説明

内部導体先端曲げ治具

【課題】内部導体の曲げ位置の一定化を容易に実現することができる内部導体先端曲げ治具を提供する。
【解決手段】内部導体2を所定長、突出させた状態の同軸ケーブル4を保持溝に保持し、該保持により突出させた内部導体2の先端部が逃げ穴9に位置した状態において、押込部15を押込むことにより曲げ部材14を逃げ穴9に嵌入させることで、内部導体2の先端部を曲げるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ等の機器に同軸ケーブルを接続する際に、当該機器の接続部と同軸ケーブルを接続しやすくするため、その同軸ケーブルの内部導体の先端を曲げる内部導体先端曲げ治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンテナ等の機器に同軸ケーブルを接続しやすくするため、内部導体の先端を曲げ(折り曲げ)ている。
【0003】
この曲げ作業は、同軸ケーブルの外部導体及び、内部導体を露出させたのち、露出させた内部導体先端をラジオペンチ等の工具を用いて手作業で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−171855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、その曲げ作業は手作業で行うため、内部導体の曲げ位置にバラツキが生じやすい。内部導体の曲げ位置にバラツキが生じると、同軸ケーブルとアンテナ等の機器とを接続したときに、インピーダンス整合がとりづらくなる等の問題が生じ、その結果、同軸ケーブルと前記機器との接続作業が煩雑となってしまうおそれがある。
【0006】
また、曲げ位置のバラツキを低減すべく曲げ作業に慎重を期すと、作業に時間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
さらに、内部導体を露出させるには、被覆層、外部導体、内部絶縁体をカッター等で手作業により切断除去して、内部導体を剥き出しているため、安全性が十分とはいえない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記課題を解決し、内部導体の曲げ位置の一定化を容易に実現することができる内部導体先端曲げ治具を提供することにある。また、曲げ作業時間の短縮及び、安全性の向上をはかることができる内部導体先端曲げ治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1の発明は、本体部材と、回動軸を介して前記本体部材に対して開閉自在に設けられるカバー部材と、からなり、前記本体部材には、その上面に、内部導体を中心に内部絶縁体、外部導体、被覆層とが順に積層される同軸ケーブルを保持する保持溝と、前記保持溝の先端側であって、前記同軸ケーブルの前記内部導体を所定長、突出させた状態のとき、該突出させた前記内部導体の先端部が位置するように形成された逃げ穴と、が形成され、前記カバー部材には、押込部を備える前記逃げ穴に嵌入する曲げ部材が設けられ、前記内部導体を所定長、突出させた状態の前記同軸ケーブルを前記保持溝に保持し、該保持により前記突出させた前記内部導体の先端部が前記逃げ穴に位置した状態において、前記押込部を押込むことにより前記曲げ部材を前記逃げ穴に嵌入させることで、前記内部導体の先端部を曲げる内部導体先端曲げ治具である。
【0010】
請求項2の発明は、前記保持溝は、前記内部導体を保持する内部導体保持溝と、前記内部導体保持溝と連通し、前記同軸ケーブルの端部側の所定長を保持するケーブル保持溝と、からなる本体側段付き保持溝であり、該本体側段付き保持溝の前記ケーブル保持溝に前記同軸ケーブルの端部側の所定長を保持させると、前記内部導体が前記内部導体保持溝から前記逃げ穴に向けて所定長、突出する請求項1記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0011】
請求項3の発明は、前記内部導体保持溝における前記逃げ溝側の底面及び該底面に対応する位置の前記曲げ部材の外表面に、前記内部導体を所定の曲率で曲げるためにアール部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0012】
請求項4の発明は、前記カバー部材に、前記本体部材側の前記本体側段付き保持溝に対応するカバー側段付き保持溝が形成されている請求項2又は3記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0013】
