説明

写像投影型の電子線装置及び該装置を用いた欠陥検査システム

【課題】軸上色収差を小さくして、高スループットで試料の評価を行う。
【解決手段】電子銃1-1から放出された電子ビームが1次電子光学系を介して試料7-1上に照射され、それにより試料から放出された電子が2次電子光学系を介して検出器12-1において検出される。軸上色収差補正用の多極子レンズからなり、2回結像するウィーンフィルタ8-1が、2次電子光学系の拡大レンズ10-1と1次電子ビーム及び2次電子ビームを分離するビーム分離器5-1との間に配置され、対物レンズ14-1で生じた軸上色収差を、ウィーンフィルタ8-1で補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写像投影型の電子線装置及び該装置を用いた欠陥検査システムに関し、より詳細には、半導体ウエハ等の試料の欠陥検査等を高スループットで行えるようにした、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置及び該装置を用いた欠陥検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リターディング電圧を印加した試料に一次電子線を照射し、該照射点から放出される2次電子を検出することにより、試料の画像を得るようにした電子線装置において、軸上色収差を小さくするには、試料面と対物レンズとの間に印加される電界強度を大きくする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、軸上色収差を小さくしようとして試料面での電界強度を大きくすると、試料と対物レンズとの間で放電が生じてしまう。このため、上記の電界強度を比較的小さく設定せざるを得ず、結局、軸上色収差が比較的大きいという問題点がある。
本発明は、上記したような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電子線装置において、軸上色収差を小さくして、2次電子の透過率を大きくし、もって、高スループットで試料の評価を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記した目的を達成するために、本発明に係る、試料の表面を検査するための写像投影型の電子光学系を有する電子線装置においては、
電子ビームを放出する電子銃と、
該放出された電子ビームを試料上に導いて照射する1次電子光学系と、
電子を検出する検出器と、
電子ビームの照射により試料から放出された、試料表面の情報を有する電子ビームを検出器に導く2次電子光学系であって、2回結像するウィーンフィルタを備えている2次電子光学系と
を備えていることを特徴としている。
【0005】
本発明はまた、上記した写像投影型の電子光学系を有する電子線装置を備え、試料の表面の欠陥を検査する欠陥検査システムを提供し、該システムはさらに、電子線装置の検出器により検出した電子に含まれる試料表面の情報に基づいて、試料表面の画像を生成する画像取得手段と、該取得した画像を参照画像と対比して試料表面の欠陥の有無を検査する欠陥評価手段とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る写像投影型の電子光学系を有する電子線装置は、上記したように、2次電子光学系が2回結像するウィーンフィルタを備えており、これにより軸上色収差を補正しているので開口角を大きくすることができ、ビーム径を小さく保ってビーム電流が大きい電子ビームを得ることができ、したがって、スループットを向上させることができる。
また、上記したように、電子線装置のスループットを向上させることができるので、該電子線装置を備えた欠陥検査システムにおいても、同様に、検査のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本発明の第1の実施形態の電子線装置の電子光学系を示す説明図である。
【図1B】図1に示した電子線装置におけるウィーンフィルタの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の電子線装置の電子光学系を示す説明図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の電子線装置の電子光学系を示す説明図である。
【図4】図3に示した電子線装置における光路を示す説明図である。
【図5】写像投影型の電子線装置において、軸上色収差を除去したことによる作用効果を説明するためのグラフである。
【図6】本発明の電子線装置を適用可能な試料の欠陥検出システムを示す説明図である。
【図7】図6に示した検査システムの主要構成要素の平面図であって、図6の線B−Bに沿って見た図である。
【図8】図6に示した検査システムのウエハ搬送箱とローダーとの関係を示す図である。
【図9】図6に示した検査システムのミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、図6の線C−Cに沿って見た図である。
【図10】図6に示した検査システムのローダーハウジングを示す図であって、図7の線D−Dに沿って見た図である。
【図11】本発明に係る検査システムに使用される静電チャックを説明する図である。
【図12】本発明に係る検査システムに使用される静電チャックの他の例を説明する図である。
【図13】本発明に係る検査システムに使用される静電チャックのさらに他の例を説明する図である。
【図14】本発明に係る検査システムに使用されるブリッジツールを説明する図である。
【図15】本発明に係る検査システムに使用されるブリッジツールの他の例を説明する図である。
【図16】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図17】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図18】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図19】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図20】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図21】本発明に係る電子線装置における欠陥検査手順を説明する図である。
【図22】本発明に係る検査システムにおける制御系の構成を説明する図である。
【図23】本発明に係る検査システムにおけるユーザインターフェースの構成を説明する図である。
【図24】本発明に係る電子線装置におけるユーザインターフェースの構成を説明する図である。
【図25】図15のロードロック室におけるエレベータ機構の構成と動作手順を説明する図である。
【図26】本発明に係る検査システムの電子光学系に適用可能なウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。
【図27】ウエハのアライメントが必要な理由を説明するための図である。
【図28】ウエハのアライメント実行状態を説明するための図である。
【図29】ウエハのアライメント実行後のダイの配列状態のダイマップを示す図である。
【図30】ウエハのアライメント手順における座標値更新を説明する図である。
【図31】ウエハのアライメント手順における回転量及びY方向サイズを説明する図である。
【図32】ウエハのアライメント手順中のフォーカスレシピ作成におけるフォーカス値の補間を説明する図である。
【図33】ウエハのアライメント手順において生じる誤差を説明する図である。
【図34】半導体デバイスの検査手順の基本的な流れを説明する図である。
【図35】検査対象ダイの設定を示す図である。
【図36】ダイ内部の検査領域の設定を説明する図である。
【図37】半導体デバイスの検査手順を説明する図である。
【図38】半導体デバイスの検査手順を説明する図である。
【図39】検査ダイが1個の場合の走査例及び検査ダイの一例を示す図である。
【図40】半導体バイスの検査手順における、参照画像の生成方法を説明する図である。
【図41】半導体デバイスの検査手順における隣接ダイ比較方法を説明する図である。
【図42】半導体デバイスの検査手順における隣接ダイ比較方法を説明する図である。
【図43】半導体デバイスの検査手順における基準ダイ比較方法を説明する図である。
【図44】半導体デバイスの検査手順における基準ダイ比較方法を説明する図である。
【図45】半導体デバイスの検査手順におけるフォーカスマッピングを説明する図である。
【図46】半導体デバイスの検査手順におけるフォーカスマッピングを説明する図である。
【図47】半導体デバイスの検査手順におけるフォーカスマッピングを説明する図である。
【図48】半導体デバイスの検査手順におけるフォーカスマッピングを説明する図である。
【図49】半導体デバイスの検査手順におけるフォーカスマッピングを説明する図である。
【図50】本発明に係る電子線装置を半導体製造ラインに接続した実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る写像投影型の電子光学系を有する電子線装置の電子光学系を示す説明図である。図1Aに示すように、この電子線装置においては、電子銃1-1から放出された電子線を、コンデンサレンズ2-1、成形レンズ4-1、及びマルチ開口を設けた開口板3-1を介して矩形に成形し、得られた電子線をE×B分離器5-1により試料面7-1に垂直となるように偏向し、対物レンズ6-1によって試料面7-1に合焦することにより、試料面を各電子線により矩形に照射する。一方、この照射により試料面7-1から放出された2次電子は、対物レンズ6-1により位置18-1に拡大像を作り、多極子レンズを含むウィーンフィルタ8-1により、拡大レンズ10-1の手前の位置である焦点13-1に拡大像を形成する。
【0009】
このとき、対物レンズ6-1並びにウィーンフィルタ8-1により、焦点13-1の位置を変更せずに、焦点13-1での軸上色収差を消去することができる。すなわち、軸対称レンズである対物レンズ6-1は正の軸上色収差を発生させ、ウィーンフィルタ8-1は負の軸上色収差を発生させるが、これらのレンズ位置及び電極に印加する電圧を調整することにより、正及び負の軸上色収差の絶対値を等しくさせることができる。これにより、対物レンズ6-1により生じる正の軸上色収差を、ウィーンフィルタ8-1により生じる負の軸上色収差によりキャンセルすることができる。なお、焦点13-1における軸上色収差をゼロに近い負の値に調整してもよく、これにより、拡大レンズ10-1及び11-1で発生する小さい正の軸上色収差をキャンセルすることができる。
【0010】
焦点13-1に結像された拡大像は、さらに拡大レンズ10-1を通過し、拡大レンズ11-1の手前に拡大像が生成され、そして、拡大レンズ11により、検出器12-1の検出面に結像させる。検出器12-1は、形成された拡大像に対応する光信号を生成し、該光信号を光ファイバ(不図示)により8×8又は12×12等のCMOSイメージセンサ(不図示)に伝搬する。CMOSイメージセンサは、光信号を電気信号に変換し、該電気信号は、画像データ処理装置(不図示)により処理される。
光学系において軸上色収差が全収差の大部分を占めているが、図1に示した電子線装置においては、焦点13-1に形成される拡大像を、軸上色収差がほとんどゼロであるか又はわずかに負の値であるように調整することができるため、収差を一定値以下に押さえた状態で開口角を大きくできるので、2次電子の透過率を向上させることができる。
【0011】
図1Aに示した電子線装置においては、軸上色収差を消去又は低減させるだけではなく、軸外収差を低減させるよう構成されている。すなわち、対物レンズ6-1は、図1Aに示すように、磁気ギャップが試料7-1の側にある磁気レンズ14-1と、軸対称レンズ15-1とで構成され、軸外色収差を低減させるために、磁気レンズ14-1のボーア径D1を視野直径の50倍以上に設定している。また、対物レンズ6-1の主面と試料面7-1の距離D2を、10mm以上に大きく設定することによっても、軸外収差を低減させることができる。
図1Aに示した電子線装置において、一次電子光学系側である、成形レンズ4-1とE×B分離器5-1との間に2段以上の軸合わせ偏向器を配置してもよい。
【0012】
図1Bは、ウィーンフィルタ8-1の断面図を示している。このウィーンフィルタにおいては、12個の電極8-1-1〜8-1-12を光軸8-1-15の周りに配置して、それぞれ独立した電圧を電源から印加可能にしている。参照番号8-1-16は、電極それぞれに独立して電圧を供給するようにするための絶縁スペーサである。そして、コイル8-1-13及び8-1-14に電流を流すことにより、ウィーン条件を満たす磁場を発生することができる。2次電子光学系の像点18-1から出た電子線は、上記の磁場と電極に印加する電圧を適切に設定することにより、ウィーンフィルタ8-1の中央部19-1で結像し、さらにウィーンフィルタ8-1を出た位置13-1で再度結像する。このように、2回結像させることにより、視野にわたって、3次収差が小さく、軸上色収差が負の値になる。この点については、D.Ionovicin et. al, Rev. Sci. Instrum, Vol.75, No. 11, Nov, 2004に記載されている。
【0013】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る写像投影型の2次電子検出系を有する電子線装置の電子光学系を示している。この電子線装置においては、電子銃21-1から放出された電子線は、コンデンサレンズ23-1で集束され、マルチ開口を有する開口板25-1を照射する。これにより分離形成されたマルチビームは、成形レンズ26-1及び縮小レンズ28-1を介して第1の縮小像を形成し、さらに対物レンズ34-1で縮小されて、試料35-1上に縮小像を形成する。このとき、第1の縮小像の形成位置と対物レンズ34-1との間には、4段の4極子レンズ30-1-1、30-1-2、31-1-1及び31-1-2が備えられており、これら4極子レンズにより、対物レンズ34により生じる軸上色収差を補正することができる。
試料35-1から放出された2次電子による電子ビームは、拡大レンズ36-1の手前に第1の拡大像を形成し、該拡大レンズ36-1でさらに拡大されて、検出器38-1の検出面に、試料35-1上の像の100倍程度の像を形成する。検出器38-1は、形成された拡大像に対応する光信号を生成し、該光信号を光ファイバによりPMT(不図示)に伝搬する。PMTは、光信号を電気信号に変換し、該電気信号は、画像データ処理装置(不図示)により処理される。
図2に示した電子線装置において、1次電子光学系に、4極子レンズの代わりに多極子レンズを含むウィーンフィルタを備えることができる。
【0014】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る電子線装置の電子光学系を示している。この電子線装置においては、電子銃41-1から放出される電子線は、電磁レンズである軸対称レンズ40-1を介して位置54-1に縮小画像を形成し、位置54-1から発散される電子線を、2回集束するウィーンフィルタ42-1により位置43-1に結像し、さらに、そこから発散する電子線を、軸対称レンズ44により光軸に平行な電子線とする。この実施形態では、1段の軸対称レンズ44-1を用いているが、該軸対称レンズは2段以上であってもよい。光軸に平行となった電子線は、偏向器47-1、電磁偏向器からなるビーム分離器48-1を介し、またマルチ開口レンズ45-1を介して、試料46-1上に複数の電子線として集束される。
【0015】
なお、電子銃のクロスオーバのサイズは50μmφ程度であるから、50nmφの電子線を得るためには25nmφのクロスオーバ像を造る必要があり、電子線の径φを約1/2000に縮小する必要があるが、位置54-1の前段の軸対称レンズ40-1により1/38程度に縮小し、最終段のマルチ開口レンズ45-1によりさらに1/60程度に縮小することにより、約1/2000の縮小率が得られ、収差を含めて50nmφのマルチ電子ビームを得ることができる。また、軸対称レンズ44-1の後段にマルチ開口板53-1を設ければ開口角が小さくなり、軸上色収差が低減され、1/1800程度の縮小率で50nmφのマルチ電子ビームが得られる。この場合、光路長を短くすることができるので、空間電荷効果によるボケを低減させることができる。
