説明

円筒形リチウムイオン二次電池

【課題】電極群を構成し易く、小型で高容量の円筒形リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極と負極と、前記正極と前記負極の間に配するセパレータと、非水電解液とを備え、巻芯を用いて巻回してなる電極群を有する円筒形リチウムイオン二次電池において、前記電極群は最外周の曲率半径が、2.0mm以下であり、前記正極および前記負極は、集電体の両面に活物質を含む合剤を形成することにより構成されており、前記電極群の最内周部には前記負極が配置され、前記最内周部の前記負極の巻回の内側は合剤が形成されておらず、曲率半径が0.2mm〜0.6mmであり、前記正極は、巻回の内側に形成された合剤の活物質量が、巻回の外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることを特徴とする円筒形リチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池径が小さい巻回型電極群を備えた円筒形リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を用いた機器の応用範囲は拡大しており、特に、リチウムイオン電池は軽量、高容量、高出力であるため、パソコンや携帯電話、携帯型電子機器の駆動用電源として広く用いられている。これらの機器は必要に応じた駆動や、使用時のみに取り扱うことから、従来、直径が20mm程度、高さが50mm程度のものが広く用いられている。
【0003】
近年は、さらに携帯型電子機器の小型化や、眼鏡や補聴器など高機能化に伴い、小型で高容量、高出力な電源が求められている。特に、眼鏡や補聴器などの使用においては、人の生活において、長時間、身に着ける場合があり、特に軽量で小型の電源が要望されている。具体的には、直径が3〜5mm程度、高さが20〜40mm程度である。
【0004】
従来のリチウムイオン二次電池に関して、正極または負極の少なくともいずれか一方の端部は、集電体の片側のみに、合剤または、前記合剤および前記多孔膜層が塗布または接着形成されたものである位相差塗工部となっており、位相差塗工部のある端部は巻芯側に配置されていると共に、位相差塗工部の合剤が塗布された部分が捲回の内側に配置されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、電極の外周層における活物質量がこの電極の内周層における活物質量よりも多くなっている巻回電極体を具備する非水電解質二次電池において、第1の電極における上記内周層の厚さt12及び外周層の厚さt13並びに第2の電極における内周層の厚さt22及び外周層の厚さt23が、第1及び第2の電極並びに第1及び第2のセパレータの厚さの和Tと、
Δt1={(t13−t12)/t12}×100
Δt2={(t23−t22)/t22}×100
Δt=Δt1+Δt2
2≦Δt≦0.055T
の関係にあることを特徴とする非水電解質二次電池が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、集電体の巻回軸に平行な断面においてその幅方向の前記リード端子側の活物質量が、その反対側における活物質量よりも多く、かつ負極板の合剤層においては、集電体の前記巻回軸に平行な断面においてその幅方向の前記リード端子側の活物質量が、その反対側における活物質量よりも少なくされ、正極板及び負極板の各リード端子を互いに反対側に位置させることで、正極板および前記負極板の活物質量が多い部分が互いに対向した状態とされていることを特徴とする電池が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4140517号公報
【特許文献2】特許第3131976号公報
【特許文献3】特開2007−172878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
小型で、軽量のリチウムイオン二次電池、具体的には、直径が3〜5mm程度、高さが20〜40mm程度(以下、小細形リチウムイオン二次電池と記載)においては、従来の直径が20mm程度、高さが50mm程度のリチウムイオン二次電池に比べて電池直径が小さいため、巻回時の曲率半径が著しく小さくなり、極板の巻回が困難であった。
【0009】
また、電池直径が小さいため、充填できる極板長さが著しく短くなるため、容量に寄与しない構成材(対向面のない合剤や正負極のリードなど)を可能な限り低減する必要があった。
【0010】
さらに、曲率半径が小さいと、極板の両面、即ち内周側と外周側で容量が同じ場合、曲率半径が小さい電池においては、巻芯側の正極と負極の容量バランスを安定化すると、外周側の容量バランスが崩れ、外周側の容量バランスを安定化すると、巻芯側の容量バランスが崩れる。したがって、極板の両面の反応容量が同じ場合、対向する正極と負極の容量バランスを安定化させると、充填した合剤に対し、容量に寄与する合剤量が減少し、電池容量が低下するという課題があった。
【0011】
特許文献1記載の発明では、多孔膜保護を保護する目的に対しては有効であるが、小細形リチウムイオン二次電池に対しては、容量に寄与せず、群径に寄与する最内周の内側の合剤が増加する。
【0012】
特許文献2記載の発明においても、特許文献1同様に、小細形リチウムイオン二次電池に対しては、容量に寄与せず、群径に寄与する最内周の内側の合剤が増加してしまう。
【0013】
