説明

冗長化VoIPシステム

【目的】冗長化構成において短時間に且つ円滑な系切替を達成する冗長化VoIPシステムを提供する。
【構成】呼処理部は、自身が運用系の呼処理部である場合に、系切替要求の発生に応じて、呼制御を停止すると共に、系切替開始通知をネットワークインタフェース部に送信する。また、呼処理部は、自身が系切替開始通知に対応する新たな運用系の呼処理部である場合に、以前に運用系であった呼処理部から呼状態情報の複製を取り込み、当該呼状態情報に基づいて呼制御を再開し、系切替終了通知をネットワークインタフェース部に送信する。ネットワークインタフェース部は、当該系切替開始通知に応じて、呼処理パケットを一時的に蓄積して呼処理部への中継を停止し、当該系切替終了通知に応じて、呼処理パケットの蓄積を停止して呼処理部への中継を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運用系と待機系との少なくとも2系からなる冗長構成を具備した冗長化VoIP(Voice over IP)システムに関し、特に、呼処理を中断することなく、従前の運用系を新たな待機系に、従前の待機系を新たな運用系に系構成を切り替える冗長化VoIPシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冗長化されたVoIPシステムにおいて、運用系と待機系との系切替に際して、かかる系切替要求の発生を通信相手に意識させないことが重要である。例えば、電話通信の場合、系切替中に通話中の呼がある場合には、当該呼に対する呼処理が中断することなく通話が継続できる「呼継続」が求められる。
【0003】
特許文献1は、運用系と待機系との系切替の際に、制御信号の欠落を防ぎ、系間の同期を確保して系切替を行うことができるとする系切替システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−334528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される如き従来技術では、呼処理において制御信号に応じて生成されたイベントのうちで、外部からの応答待ちのイベントが系切替時になお存在している場合は、当該応答が来るまで系切替を抑止して、応答待ちのイベントがなくなった時点で系切替を完了することが行われる。しかし、かかる方法では、応答待ち状態のイベント処理が完了するまで切替動作が待たされることとなり、その結果として系切替に要する時間が長くなる欠点を有する。また、かかる系切替時間の長延化に伴って、系切替時にも到来する音声データを蓄積するために準備されるべきバッファ容量も大きくする必要が生じる。さらには、系切替時に呼処理部自身が新たに制御信号を生成して応答待ちの新規イベントを作出する恐れがあり、系切替が円滑に実行し得ない場合があり得る。
【0006】
本発明の目的は、冗長化構成において短時間に且つ円滑な系切替を達成する冗長化VoIPシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による冗長化VoIPシステムは、呼処理パケットに応じて呼状態情報を更新しつつ呼制御を行う少なくとも2系からなる呼処理部と、前記呼処理部とIP網との間で前記呼処理パケットを中継する少なくとも1系からなるネットワークインタフェース部と、を含む冗長化VoIPシステムであって、前記呼処理部は、自身が運用系の呼処理部である場合に、系切替要求の発生に応じて、前記呼制御を停止すると共に、系切替開始通知を前記ネットワークインタフェース部に送信する系切替開始手段と、自身が前記系切替開始通知に対応する新たな運用系の呼処理部である場合に、以前に運用系であった呼処理部から前記呼状態情報の複製を取り込み、前記呼状態情報に基づいて前記呼制御を再開し、系切替終了通知を前記ネットワークインタフェース部に送信する系切替終了手段と、を含み、 前記ネットワークインタフェース部は、前記系切替開始通知に応じて、前記呼処理パケットを一時的に蓄積して前記呼処理部への中継を停止し、前記系切替終了通知に応じて、前記呼処理パケットの蓄積を停止して前記呼処理部への中継を再開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による冗長化VoIPシステムによれば、短時間に且つ円滑な系切替を達成する冗長化VoIPシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例におけるVoIPシステムを示すブロック図である。
【図2A】呼処理パケット及び切替通知パケットの構成例を示す図である。
【図2B】呼状態情報の構成例を示す図である。
