説明

再循環ラインを有する燃料電池システム

本発明は、燃料及び酸化剤から改質物を生成するための改質装置(12)と、前記改質物を減損した改質物及び電気エネルギーへ変換する燃料電池(22)と、減損した改質物を改質装置(12)へ部分的に導き戻す再循環ライン(30)とを含む燃料電池システム(10)に関する。本発明は、再循環ライン(30)の減損した改質物と同様に、燃料も改質装置(12)へ供給する搬送装置(14)が設けられることを特徴とする。本発明はまた、前記タイプの燃料電池システム(10)を運転する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料及び酸化剤の改質物を生成するための改質装置と、改質物を減損した改質物及び電気エネルギーへ変換する燃料電池と、減損した改質物を改質装置に部分的に戻すための再循環ラインとを含む燃料電池システムに関する。
【0002】
さらに、本発明は、改質装置を用いて燃料及び酸化剤から改質物を生成するステップと、燃料電池を用いて改質物を減損した改質物及び電気エネルギーへ変換するステップと、再循環ラインを介して減損した改質物を部分的に改質装置に戻すステップとを含む、燃料電池システムを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池システムは、一般的に知られた方法で化学エネルギーを電気エネルギーへ変換することに役立つ。燃料電池システムは、実際に一般的な燃料を処理できなければならない。水素と酸素が燃料電池内で変換されるため、燃料電池のアノードに供給されるガスが出来る限り高い水素含有量を持つように、使用される燃料は処理されなければならない。カソード側では殆どの場合、大気中の酸素が燃料電池に供給される。このために、改質装置は燃料及び酸化剤、望ましくは空気を供給される。改質装置内でそのとき酸素と共に燃料の変換が生じるであろう。その場合、望ましくは部分的な酸化の方法が実行される。
【0004】
(特許文献1)において、請求項1の前文の特徴を有する燃料電池システムが開示されている。この燃料電池システムにおいて、出口側における燃料電池から排出された改質物のガスは改質装置に戻される。しかしながら、前記システムは複雑な設計を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 557 896 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、比較的単純な設計を有し、それゆえ費用効率の良い方法で製作され得る燃料電池システムを提供する可能性を用意することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は独立請求項の特徴により解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態及び更なる発展形態は、従属請求項から明らかになるであろう。
【0009】
本発明による燃料電池システムは、再循環ラインからの減損した改質物と同様に燃料も改質装置に供給できる搬送装置が設けられるという点で、総括的な最先端技術に基づく。減損した改質物と同様に燃料も改質装置に供給する搬送装置により、他の搬送装置が省略され得る。さらに、そのような構造は、搬送量が変化する場合に個別のラインが互いに調整される必要がないように、搬送装置の搬送量増加に伴って、減損した改質物の搬送量と同様に燃料の搬送量も自動的に増加させるため、単純化された制御もまた可能にする。戻される減損した改質物の搬送量は、従って供給される燃料の搬送量を介して制御可能である。
【0010】
さらに、搬送装置への燃料及び減損した改質物の供給を個別に制御するため、搬送装置の上流にそれぞれの流量調整弁が設けられることが有利である。この構成は、2つの弁の位置を互いに変えることにより、かつ搬送装置の回転速度を変えることにより、再循環流に対する燃料の比率の調整を可能にする。従ってこの回路構成は、改質装置内でのガス成分の調整に関する高い柔軟性が達成され、それにより負荷変動への反応に関する燃料電池システムの高い柔軟性が達成され得るという利点を提供する。この比率は改質装置の温度に対する影響も有するため、それはまた調整によって所望の温度範囲内で運転され得る。さらに、個別のサーボ弁を設けることは、各ラインにおいて個別の搬送装置を設けるよりも費用効率が良い。
【0011】