【0016】
第3の実施形態の電子線装置はまた、上記したように、2つの軸対称レンズ40-1及び44-1の間に、軸上色収差を補正するためのウィーンフィルタ42-1を設けている。ウィーンフィルタ42-1は、図1Bを参照して説明した構成と同様な構成を有し、該ウィーンフィルタにより軸上色収差を補正することにより、マルチ開口板53-1の口径を大きくすることができるので、電流値の大きいマルチ電子ビームを得ることができる。ウィーンフィルタの代わりに、4極子レンズを4段設けてもよい。
マルチ開口レンズ45-1は、3枚の金属板を重ねて構成されており、これら金属板を貫通して、図4に示すように、m行n列の開口がマトリクス状に形成されている。中央の金属板には、正の高電圧が印加される。なお、図4に示した開口パターンにおいて、開口径d1と開口ピッチ(隣接する2つの開口の中心間の距離)d2との比d1/d2を2/3〜4/5に設定すれば、隣接する開口の影響を受けることがないことが、シミュレーションにより得られた。
【0017】
ここで、電子銃41-1から偏向器47-1までの光軸と、マルチ開口レンズ45-1の光軸とは意図的に偏倚させ、偏向器47-1により、電磁ビーム分離器48-1の位置に軸あわせを行うようにしている。2つの光軸のオフセット量(2つの光軸間の距離)は、偏向器47-1の偏向中心と電磁ビーム分離器48-1の偏向中心との距離をD3とすると、
オフセット量=D3・tan−115°
の関係を満足するように設定する。この例では、電磁偏向器からなるビーム分離器48-1により偏向量は、1次電子ビームで15°、2次電子で16°偏向させるよう設定したが、これらの以外の値に設定してもよい。
【0018】
電磁偏向器からなるビーム分離器48-1による2次電子の偏向方向は、一次電子の偏向方向が逆であるから、図で右方向すなわちレンズ45-1の光軸に関して1次電子ビームの方向とは逆方向となり、2次電子が一次電子ビームから分離される。2次電子ビームは、偏向器48-1の偏向主面近傍50-1(図4)に試料像を形成するので、2次電子への偏向色収差が小さい。ビーム分離器48-1により1次電子ビームと分離された2次電子ビームは、拡大レンズ49-1を介してエリア検出器51-1に拡大像を形成して検出される。そして、画像データ処理装置(不図示)により、マルチビームである1次電子ビームの試料46-1上への照射配置情報を参照して、試料面の画像が合成される。拡大率が不足する場合は、2次光学系の拡大レンズの段数を増大させればよい。
【0019】
図3に示した電子線装置を、該装置における光路を示した図4を参照して、より詳細に説明する。電子銃41-1が形成するクロスオーバ41-1-1から発散した電子線は、焦点距離の短い軸対称レンズ40-1により絞りかつ発散角が大きくされて、ウィーンフィルタ42-1に入射され、ウィーンフィルタ42-1の中央部43-1でクロスオーバを形成する。ウィーンフィルタ42-1を出ると、位置56-1においてクロスオーバを形成し、軸対称レンズ44-1に入射し、該軸対称レンズ44-1により光軸に平行な並行ビームとなる。
並行ビームは、マルチ開口板53-1のマルチ開口によりビームの開口角が制御されて軸上色収差が小さく保たれる。次いで、電磁偏向器47-1により15°偏向され、電磁偏向器からなるビーム分離器48-1により逆方向に15°偏向される。これは、これら2つの偏向器に、絶対値が同じで偏向方向が逆の偏向信号を供給することによって行われる。これにより、マルチ電子ビームは、再度、z軸方向すなわち試料46-1の表面に対して垂直となる。次いで、マルチ電子ビームは、マルチ開口レンズ45-1を介して試料46-1に照射されるが、偏向器47-1及び48-1による偏向が相互に逆方向で同一角であるため、偏向色収差が発生せず、さらに偏向器47-1又は48-1に軸合わせ信号を重畳すれば、該マルチ開口レンズ45-1とマルチ開口板53-1のマルチ開口との軸合わせが保持される。
【0020】
試料46-1から放出された2次電子は、印加されている加速電界で集束され、小さいビーム束になって、対物レンズ45-1を殆どロスが生じない状態で通過する。そして、電磁偏向器であるビーム分離器48-1により2次光学系の方向に偏向され、拡大レンズ49-1に入射する。図4中、試料46-1からの複数の2次電子ビームの内、マルチ開口レンズ45-1の中央の1つのレンズに対応する2次電子ビームの軌道を点線で示しているが、該軌道上の2次電子ビームは、ビーム分離器48-1を通過後に位置50-1に結像する。そして、拡大レンズ49-1により検出器51-1の検出面に拡大像を形成する。検出器51-1は、形成された拡大像に対応する光信号に生成し、該光信号を光ファイバにより8×8又は12×12等のPMT(不図示)に伝搬する。PMTは、光信号を電気信号に変換し、該電気信号は、画像データ処理装置(不図示)により処理される。
【0021】
ウィーンフィルタ42-1の各電極に印加される電圧及びコイルに流す電流は、クロスオーバ位置54-1及びウィーンフィルタ42-1の軸方向位置、補正される軸上色収差の大きさ、ビームエネルギ等を考慮して、シミュレーションの助けを借りて軸上色収差が消えるように設定すればよい。
また、第1〜第3の実施形態の電子線装置において、4極子レンズを4極以外の多極子レンズで構成してもよい。特に、4〜12極子レンズを用いることが好適であり、段数を4段とした場合には、ビーム軌道を前半部と後半部で点対称にして2次の収差発生を防止することができるので、最適である。
【0022】
ここで、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置において、複数段の多極子レンズを用いて軸上色収差を消去したことによる作用効果を説明する。
写像投影型の電子線装置において、クーロン効果によるボケδcは、以下のように表すことができる。
σc=I・L/(α・V3/2
ただし、I:電子ビーム電流
L:光路長
α:開口角
V:電子ビームエネルギ
【0023】
また、図5は、試料面上収差(nm)と開口角αとの関係をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションにおいて用いたレンズは、静電レンズ2段を用いたタブレット型であり、倍率色収差を消したレンズである。また、試料面上での電界強度を1.5kV/mm程度となるように、レンズへの印加電圧を設定した。図5に示したシミュレーション結果によれば、軸上色収差を除去すると、開口角αが約3倍に向上できる。写像投影型の電子光学系を有する電子線装置においては、試料面上収差の中では軸上色収差が支配的であり、試料面上収差を一定としたときに、軸上色収差を除去すると、他の収差を除去しなくても開口角αを3倍程度に向上させることができることを示している。
【0024】
そして、上記式において、ボケδcを一定とした場合、開口角αを3倍にすればビーム電流Iも3倍にすることができ、透過率は開口角の2乗であるから9倍となる。したがって、ビーム電流が3倍で透過率が9倍となるから、これらの乗算で表されるスループットすなわち検査速度を27倍に向上させることができる。また、電子銃にLaBを使用して第2の実施形態の電子線装置ようにマルチビーム方式にすることにより、検査速度をより向上させることができる。
検査速度が大幅に向上することは、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置において、極めて重要である。
【0025】
なお、SEM(走査型電子顕微鏡)では、多極子レンズの後方に走査偏向器を配置しているため、偏向器の偏向走査の如何に拘わらず、その前段に配置された多極子レンズにおいては、光軸上のみを電子線が通過している。したがって、多極子レンズにより軸上色収差を補正することが容易であった。
これに対して、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置においては、光軸上のみならず光軸から離れた位置の像も低収差にする必要があるため、多極子レンズを単に用いるだけでは軸上色収差を補正することが困難であると考えられていた。また、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置において生じる収差の大部分が軸上色収差であることが、認識されていなかった。
本発明者は、種々のパラメータを用いて実機テスト及びシミュレーションを行うことにより、写像投影型の電子光学系を有する電子線装置においても、多極子レンズを用いて好適に軸上色収差を補正することができることを発見し、これにより、上記したようにスループットを大幅に向上させることができるようにしたものである。
【0026】
次に、本発明に係る電子線装置を組み入れて使用することができる、半導体ウエハの評価用の検査システムの全体構成について説明する。
図6及び図7は、検査システム1の主要な構成要素を示す立面図及び平面図である。検査システム1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダーハウジング40と、主ハウジング30内に配置され、ウエハであるウエハWを載置して移動させるステージ装置50と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、主ハウジング30に取り付けられた電子光学系70とを備え、それらは、図6及び図7に示したような位置関係で配置されている。上述した本発明の電子線装置は、電子光学系70として組み入れられる。
【0027】
検査システム1は、また、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87(図26に図示)を構成する光学顕微鏡871とを備えている。検査システム1はさらに、これらの要素の動作を制御するための制御装置2を備えている。
以下に、検査システム1の主要な要素(サブシステム)それぞれの構成について、詳細に説明する。
【0028】
カセットホルダ10
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個のカセット)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送して自動的にカセットホルダ10に装填する場合には、それに適した構造のものを、また人手により装填する場合には、それに適したオープンカセット構造のものを、それぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備えている。カセットcは、昇降テーブル上に図7において鎖線で示した状態に自動的に装填可能であり、装填後、図7において実線で示した状態に自動的に回転され、ミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は、図6において鎖線で示した状態に降下される。
【0029】
別の実施形態では、図8に示すように、複数の300mmウエハWを箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(不図示)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬送出入り口ドアの自動開閉装置とに連結されて、箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬送出入りドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、ウエハWを保持するための溝型ポケット507とから構成されている。この実施形態では、ローダー60のロボット式の搬送ユニット61により、ウエハを出し入れする。
【0030】
なお、カセットc内に収納されるウエハは、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けたウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、検査のためにカセットc内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは、多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されており、カセット中の任意の位置のウエハを、後述する第1の搬送ユニットで保持できるようにするために、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
【0031】
ミニエンバイロメント装置20
図9は、ミニエンバイロメント装置20を図7とは異なる方向から見た立面図である。この図9並びに先の図6及び図7に示したように、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気等の気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて試料であるウエハの粗位置決めを行うプリアライナー25とを備えている。
【0032】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間21を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図9に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に下向きに取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。
【0033】
清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、これにより、搬送ユニットにより発生する恐れのある塵埃がウエハに付着するのを防止する。ハウジング22の周壁223のうち、カセットホルダ10に隣接する部分には、出入り口225が形成されている。
排出装置24は、後に説明する搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。
【0034】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出し、それに基づいて、ウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を、約±1度の精度で予め位置決めする。プリアライナー25は、ウエハであるウエハの座標を決める機構の一部を構成し、ウエハの粗位置決めを担当する。
【0035】
主ハウジング30
図6及び図7に示したように、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32は、フレーム構造体331上に配設固定されており、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備え、ワーキングチャンバ31を外部から隔離している。この実施形態においては、ハウジング32本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを、防振装置37で阻止している。ハウジング32の周壁323の内、ローダーハウジング40に隣接する周壁には、ウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
ワーキングチャンバ31は、汎用の真空装置(図示せず)により、真空雰囲気に保たれる。台フレーム36の下には、検査システム1全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
【0036】
