説明

内部アンテナとフラットパネル・スピーカーのアセンブリ及びそれを含む移動体端末

アンテナ・アセンブリ及び無線通信端末が提供される。アンテナ・アセンブリには、平面アンテナ(140)と、平面アンテナと一体化可能なフラットパネル・スピーカー(130)とが含まれる。無線通信端末は、フラットパネル・スピーカーと平面アンテナとを含み、一体化されているか否かにかかわらず、それらはハウジング内の電子回路(120)の同一面上で互いに隣接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信の分野にかかわる。より詳細には、アンテナとそれを含む無線通信端末とに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯無線電話機のような個人用電子装置の製造者や設計者は、装置の魅力的な様式的特徴を維持しつつも、装置の全体的規模を縮小するための方法をしばしば模索している。スピーカーを含むそのような装置のサイズ縮小の結果の一つは、スピーカーのためのスペースの縮小である。その上で、そのような個人用電子装置には、ブザー、音声信号生成、及び、音楽や他の高周波数帯域信号の復元や再生の少なくともいずれかを含めて、様々な音声信号生成機能が求められるであろう。
【0003】
音声信号生成機能をサポートするハードウェアが利用可能なスペースが、個人用電子装置内で縮小するにつれ、複数の音声出力装置をサポートすることがより困難となり、また、そのような各装置が利用可能なスペースもより小さくなるであろう。更に、そのような個人用電子装置における機能の増加により、装置の他の機能のためのスペースの縮小が更に求められることとなるであろう。音声出力装置のサイズの縮小により、ブザー警告信号のような信号について、所望の音量レベルを得ることが困難となるかも知れない。
【0004】
個人用電子装置のサイズの縮小要求を満たす一つの方法は、従来的なスピーカーの代わりにフラットパネル・スピーカーを利用することである。フラットパネル・スピーカーは、従来のコーン型のパネルとは異なり、大きく薄い導電性のダイアフラム・パネルを利用して空気を振動させる。これにより、必要とされるスペースを小さくできる。
【0005】
これとは別に、無線通信端末の内部に搭載されるアンテナとして利用可能な小型アンテナへの関心も存在する。例えば平面逆Fアンテナ(PIFA)は、無線通信端末の分野における利用に適するものであり、特に大型ディスプレイの要求の一方で小型化がなされる無線通信端末に適する。従来のPIFAは、典型的に接地面と間隙をあけて配置される導電性素子を含む。典型的なPIFAは、特許文献1及び特許文献2に開示される。これらの文献は引用により本明細書の記載に組み込まれる。
【0006】
従来、PIFAの構成は、特許文献3に記載されるような枝構造を有していた。また、PIFAは効率的に放射を行うために、接地面から適切な距離、典型的には約5mmから10mmの距離を置いて配置されていた。非特許文献1は、デュアル周波数PIFAのためにトップパッチ(top patches)を潜在的に放射する技術が開示されている。この内容は、引用により本明細書の記載に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,166,694号明細書
【特許文献2】米国特許第6,353,443号明細書
【特許文献2】米国特許第5,926,139号明細書
【非特許文献1】キン・リュー・ウォン(Kin-Lu Wong)著、「無線通信のための平面アンテナ(Planar Antennas for Wireless Communications)」第1章、p.4(Wiley 2003年1月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の内容にかかわらず、依然として改良された或いは代替可能なスピーカ及びアンテナ構成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、通信装置及び無線通信端末装置のための内部アンテナ及びフラットパネル・スピーカーを提供する。本発明の実施形態には、一体化された平面アンテナとフラットパネル・スピーカーとが含まれる。よって、例えば、平面アンテナとフラットパネル・スピーカーとを、共通の基板上に形成することができる。
【0009】
幾つかの実施形態は、アンテナのサブアセンブリに関連する。アンテナのサブアセンブリは、(a)平面アンテナと(b)該平面アンテナと一体化されたフラットパネル・スピーカーとを含む。ある実施形態では、フラットパネル・スピーカーは、該平面アンテナの寄生要素として作用するように構成される。従って、例えばフラットパネル・スピーカーは、平面アンテナ単独の周波数応答と比較して、低周波数領域における周波数応答、拡大された帯域幅における周波数応答、及びマルチバンド周波数応答の少なくともいずれかを平面アンテナに対して与えるように構成することができる。
