説明

再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法

【課題】例えば、強く結合する化合物の脱着は、比較的高いレーザー出力のフルエンスでのみ可能であるという公知技術水準の提示された欠点の少なくとも1つを凌駕する、公知技術水準と比較して改善された方法を提供する。
【解決手段】再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法において非画像領域内での分子の除去(110b、220a、230c)が本質的に印刷用インキの塗工(130b、230b)とは異なる少なくとも1つの一次処理によって行なう。
【効果】被覆のための両親媒性分子としては、第1の2つの実施例において、アミン、カルボン酸またはスルホン酸(またはこれらのそれぞれのエステル)の化学的物質種が適しており、この化学的物質種の吸着特性は、僅かであり、この化学的物質種の表面に対する結合状態は、本発明による固定によって改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法であって、印刷版の印刷面として作用する表面の化学的機能化を分子での被覆(100、200)によって行なうことにより、印刷版の印刷面として作用する表面がナノ的に見た範囲内で表面変性され、印刷版がレーザービームでの印刷画像形成の一次処理(110、210)ならびに少なくとも1つの平版液体の塗工の一次処理(130、130a、130b、230、230a、230b)に掛けられ、画像領域内での分子の固定(110a、210a)が印刷画像形成の一次処理(110、210)によって行なわれる再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法という請求項1の上位概念および印刷材料と接触する表面を処理するための方法という請求項10の上位概念の特徴を有するそれぞれの方法に関する。更に、本発明は、請求項4記載の方法を実施するための装置という請求項7の上位概念の特徴を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記概念に記載の方法は、なかんずく印刷表面、例えば印刷板の形成または印刷画像形成/再印刷画像形成および印刷材料と接触する表面、例えば版胴ブランケットの形成に使用される。このように形成された表面は、殊に印刷材料全紙を加工する機械、例えば用紙または厚紙用紙を加工する平版オフセット印刷機の印刷機構または全紙搬送小路中で使用される。
【0003】
交換可能な表面、例えば印刷版または版胴ブランケットを数回使用し、印刷製品のための生産費を最少化することが絶えず望まれている。従って、既に再印刷画像形成可能な印刷版および再被覆可能な版胴ブランケットが印刷機中で使用されている。再印刷画像形成可能な印刷版は、一連の種々の印刷用ブランケットのために使用されることができ、再被覆可能な版胴ブランケットは、絶えず印刷材料と接触することによって疲労現象が発生した場合に補修されることができるかまたは修復されることができる。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10227054号明細書A1には、例えば天然の酸化チタンからなる印刷面を有する再使用可能な印刷版または再印刷画像形成可能な印刷版が開示されており、この場合には、この印刷面は、強力に表面に結合する両親媒性化合物で被覆されている。印刷版は、赤外線レーザーを使用しながら点状に印刷画像形成されることができる。このために、非画像領域での被覆は、レーザー照射を使用しながら除去されるかまたは脱着され、この場合には、親水性の表面領域が得られる。画像領域中での疎水作用する被覆の処理、殊にレーザー処理は、設けられていない。しかし、強く結合する化合物の脱着は、比較的高いレーザー出力、例えば(チタン表面、ホスホン酸、1100nmの印刷画像形成波長)約3ワットの出力および約6〜約20J/cm2、有利に約12J/cm2のフルエンスでのみ可能である。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10241671号明細書A1には、例えば微細構造化された担体の表面上に撥色性被覆を有する、印刷材料と接触する要素、例えば対向印刷版胴の表面が開示されており、この場合この被覆は、両親媒性化合物を有する。例としては、強力に結合する化合物が挙げられる。
【0006】