請求項5の発明は、前記本体部材には、その上面に、前記同軸ケーブルを位置決めして収容する本体側第1収容溝が形成され、前記カバー部材には、前記本体部材側の前記本体側第1収容溝に対応するカバー側第1収容溝が形成され、該カバー側第1収容溝には、前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断する内部導体突出用切断刃が設けられて、前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出用除去治具が形成され、前記同軸ケーブルを前記本体側第1収容溝に位置決めして収容し、その状態において、前記カバー部材を閉じることで、前記内部導体突出用切断刃で前記同軸ケーブルの先端部の前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断除去して、前記内部導体を所定長、突出させる請求項1〜4のいずれか記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0014】
請求項6の発明は、前記内部導体突出用切断刃は、先端の刃が半円弧状に形成され、前記内部導体突出用除去治具を用いた前記同軸ケーブルの前記被覆層から前記内部絶縁体までの切断除去は、前記本体側第1収容溝に前記同軸ケーブルを位置決めして収容し、前記カバー部材を閉じ、且つ前記同軸ケーブルを180度軸回転させることにより行う請求項5記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0015】
請求項7の発明は、前記本体部材には、その上面に、前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを位置決めして収容する本体側第2収容溝が形成され、前記カバー部材には、前記本体部材側の前記本体側第2収容溝に対応するカバー側第2収容溝が形成され、該カバー側第2収容溝には、前記被覆層を切断する外部導体露出用切断刃が設けられて、前記被覆層を切断除去する外部導体露出用除去治具が形成され、前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを前記本体側第2収容溝に位置決めして収容し、その状態において、前記カバー部材を閉じることで、前記外部導体露出用切断刃で前記同軸ケーブルの先端部の前記被覆層を切断除去して、前記外部導体を所定長、露出させる請求項1〜6のいずれか記載の内部導体先端曲げ治具である。
【0016】
請求項8の発明は、前記外部導体露出用切断刃は、先端の刃が半円弧状に形成され、前記外部導体露出用除去治具を用いた前記被覆層の切断除去は、前記本体側第2収容溝に前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを位置決めして収容し、前記カバー部材を閉じ、且つ前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを180度軸回転させることにより行う請求項7記載の内部導体先端曲げ治具である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部導体の曲げ位置の一定化を容易に実現することができる。また、曲げ作業時間の短縮及び、安全性の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a),(b)は、本発明の第一の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具を示す外観図である。
【図2】(a)は、図1(a)の本体部材のA−A線断面図、(b)は、本体部材の平面図、(c)は、本体部材の正面図である。
【図3】(a)は、図1(a)のカバー部材のA−A線断面図、(b)は、カバー部材の平面図である。
【図4】(a)は、押込部の側面図、(b)は、押込部の正面図である。
【図5】(a)〜(d)は、図1の内部導体先端曲げ治具の動作を説明する図である。
【図6】(a),(b)は、本発明の第二の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具を示す外観図である。
【図7】(a)は、図6の内部導体先端曲げ治具のカバー部材の平面図、(b)は、図6の内部導体先端曲げ治具のカバー部材の正面図である。
【図8】(a)は、図6の内部導体先端曲げ治具の本体部材の平面図、(b)は、図6の内部導体先端曲げ治具の本体部材の正面図である。
