説明

再生装置、光路長サーボ制御方法

【課題】バルク記録方式が採用される場合において、それぞれ異なるサイズによる記録マークの再生信号振幅差を縮小/拡大できるようにすることで、マークサイズ変動に伴う再生性能の悪化の抑制を図ったり、或いはマークサイズ変調による多値記録を行う場合における多値再生性能の向上を図る。
【解決手段】信号再生方式としてホモダイン方式を採用し、当該ホモダイン方式で行われる光路長サーボのサーボループに対して、記録マークサイズ差に起因して生じる再生信号の振幅差を縮小又は拡大させるオフセットを与える。光路長サーボループに対して任意のオフセットを付与するものとすれば、ホモダイン測定軸を任意の角度傾けることができる。このため、上記のようなオフセット付与を行うことで記録マークのサイズ差に起因した再生信号振幅の差を縮小化、又は拡大化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるホモダイン検波による信号再生を行う再生装置と、その光路長サーボ制御方法とに関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】特開2008−243273号公報
【特許文献4】特開2008−269680号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0005】
ここで、バルク記録とは、例えば図16に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体100)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0006】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
このマイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0007】
マイクロホログラム方式は、大別して、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式との2つに分かれる。
ポジ型マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0008】
また、ネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。このネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行うことになる。具体的にこの初期化処理としては、平行光による光束を対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成する。
そして、このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、消去マークの形成による情報記録を行う。すなわち、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0009】
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば特許文献2に開示されるようなボイド(空孔、空包)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空孔(ボイド)を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
【0010】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、特許文献2には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
【0011】
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク記録型(単にバルク型とも称する)の光ディスク記録媒体であるが、このようなバルク型の光ディスク記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層102においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図20に示したバルク型記録媒体100の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
【0012】
このため実際において、バルク型記録媒体100に対しては、次の図17に示すような案内溝を有する基準となる反射面(基準面)を設けるようにされている。
具体的には、カバー層101の下面側に例えばピットやグルーブの形成による案内溝(位置案内子)がスパイラル状又は同心円状に形成され、そこに選択反射膜103が成膜される。そして、このように選択反射膜103が成膜されたカバー層102の下層側に対し、図中の中間層104としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層102が積層される。
ここで、上記のようなピットやグルーブ等による案内溝の形成により、例えば半径位置情報や回転角度情報などの絶対位置情報(アドレス情報)の記録が行われている。以下の説明では、このような案内溝が形成され絶対位置情報の記録が行われた面(この場合は上記選択反射膜103の形成面)のことを、「基準面Ref」と称する。
【0013】
また、上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体100に対しては、次の図21に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光とも称する)とは別途に、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)を照射するようにされる。
図示するようにこれら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体100に照射される。
【0014】
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層102に到達してしまうと、当該バルク層102内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、上記サーボ用レーザ光として、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとした上で、基準面Refに形成される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜103を設けるものとしている。
【0015】
以上の前提を踏まえた上で、図18を参照し、バルク型記録媒体100に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層102に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層102内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層102内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1は、案内溝が形成された選択反射膜103(基準面Ref)からフォーカス方向(深さ方向)に第1オフセットof-L1分だけ離間した位置として設定される。また、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5は、それぞれ基準面Refから第2オフセットof-L2分、第3オフセットof-L3分、第4オフセットof-L4分、第5オフセットof-L5分だけ離間した位置として設定される。
【0016】
マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層102内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
【0017】
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために基準面Refよりも下層側に形成されたバルク層102に到達させる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための録再光用フォーカス機構が設けられることになる。
【0018】
ここで、このような録再光用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構を含めた、バルク型記録媒体100の記録再生を行うための光学系の概要を図19に示しておく。
図19において、図18にも示した対物レンズは、図示するように2軸アクチュエータによりバルク型記録媒体100の半径方向(トラッキング方向)、及びバルク型記録媒体100に接離する方向(フォーカス方向)に変位可能とされている。
【0019】
この図19において、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構は、図中のフォーカス機構(エキスパンダ)が該当する。具体的に、このエキスパンダとしてのフォーカス機構は、固定レンズと、レンズ駆動部により録再用レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持された可動レンズとを備えて構成されており、上記レンズ駆動部により上記可動レンズが駆動されることで、図中の対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、それにより録再用レーザ光の合焦位置がサーボ用レーザ光とは独立して調整されるようになっている。
【0020】
また、上述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯が異なるものとされているので、これに対応しこの場合の光学系では、図中のダイクロイックプリズムにより、録再用レーザ光、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体100からの反射光がそれぞれの系に分離されるように(つまりそれぞれの反射光検出を独立して行えるように)している。
また、往路光で考えた場合、上記ダイクロイックプリズムは、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを同一軸上に合成して対物レンズに入射させる機能を有する。具体的にこの場合、録再用レーザ光は、図示するように上記エキスパンダを介しミラーで反射された後、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面で反射されて対物レンズに対して入射する。一方、サーボ用レーザ光は、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面を透過して対物レンズに対して入射する。
【0021】
図20は、バルク型記録媒体100の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体100について再生を行う際は、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(再生時については情報記録層Lとも称する)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行えばよい。
【0022】
上記のようにしてバルク記録方式においては、バルク型記録媒体100に対し、マーク記録/再生を行うための録再用レーザ光と位置制御用光としてのサーボ光とを共通の対物レンズを介して(同一光軸上に合成して)照射するようにした上で、記録時においては、サーボ用レーザ光が基準面Refの位置案内子に追従するように対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行い且つ、録再光用フォーカス機構により録再用レーザ光の合焦位置を別途調整することによって、バルク層102内に位置案内子が形成されていなくとも、バルク層102内の所要の位置(深さ方向及びトラッキング方向)に対してマーク記録ができるように図られている。
また、再生時には、既に記録されたマーク列に録再用レーザ光の焦点位置が追従するようにして当該録再用レーザ光の反射光に基づく対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行うことで、バルク層102内に記録されたマークの再生を行うことができる。
【0023】
ここで、上記により説明したようなバルク記録方式を採用する場合において、記録されたマークの反射率は、例えばBDなどの従来の光ディスクにおける記録層の反射率と比較すると非常に微少なものとなる。
そこで、バルク型記録媒体100の再生方式としては、いわゆるホモダイン方式(ホモダイン検波方式)を採用することが検討されている。
【0024】
周知のようにホモダイン方式は、検出対象とする光(信号光)に対し、参照光としてのコヒーレントな光(DC光)を干渉させた光を検波することで、信号増幅を図る技術である。
このホモダイン方式に対しては、いわゆる差動検出という手法が組み合わされる。具体的には、信号光に対し、それと同位相による参照光を干渉させた光と、逆位相による参照光を干渉させた光とをそれぞれ個別に受光し、それらの受光信号の差分をとることで、信号増幅とノイズの抑制の双方が図られるようにするというものである。
【0025】
このとき、ホモダイン方式は、光の干渉効果を利用したものであり、その実現のためには信号光と参照光の光路長を少なくとも可干渉距離内に収める必要性がある。このためホモダイン方式においては、信号光と参照光との光路長差を所定値で一定とするための光路長サーボを行うようにされている。
なお、このような光路長サーボに関しては、例えば上記特許文献3や特許文献4にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ここで、バルク記録方式を採用する場合として、特に空孔マークを記録するボイド記録方式を採用する場合においては、例えば記録用のレーザの特性等に起因して、記録マークサイズに変動が生じる虞がある。
先の説明からも理解されるように、バルク記録方式において、記録マークは反射体として機能するものとなるので、そのサイズが変動することによっては反射光量に差が生じてしまうことになる。そして、このようなマークサイズ差による反射光量差が生じることによって、本来は同レベルで検出されるべき再生信号振幅にも差が生じることとなり、これに起因して再生性能が悪化するという虞がある。
【0027】
また一方で、バルク記録方式においては、積極的にマークサイズを変えて多値記録を行うということも検討されている。
但し、このようなマークサイズ差による多値記録を行う場合としても、マークサイズのコントロールは困難であることが予想され、各値に対応するマーク間のサイズ差が不揃いとなって、それらの検出値の差を十分に確保することが困難となる虞がある。つまりその結果、多値の再生性能(各値の判別性能)の低下を招く虞がある。
この点を考慮すると、多値記録を行う際には、個々のサイズのマークについての再生信号振幅の差を強調できることが望ましいものとなる。
【0028】
本発明は上記のような問題点に鑑みなされたもので、バルク記録方式が採用される場合において、それぞれ異なるサイズによる記録マークの再生信号に関し、それらの振幅差を縮小/拡大できるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
かかる課題の解決を図るべく、本発明では、再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、光源より出射された光を分光して得た第1の光と第2の光について、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体の記録層に照射し、上記第2の光をミラーに対して照射すると共に、上記記録層から得られる上記第1の光の反射光を信号光、上記ミラーによる上記第2の光の反射光を参照光として、それら信号光及び参照光を用いたホモダイン検波を行うホモダイン検波部を備える。
また、上記ホモダイン検波部によるホモダイン検波の結果に基づき上記信号光に基づく再生信号を得る信号再生部を備える。
また、上記ミラーを当該ミラーへの上記第2の光の入射光軸に平行な方向に駆動する1軸アクチュエータを備える。
また、上記信号光と上記参照光とを受光する受光部による受光信号に基づき、上記信号光と上記参照光との光路長差を一定とするように上記1軸アクチュエータを駆動制御する光路長サーボ制御部を備える。
また、上記光路長サーボ制御部によるサーボ制御に伴い形成される光路長サーボループに対して、上記記録層に記録されたそれぞれ異なるサイズによる上記マークの上記再生信号の振幅差を縮小又は拡大させるオフセットを与えるオフセット付与部を備えるようにした。
【0030】
上記のように本発明では、信号再生方式としてホモダイン方式を採用するものとしている。その上で、ホモダイン方式で行われる光路長サーボのサーボループに対して、記録マークサイズ差に起因して生じる再生信号の振幅差を縮小又は拡大させるオフセットを与えるものとしている。
ここで、後述もするように、光路長サーボループに対して任意のオフセットを付与するものとすれば、ホモダイン測定軸を任意の角度傾けることができる。このため、上記のようなオフセット付与を行う本発明によれば、記録マークのサイズ差に起因した再生信号振幅の差を縮小化、又は拡大化することができる。
この結果、上記本発明によれば、例えばマークサイズのばらつき(マークサイズ変動)に起因する再生信号振幅差を縮小化して、マークサイズ変動に伴う再生性能の悪化の抑制を図ったり、或いはマークサイズ変調による多値記録を行う場合に対応して、各サイズのマーク間の再生信号振幅差を拡大して多値再生性能の向上を図るといったことができる。
【発明の効果】
【0031】
上記のように本発明によれば、マークサイズ差に起因する再生信号振幅差を縮小又は拡大することができる。
これにより、マークサイズ変動に伴う再生性能の悪化の抑制を図ったり、マークサイズ変調による多値記録を行う場合における再生性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態で再生対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
【図2】実施の形態の再生装置が備える主に光学系の構成について説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態としての再生装置全体の内部構成について説明するための図である。
【図4】光路長サーボの具体的な手法について説明するための図である。
【図5】直交位相空間での信号光の電界ベクトルについて説明するための図である。
【図6】ホモダイン方式による再生原理について説明するための図である。
【図7】記録マークサイズの変動の具体的な態様について説明するための図である。
【図8】記録マークサイズを変化させたときのマーク反射光の電界強度分布を直交位相空間において示した図である。
【図9】光路長サーボループに対するオフセット付与によってマークサイズ変動に伴うRF信号振幅の差の縮小化が図られる原理について説明するための図である。
【図10】マークサイズ変動として通常サイズマークよりも大となるサイズによるマークが形成されることも想定した場合におけるオフセット値の求め方について説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態としての再生装置全体の内部構成について説明するための図である。
【図12】多値記録の具体例について説明するための図である。
【図13】第2の実施の形態のオフセット付与について説明するための図である。
【図14】参照光ミラー系の構成についての変形例について説明するための図である。
【図15】オフセットを可変設定する変形例としての再生装置の構成について説明するための図である。
【図16】バルク記録方式について説明するための図である。
【図17】バルク型記録媒体の断面構造を示した図である。
【図18】バルク型記録媒体に対するマーク記録時の動作について説明するための図である。
【図19】バルク型記録媒体の記録再生を行うための光学系の概要について説明するための図である。
【図20】バルク型記録媒体の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