【図3】図1に示した呼処理部の系切替動作における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の変形例におけるVoIPシステムを示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の変形例におけるVoIPシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
<実施例>
図1は、本発明の実施例におけるVoIPシステム50を示している。VoIPシステム50は、IP網90に接続され、IP網90の先には、CA(Call Agent)サーバ91が接続されている。VoIPシステム50は、CAサーバ91との間で呼処理パケットP1をやり取りすることで、IP網90に繋がれた電話端末(図示せず)の通話動作のための発呼、着呼、通話開始及び通話停止、さらには課金等を含む呼制御を実行するシステムである。呼処理パケットP1とは、SIP(Session Initiation Protocol)等のプロトコルに従った呼制御を行うために送受信されるパケットである。
【0012】
尚、図1において、音声信号とIP化された音声パケットとの変換を行うVoIP部、加入者線との接続を切り替えるTDMスイッチ部、及び加入者線との間で音声信号を送受信するTDMインタフェース部は説明の容易性から図示を省略している。また、呼の通話によって生じる音声パケットの送受信動作についても説明を省略している。
【0013】
VoIPシステム50は、ネットワークインタフェース部10と、各々が同一の構成を有することで冗長化された2つの呼処理部、すなわち呼処理部30及び呼処理部40とを備える。呼処理部30及び呼処理部40の各々は、内部の機能は同じであり、それぞれが互いに冗長機能を提供し、通常何れか一方が運用系、他方が待機系として運用される。
【0014】
ネットワークインタフェース部10は、IP網90と呼処理部30又は40との間で呼処理パケットを中継する。ネットワークインタフェース部10は、入力処理部11と、出力処理部12と、蓄積処理部13と、パケット多重振分部14とから構成される。入力処理部11は、IP網90に接続され、CAサーバ91から呼処理パケットP1及び音声パケット(図示せず)をIP網90を介して受信する。出力処理部12は、IP網90に接続され、CAサーバ91に向けて呼処理パケットP1及び音声パケット(図示せず)を送信する。蓄積処理部13は、呼処理パケットP1を一旦蓄積し、FIFO(First In First Out)方式で順次パケットをパケット多重振分部14に送信する。蓄積処理部13は、パケット多重振分部14からの蓄積指示P3に応じて一時的にパケット多重振分部14への中継を一時停止する機能と、当該蓄積指示P3の解除に応じて中継を再開する機能とを具備する。パケット多重振分部14は、CAサーバ91に向けた呼処理パケットP1の多重処理を行うと共に、CAサーバ91からの呼処理パケットP1の振分処理を行って呼処理パケットP1を呼処理部30又は呼処理部40の何れかに向けて送信する。当該振分処理は、呼処理部30と呼処理部40のうちでどちらが運用系の呼処理部であるかを判定して、運用系の呼処理部(例えば、呼処理部30)へ呼処理パケットP1を送信する。
【0015】
呼処理部30は、イベント監視部31と、イベント発行部32と、プロトコル処理部33と、呼状態管理部34と、呼状態引継ぎ部35と、系切替処理部36とから構成される。同様に、呼処理部40は、イベント監視部41と、イベント発行部42と、プロトコル処理部43と、呼状態管理部44と、呼状態引継ぎ部45と、系切替処理部46とから構成される。
【0016】
尚、図1には、2系の冗長化を実現する呼処理部30又は呼処理部40の2つが示されているが、本発明にかかる限定はなく、本発明による冗長化システムは3つ以上の呼処理部が含んでもよい。呼処理部30及び呼処理部40は同一の機能構成を有することから、それらの内部構成について呼処理部30のみを例として以下説明する。
【0017】
呼処理部30のイベント監視部31は、ネットワークインタフェース部10のパケット多重振分部14から呼処理パケットP1を受け取り、プロトコル処理部33に対してイベントの発生を通知する。イベント発行部32は、プロトコル処理部33における処理に応じたイベントの発生を検知し、当該イベントの内容に応じた呼処理パケットをネットワークインタフェース部10のパケット多重振分部14に向けて送信する。イベント発行部32は、また、系切替処理部36からの系切替指示に応じて、切替通知パケットP2を生成して、これをネットワークインタフェース部10に向けて送信する。
【0018】
プロトコル処理部33は、イベント監視部31からのイベントの発生に応じて、呼処理プロトコル(例えば、SIP)に基づいた呼制御処理を行い、発呼、着呼、通話開始/終了等の呼ステータスに基づいて自らイベントの発行を行う。呼状態管理部34は、各電話加入者の呼状態を呼状態情報として保持している。呼状態情報は、プロトコル処理部33の呼制御処理の進行に伴って生成又は変更される。
【0019】
