説明

円偏波面切替型GPSアンテナ

【課題】折畳型携帯無線機の展開、折畳の両状態において受信特性を改善することができるGPSアンテナを提供する。
【解決手段】紙面から上方向に右旋偏波を送受信する場合、放射導体3を使用するため、整合回路切替スイッチ7は整合回路5側に接続され、整合回路5と給電部8が接続される。そのため、GPSアンテナは、放射導体3とヘリカルアンテナ2がアンテナとして動作し、右旋偏波を送受信することが可能となる。一方、左旋偏波を送受信する場合には、整合回路切替スイッチ7は整合回路6側に接続され、給電部8と整合回路6が接続される。そのため、GPSアンテナは、放射導体4とヘリカルアンテナ2がアンテナとして動作するため、紙面から上方向に左旋円偏波を送受信することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯無線機に関し、特に、折畳型携帯無線機で使用されるGPSアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯無線機には、テレビ受信機能、音楽再生機能等、さまざまな機能が搭載されてきている。その機能の一つに、GPS(global positioning system)がある。本機能と地図により、携帯無線機においても、ナビゲーションシステムが可能となっている。GPSシステムは、複数の衛星からの電波を受信して、信号の時間差から現在位置を割り出している。衛星からの電波は、円偏波であるため、受信用アンテナも円偏波アンテナが望ましい。自動車等に搭載されているGPSアンテナは、ダッシュボード上に配置されており、常に天頂方向を向いていること、また、円偏波のため自動車の向きに関係なく偏波面が一致し、比較的良好な受信特性が得られる。一方、携帯無線機に搭載されるGPSアンテナは、携帯無線機が小型化されているため、パッチアンテナ等の円偏波アンテナは搭載することができず、直線偏波素子を使用している。しかし、直線偏波素子は実際には軸比は大きく劣化するものの、円偏波成分も放射しており、偏波回転方向を対向するアンテナの偏波と一致させることができるか否かで通信性能が決まる。
【0003】
携帯無線機の従来例のGPSアンテナを図10に示す。従来例のGPSアンテナは、ヘリカルアンテナ2と放射導体3と整合回路5と給電部8とGPS回路23と制御回路24と回路基板25等から構成されている。ここで、GPSアンテナの偏波について考えてみると、従来例のGPSアンテナは、直線偏波アンテナを用いているものの、ヘリカルアンテナ2および放射導体3を図11(a)のように配置すると、正面方向には右旋円偏波を出すことができる。一方、図11(b)のように配置すると、正面方向には左旋円偏波を出すことができる。図12は図11(a)の配置時の回路基板25表裏の偏波面を示している。前述のように正面方向には右旋円偏波を出すことができるが、背面方向については、図11(b)と同じ実装になるため、左旋円偏波となることが分かる。
【0004】
ここで、実際の携帯無線機に実装した状態のGPSアンテナについて、図13を用いて説明する。図13に示す携帯無線機は折畳型携帯無線機であり、ヘリカルアンテナ2、放射導体3、給電部8、回路基板25、表示部26、キー入力部27から構成されており、ここでは、表示部26側にGPSアンテナ1を実装している。なお、キー入力側筐体には、携帯無線機の回路や電池、キー入力部27が実装されている。図13(a)は展開状態におけるGPSアンテナの偏波面を表している。図13(b)は折畳時の偏波面を表している。前述の様に、図13(a)の展開時に右旋円偏波を出すようにアンテナを設計すると、折畳時については、左旋円偏波となることが分かる。実際の携帯無線機の使用状態を考えると、GPSを使用する状態は、ブラウザモードのため、図13(a)の展開状態で偏波面を合わせることにより良好な特性が得られる。しかし、折畳状態においても、他のユーザから位置情報の問い合わせ等があるため、GPS機能を使用する場合があり、展開状態で偏波面を合わせてしまうと、折畳状態では偏波面が合わず、特性が大幅に劣化してしまっていた。
【0005】
なお、特許文献1には、水平給電導体と垂直給電導体をスイッチすることにより、1台の平面アンテナによって左旋円偏波と右旋円偏波を送受信できることが記載されている(段落0016,0017)。
【特許文献1】特開平11−266120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、折畳型携帯無線機では、GPSアンテナをLCD表示部側に実装した場合に、展開折畳で偏波面が反転してしまい、展開折畳で通信特性が大幅に変化してしまう問題があった。