説明

内部熱交換型蒸留塔およびその組み立て方法

【課題】複雑な構造を、手間のかかる製造工程を必要とすることなく、管の外周面と棚板との間のシールを確実に行うことが可能で、所望の特性を実現することが可能な、管外(シェル側)を棚段塔とする内部熱交換型蒸留塔およびその組み立て方法を提供する。
【解決手段】直径D1が管25より大きい貫通孔120と、蒸気と液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路と、貫通孔に配設される、直径が管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で管の外径より小さいシール用貫通孔42を有し、シール用貫通孔の内周端側から放射状に切り込み29が複数形成された薄板状シール部材40とを備えた複数枚の棚板20を、本体胴1内に配設した状態で、管25を、棚板の貫通孔および薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、管の外周面にシール用貫通孔の内周部を当接させて管と棚板の貫通孔との間をシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、いわゆるシェル&チューブ型の熱交換器を縦型にした構造を有し、管内側(チューブ側)と管外側(シェル側)の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、各管の管壁を伝熱面として、高圧側から低圧側に熱移動させることにより、高圧側が濃縮部、低圧側が回収部として機能するように構成された多管式熱交換器縦型の内部熱交換型蒸留塔に関し、詳しくは、管外を棚段塔とした内部熱交換型蒸留塔およびその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー性に優れた蒸留塔として、低圧塔と高圧塔とを備え、両者の間で熱交換を行うように構成され、他との熱の授受を必要としない内部熱交換型の蒸留塔が知られている。この内部熱交換型蒸留塔は、蒸留操作の省エネルギー化を進める見地からすれば、省エネルギーに最も忠実な理論であることは、原理的にも当然であり、また、学問上からも認められているところである。
【0003】
また、内部熱交換型蒸留塔として、複数の管を両端管板によって本体胴と連結させることにより、本体胴の内部において、各管の管内(チューブ側)と管外(シェル側)が隔離された構造とし、管内および管外のそれぞれに気液の出入口を設け、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、各管の管壁を伝熱面として、高圧側から低圧側に熱移動させることにより、高圧側を濃縮部、低圧側を回収部として一つの蒸留塔を構成するようにした構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この内部熱交換型蒸留塔は、例えば、図5に示すように、本体胴101と、本体胴101内に挿入された複数の管125を両端管板(上側管板(塔頂側管板)103aおよび下側管板(塔底側管板)103b)によって本体胴101と連結させることにより形成されている。そして、各管125の管内104と管外105は互いに隔離された構造を有しており、管内104が高圧側の濃縮部となり、管外105が低圧側の回収部となるように構成されている。なお、管内104および管外105はいずれも規則充填物が充填された充填塔となっている。
【0005】
また、本体胴101の上部には、管外(回収部)105に液を供給するための塔頂液入り口(回収部液入口)106、管外(回収部)105からの蒸気を抜き出す塔頂蒸気出口(回収部蒸気出口)107が配設されており、上側管板103aより上側の、管内(濃縮部)104と連通する端室114aには、管内(濃縮部)104に液を供給するための濃縮部液入口108が配設され、また、管内(濃縮部)104からの蒸気を抜き出す濃縮部蒸気出口109が配設されている。
【0006】
一方、本体胴101の下部には、管外(回収部)105に蒸気を供給するための回収部蒸気入口110、管外(回収部)105からの液を抜き出す回収部液出口111が配設されており、下側管板103bより下側の、管内(濃縮部)104と連通する端室114bには、管内(濃縮部)104に蒸気を供給するための濃縮部蒸気入口112が配設され、また、管内(濃縮部)104からの液を抜き出す濃縮部液出口113が配設された構造を有している。
【0007】
また、上記特許文献1の内部熱交換型蒸留塔の構造を基本構造として、図6に示すように、濃縮部である管125を取り囲むように同軸の外筒126を設け、管125と外筒126の間の空間(水平断面形状はドーナツ形)127を回収部とし、管125と外筒126を本体胴101内に配設した構造を有する内部熱交換型蒸留塔が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
さらには、特に図示しないが、同じく上記特許文献1の内部熱交換型蒸留塔の構造を基本構造とし、管内に規則充填物を充填して濃縮部とするとともに、塔頂から塔底までの間にレデューサを複数個所に配設して、管の径を塔頂から塔底に向かって小さくし、かつ、管外(本体胴と管の間の空間)に規則充填物を充填して回収部とした内部熱交換型蒸留塔が提案されている(特許文献3)。
【0009】
ところで、蒸留装置においては、棚段塔が広く用いられており、内部熱交換型蒸留塔においても、その改良形態、発展形態として、棚段塔タイプの内部熱交換型蒸留塔への要求が潜在的に存在している。
【0010】