呼状態引継ぎ部35は、系切替処理部36からの系切替指示に応じて、他系との間で同期を取り、系切替時に自身が新たな運用系である場合には他系の呼状態情報の複製を自身に取り込む。一方、系切替時に自身が以前に運用系であった場合には自系の呼状態情報の複製を他系に提供する。例えば、呼処理部30が以前の運用系とし呼処理部40を新たな運用系とする系切替時には、呼状態引継ぎ部35は、呼状態管理部34が保持する呼状態情報の複製を作成する。その一方で、呼状態引継ぎ部45は、他系の呼状態引継ぎ部35から当該複製を取り込み、これを自系の呼状態管理部44に保持する。
【0020】
系切替処理部36は、系切替要求の発生を検知して、呼状態引継ぎ部35、プロトコル処理部33及びイベント発行部32に系切替を指示する。系切替処理部36は、他系の系切替処理部46と連携して系切替のタイミングの同期を図り系切替を指示する。系切替要求の発生としては、例えば、外部からの入力操作、障害発生及び所定時刻の到来がある。
【0021】
図2Aは、呼処理パケットP1及び切替通知パケットP2を各々示している。呼処理パケットP1は、発呼、着呼、通話開始/終了等の処理内容を指定する処理識別と、当該処理に対応する呼制御情報とから構成される。切替通知パケットP2は、運用系及び待機系を指定する系切替識別と、開始フラグ及び終了フラグと、から構成される。系切替識別は、例えば、呼処理部30を運用系とし呼処理部40を待機系とする旨を識別する情報を含む。開始フラグはON又はOFFの状態があり、ONである場合に系切替の開始を指示している。終了フラグはON又はOFFの状態があり、ONである場合に系切替の終了を指示している。
【0022】
図2Bは、呼状態情報P5の構成例を各々示している。呼状態情報P5は、各々が1つの呼に対応する複数の呼状態情報テーブルT1〜Tn(nは正数)から構成される。1つの呼状態情報テーブルT1は、例えば、呼単位に振られる呼識別、発呼加入者番号、着呼加入者番号、呼ステータスと、通話開始時刻、通話終了時刻、音声圧縮方式、及び課金情報等からなる。呼ステータスは、発呼、着呼、通話開始/終了等の状態情報のみならず、呼制御に係るより詳細のイベントの発生状態を含み得る。呼状態情報P5の構成及び内容は、VoIPシステム50に用いられる呼制御プロトコルに依存して多様な形態があり得るが、系切替時においても呼状態情報P5を参照することで呼継続可能とする情報が含まれている必要がある。
【0023】
図3は、呼継続を実現する呼処理部30及び呼処理部40の系切替動作を示している。本図において、切替前の系状態は、運用系が呼処理部30とし、待機系が呼処理部40とする。従って、系切替以前において、運用系である呼処理部30は、幾つかの呼を処理中であり、当該処理中の呼毎に図2Bに示される例の如き呼状態情報P5を呼状態管理部34に保持している。待機系である呼処理部40は、待機中であって処理中の呼を抱えてはいない。以下の動作手順の説明において、図1に示された各部の構成要素が適宜参照される。
【0024】
先ず、呼処理部30は、系切替要求の発生を契機として系切替開始する(ステップS1)。呼処理部30は、切替通知パケットP2をネットワークインタフェース部10に送信する。具体的には、系切替処理部36が、プロトコル処理部33及びイベント発行部32のそれぞれに系切替の指示を行う。この指示に応じて、イベント発行部32は、切替通知パケットP2を生成し、これをネットワークインタフェース部10のパケット多重振分部14に送信する。このとき、切替通知パケットP2には、「系切替開始」を示すために開始フラグがONに設定されている。
【0025】
次に、切替通知パケットP2に応じて、ネットワークインタフェース部10は、CAサーバ91から受信した呼処理パケットP1の蓄積を開始すると共に、呼処理パケットP1の振分を停止する(ステップS2)。具体的には、パケット多重振分部14が「系切替開始」を示す切替通知パケットP2に応じて、蓄積処理部13に対して蓄積指示P3を設定する。蓄積処理部13は、蓄積指示P3の設定を確認後、CAサーバ91から受信される呼処理パケットP1を蓄積することによって、パケット多重振分部14へのパケット中継を一時的に停止する。従って、それ以降にCAサーバ91から受信される呼処理パケットP1は、すべて蓄積処理部13で一時的に蓄積される。パケット多重振分部14は呼処理パケットP1を振り分けることなく、結果的に呼処理部30又は呼処理部40への呼処理パケットP1の送信が停止される。
【0026】
一方、呼処理部30は、切替通知パケットP2の送信後、応答処理を停止すると共に、新規イベントの発生を停止する(ステップS3)。すなわち、プロトコル処理部33は、既に発生していたイベントによって新たな呼処理パケットを待つ応答待ち状態があるか否かに関わらず呼制御を停止すると共に、新規イベントを自ら発行する動作を停止する。
【0027】