欧州特許第1211064号明細書B1には、例えば酸化チタンからなる印刷面を有する再印刷画像形成可能な印刷版が開示されており、この再印刷画像形成可能な印刷版は、疎水性の表面を得るために疎水性の有機化合物、例えば脂肪酸デキストリンの単層を備え、および活性的に乾燥機を使用しながら蒸発によって乾燥される。被覆された印刷面は、赤外線で印刷画像形成され、それによって画像範囲内で単層を固着する。引続き、非画像領域内で疎水性の層または疎水性の化合物は、活性的に、後に使用される湿潤剤とは区別される水または水性洗剤の噴霧、即ち活性的な洗浄工程によって洗浄除去されるかまたは色の塗工、即ちこの場合に塗工される色の円滑性(接着性)によって除去され、それによって酸化チタンの親水性の表面は、湿潤剤の吸収のために露出される。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005021346号明細書A1には、印刷板上に使用されることができる接続可能な層が開示されている。このために、例えばアルミニウム薄板は、酸化チタンで被覆され、その上にサンタチタンゾルが施こされ、熱処理され、その結果、親水性の表面が生じる。こうして得られた層は、ポリアクリル酸で湿潤され、乾燥され、引続き紫外線と赤外線との組合せで処理され、その結果、疎水性の表面が生じる。引続き、融蝕閾を下廻る強度の赤外線を使用しながら印刷画像形成され、その結果、親水性の画像領域が生じる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10227054号明細書A1
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10241671号明細書A1
【特許文献3】欧州特許第1211064号明細書B1
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005021346号明細書A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、公知技術水準の提示された欠点の少なくとも1つを凌駕する、公知技術水準と比較して改善された方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の課題または選択的な課題は、公知技術水準と比較して改善された、再印刷画像形成可能な印刷版の簡単な処理、殊に製造印刷画像形成または再印刷画像形成を可能にする方法を提供する。本発明の他の課題または選択的な課題は、公知技術水準と比較して改善された、再印刷画像形成可能な印刷版の簡単な処理、殊に製造印刷画像形成または再印刷画像形成を可能にする方法を提供する。1つの簡単な処理は、僅かな処理工程、処理工程の統合および/または他の公知の処理工程の実施によって特徴付けることができる。
【0010】
本発明の他の課題または選択的な課題は、印刷板および印刷材料と接触する表面のための処理方法を実施する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1の、非画像領域内での分子の除去(110b、220a、230c)が本質的に印刷用インキの塗工(130b、230b)とは異なる少なくとも1つの一次処理によって行なうという特徴を有する方法、請求項10の、このような表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆(100、200)によって行なわれることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性され、該表面は、レーザービームでの分子の固定(110a、210a)に掛けられるという特徴を有する方法ならびに請求項7の、装置(302)が出力に関連してスイッチの切替可能なレーザー(330)を有するという特徴を有する装置によって解決される。
【0012】
本発明の好ましい他の形成は、印刷版が付加的に、殊にゴム溶液の塗工によって現像の一次処理(120、220)に掛けられ、印刷版が付加的に清浄化、洗浄、すすぎ洗いおよび乾燥の少なくとも1つの二次処理に掛けられ、分子の固定(110a)が第1の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれ、分子の除去(110b)が第1の出力とは異なる第2の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれ、平版液体の塗工(130、130a、230、230a)が洗剤とは異なる湿潤剤での印刷版の湿潤を含み、分子での印刷版の表面の被覆(100、200)が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれる、という請求項2から6までの方法の記載、ならびにスイッチの切替可能なレーザー(330)が音響光学的変調器(332)を有する、という請求項8の装置の記載、ならびに印刷材料を加工する機械、殊に平版オフセット印刷のための印刷機または全紙を加工する回転印刷機であって、請求項7または8記載の装置である、という印刷材料を加工する請求項9の機械の記載、ならびに分子での表面の被覆(100、200)が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれる、という請求項10の方法の記載ならびに次の明細書および属する図の記載から判明する。
