説明

再構成空間拡大用ホログラフィック投影装置

本発明は、マイクロミラーの形のミラーエレメント(3)のアレイを備えたホログラフィック投影装置(1)に関する。ホログラフィック投影装置(1)は、再構成シーン用の再構成空間(18)の拡大用ミラーエレメント(3)のアレイを含む少なくとも1つの光変調装置(2、2R、2G、2B)を備える。個々のミラーエレメント(3)は少なくとも1つのアクチュエータ(4)と結合される。アクチュエータ(4)は、対応するミラーエレメント(3)をチルトさせるか、これらのミラーエレメントを少なくとも1つの方向に軸方向に変位させるかの少なくともいずれかを行う。これによって、再構成シーンを表示するための波面(W)が直接変調される。ホログラフィック投影装置(1)は、観察者の平面(16)にある少なくとも1つの観察者用ウィンドウ(15、15R、15L、28L)の中へ変調済み波面(12、12R、12G、12B、12L)を投影するための光学システム(9)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーエレメントのアレイを含むホログラフィック投影装置に関する。本発明はさらに、再構成された、好適には3次元シーンを観察するための再構成空間を拡大する方法に関するものであり、この再構成空間では、少なくとも1つの光源を備えた照明装置が十分にコヒーレントな光を放射する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィとは、波動光学による方法を用いてオブジェクトの3次元記録及び光学的表示を可能にするものである。ホログラフィック画像の再構成は、しばしば再構成と呼ばれ、コヒーレントな光によりキャリア媒体を照明することによってホログラムのタイプに応じて実現される。従来技術では、ホログラフィック投影装置の再構成空間又は視野角は特に3次元シーンを観察するには狭すぎる。
【0003】
通常、再構成は直接見られるものである。すなわち観察者は、コンピュータ生成ホログラム(CGH:Computer-Generated Hologram)を観察することになる。このコンピュータ生成ホログラム(CGH)は、ホログラム値に従って符号化された、規則的に配列された画素から構成されている。偏向の効果に起因して、CGHの再構成は1つの周期性間隔の範囲内でのみ達成可能となるが、この間隔はCGHの分解能により規定される。隣り合う周期性間隔において不規則性を示しながら再構成は通常反復して行われる。したがって、表示領域のサイズは分解能により制限を受けることになる。両眼でシーンを観ることができるように、ホログラムの分解能を実質的に高くして、少なくともある程度の視野角の拡大を図るようにする必要がある。
【0004】
オブジェクトのホログラフィによる再構成のための拡張された再構成空間及び広視野角を得るという目的は、したがって、多数の極めて小さな画素を有するホログラムキャリ媒体を必要とすることになる。これらの画素は可能なかぎり小さなものであることが望ましい。また、これら画素の光学特性は個別に制御可能であることが望ましい。画素間の非常に短い距離(ピッチ)は分解能を記述するものであるが、この距離はマトリクスのためのコストのかかる製造工程を必要とするものである。
【0005】
CGH用の記録媒体には、入射光の位相と振幅を変調するLCD、LCoS、音響光学変調器、OASLM及びEASLMのような光変調器が含まれる。
【0006】
特許文献1には、例えば、ホログラフィック表示における視野角の拡大のための光変調器を備えた装置についての記載がある。ホログラム用として使用される光変調器の分解能よりも高い分解能を持つ位相マスクが、光の伝播方向から見て光変調器の直ぐ後に配置されている。光変調器の個々の画素は位相マスクの4またはそれ以上のエレメントと関連づけられる。このため、位相マスクはより高い仮想分解能、したがって拡大された視野角を生成することになる。
【0007】
しかし、これらの利点は追加のノイズの代償として得られるものである。その理由として、位相マスクが個々のオブジェクトについて同じであって、かつ、分解能を上げると、値のランダムな分布が生じるということが挙げられる。
【0008】
さらに、光変調用マイクロミラーを備えた光変調器が知られている。このような光変調器は入射光の振幅と位相との少なくともいずれかを変調するために用いられる。
【0009】
特許文献2には把持用ブラケットの4つの搬送アームに吊るされたマイクロミラーについての記載がある。このマイクロミラーは、設けられた電極へ電圧を供給することによって2つの軸に沿って移動することができる。画像の位相エラーを減らすために、又はこのエラーを最小化するためにマイクロミラーは軸方向に変位される。
【0010】
特許文献3には、入射光の振幅と位相の変調とを行うための光変調器についての記載がある。この光変調器はマイクロミラーを備え、個々のマイクロミラーと光変調器のベースプレートとの間に屈曲エレメントが存在する。この屈曲エレメントは、静電力が印加されると、ベースプレートに対して相対的にマイクロミラーをチルトさせる(傾ける)か、軸方向に変位させる。振幅変調の場合、光変調器のベースプレートに付けられたマイクロミラーと電極との間に電圧を供給することによって光変調器のマイクロミラーはチルトされる。電圧がベースプレート上の2つの電極に対して同時に供給されると、静電力がマイクロミラーの軸方向の動きを引き起こし、その結果、位相変調をもたらすことになる。
【0011】
再構成空間、したがって視野角は、画素数を増やすことによって、したがって、分解能を改善することによって、特許文献3により公知のものである光変調器を用いて専ら拡大することができる。さらに、前述の公報に記載がある光変調器は比較的大きなミラー(>50pm)に適用される。
【特許文献1】WO20051059659A2
【特許文献2】US6,028,689
【特許文献3】公報CA2 190 329C
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、好適には、従来方式の装置と比較して光変調装置の画素数を増やすことなく、かつ、画素制御を可能なかぎり簡単に保ちながら、可能なかぎり広い再構成空間又は視野角において3次元シーンのホログラフィック表示を得るための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、再構成シーン用の再構成空間を拡大するために、ミラーエレメントのアレイを備える少なくとも1つの波面変調装置を提供することにより本発明による方法で解決される。その場合、ミラーエレメントは、少なくとも1つのアクチュエータを有し、さらに、ミラーエレメントは、位相シフトに影響を与えるような少なくとも1つのアクチュエータによって少なくとも1つの方向に動かすことが可能であり、それによって、再構成シーンを表示するために波面を直接変調することが可能であり、さらに、観察者の平面にある少なくとも1つの観察者用ウィンドウの中へ上記波面を投影するための光学システムが提供される。
【0014】
