冠状静脈内における左心室リード固定装置
本発明の実施形態に従った冠状静脈内に医療用リードを固定するための方法は、リード本体を冠状静脈の分枝血管に進めることと、固定線および拡張可能なアンカー構造を、リード本体を通って、リード本体の先端部を通過させ、分枝血管内に挿入することと、分枝血管の壁を拡張可能なアンカー構造と係合させることと、固定線をリード本体に連結することとを有する。本発明の実施形態に従った冠状静脈内において医療用リードを固定するための装置は、1つ以上の電極を有するリード本体と、固定線と、前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線およびアンカー構造は、リード本体を通って分枝血管内に留置可能であることと、リード本体を固定線に連結するための手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、冠状静脈に医療用リードを配置するための医療装置および方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、冠状静脈の分枝血管において拡張可能なアンカー装置に医療用リードを係留するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心機能管理システムは、不整脈および他の異常な心臓状態を治療するために用いられる。そのようなシステムは一般に、心筋に電気パルスを伝達するため、心筋で生じた電気信号を感知するため、または伝達および感知の双方のために、心臓内または心臓の周囲に埋め込まれる心臓リードを備える。前記リードは、典型的には、中心チャネルまたは管腔を画定し、先端部の電極から基端部のコネクターピン(例えば端子ピン)まで延在する絶縁チューブまたはシースに包囲された可撓性導体から成る。
【0003】
心臓リードの配置は、主要血管を介して該リードを導入し、そのリードの先端部を心臓または心臓近傍の最終目的地に進めることによって行われ得る。右心房または右心室ペーシングの場合には、最終目的地は特定の心室内に位置する。左心室ペーシングについては、前記リードは、多くの場合、右心房から冠状静脈洞に進められ、左心室の心外膜表面上に存在する分枝静脈内の最終目的地に到達する。血管系の挿管を促進するためには、多くの場合において、最初にガイドカテーテルを所望の血管経路を介して冠状静脈洞内に進めることが有用である。この方法におけるリードの埋め込みに伴う1つの難点は、心臓リードが、リードの埋め込み中またはその後に、その所望位置から外れるようになる傾向があるということである。例えば、臨床医がガイドカテーテルを抜去するときに、リードが外れたり、またはさもなれければ、リードが位置を変えたりすることがある。リードが埋め込まれた後、かつ組織の内部成長が最終的にリードを所望部位に固定するまで、リードは、経時的にその元の位置から離れて移動する傾向があり、従って、その信頼性や性能を損ねることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、コイリング機構または成形機構(shaped mechanism)がリードの管腔を介して搬送され、細い末梢静脈内に進められる。末梢静脈内では、固有なコイルまたは事前に形成された形状が血管内でロックされ(lock)、アンカーとして機能する。本発明の実施形態によれば、前記リードとアンカーとの間の繋ぎ紐(tether)、すなわち基端延長部は、前記リードを血管内において安定させる。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための方法は、リード本体を冠状静脈の分枝血管内に進めることと、固定線を、リード本体を通って、リード本体の先端部を通過させ、分枝血管内に挿入することとを含む。そのような実施形態によれば、固定線は拡張可能なアンカー構造を備え、前記方法は、分枝血管の壁を拡張可能なアンカー構造と係合させることと、固定線をリード本体と連結することとをさらに含み得る。いくつかの場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、コアワイヤと、コアワイヤの周りに事前に巻回された拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、コアワイヤを拡張可能なコイルから除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む。他の場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、固定線の周りに事前に巻回された拡張可能なコイルを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、固定線を拡張可能なコイルから少なくとも部分的に除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む。さらに他の場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、チューブと、該チューブ内に位置する拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、拡張可能なコイルを前記チューブから押し出して、拡張可能なコイルを分枝血管と係合させることを含む。拡張可能なコイルは、例えば、らせん(helix)、コークスクリュー、渦巻き(spiral)、枝(tine)、正弦曲線、および/または鉤(hook)のようなその拡張形状に事前に形成された形状を備え得る。