本発明による燃料電池システムは、さらに、減損した改質物を冷却するための熱交換器が再循環ライン内に設けられるように発展され得る。前記熱交換器なしでは、例えば弁又は搬送装置のような再循環ライン内の構成要素は、850℃までの温度に対して設計される必要があり、それはシステム構成に関する費用の大幅な増加を引き起こし、そのような構成要素を見出すことを困難にする。その上、高い運転温度は機械部品の急速な摩耗をもたらす。この問題は、通常の構成要素の使用を可能にするため、再循環流が例えば150℃に冷やされるように、再循環流を冷却することにより解決され得る。通常の構成要素は、そのとき比較的適度な温度で運転され得る。
【0012】
これに関連して、酸化剤を改質装置へ、燃料電池へ、又はアフターバーナーへ供給する酸化剤ラインが、熱交換器を通じて導かれることが有利に意図され得る。それにより、燃料電池システム内に既に存在する媒体の流れは、減損した改質物の戻りを冷やすために用いられ得る。従って、再循環流を冷却するための追加ファンは省略され得る。
【0013】
さらに、本発明はそのような燃料電池システムを制御する方法を提供する。
【0014】
方法の枠組内で、その方法自体が燃料電池システムの始動又は停止の間に、再循環ライン内の流量調整弁を閉じることにより、有利に特徴付けられ得る。この手段により再循環ラインは、利用可能な減損した改質物量が不十分である燃料電池システムの始動の間、又は燃料電池システムの停止の間に動作を停止させて、前記運転状態に対して有利な条件をもたらすことができる。
【0015】
本発明の好適な実施形態は、次の図を参照して一例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による燃料電池システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明による燃料電池システム10の概略図を示す。燃料電池システム10は、燃料及び以下で説明される減損した改質物が、搬送装置14を用いて供給され得る改質装置12を備える。搬送装置14としてファン、又は例えば気体用の回転ベーンポンプのような、あらゆる適切なタイプのポンプが使用され得る。燃料の供給制御用に、流量調整弁16が搬送装置14の上流に、及び減損した改質物の戻りが導入される合流位置18の上流に設けられる。燃料のタイプとしては、ディーゼル燃料、ガソリン、バイオガス、天然ガス、及び最新技術から知られる他のタイプの燃料が考慮の対象となり、本発明において燃料は望ましくは気体である。その上、改質装置12は改質器ファン20を用いて酸化剤を供給する。改質装置12は、搬送装置14及び改質器ファン20により供給される物質を、部分的酸化の下で燃料電池22に供給され得る改質物へと変換することが望ましい。燃料電池22の代わりに、燃料電池スタックが用意され得る。改質物は、燃料電池22内で燃料電池ファン24により運ばれるカソード空気の助けにより、電流、熱、及び減損した改質物へと変換される水素ガスである。燃料電池22の出口側において排出される減損した改質物は、2つのラインへ分割される。減損したアノードの排ガスの一部は、アフターバーナー・ファン28が割り当てられているアフターバーナー26に供給される。アフターバーナー26内では、アフターバーナー・ファン28により運ばれた空気と共に、減損した改質物の、殆ど不純物を含まない燃焼排気ガスへの変換が生じる。減損した改質物のその他の部分は、再循環ライン30を介して、最初に熱交換器32もしくは改質物冷却器に供給される。熱交換器32は、戻されるべき減損した改質物を例えば150℃まで冷却する。ここで再循環流は熱交換器32を用いて、既に燃料電池システム10内に存在する媒体の流れにより有利にも冷却され得る。この場合、例えば改質器ファン20、燃料電池ファン24、及び/又はアフターバーナー・ファン28によって吸い込まれる媒体の流れが、媒体流として考慮の対象となる。代わりに、熱交換器32から熱エネルギーを除去するためのファンを設けることも可能である。その後、再循環流は、再循環流の流れ制御のための流量制御弁34を通過する。再循環流は次に合流位置18において燃料と混合され、搬送装置14に供給される。同時に、搬送装置14は、再循環ライン30を介して供給された燃料及び減損した改質物を吸い込む。システムの電気効率を増加させるべく、再循環ライン30の無いシステムと比較して同じ量の燃料でより多くの電気エネルギーが引き出せるように、減損した改質物のエネルギーがより完全に変換されるため、そのような再循環で、より高いシステム効率が達成され得る。搬送装置14と同様、流量調整弁16及び34の調整もしくは制御は、電子制御ユニット内に格納された適切な制御アルゴリズムにより実現される。電子制御ユニットは、流量制御弁34と同様に、少なくとも搬送装置14、流量調整弁16、改質器ファン20、燃料電池ファン24、アフターバーナー・ファン28に接続されたマイクロ・コントローラであることが望ましい。
【0018】