本発明による装置は、入射波面の変調用ミラーエレメントを含む少なくとも1つの波面変調装置を備える。このように変調された波面の助けによって、シーンの再構成が可能となる。これら多数のミラーエレメントは波面変調装置に配置され、チルトされる(傾ける)か、軸方向に変位されるかの少なくともいずれかが行われて、専ら光の位相が変調される。これらのミラーエレメントは、波面を変調するために、チルトされるか、軸方向に変位されるか、あるいはこの双方が行われるかのいずれかを行うことができる。このようにして、ミラーエレメントの正確な位置決めが行われて、所望のように波面を変調することが可能となる。ミラーエレメントは入射波面の位相変調のためにチルトされ、軸方向に変位される。しかし、このことは、光の位相が変調されても、すべてのミラーエレメントがチルトされ、軸方向に変位される必要があるわけではないことを意味する。所望の波面に応じて、別のミラーエレメントが両方の動き、すなわちチルトと軸方向への変位とを行いながら、いくつかのミラーエレメントのみをチルトさせたり、いくつかのミラーエレメントを軸方向に変位させたりすることも可能である。再構成シーンを表示する際には、すべてのミラーエレメントが制御される。入射波面の位相が変調され、画定された領域(いわゆる再構成空間)においてシーンが再構成された場合、同時に、又は、次々に迅速にミラーエレメントがチルトされ、軸方向に変位される。シーンが変化するか、別のシーンが再構成される場合、波面変調装置のいくつかのミラーエレメント又はすべてのミラーエレメントの制御値は変更され、それによってミラーエレメントは、別のチルト位置及び別の軸方向に変位された位置をとるようになる。ミラーエレメントは、ミラーエレメント当たり少なくとも1つのアクチュエータによって、位置決めを行うことができるが、好適にはミラーエレメント当たり2つのアクチュエータによって位置決めを行うことが望ましい。こうすることによって、ミラーエレメントにヒットする平らな波面は3次元オブジェクトを表示する所定の機能に従って直接変調されるようになる。したがって、このように変調された波面は、観察者の平面にある観察者用仮想ウィンドウ上に投影され、そこで観察者は、再構成シーン、特に3次元シーンを視ることになる。
【0015】
このようにして、位相変調に基づく他の光変調器(SLM)と比べて、所望の波面のさらに正確な位相再生が可能になる。本願において、高速フーリエ変換(FFT)の計算のために求められる計算能力が最小化され、その結果、リアルタイム表示のための時間の節減が生じるという利点がある。さらに、波面変調装置の画素数(ここではミラーエレメントの数)を増やすことなく、また、ミラーエレメントのアクチュエータを複雑に制御することなくホログラフィック投影装置が提供され、このホログラフィック投影装置は、波面の位相のさらに正確な再生を通じて、分解能を実質的に上げ、それによって、再構成空間又は視野角が拡大されるという利点がある。
【0016】
周期的継続が通常発生するが、これはミラーエレメントのチルトと軸方向への変位との組み合わせによって回避される。
【0017】
この場合アクチュエータがミラーエレメントの下に配置され、それによって、ミラーエレメントを相互に最小限の距離に配設できるようになるという理由により、高い充填比の達成をさらに容易に行うことが可能となる。充填比とは、波面変調装置の総サイズに対するミラー表面の感光領域の比率である。ミラーエレメントの高い充填比は、軸方向に変位された場合、ホログラフィック投影装置において用いられると、それによって周期的継続が明らかに抑制されるという利点がある。しかしながら、ミラーエレメントをチルトさせ、軸方向に変位させると、周期的継続が生じなくなり、コントラストが強くなる。
【0018】
上述の従来技術による位相マスクはすべてのオブジェクトに対して同じであり、また、分解能が高くなると、値がランダムに分布されるという理由により、異なるオブジェクトの符号化を行うとき、種々の強度のノイズが生じることになる。本発明は、固定位相マスクを採用するものではなく、個々のオブジェクトに対してミラーエレメントの制御を適合させ、それによってノイズを制御し、低減できるようにするものである。
【0019】
ミラーエレメントは、好適にはMEMS型マイクロミラー(マイクロ電気機械的システム)であることが望ましい。というのは、これらのミラーは高い精度で電気的に位置決めを行うことが可能であり、そして、非常に迅速に動くことができるからである。さらに、ミラーエレメントは非常に小型であり、かつ、アクチュエータの集中制御電子装置は大部分がCMOS互換(互換相補型金属酸化膜半導体)である。さらにまた、マイクロミラーはほぼ90%以上の反射率pを有する。この反射率は、従来使用されている液晶ベースの変調器の最大70%の反射率と比較されるものである。この90%以上という反射率は光損失がほとんど生じないことを意味する。
【0020】
本発明の実施形態では、波面変調装置はさらに、2次元波面生成用偏向エレメントを備える1次元波面変調装置であってもよい。この場合前記偏向エレメントは、1つの波面変調装置に対して垂直方向の光偏向を実現する。この実現のために、本発明による装置は偏向エレメント、好適には検流計スキャナ(ミラー検流計)又は光ビームの迅速な偏向を行うための多角形ミラーを備えることができる。これは、3次元シーンの再構成のために2次元波面を生成するためのものである。したがって、2次元波面は一連の1次元波面から構成されることになる。(1次元波面変調装置が垂直方向に構成されているか、水平方向に構成されているかに応じて)列又は行の1次元波面は、偏向エレメントの助けによってまとめて1列に並べられることになる。波面変調装置は、対応する行又は列の形で所望の波面を生成できるほど十分高速なものとなる。上記波面変調装置内の偏向エレメントの個々の位置は、例えば、3次元シーンのセクションと一致する。
【0021】
本発明の推奨実施形態では、特に、偏向エレメントは少なくとも1つの光源と波面変調装置との間に配置することができる。本発明による投影装置における偏向エレメントのこのような配置には、波面変調装置にヒットする波面がまだ符号化されていないために、2次元波面の生成エラーを広範に回避するか、又は、このエラーを最小化することができるという利点がある。
【0022】
広い観察領域において観察者用ウィンドウを利用可能にするために、観察者は、位置検出システムを用いて、再構成シーンを見ながら、観察者の平面における1人の観察者又は複数の観察者の目の位置を検出することができる。
【0023】
観察者が再構成シーンを見ている間、位置検出システムは1人の観察者又は複数の観察者の目の位置を追い、そして、観察者の目の位置の変化に従ってシーンを符号化する。これは、波面変調装置のミラーエレメントのチルトと軸方向への変位との少なくともいずれかを適宜行うことによって、再構成シーンの位置とコンテンツの少なくともいずれかを目の位置の変化に従って更新できるようにするのに特に利点となる。次いで、新たな目の位置に従って観察者用ウィンドウを追跡することが可能となる。
【0024】
少なくとも1つの偏向手段を好適に提供して、目の位置に合わせて観察者用ウィンドウの追跡を行うようにすることができる。このような偏向手段は、音響光学エレメントのような機械エレメント、電気エレメント、磁気エレメント又は光学エレメントであってもよい。
【0025】