<1.第1の実施の形態>
[1-1.再生対象とする光記録媒体]
[1-2.再生装置の構成]
[1-3.光路長サーボの具体的手法について]
[1-4.光路長サーボと再生信号振幅との関係]
[1-5.マークサイズ変動による再生信号振幅の変動]
[1-6.オフセット付与]
<2.第2の実施の形態>
[2-1.再生装置の構成]
[2-2.オフセット付与]
<3.変形例>
【0034】
<1.第1の実施の形態>
[1-1.再生対象とする光記録媒体]

図1は、実施の形態において再生対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
実施の形態で再生対象とする光記録媒体は、先に説明したバルク型記録媒体100と同様のバルク型の光記録媒体となり、以下、バルク型記録媒体1と称する。
バルク型記録媒体1はディスク状の記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
【0035】
図示するようにバルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての再生装置側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
【0036】
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち再生装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0037】
バルク型記録媒体1において、上記カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として案内溝が形成されていることで、凹凸の断面形状が与えられている。
この場合、案内溝はピット列(断続溝)又はグルーブ(連続溝)で形成されており、且つ、そのディスク面内方向における形成形状がスパイラル状又は同心円状とされている。
ここで、カバー層2は、このような案内溝が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0038】
また、上記案内溝が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、上記のような案内溝などの位置案内子に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、当該バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0039】
上記選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、例えば先に説明したポジ型マイクロホログラム方式やネガ型マイクロホログラム方式、ボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
ボイド記録の場合、バルク層5は例えば樹脂で構成される。
【0040】
ここで、上記のような断面構造を有するバルク型記録媒体1において、位置案内子が形成された選択反射膜3は、後述もするようにサーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0041】
先の図18においても説明したように、バルク型の光記録媒体においては、バルク状の記録層内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置L)が設定される。バルク型記録媒体1においても、情報記録層位置Lについては、先の図18の場合と同様に、基準面Refからそれぞれ深さ方向に第1オフセットof-L1、第2オフセットof-L2、第3オフセットof-L3、第4オフセットof-L4、第5オフセットof-L5分だけ離間した第1情報記録層位置L、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5が設定されているとする。
基準面Refからの各層位置Lへのオフセットof-Lの情報は、予め再生装置側に設定される。
【0042】
なお、情報記録層位置Lの数は5に限定されるべきものではない。
【0043】
[1-2.再生装置の構成]