【図9】(a)は、被覆層から内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出用除去治具の外観図、(b)は、被覆層を切断除去する外部導体露出用除去治具の外観図である。
【図10】(a)〜(c)は、図6の内部導体先端曲げ治具を用いた内部導体突出作業(工程1)を説明する図である。
【図11】(e)〜(h)は、図6の内部導体先端曲げ治具を用いた内部導体先端曲げ作業(工程2)を説明する図である。
【図12】(i)〜(k)は、図6の内部導体先端曲げ治具を用いた外部導体露出作業(工程3)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1(a),(b)は、第一の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具を示す外観図である。
【0021】
図1(a),(b)に示すように、第一の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具1は、内部導体と、その内部導体の外周に内部絶縁体を介して設けられた外部導体と、その外部導体を被覆する被覆層とを備えた同軸ケーブルの内部導体を、同軸ケーブル端面から突出させた状態で曲げるものである。
【0022】
また内部導体先端曲げ治具1は、本体部材5と、回動軸7を介して本体部材5に対して開閉自在に連結されたカバー部材6とで、ホッチキス型に形成される。
【0023】
図2(a),(b)に示すように、本体部材5は、全体に細長長方形に形成されたカバー本体5aの一端に、回動軸7を挿入する穴7aが形成された幅狭のヒンジ部5bが一体に設けられて形成され、そのカバー本体5aのヒンジ部5bと対向する他端の上面30に本体側段付き保持溝8が形成され、その本体側段付き保持溝8の先端に、同軸ケーブルの内部導体を所定長、突出させた状態のとき、突出させた内部導体の先端部が位置するように逃げ穴9が形成されたものである。この逃げ穴9は、後述する曲げ部材14が回転しないように、四角形などの異形断面に形成される。
【0024】
本体側段付き保持溝8は、内部導体を保持する断面円弧状の内部導体保持溝10と、内部導体保持溝10と連通し、同軸ケーブルの端部側の所定長を保持する断面円弧状のケーブル保持溝11とからなる(図2(c)参照)。
【0025】
内部導体保持溝10の先端には、内部導体を所定の曲率で曲げるためのアール部12が形成されている(図2(a)のD1参照)。
【0026】
逃げ穴9の両側(図2(b)では、逃げ穴9の上下)には、第一面27が形成されている。この第一面27は、カバー部材6を閉じたときに、カバー部材6の下面の一部が当接するようになっている。
【0027】
内部導体保持溝10の両側には、第二面28が形成されている。この第二面28は、カバー部材6を閉じたときに、後述するカバー部材6の凸部13が当接するようになっている。
【0028】
また、ケーブル保持溝11の両側には、第三面29が形成される。この第三面29は、カバー部材6を閉じたときに、本体側段付き保持溝8の上側に位置するカバー部材6の下面が当接するようになっている。
【0029】
これにより、ケーブル保持溝11に同軸ケーブルの外部導体を固定する。
【0030】
これら第一面27,第二面28,第三面29により、カバー部材6を閉じたときに、カバー部材6を所定の位置で支持するようになっている。
【0031】
図3に示すように、カバー部材6の一端には、回動軸7を挿入する穴7aが形成された取付片6aが一体に形成される。この取付片6aが、回動軸7を介して、本体部材5のヒンジ部5bと開閉自在に連結される。
【0032】
本体部材5の第二面28と対応するカバー部材6の下面には、カバー部材6を閉じたときに第二面28に当接する凸部13が形成されている。この凸部13と、本体部材5の第二面28とで、同軸ケーブルを挟み込んで保持する。
【0033】
また、カバー部材6には、後述する押込ボタン18を上下に摺動自在に保持する貫通穴19が形成される。
【0034】
この貫通穴19に保持される押込ボタン18は、図4(a),(b)に示すように、カバー部材6の下面側に設けられ、逃げ穴9に嵌入する曲げ部材14と、カバー部材6の上面側に設けられ、曲げ部材14を押し込む、押込部15と、曲げ部材14と押込部15とを接続する小径棒21とからなる。
【0035】
曲げ部材14には、図4(a),(b)に示すように、内部導体保持溝10と同様に内部導体2を所定の曲率で曲げるためのアール部20が形成される。
