説明

再生ポリスチレンの造粒装置

【課題】使用済発泡ポリスチレン樹脂製品を原料樹脂として再利用するために、使用済製品を押出機で溶融押出後、チップ化して造粒する際に、使用済製品の発生量のばらつきや異物の混入などによる溶融樹脂の押出量のばらつきがあっても、効率よく、安定してチップ化できる造粒装置の提供。
【解決手段】本発明の造粒装置は、使用済ポリスチレン製品を溶融押出する押出機のダイ8の下方に設置され、圧着ロール9と溝ロール10とからなる、多数の突起条を有する樹脂シートの成形用ロールと、該成形用ロールの下方にスクリューの始端11bが設置され、スクリュー羽根の外縁に切り込み11aを設けられた2軸噛合型スクリューからなる、前記樹脂シートの搬送及び粗粉砕用スクリュー11と、該スクリューの末端11cの下方に設置され、該スクリューにより搬送及び粗扮された前記樹脂シートの粗粉砕片を細粉砕する粉砕機18とからなる再生ポリスチレンの造粒装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発泡ポリスチレンなどのポリスチレン製品を使用済み後、原料樹脂として再利用するために、使用済製品を破砕し、押出機で溶融押出し後、造粒してチップ化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農水産物の包装容器や家電製品の梱包材など、包装材料や断熱材料として大量に使用されている発泡ポリスチレンなどのポリスチレン製品の使用済後の再生は、使用済製品を溶剤に溶解させたり、破砕後熱溶融したりして、容積を減少させた後、造粒してチップ化し再利用に供されている。熱溶融による方法は、溶剤を使用することがないため使用済発泡ポリスチレン製品の再生に通常用いられている。この方法は、使用済製品を破砕後、押出機にて加熱溶融して、ストランド状ないしはシート状に押出し、冷却後カッターで切断してチップ化し、再利用に供するものである。このような熱可塑性樹種の一般的な造粒方法にて使用済ポリスチレン製品をチップ化する場合、使用済製品には水分や夾雑物などの混入も多く、押出機のスクリーンの目詰まりなどを引き起こし押出量も安定せず、押出したストランドやシートが途切れることが多く、安定した運転が困難であった。
【0003】
また、卸売市場やスーパーマーケットなどの使用済発泡ポリスチレン製品の発生現場に設置して、使用済製品を再生利用可能な原料樹脂とする装置も望まれている。しかしこのような発生現場では、使用済製品の発生量に時間的なばらつきがあったり、水分や異物の夾雑物などが混入したりすることが多い。そのため、発生現場で使用される装置の押出機から押出される溶融樹脂は、必ずしも連続的には押出されてこない。そのため、発生現場に設置する装置では、このような状態でも安定して造粒できる装置が必要とされている。
【0004】
一方、押出機のT―ダイの下方に、冷却水槽中にその下部を潜入させた成形ロールを設置し、この成形ロールで押出された溶融樹脂を、多数条の突起部を持つシートに成形し、次いでこのシートを、成形ロールの下面に接して移動する案内ベルトで粉砕装置に搬送して、カッターでカットしチップ化する造粒方法も提案されている(特許文献1を参照)。この方法は、押出しむらなどにより押し出しと引取りとのバランスが崩れて、成形樹脂シートが途切れても、押出成形樹脂を案内ベルトで搬送することができ、工程のストップは避けられる。しかし、この方法では成形シートを受刃と回転刃との組み合わせによる粉砕機のみで成形樹脂を粉砕しているので、粉砕効率も悪く、成形樹脂のチップ化は十分ではない。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−182403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、使用済発泡ポリスチレンなどのポリスチレン製品を原料樹脂として再利用するために、使用済製品を押出機で溶融押出後、チップ化して造粒する際に、使用済製品の発生量のばらつきや異物の混入などによる溶融樹脂の押出量のばらつきがあっても、効率よく、安定してチップ化できる造粒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明で提案する造粒装置は、使用済ポリスチレン製品を溶融押出する押出機のダイの下方に設置され、圧着ロールと溝ロールとからなる、多数の突起条を有する樹脂シートの成形用ロールと、スクリューの始端は該成形用ロールの下方に設置され、スクリュー羽根の外縁には凹設された切込部もしくは突設された突起部が設けられた2軸噛合型スクリューからなる、前記樹脂シートの搬送及び粗粉砕用スクリューと、該スクリューの末端の下方に設置され、該スクリューにより搬送及び粗扮された前記樹脂シートの粗粉砕片を細粉砕する粉砕機とからなる再生ポリスチレンの造粒装置である。