また、折畳状態については、携帯無線機がかばんの中やポケットの中などに入れて持ち運ばれるため、携帯無線機の姿勢が天頂方向に対して一定にはならず、偏波面を一致させることがさらに難しいという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、折畳型携帯無線機の展開、折畳の両状態において受信特性を改善することができるGPSアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、GPSアンテナは、アンテナエレメントと、一端がアンテナエレメントに接続された、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、該放射導体の各々の他端にそれぞれ接続され、当該放射導体およびアンテナエレメントに選択的に給電する2つの給電部と、を有し、両給電部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、切替信号によって、一方がオン、他方がオフに切り替えられる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、GPSアンテナは、アンテナエレメントと、一端がアンテナエレメントに接続された、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、アンテナエレメントおよび放射導体に給電する給電部と、各放射導体の他端に接続され、当該放射素子を選択的にGNDに接続する2つのGND接続部と、を有し、両GND接続部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、切替信号によって、一方がオン、他方がオフに切り替えられる。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、GPSアンテナは、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、給電端子とを含むアンテナエレメントと、給電端子に接続され、アンテナエレメントに給電する給電部と、各放射導体を選択的にGNDに接続する2つのGND接続部と、両GND接続部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、切替信号によって、一方がオン、他方がオフに切り替えられる。
【0011】
本発明は、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体を設け、受信する円偏波の回転方向に応じた放射導体に給電して、円偏波の回転方向を反転させることにより、折畳型携帯無線機の展開、折畳の両状態においてGPSの受信特性を改善するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体を設け、これら放射導体の一方に給電することにより、左右円偏波を出せるようにすることが可能となり、折畳型携帯無線機の展開、折畳のどちらの状態についてもGPSの受信特性を最適化できるアンテナを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は本発明の第1の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。本実施形態の偏波切替GPSアンテナは、ヘリカルアンテナ2、放射導体3、4、整合回路5、6、整合回路切替スイッチ7、給電部8から構成されている。放射導体3、4は、ここでは、基板上に形成された導体パターンで構成されている。また、紙面から上方向に右旋偏波を送受信する場合、放射導体3を、紙面から上方向に左旋円偏波を送受信する場合、放射導体4を使用するようになっている。
【0015】
本実施形態の動作について述べる。まず、紙面から上方向に右旋偏波を送受信する場合、整合回路切替スイッチ7は偏波切替信号10により整合回路5側に接続され、整合回路5と給電部8が接続される。そのため、本GPSアンテナは、放射導体3とヘリカルアンテナ2がアンテナとして動作し、右旋偏波を送受信することが可能となる。一方、左旋偏波を送受信する場合には、整合回路切替スイッチ7は偏波切替信号10により整合回路6側に接続され、給電部8と整合回路6が接続される。そのため、本GPSアンテナは、放射導体4とヘリカルアンテナ2がアンテナとして動作するため、紙面から上方向に左旋円偏波を送受信することが可能となる。なお、紙面から上方向に右旋円偏波を送受信している場合には、紙面から下方向には左旋円偏波、紙面から上方向に左旋円偏波を送受信している場合には、紙面下方向には右旋円偏波が送受信できるようになる。
【0016】
図2はPINダイオードで構成された整合回路切替スイッチ7の回路図である。整合回路5、6と給電部8のそれぞれの間にPINダイオードX1、X2を直列に挿入している。PINダイオードX1、X2をそれぞれオンすることにより、整合回路5もしくは6が給電部8と接続される。整合回路5側を選択する場合には、制御信号10がハイレベルとなる。ここで、抵抗R1は電流制御抵抗であり、PINダイオードX1に流す電流調整用である。また、L2、C2は、高周波帯で制御信号ラインが影響しないように制御信号ラインをハイインピーダンスに調整する回路である。さらに、C1、C3は直流抵抗がアンテナおよびGPS回路側に流れないようにするためのコンデンサであり、L1は、直流電流を流すためのコイルである。逆に、整合回路6側を選択する場合には、制御信号11がハイレベルとなり、PINダイオードX2がオンする。この場合にも抵抗R2、コンデンサ、コイルの用途については前述と同じであり、省略する。