図2は、上記により説明したバルク型記録媒体1についてホモダイン方式による信号再生を行う第1の実施の形態としての再生装置が備える主に光学ピックアップOPの内部構成について説明するための図である。
なお図中において、バルク型記録媒体1とスピンドルモータ(SPM)50とを除いた部分が、光学ピックアップOPとなる。
【0044】
図2において、バルク型記録媒体1は、再生装置に装填されると図中のスピンドルモータ50によって回転駆動される。
光学ピックアップOPには、このように回転駆動されるバルク型記録媒体1についての再生を行うためのレーザ光(録再用レーザ光)を照射するための光学系と、ホモダイン検波の際に必要となる参照光を生成するための参照光光学系と、上記参照光とバルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光とを受光してホモダイン検波を行うためのホモダイン検波用光学系と、さらには、サーボ用レーザ光をバルク型記録媒体1に照射し且つ基準面Refからのサーボ用レーザ光の反射光を受光するための光学系と、光路長サーボを行うための光学系が設けられる。
【0045】
図1において、録作用レーザ10は、録再用レーザ光の光源となる。この場合、録再用レーザ10が出力する録再用レーザ光の波長は、405nm程度であるとする。これに対し、後述するサーボ用レーザ光の波長は、650nm程度であるとする。
【0046】
録再用レーザ10より出射された録再用レーザ光は、コリメーションレンズ11を介して平行光となるようにされた後、1/2波長板12を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)13に入射する。
【0047】
このとき、上記偏光ビームスプリッタ13は、例えばP偏光を透過しS偏光を反射するように構成されているとする。その上で、上記1/2波長板12の取り付け角度(レーザ光の入射面内において光軸を中心した回転角度)は、上記偏光ビームスプリッタ13を透過して出力される光(P偏光成分)と反射して出力される光(S偏光成分)との比率(すなわち偏光ビームスプリッタ13による分光比)が1:1となるように調整されているとする。
【0048】
偏光ビームスプリッタ13にて反射された録再用レーザ光は、[固定レンズ14、可動レンズ15、レンズ駆動部16]を備えて構成される録再光用独立フォーカス機構に入射する。
録再光用独立フォーカス機構において、固定レンズ14は光源である録再用レーザ10により近い側に配置され、可動レンズ15は上記光源に対しより遠い側に配置されている。可動レンズ15は、レンズ駆動部16により入射光軸に平行な方向に駆動され、これにより対物レンズ19に入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、該録再用レーザ光の合焦位置をサーボ用レーザ光とは独立して変化させることが可能とされている。
レンズ駆動部16は、後述するコントローラ66(図3)がオフセット値of-Lに基づき駆動制御する。
【0049】
上記録再光用独立フォーカス機構に形成された固定レンズ14→可動レンズ15を介した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム17に入射する。
ダイクロイックプリズム17は、バルク型記録媒体1に対して照射されるべき往路光としての録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを同一光軸上に合成し、且つバルク型記録媒体1のからの反射光(復路光)として得られる録再用レーザ光、サーボ用レーザ光の反射光を分離するために設けられる。
本例の場合、ダイクロイックプリズム17としては、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。このため、上述のように録再光用独立フォーカス機構を介して入射した録再用レーザ光は、当該ダイクロイックプリズム17を透過し、1/4波長板18→対物レンズ19を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
【0050】
対物レンズ19は、2軸アクチュエータ20によってフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)及びトラッキング方向(バルク型記録媒体1の半径方向に平行な方向:上記フォーカス方向とは直交関係となる方向)に変位可能に保持されている。
2軸アクチュエータ20にはフォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられており、これらフォーカスコイル、トラッキングコイルにそれぞれ後述するフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDが供給されることで、対物レンズ19を上記フォーカス方向、上記トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0051】
上記のように対物レンズ19を介してバルク型記録媒体1に対し録再用レーザ光が照射されることに応じては、バルク型記録媒体1(バルク層5に記録されたマーク)からの反射光が得られる。
このような録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ19→1/4波長板18を介した後、ダイクロイックプリズム17を透過して、録再光用独立フォーカス機構を介して偏光ビームスプリッタ13に戻されることになる。
ここで、以下、上記のようにバルク層5から得られた録再用レーザ光の反射光については、「信号光」と称する。
【0052】
このとき、偏光ビームスプリッタ13に入射する信号光(復路光)は、上記1/4波長板18による作用とバルク層5(マーク)での反射時の作用とにより、その偏光方向が、録再用レーザ10側から入射し該偏光ビームスプリッタ13にて反射された光(往路光とする)の偏光方向に対して90°異なったものとなっている。すなわち、上記信号光はP偏光で偏光ビームスプリッタ13に入射する。
このため、復路光としての上記信号光は、偏光ビームスプリッタ13を透過することになる。
【0053】
また、光学ピックアップOP内において、録再用レーザ10より出射され偏光ビームスプリッタ13を透過したレーザ光(P偏光)は、ホモダイン方式における参照光として機能する。
偏光ビームスプリッタ13を透過した参照光は、図中の1/4波長板21を介して、1軸アクチュエータ23により保持されたミラー22に入射する。
【0054】
1軸アクチュエータ23は、ミラー22を、当該ミラー22に入射する参照光の光軸に平行な方向に変位可能に保持しており、図中の駆動信号Ddsにより駆動される。
この1軸アクチュエータ23は、後述する光路長サーボを実現するために設けられたものとなる。
なお、1軸アクチュエータ23としては、例えばボイスコイルモータ等の電磁駆動方式によるものやピエゾ素子を用いたものなどを挙げることができる。
【0055】
ミラー22にて反射された参照光は、1/4波長板21を介して偏光ビームスプリッタ13に入射する。
ここで、このように偏光ビームスプリッタ13に入射する参照光(復路光)は、1/4波長板21による作用とミラー22での反射時の作用とにより、その偏光方向が、往路光としての参照光とは90°異なるものとされる(つまりS偏光となる)。従って、上記復路光としての参照光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射されることになる。
【0056】
図中では、このように偏光ビームスプリッタ13にて反射された参照光を破線矢印により示している。
また図中では、前述のように偏光ビームスプリッタ13を透過した信号光を実線矢印により示している。
【0057】
これら偏光ビームスプリッタ13から出力される信号光及び参照光は、ビームスプリッタ(無偏光ビームスプリッタ)24に入射し、該ビームスプリッタ24にてその一部が透過、一部が反射される。
【0058】
ここで、ビームスプリッタ24にて反射された信号光及び参照光は、図のように参照光除去部25に導かれ、参照光が除去されて信号光のみとされた後、当該信号光が集光レンズ26を介して位置制御用受光部27の受光面上に集光する。
これら参照光除去部25、集光レンズ26、位置制御用受光部27から成る光学系は、対物レンズ19のフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うためのフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpを生成するための受光系として設けられたものとなる。すなわち、再生時に対応して、録再用レーザ光の反射光に基づき対物レンズ19についてのフォーカス・トラッキングの各サーボを行うにあたってのエラー信号を得るための受光系となる。
【0059】
なお、フォーカスエラー信号FE-rpやトラッキングエラー信号TE-rpについては、バルク型記録媒体1に記録された情報信号についての再生信号(RF信号)と比較してその周波数帯域が非常に低いため、検出光量が小であってもSNR(信号対ノイズ比)の悪化が抑制される。このため本例では、上記の受光系によって、エラー信号の検出用に信号光のみを分離してこれを独立に検出するものとしている。
ここで、当該受光系において、参照光除去部25は、例えば偏光板や偏光ビームスプリッタ等で構成することができる。
また、図示されているように、位置制御用受光部27にて得られた受光信号については、受光信号D_psと表記する。
【0060】
ビームスプリッタ25を透過した信号光及び参照光は、ビームスプリッタ(無偏光ビームスプリッタ)28に入射し、該ビームスプリッタ28にてその一部が透過、一部が反射される。
ビームスプリッタ28を透過した信号光及び参照光は、1/2波長板29及び偏光ビームスプリッタ30と、集光レンズ31及び第1ホモダイン検波用受光部32と、集光レンズ33及び第2ホモダイン検波用受光部34とを備えて成るホモダイン検波用光学系に導かれる。
また、ビームスプリッタ28にて反射された信号光及び参照光は、1/4波長版35及び1/2波長板36及び偏光ビームスプリッタ37と、集光レンズ38及び第1光路長サーボ用受光部39と、集光レンズ40及び第2光路長サーボ用受光部41とを備えて成る光路長サーボ用受光系に導かれる。
【0061】
先ず、上記ホモダイン検波用光学系に関して、ビームスプリッタ28にて反射された信号光及び参照光は、1/2波長板29を介した後、偏光ビームスプリッタ30に入射する。該偏光ビームスプリッタ30は、先の偏光ビームスプリッタ13と同様にP偏光を透過しS偏光を反射するように構成されている。
図のように偏光ビームスプリッタ30を透過した光は、集光レンズ31を介して第1ホモダイン検波用受光部32の受光面上に集光し、また偏光ビームスプリッタ30にて反射された光は、集光レンズ33を介して第2ホモダイン検波用受光部34の受光面上に集光する。
【0062】
ここで、先に説明したように偏光ビームスプリッタ13を透過した信号光(P偏光)と偏光ビームスプリッタ13にて反射された参照光(S偏光)は、その偏光方向が互いに直交する関係となっており、この時点では光の干渉は生じない。
【0063】
ホモダイン検波用光学系において、1/2波長板29は、ビームスプリッタ28側より入射する信号光と参照光の偏光方向を、光の進行方向に対し時計回りに45°回転させるようにその取り付け角度(回転角度)が調整されている。
またホモダイン検波用光学系において、偏光ビームスプリッタ30によっては、その透過光と反射光とによって、信号光・参照光の双方が、それぞれ偏光方向の直交する光に分光されることになる。
【0064】
このとき、偏光ビームスプリッタ30を透過した信号光・参照光は、共にP偏光であり、従ってこれらの光は同位相の光として集光レンズ30を介して第1ホモダイン検波用受光部31に集光される。つまりこの結果、第1ホモダイン検波用受光部31側では、信号光に対し、該信号光と同位相の参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
図示するように、当該第1ホモダイン検波用受光部31による受光信号については、受光信号D_hm1と表記する。
【0065】
一方、偏光ビームスプリッタ30にて反射された信号光・参照光については、上述のように1/2波長板29によりそれらの光の偏光方向が時計回りに45°回転されることと、該偏光ビームスプリッタ30の分光面上での反射時の作用とにより、参照光の位相が、信号光の位相に対して180°(π)異なるようにされる。
このことで、第2ホモダイン検波用受光部34側では、信号光に対して、該信号光とは逆位相となる参照光が合成された(干渉した)光が受光されることになる。
当該第2ホモダイン検波用受光部34による受光信号については、受光信号D_hm2と表記する。
【0066】
また、上述のように、ビームスプリッタ28にて反射された信号光及び参照光は、光路長サーボ用受光系に導かれる。
光路長サーボ用受光系において、ビームスプリッタ28にて反射された信号光及び参照光は、1/4波長板35及び1/2波長板36を介した後、偏光ビームスプリッタ37に入射する。この偏光ビームスプリッタ37としても、先の偏光ビームスプリッタ13,30と同様にP偏光を透過しS偏光を反射するように構成されている。
図のように偏光ビームスプリッタ37を透過した光は、集光レンズ38を介して第1光路長サーボ用受光部38の受光面上に集光し、また偏光ビームスプリッタ37にて反射された光は、集光レンズ40を介して第2光路長サーボ用受光部41の受光面上に集光する。
【0067】
ここで、このような光路長サーボ用受光系の構成と先のホモダイン検波用光学系の構成とを比較すると、光路長サーボ用受光系は、ホモダイン検波用光学系の構成に対して1/4波長板35を追加したものとなっていることが分かる。この1/4波長板35は信号光(P偏光)と参照光(S偏光)の偏光方向は変えずに、参照光又は信号光の位相を90°遅らせるように調整されている。なお、1/2波長板36としても、先の1/2波長板29と同様に、ビームスプリッタ28側より入射する信号光と参照光の偏光方向を光の進行方向に対し時計回りに45°回転させるように調整されている。
このような1/4波長板35の追加によって、第1光路長サーボ用受光部39が受光する信号光及び参照光の合成光は、先の第1ホモダイン検波用受光部32が受光する同合成光に対して位相が90°ずれたものとなり、同様に、第2光路長サーボ用受光部41が受光する信号光及び参照光の合成光は、先の第2ホモダイン検波用受光部34が受光する同合成光に対して位相が90°ずれたものとなる。
換言すれば、第1ホモダイン検波用受光部32が「位相0°の信号光」と「位相0°の参照光」との合成光を受光し、第2ホモダイン検波用受光部34が「位相0°の信号光」と「位相180°の参照光」との合成光を受光するものであると表現すると、上記第1光路長サーボ用受光部39は「位相90°の信号光」と「位相90°の参照光」との合成光を受光し、上記第2光路長サーボ用受光部41は「位相90°の信号光」と「位相270°の参照光」との合成光を受光するものである。
【0068】
図示するように、第1光路長サーボ用受光部39による受光信号については受光信号D_ds1と、また第2光路長サーボ用受光部41による受光信号については受光信号D_ds2とそれぞれ表記する。
【0069】
また、光学ピックアップOP内には、図中のサーボ用レーザ42を光源とするサーボ光用光学系が設けられる。
サーボ光用光学系において、サーボ用レーザ42より出射されたサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ43を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ44に入射する。偏光ビームスプリッタ44は、このようにサーボ用レーザ42側から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0070】
偏光ビームスプリッタ44を透過したサーボ用レーザ光は、図のようにダイクロイックプリズム17に入射する。前述のようにダイクロイックプリズム17は録再用レーザ光と同波長帯の光は透過しそれ以外の波長による光は反射するように構成されているので、上記サーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム17にて反射される。この結果サーボ用レーザ光は、図のように録再用レーザ光と同軸上に合成され、1/4波長板18→対物レンズ19を介してバルク型記録媒体1に照射される。
【0071】
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ19→1/4波長板18を介し、ダイクロイックプリズム17にて反射された後、偏光ビームスプリッタ44に入射する。
このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板18の作用と基準面Refでの反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90°異なるものとされ、従って復路光としての上記反射光は偏光ビームスプリッタ44にて反射される。
【0072】
偏光ビームスプリッタ44にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ45を介してサーボ光用受光部46の受光面上に集光する。
ここで、サーボ光用受光部46により得られる受光信号については、受光信号D_svと表記する。
【0073】
図3は、第1の実施の形態の再生装置全体の内部構成について説明するための図である。
なお図3において、光学ピックアップOPについては、録再用レーザ10、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ20、及び1軸アクチュエータ23のみを抽出して示している。
またこの図では、スピンドルモータ50の図示は省略している。
【0074】
図示するように光学ピックアップOPの外部には、録再用レーザ10を発光駆動してバルク層5へのマーク記録(情報記録)を行うための記録処理部51が設けられる。
また、図2に示した第1ホモダイン検波用受光部32による受光信号D_hm1と第2ホモダイン検波用受光部34による受光信号D_hm2とに基づき再生データを得るための構成として、第1信号生成回路41、第2信号生成回路42、減算部43、及び再生処理部44が設けられる。
また、位置制御用受光部27による受光信号D_psに基づき2軸アクチュエータ20(対物レンズ19)についてのサーボ制御(再生時におけるサーボ制御)を行うための構成として、エラー信号生成回路56、録再光用サーボ回路57が設けられる。
また、サーボ光用受光部46による受光信号D_svに基づき2軸アクチュエータ20についてのサーボ制御(記録時におけるサーボ制御)を行うための構成として、エラー信号生成回路58、録再光用サーボ回路59が設けられる。
さらに、第1光路長サーボ用受光部39による受光信号D_ds1と第2光路長サーボ用受光部41による受光信号D_ds2とに基づいて光路長サーボを行うための構成として、第1信号生成回路60、第2信号生成回路61、減算部62、ローパスフィルタ(LPF)63、加算部64、光路長サーボ回路65が設けられている。
なお、当該光路長サーボ系の構成については、後に改めて説明する。
【0075】
先ず、記録処理部51には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(図中、記録データ)が入力される。
記録処理部51は、入力された記録データについて例えばエラー訂正符号の付加処理や所定の記録変調方式に従った記録変調符号化処理などの必要な変調処理を施して、バルク型記録媒体1に記録される例えば「0」「1」の2値データ列による符号列を得る。そして、このように記録データに基づいて得られた符号列に基づく記録パルス信号Rcpを生成し、当該記録パルス信号Rcpに基づき録再用レーザ1を発光駆動する。
これによってバルク型記録媒体1に対する情報記録が行われる。
なお確認のため述べておくと、この場合のボイド記録方式では、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などで採用されるマークエッジ記録ではなく、マークポジション記録(マークがあるべき位置におけるマークの記録有無により符号を表現する記録方式)を採用するものとなる。
【0076】
第1信号生成回路52は、受光信号D_hm1を入力しI−V変換を行って、信号光に対して同位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
また、第2信号生成回路53は、受光信号D_hm2を入力しI−V変換を行って、信号光に対して逆位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
【0077】
第1信号生成回路52、第2信号生成回路53により得られたそれぞれの再生信号は、減算部54に供給される。
減算部54は、第1信号生成回路52より供給される再生信号から、第2信号生成回路53より供給される再生信号を減算する。換言すれば、当該減算部54は、「信号光に同位相の参照光が干渉した光についての再生信号」−「信号光に逆位相の参照光が干渉した光についての再生信号」による演算を行うものである。
このような減算部54による演算により、いわゆる差動検出が行われたことになる。当該差動検出により、DC成分としての参照光成分が除去(相殺)され、増幅された信号光の成分を得ることができる。
以下、当該減算部54による差動検出で得られた信号光についての再生信号のことを、第1信号生成回路52、第2信号生成回路53で得られる再生信号と区別する意味で、RF信号とも表記する。
【0078】
減算部54により得られたRF信号は、再生処理部55に供給される。
再生処理部55は、RF信号について2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、前述の記録データを得るために必要とされる再生処理を行い、当該記録データを復元した再生データを得る。
【0079】
続いて、エラー信号生成回路56は、位置検出用受光部27からの受光信号D_psに基づき、フォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpを生成する。
【0080】
録再光用サーボ回路57は、エラー信号生成回路56にて生成されたフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpに基づき、フォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成する。そして、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングエラー信号から生成したフォーカスドライブ信号FD-rp、トラッキングドライブ信号TD-rpにより、2軸アクチュエータ20のフォーカスコイル、トラッキングコイルをそれぞれ駆動する。
これにより、対物レンズ19についての(再生時における)フォーカスサーボループ、トラッキングサーボループが形成される。
【0081】
また、エラー信号生成回路58は、サーボ光用受光部46からの受光信号D_svに基づき、フォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svを生成する。
サーボ光用サーボ回路59は、エラー信号生成回路58にて生成されたフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svに基づき、フォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成する。そして、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングエラー信号から生成したフォーカスドライブ信号FD-sv、トラッキングドライブ信号TD-svにより、2軸アクチュエータ20のフォーカスコイル、トラッキングコイルをそれぞれ駆動する。
これにより、対物レンズ19についての(記録時における)フォーカスサーボループ、トラッキングサーボループが形成される。
【0082】
コントローラ66は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、再生装置の全体制御を行う。
【0083】
ここで、コントローラ66には、前述したように予め各情報記録層位置Lに対応して定められたオフセットof-Lの値が設定されている。コントローラ66は、このように予め設定された各層位置Lごとのオフセットof-Lの値に基づいて、録再用レーザ光の合焦位置の制御(設定)を行う。具体的には、記録対象とする層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づき、レンズ駆動部16を駆動することで、深さ方向における記録位置の選択を行う。
【0084】
また、コントローラ66は、先の図18〜図20にて説明したような記録/再生時の対物レンズ19のサーボ制御切り替えを実現するための制御も行う。
具体的にコントローラ66は、記録時には、サーボ光用サーボ回路59にトラッキングドライブ信号TD-sv及びフォーカスドライブ信号FD-svによる2軸アクチュエータ20の駆動制御を実行させ、且つ、録再光用サーボ回路57によるサーボ制御動作を停止させるように制御を行う。一方、再生時には、録再光用サーボ回路57にトラッキングドライブ信号TD-rp及びフォーカスドライブ信号FD-rpによる2軸アクチュエータ20の駆動制御を実行させ、且つ、サーボ光用サーボ回路59によるサーボ制御動作を停止させるように制御を行う。
【0085】
[1-3.光路長サーボの具体的手法について]