【0013】
一定の両親媒性分子は、一定のレーザー出力またはレーザー出力の一定の範囲の場合に表面から除去されるかまたは脱着されるのではなく、表面上に固定されることが見い出された。しかし、一定のレーザー出力よりも高いレーザー出力の場合には、両親媒性分子は、表面から除去される。従って、"固定"の概念は、本出願においては次のように理解すべきである:固定された被覆(即ち、表面上でレーザー照射によって固定された分子)は、特に光化学的または光熱的に表面に対して化学的特性(例えば、親水性/疎水性の特性)および/または結合状態の変化、殊に改善が行なわれるように、固定されていない被覆と比較して固定によって変化している。固定された分子は、殊に除去の処理工程、平版液体の塗工および印刷の処理工程によって本質的に表面から除去されない。殊に、被覆は、固定前の湿潤特性とは無関係に固定によって特に疎水化され、即ち被覆は、疎水性の表面特性を示す。更に、固定は、殊に固定された分子が印刷処理の要件および時間に特に十分に安定した、有利に疎水性の被覆を形成することを意味する。
【0014】
"除去"の概念は、本出願においては次のように理解すべきである:除去された分子は、表面から実際に脱着されるかまたは少なくとも例えば、表面の表面特性(疎水性/親水性)に影響を及ぼす、該分子の作用が減少されるか、上昇されるか、または反対に上昇されるか、減少されるように変化、例えば破壊される。
【0015】
"ナノ的に見た範囲(nanoskopischer Bereich)"として、本明細書においては、この範囲は、100nm未満、殊に10nm未満であると理解すべきである。
【0016】
再印刷画像形成可能な印刷版を処理するための本発明による方法、但し、この場合印刷表面として作用する、印刷版の表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆によって生じることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性され、該印刷版は、レーザー照射での印刷画像形成の一次処理ならびに少なくとも1つの平版液体の塗工の一次処理に掛けられ、その際該分子の固定は、印刷画像形成の一次処理によって行なわれるものとし、は、分子の除去が非画像領域内で本質的に印刷用インキの塗工とは異なる少なくとも1つの一次処理によって行なわれることによって特徴付けられる。
【0017】
本発明によれば、分子の除去のためには、一次処理(印刷画像形成、塗工または現像)の1つが使用され、それによって本方法は、簡単に実施することができる。これに対して、公知技術水準に記載されているような、洗浄工程または清浄化工程に基づく別の工程は、使用されていない。
【0018】
固定によってもたらされる本発明の利点は、最初に弱く結合しているにすぎない分子を使用することができるかまたは該分子で被覆することができることである。固定によって、前記分子の化学的特性または表面への前記分子の結合は、要件および圧力工程の時間に関連して改善される。
【0019】
更に、本発明の利点は、放射線をベースとした固定および除去のための出力が強く結合する分子の放射線をベースとした除去のための出力と比較して弱く結合する分子を使用する際に減少されうることから明らかである。
【0020】
他の公知の処理工程の使用に基づく簡単な実施可能性に関連して本発明による方法の有利な、したがって好ましい他の形成は、印刷版が付加的に、殊にゴム化溶液の塗工による現像の一次処理に掛けられることによって特徴付けられうる。従って、現像の一次処理は、好ましい方法で同様に除去のために使用されてよい。
【0021】
本発明による方法の他の形成は、印刷版が付加的に清浄化、洗浄、すすぎ洗いおよび乾燥の二次処理の少なくとも1つに掛けられることによって特徴付けられうる。
【0022】
更に、簡単な除去に関連して本発明による方法の有利な、したがって好ましい他の形成は、分子の固定が第1の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれ、分子の除去が第1の出力とは異なる第2の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれることによって特徴付けられうる。除去または脱着は、干渉性または非干渉性の電磁線での大面積の照射によって行なわれてもよく、この場合には、固定に使用される波長とは異なる波長が使用され、固定された分子は、全く相互作用を示さないかまたは固定されていない分子より明らかに僅かな相互作用を示す。
【0023】
更に、他の公知の処理工程の使用に基づく簡単な実施可能性に関連して本発明による方法の有利な、したがって好ましい他の形成は、平版液体の塗工が洗剤とは異なる湿潤剤での印刷版の湿潤を含むことによって特徴付けられうる。従って、塗工、殊に湿潤剤の塗工の一次処理は、好ましい方法で同様に除去のために使用されてよい。