なお、検査システム1においては、主ハウジング30を含めて、種々のハウジングを真空排気しているが、そのための真空排気系は、真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、ウエハ室、ロードロック室等を、所定のシーケンスに従って真空排気を行う。各部においては、必要な真空度を達成するように、真空バルブが制御される。そして、常時、真空度の監視を行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブ等によるチャンバ間又はチャンバと排気系との間の遮断緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保をする。真空ポンプとしては、主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は、10−3〜10−5Pa、好ましくは、その1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
【0037】
ローダーハウジング40
図10は、図6とは別の方向から見たローダーハウジング40の立面図を示している。図10並びに図6及び図7に示すように、ローダーハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は、底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有しており、2つのローディングチャンバを外部から隔離している。仕切壁434には、2つのローディングチャンバ間でウエハWの受け渡しを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置20及び主ハウジング30に隣接した部分には、出入り口436及び437が形成されている。このローダーハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されて支持されている。したがって、このローダーハウジング40にも、床の振動が伝達されない。
【0038】
ローダーハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されているが、これら出入り口436、226の間には、ミニエンバイロメント空間21とローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。また、ローダーハウジング40の出入り口437と主ハウジング30のハウジング本体32の出入り口325とは整合されているが、これら出入り口436、325の間には、ローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461により開口を閉じて、第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき、各チャンバを気密シールできるようになっている。
【0039】
第1のローディングチャンバ41内には、複数枚(この実施形態では2枚)のウエハWを上下に隔てて水平に支持するウエハラック47が配設されている。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、真空ポンプを含む汎用の真空排気装置(図示せず)によって、高真空状態(真空度としては、10−5〜10―6Pa)に雰囲気制御される。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保つことにより、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような2つのローディングチャンバを備えたローディングハウジング構造を採用することによって、ウエハWをローディングチャンバからワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ構造を採用することによって、欠陥等の検査のスループットを向上させ、更に、保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を、可能な限り高真空状態にすることができる。
【0040】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42にはそれぞれ、真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態において、不活性ガスベント(不活性ガスを注入して、不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)が達成される。
なお、電子線を使用する主ハウジング30において、電子光学系70の電子源すなわち電子銃として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は、一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要である。主ハウジング30の電子光学系70が配置されているワーキングチャンバにウエハWを搬入する前段階で、上記のような雰囲気制御を行うことにより、酸素に接触する可能性が低減されるため、電子源の寿命を縮めてしまう可能性が低くなる。
【0041】
ステージ装置50
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図6において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図6において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。該ホルダ55のウエハ載置面551上にウエハWを解放可能に保持する。ホルダ55は、ウエハWを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる汎用の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記した複数のテーブル52〜54を動作させることにより、載置面551上でホルダ55に保持されたウエハWを電子光学系70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図6において上下方向)に、更には、ウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に、高い精度で位置決めすることができる。
【0042】
なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ55上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の参照位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置をフィードバック回路(不図示)によって制御したり、それと共に或いはそれに代えて、ウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定して、ウエハの電子ビームに対する平面位置及び回転位置を検知し、回転テーブル54を微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ホルダ55を設けずに、回転テーブル54上にウエハWを直接載置してもよい。ワーキングチャンバ31内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。
電子ビームに対するウエハWの回転位置やX−Y座標位置を、後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することによって、信号の基準化を図ることもできる。
【0043】
更に、このホルダに設けられたウエハチャッキング機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施の形態では、図7の左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、図13の上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0044】
ウエハチャッキング機構
1)静電チャックの基本構造
電子光学系の焦点を試料面に正確にかつ短時間で合わせるために、試料面すなわちウエハ面の凹凸は極力小さくすることが好ましい。そのため、平面度良く(平面度5μm以下が好ましい)製作された静電チャックの表面にウエハを吸着することが行われる。
静電チャックの電極構造には、単極形と双極形が存在する。単極形はウエハに予め導通をとり、1つの静電チャック電極との間に高電圧(一般的に数10〜数100V程度)を印加することによってウエハを吸着する方法であり、双極形は、ウエハに導通をとる必要が無く、2つの静電チャック電極に正負逆の電圧を印加するだけでウエハを吸着できる。但し、一般的に、安定した吸着条件を得るためには、2つの電極を櫛の歯状に入り組ませた形状にする必要があり、電極形状は複雑になる。
【0045】
一方、試料の検査のためには、電子光学系の結像条件を得るため、あるいは試料面の状態を電子で観察しやすい状態にするために、ウエハに所定の電圧(リターディング電圧)を印加する必要がある。このリターディング電圧をウエハに印加すること、及びウエハ表面の電位を安定させるためには、静電チャックを上記の単極形とすることが必要である。(但し、後述するように導通針でウエハとの導通をとるまでは、静電チャックを双極形として機能させる必要ある。よって静電チャックは、単極形と双極形の切換可能な構造にしている。)ウエハの表面の電位が、各検査モードで所定の値で安定していない場合、結像条件を満足せず、きれいな画像を得ることができない。そのため、リターディング電圧の印加前に、ウエハの導通確認を確実に行う必要がある。
【0046】
したがって、ウエハに機械的に接触して導通をとらなければならない。ところが、ウエハに対する汚染防止の要求は厳しくなってきており、ウエハへの機械的接触を極力避けることが求められ、ウエハのエッジへの接触が許されない場合がある。このような場合は、ウエハ裏面にて導通をとらなければならない。
ウエハ裏面には、シリコン酸化膜が形成されていることが普通であり、そのままでは導通がとれない。そこで、ウエハ裏面に、2ケ所以上の針を接触させ、針の間に電圧を印加することによって、酸化膜を局部的に破壊し、ウエハ母材のシリコンと導通をとることができる。針に印加する電圧は、数百V程度のDC電圧もしくはAC電圧である。また針の材料としては、非磁性で耐摩耗性があり高融点材料であることが求められ、タングステン等が考えられる。またさらに耐久性を持たせるため、あるいはウエハの汚染防止のために、表面にTiNやダイヤモンドをコーティングすることも有効である。また、ウエハとの導通がとれたことを確認するために、針の間に電圧を印加し電流計により電流を測定することが有効である。導通確認を行ってから、リターディング電圧を印加することにより、ウエハ表面を所望の電位とすることができ、結像条件を満足した検査を行うことができる。
【0047】
以上のような背景から作られたのが、図11に示すようなチャッキング機構である。静電チャックには、ウエハWを安定に吸着するために櫛歯状に入り組んだ形状であることが望ましい電極19・1、19・2と、ウエハ受渡し用の3本のプッシャーピン19・3と、ウエハ印加用の2つ以上の導通針19・4とが設けられている。また、静電チャックの周囲には補正リング19・5とウエハ落とし込み機構19・6が配置される。
プッシャーピン19・3は、試料であるウエハWがロボットハンドによって搬送される際に静電チャック面上から予め突出しており、ロボットハンドの動作によってウエハWがその上に載置されると、ゆっくりと下降し、ウエハWを静電チャック上に載せる。ウエハを静電チャック上から取り出す際には、逆の動作をしてロボットハンドにウエハWを渡す役割を果たす。プッシャーピン19・3は、ウエハの位置がずれたり汚染されることが無いように表面材料を選ばなければならず、シリコンゴム、フッ素ゴム、SiCやアルミナ等のセラミックス、テフロンやポリイミド等の樹脂などを使用することが望ましい。
【0048】
プッシャーピン19・3の駆動機構としては幾つか方法がある。一つは、静電チャックの下部に非磁性アクチュエータを設置する方法である。これは、超音波リニアモータによりプッシャーピンを直接リニア駆動する方法や、回転形超音波モータとボールネジまたはラック&ピニオンギアの組み合わせでプッシャーピンの直線駆動を行う等の方法が有る。この方法は、静電チャックを搭載するXYステージのテーブル上に、プッシャー機構がコンパクトにまとめられる反面、アクチュエータやリミットセンサ等の配線が非常に多くなってしまう。これらの配線はXY動作するテーブルから試料室(メインチャンバ又は主ハウジング)壁面まで繋がるが、ステージの動作に伴って屈曲するため、大きな曲げRを持たせて配設する必要がありスペースをとってしまう。またパーティクル発生源になったり、配線の定期的な交換も必要になるので、使用数は必要最小限にするのがよい。
【0049】
そこで別方式として、外部から駆動力を供給する方法もある。ウエハWを着脱する位置にステージが移動すると、ベローズを介して真空中に突出した軸が、チャンバ外に備えられたエアシリンダで駆動されて、静電チャック下部に設けられたプッシャー駆動機構の軸を押すようになっている。軸はプッシャー駆動機構内部で、ラック・ピニオンまたはリンク機構と繋がっており、軸の往復移動がプッシャーピンの上下動と連動するようになっている。ウエハWをロボットハンドとの間で受け渡しする際には、コントローラで適切な速度に調整してエアシリンダで軸を真空中に押し出すことによって、プッシャーピン19・3を上昇させる。
なお、外部からの軸の駆動源は、エアシリンダに限るものではなく、サーボモータとラック・ピニオンやボールネジの組み合わせでも良い。また、外部からの駆動源を回転軸とすることも可能である。その場合、回転軸は磁性流体シール等の真空シール機構を介し、プッシャー駆動機構は回転をプッシャーの直線運動に変換する機構を内蔵する。
【0050】
補正リング19・5は、ウエハ端部の電界分布を均一に保つ作用を持つもので、基本的にウエハと同電位を印加する。しかし、ウエハと補正リング間の微小隙間や、ウエハと補正リング表面高さの微小な差の影響を打ち消すため、ウエハ端部電位と若干異なる電位を印加することもある。補正リングは、ウエハの半径方向10〜30mm程度の幅を持ち、非磁性で導電性の材料、例えば、チタン、リン青銅、TiN又はTiCコーティングしたアルミ等を使用することができる。
導通針19・4はばね19・7で支持されており、ウエハが静電チャック上に搭載されると、ばね力でウエハ裏面に軽く押し付けられる。この状態で、上述した様に電圧を印加することによってウエハWとの電気的導通をとる。
【0051】
静電チャック本体は、タングステン等の非磁性の平面状電極19・1、19・2と、その上に形成された誘電体から成る。誘電体の材料はアルミナ、窒化アルミ、ポリイミド等が使用できる。一般にアルミナ等のセラミックスは体積抵抗率が1014Ωcm程度の完全な絶縁体なので、材料内部での電荷移動は発生せず、吸着力としてクーロン力が作用する。これに対して、セラミックス組成をわずかに調整することによって体積抵抗率を1010Ωcm程度にすることができ、こうすることによって材料内部で電荷の移動が生じるため、ウエハ吸着力としてクーロン力より強い所謂ジョンソン・ラーベック力が作用する。吸着力が強ければその分、印加電圧を低くすることができ、絶縁破壊に対するマージンを大きくとることができ、かつ安定した吸着力も得やすい。また、静電チャック表面をたとえばディンプル状に加工することによって、静電チャック表面にパーティクル等が付着しても、パーティクルがディンプルの谷部分に落ちる可能性が生じるのでウエハの平面度に影響を与える可能性が減少する効果も期待できる。
以上より、静電チャック材料を、体積抵抗率を1010Ωcm程度に調整した窒化アルミやアルミナセラミックスとし、表面にディンプル状などの凹凸を形成し、その凸面の集合で形成される面の平面度を5μm程度に加工したものが実用的である。
【0052】
2)200/300ブリッジツールのためのチャッキング機構