次に、呼処理部30は、「無処理状態」であるか否かを判定する(ステップS4)。切替直前にネットワークインタフェース部10から送信された呼処理パケットP1に対してなお処理を行っている場合が僅かの確率であり得る。この場合、無処理状態ではないと判定される。この場合当該処理後に改めて応答処理を停止すると共に、新規イベントの発生を停止する(ステップS3)。一方、ネットワークインタフェース部10は呼処理パケットP1の振分を停止していることから、極短時間で呼処理部30は「無処理状態」となり、「無処理状態」であると判定される。
【0028】
次に、「無処理状態」の判定に応じて、呼処理部30は、呼状態情報P5の複製を呼処理部40に向けて転送する(ステップS5)。具体的には、呼処理部30の呼状態引継ぎ部35は、呼状態管理部34において保持されていた呼状態情報P5の複製を作成し、これを呼処理部40の呼状態管理部44に向けて転送する。呼状態情報P5は、図2Bに示される如き呼状態情報テーブルT1〜Tnからなり、切替時に運用系であった呼処理部30が処理中であった全ての呼の呼状態情報を含んでいる。
【0029】
一方、呼処理部40は、当該呼状態情報P5の転送に応じて、呼状態情報P5の複製を保持する(ステップS6)。当該転送された呼状態情報P5の複製は呼処理部40の呼状態管理部44に保持される。次いで、呼処理部40は系切替を終了する(ステップS7)。この際に呼処理部40は、切替通知パケットP2をネットワークインタフェース部10に送信する。具体的には、呼処理部40の系切替処理部46はイベント発行部42に対して系切替終了を指示し、イベント発行部42は切替通知パケットP2をネットワークインタフェース部10のパケット多重振分部14に送信する。切替通知パケットP2には、「系切替終了」を示すために終了フラグがONに設定されている。
【0030】
当該切替通知パケットP2に応じて、ネットワークインタフェース部10は、呼処理パケットP1の蓄積を停止し、呼処理パケットP1の振分を再開する(ステップS8)。具体的には、ネットワークインタフェース部10のパケット多重振分部14は、「系切替終了」を示す切替通知パケットP2の受信に応じて、蓄積処理部13に対する蓄積指示P3の設定を解除する。蓄積処理部13は、蓄積指示P3の設定の解除に応じて、パケット多重振分部14へのパケット送信を再開する。パケット多重振分部14は、新たな運用系である呼処理部40のイベント監視部41に向けて呼処理パケットP1の振り分けを再開する。
【0031】
次に、呼処理部40は、応答処理を再開すると共に、新規イベントの発生を再開する(ステップS9)。具体的には、呼処理部40のプロトコル処理部43は、呼状態管理部44に保持された呼状態情報に基づいて既に発生していたイベントを認識して応答処理を再開し、呼制御の進行と共に新規イベントの発行を行う。以上の系切替動作の結果、切替後の系状態は、運用系が呼処理部40となり、待機系が呼処理部30となる。
【0032】
以上の実施例において、呼処理部30及び40の系切替において、呼処理パケットP1がネットワークインタフェース部10で一時的に蓄積される。これにより、切替直前に運用系であった呼処理部30に無処理状態を作出することができ、応答待ちをすることなく極短時間で系切替が可能となる。また、切替直前に運用系であった呼処理部30から新たに運用系となる呼処理部40に呼状態情報P5の複製が転送される。これにより、新たに運用系となる呼処理部40は、呼状態情報P5に基づいて応答処理を引き継ぎ、短時間且つ円滑に呼継続が可能となる。
【0033】
尚、本実施例では、2系の呼処理部30及び40に対して、1系のネットワークインタフェース部10が用いられている。この場合、呼処理部30と呼処理部40との系切替をIP網90及びCAサーバ91は意識する必要はない。そのため、CAサーバ91は、相手先であるネットワークインタフェース部10のMACアドレスを固定的に認識していれば足り、VoIPシステム50側の系切替に際して、CAサーバ91は相手側のMACアドレスを変更する必要はなく、MACアドレス変更に伴うパケットロスの危険がない。
【0034】
また、複数の呼処理部30及び40に対して1つのフローティング(仮想)IPアドレスをあらかじめ設定することも可能であり、パケット多重振分部14は、常に当該フローティングIPアドレスに向けて処理パケットP1を送信することにより、当該フローティングIPアドレスに関連付けられた呼処理部のうちで稼働している運用系の呼処理部(例えば、呼処理部40)が当該処理パケットP1を受信することができる。これにより、パケット多重振分部14における運用系の確認が不要となり、系切替時間をより短くすることが可能となる。
【0035】
さらに、状態引継ぎ部35と状態引継ぎ部45との同期処理において、系切替時ではなく、呼状態が変化する度に呼状態情報P5の複製を両者間で転送することも可能である。これにより、常に呼状態情報P5が両系で一致することとなり、系切替時における呼状態情報P5の複製転送が不要となる。
【0036】