【0010】
他の実施形態は、無線通信端末に関連する。この無線通信端末は、(a)ハウジング、(b)ハウジング内に配置された電子回路、(c)ハウジング内で電子回路の裏面に隣接して位置するフラットパネル・スピーカー、(d)ハウジング内で、電子回路の裏面にフラットパネル・スピーカーと隣接して位置する内部アンテナを含む。ある実施形態では、平面アンテナとフラットパネル・スピーカーとは、電子回路の同一の側で、同一の場所に互いに隣接して位置するだけであるが、他の実施形態では、それらが共通体として一体化されるか、又は、基板に一体化される。
【0011】
特定の実施形態では、無線通信端末のハウジングは、イヤーピースとキーボードとをその前面に含む。電子回路はハウジングの前面とフラットパネル・スピーカーとの間に位置する。そのような実施形態では、ゆえに、無線通信端末は更に、フラットパネル・スピーカーからイヤーピースへ伸びる前方音響経路を含み、また、該前方音響経路は、フラットパネル・スピーカーに隣接する電子回路を通過して伸びる少なくとも一つの音響開口を含む。
【0012】
ある実施形態では、無線通信端末の電子回路はフラットパネル・スピーカーと通信する音声駆動回路を含む。他の実施形態では、音声駆動回路は、フラットパネル・スピーカーとバランス伝送路を介して結合される。更に他の実施形態では、バランス伝送路は複数のリードを含み、各リード上にはRF分離回路を含む。従って、バランス伝送路は、例えばタンク回路及びインダクタの少なくともいずれかを各リード上に含むことができる。
【0013】
以下において、これら及び他の実施形態を更に記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳細に記述する。しかしながら、本発明は、ここで説明する実施形態のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全となるように、また当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供されている。全体を通じて、類似の番号は類似の要素を指す。ここでは所定のアンテナの実施形態について説明しているが、あるアンテナの動作に関する実施形態は他のアンテナにも適用可能であることは当然に理解されよう。
【0015】
図面では、配線、レイヤー、特徴、構成要素及び領域の少なくともいずれかの厚みが、明確化のために誇張されることがある。そのようなレイヤー、領域或いは基板のような特徴が、別の特徴或いは要素の「上に」あると言う場合は、その別の要素の直接上にあっても、介在要素が存在していてもよいことを理解されたい。その一方で、ある要素が別の特徴或いは要素の「直接上に」あるという場合は、介在要素は存在しないこととなる。また、ある特徴や要素が別の特徴又は要素に「接続」または「結合」されていると言うとき、その別の要素に直接に接続、または結合されていても、介在要素が存在していてもよいことを理解されたい。これに対して、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接接続」または「直接結合」されていると言うとき、介在要素は存在しない。しかしながら、基板上のコーティング層やフィルム層の存在は、導電性材料が、基板上のコーティングやフィルムの上からであっても該基板上に「直接に形成される」ことを除外するものではない点には注意されたい。
【0016】
また、「備える("comprising"又は"comprise")」及びその派生語は、記載された特徴、動作、数値、構成要素、工程などの存在を表す一方で、1以上の代替物或いは異なる特徴、数値、工程、構成要素又はグループの存在及びそれらの追加を除外或いは排除するものではない。
【0017】
本書面において“無線端末”との語が使用される場合、マルチラインディスプレイを有する(又は有しない)携帯無線電話、データ処理機能、ファクシミリ機能及びデータ通信機能を携帯電話機と結合したところの個人用通信システム(Personal Communications System:PCS)端末、無線通信端末機能、ページャー機能、インターネット/イントラネット接続機能、ウェブブラウザ機能、オーガナイザー機能、カレンダー機能及びGPS受信機能の少なくとも何れかを含むことのできるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、従来的なラップトップ及びパームトップ型受信機、或いは無線通信送受信器を有するその他の機器の少なくとも何れか、のうち少なくとも何れかを含む概念として使用されることは、理解されるべきである。無線通信端末は、「普及型コンピューター(pervasive computing)」装置とも呼ばれても良く、また、携帯型無線通信機器を含む移動体端末であってもよい。「携帯型無線通信機器」(これは同義的に「移動体無線通信端末」と呼ぶこともできる。)は、移動体電話機、ページャー及びコミュニケーターのような全ての携帯型機器を含み、スマートフォン、電子オーガナイザー等も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