【0007】
固定線をリード本体と連結することは、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を制限するように、リード本体の端子ピンをキャッピング(capping)することを含み得る。一例において、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの基端側の固定線上に頭部部分を形成することを含み、その頭部部分はリード本体の内径より大きな外寸を有する。別の例では、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、固定線および端子ピンの上に蓋を配置することとを含む。さらに別の例では、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、端子ピンの外側のまわりにおいて固定線の上にバンドを固定することとを含む。さらなる例では、端子ピンをキャッピングすることは、リード本体の内径より大きな径を与えるように、固定線の基端部を拡開することを含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための装置は、1つ以上の電極を備えたリード本体と、固定線と、前記固定線の先端部において前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であることと、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を防止するための手段とを備える。拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え得る。いくつかの場合には、形状記憶コイルは、形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退が形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように、インナーワイヤの上に事前に巻回されていてもよい。他の例では、形状記憶コイルは外側チューブによって収納されていてもよく、内側チューブは形状記憶コイルを外側チューブから押し出して、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように構成され得る。
【0009】
本発明の実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための装置は、1つ以上の電極を有するリード本体と、固定線と、前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、リード本体を留置するための手段とを備え得る。そのような実施形態によれば、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って、冠状静脈の分枝血管内に留置可能であり得、拡張可能なアンカー構造は、冠状静脈の壁に係合するように構成された拡張形態を有し得る。本発明に従ったそのような実施形態はまた、固定線をリード本体に連結するための手段を備え得る。
【0010】
リード本体は第1管腔および第2管腔を備えてもよく、第1管腔は固定線および拡張可能なアンカー構造を受容するように構成され、第2管腔はリード本体を留置するための手段を受容するように構成される。一部の例では、第2管腔はリード本体の内壁によって形成されていてもよく、第1管腔は第2管腔内に延びていてもよい。他の例では、リード本体は、リード本体の内壁によって形成された第3管腔を備える。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、固定線は、リード本体からリード本体の端子ピンの先端側で分岐している。一部の例では、固定線はリード本体から孔を通って分岐しており、固定線には、孔の外側で結び目が形成されていてもよく、この結び目を越えて固定線に対してリード本体が基端方向へ移動することを防止できる。
【0012】
拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え得る。いくつかの実施形態によれば、形状記憶コイルは、形状記憶コイルからインナーワイヤが後退することによって形状記憶コイルが冠状静脈に対して拡張するように、インナーワイヤ上に事前に巻回されていてもよい。他の実施形態によれば、形状記憶コイルは、リード本体を介したアンカー構造の留置の間、外側チューブ内に収容されていてもよく、内側チューブは形状記憶コイルを外側チューブから押し出して、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように構成され得る。本発明の実施形態によれば、拡張可能なアンカー構造および/または形状記憶コイルは再吸収性ポリマー(resorbable polymer)製であってもよい。
【0013】
複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の実施形態は、当業者には本発明の例証となる実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から明白になるであろう。従って、図面および詳細な説明は、本来、例証とみなされるべきであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に従った、患者の心臓内に留置されたリードに連結されたパルス発生器を備える心調律管理システムを示す概略図。
【図2】本発明の実施形態に従った、冠状静脈の分枝血管内に配置されたリードを示す図。
【図3】本発明の実施形態に従った、分枝血管においてリードを通って進められる拡張可能なアンカー構造を示す図。
【図4】本発明の実施形態に従った、分枝血管内において拡張したアンカー構造を示す図。
【図5】本発明の実施形態に従った、ハイポチューブの内部にコイルスプリングを備えたアンカー構造を示す図。
【図6】本発明の実施形態に従った、コアワイヤ上に事前に巻回されたコイルスプリングを備えたアンカー構造を示す図。
【図7】本発明の実施形態に従った、冠状静脈において医療用リードを固定するための方法を示す図。
【図8】本発明の実施形態に従った、パルス発生器およびリードの端子端を示す図。
【図9】本発明の実施形態に従った、端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図10】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図11】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図12】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図13】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図14】本発明の実施形態に従った、多管腔構成の部分側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は様々な修正および代替形態を受け入れるが、特定の実施形態を例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、本発明を特定の実施形態に限定するものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての変更物、均等物、および代替物を対象とするものとする。
【0016】
図1は、患者の上大静脈17から心臓16内に留置されたリード14に接続されたパルス発生器12を備えた心調律管理システム10の概略図である。当業において知られているように、パルス発生器12は、典型的には、患者の胸または腹部の埋め込み位置において皮下に埋め込まれる。図示したように、心臓16は、右心房18および右心室20、左心房22および左心室24、右心房18の冠状静脈洞口26、冠状静脈洞28、並びに大心静脈30および具体例としての分枝血管32を含む様々な心臓の分枝血管を有する。
【0017】
図1に示すように、リード14は基端領域36および先端領域38を有する長尺状本体34を備え得る。本発明の実施形態によれば、先端領域38は、電極42を備え、かつ拡張可能なアンカー構造44において終端をなす先端部40を有する。経静脈的な手法による左心室の心外膜ペーシングを容易にするために、リード14を、静脈洞28を介して冠状静脈32内に留置し得る。一部の例において、リード14の不安定性は、処置時間の延長、再手術、捕捉の喪失、横隔神経の刺激、および再同期療法の喪失を生じ得る。本発明の実施形態は、血管32の壁に確実に固定するために拡張可能なアンカー構造44を提供する。
【0018】