<第1の変形例>
図4は、本発明の第1の変形例におけるVoIPシステムを示している。上記した実施例では、呼処理部30及び40とネットワークインタフェース部10との間の系切替通知に、IPプロトコルに従って送受信される切替通知パケットP2が用いられている。これに対して、本第1の変形例における系切替通知には、本図に示されるように、切替通知パケットP2に代えて、切替状態信号P4が用いられる。切替状態信号P4は、例えば、呼処理部30の系切替通知部37からネットワークインタフェース部10の系切替受信部15に送信される。系切替受信部15は、切替状態信号P4による切替通知に応じて蓄積処理部13に対する蓄積指示P3の設定を行う。
【0037】
<第2の変形例>
図5は、本発明の第2の変形例におけるVoIPシステムを示している。図1におけるVoIPシステムは1系のネットワークインタフェース部10のみから構成されていた。これに対して、第2の変形例では、図1に示されたネットワークインタフェース部10が冗長構成され、第1のネットワークインタフェース部10と第2のネットワークインタフェース部20との2系からなる。この場合、ネットワークインタフェース部10及び20の何れか1系が運用系に設定され、呼処理部30及び40からの切替通知パケットは、運用系のネットワークインタフェース部(例えば、ネットワークインタフェース部20)に向けて送信され、呼処理部30及び40間の系切替が実行される。
【符号の説明】
【0038】
10、20 ネットワークインタフェース部
11、21 入力処理部
12、22 出力処理部
13、23 蓄積処理部
14、24 パケット多重振分部
15 系切替受信部
30、40 呼処理部
31、41 イベント監視部
32、42 イベント発行部
33、43 プロトコル処理部
34、44 呼状態管理部
35、45 呼状態引継ぎ部
36、46 系切替処理部
50 VoIPシステム
90 IP網
91 CAサーバ
P1 呼処理パケット
P2 切替通知パケット
P3 蓄積指示
P4 切替状態信号
P5 呼状態情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼処理パケットに応じて呼状態情報を更新しつつ呼制御を行う少なくとも2系からなる呼処理部と、前記呼処理部とIP網との間で前記呼処理パケットを中継する少なくとも1系からなるネットワークインタフェース部と、を含む冗長化VoIPシステムであって、
前記呼処理部は、
自身が運用系の呼処理部である場合に、系切替要求の発生に応じて、前記呼制御を停止すると共に、系切替開始通知を前記ネットワークインタフェース部に送信する系切替開始手段と、
自身が前記系切替開始通知に対応する新たな運用系の呼処理部である場合に、以前に運用系であった呼処理部から前記呼状態情報の複製を取り込み、前記呼状態情報に基づいて前記呼制御を再開し、系切替終了通知を前記ネットワークインタフェース部に送信する系切替終了手段と、を含み、
前記ネットワークインタフェース部は、前記系切替開始通知に応じて、前記呼処理パケットを一時的に蓄積して前記呼処理部への中継を停止し、前記系切替終了通知に応じて、前記呼処理パケットの蓄積を停止して前記呼処理部への中継を再開することを特徴とする冗長化VoIPシステム。
【請求項2】
前記系切替開始手段は、前記呼制御によって既に発生したイベントによって新たな呼処理パケットを待つ応答待ち状態があるか否かに関わらず前記呼制御を停止し、前記系切替終了手段は、前記呼状態情報に基づいて当該既に発生したイベントを認識して前記呼制御を再開することを特徴とする請求項1に記載の冗長化VoIPシステム。
【請求項3】
前記系切替要求の発生は、入力操作、障害発生及び所定時刻の到来のうちの何れか少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の冗長化VoIPシステム。
【請求項4】
前記ネットワークインタフェース部は、前記呼処理パケットを前記呼処理部のうちで運用系の呼処理部のみに中継することを特徴とする請求項1に記載の冗長化VoIPシステム。
【請求項5】
前記ネットワークインタフェース部を少なくとも2系含み、前記系切替開始手段及び前記系切替終了手段は、前記系切替開始通知及び系切替終了通知を、前記ネットワークインタフェース部のうちで運用系のネットワークインタフェース部に通知することを特徴とする請求項1に記載の冗長化VoIPシステム。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188031(P2011−188031A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48234(P2010−48234)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)株式会社OKIソフトウェア (173)
【Fターム(参考)】