【0008】
さらに上記造粒装置において、成形用ロールの下方に冷却水槽が設置され、搬送及び粗粉砕用スクリューの始端は該冷却水槽の冷却水中に設置され、該スクリューの末端は冷却水面から突出するように設置されていることを特徴とする再生ポリスチレンの造粒装置も提案する。
【0009】
そしてこの冷却水槽を設けた造粒装置において、搬送及び粗粉砕用スクリューが冷却水面から突出している位置から該スクリューの末端までの間に、前記樹脂シートの粗粉砕片を乾燥する乾燥機を設けたことを特徴とする再生ポリスチレン樹脂の造粒装置も提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置では、押出機のダイより溶融押出された使用済ポリスチレン製品の溶融樹脂を、成形用ロールにより多数の突起条を有する樹脂シートに成形し、この樹脂シートを2軸噛合型スクリューにより粗粉砕しながら、粗粉砕片を細粉砕する粉砕機まで搬送を行う。そのため、使用済製品の発生量のばらつきや異物の混入などによる溶融樹脂の押出量にばらつきがあったり、さらには押出樹脂が途切れたりして、押出された樹脂シートが切断することがあっても、安定して樹脂シートやその粗粉砕片を搬送することができ、工程がストップすることなく安定して樹脂の造粒ができる。
【0011】
そして、使用済ポリスチレン製品の溶融樹脂を成形用ロールにより成形した樹脂シートは、多数の突起条を有しているため、2軸噛合型スクリューにより搬送中に容易に粗粉砕され粗粉砕片とすることができる。そして、このように樹脂シートが予め粗粉砕片とされているために、粉砕機による細粉砕も容易かつ確実にできる。そのため、本発明の装置では、使用済ポリスチレン製品を、再生使用に適した樹脂チップサイズに造粒することが容易にかつ確実にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の構成を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、使用済ポリスチレン製品を破砕したのち、破砕製品を溶融し押出する押出機と本発明の造粒装置を示し、図2は造粒装置の詳細説明図である。図1において、発泡ポリスチレン製の使用済ポリスチレン製品は、製品破砕装置2に投入され破砕される。破砕装置は一般に用いられている回転刃などによる破砕装置である。ホッパー3に集められた破砕されたポリスチレン製品片はスクリューフィーダー4により、押出機5のシリンダー内に供給され、シリンダー内で溶融され、押出スクリュー6によりシリンダー内から、スクリーン7を経由して、ダイ8から溶融樹脂として押出される。押出された溶融樹脂は、ダイ8の下方に設置された造粒装置1の圧着ロール9と溝ロール10から構成される成形用ロールに供給される。
【0014】
図1及び図2に示すように、造粒装置1は、ダイ8の下方に設置された造粒装置1の圧着ロール9と溝ロール10から構成される成形用ロールと、2軸噛合型スクリューからなる搬送及び粗粉砕用スクリュー11と、粉砕機18とから構成されている。ダイ8から押出された溶融樹脂は、圧着ロール9と溝ロール10により、多数の突起条を有する樹脂シートに成形される。図3には溝ロール10の直径断面図を示し、ロールの円周面には円周方向と平行に溝10aが設けられている。搬送及び粗粉砕用スクリュー11による粗粉砕を効率よく行うためには、溝10aの幅は1〜10mm、深さは0.5〜5mmの範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は幅2〜7mm、深さ1〜4mmである。この溝ロール10と圧着ロール9とで溶融樹脂を挟み込み、多数の突起条を有する樹脂シートに成形して、下方に排出する。この際、樹脂シートは溝10aに対応して、多数の突起条を有する樹脂シートに成形される。また、図2に示すように、溝ロール10にはドクターブレード22がロール表面に圧設して設置されている。このドクターブレード22は、樹脂シートとして下方に排出されずに、溝ロール10の表面に付着して残った樹脂を掻き落とすためのものである。ロールの清掃などに際してはハンドル23を操作して、圧着ロール9を溝ロール10から切り離すこともできる。