【0017】
なお、ここではPINダイオードを用いた整合回路切替スイッチ7を示したが、GaAsスイッチ等による切替や機械的スイッチを用いることも可能である。また、GPSアンテナのアンテナエレメントとしてヘリカルアンテナを使用しているが、図3〜6のように板状の放射素子12や線状のアンテナ13、メアンダ状アンテナ14、誘電体を装荷したチップアンテナ15等を使用しても同様の効果を得ることができる。放射導体3,4についても、ここでは基板上のパターンにより平面に形成されているが、板金を用いて立体的に構成することも可能である。
【0018】
なお、制御信号10,11としては、折畳型携帯電話機の開閉を検出する信号を用い、展開と折畳時で偏波面を切り替えてもよく、あるいはGPS回路(不図示)が検出した受信レベルを用い、より受信レベルが高いほうを選択するように切り替えてもよい。
【0019】
〔第2の実施の形態〕
図7は本発明の第2の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。本実施の形態による偏波切替アンテナは、開放端給電タイプチップアンテナ16、放射導体3、4、整合回路5、給電部8、GND接続スイッチ17、18から構成されている。ここでは、アンテナエレメントとして、開放端側から給電するタイプのチップ素子を用いている。紙面から上側に右旋円偏波を送受信する場合には、偏波切替信号10がハイレベルとなり、GND接続スイッチ17がGNDと接続され、放射導体3とチップアンテナ16が動作する。一方、紙面から上側に左旋円偏波を送受信する場合には、偏波切替信号11がハイレベルとなり、GND接続スイッチ18がGNDと接続され、放射導体4とチップアンテナ16が動作する。ここでも、紙面の反対側には、上部方向とは逆の円偏波が送受信される。
【0020】
図8はPINダイオードで構成されたGND接続スイッチ17、18の回路図である。右旋偏波を送受信するためには、制御信号10がハイレベルとなり、PINダイオードX1がオンする。その結果、放射導体3がGNDと接続され、放射導体3とチップアンテナ16がアンテナとして動作する。ここで、抵抗R1は電流制御抵抗であり、PINダイオードに流す電流調整用である。また、L2、C2は、制御信号ラインを高周波的にオープンに調整する回路である。さらに、C1は直流電流がアンテナおよびGPS回路側に流れないようにするためのコンデンサである。一方、左旋円偏波アンテナとして動作させる場合には、制御信号11がハイレベルとなり、PINダイオードX2がオンし、放射導体4がGNDと接続される。周辺回路については、前述と同じ動作であるため、ここでは省略する。
【0021】
〔第3の実施の形態〕
図9は本発明の第3の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。本実施の形態による偏波切替アンテナは、GND接続端子21,22および給電端子20を有する逆Fアンテナ19、整合回路5、給電部8、GND接続スイッチ17、18から構成されている。ここでは、アンテナエレメントとして、逆Fアンテナ19を用いている。また、逆Fアンテナ19から出ている3本の腕のうちの両端の腕が放射導体の役目をしている。
【0022】
紙面から上側に右旋円偏波を送受信する場合には、偏波切替信号10がハイレベルとなり、GND接続スイッチ17がGNDと接続され、GND接続端子21と給電端子20間が逆Fアンテナとして動作する。一方、紙面から上側に左旋円偏波を送受信する場合には、偏波切替信号11がハイレベルとなり、GND接続スイッチ18がGNDと接続され、GND接続端子22と給電端子20間が逆Fアンテナとして動作する。ここでも、紙面の反対側には上部方向とは逆の円偏波が送受信される。
【0023】
第2、3の実施形態では、GND接続SW17,18を設けることにより偏波面を切り替えるため、整合回路を1つにすることができ、調整が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図2】図1の整合回路切替SWの回路図である。
【図3】アンテナエレメントとして板状アンテナを用いた偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図4】アンテナエレメントとして棒状アンテナを用いた偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図5】アンテナエレメントとしてメアンダ状アンテナを用いた偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図6】アンテナエレメントとしてチップアンテナを用いた偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図8】図7のGND接続SWの回路図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による偏波切替GPSアンテナのブロック図である。
【図10】従来例のGPSアンテナ構成図である。
【図11】実装位置と円偏波特性の関係を示す図である。