特許文献3記載の発明では、巻回軸に平行な断面のリード近くと反対側で、密度により活物質量を変化しているが、小細型リチウムイオン二次電池では、曲率半径が非常に小さいため、巻回軸に平行な断面で密度が異なると、巻回の際にリード接続側と反対側で、巻きやすさが異なり、巻きずれや巻き緩みの原因になる。また、極板の外側と内側で合剤厚みや密度が同等であるため、巻回方向へ湾曲し難いため、電極群の構成が不安定になる。
【0014】
そこで、本発明は、小型で軽量のリチウムイオン二次電池、具体的には小細形リチウムイオン二次電池において、極板を安定に巻回し、高容量を有する電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、集電体の表面に活物質を含む合剤を形成した正極と、集電体の表面に活物質を含む合剤を形成した負極と、前記正極と前記負極の間に配するセパレータと、を最内周部に負極が配置されるように巻回してなる電極群と、非水電解液と、を有する円筒形リチウムイオン二次電池において、電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、最内周部の負極の巻回内側は集電体が露出し、曲率半径が0.2mm以上、0.6mm以下であり、正極は、巻回内側に形成された合剤の活物質量が、巻回外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることを特徴とするというものである。
【0016】
なお本発明において、巻回内側は、正極と、負極と、正極と負極の間に配するセパレータと、を巻回してなる電極群の中心側であり、巻回外側は、電極群の最外周側を示す。
【0017】
本発明は、電極群の最内周部に負極が配置され、最内周部の負極の巻回の内側は集電体が露出しているため、容量に寄与せず、群径に寄与する構成材を低減することができる。
【0018】
また、正極の巻回の内側に配置された合剤の活物質量が、巻回の外側に配置された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることにより、内側に湾曲し易くなり、最外周の曲率半径が、2.0mm以下の電極群において、巻きずれや、巻き緩みを抑制し、安定に電極群を構成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、電極群の最外周の曲率半径が、2.0mm以下であり、充填可能な体積が著しく小さいが、電極群の最内周部の負極の巻回の内側は合剤が形成されていないことにより、容量に寄与せず、群径に寄与する構成材を低減できるため、高容量である。
【0020】
また、正極は、巻回の内側に形成された合剤の活物質量が、巻回の外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることにより、巻芯側から電極群の外周側まで、正負極の容量バランスを安定化させることができるため、高容量である。さらに、合剤の厚みの比は、巻回の内側と外側に形成された合剤の活物質量の比と実質的に同比であることから、電極が巻回の内側に湾曲し易いため、巻回し易く、安定に電極群を構成できる。
【0021】
本発明によれば、電極群を構成し易く、小型で高容量の円筒形リチウム二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒形電池の概略縦断面図
【図2】本発明の一実施例に係る正極板の巻回方向に平行な断面図
【図3】本発明の一実施例に係る正極板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は正極と負極と、正極と負極の間に配するセパレータと、非水電解液とを備え、巻芯を用いて巻回してなる電極群を有する円筒形リチウムイオン二次電池において、電極群は最外周の曲率半径が、2.0mm以下であり、正極および負極は、集電体の両面に活物質を含む合剤を形成することにより構成されており、電極群の最内周部には負極が配置され、最内周部の負極の巻回の内側は合剤が形成されておらず、曲率半径が0.2mm〜0.6mmであり、正極は、巻回の内側に形成された合剤の活物質量が、巻回の外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることを特徴とする円筒形リチウムイオン二次電池に関する。
【0024】
上記のように、電極群の最外周の曲率半径が、2.0mm以下において、電極群の最内周部に負極が配置され、最内周部の負極の巻回の内側に合剤が形成されていないことにより、容量に寄与せず、群径に寄与する構成材が低減されているため、高容量である。
【0025】
また、正極は、巻回の内側に形成された合剤の活物質量が、巻回の外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることにより、実質的に合剤の厚みが同比であることから、電極が巻回の内側に湾曲しやすく、巻回し易いため、電極群を安定に構成できる。
【0026】
特に、45%以上、80%以下では、電極が巻回の内側に湾曲しやすく、高容量が得られるため好ましい。
【0027】
本発明の電池は、公称容量が5〜100mAhの小細型電池であるのが好ましい。公称容量が5mAh以上、100mAh以下の小細型電池では、曲率半径が小さいので、本発明により高容量が得られ、安定に巻回できため好ましい。
【0028】
