、基準位置信号を出力する。
【0015】
本実施例においては、例えばRフィルタ34Rが光路上に配置されてR光が照明光としてライトガイド14側に出射(開始)されるタイミングに、フォトインタラプタ38の受光素子は、基準位置信号を出力する。
また、この光源装置3は、基準位置信号と共に、照明タイミングを決定する(第1の同期信号発生部としての)タイミング信号発生部41を有する。このタイミング信号発生部41は、基準となるクロック信号、例えば48MHzのクロック信号を発生するクロック発生回路42と、このクロック信号を分周する等して回転フィルタ33の回転速度、換言すると面順次の照明タイミングを決定する照明タイミング信号生成回路43とを有する。 また、フォトインタラプタ38による基準位置信号も、照明タイニング信号生成回路43に入力される。
【0016】
そしてこの照明タイミング信号生成回路43は、基準位置信号に同期した面順次の照明タイミングを決定する照明タイミング信号をモータ駆動制御回路35に出力すると共に、この照明タイミング信号を通信ケーブル13を介して撮像装置4のPLL回路23に送信する。また、フォトインタラプタ38による基準位置信号も、光源装置3から通信ケーブル13を介して撮像装置4の撮像制御部24に送信する。
図3に示すように、照明タイミング信号生成回路43は、基準位置信号に位相同期した照明タイミング信号を生成する。なお、横軸は時間tの経過を示す(図4,図5も同様)。
また、この照明タイミング信号に同期してR,G,B光が出射される。この場合、基準位置信号とR光が同期する状態となっている。より具体的には、基準位置信号の周期を3等分した1/3の周期で照明タイミング信号が生成される。この状態の基準位置信号と、照明タイミング信号とが撮像装置4に送信される。
【0017】
そして、撮像装置4は、PLL回路23により、照明タイミング信号に位相同期した(第2の同期信号としての)撮像タイミング信号を生成する。
このPLL回路23は、参照信号としての照明タイミング信号が入力される位相比較回路45を有する。この位相比較回路45は、この照明タイミング信号と分周回路46の出力信号としての撮像タイミング信号との位相比較を行い、その位相差に対応した比較信号をフィルタ回路47に出力する。
このフィルタ回路47は、位相差に対応した低周波の信号(フィルタ出力信号)を切替スイッチ48を介して電圧制御発振回路(VCOと略記)49に出力する。そして、このVCO49は、入力される信号の電圧レベルに応じて周波数が変化するクロック信号(換言すると電圧レベルに応じて位相が変化するクロック信号)を発生する。
【0018】
この場合、VCO49は、フィルタ出力信号により、位相比較回路45で検出された位相差が0となる向きに周波数或いは位相が変化するようにPLL制御プープにより制御される。
VCO49で発生されたクロック信号は、分周回路46で所定の分周比で分周されて照明タイミング信号に位相同期した撮像タイミング信号を位相比較回路45と撮像制御部24に出力する。
図3には、上述した基準位置信号、照明タイミング信号等と共に、PLL回路23の位相同期前、つまり位相ロック前(単にロック前ともいう)の撮像タイミング信号と、(位相)ロック後のタイミング信号とを示している。
【0019】
本実施例においては、撮像制御部24は、さらにPLL回路23の動作を制御する。例えばフィルタ出力信号は、撮像制御部24に入力され、撮像制御部24は、このフィルタ出力信号をモニタして、位相同期したロック状態か否かを判定する。そして、位相同期したロック状態と判定したロック後に、撮像制御部24は、切替スイッチ48を切り替える。
また、このフィルタ出力信号は、例えばサンプル/ホールド回路(S/H回路)50に入力され、このS/H回路50は、撮像制御部24によりサンプル/ホールドの動作が制御される。そして、撮像制御部24は、ロック状態と判定した場合には、S/H回路50がフィルタ出力信号をサンプル/ホールドするように制御する。
また、撮像制御部24は、切替スイッチ48を接点aからbに切り替える制御を行い、S/H回路50によりサンプルホールドにより(電圧値が)ホールドされたフィルタ出力信号をVCO49に出力するように制御する。
【0020】
そして、VCO49は、切替直前にホールドされたロック状態での一定(或いは固定)周波数のクロック信号を発生する状態となる。
この状態においては、基準位置信号及び撮像タイミング信号は、照明タイミング信号に位相同期した状態で、切替以降は、光源装置3から送信される照明タイミング信号とは独立した状態での(第2の同期信号としての)撮像タイミング信号に基づいて、CCD駆動回路21とプロセス回路22の動作を制御する。