200mmと300mmの2種類のウエハを機械的改造無く検査することが装置に求められることがある。その場合、静電チャックは2種類のサイズのウエハをチャッキングし、かつウエハ周縁部にウエハのサイズに合わせた補正リングを載置しなければならない。図11の(A)、(B)及び図12はそのための構造を示している。
図11の(A)は静電チャック上に300mmのウエハWを搭載した状態を示している。ウエハWのサイズより僅かに大きい(隙間0.5mm程度)内径を持った補正リング19・1が、静電チャック外周の金属性リング状部品にインローで位置決めされ載置されている。この補正リング19・1には、ウエハ落し込み機構19・2が3ヵ所設けられている。ウエハ落し込み機構19・2は、プッシャーピン19・3の駆動機構と連動した上下駆動機構によって駆動され、補正リング19・1に設けられた回転軸周りに回転可能に支持されている。
【0053】
ウエハWをロボットハンドから受ける場合、プッシャーピン駆動機構が動作し、プッシャーピン19・3を上に押上げる。それと適切なタイミングをとって補正リング19・1に設けられたウエハ落し込み機構19・2も、図11の(B)に示すように、駆動力を受けて回転する。するとウエハ落し込み機構19・2がウエハWを静電チャック中心にガイドするテーパ面を形成する。次に、押し上げられたプッシャーピン19・3にウエハWが載せられた後、プッシャーピン19・3を下降させる。ウエハ落し込み機構19・2に対する駆動力の作用タイミングをプッシャーピン19・3の下降と適切に調整することによって、ウエハWは落し込み機構19・2のテーパ面によって位置を修正されながら静電チャック上にウエハWの中心と静電チャックの中心がほぼ一致するように置かれる。
落し込み機構19・2のテーパ面にはテフロン等の低摩擦材、好ましくは導電性のある低摩擦材(例えば、導電性テフロン、導電性ダイヤモンドライクカーボン、TINコーティング)を形成することが望ましい。なお、図中の符号A、B、C、D、Eは電圧を印加するための(後述する)端子であり、19・4はウエハWが静電チャック上に載置されたことを検知するウエハ導通用針で、バネ19・5によって押し上げられている。
【0054】
図12は、同じ静電チャックに200mmのウエハWを搭載した状態を示している。静電チャックよりもウエハ径が小さいため、静電チャック表面が露出してしまうので、静電チャックを完全に隠す大きさを持った補正リング20・1を搭載している。補正リング20・1の位置決めは300mm用補正リングの場合と同様である。
補正リング20・1の内周部には段差が設けてあり、静電チャック側のリング状溝20・2に収まるようになっている。これは、200mmウエハを搭載した時に補正リング20・1の内周とウエハWの外周との間の隙間から静電チャック表面が見えないように導体(補正リング20・1)で隠すための構造である。もし静電チャック表面が見える構造になっていると、電子ビームが照射された際、静電チャック表面に電荷がチャージしてしまい、試料面の電位が乱れてしまうからである。
【0055】
補正リング20・1の交換は、真空チャンバ内の所定の位置に補正リング交換場所を設けておき、そこから必要な大きさの補正リングをロボットによって搬送して静電チャックに取り付ける(インロー部に挿入する)ことによって行う。
200mm用補正リングにも、300mmと同様にウエハ落し込み機構20・2が設けられている。静電チャック側には、このウエハ落し込み機構20・2と干渉しないように逃げが形成されている。静電チャック上へのウエハの搭載方法は300mmの場合とまったく同様である。なお、符号A、B、C、D、Eは電圧を印加するための端子、20・3はプッシュピン19・3と同様のプッシュピン、20・4はウエハ導通用針19・4と同様のウエハ導通用針である。
【0056】
図13の(A)及び(B)は、300mmウエハと200mmウエハの両方に対応することができる静電チャックの構成を概略的に示した図であり、(A)は300mmウエハを、(B)は200mmウエハを載置した状態をそれぞれ示している。図13の(A)から理解されるとおり、静電チャックは300mmウエハを載置することができる広さを持ち、図13の(B)に示すように、静電チャックの中央の部分は200mmウエハを載置することができる広さであり、それを囲むように、補正リング20・1の内周部が嵌り込む溝20・6が設けられる。なお、符号A、B、C、D、Eは電圧を印加するための端子である。
【0057】
図13の(A)及び(B)に示す静電チャックの場合、ウエハが静電チャックに載置されているかどうか、ウエハが静電チャックに正しく載置されたかどうか、補正リングがあるかどうか等は、光学的に検出される。例えば、静電チャックの上方に光学センサを設置し、その光学センサから発された光がウエハによって反射されて再び光学センサへ戻ったときの光路長を検出することによって、ウエハが水平に載置されたか、傾いて載置されたかが検出できる。また、補正リングの有無は、補正リングが載置されるべき場所の中の適宜の点を斜めに照射する光送信機と、補正リングからの反射光を受光する光受信機とを設けることで検出することができる。更に、200mmウエハ用の補正リングが載置される場所の適宜の点を斜めに照射する光送信機及び該補正リングからの反射光を受光する光受信機の組み合わせと、300mmウエハ用の補正リングが載置される場所の適宜の点を斜めに照射する光送信機及び該補正リングからの反射光を受光する光受信機の組み合わせとを設け、いずれの光受信機が反射光を受信するかを検知することにより、200mmウエハ用の補正リングと300mmウエハ用の補正リングのいずれが静電チャックに載置されたかを検出することができる。
【0058】
3)ウエハチャッキング手順
以上説明した構造をもったウエハチャッキング機構は、以下の手順でウエハをチャッキングする。
(1)ウエハサイズに合った補正リングをロボットによって搬送し、静電チャックに搭載する。
(2)ロボットハンドによるウエハ搬送とプッシャーピンの上下動によって、ウエハを静電チャック上に載置する。
(3)静電チャックを双極形で印加(端子C、Dに正負逆の電圧を印加)し、ウエハを吸着する。
(4)導通用針に所定電圧を印加して、ウエハ裏面の絶縁膜(酸化膜)を破壊する。
(5)端子A、B間の電流を測定して、ウエハとの導通が取れたかどうか確認する。
(6)静電チャックを単極形吸着に移行する。(端子A、BをGRD、端子C、Dに同一電圧を印加する)
(7)端子A(又はB)と端子C(又はD)との電位差を保ったまま、端子A(又はB)の電圧を下げ、ウエハに所定のリターディング電圧を印加する。
【0059】
200/300ブリッジツールのための装置構成
200mmウエハと300mmウエハのどちらも機械的改造なしに検査できる装置にするための構成を図14及び図15に示す。以下、200mmウエハもしくは300mmウエハの専用装置と異なる点を説明する。
200/300mmウエハ、FOUP、SMIF、オープンカセット等の仕様毎に交換されるウエハカセットの設置場所21・1には、ユーザ仕様によって決まるウエハサイズやウエハカセットの種類に応じたウエハカセットが設置できるようになっている。大気搬送ロボット21・2は、異なるウエハサイズに対応できるようなハンドを備え、すなわちウエハの落し込み部がウエハサイズに合わせて複数設けられており、ウエハサイズにあった箇所でハンドに搭載されるようになっている。大気搬送ロボット21・2はウエハを設置場所21・1からプリアライナー21・3へ送ってウエハの向きを整えた後、ウエハをプリアライナー21・3から取り出して、ロードロック室21・4内へ送る。
【0060】
ロードロック室21・4の内部のウエハラックも同様の構造で、ウエハラックのウエハ支持部には、ウエハサイズに合わせた複数の落し込み部が形成されており、大気搬送ロボット21・2のハンドに搭載されたウエハは、そのサイズに合った落し込み部に搭載されるようにロボットハンドの高さが調整されてウエハラック内にウエハが挿入され、その後、ロボットハンドが下降することによってウエハ支持部の所定の落し込み部にウエハが載置される。
【0061】
ロードロック室21・4内のウエハラックに載置されたウエハは、次いで、搬送室21・5内に設置された真空搬送ロボット21・6によってロードロック室21・3から取り出されて試料室21・7内のステージ21・8上に搬送される。真空搬送ロボット21・6のハンドも、大気搬送ロボット21・2と同様、ウエハサイズに合った複数の落し込み部を有している。ロボットハンドの所定の落し込み部に搭載されたウエハは、ステージ21・8において、予めウエハサイズに合った補正リング21・9を搭載した静電チャック上に載置され、静電チャックで吸着固定される。補正リング21・9は、搬送室21・5内に設けられた補正リングラック21・10上に載置されている。そこで、真空搬送ロボット21・6はウエハサイズに合った補正リング21・9を補正リングラック21・10から取り出して静電チャック上に搬送し、静電チャック外周部に形成された位置決め用インロー部に補正リング21・9を嵌め込んでから、ウエハを静電チャックに載置する。
【0062】
補正リングを交換する時は、この逆の操作を行う。すなわち、ロボット21・6によって静電チャックから補正リング21・9を外し、搬送室21・5内の補正リングラック21・10に補正リングを戻し、これから検査するウエハサイズにあった補正リングを補正リングラック21・10から静電チャックまで搬送する。
図14に示す検査装置においては、プリアライナー21・3がロードロック室22・4の近くに配置されているので、ウエハのアライメントが不十分なためにロードロック室で補正リングが装着できない場合にも、ウエハをプリアライナーに戻してアライメントし直すことが容易であり、工程での時間のロスを減らせるという利点がある。
【0063】
図15は、補正リングの置き場所を変えた例であり、補正リングラック21・10は省略されている。ロードロック室22・1には、ウエハラックと補正リングラックとが階層的に形成されており、これらはエレベータに設置されて上下動することができる。まず、これから検査するウエハサイズに合った補正リングを静電チャックに設置するため、真空搬送ロボット21・6が該補正リングを取出せる位置までロードロック室22・1のエレベータを移動する。そして補正リングを真空搬送ロボット21・6で静電チャック上に設置すると、今度は、検査すべきウエハを搬送できるようにエレベータを操作し、ウエハを真空搬送ロボット21・6でウエハラックから取出した後、静電チャックに載置する。この構成の場合、ロードロック室22・1にエレベータが必要になるが、真空の搬送室21・5を小さく形成することができ、装置のフットプリントを小さくする上で有効である。
なお、静電チャック上にウエハが存在するか否かを検知するセンサは、異なるウエハサイズのどちらにも対応できる位置に設置されることが望ましいが、それが不可能な場合には、同一の働きをする複数のセンサをウエハサイズ毎に配置してもよい。
以上のようなアルゴリズムを用いて、比較検査及びアライメントを行う。
【0064】
ここで、欠陥検査全体の手順について説明する。
欠陥検査は、図16に示すように、電子光学系の条件設定(撮像倍率などの設定)を行い、電子ビームを照射しながらステージを移動させることでTDIスキャン撮像(図17)を行い、設定された検査条件(アレイ検査条件、ランダム検査条件、検査エリア)に従い、検査専用処理ユニット(IPE)によりリアルタイムで欠陥検査が行われる。
検査レシピでは、電子光学系の条件、検査対象ダイ、検査エリア及び検査方法(ランダム/アレイ)などが設定される(図18の(A)、(B))。
なお、欠陥検査用に安定した画像を取得するため、位置ズレや速度ムラなどによる撮像画像のブレを抑制するEO補正、理想的なダイマップ上の配置と実際のダイ位置との誤差を吸収するダイ位置補正、有限の測定点で予め測定したフォーカス値を用いウエハ全領域のフォーカス値を補完するフォーカス調整がリアルタイムで同時に行われる。
欠陥検査のスキャン動作において、検査対象ダイの全域を検査する(図19)他に、図20に示すように、スキャン方向と直角方向へのステップ移動量を調整することで間引き検査も可能となる(検査時間の短縮)。
【0065】
検査終了後は、検査結果として欠陥個数、欠陥を含むダイの位置、欠陥サイズ、各ダイ内での欠陥位置、欠陥種別、欠陥画像、比較画像をディスプレイに表示し、これらの情報及びレシピ情報などをファイルへ保存することで過去の検査結果の確認、再現が可能となっている。
自動欠陥検査時には各種レシピを選択指定することで、搬送レシピに従ってウエハがロードされ、アライメントレシピに従ってステージ上でウエハのアライメントが行われ、フォーカスマップレシピに従ってフォーカス条件の設定が行われ、検査レシピに従って検査が行われ、搬送レシピに従ってウエハがアンロードされる(図20の(A)、(B))。
【0066】
制御装置2
欠陥検査の制御装置2(図6)は、図22に示すように複数のコントローラにより構成されている。
メインコントローラは、装置(EBI)のGUI部/シーケンス動作を司り、工場ホストコンピュータまたはGUIからの動作指令を受け取り、VMEコントローラやIPEコントローラへ必要な指示を与える。メインコントローラには、マン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作は、ここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時等の必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハの搬送、位置合わせの制御、制御コントローラやステージコントローラヘのコマンドの伝達や情報の受け取り等も、メインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、ウエハ観察位置のZ軸方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系ヘフィードバツクし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージ装置からの信号の授受はそれぞれ、IPEコントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
【0067】
VMEコントローラは、装置(EBI)構成機器の動作を司り、メインコントローラからの指示に従い、ステージコントローラやPLCコントローラへ指示を与える。
IPEコントローラは、メインコントローラからの指示により、IPEノードコンピュータからの欠陥検査情報取得、取得した欠陥の分類及び画像表示を行う。IPEノードコンピュータは、TDIカメラから出力される画像の取得ならびに欠陥検査を行う。電子光学系70の制御、すなわち、電子銃、レンズ、アライナー等の制御等も行う。例えば、照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるように電源を制御すること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへ自動的に電圧を設定すること等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)を行う。
【0068】
PLCコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、バルブ等の機器の駆動及びセンサ情報の取得、常時監視が必要な真空度異常などの異常監視を行う。
ステージコントローラは、VMEコントローラからの指示を受け、XY方向への移動及びステージ上に設置されたウエハの回転を行う。特に、ステージコントローラは、X軸方向及びY軸方向のμmオーダーの精密移動(±0.5μm程度の許容誤差)を可能にし、また、誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も可能にしている。
このような分散制御系を構成することで、末端の装置構成機器が変更された場合に各コントローラ間のインターフェースを同一に保つことで上位コントローラのソフトウェア及びハードウェアの変更が不要となる。また、シーケンス動作が追加・修正された場合でも上位ソフトウェア及びハードウェアの変更を最小限にとどめることで構成変更への柔軟な対応が可能となる。