正極には、正極リードが接続されており、厚みが50μm以下、幅が0.5mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。厚みが50μm以下であることにより、電極群を構成の際に、リードの接続部の厚みにより、容量に寄与せず、群径に寄与する構成材が低減されているため、好ましい。厚みが100μmを超えると、リードの柔軟性が低下するため、小細形の電池では、電池構成の際、ケース内への収納などにおいて、取り扱いが困難になるため、好ましくない。また、幅が0.5mm以上、1.5mm以下であることにより、リードの強度が確保され、電極群を構成の際に、電極の湾曲に沿い易いため好ましい。幅が0.5mm未満になると、リードの強度を確保できない場合があるため好ましくなく、1.5mmを超えると、電池を構成の際に、リードのケース内への収納が困難になるため、好ましくない。
【0029】
負極には、負極リードが接続されており、厚みが70μm以下、幅が1.0mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。厚みが70μm以下であることにより、群構成の際に、リードの接続部の厚みによる群径増加が抑制されるため好ましい。厚みが100μmを超えると、リードの柔軟性が低下するため、小細形の電池では、電池構成の際、群の巻回に対し、電極の曲率に沿い難くなる場合があるため、好ましくない。また、幅が1.0mm以上、2.0mm以下であることにより、群の巻回に対し、電極の曲率に沿い易く、ケース内に溶接し易いため好ましい。幅が1.0mm未満になると、ケース内に溶接範囲が狭くなり、溶接し難くなる場合があるため好ましくなく、幅が2.0mmを超えると、群の巻回に対し、電極の曲率に沿い難くなる場合があるため好ましくない。
【0030】
負極リードおよび正極リードは、電極群において、電池ケースの開口部側に配置することにより、小細型の電池では、リードと他部品との溶接が簡便であるため好ましい。
【0031】
以下、本発明に係る電池の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、有底円筒形の電池ケース11、電池ケース11内に収容された電極群12、および電池ケース11を封止する封口板14、絶縁ガスケット13を備えている。
【0033】
電極群12は、負極15と、正極16と、負極15と正極16との間を隔離するセパレータ17とを備えている。この電極群12には非水電解質が接触している。
【0034】
負極15は、負極リード18が接続されており、負極リード18は電池ケース11と接続されている。これにより、負極15は電池ケース11と電気的に接続されている。
【0035】
正極16は、正極リード19が接続されており、正極リード19は封口板14と接続されている。これにより、正極16は封口板14と電気的に接続されている。
【0036】
電極群12の最内周には、負極15が配され、巻回の内側には負極合剤が形成されていない。また、電極群12の最外周には、負極15が配され、巻回の外側には負極合剤は形成されていない。
【0037】
電池ケース11の底面および側面の外側は外部に露出し、外部正極端子として用いられる。
【0038】
正極16は、正極集電体、および正極集電体の両面に形成された正極活物質層からなる。 正極16は、正極集電体の片面に形成された合剤層の厚みは30μm以上、90μm以下が好ましく、30μm以上、70μm以下がさらに好ましい。また、正極16の総厚
みは、80μm以上、180μm以下が好ましい。
【0039】
正極集電体には、金属箔が用いられ、好ましくは、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。電池の小型化および正極集電体の強度の観点から、正極集電体は、厚み10μm以上、50μm以下が好ましい。
【0040】
正極16に含まれる正極活物質は、リチウムイオン二次電池で使用可能な材料であればよく、特に限定されない。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、およびマンガン酸リチウム(LiMn)のようなリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
【0041】
電池の小型化および高エネルギー密度化の観点から、正極活物質には、一般式:LiNi1−y(式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、SbおよびBからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、0<x≦1.2、0.5<y≦1.0)で表されるリチウム含有複合酸化物を用いるのが好ましい。
【0042】
また、電池の小型化および高エネルギー密度化の観点から、正極活物質には、一般式:LiNiCo1−y−z(式中、Mは、Mg、Ba、Al、Ti、Sr、Ca、V、Fe、Cu、Bi、Y、Zr、Mo、Tc、Ru、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、0.9≦x≦1.2、0.3≦y≦0.9、0.05≦z≦0.5、0.01≦1−y−z≦0.3)で表されるリチウム含有複合酸化物を用いるのが好ましい。
【0043】
正極結着剤としては、例えば、フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸、またはポリフッ化ビニリデンが用いられる。
【0044】
正極結着剤を用いる場合、正極活物質中の正極結着剤の含有量は、正極活物質100重量部あたり1〜5重量部であるのが好ましい。
【0045】
正極導電剤としては、例えば、グラファイト類、カーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維、または導電性を有する有機材料が用いられる。
【0046】