例えば撮像制御部24は、撮像タイミング信号に基づいて、図3のR,G,B光の照明期間後となるタイミングに撮像制御信号をCCD駆動回路21に送り、この撮像制御信号に同期したタイミングでCCD駆動回路21はCCD駆動信号をCCD18に印加する。また、撮像制御部24は、プロセス回路22にも同様の撮像制御信号を送り、CCD18により光電変換された撮像信号に対する信号処理のタイミングを制御する。
【0021】
また、プロセス回路22に送る撮像制御信号しては、基準位置信号により、色処理する場合の識別を適切に行うことができる。具体的には、CCD18からR光の照明下で撮像されたRの撮像信号は、プロセス回路22内の図示しないR用メモリに格納される。他のG,B光の照明下で撮像されたG,Bの撮像信号は、プロセス回路22内の図示しないG,B用メモリにそれぞれ格納される。つまり、色処理が適切に行われ、モニタ5には内視鏡画像がカラー表示される。
図4は、切替スイッチ48の切替状態を示す。図4に示すように電源ONされた初期状態、換言するとPLL回路23がPLLの動作を開始したロック前の状態では、切替スイッチ48は、接点aが選択されている。そして、PLL回路23の動作により、ロック状態になると、接点bが選択されるように切り替えられる。
接点bが選択されると、VCO49は、位相比較回路45とは切り離された状態、つまり照明タイミング信号を参照しないで独立した状態となり、この状態の撮像タイミング信号で撮像装置4は動作する。
【0022】
このため、切替スイッチ48が接点bへの切替後に、以下のように通信ケーブル13に外部からノイズが混入しても、その影響を解消できる。
通信ケーブル13に外部からノイズが混入して、送信される照明タイミング信号にノイズが重畳された状態の波形になって、その信号が位相比較回路45に入力されると、位相比較回路45の出力信号はノイズの影響を受ける。つまり、位相比較回路45は、位相比較の際にノイズのために位相差が変動するが、この位相差の信号は、切替スイッチ48によりVCO49とは遮断されており、VCO49のクロック信号の生成に用いられないため、ノイズに影響されない。
このように本実施例によれば、PLL回路23により位相ロックした後は、通信ケーブル13により送信される(第1の同期信号としての)照明タイミング信号にノイズが混入しても、その影響を受けることなく撮像装置4は撮像動作及び信号処理の動作を行う。
【0023】
このため、本実施例は、通信ケーブル13にノイズが混入しても、撮像装置4は、その影響を受けることなく、安定した信号処理を行う。つまり、ノイズの影響を殆ど解消できる。そして、モニタ5には、安定した内視鏡画像が表示される。
なお、電源ON時のようにPLL回路23がPLL動作、換言すると位相同期を行う動作中に通信ケーブル13にノイズが混入した場合には、その影響を受けるが、この期間は通常短く、内視鏡検査を行う準備段階である場合が多い。このため、実質的に、ノイズによる影響を十分に低減できることになる。
なお、本実施例の変形例として、撮像制御部24は、切替スイッチ48を切替後にも、フィルタ回路47のフィルタ出力信号をモニタし、そのずれ量が所定値以上となった場合には切替スイッチ48を切替前の状態に戻し、再びPLL動作を行い、撮像タイミング信号を照明タイミング信号に位相同期させるようにしても良い。
【0024】
図5はこの動作のタイミングチャートを示す。照明タイミング信号と撮像タイミング信号とが同期した状態であると、フィルタ出力信号は、所定値(ここではVr)であり、撮像制御部24は、この所定値Vrから、閾値Δ1以上ずれると、調整が必要であると判断する。
そして、撮像制御部24は、閾値Δ1以上ずれると、切替スイッチ48を接点bから接点aがONとなるように切り替え、撮像タイミング信号を再調整する。接点aに切り替えることにより、PLL回路23によるPLL動作が開始する。そして、撮像タイミング信号を照明タイミング信号に位相同期させることができる。
なお、撮像制御部24は、フィルタ出力信号をモニタして、そのずれ量が所定値以上か否かを判断し、その判断結果によりPLL動作が開始させるとして説明したが、例えば位相比較回路45の出力信号をモニタしても良い。そして、図5に示すように照明タイミング信号と撮像タイミング信号とのずれ量が予め設定した閾値T1を超えた場合に、切替スイッチ48を接点bから接点aがONとなるように切り替え、撮像タイミング信号を再調整するようにしても良い。
変形例のようにすることにより、長時間にわたり動作させるような場合においても、安定した内視鏡画像を得ることができる。この場合にも、位相同期させるPLL動作が行われる期間は、通常短いので、ノイズの影響を低減できる。その他、実施例1と同様の効果を有する。
【0025】
(実施例2)