ここで、ホモダイン方式は、信号光に対して参照光を干渉させて信号増幅を図る手法であるため、信号光と参照光との光路長差を可干渉距離内に収めるなど、その増幅効果が最大限に発揮されるように信号光と参照光との光路長差を調整することが要請される。
このとき、ホモダイン方式による増幅効果が最大であるとは、信号光についての再生信号の振幅が最大となるということである。つまりは、減算部54で得られるRF信号の振幅が最大となるということである。
このことに応じ、本例の再生装置では、光路長サーボとして、減算部54で得られるRF信号の振幅を最大とするように信号光と参照光との光路長差を調整するという手法を採る。
【0086】
但し、サーボ制御を行うにあたり、入力信号(誤差信号)の最大値を目標値とするのは、安定したサーボ制御の実現を図る上で好ましくない。
このため本例では、光路長サーボのエラー信号としては、減算部54にて得られるRF信号そのものを用いるのではなく、これとは位相が90°ずれた信号を用いるという手法を採る。
【0087】
図4は、この点について説明するための図であり、図4(a)では信号光と参照光の光路長差を変化させたときの「再生信号hm1」−「再生信号hm2」の波形を示し、図4(b)では信号光と参照光の光路長差を変化させたときの「再生信号ds1」−「再生信号ds2」の波形を示している。
ここで、「再生信号hm1」、「再生信号hm2」はそれぞれ第1信号生成回路52による再生信号、第2信号生成回路53による再生信号を表すものであって、「再生信号hm1」−「再生信号hm2」は減算部54の出力(つまりRF信号)に相当する。
また、「再生信号ds1」、「再生信号ds2」は図3に示される第1信号生成回路60による再生信号、第2信号生成回路61による再生信号を表すもので、「再生信号ds1」−「再生信号ds2」は減算部62の出力に相当する。
【0088】
この図4を参照して分かるように、受光信号D_ds1を受光して得られる再生信号ds1と受光信号D_ds2を受光して得られる再生信号ds2との差分である「再生信号ds1」−「再生信号ds2」の波形は、ホモダイン検波(及び差動検出)系で得られる「再生信号hm1」−「再生信号hm2」の波形に対しその位相が90°ずれた(この場合は遅れた)関係となる。これは、前述のように受光信号D_ds1、D_ds2の元となる合成光(信号光+参照光)が、ホモダイン検波系で用いられる受光信号D_hm1、D_hm2の元となる合成光に対してその位相が90°ずれた関係となるように調整されていることによる。
【0089】
このことから、「再生信号ds1」−「再生信号ds2」としての減算部62の出力を光路長エラー信号として用いることで、信号光についての再生信号(RF信号)を最大とするにあたっての光路長サーボ制御の目標値を、0にできることが分かる。
【0090】
上記の点を踏まえた上で、図3に示す光路長サーボ系について説明する。
光路長サーボ系において、第1信号生成回路60は、受光信号D_ds1を入力しI−V変換を行って、信号光(位相90°)に対して同位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
また、第2信号生成回路61は、受光信号D_ds2を入力しI−V変換を行って、信号光(位相90°)に対して逆位相の参照光が干渉した光についての再生信号を得る。
【0091】
第1信号生成回路60、第2信号生成回路61により得られたそれぞれの再生信号は、減算部62に供給される。
減算部62は、第1信号生成回路60より供給される再生信号から、第2信号生成回路61より供給される再生信号を減算する。この減算部62の減算処理により、DC成分としての参照光成分が除去され、増幅された信号光の成分を得ることができる。
【0092】
減算部62による減算結果は、ローパスフィルタ63及び加算部64を介して光路長サーボ回路65に入力される。
ローパスフィルタ63は、減算部62による減算結果として得られる再生信号(RF信号との位相差が90°となる再生信号)の低域成分を抽出する。
このローパスフィルタ63によって、再生信号振幅が平均化されることになる。つまり、符号「0」の部分の振幅と符号「1」の部分の振幅とが平均化されるものである。
ここで、ローパスフィルタ63の出力を、以下、光路長エラー信号と称する。
【0093】
なお、上記加算部64については後述する。
【0094】
光路長サーボ回路65は、加算部64を介して入力される光路長エラー信号を入力し、当該光路長エラー信号の値が、所定の目標値で一定となるように1軸アクチュエータを駆動するための駆動信号Ddsを生成する。具体的にこの場合は、上記入力される光路長エラー信号の値が0で一定となるようにするための駆動信号Ddsを生成し、当該駆動信号Ddsに基づき1軸アクチュエータ23を駆動制御する。
これにより、RF信号を最大とする光路長サーボ制御が実現される(後述するオフセットの付与は考慮しない)。
【0095】
[1-4.光路長サーボと再生信号振幅との関係]