上述の実施形態の代案として、ガスを運ぶために対応するポンプが、改質器ファン20、燃料電池ファン24、及びアフターバーナー・ファン28の代わりに設けられ得る。
【0019】
特許請求の範囲と同様に、上記の説明、図面において開示された本発明の特徴は、あらゆる組合せにおいてと同様、個々に本発明を実現するために重要であり得る。
【符号の説明】
【0020】
10 燃料電池システム
12 改質装置、改質器
14 搬送装置
16 流量調整弁
18 合流位置
20 改質器ファン
22 燃料電池
24 燃料電池ファン
26 アフターバーナー
28 アフターバーナー・ファン
30 再循環ライン
32 熱交換器
34 流量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び酸化剤から改質物を生成するための改質装置(12)と、前記改質物を、減損した改質物及び電気エネルギーへ変換するための燃料電池(22)と、前記減損した改質物を部分的に前記改質装置(12)に戻すための再循環ライン(30)とを備える燃料電池システム(10)であって、
前記再循環ライン(30)からの前記減損した改質物と同様に前記燃料も前記改質装置(12)に供給できる搬送装置(14)が設けられることを特徴とする燃料電池システム(10)。
【請求項2】
前記搬送装置(14)への燃料及び減損した改質物の供給を個別に制御するため、前記搬送装置(14)の上流にそれぞれの流量調整弁(16、34)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム(10)。
【請求項3】
前記減損した改質物を冷却するための熱交換器(32)が、前記再循環ライン(30)内に設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池システム(10)。
【請求項4】
酸化剤を前記改質装置(12)へ、前記燃料電池(22)へ、又はアフターバーナー(26)へ供給する酸化剤ラインが、前記熱交換器(32)を通じて導かれることを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池システム(10)。
【請求項5】
燃料電池システム(10)を運転する方法であって、
−改質装置(12)を用いて燃料及び酸化剤から改質物を生成するステップと、
−燃料電池(22)を用いて、前記改質物を減損した改質物及び電気エネルギーへと変換するステップと、
−再循環ライン(30)を介して前記減損した改質物を前記改質装置(12)へ部分的に戻すステップと
を含む方法であって、
前記減損した改質物と同様に前記燃料を、前記再循環ライン(30)から前記改質装置(12)に供給するための搬送装置(14)の運転により特徴付けられる方法。
【請求項6】
流量調整弁(16、34)をそれぞれ用いた、前記搬送装置(14)への燃料の流量制御、及び減損した改質物の流量制御により特徴付けられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
熱交換器(32)を用いた、前記再循環ライン(30)における前記減損した改質物の冷却により特徴付けられる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱交換器(32)を通じて前記改質装置(12)、前記燃料電池(22)、又はアフターバーナー(26)に供給される酸化剤を運ぶことによる、前記再循環ライン(30)内での前記減損した改質物の冷却によって特徴付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記燃料電池システム(10)の始動又は停止の間に、前記再循環ライン(30)内で流量調整弁(34)を閉じることにより特徴付けられる、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−521785(P2010−521785A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553901(P2009−553901)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000436
【国際公開番号】WO2008/113327
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509132691)エネルダイ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (10)
【出願人】(509163891)スタクセラ・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】