ところで、例えば、管外を棚段塔とした場合において、棚板に形成した多数の孔のそれぞれに、管外を上昇する蒸気と下降する液体の両方を通過させて気液の接触を行わせるような棚段塔(例えば、無堰の多孔板塔)を形成しようとすると、管の外周面を伝って液が実質的に流下しないように、棚板(棚段)と管の外周面の間のシールを行う必要がある。
【0011】
しかしながら、管外を上昇する蒸気と下降する液体の両方を通過させて気液の接触を行わせる多孔板塔において、管の外周面を伝って液が実質的に流下しないように、棚板と管の外周面の間をシールするためには、複雑な構造を必要とし、製造コストやメンテナンスコストの増大を招くという問題点がある。
【0012】
なお、図7に示すように、管202の外周面に沿って液が流下することにより、シェル201側を上昇する蒸気と、液の周方向への分散と、滞留時間の増大を図るための線状部材(針金)231(図8(a),(b))が表面に螺旋状に配設された管202の外周面に沿って流下する液とが気液接触するように構成された気液接触機構を備えた内部熱交換型蒸留塔であって、管202を貫通させる貫通孔222を有し、シェル201内に高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設され、シェル201側を上昇する蒸気の流路を制御して、シェル201の軸方向に略直交する方向に流動させ、反転を繰り返しながらジグザグ状の経路でシェル201側を上昇させる複数枚のじゃま板220を備えた内部熱交換型蒸留塔が提案されており(特許文献4参照)、この内部熱交換型蒸留塔においては、図8に示すように、じゃま板220の貫通孔222に、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が管202の外径と同じか、管202の外径より小さいシール用貫通孔224を有し、かつ、シール用貫通孔224の内周端側から放射状に切り込み225が複数形成された薄板状シール部材223が配設され、管202をじゃま板220の貫通孔222および薄板状シール部材223のシール用貫通孔224に貫通させて組み立てたときに、シール用貫通孔224の内周部が管202に当接するように構成されているが、この内部熱交換型蒸留塔の場合、管202の外周面に沿って液を流下させることを前提とするものであることから、管の外周面を伝って液が実質的に流下しないように、棚板と管の外周面の間をシールする構造には適用することができないのが実情である。
【特許文献1】特開平8−66601号公報
【特許文献2】特開2004−16929号公報
【特許文献3】特開平9−52001号公報
【特許文献4】特開2004−037017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、管外を棚段塔とする内部熱交換型蒸留塔であって、複雑な構造や、手間のかかる製造工程を必要とすることなく、管の外周面と棚板との間のシールを確実に行うことが可能で、所望の特性を実現することが可能な内部熱交換型蒸留塔およびその組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願発明(請求項1)の内部熱交換型蒸留塔は、
垂直に配設される筒状の本体胴と、
筒状の本体胴内に本体胴の軸方向に沿って収納された複数の管と、
複数の管の上端側および下端側を本体胴と連結して、各管の管内と管外が隔離された構造とする上側管板および下側管板と
を備え、
前記管内を高圧側または低圧側、前記管外を低圧側または高圧側として操作圧力に差をつけ、操作温度を異ならせることにより、濃縮部として機能する管内または管外から、回収部として機能する管外または管内に、各管の管壁を伝熱面として熱移動するように構成され、かつ、管外が棚段式の気液接触構造を有する内部熱交換型蒸留塔であって、
(a)前記管を貫通させる貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを有し、本体胴内に高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設される複数枚の棚板を備え、
(b)前記棚板の、周辺部と本体胴内壁との隙間が気液を通過させないようにシールされ、
(c)前記棚板の、前記管を貫通させる貫通孔の直径が、前記管の外径より10〜40mm大きく、
(d)前記棚板の貫通孔には、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で前記管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、前記シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設され、
(e)前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した前記管の外周面に、前記シール用貫通孔の内周部が当接することにより、前記管と前記棚板の貫通孔との間が、運転中において実質的に液および蒸気が通過しないようにシールされていること
を特徴としている。
【0015】
また、請求項2の内部熱交換型蒸留塔は、請求項1の発明の構成において、前記薄板状シール部材のシール用貫通孔の直径が前記管の外径より小さく、前記管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となっていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3の内部熱交換型蒸留塔は、請求項1または2の発明の構成において、前記管の径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0017】