正極導電剤を用いる場合、正極活物質中の正極導電剤の含有量は、正極活物質100重量部あたり0.5重量部以上、5重量部以下であるのが好ましい。
【0047】
正極リード19の材質としては、例えば、アルミニウムを用いるのが好ましく、チタンやニッケル等の金属を用いることもできる。
【0048】
負極15は、負極集電体および負極集電体の両面に形成された負極活物質層を有する。負極15の総厚みは、80μm以上、250μm以下が好ましい。
【0049】
負極集電体には、金属箔が用いられ、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、銅を含む合金、およびチタンの箔が挙げられる。金属箔の表面に、カーボン、ニッケル、チタンなどの層を形成してもよい。使用される負極活物質の充放電時の電位範囲において化学変化を起こさない材質が用いられる。
【0050】
負極15に含まれる負極活物質は、リチウムイオン二次電池で使用可能な材料であればよく、特に限定されない。例えば、従来からリチウムイオン二次電池に用いられている天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛材料、非晶質炭素材料、また、Liと合金化することが知ら
れているAl,Sn,Siなどの化合物や酸化物などが挙げられる。
【0051】
負極結着剤は必要に応じて、例えば、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0052】
また、必要に応じて、増粘剤として、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0053】
負極リード18の材質としては、銅やニッケル等の金属を用いることができる。
【0054】
正極16と負極15を足した厚みは、170μm以上、410μm以下が好ましい。170μm未満であると、巻回数が増加するため、極板における集電体の割合が増加するため、容量が減少するため好ましくなく、410μを超えると、巻回数が減少するため、反応面積が減少し、大電流特性が低下するため好ましくない。
【0055】
非水電解液は、溶質および非水溶媒を含む。
【0056】
溶質は、非水溶媒に溶解する支持塩である。支持塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロ硼酸リチウム(LiBF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)(CSO))、またはリチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(LiC(CFSO)が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、γ‐ブチロラクトン(γ‐BL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、プロピレンカーボネート誘導体、またはテトラヒドロフラン誘導体が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、例えば、液状電解質、ゲル状電解質、固体状電解質(高分子固体電解質)を非水電解液として用いてもよい。
【0059】
セパレータ17としては、例えば微多孔性の薄膜、織布、または不織布が用いられる。これらは、イオン透過度が大きく、適度な機械的強度および絶縁性を有することが好ましい。セパレータ17の材質としては、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンのようなポリオレフィンが挙げられる。
【0060】
特に、ポリオレフィンからなる微多孔性の薄膜は、耐久性に優れ、一定の温度に上昇すると孔が閉塞する、いわゆるシャットダウン機能を有するため、リチウムイオン電池などのリチウムイオン二次電池用のセパレータとして好適に用いられる。
【0061】
セパレータの厚みは、一般的に10μm以上、300μm以下であるが、好ましくは40μm以下、より好ましくは5μm以上、30μm以下である。セパレータは、1種の材料からなる単層膜でもよく、2種以上の材料からなる複合膜または多層膜でもよい。
【0062】
絶縁ガスケット13の材質には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、パーフルオロアルコキシエチレンの共重合体が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらを、無機繊維などのフィラーと組み合わせて用いてもよい。絶縁ガスケットは、電池の気密性を高めるために、シール材でコーティングしてもよい。
【0063】
上記実施形態の電極材料および電解液の組成は特に限定されず、公知の材料および組成を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0065】
(実施例1)
以下の手順に従って、図1に示すリチウムイオン二次電池10を作製した。
【0066】
(1)正極の作製
正極活物質としてコバルト酸リチウム100重量部、導電剤としてアセチレンブラック4重量部、および結着剤としてポリフッ化ビニリデン4重量部に、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを正極集電体の両面に塗布し、乾燥後圧延して、正極を得た。厚みは、正極集電体が15μm、合剤層の一方(巻回の外側)の面が90μm、他方(巻回の内側)の面が36μmであった。なお、正極集電体の両面に形成された合剤層は、同密度であり、充填量を変えることにより、厚み差を生じる。したがって、正極集電体の形成された両面の合剤の厚みの比と、活物質の充填量の比は同じである。