アンテナが電気信号の送信及び受信の少なくともいずれかを行うために利用される装置であることは、通信装置の当業者によれば、直ちに理解されよう。送信時には、アンテナは、伝送路からエネルギーを受け、このエネルギーを空間内に放射する。受信時には、アンテナは入射波からエネルギーを収集し、このエネルギーを伝送路に供給する。アンテナから放射される電力量及びアンテナが受信する電力量は、一般的には利得として記載される。
【0019】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下により詳細に記述される。図1は、無線通信端末100の分解斜視図である。図示されるように、無線通信端末100は、前面110f及び背面110bを含み、これらは結合して無線通信端末100の携帯型ハウジングを規定する。無線端末100は、電子回路120、フラットパネル・スピーカー130及び内部アンテナ140を含み、これらは、ハウジング内に配置される。内部アンテナ140は典型的には平面アンテナ140であって、PIFA、単一接点パッチアンテナ(single-contact patch antenna)又はモノポール・アンテナとして構成される。以下の幾つかの実施形態では平面逆Fアンテナ(PIFA)について記載するが、ここでのアンテナは技術用語としての厳密な「平面性」を有していなくてもよいが、平面逆Fアンテナと呼ぶこととする。
【0020】
更に、無線通信端末100の電子回路120は、信号伝送路(signal feed、以下同じ)と接地面とを有するプリント回路基板(PCB)を備え、平面アンテナ140はPCBの信号伝送路と接地面と動作可能に結合される。「接地面」との語を本出願において利用するが、この「接地面」との語は、平面形態を有するものを意味する概念に限定されることはない。例えば、「接地面」はストリップ形状や他の形状であっても良いし、合理的な大きさを有することができる。また、シールドカンや他の金属製オブジェクトのような非平面構造を含んでも良い。
【0021】
図1に示すように、ハウジングの前面110fは、イヤーピース115とキーパッド117とを含む。電子回路120はハウジングの前面110fと背面110bとの間に配置される。フラットパネル・スピーカー130及び平面アンテナ140は、両方が、電子回路120bとハウジングの背面110bとの間に位置するようにハウジング内で保持される。フラットパネル・スピーカー130及び平面アンテナ140は、図示するように、独立の基板上に配置されていてもよく、或いは、後段で更に記述するように、例えば共通の基板を利用して一体的化されていても良い。適所において、イヤーピース115は、音響信号/音をスピーカーからユーザーに対して出力する。
【0022】
図2Aから図2Cは、従来的なフラットパネル・スピーカー130の平面図、底面図及び側面図を示す。図示されるように、フラットパネル・スピーカー130は実質的に平面的な構成要素であって、導電性パターン130p、電子回路120と通信するためのリード135、137、入力信号に対する音響応答を与える薄型ダイアフラム・パネル要素139を備える。ダイアフラム要素139は、分割されたダイアフラムパネルであってもよいし、或いは、圧電セラミックのような圧電式電気材料であってもよい。なお、本明細書では「リード」及び「トレース」の語は、電気的な経路を表現する語として同義的に用いる。
【0023】
個人用電子装置での使用のために構成された典型的なフラットパネル・スピーカーは、パナソニックから供給され、ミネソタ州シーフリバーフォールズのDigiKeyにより流通されている「カードタイプ・スピーカー」と呼ばれるものである。この製品番号は、WM R03Bとなっている。パナソニックのカードタイプ・スピーカーは、極めて薄く、軽い圧電セラミックの分割ダイアフラムを有する点に特徴がある。低周波音用の1つの大型スピーカーと、高周波音用の4つの小型スピーカーを結合させた、分割ダイアフラムによる2ウェイ機構は、広周波数帯域における音声再生を可能とするものである。更に、湿気、塵、腐食から保護するために、振動膜に高分子コーティングによるカバーを施すことができる。
【0024】