また、本願発明(請求項4)の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法は、
垂直に配設される筒状の本体胴と、
筒状の本体胴内に本体胴の軸方向に沿って収納された複数の管と、
複数の管の上端側および下端側を本体胴と連結して、各管の管内と管外が隔離された構造とする上側管板および下側管板と
を備え、
前記管内を高圧側または低圧側、前記管外を低圧側または高圧側として操作圧力に差をつけ、操作温度を異ならせることにより、濃縮部として機能する管内または管外から、回収部として機能する管外または管内に、各管の管壁を伝熱面として熱移動するように構成され、かつ、管外が棚段式の気液接触構造を有する内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法であって、
(a)前記管を貫通させる、直径が前記管の外径より10〜40mm大きい貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを備えた棚板であって、さらに、前記貫通孔には、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で前記管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、前記シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設された棚板を、前記本体胴内に、高さ方向に所定の間隔をおいて複数枚略水平に配設する工程と、
(b)前記管を、前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、前記管の外周面に、前記シール用貫通孔の内周部を当接させることにより、前記管と前記棚板の貫通孔との間が、運転中において実質的に液および蒸気が通過しないようにシールされた状態にする工程と
を具備することを特徴としている。
【0018】
また、請求項5の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法は、請求項4の発明の構成において、前記管を、上方から、前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、前記管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となるようにすることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法は、請求項4または5の発明の構成において、前記管として、その径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成された管を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本願発明(請求項1)の内部熱交換型蒸留塔は、上述のような内部熱交換型蒸留塔の構成において、棚板として、管を貫通させる、直径が前記管の外径より10〜40mm大きい貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを備えた棚板であって、さらに、貫通孔に、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設された棚板を用い、棚板の貫通孔および薄板状シール部材のシール用貫通孔に管を挿入し、貫通させて、管の外周面に、シール用貫通孔の内周部が当接するようにしているので、管外を棚段塔とする内部熱交換型蒸留塔であって、複雑な構造や、手間のかかる製造工程を必要とすることなく、管の外周面と棚板との間のシールを確実に行うことが可能で、所望の特性を実現することが可能な内部熱交換型蒸留塔を得ることができる。
【0021】
ところで、本願発明の内部熱交換型蒸留塔においては、例えば、管内を回収部、管外を濃縮部とし、該濃縮部を構成する棚段塔が、無堰の多孔板(棚板)を配設してなる多孔板塔である場合、棚板に形成された気液接触用流路(多数の貫通孔)の径や、多孔板塔を流下する液量、多孔板塔を上昇する蒸気量を制御しつつ運転されることになる。したがって、薄板状シール部材の、シール用貫通孔の内周端が、管の表面に当接した部分の近傍に隙間が存在する場合においても、棚板の気液接触用流路(多数の貫通孔)の径や、気液接触用流路(多数の貫通孔)を通過する液量および蒸気量を制御することにより、運転中において、薄板状シール部材の、シール用貫通孔の内周部と管の外周面との当接部分の近傍の隙間から、液および蒸気が通過することを実質的に防止することが可能になる。
その結果、棚段塔の性能を十分に発揮させることができるようになり、優れた蒸留性能を有する内部熱交換型蒸留塔を得ることができる。
【0022】
なお、シール用貫通孔の内周部と管の外周面との当接部分の近傍の隙間から、液および蒸気が通過することを実質的に防止するとは、棚段式の気液接触構造を有する管外における気液接触が十分に行われることを妨げるほどには液および蒸気を通過させないことを意味する概念であり、まったく液および蒸気が通過しない場合に限られるものではない。
【0023】