【0036】
この曲げ部材14と、押込部15とは、小径棒21で接続され、押込部15を押し込むことで、曲げ部材14が逃げ穴9に押し込まれるようになっている。
【0037】
そのため、貫通穴19は、カバー部材6の下面側に開口され、曲げ部材14を摺動自在に収容する異形断面穴22と、上面側に開口された上側大径穴23と、異形断面穴22と上側大径穴23を連通し、小径棒21を摺動自在に収容する小径穴24とからなる。
【0038】
上側大径穴23の底部には、座25が形成され、その座25と押込部15の下面との間には、弾性部材26が設けられ、常時は押込ボタン18を上方に付勢している。
【0039】
この内部導体先端曲げ治具1を用いた曲げ作業を説明する。
【0040】
図5(a)に示すように、あらかじめ外部導体3を露出させた同軸ケーブル4の端部から、内部導体2を所定長さ突出させておき、内部導体先端曲げ治具1のカバー部材6を開き、内部導体2を所定長さ突出させた同軸ケーブル4を、本体部材5の本体側段付き保持溝8に収容する。つまり、本体側段付き保持溝8の内部導体保持溝10に内部導体2を収容すると共に、ケーブル保持溝11に外部導体3を収容する。このとき、内部導体2を所定長さ突出させた同軸ケーブル4の外部導体3の端面が、内部導体保持溝10と、ケーブル保持溝11の段差で固定され、一定の位置に位置決めされて保持される。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、カバー部材6を閉めて、カバー部材6の凸部13と、本体部材5の第二面28とで、同軸ケーブル4を挟み込んで保持する。
【0042】
その後、図5(c)に示すように、押込ボタン18を押すことで、押込部15を押し込んで、それと共に、曲げ部材14で、逃げ穴9に位置する同軸ケーブル4の内部導体2の先端を曲げる。このとき、内部導体2の先端は、本体側段付き保持溝8のアール部12と、曲げ部材14のアール部20とによって所定のアール形状にされる。
【0043】
その後、カバー部材6を開き、内部導体2の先端が所定のアール形状となった同軸ケーブル4を、本体部材5の本体側段付き保持溝8から取り出すと、図5(d)に示すように、一定の位置で先端が曲げられた同軸ケーブル4が得られる。
【0044】
以上要するに、内部導体先端曲げ治具1によれば、内部導体2の先端を、外部導体3の端面から一定の位置で曲げることができる。また、ホッチキス型の内部導体先端曲げ治具1によれば、本体部材5とカバー部材6で同軸ケーブル4を挟み込んで保持し、その後、押込ボタン18を押すだけで、内部導体2の先端を一定の位置で、所定のアール形状に折り曲げることができるので、作業時間を短縮できる。
【0045】
本体側段付き保持溝8は、内部導体2を保持する内部導体保持溝10と、内部導体保持溝10と連通し、同軸ケーブル4の端部側の所定長を保持するケーブル保持溝11とからなり、その本体側段付き保持溝8で同軸ケーブル4を保持することで、逃げ穴9に位置する内部導体2の長さを一定にすることができ、曲げ位置の一定化が容易となる。
【0046】
内部導体保持溝10と、曲げ部材14には、内部導体2を所定の曲率で曲げるためのアール部(12,20)が形成されているので、内部導体2に所定のアール形状をつけることができる。
【0047】
第一の実施の形態では、同軸ケーブル4を保持する保持溝として、本体側段付き保持溝8のみを形成したが、カバー部材6に、本体部材5側の本体側段付き保持溝8に対応するカバー側段付き保持溝を形成して、このカバー側段付き保持溝と本体側段付き保持溝8とで同軸ケーブル4を挟み込んで保持する保持溝を形成するようにしてもよい。
【0048】
次に、第二の実施の形態を説明する。
【0049】
第一の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具1は、内部導体2の先端を曲げる構成のみを備えていたが、第二の実施の形態に係る内部導体先端曲げ治具100は、図6に示すように、内部導体先端を曲げる構成101に加え、被覆層から内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出用除去治具102と、被覆層を切断する外部導体露出用除去治具103とをさらに備える。
【0050】