本発明の方法の側面に関して、本発明の目的は、再構成シーンを観察するための再構成空間を拡大する方法によって解決される。このシーンは、光源により放射されるコヒーレント光によってスクリーン上へ投影される、ここで、少なくとも1つのアクチュエータによって、少なくとも1つの波面変調装置の少なくとも1つのミラーエレメントが動かされて、入射光を変調するために位相シフトを実行できるようにし、それによって、光源から発信し、観察者の平面にある再構成シーンに従って直接変調される波面を観察者用仮想ウィンドウの中へ投影する。
【0026】
新規の方法によれば、十分にコヒーレントな光を放射する照明装置の光が、再構成空間又は視野角を拡大するために少なくとも1つの波面変調装置上へ向けられる。光はスクリーン上へ、好適にはミラー上へ投影される。波面変調装置のミラーエレメントは、ミラーエレメント当たり少なくとも1つの、好適には2つの制御可能なアクチュエータによって、チルトと軸方向への変位の少なくともいずれかを行うことにより入射光の変調を行う。少なくとも1つのミラーエレメントがこのように動かされて、ターゲット波面に応じて位相シフトを行うようにする。このようにして、ミラーエレメントは、オブジェクトから反射された後、平らな波面の形状を成すことになる。このとき、上記変調は、オブジェクトからの反射後、理想的波面近似になる。こうすることによって、波面への所望の近似が可能となる。すなわち、公知の位相変調光変調器の場合よりも正確な波面の位相再生を行うことが可能になる。次いで、この波面は、観察者の平面にある観察者用仮想ウィンドウの中へ好適に投影され、そこで、観察者は再構成シーンを2次元モード又は3次元モードで観察することになる。
【0027】
波面を直接変調する方法の利点として、ターゲット波面を変換してホログラムに変えるステップが不要になり、その結果、従来技術による解決方法により求められる計算能力を小さくするこができるようになるという点が挙げられる。2つのアクチュエータの助けによるミラーエレメントの制御によって、個々にミラーエレメントをλ/2よりも大きい分だけ、好適には2λだけ変位させることが可能となる。ミラーエレメントのさらに大きなこの変位のお蔭で、分解能を仮想的に高くすることが可能となり、波面変調をさらに正確なものにすることが可能となる。その結果、さらに広い再構成空間又は視野角の達成が可能となる。この新規の方法により、少なくとも1人の観察者が観察する広い再構成空間又は視野角において真の奥行きを持つ3次元シーンの再構成が可能となる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、ミラーエレメントをチルトさせることによってゼロ番目の回折次数でシーンをさらに再構成することができる。輝度はゼロ番目の回折次数で最大となるため、これは特に望ましいことである。
【0029】
本発明のさらなる実施形態が他の従属クレームにより規定される。本発明の実施形態について以下詳細に説明し、添付図面と関連して例示する。単色光を持つホログラフィック再構成に基づいて本発明の原理について説明する。しかし、当業者であれば、個々の実施形態の説明で示されるようなカラーホログラフィック再構成にも本発明を同様に適用できると思うであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、個々の画素が変調波と基準波との間の或る一定の位相差を単に表示する従来技術の位相変調光変調器によって変調された波面を示す。このような光変調器によって変調された波面は、座標系において一連の二乗機能として理想化された形で表すことができる。光変調器上の波面を示す座標は横座標にプロットされ、位相差モジュロ2πが縦座標にプロットされる。したがって、0と2πの間の範囲で位相変調が行われる。このような光変調器のみを用いることにより、波面走査方法に従って近似値を得ることが可能となる。この近似値の精度の向上を図るために光変調器のさらに高い分解能又はさらに多数の画素数が必要になる。近似値の精度が高ければ高いほど、再構成空間を広くすることができる。
【0031】
さらに正確な位相再生を達成するために、そして、それによって再構成空間又は視野角を拡大するために、本発明は、波面Wを変調するための、図2に図示のような波面変調装置2を備えるホログラフィック投影装置1を利用する。位相変調についての理解をさらに容易にするために、図2には、波面変調装置2のみが示されている。そして、ホログラフィック投影装置1全体は専ら図4aに示されている。したがって、この図2は専ら波面Wの変調を概略的に示すものである。この場合波面変調装置2は本実施形態では一次元形式のものとなる。位相変調波面変調装置2である波面変調装置2は、例えば、平らな反射面を有するミラーエレメント3を備え、該ミラーエレメントは、好適には例えばマイクロミラー、特にMEM(マイクロ電気機械的システム)であることが望ましい。ミラーエレメント3は他の任意の反射面を有することも可能であることは言うまでもない。これらのミラーエレメント3は個々の画素を表示し、少なくとも1つのアクチュエータ4(本願では2つのアクチュエータ4)と結合され、これら個々のアクチュエータは波面変調装置2の基板5とミラーエレメント3との間に配置される。ミラーエレメント3は、上記アクチュエータ4のそれぞれの制御によって少なくとも1つの軸線の周りにチルトされる(傾ける)か、軸方向に変位されるかの少なくともいずれかを行うことができる。ミラーエレメント3のチルト及び軸方向への変位は図2にはっきりと観察することができる。ミラーエレメント3はミラーエレメント3の反射面の高い充填比を達成するために互いに近接して配置されることが望ましい。ミラーエレメント3は、例えば、50pmのピッチにおいて49pmのサイズを有する。すなわち、高い充填比(本例では98%)を保持するために、隣り合う2つのミラーエレメント間の間隙は1pmを超えないようにすることが望ましい。次に、波面変調装置2は、例えば、1次元波面変調装置では1×2000のミラーエレメントのような、あるいは、2次元波面変調装置では2000×2000のミラーエレメントのような多数のミラーエレメント3を波面Wの位相を変調するために備える。2次元波面変調装置において、ミラーエレメント3は2つの軸線の周りでチルトすることができる。特許文献3などの従来技術の公報によってすでに公知であるため、ミラーエレメント3及び該ミラーエレメントの制御装置についてのさらなる説明は省略する。
【0032】
波面変調装置2は、入射波面Wの位相変調のために照明装置(図示せず)の光源6により照明される。光源6により放射された波面Wは、図示のように、図2の段階1と2の平らな波面となる。矢印により示されるように、段階3においてこの平らな波面Wは波面変調装置2のミラーエレメント3にヒットし、そこで波面Wは変調され、次いで、チルトされ、軸方向に変位されたミラーエレメント3に従って、波面Wは反射される。これらのミラーエレメント3は、或るオブジェクトを表わす所定の機能に従って位置決めが行われる。段階4において、上記変調済み波面Wはミラーエレメント3から反射された後で表示される。このようにして、ミラーエレメント3は、或る一定の3次元シーンの再構成が可能となるように求められる平らな波面Wを成すことになる。
【0033】