【0015】
成形用ロールにて成形された多数の突起条を有する樹脂シートは、成形用ロールの下方にその始端11bが設置された搬送及び粗粉砕用スクリュー11に供給される。搬送及び粗粉砕用スクリュー11を構成する2軸噛合型スクリューは、スクリュー羽根の外縁に凹設された切込部もしくは突設された突起部が設けられており、成形用ロールから供給された多数の突起条を有する樹脂シートを容易に取り込み、樹脂シートを搬送しつつ、粗粉砕し、粗粉砕片とすることができる。
【0016】
図2において、下部の図は本発明の造粒装置1の正面説明図と左方からの断面説明図を示し、中間の図は搬送及び粗粉砕用スクリュー11の2軸噛合型スクリューを示し、上部の図はスクリュー11を収納するスクリュー収納槽12の上面外観図と右方からの断面説明図を示している。搬送及び粗粉砕用スクリュー11はスクリュー収納槽12の内部に収納され、搬送及び粗粉砕用スクリュー11の始端11bを圧着ロール9と溝ロール10とからなる成形用ロールの下方に配置し、搬送及び粗粉砕用スクリュー11の末端11cを上方に向け斜めに設置してある。スクリュー収納槽12は冷却水13を収納でき、冷却水槽としての機能も持っている。この場合、図には示していないが、スクリュー収納槽12には注水口と排水口を設け、冷却水を随時供給循環させて冷却水槽としての機能を持たせている。搬送及び粗粉砕用スクリュー11は斜めに設置されており、始端11bは冷却水13の水中となっているが、途中から冷却水面13aから突出し、末端11cは冷却水面13aより突出するように設置されている。
【0017】
搬送及び粗粉砕用スクリュー11を構成する2軸噛合型スクリューの羽根の外縁には凹設された切込部もしくは突設された突起部が設けられている。図2の断面説明図には切込部11aを設けた搬送及び粗粉砕用スクリュー11を示した。この切込部もしくは突起部は、成形ロールから供給された樹脂シートをスクリュー間に取り込むのに必要となる。このような切込部や突起部がないと、成形ロールから供給された樹脂シートをスクリューの間に取り込むことができないため、樹脂シートはスクリューの上を滑りながら単純に搬送され、搬送中の粗粉砕がされない。この切込部もしくは突起部は、各軸のスクリューの1〜7ピッチごとに、好ましくは1〜3ピッチごとにそれぞれ一ヶ所設けることが望ましい。また、切込部を設ける場合はとくに考慮する必要がないが、突起部を設ける場合には、突起部はスクリューの羽根の外縁より外側に突設されるため2軸噛合型スクリューの噛み合いの程度を調整して、突起部がそれぞれ相手のスクリューの羽根や中心軸とぶつからない範囲で設置する必要がある。
【0018】
以上のように、本発明の装置では圧着ロール9と溝ロール10とからなる成形用ロールにて、溶融樹脂を多数の突起条を有する樹脂シートに成形し、ついで切込部もしくは突起部が設けられた搬送及び粗粉砕用スクリュー11にて、搬送しながら粗粉砕される。ここで、成形ロールから供給される樹脂シートは多数の突起条有しており、搬送及び粗粉砕用スクリュー11にて十分に粗粉砕されるが、溝ロール10を用いることなく、平面ロールのみで成形した単純な平面シートは搬送及び粗粉砕用スクリュー11では十分に粗粉砕されない。
【0019】
図1及び図2で示した実施例では、成形ロールの下方には冷却水槽を設け、冷却水13を収納している。冷却水層は必須ではないが、成形ロールで成形された樹脂シートを急速に冷却し、搬送及び粗粉砕用スクリュー11にて効率よく粗粉砕するにはあったほうが好ましい。冷却水槽を設けた場合には、図2に示すように搬送及び粗粉砕用スクリュー11は斜めに設置されており、始端11bは冷却水13の水中となっているが、途中から冷却水面13aから突出し、末端11cは冷却水面13aより突出するように設置される。この場合には、搬送及び粗粉砕用スクリュー11が水面13aより突出し、冷却水のなくなる部分より後部のスクリュー収納槽12には、乾燥ブロアー15を設置した乾燥機14が設けられている。スクリュー収納槽12の底部の乾燥機が設けられている部分はメッシュ状のスクリーン12bとなっており、乾燥ブロアー15からの乾燥用エアーが、スクリーン12bを通過して、搬送及び粗粉砕用スクリュー11にて搬送及び粗粉砕された粗粉砕片に吹き付けられ、粗粉砕片は乾燥される。