図7〜図9に示すように、被覆層から内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出用除去治具102は、本体部材104と、カバー部材105に形成され、同軸ケーブルを位置決めして収容する断面円弧状の収容溝106(カバー側第1収容溝106a,本体側第1収容溝106b)と、カバー部材105に設けられ、被覆層から内部絶縁体までを切断する内部導体突出用切断刃107と、本体部材104の本体側第1収容溝106bを横断するように形成され、内部導体突出用切断刃107の先端を収容して受ける細長長方形の内部導体突出用切断刃用受け溝120とからなる。内部導体突出用切断刃107は、カバー部材105のカバー側第1収容溝106aに形成された細長長方形の貫通穴119を通じて保持され、先端の刃107aが半円弧状に形成される。
【0051】
被覆層を除去する外部導体露出用除去治具103は、本体部材104と、カバー部材105に形成され、同軸ケーブル110を位置決めして保持する断面円弧状の収容溝108(カバー側第2収容溝108a,本体側第2収容溝108b)と、カバー部材105に設けられ、被覆層を切断する外部導体露出用切断刃109と、本体部材104の本体側第2収容溝108bを横断するように形成され、外部導体露出用切断刃109の先端を収容して受ける細長長方形の外部導体露出用切断刃用受け溝122とからなる。外部導体露出用切断刃は109は、カバー部材105のカバー側第2収容溝108aに形成された細長長方形の貫通穴121を通じて保持され、先端の刃109aが半円弧状に形成される。
【0052】
この内部導体先端曲げ治具100を用いた、同軸ケーブル110の曲げ作業を図10〜図12で説明する。この作業は、同軸ケーブル110の被覆層110aから内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出作業(工程1)と、内部導体突出作業(工程1)によって突出された内部導体111の先端を曲げる内部導体先端曲げ作業(工程2)と、内部導体先端曲げ作業(工程2)によって内部導体111の先端が曲げられた同軸ケーブル110の被覆層110aを切断除去する外部導体露出作業(工程3)とからなる。
【0053】
まず、図10(a)〜(c)に示す内部導体突出作業(工程1)は、図10(a)に示すように、未加工の同軸ケーブル110を用意し、内部導体先端曲げ治具100のカバー部材105を開き、用意した同軸ケーブル110を、本体部材104の本体側第1収容溝106bの端部に位置決めして収容する。
【0054】
次に、図10(b)に示すように、カバー部材105を閉めて、カバー部材105のカバー側第1収容溝106aと、本体部材104の本体側第1収容溝106bとで、同軸ケーブルを挟み込んで保持すると共に、同軸ケーブル110を180度回転させ、内部導体突出用切断刃107で、被覆層110aから内部絶縁体までを切断除去する。
【0055】
その後、図10(c)に示すように、同軸ケーブル110を引き抜いたのち、カバー部材105を開くと、内部導体111が突出された同軸ケーブル110が得られ、被覆層110aから内部絶縁体までの除去屑123は、内部導体突出用切断刃107の円弧状の刃107aに引っかかって、本体部材104の本体側第1収容溝106bに残る。
【0056】
次に、図11(e)〜(h)に示す内部導体先端曲げ作業(工程2)では、上述した本発明の第一の実施の形態と同様の手順で、内部導体111の先端曲げ作業を行う。
【0057】
まず、図11(e)に示すように、内部導体先端曲げ治具100のカバー部材105を開き、内部導体突出作業(工程1)で内部導体111を突出させた同軸ケーブル110を、図4(a)と同様に、本体部材104の本体側段付き保持溝112bに位置決めして収容する。つまり、本体側段付き保持溝112bの内部導体保持溝113bに内部導体111を収容すると共に、ケーブル保持溝114bに同軸ケーブル110を収容する。
【0058】
次に、図11(f)に示すように、カバー部材105を閉めて、図4(b)と同様に、カバー部材105のカバー側段付き保持溝112aと、本体部材104の本体側段付き保持溝112bとで、同軸ケーブル110を挟み込んで保持する。
【0059】
その後、図11(g)に示すように、押込ボタン115を押すことで、押込部116を押し込んで、それと共に、曲げ部材117で、同軸ケーブル110の内部導体111の先端を曲げる。このとき、内部導体111先端は、図4(c)と同様に、本来側段付き保持溝112bのアール部125と、曲げ部材117のアール部118とによって所定のアール形状にされる(図11(g)のD2参照)。
【0060】