図3は、チルト可能でかつ変位可能なミラーエレメント3により変調が行われた後の波面の位相曲線を示す図である。曲線のセクション3a、3b、3c、3dはミラーエレメント3の所望の位置と一致する。これによって、例示の曲線のセクション3bのように、表わされた位相関数曲線の形で、対応するミラーエレメント3のエンドポイントが2πを超える位相差を持つことが可能となる。ミラーエレメント3のチルトと軸方向への変位との組み合わせのおかげで、所望の波面は、図1に図示のような波面変調装置を用いた場合に可能となるよりも高い精度でほぼ正確な近似を得ることが可能となる。これによって、分解能を仮想的に高めることができ、その結果、再構成空間又は視野角を拡大することが可能となる。
【0034】
ミラーエレメント3は、ミラーエレメント3にヒットする入射波面Wの位相変調のためにチルトされ、次いで軸方向に変位される。波面Wは、チルト可能で、かつ、軸方向に変位可能なミラーエレメント3を有するMEMにヒットすると、傾斜角に従って伝播方向に局所的に変えられ、ミラーエレメント3の軸方向の変位量に従って局所的に遅延される。これは個々のミラーエレメント3と、隣接するミラーエレメントの一次元配列又は線形配列の双方について当てはまる。すべてのミラーエレメント3が同じ反射率を示すため、これは単に入射波面の位相変調となる。
【0035】
図4aは、好適には3次元のシーンの再構成のためのホログラフィック投影装置1を概略的に示す平面図である。さらに理解し易くするために、透過装置としてのホログラフィック投影装置1が、以下に参照する図4aに、単純化された態様で示されている。次に、ホログラフィック投影装置1の基本設定について説明する。この実施形態でわかるように、波面変調装置2は本例では垂直方向に配設された1次元波面変調装置である。波面変調装置2は照明装置7によって、より正確に述べれば、十分にコヒーレントな光を放射する線光源8によって照明される。本明細書においては、‘十分にコヒーレントな光’という用語は3次元シーンの再構成のために干渉を生成することができる光を示す。照明装置7の光源8は、レーザダイオード、DPSSレーザ(ダイオードポンピング・ソリッドステートレーザ)又は別のレーザからつくることができる。十分にコヒーレントな光を放射する限り従来の光源を使用することも可能である。しかし、このような光源は、フィルタして、十分なコヒーレンスレベルを達成するようにすることが望ましい。ホログラフィック投影装置1は光学システム9をさらに備える。この光学システム9は投影手段10とスクリーン11とを備える。光学システム5は、例えば、図からわかるような、また、以下さらに詳細に説明するようなさらに別の光学エレメントを備えるものであってもよいことは言うまでもない。スクリーン11は、好適にはミラー、特に凹面ミラーであることが望ましい。スクリーン11は、例えば図示のようにレンズなどの投影用光学エレメントとすることも可能である。スクリーン11が凹面ミラーである場合、ホログラフィック投影装置1の光学システムのサイズが、レンズのみを用いる透過装置のサイズよりも実質的にさらに小型になるという利点が生じることになる。スクリーン11は、決して拡散面を持たないようにし、それによって波面変調装置2から反射される波面12が破壊されないようにすることが望ましい。再構成シーンの2次元表示が所望であれば、スクリーン11が拡散面を有するようにしてもよい。投影手段10もまたミラー又はレンズである。波面変調装置2によって変調され、波面変調装置2から反射される単色波面12は、レンズエレメント19と20によって偏向エレメント13上へ投影され、3次元シーンを再構成するようになる。このような偏向エレメント13は、検流計スキャナ、圧電スキャナ、共鳴スキャナ、ポリゴンスキャナ、マイクロミラーアレイ、あるいは同様の装置であってもよい。偏向エレメント13は、波面変調装置2に対して垂直方向の波面12の光偏向を実行して、2次元波面14を生成するようにする。2次元波面14は、上記偏向によって生成される一連の平行な1次元波面14’、14”、14”’...から構成される。次いで、光学システム9は、観察者の平面16に位置している観察者用仮想ウィンドウ15へ2次元波面14を投影する。このウィンドウにおける観察者の目は再構成シーンを観察することになる。光源8によって放射される十分にコヒーレントな光がスクリーン11上へ投影される。これによって、波面12のフーリエ変換FTが、画像側焦面においてレンズエレメント19と20の間に生成される。次いで、光学システム9の投影手段10は、画像側焦面17におけるスクリーン11上へフーリエ変換FTを投影する。円錐台によって形成される拡大された再構成空間18において、すなわち拡大された視野角6で、観察者は上記再構成シーンを観察することができる。この拡大された再構成空間18は観察者用ウィンドウ15とスクリーン11との間で伸びる空間である。波面変調装置2の高い充填比のミラーエレメント3のおかげで、観察者の平面16において再構成シーンの周期的継続が生じなくなる。
【0036】
波面変調装置2のミラーエレメント3がアクチュエータ4によりチルトされる可能性があるため、変調済み波面12が影響を受け、その結果、3次元シーンがゼロ番目の回折次数で再構成されることが考えられる。この再構成は、ゼロ番目の回折次数において輝度又は光度が最大になるという理由で特に望ましいことである。
【0037】
さらに、偏向エレメント13を波面変調装置2の中へ直接組み込むことも可能である。このことは、上記記載のようにミラーエレメント3の助けによって波面変調装置2が平らな波面Wを変調することを意味する。しかし、2次元波面14を生成するために用いられる波面変調装置2は全体として変位される。レンズエレメント19と20はこの場合必要とされない。次いで、波面変調装置2は偏向エレメント13に隣接して、すなわち投影手段10のオブジェクト側焦面に配置される。この結果、例えば、カラー再構成のためのビームスプリッタ・エレメント21を波面変調装置2と投影装置10の間に配置することが可能となる。さらに、システム全体を変位させたり、チルトさせたりする代わりに、単にミラーエレメント3のアレイを変位させるか、チルトさせて、2次元波面を生成するようにすることも可能である。これを行うことによって、ホログラフィック投影装置1に対してさらにコンパクトな全体設計を行うことが可能となる。
【0038】
しかし、オプションとして、ホログラフィック投影装置1はレンズエレメント19と20を光路に設けるようにしてもよい。ここで個々の焦点距離からわかるように、レンズエレメント19と20は収差を最小化するために同じ屈折力を有するようになっている。しかし、レンズエレメント19と20はまた、レンズエレメント20が波面変調装置2と光学システム9との間に配置されている場合には、偏向エレメント13上の1次元波面12のサイズの修正又は最適化を行うために、異なる屈折力又は焦点距離を有するようにしてもよい。この場合レンズエレメント19と20には別の利点がある。これらのレンズエレメントは、波面変調装置2から反射された波面12が偏向エレメント13上へ投影されるように使用され、それによって2次元波面14が生成されるようになることを保証するものである。レンズエレメント19と20によってここで表される無限焦点系は、波面12を偏向エレメント13上へ投影するために用いることができる。これによって、波面12のフーリエ変換FTがレンズエレメントの画像側焦面19において生成される。このフーリエ変換FTは、レンズエレメント20と投影手段10の助けによってスクリーン11上へ投影される。