【0024】
更に、使用された化合物に関連して本発明による方法の有利な、したがって好ましい他の形成は、分子での印刷版の表面の被覆が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれることによって特徴付けられる。
【0025】
更に、印刷材料と接触する表面を処理するための本発明による方法によれば、但し、この場合このような表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆によって行なわれることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性されるものとし、該表面は、レーザービームでの分子の固定に掛けられる。
【0026】
本明細書中で、分子の本発明による固定は、最初に弱く結合する分子だけが使用されうるという利点も生じる。
【0027】
更に、使用された化合物に関連して本発明による方法の有利な、したがって好ましい他の形成は、分子での印刷版の表面の被覆が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれることによって特徴付けられる。
【0028】
本発明に関連する上記された方法を実施するための本発明による装置は、該装置が出力に関連してスイッチの切替可能なレーザーを有することによって特徴付けられる。
【0029】
スイッチの切替可能なレーザーを使用する場合には、簡単な方法で、分子を画像範囲内に低い出力で固定し、分子を非画像領域内で高い出力で除去することが可能である。この場合、印刷画像形成時間は、本質的に延長されない。
【0030】
更に、スイッチの簡単な切替可能性に関連して本発明による装置の有利な、したがって好ましい他の形成は、スイッチの切替可能なレーザーが音響光学的変調器を有することによって特徴付けられていてよい。
【0031】
本発明の範囲内で、印刷材料を加工する機械、殊に平版オフセット印刷のための印刷機または全紙を加工する回転印刷機を考慮することができ、該印刷機は、本発明に関連して上記されたような少なくとも1つの装置によって特徴付けられる。
【0032】
特に、印刷材料を加工する機械は、平版オフセット印刷、殊に湿式オフセット印刷のための全紙を加工する回転印刷機である。印刷材料は、厚紙、シートまたは特に紙であることができる。印刷機は、表面印刷で運転されることができるかまたは特に表面印刷および裏刷で運転されることができる。印刷機は、印刷材料に一色の印刷画像または特に多色の印刷画像を備えることができる。印刷機は、印刷材料搬送装置中に紙送り装置、供給テーブル、多数の印刷機構、転換装置、他の印刷機構、塗工機構、乾燥機、パウダースプレー装置および/または排紙装置を有することができる。印刷機は、操作盤および制御ユニットを含むことができる。
【0033】
また、記載された発明および記載された、本発明の好ましい他の形成は、互いの任意の組合せで本発明の好ましい他の形成を表わす。
【0034】
次に、本発明ならびに他の構造的および機能的に好ましい、本発明の他の形成は、属する図に関連して少なくとも1つの好ましい実施例につき詳細に記載される。
【0035】
処理、殊に印刷画像形成または再印刷画像形成するための本発明による方法の次の種々の実施例を実施する場合には、一次処理および実施例中で必要な場合または望ましい場合には、二次処理が行なわれる。この場合、二次処理は、単に方法を支持する作用を有するかまたは場合により呼称されずに本方法にとって必要不可欠である限り、一次処理中に方法を改善する作用を有する。
【0036】
被覆のための両親媒性分子としては、第1の2つの実施例において、アミン、カルボン酸またはスルホン酸(またはこれらのそれぞれのエステル)の化学的物質種が適しており、この化学的物質種の吸着特性は、経験によれば、僅かであり、およびこの化学的物質種の表面に対する結合状態は、本発明による固定によって改善される。
【0037】
更に、被覆のための両親媒性分子としては、第1の2つの実施例において、所謂ジェミニス(Geminis)またはスルフィノール(Surfynole)が適している。前記物質の記載は、次に見出せる:
F.M. Menger, J.S. Keiper (1981), "Gemini Tenside" Angewandte Chemie 112: 1980-1996.
R. Zana, M. Benrrou and R. Rueff (1991). "Alkanediyl-a,w-bis(dimethylalkylammonium bromide) surfactants. I. Effect of the spacer chain length on the critical micelle concentration and micelle ionization degree." Langmuir 7(6): 1072-1075.