【0020】
乾燥機14にて乾燥された粗粉砕片は搬送及び粗粉砕用スクリュー11の末端11cを経由して、細粉砕機18に供給される。ここで、樹脂シートは粗粉砕片とされているために、回転刃19を備えた細粉砕機18により容易に細粉砕でき、再生使用に適した樹脂チップサイズとすることができる。ここで細粉砕され、造粒された樹脂チップは樹脂チップ取り出し口20よりエアー搬送ブロアー21にて、図示していない樹脂チップ貯蔵サイロやコンテナーなどに送り込まれる。この場合に、必要によっては篩分機などにより篩い分けし、再生使用目的に応じて粒度を調整した再生品とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の造粒装置は、発泡ポリスチレン樹脂などの使用済ポリスチレン製品に好ましく適用されるものであるが、他の包材用プラスチックにも適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】使用済製品の溶融押出する押出機と本発明の造粒装置の説明図である。
【図2】本発明の造粒装置の詳細説明図である。
【図3】成形用ロールを構成する溝ロールの説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 造粒装置
2 製品破砕装置
3 ホッパー
4 スクリューフィーダー
5 押出機
6 押出しスクリュー
7 スクリーン
8 ダイ
9 圧着ロール
10 溝ロール
10a溝
10b芯棒取付孔
11 搬送及び粗粉砕用スクリュー
11a スクリュー羽根の切込部
11b スクリューの始端
11c スクリューの末端
12 スクリュー収納槽
12a スクリュー収納槽の蓋部
12b スクリュー収納槽のメッシュ状のスクリーン
13 冷却水
13a 冷却水面
14 乾燥機
15 乾燥ブロアー
16 スクリュー駆動モーター
17 溝ロール駆動モーター
18 細粉砕機
19 回転刃
20 樹脂チップ取り出し口
21 エアー搬送ブロアー
22 ドクターブレード
23 ハンドル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のダイの下方に設置され、圧着ロールと溝ロールとからなる、多数の突起条を有する樹脂シートの成形用ロールと、スクリューの始端は該成形用ロールの下方に設置され、スクリュー羽根の外縁には凹設された切込部もしくは突設された突起部が設けられた2軸噛合型スクリューからなる、前記樹脂シートの搬送及び粗粉砕用スクリューと、該スクリューの末端の下方に設置され、該スクリューにより搬送及び粗扮された前記樹脂シートの粗粉砕片を細粉砕する粉砕機とからなる再生ポリスチレンの造粒装置。
【請求項2】
請求項1に記載の造粒装置において、成形用ロールの下方に冷却水槽が設置され、搬送及び粗粉砕用スクリューの始端は該冷却水槽の冷却水中に設置され、該スクリューの末端は冷却水面から突出するように設置されていることを特徴とする再生ポリスチレンの造粒装置。
【請求項3】
請求項2に記載の造粒装置において、搬送及び粗粉砕用スクリューが冷却水面から突出している位置から該スクリューの末端までの間に、前記樹脂シートの粗粉砕片を乾燥する乾燥機を設けたことを特徴とする再生ポリスチレン樹脂の造粒装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−12681(P2010−12681A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174380(P2008−174380)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(391019669)株式会社名濃 (2)
【Fターム(参考)】