その後、カバー部材105を開き、内部導体111の先端が所定のアール形状となった同軸ケーブル110を、本体部材104の本来側段付き保持溝112bから取り出すと、図11(h)に示す、一定の位置で先端が曲げられた同軸ケーブル110が得られる。
【0061】
つまり、内部導体先端曲げ作業(工程2)では、内部導体突出作業(工程1)で得られた同軸ケーブル110の内部導体111の先端が曲げられたものが得られる。
【0062】
最後に、図12(i)〜(k)に示す外部導体露出作業(工程3)は、図12(i)に示すように、カバー部材105を開き、内部導体先端曲げ作業(工程2)で得られた同軸ケーブル110を本体部材104の本体側第2収容溝108bに位置決めして保持する。
【0063】
次に、図12(j)に示すように、カバー部材105を閉めて、カバー部材105のカバー側第2収容溝108aと、本体部材104の本体側第2収容溝108bとで、同軸ケーブル110を挟み込んで保持すると共に、同軸ケーブル110を180度回転させ、外部導体露出用切断刃109で被覆層110aを切断除去する。
【0064】
その後、図12(k)に示すように、同軸ケーブル110を引き抜いたのち、カバー部材105を開くと、内部導体111と外部導体126とが順次露出された同軸ケーブル110が得られ、被覆層110aの除去屑124は、外部導体露出用切断刃109の円弧状の刃109aに引っかかって、本体部材104の本体側第2収容溝108bに残る。
【0065】
これにより、同軸ケーブル110の内部導体111の先端曲げ作業が完了する。
【0066】
以上要するに、内部導体先端曲げ治具100によれば、内部導体突出用除去治具102で被覆層110aから内部絶縁体までを安全に切断除去することができる。
【0067】
また、外部導体露出用除去治具103で被覆層110aを安全に切断除去することができる。
【0068】
内部導体突出用切断刃107は、先端の刃107aが半円弧状に形成され、内部導体突出用除去治具102を用いた被覆層110aから内部絶縁体までの切断除去は、本体側第1収容溝106bに同軸ケーブル110を収容すると共に、カバー部材105を閉じ同軸ケーブル110を180度軸回転させることで、容易に被覆層110aから内部絶縁体までを切断除去することができる。
【0069】
外部導体露出用切断刃109は、先端の刃109aが半円弧状に形成され、外部導体露出用除去治具103を用いた被覆層110aの切断除去は、本体側第2収容溝108bに同軸ケーブル110を収容すると共に、カバー部材105を閉じ同軸ケーブル110を180度軸回転させることで、容易に被覆層110aを除去することができる。
【0070】
よって、内部導体先端曲げ治具100によれば、安全且つ容易に同軸ケーブル110をアンテナ等の機器に接続しやすくするための作業を一度に行うことができる。また、他の治具を必要としないため、コストを低く抑えることも可能である。
【0071】
前記実施の形態では、カバー側第1収容溝106a,本体側第1収容溝106bとカバー側第2収容溝108a,本体側第2収容溝108bの形状を半円弧状としたが、これに限定されず、例えば断面V字状としても良い。断面V字状とすることで、上下の溝で同軸ケーブル110を四点支持することができ、同軸ケーブル110を安定に保持できる。
【符号の説明】
【0072】
1 内部導体先端曲げ治具
2 内部導体
4 同軸ケーブル
5 本体部材
6 カバー部材
7 回動軸
8 本体側段付き保持溝
9 逃げ穴
14 曲げ部材
15 押込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材と、
回動軸を介して前記本体部材に対して開閉自在に設けられるカバー部材と、
からなり、
前記本体部材には、
その上面に、内部導体を中心に内部絶縁体、外部導体、被覆層とが順に積層される同軸ケーブルを保持する保持溝と、
前記保持溝の先端側であって、前記同軸ケーブルの前記内部導体を所定長、突出させた状態のとき、該突出させた前記内部導体の先端部が位置するように形成された逃げ穴と、 が形成され、
前記カバー部材には、
押込部を備える前記逃げ穴に嵌入する曲げ部材
が設けられ、
前記内部導体を所定長、突出させた状態の前記同軸ケーブルを前記保持溝に保持し、該保持により前記突出させた前記内部導体の先端部が前記逃げ穴に位置した状態において、前記押込部を押込むことにより前記曲げ部材を前記逃げ穴に嵌入させることで、前記内部導体の先端部を曲げること
を特徴とする内部導体先端曲げ治具。
【請求項2】
前記保持溝は、
前記内部導体を保持する内部導体保持溝と、
前記内部導体保持溝と連通し、前記同軸ケーブルの端部側の所定長を保持するケーブル保持溝と、