F. Devinsky, L. Masarova and I. Lacko (1985). "Surface activity and micelle formation of some new bisquaternary ammonium salts."Journal of Colloid and Interface Science 105(1): 235-239.
F. M. Menger and C. A. Littau (1991). "Gemini-surfactants: synthesis and properties. " Journal of the American Chemical Society 113(4): 1451-1452。
【実施例】
【0038】
例:
カルボン酸(I)
【化1】

またはカルボン酸(II)の塩
【化2】

スルホン酸(III)
【化3】

またはスルホン酸(IV)の塩
【化4】

【0039】
陽イオン性ジェミニス(Geminis)(V)
【化5】

【0040】
上記式中、Rは、脂肪族、芳香族または部分脂肪族基であり、
+は、陽イオン性の対イオン、例えばNa+、K+、NH4+、N(CH34+であり、
-は、陰イオン性の対イオン、例えばBr-、Cl-、I-、1/2SO42-であり、
nは、0以上である。
【0041】
更に、第1の2つの実施例において、次の最初に弱く吸着する固定可能なポリマーが被覆のために適している:重縮合物、ポリヒドロキシカルボニル、炭水化物/糖類、ポリグルコサン、線状ポリグルコサン、澱粉または好ましくはデキストリン。殊に、アラビアゴムの溶液またはゴム化溶液が適している。しかし、好ましくは、ポリマー中での光化学的成分の使用または常用の顕微鏡的ポリマー被覆に必要とされるようなポリマー系(ラジカル開始剤、架橋剤、共重合体)を省略することができる。
【0042】
多くの場合に記載された分子は、被覆後に最初に親水性の性質を示すかまたは弱い疎水性の性質だけを示し、固定後に初めて少なくとも弱い疎水性の性質を示す。
【0043】
図1は、本発明による方法の第1の実施例のスタートプランを示す。
【0044】
処理工程100(被覆;一次処理)において、再印刷画像形成可能な印刷版の印刷面として作用する表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆によって生じることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性される。この場合この被覆は、有利に水溶液またはエタノール性溶液から生じる。
【0045】
処理工程110(印刷画像形成;一次処理)において、被覆された表面は、レーザー照射で印刷画像形成される。処理工程110は、有利に同時に進行する、画像領域(疎水性、色を導く領域)内で分子を固定する処理工程110aと非画像領域(親水性、湿潤剤を導く領域)内で分子を除去または脱着する処理工程110bとの区別される。画像領域内での固定110aは、有利に第1の(零とは異なる)出力L1のレーザービームで印刷画像形成することによって行なわれる。非画像領域内での除去110bは、有利に第1の出力とは異なる、第2の(同様に零とは異なる)出力L2のレーザービームで印刷画像形成することによって行なわれる。好ましくは、画像領域内での第1の出力L1は、非画像領域内での第2の出力L2より僅かである(L1<L2)。更に有利に、使用されるレーザー/レーザービームの出力は、印刷版表面の処理または塗工の際に場所的に解像することにより変動される。
【0046】
次に1つの好ましい実施例を示す:チタン薄板印刷版は、ステアリンヒドロキサム酸で被覆され、1100nmの波長を有する赤外ファイバーレーザーで印刷画像形成される。この場合、音響光学的変調器により、第1の出力L1は、約1Wが選択されるかまたはスイッチが切替られ、第2の出力L2は、約5Wが選択されるかまたはスイッチが切替られる。
【0047】
次にもう1つの好ましい実施例を示す:アルミニウム薄板印刷版またはチタン薄板印刷版は、必要な限り、最初に清浄化される(二次処理)。次に、表面は、塗工ユニットを使用しながらデキストリンを含有するゴム化溶液(例えば、AgumOまたはAgumZ, Eggen-Chemie,水道水で約1:1〜約1:10で希釈された)の薄手の層を塗工し、引続きナノ的に見て表面被覆されるまで表面を水道水ですすぎ洗いする(二次処理)ことによって除去することにより、ポリマーで被覆される。この被覆後、この印刷版は、1064nmの波長および約1.0W〜約3.5Wの出力の赤外レーザービームで印刷画像形成されるかまたは被覆は、画像に応じて固定される。これに対して、非画像領域内で、ポリマー被覆は、レーザービームを使用しながら除去される。