【0069】
ユーザインターフェース
図23は、ユーザインターフェース部の機器構成を示す。
入力部は、ユーザからの入力を受け付ける機器であり、「キーボード」、「マウス」、「JOYパッド」から構成される。
表示部は、ユーザへの情報を表示する機器であり、モニタ2台で構成される。モニタ1は、CCDカメラまたはTDIカメラで取得された画像を表示し、モニタ2はGUI表示を行う。
なお、検査の進捗状況をリアルタイムで画面上に色別表示するようにしてもよい。どのウエハが何処にあるかといったウエハ位置情報や、被検査ウエハについては、どこまで検査が終了し、どこに欠陥があるか等の情報を色別表示すれば、検査の進捗状況が一目瞭然となる。また、被検査ダイについては、スワース毎に表示するようにしてもよい。
【0070】
本装置では、以下の3つの座標系を規定する。
(1)ステージ座標系[XS,YS]
ステージ位置制御時の位置指示用の基準座標系であり、本装置に1つだけ存在する。
チャンバ左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
ステージ座標系で示される位置(座標値)は、ステージの中心(ウエハ中心)とする。つまり、ステージ座標系において、座標値[0,0]を指定した場合、ステージ中心(ウエハ中心)がステージ座標系の原点に重なるように移動する。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。ただし、λは、レーザ干渉計で用いられるレーザの波長(λ≒632.991[μm])である。
(2)ウエハ座標系[XW,YW]
ウエハ上の観察(撮像・表示)する位置を指示するための基準座標系であり、本装置に1つだけ存在する。
ウエハ中心を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。ウエハ座標系で示される位置(座標値)は、そのとき選択された撮像機器(CCDカメラ、TDIカメラ)での撮像中心とする。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。(λは、上記と同一)
(3)ダイ座標系[XD,YD]
各ダイにおける観察(撮像・表示)位置を規定するための基準座標系であり、ダイ毎に存在する。
各ダイの左下隅を原点とし、右方向にX座標値が増加し、上方向にY座標値が増加する。
単位は[μm]とするが、最小分解能はλ/1024(≒0.618[μm])とする。(λは、上記と同一)
【0071】
なお、ウエハ上のダイは、番号付け(ナンバリング)され、番号付けの基準となるダイを原点ダイと呼ぶ。デフォルトではウエハ座標系原点に最も近いダイを原点ダイとするが、ユーザの指定により原点ダイの位置を選択可能とする。
各座標系における座標値と、観察(表示)される位置の関係は、図24のとおりである。
また、ユーザインターフェースにより指示される座標及びステージ移動方向の関係は、以下のとおりである。
【0072】
(1)ジョイスティック&GUI矢印ボタン
ジョイスティック及びGUI矢印ボタンにより指示される方向は、オペレータが見たい方向とみなし、ステージを指示方向と逆方向に移動させる
例)
指示方向:右・・・・ステージ移動方向:左 (画像が左に移動=視野が右に移動)
指示方向:上・・・・ステージ移動方向:下 (画像が下に移動=視野が上に移動)
(2)GUI上で座標を直接入力
GUI上で直接入力される座標は、ウエハ座標系上でオペレータが見たい場所とみなし、該当ウエハ座標が撮像画像中心に表示されるようにステージを移動させる。
図14に関して説明した装置においては、静電チャックの上に補正リングを載置し、その補正リングの内径に当てはまるようにウエハを位置決めするという手順が取られている。そこで、図15に示す検査装置においては、ロードロック室22・1でウエハに補正リングを装着し、補正リングが装着されたウエハを補正リングごと搬送して試料室21・7へ導入し、ステージ上の静電チャックに装着するという手順が取られる。それを実現する機構として、図25に示す、エレベータを上下させてウエハを大気搬送ロボットから真空搬送ロボットへ渡すためのエレベータ機構がある。
【0073】
以下、この機構を用いてウエハを搬送する手順を説明する。
図25の(A)に示すように、ロードロック室の中に設けられたエレベータ機構は上下方向に移動可能に設けられた複数段(図では2段)の補正リング支持台を有する。上段の補正リング支持台22・2と下段の補正リング支持台22・3とは、第1のモータ22・4の回転によって昇降する第1の台22・5に固定され、これによって、第1のモータ22・4の回転により、第1の台22・5及び上下の補正リング支持台22・2、22・3が上方又は下方に移動することになる。
【0074】
各補正リング支持台にはウエハのサイズに応じた内径の補正リング22・6が載置されている。補正リング22・6は200mmウエハ用と300mmウエハ用との、内径が異なる2種類が用意され、これらの補正リングの外径は同じである。このように、同じ外径の補正リングを用いることにより、相互互換性が生まれ、ロードロック室の中に200mm用と300mm用とを自由な組み合わせで載置しておくことが可能になる。つまり、200mmウエハと300mmウエハとが混合して流れてくるラインについては、上段を300mm用、下段を200mm用とし、どちらのウエハが流れてきても検査を行えるよう柔軟に対応することができる。また、同じサイズのウエハが流れてくるラインであれば、上下の段を200mm用或いは300mm用とし、上下の段のウエハを交互に検査することができるので、スループットを向上させることができる。
【0075】
第1の台22・5には第2のモータ22・7が載置され、第2のモータ22・7には第2の台22・8が昇降可能に取り付けられている。第2の台22・8には上段のウエハ支持台22・9と下段のウエハ支持台22・10とが固定されている。これにより、第2のモータ22・7が回転すると、第2の台22・8と上下のウエハ支持台22・9、22・10とが一体に上方又は下方に移動することになる。
そこで、図25の(A)に示すように、ウエハWを大気搬送ロボット21・2のハンドに載せてロードロック室22・1に搬入し、次いで、(B)に示すように、第2のモータ22・7を第1の方向に回転させてウエハ支持台22・9、22・10を上方に移動させ、ウエハWを上段のウエハ支持台22・9の上に載置させる。これによって、ウエハWを大気搬送ロボット21・2からウエハ支持台22・9へ移す。その後、(C)に示すように大気搬送ロボット21・2を後退させ、大気搬送ロボット21・2の後退が完了したところで、(D)に示すように、第2のモータ22・7を第1の方向とは逆の方向に回転させてウエハ支持台22・9、22・10を下方へ移動させる。これによってウエハWは上段の補正リング22・6に載置される。
【0076】
次いで、(E)に示すように、真空搬送ロボット21・6のハンドをロードロック室22・1の中に入れて補正リング22・6の下側で停止させる。この状態で第1のモータ22・4を回転させ、(F)に示すように、第1の台22・5、上下の補正リング支持台22・2、22・3、第2のモータ22・7及び上下のウエハ支持台22・9、22・10を下方へ移動させ、これによって、上段のウエハ支持台22・9に載置されていた補正リング21・6及びウエハWを真空搬送ロボット21・6のハンドに載せ、試料室21・7へ搬入することができる。
試料室21・7での検査が終了したウエハをロードロック室21・4へ戻す動作は、上記とは逆の手順で行われ、補正リングと共に真空搬送ロボットによりウエハ支持台の上に搬入されたウエハは、補正リング支持台に、次いでウエハ支持台に移され、最後に大気搬送ロボットに載置されることになる。なお、図25においては、上段におけるウエハ受け渡し動作を説明したが、大気搬送ロボット21・2及び真空搬送ロボット21・6のハンドの高さを調整することにより、下段においても同様の動作が可能である。このように大気搬送ロボット21・2及び真空搬送ロボット21・6のハンドの高さを適切に切り換えることにより、一方の段から未検査のウエハを試料室へ搬入し、次いで検査済みのウエハを試料室から他方の段へ搬出することを交互に行うことができる。
【0077】
ローダー60
ローダー60(図6)は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとして任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた汎用構造の駆動機構(図示せず)により、回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動可能であると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能である。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、汎用構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハ把持用の把持装置616が設けられている。駆動部611は、汎用構造の昇降機構615により上下方向に移動可能である。
【0078】
この第1の搬送ユニット61において、カセットホルダ10中に保持された二つのカセットcの内のいずれか一方の方向M1又はM2(図7)に向かって、アーム612が伸び、そして、カセットc内に収容されたウエハWをアームの上に載せるか又はアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後、アームが縮み(図7に示した状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転して、その位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハWをプリアライナー25に載せる。プリアライナー25から前記と逆にしてウエハを受け取った後、アームは更に回転し、第1のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第1のローディングチャンバ41内のウエハ受け47に、ウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合には、ウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これは、ウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、周縁部以外の部分を把持すると、デバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0079】
第2の搬送ユニット63も、第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハWの搬送を、ウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違する。
第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送を、ウエハをほぼ水平状態に保ったままで行う。そして、搬送ユニット61、63のアームが上下動するのは、単に、カセットcからのウエハの取り出し及びそれへの挿入、ウエハラックへのウエハの載置及びそこからの取り出し、並びに、ステージ装置50へのウエハの載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、例えば直径30cm等の大型のウエハであっても、その移動をスムースに行うことができる。
【0080】
ここで、上記構成を有する検査システム1において、カセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下され、カセットcが出入り口225に整合される。カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(不図示)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメント装置20の出入り口225との間には、筒状の覆いが配置されて、カセット及びミニエンバイロメント空間21を、外部から遮断する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合には、そのシャッタ装置が動作して、出入り口225を開く。
【0081】
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は、方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明では、M1の方向)で停止しており、出入り口225が開くと、アームが伸びてその先端でカセットcに収容されているウエハのうち1枚を受け取る。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、該アームは縮み、シャッタ装置が動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次に、アーム612は軸線O1−O1の回りで回動し、方向M3に向けて伸長できる状態となる。そして、アームが伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナー25の上に載せ、該プリアライナーによって、ウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を、所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると、第1の搬送ユニット61は、アーム612の先端にプリアライナー25からウエハを受け取った後にアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。すると、シャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、シャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435は、シャッタ装置46の扉461により気密状態に閉じられている。
【0082】
上記した第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング本体22に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では、供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は、排出装置24の吸入ダクト241から吸引されて、ハウジング外に排出される。残りの空気は、ハウジング本体22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され、再び気体供給ユニット231に戻される。
【0083】
ローダーハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41を密閉する。すると、該ローディングチャンバ41内には空気が追い出されて不活性ガスが充填された後、その不活性ガスも排出されて、ローディングチャンバ41内は真空雰囲気となる。ローディングチャンバ41の真空雰囲気は、低真空度でよい。ローディングチャンバ41の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して、扉461で密閉していた出入り口434を開き、次いで、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461により出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前に、アーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のように、シャッタ装置46が開く前に、シャッタ装置45の扉452により出入り口437、325を閉じて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を阻止しており、かつ、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0084】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームは、ワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図13で上方に移動し、また、Xテーブル53が図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びて、ウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そして、ステージ装置50の載置面551上にウエハWを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0085】
以上は、カセットc内のウエハWをステージ装置50の載置面551上に搬送載置するまでの動作に付いて説明した。検査処理が完了したウエハWをステージ装置50からカセットcに戻すには、前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しているため、第2の搬送ユニット63がウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行っている間に、第1の搬送ユニットがカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができる。したがって、検査処理を効率良く行うことができる。
【0086】
プレチャージユニット81
プレチャージユニット81は、図6に示したように、ワーキングチャンバ31内で電子光学系70の鏡筒71に隣接して配設されている。本発明の検査システム1では、ウエハに電子線を走査して照射することによってウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるため、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によって、ウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。そして、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報としているが、ウエハ表面の帯電量にむらがあると、二次電子の情報もむらを含み、正確な画像を得ることができない。そこで、この実施形態では、帯電むらを防止するために、プレチャージユニット81が設けられている。該プレチャージユニット81は荷電粒子照射部811を含み、ウエハ上に検査のために一次電子を照射する前に、荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射することにより、帯電むらを無くす。なお、ウエハ表面の帯電状態は、電子光学系70を用いて予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出することができ、そして、検出された帯電状態に基づいて、荷電粒子照射部811からの荷電粒子の照射を制御する。プレチャージユニット81では、一次電子線をぼかして照射してもよい。
【0087】
アライメント制御装置87
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学系70に対して位置決めさせる装置である。アライメント制御装置87は、光学顕微鏡871(図6及び図26)を用いた広視野観察によるウエハの概略位置合わせである低倍率合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い位置合わせ)、電子光学系70の電子光学系を用いたウエハの高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。なお、このように低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためには、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハライメントを行うときに、電子線によるアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
光学顕微鏡871は、主ハウジング30内に設けられているが、主ハウジング30内で移動可能に設けられていてもよい。光学顕微鏡871を動作させるための光源(不図示)も主ハウジング30内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は、電子光学系70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。
【0088】
図26は、アライメント制御装置87の概略構成を示している。ウエハW上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ又はYステージを動かすことによって、ウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871を用いて広視野でウエハを視認し、そのウエハ上の観察すべき位置を、CCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置すなわち被観察点の位置を、おおよそ決定する。この場合、光学顕微鏡871の倍率を低倍率から高倍率に徐々に変化させていってもよい。
【0089】
次に、ステージ装置50を電子光学系70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させることにより、光学顕微鏡871を用いて予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学系70の視野位置に移動させる。この場合、電子光学系70の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施形態では、X軸方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているので、その値δxだけ移動させれば、被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学系70の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
【0090】
このようにして、電子光学系70によって高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法により、ステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ、すなわち電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学系70に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そして、その検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ、或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいて、ステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
【0091】
アライメント手順について、より詳細に説明する。
ステージ上にロードされたウエハのダイの配置方向は、TDIカメラのスキャン方向と必ずしも一致しない(図27参照)。これを一致させるためにθステージでウエハを回転させる操作が必要となり、この操作をアライメントと呼ぶ(図28)。アライメントレシピではステージ上にロードされた後のアライメント実行条件が保存される。
なお、アライメント実施時にダイの配列を示すダイマップ(図29)が作成され、ダイマップレシピではダイサイズや(ダイの位置を示す起点となる)原点ダイの位置などが保存される。
【0092】
アライメント(位置決め)手順としては、始めに光学顕微鏡の低倍にて粗い位置決めを行い、次いで光学顕微鏡の高倍により、最後にEB像により詳細な位置決めを行う。
A.光学顕微鏡を用いて低倍にて撮像
(1)<第1,2,3サーチダイ指定及びテンプレート指定>
(1−1)第1サーチダイ指定及びテンプレート指定
ウエハ下方に位置するダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザ操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する。このダイが位置決めの基準となるダイであり、左下隅の座標が特徴点の座標となる。今後、このテンプレート画像でパターンマッチングを行うことにより、基板上の任意のダイの正確な位置座標を測定していく。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
なお、本実施例では、左下隅をパターンマッチング用テンプレート画像取得位置としたが、これに限られるものではなく、ダイ内の任意の位置を特徴点として選択してよい。ただし、一般的には、ダイの内部や辺の上にある点よりも、隅の方が座標を特定し易いので、四隅のいずれかを選択するのが好適である。また同様に、本実施例では、ウエハ下方に位置するダイについてパターンマッチング用テンプレート画像を取得したが、これもアライメントが行い易いように任意のダイを選択しても構わないのは当然である。
【0093】
(1−2)第2サーチダイ指定
第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとし、第2サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザ操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することにより、第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第2サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
なお、本実施例では、第1サーチダイの右隣のダイを第2サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第2サーチダイはこれに限られるものではないことは勿論である。要は、正確な特徴点の位置座表を把握した基準点からの、行方向のダイの位置関係をパターンマッチングにより正確に把握することができる点を選択すればよいのである。したがって、例えば、第1サーチダイの左隣のダイを第2サーチダイとすることも可能である。
【0094】
(1−3)第3サーチダイ指定
第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとし、第3サーチダイの左下隅がカメラ中央付近に位置するようにユーザ操作にてステージを移動し、位置決定後、上記(1−1)で取得したテンプレート画像を用いて自動でパターンマッチを実行することにより、第1サーチダイで指定したテンプレート画像と一致する第3サーチダイのパターンの厳密な座標値を取得する。
なお、本実施例では、第2サーチダイの上隣のダイを第3サーチダイとして例を挙げて説明したが、本発明の第3サーチダイはこれに限られるものではないことは言うまでもない。要は、特徴点の正確な座標を把握したダイを基準として、列方向のダイの特定点の座標の距離を含めた位置関係を把握することができればよいのである。したがって、第1サーチダイの上隣のダイも好適に代替適用可能である。
【0095】
(2)<光顕低倍Y方向パターンマッチング>
(2−1)第2サーチダイのパターンマッチ座標(X2,Y2)と第3サーチダイのパターンマッチ座標(X3,Y3)の関係より、上隣ダイのパターンへの移動量(dX,dY)を算出する。
dX=X3−X2
dY=Y3−Y2
(2−2)算出した移動量(dX,dY)を用い、第1サーチダイの上隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(XN,YN)へステージを移動。
XN=X1+dX
YN=Y1+dY
ただし、(X1,Y1)は、第1サーチダイのパターンの座標
(2−3)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
(2−4)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
(2−5)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
(2−6)ステージ移動後、光顕低倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。これについては図30を参照。
(2−7)予め指定されたY座標値を超えるまでウエハ上部へ向けて(2−4)〜(2−6)を繰り返し実行する。
【0096】
なお、本実施例では、精度を高めるため、及び処理回数(繰り返し回数)を低減させ、処理時間を短縮するために、2倍の移動量を繰り返す態様を例にとって説明したが、精度に問題がなく、更に処理時間を短縮させたければ、3倍、4倍というように、2倍以上等の整数倍の高倍率で実行しても構わない。また逆に、問題が無ければ、更に精度を高めるために、固定移動量で移動を繰り返してもよい。これらいずれの場合も、検出個数にもそれを反映させることは言うまでもない。
【0097】
(3)<光顕低倍θ回転>
(3−1)第1サーチダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量及び、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、回転量(θ)及びY方向ダイサイズ(YD)を算出する(図31参照)。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan―1(dX/dY)
YD=√((dX)+(dY))/DN
(3−2)算出した回転量(θ)分だけθステージを回転させる。
B.光学顕微鏡を用いて高倍にて撮像
(1)光顕低倍の(1)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(2)光顕低倍の(2)と同様の手順を光顕高倍像を用いて実行する。
(3)光顕低倍の(3)と同様の手順を実行する。
【0098】
(4)<光顕高倍θ回転後の許容値チェック>
(4−1)[第1サーチダイ、光顕高倍のテンプレート指定]
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)を回転前座標(X1,Y1)及び回転量(θ)から算出し、座標(X’1,Y’1)へステージを移動、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。
X’1= x*cosθ−y*sinθ
Y’1=x*sinθ+y*cosθ
(4−2)光顕高倍Y方向パターンマッチング
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)からdYだけY方向へ移動し、パターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得する。
(4−3)回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から現在撮像中のパターンの座標
(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X’1
dY=YN−Y’1