なお、貫通孔に、弾性変形可能な薄板材料からなるシール用貫通孔を有し、かつ、シール用貫通孔の内周端側から放射状に複数形成された切り込みを備えた薄板状シール部材を配設し、シール用貫通孔に管を挿入し、貫通させて、管の外周面に、シール用貫通孔の内周部が当接するようにしている本願請求項1の構成は、上記特許文献4の内部熱交換型蒸留塔の、薄板状シール部材223と管202の関係(背景技術の欄の説明、および、特許文献4を説明する図8参照)と、一部類似しているが、上記特許文献4の発明は、管の外周面に沿って液を確実に流下させることを意図するものであり、かかる特許文献4の、蒸気をジグザグ状の経路でシェル201側を上昇させるための複数枚のじゃま板220を備えた内部熱交換型蒸留塔の構成(特許文献4を説明する図7参照)、すなわち、シール用貫通孔の内周部と管の外周面との当接部分の隙間に、液が流下しないような圧損を与えることができないような構成では、本願請求項1の発明のように、棚板の気液接触用流路(多数の貫通孔)の径や、気液接触用流路(多数の貫通孔)を通過する液量および蒸気量を制御することにより、液および蒸気が通過することを実質的に防止するような構成をとることは不可能であり、液が実質的に管の外周面を伝って流下しないように、棚板と管の外周面の間をシールするという特有の作用効果を得ることはできない。
なお、上記特許文献4の発明は、気液接触部において液が管外壁面を流下し、蒸気がこの液流に対し直行するといった気液十字流による気液接触を行わせる発明であることから、液の全量が管の外周面を流下する、すなわち液を通過させる構成をとる。これに対し、本願発明の内部熱交換型蒸留塔における気液接触部においては、液が棚板上に溜まり、蒸気が棚板の気液接触用流路(多数の貫通孔)を通過して気泡となり、棚板上に溜められた液と気液接触することから、液を棚板上に溜めるための構成、すなわち、液が実質的に管の外周面を伝って流下しないように、棚板と管の外周面の間をシールする構成をとる。従って、本願発明の構成は、上記特許文献4を説明する図7の構成に類似する構成を有しているが、使用目的と要求仕様が異なり、全体的な構成が全く異なるものである。
【0024】
また、請求項2の内部熱交換型蒸留塔のように、請求項1の発明の構成において、薄板状シール部材のシール用貫通孔の直径が管の外径より小さく、管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となるように構成した場合、薄板状シール部材のシール用貫通孔周辺が弾性変形し、シール用貫通孔の周辺部がその復元力により付勢されて、管の外周面に当接するため、管の外周面と棚板との間のシールをさらに確実に行うことが可能になる。
【0025】
また、請求項3の内部熱交換型蒸留塔のように、請求項1または2の発明の構成において、管の径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成されている場合、管の軸心のずれや変形などを伴いやすく(例えばレデューサを用いて管の径を段階的に変化させる場合、軸心のずれや、わずかな湾曲などが生じやすい)、外周面と棚板の貫通孔との間をシールすることは困難になるが、本願発明の構成においては、管の軸心のずれや変形などを吸収することが可能になり、簡潔な構成で管の外周面と棚板の貫通孔との間を効率よくシールすることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0026】
また、本願発明(請求項4)の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法は、棚板として、管を貫通させる、直径が前記管の外径より10〜40mm大きい貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを備えた棚板であって、さらに、貫通孔に、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設された棚板を用い、複数枚の棚板を、本体胴内に、高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設した後、棚板の貫通孔および薄板状シール部材のシール用貫通孔に管を挿入して、管の外周面に、シール用貫通孔の内周部が当接するようにしているので、複雑な構造や、手間のかかる製造工程を必要とすることなく、管の外周面と棚板との間のシールを確実に行うことが可能になり、所望の特性を備えた内部熱交換型蒸留塔を効率よく組み立てることが可能になる。
【0027】
また、請求項5の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法のように、請求項4の発明の構成において、管を、上方から、棚板の貫通孔および薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となるようにした場合、薄板状シール部材のシール用貫通孔周辺が弾性変形し、シール用貫通孔の周辺部がその復元力により付勢されて、管の外周面に当接するため、管の外周面と棚板との間のシールをさらに確実に行うことが可能になる。
【0028】
また、請求項6の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法のように、請求項4または5の発明の構成において、管として、その径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成された管を用いた場合、通常、管の軸心のずれや変形などを伴いやすく(例えばレデューサを用いて管の径を段階的に変化させる場合、軸心のずれや、わずかな湾曲などが生じやすい)、外周面と棚板の貫通孔との間をシールすることは困難になるが、本願発明の構成においては、管の軸心のずれや変形などを吸収することが可能になり、簡潔な構成で管の外周面と棚板の貫通孔との間を効率よくシールすることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0030】