上記の説明からも理解されるように、本例の再生装置においては、RF信号(つまり信号光についての再生信号)が最大となるように光路長サーボをかけるようにされている。
【0096】
図5及び図6を参照して、このような光路長サーボを行った場合における、ホモダイン方式によるRF信号の再生原理を、直交位相空間表現により模式的に説明する。
先ずは図5により、直交位相空間での信号光の電界ベクトルについて説明しておく。
図5において、図5(a)は、信号光(Sig)の電界ベクトルとして、符号「1」に対応する信号光Sigの電界ベクトルを直交位相空間上で示している。換言すれば、記録マークによって変調された信号光Sigの電界ベクトルを示すものである。
また、図5(b)は、符号「0」(マーク非形成部分)に対応した信号光Sigの電界ベクトルを示している。この場合は空孔マークとしての反射体が形成されていないので、図のように信号光Sigの電界強度は「0」である。
【0097】
図6は、ホモダイン検波によるRF信号の再生原理について説明するための図である。
図6において、図6(a)は、符号「1」に対応する信号光Sigに対しこれと同位相の参照光(Ref_0°と表記)が干渉した場合について示し、図6(b)は、符号「1」に対応する信号光Sigに対しこれと逆位相の参照光(Ref_180°と表記)が干渉した場合について示している。
これら図6(a)(b)では、信号光Sigの電界ベクトルと、光路長サーボによるホモダイン測定軸とを直交位相空間上で示している。確認のために述べておくと、ここに言う「光路長サーボによるホモダイン測定軸」とは、RF信号が最大となるように光路長サーボをかけたときのホモダイン測定軸を意味する。
そして、図6(a)では、符号「1」の信号光Sigと参照光Ref_0°とが干渉した場合における検波結果hm1の電界ベクトルを示しており、また図6(b)では符号「1」の信号光Sigと参照光Ref_180°とが干渉した場合における検波結果hm2の電界ベクトルを示している。
【0098】
図6において、ホモダイン測定軸としては、図6(a)に示す参照光Ref_0°との干渉の場合と図6(b)に示す参照光Ref_180°との干渉の場合とで、その向きが正反対となる。これは、干渉する参照光Refが逆位相の関係にあることに依る。
【0099】
このとき、図6(a)では、参照光Ref_0°との干渉の場合におけるホモダイン測定軸の向きを、信号光Sigの電界ベクトルの向きと一致させて示しているが、先に説明したように、光路長サーボは、ローパスフィルタ63を介して平均化された光路長エラー信号を「0」とするように行われるので、当該ホモダイン測定軸の向きは、実際には、信号光Sigの電界ベクトルの向きとは一致するものとならない。具体的には、符号「0」の信号光Sigと符号「1」の信号光Sigの中間成分の電界ベクトルの向きと概ね一致することとなる。図6(a)において、ホモダイン測定軸を信号光Sigの電界ベクトルの向きと一致させて示したのは、以降での説明を行う上での便宜を図ったものである。
また、このことについては図6(b)の場合も同様であり、図6(b)におけるホモダイン測定軸の向きは、実際には図中に示す信号光Sigの電界ベクトルの向きと正反対の向きではなく、上述の中間成分の電界ベクトルの向きと正反対の向きとなる。
【0100】
ここで、ホモダイン検波は、例えば光通信や量子通信の分野でもよく知られているように、信号光の電界が参照光の電界の大きさだけ乗算されたあと、参照光が持つ測定軸(ホモダイン測定軸)へ射影したベクトルの大きさを測定していることになる。
具体的には、信号光Sigに対し参照光Ref_0°が干渉した成分については、図中の「hm1」と示すような成分がディテクタ上で検出されるものと捉えることができ、また信号光Sigに対し参照光Ref_180°が干渉した成分については図中の「hm2」と示すような成分が検出されるものと捉えることができる。
【0101】
このとき、ホモダイン検波で検出される受光信号D_hm1、D_hm2をそれぞれ数式により表すと、以下のようになる。
なお下記[式1][式2]においては、ビームスプリッタ28が入射光の50%を反射し50%を透過するという前提の下で、ビームスプリッタ28を透過した後の信号光の電界を1/2|Esig|、参照光の電界を1/2|Eref|としている。


D_hm1=1/4|Esig2+1/4|Eref2+1/2|Esig||Eref|cos(Δφ)
・・・[式1]


D_hm2=1/4|Esig2+1/4|Eref2−1/2|Esig||Eref|cos(Δφ)
・・・[式2]


これら[式1][式2]において、右辺の第1項目、第2項目はそれぞれ信号光の二乗検波信号、参照光の二乗検波信号である。そして第3項目が、ホモダインによる信号光と参照光の干渉信号(つまり抽出したい信号)である。
本例の場合、受光信号D_hm1,D_hm2についての差動検出を行うので、その結果は、


D_hm1−D_hm2=|Esig||Eref|cos(Δφ) ・・・[式3]


と表される。この[式3]より、ホモダイン検波(及び差動検出)による再生動作によれば、参照光(|Eref2)などのホモダイン信号以外の成分が除去されて、参照光の強度に応じて増幅された信号光が抽出されることが分かる。
【0102】
なお、図6において、参照光の電界ベクトルを表記していないのは、上記のようにホモダイン検波による再生動作においては参照光の二乗検波信号成分が相殺されて無くなることに基づく。
【0103】
このようにしてホモダイン方式による再生動作によって得られるRF信号は、元の信号光を、参照光の光強度に応じて増幅したものと捉えることができる。
【0104】
[1-5.マークサイズ変動による再生信号振幅の変動]

ここで、前述もしたように、バルク記録方式を採用する場合として、特に本例のように空孔マークを記録するボイド記録方式を採用する場合においては、例えば記録用のレーザの特性等に起因して、記録マークサイズに変動が生じる虞がある。
バルク記録方式において、記録マークは反射体として機能するものとなるので、そのサイズが変動することによっては反射光量に差が生じてしまうことになる。そして、このようなマークサイズ差による反射光量差が生じることによって、本来は同レベルで検出されるべき再生信号振幅(マーク部分での再生信号振幅)にも差が生じることとなり、これに起因して再生性能が悪化してしまうという虞がある。
【0105】
図7は、記録マークサイズの変動の具体的な態様について説明するための図である。
図7において、図7(a)は、ある情報記録層位置Lに記録されたマーク列に生じたマークサイズの変動の具体的な態様を模式的に表している。この図7(a)に示すように、マークサイズの変動としては、例えば局所的に通常のサイズ(図中の斜線部により示すマークのサイズ)よりも小さいサイズ(図中スクリーン部により示すマークのサイズ)のマークが形成されるような態様で生じる。或いは逆に、局所的に通常サイズより大きなサイズによるマークが形成されるということもあり得る。
【0106】
ここで、バルク記録の場合、記録マークは、レーザ光の焦点位置を中心として三次元的な広がりをもって形成されるものとなるので、マークサイズの差は、図7(b)において示されるように、マークの半径r(深さ方向に平行な方向におけるマーク中心からマーク端部までの距離)の差と換言することができる。
【0107】
図8は、記録マークサイズを変化させたときのマーク反射光の電界強度分布を直交位相空間において示した図である。
この図8では、BDの場合における最短マーク長と同程度の大きさの空包マークが形成された場合の反射光電界強度を1と規格化し、且つそのときの位相を0とおいている。
また図8では、記録マークサイズを0nm〜260nmの範囲内で10nm刻みで変化させた際のマーク反射光の電界強度分布の計算結果を示している。
【0108】
先ず前提として、マークの反射率は、マークの表面積に比例すると見なすことができる。この前提の下で図8では、図中の◇印のプロットによってマーク反射率が半径rの2乗(面積)に比例すると仮定した場合の計算結果を示している。この結果より、マークサイズが変動することによって、マーク反射光の電界強度(つまり信号光の振幅)が変化するということが理解できる。
【0109】
また図8では、○印のプロットによってマーク反射率が半径rの3乗(体積)に比例すると仮定した場合の計算結果を表している。この図8の計算結果より、マーク反射率がマーク体積に比例すると仮定しても、マークサイズ変動によってマーク反射光の電界強度が変化するということが分かる。
【0110】
なお、図8によると、マークサイズ変動によっては、信号光の位相も変化することが分かる。これは、マークサイズの差によって、先の図5や図6に示した信号光Sigの電界ベクトルの向きが変化するということを意味するものである。
ここで、マークサイズ変動として半径rがΔrだけ変化したとすると、信号光の光路長は往復分を考慮に入れて2Δrだけ変化することとなる。これを位相差に直すと、「4Δrπ/nλ」となる。ただしλはレーザ光の波長、nは記録媒体の屈折率を表す。
【0111】
このようにして、記録マークのサイズ変動によって、信号光の振幅が変化するものとなる。そしてこれに伴い、RF信号振幅にも変化が生じる。
【0112】
ここで、確認のために述べておくと、これまでで述べてきた記録マークのサイズ変動とは、局所的に生じるサイズ変動を意味しているものである。
仮に、サイズ変動が或る時間幅をもって徐々に生じるものであった場合には、RF信号振幅の変動は生じる虞がない。これは、光路長サーボが行われることによる。すなわち、仮に、サイズ変動が徐々に生じるものであった場合には、光路長サーボによってホモダイン測定軸が図6に示したように信号光Sigと平行となるように調整されるので、サイズ変動に伴うRF信号振幅の変動は生じないことになる。
このことからも理解されるように、ここで言うマークサイズ変動とは、光路長サーボで追従しきれない程度に局所的に(高速に)生じるマークサイズの変動を意味しているものである。
【0113】
[1-6.オフセット付与]