【0039】
偏向エレメント13は光源8と波面変調装置2との間に交互に配置することができる。この配置には、2次元波面14の変調中の収差をできる限り除去するか、最小化することができるという利点がある。というのは、平らな波面Wは、波面変調装置2にヒットしたとき、まだ符号化されていないからである。
【0040】
3次元シーンのカラー再構成もまたホログラフィック投影装置1の助けによって可能となる。図4aに示すように、ビームスプリッタ・エレメント21、好適にはプリズムブロックが光の伝播方向へ向かって投影手段10の正面に配置される。ビームスプリッタ・エレメント21は、好適には二色性層を備えたXプリズムであり、このエレメントは、赤色光、緑色光及び青色光を分割して、3つの分離波面の中へ入れるか、これらの分離波面を再結合して、共通の波面を形成する。シーンのカラー再構成は3原色、RGB(赤、緑、青)を同時に処理することにより達成される。本実施形態では、ビームスプリッタ・エレメント21はレンズエレメント19と20との間に配置されるが、このビームスプリッタ・エレメント21をホログラフィック投影装置1の別の位置に配置することも可能である。さらに、他の任意のビームスプリッタ・エレメントを使用してもよい。
【0041】
図4bは図4aのビームスプリッタ・エレメント21を示す拡大詳細図である。3次元シーンの同時カラー再構成のために、3原色RGBの個々についてそれぞれ、3つの波面変調装置2R、2G及び2Bが提供される。これら3つの波面変調装置2R、2G及び2Bは3つの光源8R、8G及び8Bによって照明される。対応する波面変調装置2R、2G及び2Bによって個々の波面12R、12G及び12Bの変調が行われた後、これらの波面はビームスプリッタ・エレメント21によってレンズエレメント20へ投影され、共通の波面の再合成が図られる。唯一の光源、特に白色光源をカラー再構成用として使用することもさらに可能である。この配置構成では、ビームスプリッタ・エレメント21もレンズエレメント19と20の間に配置される。しかし、追加の半透過ミラーか、別の偏向エレメントがビームスプリッタ・エレメント21とレンズエレメント20との間に配置される。光源によって放射された光は半透過ミラーへ向けられ、そこから、光はビームスプリッタ・エレメント21によって3つの波面変調装置2R、2G、2B上へ投影され、これらの波面変調装置を照明し、次いで、対応する波面を変調する。ここでビームスプリッタ・エレメント21は、3つの単色波面12R、12G及び12Bに光を分割する。さらに、カラー再構成用として3つの波面変調装置の代わりに、唯一の波面変調装置を使用することも可能である。しかし、このオプションは本図には示されていない。上記波面変調装置は、異なる色の3つのLED又は1つの白色光LEDから構成される1つの光源によって照明することができる。さらに、例えば、波面変調装置上へ異なる入射角で波面を投影する音響光学エレメントなどの少なくとも1つの光学エレメントが必要となる。
【0042】
カラー再構成の代わりに、上述のように3つの波面変調装置2R、2G、2Bを用いて、少なくとも1つの波面変調装置の助けによって個々のカラーを順次再構成することも可能である。
【0043】
観察者の片方の目のみに関連して上述のホログラフィック投影装置1について説明した。観察者の両方の目に対して機能できるように第2の波面変調装置2を提供することは理にかなったことである。既存のホログラフィック投影装置1の光学エレメントをこのために利用することができる。観察者が観察者の平面16に位置していて、観察者用ウィンドウ15を通して観察する場合、観察者は再構成空間18に再構成された3次元シーンを観察することができる。そして、このシーンは、光の伝播方向から見てスクリーン11の正面に、スクリーン11上に又はスクリーン11の後に再構成されることになる。しかしながら、水平方向に配置された唯一の波面変調装置2を用いて、再構成シーンを観察者の両方の目に提供することも可能である。
【0044】
図5はホログラフィック投影装置1の別の実施形態を示す。装置1の一般的設計は図4aに図示のものと同一である。その理由は、同じ構成要素を同じ参照番号により識別するためである。ここに示される投影装置1は、観察者の平面16における観察者の目の位置の変化を検出するための位置検出システム22をさらに含むものである。位置検出システム22はカメラであってもよい。偏向手段23は、観察者の目の位置の変化に従って観察者用仮想ウィンドウ15を追跡するために、投影手段10とスクリーン11との間であって、好適には、投影手段10の画像側焦面に配置される。偏向手段23は個別に制御が可能であり、好適にはミラーであることが望ましい。観察者用ウィンドウ15の適当な追跡には非常に正確に作動する偏向手段が必要となる。これは偏向手段23が検流計スキャナである場合があるという理由に因る。MEMアレイ、圧電スキャナ又は同様の手段のような別の偏向手段を使用することも可能である。さらに、偏向手段23は、少なくとも1つの方向、すなわち水平方向と垂直方向との少なくともいずれかの方向に偏向を行うことができる。このことは、偏向手段23の一次元バージョンが、水平方向か、垂直方向かのいずれかの方向にのみ観察者用ウィンドウ15を追跡することを意味する。偏向手段23の2次元バージョンは水平方向と垂直方向の両方向に観察者用ウィンドウ15を追跡することができる。偏向手段23はXY型検流計スキャナであってもよい。あるいは2つの検流計スキャナを互いの後に配設して、一方を水平方向の追跡用として使用し、他方を垂直方向の追跡用として使用するようにしてもよい。さらに、第2の投影手段24は光の伝播方向から見て偏向手段23の後に設けられる。スクリーン11を充填するために必要とされる大きな倍率に起因して、第2の投影手段24は単一のレンズの代わりにレンズシステムであってもよい。これは収差の防止又は最小化を図る。
【0045】
次に、この実施形態の助けによって3次元シーンの再構成について説明する。光源8によって放射された波面Wはミラーエレメント3にヒットし、このミラーエレメント3は波面Wを変調し、次いで変調済み波面12を反射する。この反射の後、変調された波面12は、レンズエレメント19と20の中を通過し、これらのレンズエレメントは偏向エレメント13上へ波面12を投影する。同時に、レンズエレメント19によって、波面12のフーリエ変換FTがレンズエレメント19の画像側焦面に生成される。このフーリエ変換FTの生成後に、2次元の変調済み波面14が投影手段10により偏向手段23上へ投影される。位置検出システム22は、観察者のいずれの動きも検出し、偏向手段23を制御することによって観察者用ウィンドウ15を適宜追跡することができる。投影手段10と24は、第2の投影手段24の画像側焦面25に変調済み2次元波面14の画像を生成する。次いで、焦面25におけるこの2次元画像はスクリーン11を経由して観察者用仮想ウィンドウ15の中へ投影される。同時に、フーリエ変換FTの画像は投影手段10の画像側焦面26に生成される。次いで、第2の投影手段24はフーリエ変換FTの画像をスクリーン11上へ投影する。
【0046】