図1(a)は本願発明の一実施形態にかかる内部熱交換型蒸留塔の要部構成を拡大して示す平面図、(b)はその正面断面図、図2は本願発明の一実施形態にかかる内部熱交換型蒸留塔の概略構成を示す図である。
【0031】
この実施例1の内部熱交換型蒸留塔は、図2に示すように、複数の管25を両端管板3a,3bによって本体胴1と連結することにより形成され、本体胴1の内部において各管25の管内(チューブ側)4と管外(シェル側)5が隔離され、かつ、管内4および管外5のそれぞれが気液の出入口を備えている。
【0032】
そして、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔では、管内4側と管外5側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、各管25の管壁を伝熱面として、高圧側から低圧側に熱移動させることができるように構成されており、管内4が低圧側の回収部として機能し、管外5が高圧側の濃縮部として機能するように構成されている。
【0033】
また、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔においては、管内4が回収部となる管25の気液接触構造として、濡れ壁塔式の気液接触構造が採用されている。また、管内4の周方向への液の分散と、液の滞留時間の増大を図るため、流動制御部材として、線状部材(具体的には針金)26が、管25の内周面に沿うように螺旋状に配設されている(図2参照)。
【0034】
また、本体胴1の上側管板3aより上側の、管内(回収部)4と連通する端室14aには、管内(回収部)4に液(原料液)を供給するための塔頂液入り口(回収部液入口)6、管内(回収部)4からの蒸気を抜き出す塔頂蒸気出口(回収部蒸気出口)7が配設されており、本体胴1の上部には、管外(濃縮部)5に原料液と濃縮部塔底から流下する液の混合液を供給するための原料液入口8が配設され、また、管外(濃縮部)5からの蒸気を抜き出す濃縮部蒸気出口9が配設されている。
【0035】
一方、本体胴1の下側管板3bより下側の、管内(回収部)4と連通する端室14bには、管内(回収部)4に蒸気を供給するための回収部蒸気入口10、管内(回収部)4からの液を抜き出す回収部液出口11が配設されており、下側管板3bの上側には、管外(濃縮部)5に蒸気を供給するための濃縮部蒸気入口12が配設され、また、管外(濃縮部)5からの液を抜き出す濃縮部液出口13が配設されている。
【0036】
また、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔においては、塔頂から塔底にかけての蒸気量負荷を均一化するために、レデューサ27を用いて、径の異なる複数の単管25aを接続することにより、管25の径が塔頂から塔底に向かって段階的に小さくなるように構成されている。
管25の径は、塔頂では6〜10インチの範囲とされ、塔底では2〜4インチの範囲とされている。なお、管25の径を2インチ以上にすることにより、例えば500〜700kg/cm2の高圧水を吹き付けるジェット洗浄により管内4を洗浄する場合に用いられるノズルの挿入が可能になる。
【0037】
そして、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔においては、濃縮部となる管外5の気液接触構造として、棚段塔式の気液接触構造が採用されており、無堰の多孔板(棚板)20が塔の高さ方向に所定の間隔をおいて複数配設された構造を有している。
【0038】
多孔板(棚板)20は、管25を貫通させる貫通孔120(図1)と、管外5を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路(多数の貫通孔)121(図2)を有しており、本体胴1内に高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に複数枚配設されている。
【0039】
なお、多孔板(棚板)20は、本体胴1の内周面に全周溶接された受けリング(図示せず)にボルト、ナットにより本体胴1に取り付けられており、加工板(棚板)20の周辺部と本体胴1の内壁との隙間は気液を通過させないようにシールされている。
【0040】
また、図1(a),(b)および図3に示すように、多孔板(棚板)20の、管25を貫通させる貫通孔120の直径D1は、管25の外径D2より10〜40mm大きく形成されている。
【0041】
そして、多孔板(棚板)20の、管25を貫通させる貫通孔120には、管25と多孔板(棚板)20の間をシールするための薄板状シール部材40が配設されている。なお、この実施例1では、薄板状シール部材40は、多孔板(棚板)20の一方の主面とフランジ状の取付部材41の間に挟まれるように取り付けられている。ただし、薄板状シール部材40は溶接その他の種々の方法により多孔板(棚板)20に取り付けることが可能である。
【0042】
薄板状シール部材40は、弾性変形可能な薄板材料(この実施形態ではステンレス製の薄板)から形成されており、直径D3(図3)が管25の外径D2よりも約10mm小さいシール用貫通孔42を備えている。
【0043】
さらに、薄板状シール部材40には、シール用貫通孔42の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込み29が複数形成されており、図1(a)に示すように、シール用貫通孔42に管25を挿入することにより、薄板状シール部材40がシール用貫通孔42の周辺部において弾性変形し、漏斗状の形状となるとともに、弾性による復元力(付勢力)によって、シール用貫通孔42の内周端が管25の外周面に確実に当接するように構成されている。