上記のような局所的なマークサイズ変動に伴うRF信号振幅の変動に起因した再生性能の悪化の防止を図るべく、本実施の形態では、ホモダイン測定軸を調整することによって、それぞれのサイズのマークからの反射光の検出強度の差が縮小化されるようにするという手法を採る。つまりは、光路長サーボループに対するオフセットの付与によって、マークサイズ変動に伴うRF信号振幅の差を縮小化するというものである。
【0114】
図9は、光路長サーボループに対するオフセット付与によってマークサイズ変動に伴うRF信号振幅の差の縮小化が図られる原理について説明するための図である。
なおこの場合において、参照光の電界強度は常に一定であるものとする。
先ず、図9(a)では、通常サイズによるマークの信号光Sig(Sig_sizeNと表記)の電界ベクトルと、通常サイズよりも小サイズによるマークの信号光Sig(Sig_sizeSと表記)の電界ベクトルと、光路長サーボによるホモダイン測定軸との関係を直交位相空間上で示している。
なお、この図9(a)を始め、図9(b)及び後述する図10においては、先の図6の場合と同様に参照光Refの電界ベクトルについての図示は省略している。
【0115】
先の図8による説明からも理解されるように、マークサイズが異なることによっては、反射光の電界強度と位相とに差が生じるものとなり、図9(a)では、この点が表されている。具体的に、小サイズマークの信号光Sig_sizeSは、その電界強度が通常サイズマークの信号光Sig_sizeNの電界強度よりも小となり、且つその位相が通常サイズマークの信号光Sig_sizeNよりも遅れたものとなる。
【0116】
また、先に述べたように、光路長サーボによっては、RF信号振幅が最大となるようにサーボがかけられる。このとき、サーボ制御における目標値は、通常サイズによるマークについてのRF信号振幅値と捉えることができる(マークサイズ変動は局所的であるため)。この前提の下、ここでは図のようにホモダイン測定軸を信号光Sig_sizeNの電界ベクトルの向きと一致するものと示している。
なお先の図6で触れたように、光路長エラー信号はローパスフィルタ63を介して生成されるので、実際には、ホモダイン測定軸の向きは、符号「1」の信号光Sig(この場合は通常サイズマークの信号光Sig_sizeN)と符号「0」の信号光Sigとの中間成分の電界ベクトルの向きと概ね一致することになる。ホモダイン測定軸を信号光Sig_sizeNの電界ベクトルの向きと一致させているのは、図示の複雑化を避けるためである。
【0117】
前述した通り、ホモダイン検波では、ホモダイン測定軸に射影した成分が検出されるので、図中のホモダイン測定軸と各電界ベクトルとの関係によれば、小サイズマークの信号光Sig_sizeSの検出強度は、元々信号光Sig_sizeSが有していた電界強度よりも小となる。これに対し、通常サイズマークの信号光Sig_sizeNの検出強度は、当該信号光Sig_sizeNが元々有している電界強度と一致するものとなる。
【0118】
このようにして、信号光Sig_sizeNと信号光Sig_sizeSとが元々有していた強度差に加えてホモダイン測定軸のずれに起因した強度差が上乗せされるような形で、通常サイズマークと小サイズマークとの間の検出強度差(RF信号振幅差)ΔN-Sが生じることになる。
【0119】
ここで、上記説明によれば、振幅差ΔN-Sは、ホモダイン測定軸の向き(角度)に依存して決まるということが分かる。
この点に鑑み、本実施の形態では、図9(b)に示すように、ホモダイン測定軸の角度を、光路長サーボによるホモダイン測定軸の向き(図中一点鎖線)から変化させることで、通常サイズマークと小サイズマークのそれぞれのホモダイン測定軸への射影成分の差としてみなすことのできるRF信号振幅ΔN-Sを縮小化させるようにしている。換言すれば、これら通常サイズマークと小サイズマークとのRF信号振幅差ΔN-Sが縮小化されるように、ホモダイン測定軸の角度を、光路長サーボによる測定軸の角度からシフトさせるものである。
【0120】
ここで、図9(b)においては、ホモダイン測定軸のシフトについての具体的な例として、通常サイズマークと小サイズマークとのRF信号振幅差ΔN-Sを最小とする例を示している。
図から分かるように、直交位相空間上における振幅差ΔN-Sを最小とするホモダイン測定軸の角度は、通常サイズマークの信号光Sig_sizeNの電界ベクトルで特定される点と、小サイズマークの信号光Sig_sizeSの電界ベクトルで特定される点との2点を通る直線と直交する関係にある直線の角度として求めることができる。
【0121】
ここで、図9(b)において、一点鎖線で示す光路長サーボによるホモダイン測定軸とグレーで示す調整後のホモダイン測定軸との角度差は、光路長サーボ系に設定される目標値(制御目標値)の差と同義であることが分かる。ひいては、信号光と参照光との光路長差(位相差)と同義となるものである。
従って本実施の形態では、光路長サーボループに対して、上記のホモダイン測定軸の角度差に相当する値によるオフセット値を付与する。これによって、RF信号振幅差ΔN-Sを縮小化することができる。
なおこのとき、図9(b)を参照すると、この場合においてRF信号振幅差ΔN-Sを縮小化するためのオフセット値は、参照光の位相を遅らせる方向へのオフセット値となることが分かる。
【0122】
光路長サーボループに対して付与すべき具体的なオフセット値の導出手法としては、例えば以下のような手法を挙げることができる。
先ずは、先に例示したような信号光Sig_sizeNと信号光Sig_sizeSの電界ベクトルで特定される2点を通る直線と直交する角度を求めるなどの手法によって、RF信号振幅差ΔN-Sを縮小化するためのホモダイン測定軸の角度を求める。
当該角度が求まれば、光路長サーボ系によって信号光と参照光との間に与えるべき位相差の値(及びその極性)が求まるので、該位相差を付与することのできるオフセットの値を求める。具体的には、予め光路長サーボループに与えるオフセットの値とそれによって信号光と参照光との間に与えられる位相差との関係を表す情報(例えばテーブルや関数)を求めておき、該情報から、上記のように求めた位相差を付与することのできるオフセットの値を求めるようにするものである。
【0123】
ところで、上記による説明では、マークサイズ変動が、通常サイズよりも小となるサイズのマークのみが形成されるように生じることを前提としたが、マークサイズ変動としては、通常サイズのマークよりも大となるサイズによるマークが形成されるようにして生じることも想定され得る。
このような場合としても、図9の場合と同様の考え方によって、RF信号振幅差を縮小化するためのオフセットの値を求めるものとすればよい。
この点について、図10を参照して説明しておく。
【0124】
図10において、図10(a)では、通常サイズマークの信号光Sig_sizeNの電界ベクトルと、小サイズマークの信号光Sig_sizeSの電界ベクトルと、通常サイズよりも大となる大サイズマークの信号光Sig_sizeLの電界ベクトルと、光路長サーボによるホモダイン測定軸との関係を直交位相空間上で示している。
【0125】
先の図8より、大サイズマークの信号光Sig_sizeLは、その電界強度が通常サイズマークの信号光Sig_sizeNの電界強度よりも大となり、且つその位相が信号光Sig_sizeNよりも進んだものとなる。
また、前述のようにマークサイズ変動は局所的に生じるため、この場合も光路長サーボによるホモダイン測定軸は、通常サイズによるマークの信号光Sig_sizeNの電界ベクトルの向きと一致するものとして示している(図示の複雑化防止のため)。
このようなホモダイン測定軸と各電界ベクトルとの関係によると、それぞれホモダイン測定軸への射影成分とみなすことのできる大サイズマークの信号光Sig_sizeLのRF信号振幅から小サイズマークのRF信号振幅までのRF信号振幅差は、図中のΔL-Sと示すようなものとなる。
【0126】
この振幅差ΔL-Sを縮小化すべく、図10(b)に示すようなホモダイン測定軸の調整を行う。
ここで、この場合は先の図9の場合とは異なり、通常サイズ/小サイズの2種のサイズ間の関係ではないので、RF信号振幅差を0とすることは不可能である。このため、例えば図のように小サイズマークと大サイズマークのRF信号振幅差を0とするようなホモダイン測定軸の角度を設定する。
このことで、小サイズマークのRF信号振幅から大サイズマークのRF信号振幅までの振幅差が最小となるようにすることができる。
【0127】
なお、上記による説明では、RF信号振幅差が最小となることを優先してホモダイン測定軸の角度(ひいてはオフセットの値)を導出するものとしたが、光路長サーボループに付与するオフセット値が過大となる場合には、サーボ制御を安定なものとすることが困難となることから、実際においてオフセット値は、この点を考慮して設定すべきものとなる。例えば、先に挙げた手法でRF信号振幅差を最小とするように求めたオフセット値を付与した場合に、図9(b)などに示した「光路長サーボによるホモダイン測定軸」(一点鎖線)とオフセット付与後のホモダイン測定軸(グレー線)との差が概ね45°以上となってしまう場合には、光路長エラー信号(図4(b))のリニア区間を外れた位置でサーボをかけることに相当するので、安定したサーボ制御を行うことが実質的に不可能となってしまう。このため、そのような場合には、サーボ制御の安定性が確保できる範囲内で、RF信号振幅ができるだけ小となるようなオフセット値を設定することになる。
なおこの点を考慮すると、光路長サーボループに対して与えるべきオフセット値としては、少なくともRF信号振幅差を縮小化できるものであればよいということが言える。
【0128】
ここで、上記もしているように、マークサイズ変動に起因したRF信号振幅差を縮小化するようにホモダイン測定軸を調整するにあたっては、光路長サーボループに対して、所定のオフセット値を付与するものとすればよい。
そこで、図3に示した本実施の形態の再生装置では、光路長エラー信号を生成するローパスフィルタ63と光路長サーボ回路65との間に、加算部64を挿入するものとしている。
この加算部64は、ローパスフィルタ63から入力される光路長エラー信号に対して、予め設定された所定のオフセット値を加算し、その結果を光路長サーボ回路65に対して出力する。具体的に、当該所定のオフセット値は、先に説明した導出手法によって、マークサイズ変動に起因したRF信号振幅差を少なくとも縮小化できるようにして求められたオフセット値となる。
【0129】
このような実施の形態としての再生装置の構成により、マークサイズ変動によるRF信号振幅差を縮小化して、より良好な再生性能が得られるようにすることができる。
【0130】
なお、図9や図10を参照して分かるように、本実施の形態の手法によりRF信号振幅差の縮小化を行った場合には、これを行わないとした場合と比較して、RF信号振幅の強度が低下する傾向となることが分かる。
このような本実施の形態の手法で生じるRF信号振幅の低下が問題となる場合には、ホモダイン検波による信号増幅率(つまり参照光の光量)を増大化させることで対応すればよい。
【0131】
<2.第2の実施の形態>
[2-1.再生装置の構成]