図3Aから図3Dは、電子回路120及び平面アンテナ140に対するフラットパネル・スピーカー130の典型的な配置例を示す。図示されるように、フラットパネル・スピーカー130と平面アンテナ140とは、互いに隣接するようにして電子回路120の裏面120b上に配置される。この位置決めにより、少なくとも一つの音響開口(acoustic aperture)をPCB又は電子回路内に形成して、フラットパネル・スピーカー130から電子回路120の前面120fへ伸び前方音響経路(forward acoustic passageway、以下同じ)305を規定することができる。このようにして、動作時の音響的干渉を減少させるために音響出力をイヤーピース(図1の115)へガイドするには、少なくとも、電子回路120を通って伸びるような一つの音響開口125を形成することができる。音響出力の方向は、図3Aから図3Dにおいて、点線矢印により示されている。この場合、平面アンテナ140は、図3Cに示されるようにフラットパネル・スピーカー130と電子回路120との間に配置され、平面アンテナ140を通過して伸びる少なくとも一つの音響開口145が更に形成される。前方音響経路305の方向は、フラットパネル・スピーカー130から電子回路120を通過して伸びる点線矢印により示される。無線通信端末はまた、不図示の封入された音響チャネル(enclosed acoustic chanel)を含むことができ、これは信号の明瞭性を改善するために音響出力をガイドするのに利用されても良い。
【0025】
図3Aに示されるように、フラットパネル・スピーカー130はアンテナ140とは独立した構成要素であって、平面アンテナ140と電子回路120との間で平面アンテナ140に隣接するように配置される。図3Bでは、図8及び図9を参照して更に説明するように、フラットパネル・スピーカー130が平面アンテナ140と一体化され、一体化フラットパネル・スピーカー/平面アンテナ800が生成されている。
【0026】
図3C及び図3Dでは、フラットパネル・スピーカー130を、横方向、或いは、横断方向のギャップスペース131により、平面アンテナ140に対してオフセット可能な例を示している。平面アンテナ140は、図3Cに示されるようにフラットパネル・スピーカー130と電子回路120との間に配置されてもよい。また、図3Dは、フラットパネル・スピーカー130が、平面アンテナ140と電子回路120との間に配置され、平面アンテナ140に対して下又は上(不図示)において長さ方向にオフセットされてもよい。更に、図示してはいないが、平面アンテナ140をフラットパネル・スピーカー130により近づけて、長さ方向にオフセットを設けて配置することもできる。ここで「隣接した(proximate)」との語は、フラットパネル・スピーカー130と平面アンテナ140とが、フラットパネル・スピーカー130の一部が平面アンテナ140と重なり合う、或いはその逆となるように、ハウジング内で電子回路120の共通の側で空間的に位置あわせされていることを意味する。
【0027】
フラットパネル・スピーカー130を平面アンテナ140に対し、位置決めし、構成し、或いは、電気的接続することにより、フラットパネル・スピーカー130を、所定の周波数範囲における平面アンテナ140の寄生素子として機能させるように構成できる。図4Aから図4Cは、本発明の様々な実施形態に対応する平面アンテナ140の典型的な周波数応答の例を示している。このグラフは、電圧定在波比(VSWR)を表している。VSWRは、無線通信端末のような通信装置の、伝送路或いは送信線路に対するアンテナ供給点のインピーダンス整合に関連する。無線周波数エネルギーを最小損失で放射するため、或いは、受信したRFエネルギーを無線通信端末受信器に最小損失で転送するためには、無線通信端末アンテナのインピーダンスは、伝送路又は供給点のインピーダンスと月並みに整合しなければならない。従来の無線通信端末では、内部のプリント回路基板上に配置された信号処理回路と動作可能に関連づけられる送受信器と電気的に接続されるアンテナが典型的には採用される。アンテナと送受信器との間の電力伝達(power transfer)を増加させるために、送受信器及びアンテナが、それぞれのインピーダンスが実質的に整合するように、即ち、好ましくないアンテナインピーダンス素子を補償して、50オーム(Ω)(或いは、好ましい)のインピーダンス値を供給点において与えるように電気的に調整されるように、相互接続されても良い。
【0028】
図4Aから図4Cでは、点線410は、フラットパネル・スピーカー130とは独立に動作する平面アンテナ140の周波数応答のシミュレーション結果を示しており、このとき平面アンテナ140はフラットパネル・スピーカー130からの影響を実質的に受けていない。実線420aから420cは、フラットパネル・スピーカー130が寄生要素として構成された場合の、該フラットパネル・スピーカー130から影響を受けた平面アンテナ140の周波数応答の変化を示している。図4Aに示されるように、平面アンテナ140により低い周波数範囲で周波数応答420aを与えるように、フラットパネル・スピーカー130を平面アンテナ140(図1)に対して構成、或いは位置決めすることができる。図4Bは、フラットパネル・スピーカー130を、周波数応答420bの帯域幅を拡大させるように構成することができる。その一方、図4Cに示すように、フラットパネル・スピーカー130をマルチバンド周波数応答420cを与えるように構成することができる。