【0044】
また、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔においては、本体胴1の下部の所定の段(この実施例1では、最も下側の棚板(多孔板)20(20a)の上側、その上の棚板(多孔板)20(20b)の上側、およびさらにその上の棚板(多孔板)20(20c)の上側の合計3ヶ所)に、濃縮部である管外5の途中から液を塔外に抜き出すサイドカット用の液抜き出し口31a,31b,31cが配設されており、濃縮部である管外5の所定の位置からサイドカットを行うことができるように構成されている。なお、運転開始後は、液抜き出し口31a,31b,31cのうちの1ヶ所のみが使用され、他の2ヶ所はバルブカットされるように構成されている。
なお、これにより、濃縮部の塔頂から塔底に至る間の特定の位置に微量成分が蓄積するような蒸留系において、微量成分が蓄積する位置から液をサイドカットすることが可能になり、蒸留性能に優れた内部熱交換型蒸留塔を提供することが可能になる。
【0045】
また、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔を組み立てるにあたっては、上述のように、管25を貫通させる貫通孔120と、気液の接触を行わせる気液接触用流路(多数の貫通孔)121(図2)とを備え、かつ、貫通孔120に、シール用貫通孔を有する薄板状シール部材40が配設された棚板20を、本体胴1内に、高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設した後、本体胴1の上部開口側から、管25を、棚板20の貫通孔120および薄板状シール部材40のシール用貫通孔42に挿入することにより、効率よく組み立てることができる。すなわち、管25を、棚板20の貫通孔120および薄板状シール部材40のシール用貫通孔42に挿入することにより、図1(a),(b)に示すように、薄板状シール部材40がシール用貫通孔42の周辺部において弾性変形し、漏斗状の形状となるとともに、弾性による復元力(付勢力)によって、シール用貫通孔42の内周端が管25の外周面に確実に当接する。
その結果、管25と棚板20の貫通孔120との間を、運転中において、実質的に液および蒸気が通過しないようにシールすることが可能になる。
【0046】
すなわち、この実施例1の内部熱交換型蒸留塔にあっては、例えば、棚板20に形成された気液接触用流路(多数の貫通孔)121の径、管外(多孔板塔)5を流下する液量、多孔板塔を上昇する蒸気量などを制御しつつ運転を行うことにより、薄板状シール部材40の、シール用貫通孔42の内周端が、管25の表面に当接した部分の近傍に隙間が存在する場合においても、その隙間から液および蒸気が通過することを実質的に防止することができる。
その結果、棚段塔の性能を十分に発揮させることができるようになり、所望の蒸留性能を備えた内部熱交換型蒸留塔を得ることができる。
【0047】
また、管25が薄板状シール部材40のシール用貫通孔42を貫通した状態で、薄板状シール部材40がシール用貫通孔42の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となるようにしているので、薄板状シール部材40のシール用貫通孔42の周辺部が弾性変形し、シール用貫通孔42の周辺部がその復元力により付勢されて、管25の外周面に当接するため、管25の外周面と棚板20との間のシールを確実に行うことができる。
【0048】
また、上述のように、管25の径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成されているため、管25の軸心のずれや変形などを伴いやすく(例えばレデューサを用いて管25の径を段階的に変化させる場合、軸心のずれや、わずかな湾曲などが生じやすい)、管25の外周面と棚板20の貫通孔120との間をシールすることは困難になるが、この実施例1の構成の場合、薄板状シール部材40のシール用貫通孔42の周辺が変形して、管25の軸心のずれや変形などを吸収することが可能になり、簡潔な構成で管25の外周面と棚板20の貫通孔120との間を効率よくシールすることができる。
なお、薄板シール状部材40のシール用貫通孔42の径を、管25の径の変化に対応させて変化させる場合、薄板シール状部材40のシール用貫通孔42の径は、管25の径の変化に概略対応させれば足りる。すなわち、対応関係の多少のばらつきは、薄板状シール部材40のシール用貫通孔42の周辺の弾性変形により吸収することができる。
【0049】
また、上記実施例1の内部熱交換型蒸留塔は、複数の棚板20を、本体胴1内に、高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設した後、本体胴1の上部開口側から、管25を、棚板20の貫通孔120および薄板状シール部材40のシール用貫通孔42に挿入するだけで、管25の外周面と棚板20の貫通孔120との間がシールされた状態となるように組み立てることが可能で、複雑な工程を必要とすることなく、所望の特性を備えた内部熱交換型蒸留塔を効率よく製造することができる。
【実施例2】
【0050】
図4は、本願発明の他の実施例にかかる内部熱交換型蒸留塔を示す図である。
【0051】