図6は本発明の実施例2の内視鏡撮像システム1Bにおける光源装置3Bと撮像装置4Bの構成を示す。実施例1においては、光源装置3側から第1の同期信号としての照明タイミング信号(及び基準位置信号)を通信ケーブル13を介して撮像装置4に送信していたが、本実施例では撮像装置4Bから第1の同期信号としての例えば垂直同期信号VDを光源装置3Bに送信する。
撮像装置4Bは、図2の撮像装置4におけるCCD駆動回路21、プロセス回路22及び撮像制御部24の他に、(第1の同期信号発生部としての)撮像タイミング信号発生部51を有する。
この撮像タイミング信号発生部51は、基準のクロック信号を発生するクロック信号発生回路52と、このクロック信号を分周する等して、(第1の同期信号としての)垂直同期信号VDを含む撮像タイミング信号等を生成するタイミング発生回路(TGと略記)53とを有する。
【0026】
このTG53は、撮像タイミングと照明タイミングとを同期させる為に、例えばR,G,B光の照明タイミングの3倍の周期となる回転フィルタ33を1回転させた場合の基準となる例えばR光の照明タイミングに同期させるための垂直同期信号VDを光源装置3Bに送信する。
また、このTG53は、この垂直同期信号VDに同期した、その周期を3等分した1/3の周期で、かつこの垂直同期信号VDに同期した面順次撮像タイミング信号を生成する。
この面順次撮像タイミング信号と、垂直同期信号VDを撮像制御部24に送る。撮像制御部24は、垂直同期信号VDと面順次撮像タイミング信号とから、これらに同期した撮像制御信号を生成し、CCD駆動回路21とプロセス回路22の動作を制御する。
【0027】
一方、光源装置3Bは、図2の光源装置3におけるタイミング信号発生部41の代わりに、制御部55と、撮像装置4に設けられたPLL回路23に相当するPLL回路23′とを有する。
PLL回路23′を構成する位相比較回路45には、第1の同期信号としての垂直同期信号VDが参照信号として入力される。この位相比較回路45の位相比較した比較信号は、図2の場合と同様にフィルタ回路47を経てVCO49に印加され、このVCO49の発振出力信号としてのクロック信号は分周回路46′に出力される。
この分周回路46′の出力信号(PLL出力信号という)は、モータ駆動制御回路35に印加される。このモータ駆動制御回路35は、分周回路46′から出力されるPLL出力信号に同期してモータ32を回転させる。そして、その回転に同期して出力される基準位置信号が位相比較回路45に入力される。
【0028】
なお、モータ32は、図7A及び図7Bに示すように、例えば基準位置信号の周期を3等分したPLL出力信号に同期したモータ駆動信号が、3つのパルスで回転フィルタ33を1回転させるように回転する。
なお、この場合のPLL回路23′は、通常のPLL閉ループの構成と異なるが、分周回路46の出力信号に連動して変化する基準位置信号を位相比較回路45に戻す擬似閉ループを形成するようにしているので、通常のPLL回路のようにこのPLL回路23′の動作で基準位置信号は、参照信号となる垂直同期信号VDに位相同期するようになる(図7参照)。
また、フィルタ回路47の出力信号は、(照明制御部としての機能を持つ)制御部55とS/H回路50とに出力される。制御部55は、フィルタ出力信号をモニタして、ロック状態になったか否かの判定を行う。そして、ロック状態になると、実施例1の場合と同様に、S/H回路50によりフィルタ出力信号をサンプルホールドさせると共に、切替スイッチ48の接点をaからbに切り替える制御を行う。
【0029】
この切替スイッチ48は、図4に示した場合と同様に切替制御される。
図7A、図7Bは、本実施例におけるロック前及びロック後の動作説明のタイミングチャートを示す。
ロック前では、図7Aに示すように垂直同期信号VDに対して、PLL回路23′により制御される基準位置信号はその位相がずれた状態である。また、R,G,B光も垂直同期信号VDから同期がずれた状態である。
そして、このPLL回路23′によるPLL制御機能により、ロック後には図7Bに示すように基準位置信号は、垂直同期信号VDに位相同期する。
また、基準位置信号と、PLL出力信号(つまり、モータ駆動信号)及びR,G,B光のタイミングとが同期する。そして、実施例1と同様に、ロック後には切替スイッチ48が切り替えられて、VCO49は、垂直同期信号VDと遮断されて独立した状態となる。そして、光源装置3Bは、制御部55の制御下で、この状態のVCO49のクロック信号により、第2の同期信号としての基準位置信号とPLL出力信号とを生成し、回転フィルタ33の回転制御、つまり照明タイミングの制御を行う。
【0030】
本実施例の場合も、実施例1の場合と同様にノイズの影響を殆ど受けることなく、安定して照明と撮像を行うことができる。