(4−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけ第1サーチダイを起点としてステージを移動する。
(4−5)ステージ移動後、光顕高倍にて撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新する。
(4−6)予め指定されたY座標値を超えるまでウエハ上部へ向けて(4−3)〜(4−5)を繰り返し実行する。
(4−7)θの回転量を算出
回転後の第1サーチダイの座標(X’1,Y’1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量を用い、回転量(θ)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
θ=tan―1(dX/dY)
(4−8)光顕高倍θ許容値チェック
(4−7)にて算出した回転量(θ)が既定値以下に収まっていることを確認する。収まっていない場合は、算出した回転量(θ)を用いてθステージ回転後、再度(4−1)〜(4−8)を実行する。ただし、規定回数繰り返して(4−1)〜(4−8)を実行しても許容範囲内に収まらない場合は、エラー扱いとして処理を中断する。
【0099】
C.EB像によるアライメント
(1)<Yサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
光顕高倍の(1)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(2)<EB Y方向パターンマッチング>
光顕高倍の(2)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(3)<EB θ回転>
光顕高倍の(3)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(4)<EB θ回転後の許容値チェック>
光顕高倍の(4)と同様の手順をEB像を用いて実行する。
(5)必要に応じ、高倍率のEB像を用いて(1)〜(4)を実行する
(6)第1サーチダイの座標(X1,Y1)と第2サーチダイの座標(X2,Y2)より、X方向ダイサイズ(XD)の概略値を算出する
dX=X2−X1
dY=Y2−Y1
XD=√((dX)+(dY)
【0100】
D.ダイマップレシピ作成
(1)<Xサーチ第1ダイ、EBのテンプレート指定>
ウエハ左端に位置するダイの左下隅がTDIカメラ中央付近に位置するようにユーザ操作にてステージを移動し、位置決定後、パターンマッチ用テンプレート画像を取得。このテンプレート画像には、サーチ領域内でユニークなパターンとなるような画像を選択しなければならない。
【0101】
(2)<EB X方向パターンマッチング>
(2−1)X方向ダイサイズ概略値(XD)を用い、Xサーチ第1ダイの右隣のダイのパターンが存在する(と予想される)座標(X1+XD,Y1)へステージを移動。
(2−2)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を取得し、さらにダイの検出個数(DN)の初期値として1を設定する。
(2−3)Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から現在撮像中のパターンの座標(XN,YN)への移動量(dX,dY)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
(2−4)算出した移動量(dX,dY)の2倍の移動量(2*dX,2*dY)分だけXサーチ第1ダイを起点としてステージを移動する
(2−5)ステージ移動後、TDIカメラにてEB像を撮像し、テンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、現在観察中のパターンの厳密な座標値(XN,YN)を更新し、ダイの検出個数を2倍する。
(2−6)予め指定されたX座標値を超えるまでウエハ右方向へ(2−3)〜(2−5)を繰り返し実行する。
【0102】
(3)<X方向傾きを算出>
Xサーチ第1ダイのパターン座標(X1,Y1)から最後にサーチしたダイのパターンの厳密な座標値(XN,YN)までの移動量及び、それまでに検出したダイの個数(DN)を用い、ステージ直行誤差(Φ)及びX方向ダイサイズ(XD)を算出する。
dX=XN−X1
dY=YN−Y1
Φ=tan―1(dY/dX)
XD=√((dX)+(dY))/DN
【0103】
(4)<ダイマップ作成>
このように、X方向ダイサイズ(XD)を求め、予め回転量(θ)を算出した際に求めたY方向ダイサイズ(YD)と合わせてダイマップ(理想上のダイの配置情報)を作成する。ダイマップにより、ダイの理想上の配置が分かる。一方、異いっさいの基板上のダイは例えばステージの機械的誤差(ガイド等の部品や組み付けの誤差)、干渉計の誤差(例えばミラー等の組み付けの問題による)やチャージアップによる像の歪みの影響を受け、必ずしも利用的な配置には観察することができない場合があるが、この実際のダイの位置とダイマップ上の理想上の配置との誤差を把握し、この誤差を考慮しこれを自動補正しながら、検査を行っていくようにする。
【0104】
E.フォーカスレシピ作成手順
次に、フォーカスレシピの作成手順について説明する。フォーカスレシピは、基板等の試料の平面上の印の位置における最適なフォーカス位置、若しくはフォーカス位置に関する諸条件の情報を表等の所定の形式で記憶したものである。フォーカスマップレシピではウエハ上の指定位置のみフォーカス条件が設定され、指定位置間のフォーカス値は、直線補完される(図32参照)。フォーカスレシピ作成手順は次のとおり。
(1)フォーカス測定対象ダイをダイマップから選択する
(2)ダイ内でのフォーカス測定点を設定する
(3)各測定点へステージを移動させ、画像及びコントラスト値を基に、フォーカス値(CL12電圧)の調整を手動で行う。
アライメント処理にて作成したダイマップは、ウエハの両端のダイ座標より算出した理想的な位置情報であり、様々な要因によりダイマップ上のダイ位置と実際のダイ位置には誤差が生じる。(図33参照)この誤差分を吸収するためのパラメータを作成する手順をファインアライメントと呼び、ファインアライメントレシピには、ダイマップ(理想上のダイ配置情報)と実際のダイの位置との誤差情報が保存される。ここで設定された情報は、欠陥検査時に使用される。ファインアライメントレシピではダイマップ上で指定されたダイのみ誤差が測定され、指定ダイ間の誤差は、直線補完される。
【0105】
F.ファインアライメント手順
(1)ファインアライメント用誤差測定対象ダイをダイマップから指定する
(2)誤差測定対象ダイより基準ダイを選択し、このダイの位置をダイマップとの誤差がゼロの点とする
(3)基準ダイの左下隅をTDIカメラで撮像し、パターンマッチ用テンプレート画像を取得する(ただし、サーチ領域内でユニークなパターンをテンプレート画像として選択する)
(4)近隣の誤差測定対象ダイの左下の(ダイマップ上での)座標(X0,Y0)を取得し、ステージを移動させる。移動後、TDIカメラで撮像し、(3)のテンプレート画像を用いてパターンマッチを実行することで、厳密な座標値(X,Y)を取得する。
(5)パターンマッチで取得した座標値(X,Y)とダイマップ上の座標値(X0,Y0)の誤差を保存
(6)全ての誤差測定対象ダイについて(4)〜(5)を実行する。
【0106】
本発明に係る電子線装置すなわち電子光学系70によって得られたデータを処理して画像データを取得し、得られた画像データに基づいて半導体ウエハ上の欠陥を検出する欠陥検出についてさらに説明する。
なお、一般に、電子線を用いた検査装置すなわち電子光学系70は、高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低い。そのため、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に、また、配線工程ではより微細な配線工程部分、すなわち配線工程の1から2工程、及び前工程のゲート配線工程等に利用されている。特に、デザインルールが100nm以下、即ち,100nm以下の線幅を有する配線や直径100nm以下のビアホール等の形状欠陥や電気的欠陥を見つけ、また、プロセスにフィードバックすることが重要である。
【0107】
上記したように、検査されるウエハは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密のステージ装置(X−Yステージ)50上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定される。そして、欠陥検査工程では、光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ、記憶される。光学顕微鏡は、この他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次に電子光学系の条件設定を行い、電子線像を用いて、光学顕微鏡で設定された情報の修正を行い、精度を向上させる。
次いで、ウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは200mmか300mmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行った後、画像取得を行いながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行う。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行われ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリへ記憶を行う。
【0108】
欠陥検査の基本的流れを、図34に示す。まずアライメント動作113・1を含んだウエハ搬送の後、検査に関係する条件等を設定したレシピを作成する(113・2)。レシピは被検査ウエハに最低1種類は必要であるが、複数の検査条件に対応するために、1枚の被検査ウエハに対して、複数のレシピが存在する場合もある。また同一パターンの被検査ウエハが複数枚ある場合、一種類のレシピで複数のウエハを検査する場合もある。図34の経路113・3は、この様に過去に作成されたレシピで検査する場合、検査動作直前にレシピの作成が不要であることを示している。
【0109】
図34において、検査動作113・4は、レシピに記載された条件、シーケンスに従い、ウエハの検査を行う。欠陥抽出は、検査動作中に欠陥を発見する度に即時行われ、以下の動作をほぼ並列的に実行する。
・欠陥分類(113・5)を行い、結果出力ファイルに抽出欠陥情報と欠陥分類情報を追加する動作
・抽出欠陥画像を画像専用結果出力ファイルもしくはファイルに追加する動作
・抽出欠陥の位置などの欠陥情報を操作画面上に表示する動作
被検査ウエハ単位で検査が終了すると、次いで、以下の動作をほぼ並列的に実行する。
・結果出力ファイルをクローズして保存する動作
・外部からの通信が検査結果を要求する場合、検査結果を送る動作
・ウエハを排出する動作
連続的にウエハを検査する設定がなされている場合、次の被検査ウエハを搬送して、前記一連の動作を繰り返す。
【0110】
図34におけるレシピ作成においては、検査に関係する条件等の設定ファイルからなるレシピを作成する。該レシピは、保存することも可能であり、該レシピを使用して、検査時もしくは検査前に条件設定を行う。レシピに記載された検査に関係する条件は、例えば、以下の事項を含んでいる。
・検査対象ダイ
・ダイ内部検査領域
・検査アルゴリズム
・検出条件(検査感度等、欠陥抽出に必要な条件)
・観察条件(倍率、レンズ電圧、ステージ速度、検査順序等、観察に必要な条件)
【0111】
上記した検査条件の内、検査対象ダイの設定は、図35に示すような操作画面に表示されたダイマップ画面に対して、検査するダイをオペレータが指定する。図35の例では、ウエハ端面のダイ1と前工程で明らかに不良と判定されたダイ2をグレイアウトして検査対象から削除し、残りを検査対象ダイとしている。また、ウエハ端面からの距離や前工程で検出されたダイの良否情報をもとに、自動的に検査ダイを指定する機能も有している。
また、ダイ内部の検査領域の設定は、図36に示される様に操作画面に表示されたダイ内部検査領域設定画面に対して、検査領域をオペレータが光学顕微鏡もしくはEB顕微鏡により取得した画像をもとに、マウス等の入力機器で指定する。図36の例では、実線で示した領域115・1と破線で示した領域115・2を設定している。
【0112】
領域115・1は、ダイのほぼ全体を設定領域としている。この場合、検査アルゴリズムは、隣接ダイ比較法とし、この領域に対する検出条件、観察条件の詳細は、別に設定する。領域115・2は、検査アルゴリズムをアレイ検査としこの領域に対する検出条件及び観察条件の詳細は、別に設定する。すなわち複数の検査領域の設定が可能でかつ、検査領域は、それぞれ独自の検査アルゴリズムや検査感度を条件設定できる。また、検査領域は重ね合わせる事も可能で、同じ領域に対して、異なる検査アルゴリズムを同時に処理することも可能である。
図34の検査動作113.4においては、図37に示すように、被検査ウエハを走査幅に細分化して走査する。走査幅は、ほぼラインセンサの長さで決まるが、ラインセンサの端部が少し重なる様に設定してある。これは、検出した欠陥を最終的に統合処理する場合に、ライン間の連続性を判断する為や比較検査を行う際に画像アライメントするための余裕を確保するためである。その重ね量は、2048ドットのラインセンサに対して16ドット程度である。
【0113】
走査方向及びシーケンスを、模式的に図38に示す。すなわち、検査時間短縮のために双方向動作(A動作)や、機械制限からの単方向動作(B動作)などが、オペレータより選択できる構成になっている。
また、レシピの検査対象ダイ設定を元に、走査量を減らす動作を自動演算して検査する機能も有している。図39の(A)は検査ダイが1個のみの場合の走査例であり、不要な走査は行わない。
レシピによって設定される検査アルゴリズムは、セル検査(アレイ検査)とダイ検査(ランダム検査)に大別することができる。
図39の(B)に示すように、ダイは、主にメモリに用いられる周期構造をしたセル部118・2と、周期構造を取らないランダム部118・3とに分けられる。周期構造をしたセル部118・2は、比較対象が同じダイの中に複数個あるので、セル検査、すなわち同じダイの中のセル同士で比較を行うことによって検査可能である。一方、ランダム部118・3は、同じダイの中に比較対象がないので、ダイ検査によってダイ同士の比較を行う必要がある。
【0114】
ダイ検査は、比較対象により、さらに以下にように区分される。
・隣接ダイ比較法(Die-to-Die検査)
・基準ダイ比較法(Die-to- Any Die検査)
・CADデータ比較法(Cad Data-to-Any Die検査)
一般にゴールデンテンプレート方式と呼ばれる方式は、基準ダイ比較法及びCADデータ比較法であり、基準ダイ比較法においては、参照ダイをゴールデンテンプレートとし、CADデータ比較法おいては、CADデータをゴールデンテンプレートとする。
【0115】
以下に、各検査アルゴリズムの動作を述べる。
セル検査(アレイ検査)
セル検査は、周期構造の検査に適用される。DRAMセルなどはその一例である。
検査は、参照とする参照画像と被検査画像の比較を行い、その差分を欠陥として抽出する。参照画像と被検査画像は、二値化画像でも検出精度を向上するため多値画像でも構わない。
欠陥は、参照画像と被検査画像の差分そのものでも良いが、検出した差分の差分量や差分のある画素の合計面積などの差分情報を元にして、誤検出を防ぐための2次的な判定を行っても良い。
セル検査においては、参照画像と被検査画像の比較は構造周期単位で行われる。すなわちCCDなどで一括取得した画像を読み出しながら1構造周期単位で比較しても良いし、参照画像がn個の構造周期単位であれば、n個の構造周期単位を同時に比較できる。
参照画像の生成方法の一例を図40に示す、ここでは1構造周期単位で比較する例を述べるので1構造周期単位生成を表す。同じ方法で周期数をnにする事も可能である。