上記実施例1では、管内4が低圧側の回収部として機能し、管外5が高圧側の濃縮部として機能する内部熱交換型蒸留塔を例にとって説明したが、本願発明は、必ずしも管内4が低圧側の回収部として機能し、管外5が高圧側の濃縮部として機能する内部熱交換型蒸留塔に限られるものではなく、図4に示すように、管内54が高圧側の濃縮部として機能し、管外55が低圧側の回収部として機能するような内部熱交換型蒸留塔にも適用することが可能である。
【0052】
この実施例2の内部熱交換型蒸留塔では、高圧側の濃縮部である管内54が規則充填物が充填された充填塔であり、低圧側の回収部である管外55が上記実施例1の場合と同様の棚段塔(多孔板塔)とされている。
【0053】
この実施例2の内部熱交換型蒸留塔のように、高圧側の濃縮部である管内54を規則充填物が充填された充填塔とする場合、塔頂から塔底までの蒸気量および液量の変化による蒸留性能への悪影響を避けるために、塔頂から塔底にかけて管の径を調整する方法も考えられるが、管内を規則充填物を用いた充填塔とし、塔頂から塔底にかけて、規則充填物の種類を変えて対応することが望ましい。
【0054】
また、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔においては、本体胴51の上側管板53aより上側の、管内(濃縮部)54と連通する端室64aには、管内(濃縮部)54に液(外部還流液)を供給するための塔頂液入り口(濃縮部液入口)56、管内(濃縮部)54からの蒸気を抜き出す塔頂蒸気出口(濃縮部蒸気出口)57が配設されており、本体胴51の上部には、管外(回収部)55に液を供給するための原料液入口58が配設され、また、管外(回収部)55からの蒸気を抜き出す回収部蒸気出口59が配設されている。
【0055】
一方、本体胴51の下側管板53bより下側の、管内(濃縮部)54と連通する端室64bには、管内(濃縮部)54に蒸気を供給するための濃縮部蒸気入口60、管内(濃縮部)55からの液を抜き出す濃縮部液出口61が配設されており、下側管板53bの上側には、管外(回収部)55に蒸気を供給するための回収部蒸気入口62が配設され、また、管外(回収部)55からの液を抜き出す回収部液出口63が配設されている。
【0056】
その他の部分については、上記実施例1の場合に準ずる構成を有している。なお、図4において、図1〜図3と同一符号を付した部分は、同一または相当する部分を示している。
【0057】
この実施例2のように、高圧側の濃縮部である管内54を、規則充填物が充填され、塔頂から塔底まで径が一定の充填塔とし、低圧側の回収部である管外55を、上記実施例1の場合と同様の棚段塔(多孔板塔)とした場合にも、本願発明を適用することが可能であり、その場合にも、上記実施例1の場合と同様に、管25の外周面と棚板(多孔板塔)20の貫通孔120の間の隙間を確実にシールすることが可能になり、所望の特性を備えた内部熱交換型蒸留塔を効率よく製造することが可能になる。
【0058】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本願発明によれば、複雑な構造や、煩雑な製造工程を必要とすることなく、シェル&チューブ型の熱交換器を縦型にした構造を基本構造とし、管外を棚段塔とする内部熱交換型蒸留塔であって、管の外周面と棚板との間が確実にシールされ、所望の特性を発揮する内部熱交換型蒸留塔を、複雑な構造や、手間のかかる製造工程を必要とすることなく、効率よく組み立てることができる。
したがって、本願発明は、石油精製、石油化学、一般化学などの分野に用いられる、シェル&チューブ型の熱交換器を縦型にした構造を基本構造とし、管外を棚段塔とする内部熱交換型蒸留塔として広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)、(b)は、本願発明の一実施例(実施例1)にかかる内部熱交換型蒸留塔の要部を拡大して示す図である。
【図2】本願発明の実施例1にかかる内部熱交換型蒸留塔の構成を示す図である。
【図3】本願発明の実施例1にかかる内部熱交換型蒸留塔の要部を拡大して示す図である。
【図4】本願発明の他の実施例(実施例2)にかかる内部熱交換型蒸留塔の構成を示す図である。
【図5】従来の内部熱交換型蒸留塔の構成を示す図である。
【図6】従来の内部熱交換型蒸留塔の他の例を示す図である。
【図7】従来の内部熱交換型蒸留塔のさらに他の例を示す図である。
【図8】図7の内部熱交換型蒸留塔の要部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 本体胴
3a 上側管板
3b 下側管板
4 管内(回収部、チューブ側)
5 管外(濃縮部、シェル側)
6 塔頂液入り口(回収部液入口)
7 塔頂蒸気出口(回収部蒸気出口)
8 原料液入口
9 濃縮部蒸気出口
10 回収部蒸気入口
11 回収部液出口
12 濃縮部蒸気入口
13 濃縮部液出口
14a、14b 端室
20(20a、20b、20c) 棚板(多孔板)
25 管
25a 単管
26 線状部材
27 レデューサ
29 切り込み
31a,31b,31c 液抜き出し口
40 薄板状シール部材
41 取付部材
42 シール用貫通孔
51 本体胴
53a 上側管板
53b 下側管板
54 管内(濃縮部、チューブ側)
55 管外(回収部、シェル側)
56 塔頂液入り口(濃縮部液入口)
57 塔頂蒸気出口(濃縮部蒸気出口)
58 原料液入口
59 回収部蒸気出口
60 濃縮部蒸気入口
61 濃縮部液出口
62 回収部蒸気入口
63 回収部液出口
64a、64b 端室
120 貫通孔
121 気液接触用流路
D1 貫通孔の直径
D2 管の外径