図1は、心調律管理システム10の一部として電極42を備えたリード14を示しているが、これに代わって、リード14は、1つ以上のセンサーおよび/または1つ以上の電極42を備えてもよく、またパルス発生器12の代わりにおよび/またはパルス発生器12に加えて、モニターを備えた1つ以上のセンサーを接続していてもよい。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に従った、冠状静脈洞28を介した心静脈の分枝血管32へのリード14の配置を示す。リード14は分枝血管32内に押し込まれ得る。本発明の一部の実施形態によれば、リード14の配置および/または係留をさらに強化するために、リード14はさらなる分枝血管(すなわち支流(tributary))48内に押し込まれてもよい。次に、図3に表すように、リードがその標的位置に配置された後、その非拡張状態にあるアンカー構造44は、リード14を通って、リード14の端部(例えば電極42付近)を通り抜けて、分枝血管48内に進められ得る。その非拡張状態にあるアンカー構造44はリード14内の管腔を通って留置されるように十分に狭小であるため、非拡張状態にあるアンカー構造44もまた、リード14自体よりも分枝血管48内にさらに進められるように十分に狭小である。
【0020】
図4は、本発明の実施形態に従った、その拡張した状態にある拡張可能なアンカー構造44を示す。図4に表した実施形態において、アンカー構造44のコイルは、分枝血管48の側壁と係合し、その側壁に対して半径方向の力を及ぼすように拡張しており、それによりアンカー構造44を分枝血管48内に係留している。図4には示していないが、アンカー構造44は、ガイドワイヤーとさほど変わらない大きさ(例えば約0.356mm(14/1000インチ))の末梢静脈48の極めて狭い範囲に挿入されてもよい。アンカー構造44には固定線50が連結されており、固定線50は、リード14の管腔を通って、一端においてアンカー構造44から、もう一端においてリード14の基端部36まで延在し得る。これに代わって、固定線50は、基端部36以外の位置においてリード14に取り付けられていてもよい。本願で用いられる場合、「連結されている(coupled)」という用語は、直接的に、または一体的に、または他の要素を介して間接的に、恒久的に、一時的に、または取り外し可能に、接続、付着、および/または係合されている要素を指すように、その最も広い意味において用いられる。
【0021】
図5および図6は、本発明の実施形態に従った、アンカー構造44のための留置機構を示す。図5は、チューブ54の内部のスプリングコイル52を示す。前記チューブはポリマーおよび/または金属ハイポチューブ54であり得、大きさおよび可撓性においてガイドワイヤーに類似している。ハイポチューブ54がリード14の前方の分枝血管48の所望位置に搬送されたならば、該チューブ54は後方に引かれて、リード14の先端部(電極42付近)にスプリングコイル52を留置する。これに代わって、外側チューブ54内に位置する内側チューブ56を用いて、スプリングコイル52を外側チューブ54から矢印58の方向に押し出すことにより、スプリングコイル52を分枝血管48の側壁と係合するように拡張させてもよい。本発明の様々な実施形態によれば、スプリングコイル52の基端部は、基端部36近傍のリード14の端子ピンに連結されるか、さもなければ固定され得る。本発明の一部の実施形態では、チューブ54は、チューブ54からスプリングコイル52を押し出す前に、リード本体14から延ばされ得る。他の実施形態では、リード14の内部管腔自体が、その非拡張状態にあるスプリングコイル52を保持するように機能し、また、チューブ56は、スプリングコイル52をリード14から参照符号58の方向に押し出すように機能し得る。
【0022】
図6は、本発明の実施形態に従った、アンカー構造44のための代替の留置機構を示す。図6に示したアンカー構造44は、コアワイヤ60の上に事前巻回コイル52を備える。アンカー構造44がリード14より前方に分枝血管48内の所望位置に進められたならば、コアワイヤ60は、矢印62によって示された方向に引き戻されるか、または抜去されて、コイル52がその固有形状(intrinsic shape)に変形して、血管48の壁に係合することを可能にする。図5および図6のスプリングコイル52はステンレス鋼および/または形状記憶合金(例えばニチノール)から構成された金属コイルである。スプリングコイル52および/またはアンカー構造44の他の要素は、例えば、再吸収性ポリマーのようなポリマーによって製造されていてもよい。
【0023】
スプリングコイル52の基端部は、パルス発生器12付近にある端子ピンにおいて、下記に述べる様々な方法によって固定され得る金属またはポリマーハイポチューブから構成され得る。一部の実施形態によれば、そのような金属またはポリマーのハイポチューブの一部はリード14内に留まり、アンカー構造44への接続を提供する。いくつかの場合には、スプリングコイル52は、リード14内を通って基端部36に延びる固定線50と連結されている。他の場合には、スプリングコイル52自体が固定線50と一体的に形成されている。例えば、固定線は、スプリングコイル52に、はんだ付けされてもよいし、または他の方法で取り付けられていてもよい。本発明の一部の実施形態によれば、アンカー構造44および/または固定線は、全体的にポリマーから構成される。挿入後のリード14の除去を可能にするために、アンカー構造44は、例えば、再吸収性ポリマーから構成されていてもよい。
【0024】