続いて、第2の実施の形態について説明する。
図11は、第2の実施の形態としての再生装置全体の内部構成を示した図である。
なお第2の実施の形態において、光学ピックアップOPの内部構成については第1の実施の形態の場合と同様となるため改めての図示による説明は省略する。
図11においても、先の図3と同様に光学ピックアップOP内の構成については録再用レーザ10、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ20、及び1軸アクチュエータ23のみを抽出して示している。
また図11においても図3の場合と同様に、スピンドルモータ50の図示は省略している。
なお図11において、既に第1の実施の形態で説明済みとなった部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0132】
先の図3と比較して分かるように、第2の実施の形態の再生装置は、第1の実施の形態の再生装置が備えていた記録処理部51に代えて多値記録処理部70が備えられ、また再生処理部55に代えて多値再生処理部71が備えられたものとなる。
【0133】
多値記録処理部70は、入力される記録データについて多値変調処理を施し、該多値変調処理で得られた多値符号列に基づく記録パルス信号Rcp’を生成する。そして該記録パルス信号Rcp’に基づき録再用レーザ10を発光駆動する。
【0134】
図12は、多値記録処理部70による多値変調処理によって実現される多値記録の具体例について説明するための図である。
図12において、図12(a)はこの場合の多値変調処理で得られる多値符号の別を示し、図12(b)は多値符号ごとの記録パルスの別を示し、図12(c)は多値符号ごとの記録マークの別を示している。
【0135】
先ず、この図12を参照して分かるように、この場合の多値変調は2値(「0」「1」)から4値(「00」「01」「10」「11」)への多値変調となる。
図のように多値符号ごとの記録パルスの振幅は、「00」が最低で、「01」「10」「11」の順で徐々に大となるように設定している。
これによって、符号「00」に対応してはマークが非形成、符号「01」に対応しては小サイズマーク、符号「10」に対応しては中サイズマーク、符号「11」に対応しては大サイズマークが形成されるものとなる。
このようにして、この場合の多値記録は、符号ごとに形成されるマークのサイズを変調するようにして行われる。
【0136】
説明を図11に戻す。
上記のようなマークサイズ変調による多値記録が行われることに伴い、この場合のRF信号としては、その振幅レベルとして多値符号の数と同数の振幅レベルを有することになる。
多値再生処理部71は、RF信号から多値符号の別を判定し、その結果に基づき多値→2値の復調処理を行って記録データを復元した再生データを得る。
【0137】
[2-2.オフセット付与]

ここで、上記のようなマークサイズ変調による多値記録を行う場合にあっても、第1の実施の形態の場合と同様の理由でマークサイズのコントロールが困難となることが予想され、それぞれのマーク間のサイズ差が不揃いとなって、それらのRF信号振幅の差を十分に確保することが困難となる虞がある。つまりその結果、多値の再生性能(各値の判別性能)の低下を招く虞がある。
この点を考慮すると、多値記録を行う際には、個々のサイズのマークについてのRF信号振幅差を強調できることが望ましい。
【0138】
そこで第2の実施の形態では、RF信号振幅差が強調される方向にホモダイン測定軸を変化させるようにして、光路長サーボループに対するオフセットの付与を行う。
【0139】
図13は、第2の実施の形態のオフセット付与について説明するための図である。
図13において、図13(a)は符号「01」に対応するマークについての信号光Sig(Sig_01とする)の電界ベクトルと、符号「10」に対応するマークについての信号光Sig(Sig_10とする)の電界ベクトルと、符号「11」に対応するマークについての信号光Sig(Sig_11とする)の電界ベクトルと、光路長サーボによるホモダイン測定軸との関係を直交位相空間上で表し、図13(b)は、これらの各電界ベクトルとオフセット付与後のホモダイン測定軸との関係を同様に直交位相空間上で表している。
なお、図13においても図示の都合上、参照光Refの電界ベクトルの図示は省略するものとしている。
また図13において、符号「01」「10」「11」の各マークのサイズはその理想サイズであるとする。
【0140】
先ず、前述のように符号「01」「10」「11」の各マークは、同順でそのサイズが大となるので、これらの信号光Sigの電界強度としても同順で大となり、また位相は、同順で徐々に進んでいく関係となる。
【0141】
またこの場合、光路長サーボ(制御目標値=0)によるホモダイン測定軸については、図示の複雑化防止のため、図13(a)に示すように符号「10」のマークの信号光Sig_10の電界ベクトルの向きと一致するものとして示している。
なお、多値記録に伴うマークサイズの変化は、局所的なものではない。また、この場合も光路長サーボとしては、RF信号を平均化(LPF)したものに相当する光路長エラー信号に基づいて行われる。これらの点より、光路長サーボによるホモダイン測定軸の実際の向きは、振幅最大となる符号「11」に対応するマークについての信号光Sig_11と符号「00」に対応する信号光Sigとの中間成分の電界ベクトルの向きと概ね一致することになる。
【0142】
図中のホモダイン測定軸と各電界ベクトルとの関係によれば、図13(a)の場合における符号「01」のマークと符号「10」のマークとの間のRF信号振幅差は、図中のΔ1と示すものとなり、また符号「10」のマークと符号「11」のマークとの間のRF信号振幅差は、図中のΔ2と示すものとなる。
【0143】
この図13(a)に示す状態から、第2の実施の形態では、光路長サーボループに対するオフセット付与によって、ホモダイン測定軸を図13(b)に示すように変化させる。
具体的には、先の第1の実施の形態ではマークサイズ差に起因するRF信号振幅差の縮小化のため参照光の位相を遅らせる方向のオフセット付与を行うものとしていたのに対し、本実施の形態では、逆に参照光の位相を進ませる方向のオフセット付与を行うものである。
【0144】
図13(b)では、このようなオフセット付与によるホモダイン測定軸シフトの具体例として、符号「01」のマークと符号「11」のマークとの間のRF信号振幅差(Δ1+Δ2)が最大となるようにする例を示している。
この場合のホモダイン測定軸の角度(つまり信号光に対する参照光の位相差)は、符号「01」のマークの信号光Sig_01の電界ベクトルで特定される点と、符号「11」のマークの信号光Sig_11の電界ベクトルで特定される点の2点を通る直線と直交する関係にある直線の角度として求めることになる。
【0145】
このように、多値記録によって形成され得るマークサイズのうちでサイズ最小となる符号「01」のマークとサイズ最大となる符号「11」のマークとの間のRF信号振幅差(Δ1+Δ2)が最大となるようなオフセット付与を行うことで、各マーク間のRF信号振幅差Δ(この場合はΔ1とΔ2)が最大限拡大されるようにできる。
【0146】
ここで、図13(a)(b)を参照すると、ホモダイン測定軸を光路長サーボ時(目標値=0)の向きから位相を進ませる方向に僅かでも変化させれば、Δ1とΔ2とが拡大されることが分かる。このこともからも理解されるように、各マーク間のRF信号振幅差を拡大させるにあたっては、少なくとも参照光の位相を進ませるようなオフセットの付与を行うものとすればよい。
【0147】
なおこの場合も、例えば上記のようなホモダイン測定軸の角度に基づく導出手法によってRF信号振幅差を拡大するための参照光の位相差の値を求めれば、当該位相差の値に基づいて、先の第1の実施の形態と同様の手法で光路長サーボループに付与すべきオフセット値を求めることができる。
第2の実施の形態の再生装置には、このようにして求めたオフセット値が予め設定されることになる。
【0148】
具体的に、図11に示した第2の実施の形態の再生装置においては、加算部64に対して、上記のようにして予め設定されたオフセット値(つまり、少なくとも各マーク間のRF信号振幅差を拡大できるようにして求められたオフセット値)が入力され、これにより当該オフセット値が、ローパスフィルタ63から出力される光路長エラー信号に対して加算されるようになる。
このような構成により、多値記録で形成される各マークのサイズがばらつく場合にも、各マーク間のRF信号振幅差が拡大されるようにでき、その結果、多値再生処理部71における多値判定の精度を向上させて、再生性能の向上を図ることができる。
【0149】
<3.変形例>