なお、本実施例の変形例として、制御部55は、切替スイッチ48を接点bに切替後にも、フィルタ回路47のフィルタ出力信号をモニタし、そのずれ量が所定値以上となった場合には切替スイッチ48を切替前の状態に戻し、再びPLL動作を行い、垂直同期信号VDに基準位置信号を同期させるようにしても良い。
図8はこの動作のタイミングチャートを示す。垂直同期信号VDと基準位置信号とが同期した状態であると、フィルタ出力信号は、所定値(ここではVr)であり、制御部55は、この所定値Vrから、閾値Δ2以上ずれると、調整が必要であると判断する。
【0031】
そして、制御部55は、切替スイッチ48を接点bから接点aがONとなるように切り替え、基準位置信号を再調整する。接点aに切り替えることにより、PLL回路23′によるPLL動作が開始する。そして、基準位置信号を再び垂直同期信号VDに同期させることができる。
なお、制御部55は、フィルタ出力信号をモニタして、そのずれ量が所定値以上か否かを判断し、その判断結果によりPLL動作が開始させるとして説明したが、例えば位相比較回路45の出力信号をモニタしても良い。そして、図8に示すように垂直同期信号VDと基準位置信号とのずれ量が予め設定した閾値T2を超えた場合に、切替スイッチ48を接点bから接点aがONとなるように切り替え、基準位置信号を再調整するようにしても良い。
変形例のようにすることにより、長時間にわたり安定した内視鏡画像を得ることができる。
【0032】
ところで、例えば図2の構成において、PLL回路23により位相同期させている最中において、撮像装置4側に、通信ケーブル13により光源装置3側から送信される信号成分におけるノイズを検出するノイズ検出回路61(2点鎖線で示す)を設け、ノイズ検出回路61が所定値以上のノイズを検出した場合には、撮像制御部24が切替スイッチ48を接点aからbに切り替えるようにしても良い。
そして、この切替直前で、ノイズ検出前にS/H回路50によりサンプルホールドしたフィルタ出力電圧をVCO49に印加して、その一定(固定)の電圧値でVCO49を発振駆動するようにしても良い。
また、この場合、ノイズ検出回路61は、位相比較回路45に入力される照明タイミング信号におけるノイズも検出するようにしても良い。
【0033】
つまり、ノイズが混入した場合には、そのノイズによりPLL動作が本来の位相同期する動作と乖離した動作を行う可能性が発生するため、PLLによる位相同期させる動作途中においても、固定された撮像タイミング信号の状態に切替設定した方が安定した撮像動作を行うことができる。
また、図2においては、PLL回路23は、電源ON時のように位相同期していない状態、つまりロック前の状態からロック後には、切替スイッチ48を切り替えて、VCO49を固定した電圧で駆動、即ち照明タイミング信号とは独立して動作する構成例であるが、この構成例に限定されない。
具体的には、図2において、撮像制御部24は、位相ロック後においても、切替スイッチ48を切り替えない。このため、PLL回路23は通常のPLL動作を行い、また、S/H回路50は常時、所定の周期でサンプルホールドを行う。
【0034】
そして、撮像制御部24は、ノイズ検出回路61によりノイズ検出信号が入力された場合には、そのノイズ検出信号が入力された直前にS/H回路50によりサンプルホールドされたロック状態の固定の電圧値をVCO49に印加するように切替スイッチ48とS/H回路50を制御するようにしても良い。
このような構成によると、既存の構成の内視鏡撮像装置の場合にも、ノイズによる影響を緩和できる。なお、図2の構成例の場合で説明したが、図6の場合の構成例においても同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
撮像素子が搭載された内視鏡を用いて内視鏡検査を行う。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の実施例1の内視鏡撮像システムの全体を示す図。
【図2】図2は図1における撮像装置及び光源装置の構成を示す構成図。
【図3】図3は実施例1の動作説明用のタイミングチャート。
【図4】図4はロック前及びロック後の切替スイッチの状態を示す動作説明図。
【図5】図5は実施例1の変形例の動作説明用のタイミングチャート。
【図6】図6は本発明の実施例2の内視鏡撮像システムの全体を示す図。
【図7A】図7Aはロック前における実施例2の動作説明用のタイミングチャート。
【図7B】図7Bはロック後における実施例2の動作説明用のタイミングチャート。
【図8】図8は実施例2の変形例の動作説明用のタイミングチャート。
【符号の説明】
【0037】