再言するが、観察者の両方の目に対して機能するように第2の波面変調装置2を提供することは理にかなったことである。観察者が観察者の平面16に位置していて、観察者用ウィンドウ15を通して観察する場合、観察者は再構成空間18に再構成された3次元シーンを観察することができる。そして、このシーンは、光の伝播方向から見てスクリーン11の正面に、スクリーン11上に又はスクリーン11の後に再構成されることになる。しかしながら、この場合でも、水平方向に配置された唯一の波面変調装置2を用いて、再構成シーンを観察者の両方の目に提供することも可能である。
【0047】
ビームスプリッタ・エレメント21を用いて上述のように3次元シーンをカラーで再構成することが可能となる。
【0048】
さらに、投影装置1の任意の好適な位置において、光源8を備えた照明装置7を配置することができる。例えば、本実施形態の場合のように波面変調装置2が反射タイプのものである場合、放射された波面Wが反射ミラー又は半透過ミラーのような偏向エレメントによって波面変調装置2上へ投影されるように照明装置7を構成することも可能である。光源8が、偏向エレメントが在るフーリエ平面の中へ投影されれば好適である。偏向エレメントと波面変調装置2との間にレンズ、ミラー等のような少なくとも1つの光学エレメントを設けるようにしてもよい。図5を参照してわかるように、ビームスプリッタ・エレメント21が以前使用されていたところにこのような偏向エレメントを配置することができる。ビームスプリッタ・エレメント21は、このような事例ではレンズエレメント19と偏向エレメントとの間か、あるいは、偏向エレメントとレンズエレメント20との間に配置することができる。このようにして、さらにコンパクトな設計を投影装置1に与えることが可能となる。
【0049】
図6はホログラフィック投影装置1の別の実施形態を示す図である。投影装置1の一般的設計は図5に図示のものと同一である。その理由は、同じ構成要素を同じ参照番号によって示すためである。しかし、図4a及び図5に示した装置とは対照的に、本図に示すホログラフィック投影装置1は複数の観察者によって用いられることを意図するものである。この図を理解できるようにするために、2人だけの観察者と観察者当たり1つだけの1次元波面とのための光路が本実施形態では示されている。しかし、一般に3以上の観察者が再構成された3次元シーンを観察することが可能である。文字Rによって示される観察者用ウィンドウは右眼用のウィンドウであり、文字Lによって示される観察者用ウィンドウは観察者の左眼用のウィンドウである。図示のホログラフィック投影装置1は、再構成された3次元シーンを提示するための2つの波面変調装置2を備える。これら2つの波面変調装置2の各々は、少なくとも1つの光源8を用いて少なくとも1つの照明装置7により照明される。光源8は互いに独立したものであり、異なる入射角を生じさせる。波面変調装置2当たりの光源8の数は、再構成シーンの観察者の数に依存し、再構成シーンの観察者の数によって決定される。3人以上の観察者が存在する場合には、ただ1つの波面変調装置2が使用される。すなわち、観察者の右眼用のすべての観察者用ウィンドウ用として、又は観察者の左眼用のすべての観察者用ウィンドウ用としてただ1つの波面変調装置2が使用されることになる。光源8は、異なる入射角で十分にコヒーレントな光を用いて波面変調装置2のミラーエレメント3を照明する。1人の観察者の両目用の観察者用ウィンドウ15Rと15Lに対する光源8の入射角は常にほとんど同一である。このことは、観察者用ウィンドウ15Lと28L用として変調される波面12Lと27Lを生成する光源8によって放射される光の入射角が異なることを意味する。両方の波面変調装置2用として、スクリーン11、偏向エレメント13、レンズエレメント19と20及び投影手段10と24を使用することができる。
【0050】
図5とは対照的に、それぞれの観察者の目の位置に従って、少なくとも2つの、本例では3つの観察者用ウィンドウ15R、15L及び28Lを追跡するために2つの偏向手段23が提供される。偏向手段23の数は観察者の数によって決められる。このことは、本例では観察者用ウィンドウ15R及び15Lに対して、観察者一人についてただ1つの偏向手段23が両眼用として使用されることを意味する。第2の投影手段24が集束エレメント30と組み合わされ、光の伝播方向から見て偏向手段23の後に配置される。ここで、第2の偏向手段24として、波面14Rと14Lの視準を目的とするレンチキュラがある。右眼と左眼用のこれら2つの波面14Rと14Lは、第1の偏向手段23に割り当てられている第2の偏向手段24のレンチキュールの中を通って伸びている。一旦2つの波面14Rと14Lが第2の投影手段24の対応するレンチキュールを通過すると、集束エレメント30は、スクリーン11上で波面14Rと14Lにオーバラップし、集束しようとする。別の偏向手段23が、2次元波面29L用の観察者用ウィンドウ28Lを追跡するために提供される。図示の第3の偏向手段23は、第3の観察者にサービスを提供するために使用される。一般に、4人以上の観察者が再構成された3次元シーンを観察することができる。第2の投影手段24のレンチキュールの数は投影装置1の偏向手段23の数と一致する。レンズのさらに複雑な配置構成によって集束エレメント30を置き換えて、収差の最小化を図るようにしてもよい。集束エレメント30は、例えば色収差のないレンズであってもよい。例えば、投影装置1における単一のレンチキュラとして、第2の投影手段24と集束エレメント30とを提供する可能性もまた存在する。
【0051】
本実施形態では、ホログラフィック投影装置1が複数の観察者にサービスを提供するように設計されている点を除いて、図5と関連して既述したように3次元シーンが再構成される。そのため観察者用ウィンドウ15R、15L及び28Lを追跡するための複数の偏向手段23が存在することになる。上述のホログラフィック投影装置1は3つの観察者用ウィンドウに同時にサービスを提供することを可能にするものである。
【0052】
異なる入射角で個々の波面変調装置2にヒットする十分にコヒーレントな光を放射する光源8を用いる代わりに、波面変調装置2当たりただ1つの光源8を使用することも可能である。この場合、波面の数は、波面変調装置2のミラーエレメント3による変調が行われた後で、かつ、該ミラーエレメント3からの反射が行われた後に増加する。この増加は、例えば格子(グリッド)エレメントの助けによって偏向エレメント13の近傍で行われる場合がある。この解決方法には、単一光源8によって放射され、次いで波面変調装置2にヒットする波面の位相欠陥を補正できるという利点がある。
【0053】
さらに、個々の光源8は、主光源(図示せず)からの少なくとも1つの光学エレメントにより生成することも可能である。
【0054】