【0029】
図5及び図6は、本発明の実施形態に対応する、電子回路120(この電子回路120は、点線の枠で示される)の典型的な構成要素と、該構成要素と平面アンテナ140及びフラットパネル・スピーカー130の少なくともいずれかとの接続例を示す。図5に示されるように、電子回路120は平面アンテナ140との電気的通信においてアンテナ駆動回路122を、フラットパネル・スピーカー130との電気的通信において音声ドライバ回路127を含むことができる。音声ドライバ回路127をフラットパネル・スピーカー130と結合する際の典型的な信号補償技術は、図6及び図7Aから図7Cを参照して、後述する。
【0030】
図6に示されるように、電子回路120は更に信号補償回路128を含むことができる。動作時において、信号補償回路128はアンテナの送信モード、即ち、伝送路からエネルギーを受け、そのエネルギーを空間に放射する場合を検出する。送信が検出された間、信号補償回路128は音声ドライバ回路127からフラットパネル・スピーカー130への信号を補償し、フラットパネル・スピーカー130との通信におけるノイズを抑制する。信号補償回路128は、当業者には良く知られたハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の少なくともいずれかを含む、好適な信号処理回路であればいずれであってもよい。
【0031】
図7Aから図7Cは、フラットパネル・スピーカー130とバランス伝送路により結合される電子回路120の音声ドライバ回路127の例を示す。ここで、「バランス伝送路」との語は、当業者には良く知られているように、信号電圧とグランド電圧用のリードではなく、差分信号を正電圧、負電圧を有するリードを介して送信するものをいい、無線通信端末の内部で生成されるノイズ、或いは、外来ノイズの影響を減少させるために用いられる。
【0032】
図7Aに示されるように、フラットパネル・スピーカー130のリード135、137は、音声駆動回路127と直接に接続されても良い。また、図7B及び図7Cに示されるように、RF分離回路135R、137Rは、リード135、137上にそれぞれ配されるインダクタ710、715、またはリード135、137上にそれぞれ配されるタンク回路720、725を備え、音声駆動回路127とフラットパネル・スピーカー130とを結合するために用いられても良い。なお、当業者には公知なように、他のRF分離回路の構成を用いても良い。
【0033】
図8Aに示されるように、発明の所定の実施形態にはフラットパネル・スピーカー130と一体化、或いは統合された平面アンテナ140(ここでは、統合装置800という)が含まれる。「一体化された」或いは「統合された」との語は、フラットパネル・スピーカー130と平面アンテナ140とが、少なくとも平面アンテナ140の一部がエッチング処理、プリント処理或いは、他の形成処理により、フラットパネル・スピーカー130を形成する基板に付属するか、或いは、該基板により支持されるように、結合されることを意味する。基板800sは、単一のレイヤー又は複数のレイヤーを含んでいても良い。
【0034】
図8Aは、平面アンテナ140の導電性素子140eが、フラットパネル・スピーカー130の導電性パターン130pと同様に、フラットパネル・スピーカー130本体130bの第1の主面上に形成される様子を示している。図8はまた、統合フラットパネル・スピーカー/平面アンテナ要素800上の、アンテナ・リード801、802(即ち、グランド及び信号経路)及びフラットパネル・スピーカー・リード135、137を示す。
【0035】
図8Bは、図8Aに示す典型的な統合フラットパネル・スピーカー/平面アンテナ要素800の断面図である。図に示されるように、フラットパネル・スピーカーの導電性パターン130p及びダイアフラム要素139は、単一のレイヤー基板800sの第1及び第2の主面に形成されている。アンテナ導電要素140eは、同一基板800sの第1の主面に形成されている。
【0036】
図9Aから図9Eは、単一(図8及び図9A)又は複数(図9Bから図9E)の材料層で形成される基板800sを示す。典型的には、レイヤー910、920及び930の少なくともいずれかは、平面アンテナ140及びフラットパネル・スピーカー130を規定する導電性部分を含む非導電性材料からなる。レイヤー910、920及び930の少なくともいずれかは薄膜又は他の基板レイヤーであって、典型的には5mm厚よりも薄く、より好適には1mmよりも薄く、更に好適には0.2〜0.5mm厚であってもよい。図9Aは、ダイアフラム要素139の振動を可能とするためのカットアウト或いはスペース130cを含む、単一のレイヤー910としての基板800sを示す。なお、当該基板が柔軟な材料でできている実施形態では、カットアウト130cは不要となるかも知れない。図に示されるように、アンテナ導電性要素140eは、材料層910の第1の主要面上に形成され、スピーカー導電性パターン130pは、第2の主面上に形成されても良い。