からなる本体側段付き保持溝であり、
該本体側段付き保持溝の前記ケーブル保持溝に前記同軸ケーブルの端部側の所定長を保持させると、前記内部導体が前記内部導体保持溝から前記逃げ穴に向けて所定長、突出すること
を特徴とする請求項1記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項3】
前記内部導体保持溝における前記逃げ溝側の底面及び該底面に対応する位置の前記曲げ部材の外表面に、前記内部導体を所定の曲率で曲げるためにアール部が形成されていること
を特徴とする請求項2記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項4】
前記カバー部材に、
前記本体部材側の前記本体側段付き保持溝に対応するカバー側段付き保持溝が形成されていること
を特徴とする請求項2又は3記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項5】
前記本体部材には、
その上面に、前記同軸ケーブルを位置決めして収容する本体側第1収容溝
が形成され、
前記カバー部材には、
前記本体部材側の前記本体側第1収容溝に対応するカバー側第1収容溝
が形成され、
該カバー側第1収容溝には、
前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断する内部導体突出用切断刃
が設けられて、
前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断除去する内部導体突出用除去治具が形成され、
前記同軸ケーブルを前記本体側第1収容溝に位置決めして収容し、その状態において、前記カバー部材を閉じることで、前記内部導体突出用切断刃で前記同軸ケーブルの先端部の前記被覆層から前記内部絶縁体までを切断除去して、前記内部導体を所定長、突出させること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項6】
前記内部導体突出用切断刃は、
先端の刃が半円弧状に形成され、
前記内部導体突出用除去治具を用いた前記同軸ケーブルの前記被覆層から前記内部絶縁体までの切断除去は、前記本体側第1収容溝に前記同軸ケーブルを位置決めして収容し、前記カバー部材を閉じ、且つ前記同軸ケーブルを180度軸回転させることにより行うこと
を特徴とする請求項5記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項7】
前記本体部材には、
その上面に、前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを位置決めして収容する本体側第2収容溝
が形成され、
前記カバー部材には、
前記本体部材側の前記本体側第2収容溝に対応するカバー側第2収容溝
が形成され、
該カバー側第2収容溝には、
前記被覆層を切断する外部導体露出用切断刃
が設けられて、
前記被覆層を切断除去する外部導体露出用除去治具が形成され、
前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを前記本体側第2収容溝に位置決めして収容し、その状態において、前記カバー部材を閉じることで、前記外部導体露出用切断刃で前記同軸ケーブルの先端部の前記被覆層を切断除去して、前記外部導体を所定長、露出させること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の内部導体先端曲げ治具。
【請求項8】
前記外部導体露出用切断刃は、
先端の刃が半円弧状に形成され、
前記外部導体露出用除去治具を用いた前記被覆層の切断除去は、前記本体側第2収容溝に前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを位置決めして収容し、前記カバー部材を閉じ、且つ前記内部導体の先端部が曲げられた前記同軸ケーブルを180度軸回転させることにより行うこと
を特徴とする請求項7記載の内部導体先端曲げ治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−35994(P2011−35994A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178145(P2009−178145)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】