図5及び図6に関して、ミラーの形を有し、かつ、好適には検流計スキャナであることが望ましい偏向手段23は光拡散層を有することができる。したがって、偏向手段23は水平方向に光拡散を行うミラーであってもよい。これらの光拡散層はフォイルの形を有するものであってもよい。拡散された光又は波面は変調された1次元波面へ90度の角度で伝播する必要がある。コヒーレンスがホログラフィック再構成にとって非常に重要であるという理由から、コヒーレンスは光拡散層の使用により影響を受けてはならない。しかしながら、非コヒーレント方向に観察者用ウィンドウ15、15R、15L、28Lの拡大を行うことが可能であり、その一方で、回折次数の拡張により観察者用ウィンドウ15、15R、15L、28Lはコヒーレント方向に制限を受けることになる。波面変調装置2が水平方向に配置されれば特に望ましい。このようにして、個々の観察者用ウィンドウ15、15R、15L、28Lを垂直方向、すなわち非コヒーレント方向に拡大することが可能となる。これは、波面変調装置2のこの配置構成において、観察者用ウィンドウ15、15R、15L、28Lを観察者の垂直方向の位置まで追跡する必要がもはやないという理由による。その理由として、観察者用ウィンドウ15、15R、15L、28Lが垂直方向に大きく拡張しているということが挙げられる。さらに、この場合、投影及び結像を行う役割を果たすだけでなく、非コヒーレント方向への波面のフーリエ変換の拡散を行う役割も果たすことになるスクリーン11上へ光拡散層を印加できるという可能性が存在する。
【0055】
図4a、図5及び図6に従う本発明の実施形態は、少なくとも1つの入射波面を変調するための少なくとも1つの1次元波面変調装置2に常に関する。このような1次元波面変調装置2が図7aの透視図に示されている。図からわかるように、ミラーエレメント3は一種の行又は列の形で基板5の上に配列される。アクチュエータはこの図には示されていない。
【0056】
図7bからわかるように、本発明は2次元波面変調装置2を用いて実現することができる。本発明によって2次元波面の生成を目的とする偏向エレメントが不要になる。ミラーエレメント3は複数の行又は列の形で基板5上に配列される。少なくとも1つのアクチュエータによって2次元波面変調装置2のミラーエレメント3を1つ又は2つの軸線の周りで軸方向に変位するか、チルトするかの少なくともいずれかを各ミラーエレメントについて個々に行うことができる。
【0057】
図8及び図9は、1次元波面変調装置2と共に偏向エレメント13の助けによって2人以上の観察者B1、B2のために、再構成された3次元シーンの部分画像の2次元波面を実現するとき、変調済み波面12の行又は列Sの時間的多重化が行われるいくつかの可能性について説明する図である。図8に示されているように、部分画像の2次元波面が、観察者B1のために、次いで、観察者B2のためにまず完全に生成される。図9に示されているように、個々の観察者B1とB2とに関連づけられた、部分画像の変調済み波面の行又は列が交互に提示される。
【0058】
ホログラフィック投影装置1の可能な応用例には、例えば、コンピュータディスプレイ、TVスクリーン、電子ゲームなどの私的な環境又は作業環境において、あるいは、情報を表示するための自動車関連産業において、娯楽産業において、医用工学において(特にこの分野では、体に最小限のメスを入れる外科手術への応用例として、又は断層撮影の確定情報の空間的表示用として)、さらに、軍事工学においては、表面形状の表示用として、2次元表示と3次元表示の少なくともいずれかが含まれる。当業者にとって投影装置1は上記で言及しなかった別の領域においても適用が可能であると考えられよう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】二乗機能をまとめてストリング化することによる、従来技術の光位相変調器の助けによって波面変調を示す表示グラフである。
【図2】波面変調に用いられる本発明によるホログラフィック投影装置の波面変調装置を示すブロック図である。
【図3】図2に示す波面変調装置による波面変調を示す図である。
【図4a】3次元シーンの再構成のための本発明によるホログラフィック投影装置の作動原理を示す(平面図)。
【図4b】図4aに示された投影装置の拡大詳細図を示す。
【図5】人間の目の位置の変化を検知するための位置検出システムを備えた新規の投影装置の別の実施形態を示す(平面図)。
【図6】再構成シーンの少なくとも2人の観察者のための新規の投影装置の別の実施形態を示す(平面図)。
【図7a】1次元波面変調装置の作動原理を示す。
【図7b】2次元波面変調装置の作動原理を示す。
【図8】1人以上の観察者のためにシーンを再構成する可能性を示す。
【図9】1以上の観察者のためにシーンを再構成する別の可能性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成シーン用の再構成空間(18)を拡大するために、ミラーエレメント(3)のアレイを有する少なくとも1つの波面変調装置(2、2R、2G、2B)を備えたミラーエレメントのマトリクスを有するホログラフィック投影装置であって、
前記ミラーエレメント(3)は各々少なくとも1つのアクチュエータ(4)を有し、
前記ミラーエレメント(3)は、位相シフトが行われるように、前記少なくとも1つのアクチュエータ(4)の助けによって少なくとも1つの方向にチルトすることができ、それによって波面(W)を直接変調して前記再構成シーンを表示し、
観察者の平面(16)にある少なくとも1つの観察者用仮想ウィンドウ(15、15R、15L、28L)の中へ前記波面(12、12R、12G、12B、12L)を投影する光学システム(9)をさらに備える
ことを特徴とするホログラフィック投影装置。
【請求項2】
前記波面変調装置(2、2R、2G、2B)の前記ミラーエレメント(3)はマイクロミラーである
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項3】
前記ミラーエレメント(3)は、光の位相を変調するために軸方向に変位することができる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項4】
前記ミラーエレメント(3)は、光の位相を変調するためにチルトすることができる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項5】
前記ミラーエレメント(3)は、予め定められた再構成空間(18)において前記シーンを再構成するためにチルトすることができる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項6】
前記光学システム(9)は、スクリーン(11)と少なくとも1つの投影手段(10、24)とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項7】
1次元波面変調装置(2、2R、2G、2B)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項8】
前記2次元波面(14)を生成するための、前記波面変調装置(2、2R、2G、2B)に対して90度の角度で光偏向を行う偏向エレメント(13)を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項9】
前記偏向エレメント(13)は、少なくとも1つの光源(8、8R、8G、8B)と前記波面変調装置(2、2R、2G、2B)との間に配置される
ことを特徴とする請求項8に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項10】