【0037】
図9B及び図9Cは、レイヤー910及び920の2層からなる基板800sを示し、そこでは、アンテナ導電性要素140eが、第1レイヤー910の第1の主面上に形成されている。図9Bは、第2レイヤー920の第1の主面上に形成されたスピーカー導電性パターン130pを示し、図9Cは、第2レイヤー920の第2の主面上に形成されたスピーカー導電性パターン130pを示している。図9Bと図9Cはまた、カットアウト130cにより、ダイアフラム要素139の振動が可能となる様子を示している。図9Bに示されるように、カットアウト130cは、ダイアフラム要素139の上下に伸び、両方向における動きを許容する構成となっている。図9Bは更に、第2レイヤー920を通って、第2レイヤー920の第2の主面にまで伸び、音響信号の伝搬を可能とする音響開口130aを示している。
【0038】
図9D及び図9Eは、レイヤー910、920及び930の3層からなる基板800sを示し、ここではアンテナ導電性要素140eが第1レイヤー910の第1の主面に形成されている。図9Dでは、スピーカー導電性パターン130pが第3レイヤー930の第1の主面上に形成され、図9Eでは、スピーカー導電性パターン130pが第3レイヤー930の第2の主面上に形成されている。図9D及び図9Eはまた、ダイアフラム要素139の振動を可能とするカットアウトと130cを示しており、図9Dでは、ダイアフラム要素139の上下にカットアウト130cが伸びている。図9Dは更に、第3レイヤー930を通って、第3レイヤー930の第2の主面にまで伸び、音響信号の伝搬を可能とする音響開口130aを示している。
【0039】
以上、本発明の実施形態に対応するアンテナを無線通信端末に関して記載したが、本発明の実施形態はかかる構成に限定されるものではないことは理解されよう。例えば、本発明の実施形態に対応するアンテナは、無線通信信号の送信或いは受信のみを行う無線通信端末内においても利用可能である。例えば、従来のAM/FMラジオやアンテナを利用するあらゆる受信機は、通信信号を単に受信するだけである。また、遠隔データ入力装置は、通信信号を単に送信するだけである。
【0040】
図面及び明細書において本発明の実施形態を記載したが、これらにおいて採用された特定の用語は、一般的、かつ記述的意味においてのみ利用されたものであって、発明の内容を限定する目的を有するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において説明されるものである。よって、上記説明は本発明の例示であって、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。本発明の幾つかの典型的な実施形態について記述しているが、本発明の新規な技術や利点から実質的に逸脱することなく、係る実施形態を様々に修正可能な点は、当業者であれば直ちに理解するであろう。従って、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に、そのような修正が包含されることは当然に意図されたものである。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション的な表現が使われる場合、説明に係る機能を実現するために本明細書で記述された構造、及び、その構造的な均等物だけでなく、均等な構造物をもカバーすることを意図したものである。従って、上記の説明は本発明の例示であって、記載される特定の実施形態に本発明が限定されるものとして解釈されるべきではなく、記載された実施形態に対する修正は、他の実施形態に対するものも含めて、特許請求の範囲の記載に基づく発明の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されよう。本発明は、特許請求の範囲の各請求項において定義され、該請求項の等価物もそこに含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に対応する無線通信端末装置の分解斜視図である。
【図2A】本発明の実施形態に対応するフラットパネル・スピーカーの平面図である。
【図2B】本発明の実施形態に対応するフラットパネル・スピーカーの底面図である。
【図2C】本発明の実施形態に対応するフラットパネル・スピーカーの側面図である。
【図3A】、
【図3B】、
【図3C】、
【図3D】本発明の実施形態に対応する、典型的な平面アンテナとフラットパネル・スピーカーのアセンブリの側面図である。
【図4A】、
【図4B】、
【図4C】本発明の実施形態に対応する平面アンテナの典型的な周波数応答を示す、電圧定在波比(VSWR)のシミュレーショングラフである。
【図5】、
【図6】本発明の実施形態に対応する、電子回路の典型的な構成要素と、構成要素と平面アンテナ及びフラットパネルスピーカーの少なくともいずれかとの接続とを例示するブロック図である。