D3 シール用貫通孔の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に配設される筒状の本体胴と、
筒状の本体胴内に本体胴の軸方向に沿って収納された複数の管と、
複数の管の上端側および下端側を本体胴と連結して、各管の管内と管外が隔離された構造とする上側管板および下側管板と
を備え、
前記管内を高圧側または低圧側、前記管外を低圧側または高圧側として操作圧力に差をつけ、操作温度を異ならせることにより、濃縮部として機能する管内または管外から、回収部として機能する管外または管内に、各管の管壁を伝熱面として熱移動するように構成され、かつ、管外が棚段式の気液接触構造を有する内部熱交換型蒸留塔であって、
(a)前記管を貫通させる貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを有し、本体胴内に高さ方向に所定の間隔をおいて略水平に配設される複数枚の棚板を備え、
(b)前記棚板の、周辺部と本体胴内壁との隙間が気液を通過させないようにシールされ、
(c)前記棚板の、前記管を貫通させる貫通孔の直径が、前記管の外径より10〜40mm大きく、
(d)前記棚板の貫通孔には、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で前記管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、前記シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設され、
(e)前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した前記管の外周面に、前記シール用貫通孔の内周部が当接することにより、前記管と前記棚板の貫通孔との間が、運転中において実質的に液および蒸気が通過しないようにシールされていること
を特徴とする内部熱交換型蒸留塔。
【請求項2】
前記薄板状シール部材のシール用貫通孔の直径が前記管の外径より小さく、前記管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となっていることを特徴とする請求項1記載の内部熱交換型蒸留塔。
【請求項3】
前記管の径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の内部熱交換型蒸留塔。
【請求項4】
垂直に配設される筒状の本体胴と、
筒状の本体胴内に本体胴の軸方向に沿って収納された複数の管と、
複数の管の上端側および下端側を本体胴と連結して、各管の管内と管外が隔離された構造とする上側管板および下側管板と
を備え、
前記管内を高圧側または低圧側、前記管外を低圧側または高圧側として操作圧力に差をつけ、操作温度を異ならせることにより、濃縮部として機能する管内または管外から、回収部として機能する管外または管内に、各管の管壁を伝熱面として熱移動するように構成され、かつ、管外が棚段式の気液接触構造を有する内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法であって、
(a)前記管を貫通させる、直径が前記管の外径より10〜40mm大きい貫通孔と、管外を上昇する蒸気と下降する液体とを通過させて気液の接触を行わせる気液接触用流路とを備えた棚板であって、さらに、前記貫通孔には、弾性変形可能な薄板材料からなり、直径が前記管の外径と同じか、または、20mm以内の範囲で前記管の外径より小さいシール用貫通孔を有し、かつ、前記シール用貫通孔の内周端側から放射状に長さが5〜20mmの切り込みが複数形成された薄板状シール部材が配設された棚板を、前記本体胴内に、高さ方向に所定の間隔をおいて複数枚略水平に配設する工程と、
(b)前記管を、前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、前記管の外周面に、前記シール用貫通孔の内周部を当接させることにより、前記管と前記棚板の貫通孔との間が、運転中において実質的に液および蒸気が通過しないようにシールされた状態にする工程と
を具備することを特徴とする内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法。
【請求項5】
前記管を、上方から、前記棚板の貫通孔および前記薄板状シール部材のシール用貫通孔に貫通させ、前記管が薄板状シール部材のシール用貫通孔を貫通した状態で、薄板状シール部材がシール用貫通孔の周辺部において下向きに湾曲し、漏斗状の形状となるようにすることを特徴とする請求項4記載の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法。
【請求項6】
前記管として、その径が、塔頂から塔底に向かって、連続的あるいは段階的に小さくなるように構成された管を用いることを特徴とする請求項4または5記載の内部熱交換型蒸留塔の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−268479(P2007−268479A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99952(P2006−99952)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構業務委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(390036663)木村化工機株式会社 (27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】