【0048】
場合による処理工程120(現像;一次処理)において、表面は、現像され、即ち有利に化学的に処理され、この場合には、例えば印刷版の親水性領域と疎水性領域とのコントラストが強化される。現像は、有利に所謂ゴム化溶液の塗工、即ち所謂ゴム化によって行なわれる。しかし、好ましいのは、現像なしの方法である。
【0049】
処理工程130(塗工;一次処理)において、少なくとも1つの平版液体、例えば印刷版のための洗剤とは異なる湿潤剤および/または印刷用インキ/ワニスは、印刷版の表面上に塗工される。好ましくは、最初に湿潤剤130aおよび引続き付加的に印刷用インキ130bが表面上に塗工され、即ち印刷版は、湿潤され、およびインキ着けされる。
【0050】
処理工程140(印刷)において、インキ着けされた印刷版は、有利に繰返し印刷材料上に印刷され、それによって少なくとも1つの印刷製品が製造される。
【0051】
印刷後、再度の被覆100および印刷画像形成110のための印刷版が使用され、即ち本方法は、再印刷画像形成の循環処理として数回実施されてよい。この場合、印刷用インキの印刷された印刷版の表面からの清浄化は、被覆200の前または後に、例えばEurostarまたはイソプロピルアルコールを使用しながら行なうことができる。
【0052】
更に、再度の被覆前に場合によっては、印刷版表面の活性化は、例えばUV線または大気圧プラズマによって行なうことができる。
【0053】
図2は、本発明による方法の第2の実施例のスタートプランを示す。
【0054】
処理工程200(被覆;一次処理)において、再印刷画像形成可能な印刷版の印刷面として作用する表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆によって生じることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性される。この場合この被覆は、有利に水溶液またはエタノール性溶液から生じる。
【0055】
処理工程210(印刷画像形成;一次処理)において、被覆された表面は、レーザー照射で印刷画像形成される。処理工程210は、画像範囲(疎水性、色を導く領域)内で分子を固定する処理工程210aを含む。画像領域内での固定210aは、一定の(零とは異なる)出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれる。
【0056】
次に、1つの好ましい実施例を示す:鋼薄板印刷版またはチタン薄板印刷版(厚さ、例えば約0.125mm)は、アセトンで清浄化され(二次処理)、約10分間、エキシマレーザーのUV線で活性化される。引続き、前記薄板は、約10分間、"Gemini 10-2-10"〜で示される水溶液約1ミリモル中に
【化6】

【0057】
浸漬され、その後に水ですすぎ洗いされ(二次処理)、窒素で乾燥するまで吹き付けられる(二次処理)。印刷画像形成または固定は、約1.5Wの出力で830nmまたは1064nmの波長のレーザービームおよび約2.5m/sの印刷画像形成速度で行なわれる。
【0058】
次に、もう1つの好ましい実施例を示す:アルミニウム薄板印刷版またはチタン薄板印刷版は、必要な限り、最初に清浄化される(二次処理)。次に、表面は、塗工ユニットを使用しながらデキストリンを含有するゴム化溶液(例えば、AgumOまたはAgumZ, Eggen-Chemie,水道水で約1:1〜約1:10で希釈された)の薄手の層を塗工し、引続きナノ的に見て表面被覆されるまで表面を水道水ですすぎ洗いする(二次処理)ことによって除去することにより、ポリマーで被覆される。この被覆後、この印刷版は、1064nmの波長および約1.0W〜約3.5Wの出力の赤外レーザービームで印刷画像形成されるかまたは被覆は、画像に応じて固定される。
【0059】
場合による処理工程220(現像;一次処理)において、表面は現像され、例えば印刷版の親水性領域と疎水性領域のコントラストは、強化される。現像は、有利に所謂ゴム化溶液の塗工、即ち所謂ゴム化によって行なわれる。しかし、殊にポリマー被覆を使用する場合に好ましいのは、現像なしの方法である。
【0060】
次に、選択的に好ましい実施例を示す:鋼薄板印刷版またはチタン薄板印刷版(厚さ、例えば約0.125mm)は、アセトンで清浄化され(二次処理)、約10分間、エキシマレーザーのUV線またはサイドール(Sidol)で活性化される。引続き、薄板の表面は、DuPont社の所謂"Zonylen"、例えば"PSE"、"FSP"または"9361"で水溶液からの0.05ミリモルおよび1ミリモルの濃度で被覆される(Zonyle:部分的に弗素化された炭化水素鎖および1個または2個のアンカー基を有する両親媒性分子)。印刷画像形成は、約1Wの出力で赤外レーザービームおよび約2.5m/sの印刷画像形成速度で行なわれる。その後に、表面は、AgumZでゴム化される。