以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば光学系の構成は、実際の実施形態に応じて適宜最適とされる構成が採られればよく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【0150】
また、これまでの説明では、RF信号振幅差の縮小/拡大のためのオフセットの付与は、光路長エラー信号に対して行う場合を例示したが、オフセットの付与は少なくとも光路長サーボループ内において行われればよく、例えば駆動信号Ddsにオフセットを付与する構成などとすることもできる。
【0151】
また、本発明の再生装置において、参照光ミラー系の構成は、次の図14に示すような変形例としての構成とすることもできる。
なお図14において、既にこれまでで説明済みとなった部分と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
図14に示す変形例としての再生装置においては、先の図2におけるミラー22及び1軸アクチュエータ23で構成されていたミラー系に代えて、凸レンズ80、凹レンズ81、ミラー82、及び1軸アクチュエータ83を備えたミラー系が設けられる。
【0152】
この変形例としてのミラー系によれば、図のように凸レンズ80及び凹レンズ81によって参照光のビーム径を絞ることができ、これによってミラー82としては図2に示すミラー22よりも小型化することができる。そしてこのようにミラーの小型化が図られることで、1軸アクチュエータ83としては、1軸アクチュエータ23よりも高速応答が可能となる。つまりその分、サーボの取れ残りを小さくすることができ、より安定した光路長サーボを実現できる。
また、このように光路長サーボの安定化が図られれば、その分、大きなオフセットを付与したとしてもサーボ外れが発生する可能性を低くすることができる。換言すれば、図14に示すミラー系の構成とすれば、付与可能なオフセットの上限値(絶対値)の拡大化を図ることができる。
【0153】
また、これまでの説明では、光路長サーボループに付与するオフセットとして固定値を用いる場合のみを例示したが、オフセット値は、例えばメディアの種類などに応じて可変的に設定することもできる。
ここで、RF信号振幅差の縮小/拡大にあたり付与すべきオフセット値は、メディア種類(バルク層5の材料の種類)や情報記録層位置Lの差などによって適切とされる値が異なることが予想される。
そこで、このように適切とされるオフセット値が異なることが予想される所定の条件ごとにそれぞれ対応するオフセット値が付与されるべく、オフセット値を可変設定できるようにする。
【0154】
図15は、オフセット値を可変設定する変形例としての再生装置の構成について説明するための図である。
なお図15においても既に説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。またこの図15では上記所定の条件の一例として、メディア種類の差を条件とした場合の例について説明する。
【0155】
この場合の再生装置には、メディア・オフセット対応情報86aが記憶されたメモリ86が設けられる。
メディア・オフセット対応情報86aは、バルク型記録媒体1のメディア種類ごとに適切とされるオフセット値をそれぞれ対応づけた情報となる。このメディア・オフセット対応情報86aに格納すべきメディア種類ごとのオフセットの値については、予め、先に実施の形態で説明したものと同様の手法でそれぞれ求めておく。
【0156】
また、この場合の再生装置には、上記メモリ86と共に、コントローラ85が設けられる。このコントローラ85としても、先のコントローラ66と同様にマイクロコンピュータで構成され、再生装置の全体制御を行う。
特にこの場合のコントローラ66は、再生装置に装填されたバルク型記録媒体1からの、メディア種類を示す情報(或いはメディア種類を特定可能な情報:総括してメディア種類特定情報と称する)の読み出しを実行させ、当該メディア種類特定情報の内容に基づき、メディア・オフセット対応情報86aから該当するオフセットの値(つまり上記装填されたバルク型記録媒体1のメディア種類に対応するオフセットの値)を取得する。そして、当該取得したオフセットの値を加算部64に与える。
【0157】
これにより、光路長サーボループに対し、装填されたバルク型記録媒体1のメディア種類に応じた適切とされるオフセット値が付与されるようにでき、結果、メディア種類の差に依らず、再生性能の向上が図られるようにできる。
【0158】
なお確認のため述べておくと、このようにオフセット値を可変設定する変形例は、上記のミラー系を変更した変形例の場合にも適用可能である。
また図15では第1の実施の形態の再生装置に適用した場合の構成を示したが、勿論、多値記録を行う第2の実施の形態の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0159】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、4 中間層、5 バルク層、10 録再用レーザ、11,43 コリメーションレンズ、12,29 1/2波長板、13,30,37,44 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ダイクロイックプリズム、18,21,35 1/4波長板、19 対物レンズ、20 2軸アクチュエータ、22,82 ミラー、23,83 1軸アクチュエータ、24,28 (無偏光)ビームスプリッタ、25 参照光除去部、26,31,33,38,40,44 集光レンズ、27 位置制御用受光部、32 第1ホモダイン検波用受光部、34 第2ホモダイン検波用受光部、39 第1光路長サーボ用受光部、41 第2光路長サーボ用受光部、42 サーボ用レーザ、46 サーボ光用受光部、50 スピンドルモータ(SPM)、51 記録処理部、52,60 第1信号生成回路、53,61 第2信号生成回路、54,62 減算部、55 再生処理部、56,58 エラー信号生成回路、57 録再光用サーボ回路、59 サーボ光用サーボ回路、63 ローパスフィルタ(LPF)、64 加算部、65 光路長サーボ回路、OP 光学ピックアップ、66,85 コントローラ、80 凸レンズ、81 凹レンズ、86 メモリ、86a メディア・オフセット対応情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源より出射された光を分光して得た第1の光と第2の光について、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体の記録層に照射し、上記第2の光をミラーに対して照射すると共に、上記記録層から得られる上記第1の光の反射光を信号光、上記ミラーによる上記第2の光の反射光を参照光として、それら信号光及び参照光を用いたホモダイン検波を行うホモダイン検波部と、
上記ホモダイン検波部によるホモダイン検波の結果に基づき上記信号光に基づく再生信号を得る信号再生部と、
上記ミラーを当該ミラーへの上記第2の光の入射光軸に平行な方向に駆動する1軸アクチュエータと、
上記信号光と上記参照光とを受光する受光部による受光信号に基づき、上記信号光と上記参照光との光路長差を一定とするように上記1軸アクチュエータを駆動制御する光路長サーボ制御部と、
上記光路長サーボ制御部によるサーボ制御に伴い形成される光路長サーボループに対して、上記記録層に記録されたそれぞれ異なるサイズによる上記マークの上記再生信号の振幅差を縮小又は拡大させるオフセットを与えるオフセット付与部と
を備える再生装置。
【請求項2】
上記オフセット付与部が上記光路長サーボループに与える上記オフセットが可変設定されるように制御を行う制御部をさらに備える
請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記光記録媒体の種類に応じた上記オフセットが設定されるように制御を行う
請求項2に記載の再生装置。
【請求項4】
上記ミラーに入射する上記第2の光のビーム径を縮小化するビーム径縮小化部をさらに備える
請求項1に記載の再生装置。
【請求項5】
上記ホモダイン検波部は、
位相が一致するように調整された上記信号光と上記参照光とを受光する第1の受光部と、上記信号光と当該信号光に対する位相差が180°となるように調整された上記参照光とを受光する第2の受光部とを備え、
上記信号再生部は、
上記第1の受光部による第1の受光信号と上記第2の受光部による第2の受光信号とに基づき上記再生信号を得るように構成されると共に、
上記光路長サーボ制御部は、
上記第1の受光部が受光する上記信号光とは位相が90°ずれるように調整された上記信号光と、当該信号光と位相が一致するように調整された上記参照光とを受光する第3の受光部による第3の受光信号と、上記第1の受光部が受光する上記信号光とは位相が90°ずれるように調整された上記信号光と、当該信号光に対する位相差が180°となるように調整された上記参照光とを受光する第4の受光部による第4の受光信号とを入力し、これら第3の受光信号と第4の受光信号との差分の値がゼロで一定となるように上記1軸アクチュエータを駆動制御する
請求項1に記載の再生装置。
【請求項6】
上記オフセット付与部は、上記オフセットとして、上記参照光の位相を遅らせる方向へのオフセットを付与する
請求項1に記載の再生装置。
【請求項7】
上記オフセット付与部は、上記オフセットとして、上記参照光の位相を進ませる方向へのオフセットを付与する
請求項1に記載の再生装置。
【請求項8】
深さ方向において設定された複数の層位置に選択的にマーク記録が行われるバルク状の記録層を有するバルク型記録媒体としての上記光記録媒体についての再生を行う請求項1に記載の再生装置。
【請求項9】
上記記録層に空孔による上記マークが記録された上記光記録媒体についての再生を行う請求項8に記載の再生装置。
【請求項10】
光源より出射された光を分光して得た第1の光と第2の光について、上記第1の光を対物レンズを介して光記録媒体の記録層に照射し、上記第2の光をミラーに対して照射すると共に、上記記録層から得られる上記第1の光の反射光を信号光、上記ミラーによる上記第2の光の反射光を参照光として、それら信号光及び参照光を用いたホモダイン検波を行うホモダイン検波部と、上記ホモダイン検波部によるホモダイン検波の結果に基づき上記信号光に基づく再生信号を得る信号再生部と、上記ミラーを当該ミラーへの上記第2の光の入射光軸に平行な方向に駆動する1軸アクチュエータと、上記信号光と上記参照光とを受光する受光部による受光信号に基づき、上記再生信号の平均振幅を一定とするように上記1軸アクチュエータを駆動制御する光路長サーボ制御部とを備えた再生装置における光路長サーボ制御方法であって、
上記光路長サーボ制御部によるサーボ制御に伴い形成される光路長サーボループに対して、上記記録層に記録されたそれぞれ異なるサイズによる上記マークの上記再生信号の振幅差を縮小又は拡大させるオフセットを与える
光路長サーボ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−69190(P2012−69190A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211896(P2010−211896)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】