1…内視鏡システム、2…電子内視鏡、3…光源装置、4…撮像装置、5…モニタ、6…挿入部、13…通信ケーブル、14…ライトガイド、15…ランプ、18…CCD、21…CCD駆動回路、22…プロセス回路、23…PLL回路、24…撮像制御部、32…モータ、33…回転フィルタ、35…モータ駆動制御回路、41…タイミング信号発生部、43…照明タイミング信号生成回路、45…位相比較回路、46…分周回路、47…フィルタ回路、48…切替スイッチ、49…VCO、50…S/H回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射するための照明光を発生させる光源装置と、
内視鏡に設けられた前記被検体を撮像する撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置と、
前記光源装置に設けられ、前記照明光の照明タイミングを決定するための第1の同期信号を発生する第1の同期信号発生部と、
前記撮像装置に設けられ、前記光源装置から送信される前記第1の同期信号を参照する比較動作により、前記第1の同期信号に同期した第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、
前記撮像装置に設けられ、前記第2の同期信号生成部が前記第1の同期信号に同期した前記第2の同期信号の生成後に、前記参照を停止して前記第2の同期信号に基づき前記撮像素子の撮像タイミングを制御する撮像制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡撮像システム。
【請求項2】
被検体に照射するための照明光を発生させる光源装置と、
内視鏡に設けられた前記被検体を撮像する撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置と、
前記撮像装置に設けられ、前記撮像素子の撮像タイミングを決定する第1の同期信号を発生する第1の同期信号発生部と、
前記光源装置に設けられ、前記撮像装置から送信される前記第1の同期信号を参照する比較動作により、前記第1の同期信号に同期した第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、
前記光源装置に設けられ、前記第2の同期信号生成部が前記第1の同期信号に同期した前記第2の同期信号の生成後に、前記参照を停止して前記第2の同期信号に基づき前記照明タイミングを制御する照明制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡撮像システム。
【請求項3】
被検体に照射するための照明光を発生させる光源装置と、
前記被検体を撮像する撮像素子に対する信号処理を行う撮像装置と、
前記光源装置及び撮像装置の一方に設けられ、前記照明光の照明タイミング及び前記撮像素子の撮像タイミングの一方を決定する第1の同期信号を出力可能な第1の同期信号生成部と、
前記光源装置及び撮像装置の一方に設けられ、前記第1の同期信号に基づき、前記照明タイミング及び前記撮像タイミングの一方を制御する第1の制御部と、
前記光源装置及び撮像装置の他方に設けられ、前記第1の同期信号と同じタイミングの第2の同期信号を前記第1の同期信号と独立して出力可能な第2の同期信号生成部と、
前記光源装置及び撮像装置の他方に設けられ、前記第2の同期信号生成部の第2の同期信号に基づき、前記照明タイミング及び前記撮像タイミングの他方を制御する第2の制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡撮像システム。
【請求項4】
前記第2の同期信号生成部は、第2の同期信号を前記第1の同期信号と同期させる比較動作を行った所定時間後に、前記第1の同期信号と同じタイミングの前記第2の同期信号を独立して出力可能とすることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡撮像システム。
【請求項5】
前記第2の同期信号生成部は、位相同期回路を用いて形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つの請求項に記載の内視鏡撮像システム。
【請求項6】
前記撮像制御部又は照明制御部は、前記位相同期回路による前記比較動作をモニタし、前記第2の同期信号が前記第1の同期信号に位相同期した事を検出後に、固定の周波数で前記第2の同期信号を発生するように制御することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−29383(P2010−29383A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193838(P2008−193838)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】