【0061】
処理工程230(塗工;一次処理)において、少なくとも1つの平版液体、例えば印刷版のための洗剤とは異なる湿潤剤および/または印刷用インキ/ワニスは、印刷版の表面上に塗工される。好ましくは、最初に湿潤剤230aおよび引続き同時に印刷用インキ230bが印刷版の表面上に塗工され、即ち印刷版は、湿潤され、およびインキ着けされる。
【0062】
非画像領域(撥色性領域)内での分子の除去220a、230cまたは脱着は、本質的に場合による現像220によって行なわれるか、または現像中220に行なわれ(現像が設けられている限り)および/または塗工230によって行なわれるかまたは塗工中230行なわれる。除去220aが場合による現像220によって行なわれる限り、非画像領域内の分子は、有利にゴム化溶液の現像液によって表面から除去される。
【0063】
除去230cが塗工230によって行なわれる限り、非画像領域内の分子は、印刷用インキの塗工とは異なる一次処理、好ましくは印刷版のための洗剤とは異なる湿潤剤によって表面から除去される。
【0064】
処理工程240(印刷)において、印刷画像形成されかつインキ着けされた印刷版は、有利に繰返し印刷材料上に印刷され、それによって少なくとも1つの印刷製品が製造される。
【0065】
印刷後、再度の被覆200および印刷画像形成210のための印刷版が使用され、即ち本方法は、再印刷画像形成の循環処理として数回実施されてよい。この場合、印刷用インキの印刷された印刷版の表面からの清浄化は、被覆200の前または後に、例えばEurostarまたはイソプロピルアルコールを使用しながら行なうことができる。
【0066】
更に、再度の被覆前に場合によっては、印刷版表面の活性化は、例えばUV線または大気圧プラズマによって行なうことができる。
【0067】
上記の2つの実施例が再び記載可能、即ち再使用可能な印刷版に関するとしても、相応する1回使用可能な印刷版の処理も可能である。
【0068】
選択的に、変更された本発明による方法の実施は、印刷材料と接触する表面、例えば対向版胴表面または対向版胴ブランケットの処理のためにも可能である。このような表面は、処理工程200に相応して、撥色作用を有する両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類で被覆することができ、処理工程210または210aに相応して該分子またはポリマーの固定のために全面で有利に赤外線で処理されることができる。分子の除去は不要である。固定によって、閉鎖された撥色性の表面を形成させることができる。印刷材料と絶えず接触させることによって撥色性の表面が摩耗する場合には、この表面は、簡単な方法で再度被覆されることができ、被覆は、固定されうる。
【0069】
上記方法に加えて、例えば分子の相応する溶液を含む浸漬容器を使用することによって固定された被覆を有する表面に永続的に分子を提供し、かつ分子を永続的に固定することにより、固定された被覆を有する表面が使用中に永続的に、少なくとも損傷個所で修復されることが設けられていてもよい。
【0070】
上記の一次処理(被覆、印刷画像形成、固定、除去、場合による現像、塗工)と共に、記載された方法は、二次処理、例えば清浄化/洗浄(例えば、アセトンまたはイソプロピルアルコールで)、すすぎ洗い(例えば、水道水で)および/または乾燥(例えば、窒素での吹き付け)を有することもできる。
【0071】
図3は、本発明による方法を実施するための装置の実施例を示す。
【0072】
印刷材料を加工する機械300(または選択的に:別の処理装置、例えば露光装置)は、版胴310を備えた装置302を有し、この版胴の表面320は、版胴外被それ自体または該版胴外被上に収容された、例えば印刷板の表面によって形成される。更に、装置302は、出力に関連して音響光学的変調器332の使用下でスイッチの切替可能なレーザー330を有し、このレーザーは、表面320の印刷画像形成、または固定および除去のために使用される。最後に、装置302は、上記処理工程(被覆、現像、塗工、印刷、清浄化、活性化)のそれぞれの実施のために他のユニットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明による方法の第1の実施例のスタートプランを示す系統図。