前提として図40での検査方向はAである。また周期4を被検査周期とする。周期の大きさはオペレータが画像を見ながら入力するので、図40において周期1〜6は容易に認識できる。
参照周期画像は、各画素において被検査周期直前の周期1〜3を加算し平均して生成する。1〜3いずれかに欠陥が存在しても平均処理されるので影響は少ない。この形成された参照周期画像と被検査周期画像4を比較して欠陥の抽出を行う。
次に被検査周期画像5を検査する場合、周期2〜4を加算平均して参照周期画像を生成する。以下同様に被検査周期画像取得以前に得た画像より、被検査周期画像を生成して検査を連続させる。
【0116】
ダイ検査(ランダム検査)
ダイ検査は、ダイの構造に制限されず適用できる。検査は、参照となる参照画像と被検査画像の比較を行い、その差分を欠陥として抽出する。参照画像と被検査画像は、二値化画像でも検出精度を向上するため多値画像でも構わない。欠陥は、参照画像と被検査画像の差分そのものでも良いが、検出した差分の差分量や差分のある画素の合計面積などの差分情報を元にして、誤検出を防ぐため2次的な判定を行っても良い。ダイ検査は参照画像の求め方で分類することができる。以下に、ダイ検査に含まれる隣接ダイ比較法、基準ダイ比較検査法、及びCADデータ比較法について動作を説明する。
【0117】
A.隣接ダイ比較法(Die-Die検査)
参照画像は、被検査画像と隣接したダイである。被検査画像に隣り合った2つのダイと比較して欠陥を判断する。すなわち図41及び図42において、画像処理装置のメモリ121・1とメモリ121・2がカメラ121・3からの経路121・41に接続するようスイッチ121・4、スイッチ121・5を設定した状況で、以下のステップを有する。
a)走査方向Sに従いダイ画像1を経路121・41からメモリ121・1に格納するステップ。
b)ダイ画像2を経路121・41からメモリ121・2に格納するステップ。
c)上記b)と同時に経路121・42からダイ画像2を取得しながら、取得したダイ画像2とダイにおける相対位置が同じであるメモリ121・1に格納された画像データを比較して差分を求めるステップ。
d)上記c)の差分を保存するステップ。
e)ダイ画像3を経路121・41からメモリ121・1に格納するステップ。
f)上記e)と同時に経路121・42からダイ画像3を取得しながら、取得したダイ画像3とダイにおける相対位置が同じであるメモリ121・2に格納された画像データを比較して差分を求めるステップ。
g)上記f)の差分を保存するステップ。
h)上記d)とg)で保存された結果より、ダイ画像2の欠陥を判定するステップ。
i)以下連続したダイにおいてa)からh)を繰り返すステップ。
設定によって、上記c)、f)において差分を求める前に、比較する2つの画像の位置アライメント:位置差が無くなる様に補正する。または濃度アライメント:濃度差が無くなる様に補正する。もしくはその両方の処理を行う場合がある。
【0118】
B.基準ダイ比較法(Die-Any Die検査)
オペレータにより基準ダイを指定する。基準ダイはウエハ上に存在するダイもしくは、検査以前に保存してあるダイ画像であり、まず基準ダイを走査もしくは転送して画像をメモリに保存、参照画像とする。すなわち図42と図43を参照して以下に説明するステップを実行する。
a)オペレータが基準ダイを、被検査ウエハのダイより、もしくは検査以前に保存してあるダイ画像より選択するステップ。
b)基準ダイが被検査ウエハに存在する場合、画像処理装置のメモリ121・1もしくはメモリ121・2の少なくとも一方がカメラ121・3からの経路121・41に接続するようにスイッチ121・4、スイッチ121・5を設定するステップ。
c)基準ダイが検査以前に保存してあるダイ画像の場合、画像処理装置のメモリ121・1もしくはメモリ121・2の少なくとも一方がダイ画像である参照画像を保存してあるメモリ121・6からの経路121・7に接続するようにスイッチ121・4、スイッチ121・5を設定するステップ。
d)基準ダイが被検査ウエハに存在する場合、基準ダイを走査して、基準ダイ画像である参照画像を画像処理装置のメモリに転送するステップ。
e)基準ダイが検査以前に保存してあるダイ画像の場合、走査を必要とせず、基準ダイ画像である参照画像を画像処理装置のメモリに転送するステップ。
f)被検査画像を順次走査して得られる画像と、基準ダイ画像である参照画像を転送されたメモリの画像と、ダイにおける相対位置が同じである画像データを比較して差分を求めるステップ。
g)上記f)で得られた差分より欠陥を判定するステップ。
h)以下連続して図50で示すように基準ダイの走査位置と被検査ダイのダイ原点に対して同じ部分をウエハ全体について検査し、ダイ全体を検査するまで基準ダイの走査位置を変更しながら上記d)からg)を繰り返すステップ。
設定によって、上記f)において差分を求める前に、比較する2つの画像の位置アライメント:位置差が無くなる様に補正する。もしくは濃度アライメント:濃度差が無くなる様に補正する。もしくはその両方の処理を行う場合がある。
上記d)もしくはe)において画像処理装置のメモリに蓄えられる基準ダイ画像は、基準ダイ全てでも良いし、基準ダイの一部として更新しながら検査しても良い。
【0119】
C.CADデータ比較法(CAD Data-Any Die検査)
CADによる半導体パターン設計工程の出力であるCADデータより参照画像を作成し基準画像とする。基準画像はダイ全体もしくは検査部分を含んだ部分的な物でも良い。
またこのCADデータは、通常ベクタデータであり、走査動作によって得られる画像データと等価なラスタデータに変換しないと参照画像として使用出来ない。この様にCADデータ加工作業に関して、以下の変換がなされる。
a)CADデータであるベクタデータをラスタデータに変換する。
b)上記a)は、検査時に被検査ダイを走査して得られる画像走査幅の単位で行う。
c)上記b)は、被検査ダイを走査して得る予定の画像とダイにおける相対位置が同じである画像データを変換する。
d)上記c)は、検査走査と、変換作業をオーバラップして行う。
上記のa)〜d)は高速化のために画像走査幅単位の変換を行う例であるが、変換単位を画像走査幅に固定しなくても検査は可能である。
【0120】
また、ベクタデータをラスタデータに変換する作業に付加機能として、以下の少なくとも1つを有する。
a)ラスタデータの多値化機能。
b)上記a)に関し、多値化の、階調重み、オフセットを検査装置の感度を鑑みて設定する機能。
c)ベクタデータをラスタデータに変換した後で、膨張、収縮など画素を加工する画像処理を行う機能。
【0121】
図42の装置において実行される、CADデータ比較法による検査ステップを示す。
a)計算機1でCADデータをラスタデータに変換しかつ上記付加機能で参照画像を生成してメモリ121・6に保存するステップ。
b)画像処理装置のメモリ121・1もしくはメモリ121・2の少なくとも一方がメモリ121・6からの経路121・7に接続するようにスイッチ121・4、スイッチ121・5を設定するステップ。
c)メモリ121・6の参照画像を画像処理装置のメモリに転送するステップ。
d)被検査画像を順次走査して得られる画像と、参照画像が転送されたメモリの画像と、ダイにおける相対位置が同じである画像データを比較して差分を求めるステップ。
e)上記d)で得られた差分より欠陥を判定するステップ。
f)以下連続して図44で示すように基準ダイの走査位置を参照画像とし被検査ダイの同じ部分をウエハ全体検査し、ダイ全体を検査するまで基準ダイの走査位置を変更しながら上記a)からe)を繰り返すステップ。
設定によって、上記d)において差分を求める前に、比較する2つの画像の位置アライメント、すなわち位置差が無くなる様に補正する。もしくは、濃度アライメント、すなわち濃度差が無くなる様に補正する。もしくはその両方の処理を行う場合がある。また、c)において画像処理装置のメモリに蓄えられる基準ダイ画像は、基準ダイ全てでも良いし、基準ダイの一部として更新しながら検査しても良い。
【0122】
これまで、周期構造を検査するアレイ検査(セル検査)とランダム検査とのアルゴリズムを説明してきたが、セル検査とダイ検査を同時に行うことも可能である。つまり、セル部とランダム部とを分けて処理し、セル部ではダイ内でセル同士の比較を行うと同時に、ランダム部では、隣接するダイ、基準ダイ又はCADデータとの比較を行っていく。このようにすると、検査時間を大幅に短縮でき、スループットが向上する。
なお、この場合には、セル部の検査回路は別々に独立して備えるのが好適である。また、同時に検査を行わないのであれば、1つの検査回路を有し、セル検査用とランダム検査用のソフトを切換可能に設定しておき、ソフトの切換で比較検査を実行することも可能である。つまり、パターンの検査を複数の処理のアルゴリズムを適用して処理する場合には、それらのアルゴリズムは別回路を用意して同時に処理してもよいし、それらに対応するアルゴリズムを設けて1つの回路で切り換えて処理するようにしてもよい。いずれにせよ、セル部の類型が複数であり、それらは各々のセル同士で比較を行い更にランダム部についてダイ同士又はダイとCADデータで皮革を行うような場合にも、適用可能である。
【0123】
フォーカス機能の基本的流れを、図45に示す。まずアライメント動作を含んだウエハ搬送の後、検査に関係する条件等を設定したレシピを作成する。このレシピの1つとしてフォーカスマップレシピがあり、ここで設定されたフォーカス情報に従い、検査動作及びレビュー動作時にオートフォーカスが行われる。以下、フォーカスマップレシピの作成手順及びオートフォーカスの動作手順を説明する。
フォーカスマップレシピは、以下の例においては独立的な入力画面を有しており、オペレータが次のステップを実行することによりフォーカスレシピを作成する。このような入力画面を、別の目的で設けられた入力画面に付加してもよい。
a)フォーカス値を入力するダイ位置やダイの中のパターン等、フォーカスマップ座標を入力するステップ。図46のスイッチ126・1。
b)フォーカス値を自動測定する場合に必要な、ダイパターンを設定するステップ。このステップはフォーカス値を自動測定しない場合、スキップできる。
c)上記a)で決められたフォーカスマップ座標のベストフォーカス値を設定する、ステップ。
この中で、a)のステップではオペレータが任意のダイを指定する事もできるが、全てのダイの選択や、n個毎のダイの選択などの設定も可能である。また入力画面はウエハ内のダイ配列を模式的に表現した図でも、実画像を使った画像でもオペレータが選択できる。
この中で、c)のステップではオペレータがマニュアルでフォーカス用電極の電圧値に連動したフォーカススイッチ126・2で設定するモード(図46のスイッチ126・3)。自動的にフォーカス値を求めるモードモード(図46のスイッチ126・4)で選択・設定する。
【0124】
上記c)のステップで自動的にフォーカス値を求める手順は、例えば図47において
a)フォーカス位置Z=1の画像を求めそのコントラストを計算する。
b)上記a)をZ=2,3,4でも行う。
c)上記a)、b)で得られたコントラスト値から回帰させコントラスト関数を求める(図48)
d)コントラスト関数の最大値を得るZを計算で求め、これをベストフォーカス値とする。
例えば、フォーカス値を自動測定する場合に必要なダイパターンは図48の様なライン&スペースが選択された場合、良い結果を示すが、コントラストは白黒パターンがあれば形状によらず計測できる。
a)からd)を行うことで1点のベストフォーカス値が求まる。この時のデータ形式は(X,Y,Z) X、Y:フォーカスを求めた座標、Z:ベストフォーカス値のセットであり、フォーカスマップレシピで決められたフォーカスマップ座標数(X,Y,Z)が存在することになる。これをフォーカスマップレシピの一部でフォーカスマップファイルと呼ぶ。
【0125】
フォーカスマップレシピから、画像を取得する検査動作、レビュー動作時にフォーカスをベストフォーカスに設定する方法は次のステップでなされる。
a)フォーカスマップレシピの作成時に作成されたフォーカスマップファイル1を元に位置情報をさらに細分化して、この時のベストフォーカスを計算で求め細分化したフォーカスマップファイル2を作成する。
b)上記a)の計算は、補間関数で行う。
c)上記b)の補間関数は、リニア補間やスプライン補間等でフォーカスマップレシピの作成時にオペレータにより指定される。
d)ステージのXY位置を監視して、現在のXY位置に適したフォーカスマップファイル2に記載されたフォーカス値にフォーカス用電極の電圧を変更する。
【0126】
さらに具体的に説明すると、図49において、黒丸がフォーカスマップファイル1のフォーカス値、白丸がフォーカスマップファイル2のフォーカス値である。
1.フォーカスマップファイルのフォーカス値の間をフォーカスマップファイルのフォーカス値で補間している。
2.走査に従いフォーカス位置Zを変化させベストフォーカスを維持している。この時フォーカスマップファイル(白丸)の間は、次の変更する位置まで値が保持されている。
【0127】
図50は、本発明に係る電子線装置を使用した半導体製造プラントの例を示す。図50において、電子線装置は参照番号171.1で示されており、該装置で検査されるウエハのロット番号、製造に経由した製造装置履歴等の情報は、SMIFまたはFOUP171・2に備えられたメモリから読み出されるか、または、そのロット番号を、SMIF、FOUP171・2又はウエハカセットのID番号を読み取ることにより、認識できるようになっている。ウエハの搬送中は、水分の量をコントロールしてメタル配線の酸化等を防止している。
欠陥検査装置171.1の欠陥検出制御用のPC171.6は、生産ラインの情報通信ネットワーク171・3に接続されており、このネットワーク171・3を介して、生産ラインを制御している生産ラインコントロールコンピュータ171・4、各製造装置171・5、及び別の検査システムに、被検査物であるウエハのロット番号などの情報とその検査結果を送ることができる。製造装置171・5には、リソグラフィー関連装置例えば露光装置、コーター、キュア装置、デベロッパ等、又は、エッチング装置、スパッタ装置及びCVD装置などの成膜装置、CMP装置、各種計測装置、他の検査装置等が含まれる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施態様について詳細に説明したが、本発明の技術思想から離れることなく、これら実施態様の変形・変更が可能であることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面を検査するための写像投影型の電子光学系を有する電子線装置において、
電子ビームを放出する電子銃と、
該放出された電子ビームを試料上に導いて照射する1次電子光学系と、
電子を検出する検出器と、
電子ビームの照射により試料から放出された、試料表面の情報を有する電子ビームを検出器に導く2次電子光学系であって、2回結像するウィーンフィルタを備えている2次電子光学系と
を備えていることを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
試料の表面を検査する欠陥検査システムにおいて、
請求項1記載の電子線装置と、
該電子線装置の検出器により検出した電子に含まれる試料表面の情報に基づいて、試料表面の画像を生成する画像取得手段と、
該取得した画像を参照画像と対比して試料表面の欠陥の有無を検査する欠陥評価手段と
を備えていることを特徴とする欠陥検査システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate


【公開番号】特開2009−135108(P2009−135108A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22571(P2009−22571)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2005−59504(P2005−59504)の分割
【原出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】