【図12】実装位置と表裏の円偏波特性図である。
【図13】従来例の折畳型携帯電話機の実装図である。
【符号の説明】
【0025】
1 GPSアンテナ
2 ヘリカルアンテナ
3,4 放射導体
5,6 整合回路
7 整合回路切替SW
8 給電部
10,11 偏波切替信号
12 板状アンテナ
13 棒状アンテナ
14 メアンダ状アンテナ
15 チップアンテナ
16 開放端給電タイプチップアンテナ
17,18 GND接続SW
19 逆Fアンテナ
20 給電端子
21,22 GND接続端子
23 GPS回路
24 制御回路
25 回路基板
26 表示部
27 キー入力部
X1、X2 PINダイオード
C1〜C6 キャパシタンス
L1〜L4 インダクタンス
R1、R2 電流制御抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナエレメントと、
一端が前記アンテナエレメントに接続された、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、
該放射導体の各々の他端にそれぞれ接続され、当該放射導体および前記アンテナエレメントに選択的に給電する2つの給電部と、
を有し、
前記両給電部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、切替信号によって、一方がオン、他方がオフに切り替えられる
GPSアンテナ。
【請求項2】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として、前記折畳型携帯無線機の開閉信号を用いた、請求項1に記載のGPSアンテナ。
【請求項3】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として受信レベルを用いた、請求項1に記載のGPSアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナエレメントとしてヘリカルアンテナを用いた、請求項1から3のいずれかに記載のGPSアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナエレメントとしてメアンダ状アンテナを用いた、請求項1から3のいずれかに記載のGPSアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナエレメントとして板状アンテナを用いた、請求項1から3のいずれかに記載のGPSアンテナ。
【請求項7】
前記アンテナエレメントとして線状アンテナを用いた、請求項1から3のいずれかに記載のGPSアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナエレメントとして誘電体装荷アンテナを用いた、請求項1から3のいずれかに記載のGPSアンテナ。
【請求項9】
アンテナエレメントと、
一端が前記アンテナエレメントに接続された、受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、
前記アンテナエレメントおよび前記放射導体に給電する給電部と、
前記各放射導体の他端に接続され、当該放射素子を選択的にGNDに接続する2つのGND接続部と、
を有し、
前記両GND接続部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、切替信号によって、一方がオン、他方がオフに切り替えられる
GPSアンテナ。
【請求項10】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として、前記携帯無線機の開閉信号を用いた、請求項9に記載のGPSアンテナ。
【請求項11】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として受信レベルを用いた、請求項9に記載のGPSアンテナ。
【請求項12】
受信する円偏波の回転方向に応じた2つの放射導体と、給電端子とを含むアンテナエレメントと、
前記給電端子に接続され、前記アンテナエレメントに給電する給電部と、
前記各放射導体を選択的にGNDに接続する2つのGND接続部と、
前記両GND接続部は、受信する円偏波の回転方向に応じて、一方がオン、他方がオフに切り替えられる
GPSアンテナ。
【請求項13】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として、前記折畳型携帯無線機の開閉信号を用いた、請求項12に記載のGPSアンテナ。
【請求項14】
折畳型携帯無線機において用いられ、前記切替信号として受信レベルを用いた、請求項12に記載のGPSアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−283626(P2008−283626A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128187(P2007−128187)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】