前記観察者の平面(16)における少なくとも1人の観察者の目の位置を検出するために位置検出システム(22)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項11】
前記目の位置に従って少なくとも1つの観察者用ウィンドウ(15、15R、15L、28L)を追跡する少なくとも1つの偏向手段(23)を備える
ことを特徴とする請求項10に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項12】
複数の観察者用の前記観察者用ウィンドウ(11、11R、11L、24R、24L、28R、28L)を前記観察者のそれぞれの前記目の位置に従って追跡するために、観察者ごとに1つの偏向手段(23)と、すべての偏向手段(23)に共通の1つの視準用レンチキュラ(24)と、共通の集束エレメント(30)とが光の伝播方向に見て連続的に配置される
ことを特徴とする請求項11に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項13】
前記偏向手段(23)はミラーである
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項14】
前記シーンをカラー再構成するために、ビームスプリッタ・エレメント(21)が光の伝播方向に見て前記投影手段(10、24)の正面に配置される
ことを特徴とする請求項6に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項15】
前記スクリーン(11)はミラー、特に凹面ミラーである
ことを特徴とする請求項6に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項16】
収差を減少させることを目的とする光路においてレンズエレメント(19、20)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック投影装置。
【請求項17】
再構成シーンを観察するための再構成空間を拡大する方法であって、
少なくとも1つの光源が十分にコヒーレントな光を放射し、
前記十分にコヒーレントな光はスクリーン(11)上へ投影され、
少なくとも1つの波面変調装置(2、2R、2G、2B)の少なくとも1つのミラーエレメント(3)が少なくとも1つのアクチュエータ(4)によって動かされて、入射光を変調するために位相シフトを実行するようにし、その結果、前記再構成シーンに従って前記光源(8、8R、8G、8B)から発信する波面(W)を直接変調し、次いで、観察者の平面(16)にある観察者用仮想ウィンドウ(15、15R、15L、28L)の中へ前記波面(W)を投影する
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ミラーエレメント(3)は前記光の前記位相を変調するためにチルトされる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
光の位相を変調するために前記ミラーエレメント(3)は軸方向に変位される
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ミラーエレメント(3)がチルトされると、前記十分にコヒーレントな光の前記波面(W)は局所的に導かれる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ミラーエレメント(3)がチルトされると、前記シーンはゼロ番目の回折次数で再構成される
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
光学システム(9)が前記変調済み波面(12、12R、12L、27L)を前記観察者用仮想ウィンドウ(15、15R、15L、28L)の中へ投影し、
前記光学システム(9)の少なくとも1つの投影手段(10、24)が前記変調済み波面(12、12R、12L、27L)のフーリエ変換をスクリーン(11)上の該波面の画像側焦面(17)の中へ投影する
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
位置検出システム(22)が前記再構成シーンを観察する少なくとも1人の観察者の目の位置を検出する
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記観察者用仮想ウィンドウ(15、15R、15L、28L)は、前記観察者の目の前記検出された位置に従って追跡される
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの偏向手段(23)が、前記観察者の平面(16)における前記観察者用仮想ウィンドウ(15、15R、15L、28L)を追跡する
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
2人以上の観察者のために、ただ1つの波面変調装置(2、2R、2G、2B)が前記観察者のすべての左眼用として用いられ、そして、前記観察者のすべての右眼用として1つの波面変調装置が用いられ、複数の光源(8)が、光を異なる入射角で前記ミラーエレメント(3)へ向ける
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項27】
偏向エレメント(13)が、1次元波面変調装置(2、2R、2G、2B)により変調される1次元波面(12、12R、12L、27L)から2次元波面(14、14R、14L、29L)を生成する
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記シーンのカラー再構成は、ビームスプリッタ・エレメント(21)の助けによって3原色に対して同時に行われる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記シーンの前記同時のカラー再構成は3つの波面変調装置(2R、2G、2B)の助けによって達成され、前記ビームスプリッタ・エレメント(21)は、前記3つの波面変調装置(2R、2G、2B)により変調される3つの個々の波面(12R、12G、12B)を再合成する
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記シーンのカラー再構成は、前記3原色に対して順次行われる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記シーンの前記順次のカラー再構成は、少なくとも1つの波面変調装置(2)の助けによって達成される
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−524096(P2009−524096A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550877(P2008−550877)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001478
【国際公開番号】WO2007/099458
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】