【0067】
正極は、作製時に、正極の一方の端部(巻回方向に沿った領域)における正極集電体の両面に、正極活物質層を有しない領域(正極集電体が露出する部分)を設け、リードを接続し、図2および図3に示すような構成とした。
【0068】
(2)負極の作製
負極活物質として人造黒鉛粉末100重量部、結着剤として日本ゼオン製スチレン−メタクリル酸−ブタジエン共重合体を1重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部を混合し、これらを脱イオン水に分散させてスラリーを作製した。負極集電体上の両面に塗布し、乾燥後、圧延して作製した。圧延後の厚みは、負極集電体が、10μm、合剤層がそれぞれ片面で87μmであった。なお、負極作製時に、負極の一方の端部(電極群の最内周における巻回の内側)の片面は、負極合剤層を有しない領域(負極集電体が露出する部分)を設けた。また、他方の端部は、負極集電体の両面に、負極活物質層を有しない領域(負極集電体が露出する部分)を設け、リードを接続した。さらに、電極群の最外周における巻回外側には、負極合剤層を有しない領域(負極集電体が露出する部分)を設けた。
【0069】
(3)電極群の作製
巻芯を用い、巻芯のスリット部にセパレータを挟み込み、折り返して、2枚の構成とし
、正極、セパレータ、負極、セパレータが順次重なり、正極合剤形成部と負極合剤形成部が対向するようにして、巻芯を中心にして巻回し、電極群を構成した。巻き終わりは、テープを貼り付け、群を固定した。
【0070】
(4)電極群の外径測定
構成した電極群の最大径を測定した。
【0071】
(5)電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒に、LiPFを溶解させて、非水電解液を得た。ECおよびEMCの重量比は、1:1とした。非水電解液中のLiPFの濃度は1.0mol/Lとした。
【0072】
(6)円筒形リチウムイオン電池の作製
構成した電極群を電池缶に挿入し、負極リードとケースを接続した。続いて、正極リードと封口板を接続した。電池ケース内に、電解液を注液し、封口して電池とした。このようにして、公称容量32mAhの円筒形リチウムイオン二次電池(直径3.5mm、高さ35mm)を得た。
【0073】
(実施例2)
正極合剤層の一方(巻回の外側)の面の厚みを66μm、他方(巻回の内側)の面の厚みを30μmとし、負極合剤層の厚みをそれぞれ片面65μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。
【0074】
(実施例3)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は90μm、他方(巻回の内側)の面は41μmである極板を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0075】
(実施例4)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は90μm、他方(巻回の内側)の面は50μmである極板を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0076】
(実施例5)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は80μm、他方(巻回の内側)の面は60μmである極板を用いた。負極は、合剤層の厚みが、それぞれ片面91μmであった。その他は実施例1と同様にして作製した。
【0077】
(実施例6)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は75μm、他方(巻回の内側)の面は60μmである極板を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0078】
(実施例7)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は66μm、他方(巻回の内側)の面は60μmである極板を用いた以外は実施例1と同様にして作製した。
【0079】
(比較例1)
正極合剤層の厚みをそれぞれ片面60μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。
【0080】
(比較例2)
正極は、合剤層厚みが、一方(巻回の外側)の面は90μm、他方(巻回の内側)の面
は27μmである極板を用いた。負極は、合剤層の厚みが、それぞれ片面101μmであった。その他は実施例1と同様にして作製した。
【0081】
(A)電極群の評価
以上のようにして構成した実施例1〜実施例6および比較例1の電極群について、それぞれ50個ずつ電極群の最大外径を測定し、電池ケースの内径未満の電極群を良品とした。
【0082】
(B)電池特性の評価
実施例および比較例の電池を3個ずつ作製し、これらの電池を、下記(1)〜(4)の順に充放電した。
(1)0.05Cの定電流で4時間充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.05Cの定電流で放電した。
(2)電池の閉路電圧が4.1Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