【図2】本発明による方法の第2の実施例のスタートプランを示す系統図。
【図3】本発明による方法を実施するための装置の1つの実施例を示す略図。
【符号の説明】
【0074】
100 被覆、 110 印刷画像形成部、 110a 固定部、 110b 除去部、 120 現像部、 130 塗工部、 130a 湿潤剤塗工部、 130b インキ着け部、 140 印刷部、 200 被覆部、 210 印刷画像形成部、 210a 固定部、 220 現像部、 220a 除去部、 230 塗工部、 230a 湿潤剤塗工部、 230b インキ着け部、 230c 除去部、 240 印刷部、 300 印刷機、 302 装置、 310 版胴、 320 表面、 330 レーザー、 332 音響光学的変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法であって、印刷版の印刷面として作用する表面の化学的機能化を分子での被覆(100、200)によって行なうことにより、印刷版の印刷面として作用する表面がナノ的に見た範囲内で表面変性され、印刷版がレーザービームでの印刷画像形成の一次処理(110、210)ならびに少なくとも1つの平版液体の塗工の一次処理(130、130a、130b、230、230a、230b)に掛けられ、画像領域内での分子の固定(110a、210a)が印刷画像形成の一次処理(110、210)によって行なわれる再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法において、非画像領域内での分子の除去(110b、220a、230c)が本質的に印刷用インキの塗工(130b、230b)とは異なる少なくとも1つの一次処理によって行なわれることを特徴とする、再印刷画像形成可能な印刷版の処理方法。
【請求項2】
印刷版が付加的に、殊にゴム溶液の塗工によって現像の一次処理(120、220)に掛けられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
印刷版が付加的に清浄化、洗浄、すすぎ洗いおよび乾燥の少なくとも1つの二次処理に掛けられる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
分子の固定(110a)が第1の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれ、分子の除去(110b)が第1の出力とは異なる第2の出力のレーザービームでの印刷画像形成によって行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
平版液体の塗工(130、130a、230、230a)が洗剤とは異なる湿潤剤での印刷版の湿潤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
分子での印刷版の表面の被覆(100、200)が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項4記載の方法を実施するための装置において、装置(302)が出力に関連してスイッチの切替可能なレーザー(330)を有することを特徴とする、請求項4記載の方法を実施するための装置。
【請求項8】
スイッチの切替可能なレーザー(330)が音響光学的変調器(332)を有する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
印刷材料を加工する機械、殊に平版オフセット印刷のための印刷機または全紙を加工する回転印刷機であって、請求項7または8記載の装置であることを特徴とする、印刷材料を加工する前記機械。
【請求項10】
印刷材料と接触する表面を処理するための方法において、このような表面は、該表面の化学的機能化が分子での被覆(100、200)によって行なわれることにより、ナノ的に見た範囲で表面変性され、該表面は、レーザービームでの分子の固定(110a、210a)に掛けられることを特徴とする、印刷材料と接触する表面を処理するための方法。
【請求項11】
分子での表面の被覆(100、200)が両親媒性分子またはポリマー、殊に糖類での被覆として行なわれる、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−155633(P2008−155633A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327246(P2007−327246)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】