【図7A】、
【図7B】、
【図7C】本発明の実施形態に対応する、音声駆動回路とフラットパネルスピーカーとの間の典型的な結合を例示するブロック図である。
【図8A】平面アンテナと一体化される典型的なフラットパネル・スピーカーの平面図である。
【図8B】図8Aに示される平面アンテナと一体化される典型的なフラットパネル・スピーカーの断面側面図である。
【図9A】、
【図9B】、
【図9C】、
【図9D】、
【図9E】典型的な、フラットパネル・スピーカーと平面アンテナとが一体化された基板本体を示す断面側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に位置する電子回路と、
前記ハウジング内で前記電子回路の裏面に隣接して位置するフラットパネル・スピーカーと、
前記ハウジング内で、前記電子回路の裏面に前記フラットパネル・スピーカーと隣接して位置する内部アンテナと
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記フラットパネル・スピーカーと前記内部アンテナとは、共通の基板の第1の主面に位置する導電性部材をそれぞれ備えることを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記内部アンテナは、平面アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記ハウジングは、イヤーピースとキーボードとを該ハウジングの前面に含み、
前記電子回路は、前記ハウジングの前記前面と、前記フラットパネル・スピーカー及び前記内部アンテナとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記電子回路はプリント回路基板を備え、
前記無線通信端末は更に、前記フラットパネル・スピーカーから前記イヤーピースへ伸びる前方音響経路を備え、該前方音響経路は、前記フラットパネル・スピーカーに隣接する前記プリント回路基板を通過して伸びる少なくとも一つの音響開口を備えることを特徴とする請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記内部アンテナは、前記プリント回路基板と前記フラットパネル・スピーカーとの間に位置し、前記前方音響経路は更に、前記内部アンテナを通過して伸びる少なくとも一つの音響開口を備えることを特徴とする請求項6に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記電子回路は、信号伝送路と接地面とを有するプリント回路基板を備え、前記内部アンテナは、前記信号伝送路と前記接地面と動作可能に結合することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記電子回路は、前記フラットパネル・スピーカーとバランス伝送路を介して結合される音声駆動回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記バランス伝送路は複数のリードを備え、前記電子回路は更に、前記バランス伝送路の各リード上にRF分離回路を備えることを特徴とする請求項9に記載の無線通信端末。
【請求項11】
前記RF分離回路は、タンク回路を備えることを特徴とする請求項10に記載の無線通信端末。
【請求項12】
前記RF分離回路は、インダクタを備えることを特徴とする請求項10に記載の無線通信端末。
【請求項13】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナの寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項14】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナに低周波数領域における周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項13に記載の無線通信端末。
【請求項15】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナに拡大された帯域幅における周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項13に記載の無線通信端末。
【請求項16】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナにマルチバンド周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項13に記載の無線通信端末。
【請求項17】
前記内部アンテナは、平面逆Fアンテナ(PIFA)を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項18】