(3)電池の閉路電圧が4.1Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
(4)電池の閉路電圧が4.2Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
【0083】
なお、Cは時間率を表す。設計容量cに相当する電気量を時間tで流す場合、電流値はc/tと表される。
【0084】
上記(4)の放電において、放電電圧をモニタリングし、放電容量を確認した。
【0085】
以上の評価の結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の電極群良品数に示されるように、本発明である実施例1〜実施例6および比較例2の電池では、いずれの電極群も良品であった。一方、比較例1の電池では、5個の不良が発生した。不良内容は巻き緩みと巻きずれであった。
【0088】
実施例1〜実施例6の電池では、正極は、巻回の内側に形成された合剤が、巻回の外側に形成された合剤の厚みに対し40%以上、91%以下であるため、また、比較例2でも
、正極は、巻回の内側に形成された合剤が、巻回の外側に形成された合剤の厚みに対し30%であるため、正極が内側に湾曲し易くなり、巻き緩みや巻きずれが起こらなかったと考えられる。一方、比較例1の電池では、正極は、巻回の内側と外側に形成された合剤が同じ厚みであるため、巻回時に極板が内側に湾曲し難くなり、巻き緩みや巻きずれが発生したと考えられる。
【0089】
表1の電池容量に示されるように、比較例1および比較例2の電池に対し、実施例1〜実施例6の電池は高容量であることが分かる。
【0090】
実施例1〜実施例6の電池では、正極は、巻回の内側に形成された合剤が、巻回の外側に形成された合剤の厚みに対し40%以上、91%以下であるため、過剰な合剤を充填する必要がないため、高容量とすることが可能であった。一方、比較例1の電池では、正極合剤の巻回外側に対する巻回内側の厚み比が100%のため、また、比較例2の電池では、正極合剤の巻回外側に対する巻回内側の厚み比が30%のため、正負極の容量バランスを安定化させるため、充填した合剤に対し、容量に寄与する合剤量が減少し、容量が低下した。
【0091】
なお、本発明は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明にかかる円筒形リチウムイオン二次電池は、電極群を構成し易く、小型で高容量であるので、小型の携帯型電子機器や、眼鏡や補聴器の電源として、有用である。
【符号の説明】
【0093】
10 リチウムイオン二次電池
11 電池ケース
12 電極群
13 絶縁ガスケット
14 封口板
15 負極
16 正極
17 セパレータ
18 負極リード
19 正極リード
31 上部リング
61a 正極合剤層(巻回外側)
61b 正極合剤層(巻回内側)
62 正極集電体
63 正極リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面に活物質を含む合剤を形成した正極と、集電体の表面に活物質を含む合剤を形成した負極と、前記正極と前記負極の間に配するセパレータと、を最内周部に負極が配置されるように巻回してなる電極群と、
非水電解液と、を有する円筒形リチウムイオン二次電池において、
前記電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、
前記最内周部の負極の巻回内側は集電体が露出し、曲率半径が0.2mm以上、0.6mm以下であり、
前記正極は、巻回内側に形成された合剤の活物質量が、巻回外側に形成された合剤の活物質量に対し40%以上、91%以下であることを特徴とする円筒形リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記正極は、巻回の内側に形成された合剤の活物質量が、巻回外側に形成された合剤の活物質量に対し45%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒形リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
公称容量が5mAh以上、100mAh以下である請求項1または2記載の円筒形リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記正極には、正極リードが接続され、前記正極リードは、厚みが50μm以下、幅が0.5mm以上、1.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒形リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記負極には、負極リードが接続され、前記負極リードは、厚みが70μm以下、幅が1.0mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒形リチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記負極リードおよび前記正極リードが電池ケースの開口部側に配置したことを特徴とする請求項4または5記載の円筒形リチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51125(P2013−51125A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188412(P2011−188412)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】