前記内部アンテナは、単一接点パッチ・アンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項19】
前記内部アンテナは、モノポール・アンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項20】
前記電子回路は、
複数のリードを備えるバランス伝送路を介して前記フラットパネル・スピーカーと結合される音声駆動回路と、
前記内部アンテナと通信するアンテナ駆動回路と、
前記音声駆動回路及び前記アンテナ駆動回路と通信する信号補償回路と
を備え、
前記内部アンテナが送信モードにある場合に、前記信号補償回路は前記音声駆動回路から前記フラットパネル・スピーカーへの信号を補償することを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項21】
アンテナのサブアセンブリであって、
平面アンテナと、
フラットパネル・スピーカーと
を備え、前記フラットパネル・スピーカーは前記平面アンテナと一体化されていることを特徴とするアンテナのサブアセンブリ。
【請求項22】
前記フラットパネル・スピーカーと前記内部アンテナとは、共通の基板の第1の主面に位置する導電性部材をそれぞれ備えることを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項23】
前記フラットパネル・スピーカーとバランス伝送路を介して結合される音声駆動回路を含む電子回路を更に備えることを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項24】
前記バランス伝送路は複数のリードを備え、前記電子回路は更に、前記バランス伝送路の各リード上にRF分離回路を備えることを特徴とする請求項23に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項25】
前記RF分離回路は、タンク回路を備えることを特徴とする請求項24に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項26】
前記RF分離回路は、インダクタを備えることを特徴とする請求項24に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項27】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナの寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項28】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナに低周波数領域における周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項27に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項29】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナに拡大された帯域幅における周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項27に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項30】
前記フラットパネル・スピーカーは、前記内部アンテナにマルチバンド周波数応答を与える寄生要素として作用するように構成されることを特徴とする請求項27に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項31】
前記内部アンテナは、平面逆Fアンテナ(PIFA)を含むことを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項32】
前記内部アンテナは、単一接点パッチ・アンテナを含むことを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。
【請求項33】
前記内部アンテナは、モノポール・アンテナを含むことを特徴とする請求項21に記載のアンテナのサブアセンブリ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【公表番号】特表2007−501545(P2007−501545A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521839(P2006−521839)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020084
【国際公開番号】WO2005/018206
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】