固定線50は、固定線50がアンカー構造44付近から基端部36付近へ延びるにつれて、広がっていてもよく、例えば、固定線50は、固定線50が基端部36に近づくにつれて徐々に拡径していてもよいし、または、固定線50はハイポチューブと連結され、該ハイポチューブは、下記で述べるようにリード14の端子ピンと連結されてもよい。本発明の一部の実施形態によれば、固定線50自体がコアワイヤ60である。コアワイヤ60および/または固定線50は、その先端部付近においてテーパーをなしてもよい。スプリングコイル52はまた、例えばコークスクリュー、渦巻き、または、らせんのような事前に形成されたマクロ形状を有する。スプリングコイル52を拡張させると、スプリングコイル52は、分枝血管48の側壁に係合するだけでなく、特定のマクロの形状をとって係留をさらに増強する。スプリングコイル52はまた他のマクロの形状をとるように構成されていてもよい。例えば、スプリングコイル52は、正弦波曲線形、枝、および/または鉤のような二次元形状をとるように構成されていてもよい。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、固定線50およびアンカー構造44は、先端部が分枝血管48の内壁に係合する事前に形成された形状を有する連続したポリマーハイポチューブから構成され得る。コアワイヤ60と共に、ハイポチューブの先端部がガイドワイヤーの性能特性を示すように、事前に形成された部分(以下、「事前形成部分」と称する)には切り込みまたは切り溝が形成されていてもよい。コアワイヤ60が事前形成部分から除去されたならば、事前形成部分は、上述したスプリングコイル52の実施形態に類似して、その本来のマクロ形状に拡張する。そのような実施形態によれば、事前形成部分は、再吸収性ポリマーから構成され得る。
【0026】
図7は、本発明の実施形態に従った、医療用リードを冠状静脈内に固定するための方法を示す。リードの配置において典型的に行われるように、リード14にスタイレットを搭載して、リード14に賦形し、かつ/またはリード14を偏向させて、リード14を前方に押し進めてもよいし、または、ガイドワイヤーを、冠状静脈洞口26を介して、冠状静脈洞28内を通って、分枝血管32内に進め、さらに支流48内に進めてもよい(ブロック64)。次に、リード14は分枝血管32内に留置され得る(ブロック66)。例えば、本発明の実施形態によれば、リード14は、オーバーザワイヤー技術によってガイドワイヤー上を通って分枝血管48内に留置され得る。リード14は、係留をさらに強化し、かつ/または電極42と支流48との間の接触を改善するために、分枝血管48内に押し込まれ得る。
【0027】
リード14がその所望位置に配置されたならば、リード14を配置するために用いるスタイレットまたはガイドワイヤーは除去され得る(ブロック68)。例えば、ガイドワイヤーは、リード14の管腔を介してガイドワイヤーを引き戻すことによって除去され得る。次に、アンカー構造44はリード14内を通って進められ得る(ブロック70)。本発明の一部の実施形態によれば、固定線50は、アンカー構造44と連結され、リード14内を通ってアンカー構造44の後方に進められ得る。アンカー構造44は、リード14の先端部を通って、さらに分枝血管48内に進められ得、その地点において、アンカー構造44は分枝血管48内に拡張され得る(ブロック72)。上述したように、アンカー構造44の拡張は、図6のそれに類似した留置機構のために、形状記憶コイル52からコアワイヤ60を除去することによって行われてもよいし(ブロック74)、またはスプリングコイル52は、図5のそれに類似した留置機構のために、ハイポチューブ54の内部から押し出されてもよい(ブロック76)。本願で提供される開示に基づいて、当業者は、リード14を通って留置され、分枝血管48内に係留され得る、ワイヤー、バルーン、ステント、鉤、枝、および/またはコイルを含むが、これらに限定されない様々な構造を認識するであろう。
【0028】
アンカー構造44が分枝血管48内において該構造を固定するように拡張されたならば、リード14はアンカー構造44に繋がれ得る(ブロック78)。本発明のいくつかの実施形態によれば、アンカー構造44は、アンカー構造44を固定線50と連結し、次に、固定線50を基端部36付近のリード14の端子ピンに連結することによって、リード14に繋がれる。一部の実施形態によれば、固定線50はハイポチューブまたは類似した装置である。アンカー構造44は、様々な方法でリード14と連結され得、例えば、図9に示すように、固定線50の頭部がリード14の管腔の内径より大きくなるように、固定線50の端子端部に頭部を形成してもよい(ブロック80)。別の例として、図10に示すように、固定線50の端子端部に楔を形成してもよいし(ブロック82)、さらに他の例として、図11に示すように、固定線50を末端キャップの基端部の上に折り重ねて、端子ピンおよび固定線50の上にエンドキャップを配置してもよいし(ブロック84)、または図12に示すように、端子ピンおよび固定線50の上にバンド(例えばゴムバンド)を配置してもよい。固定線50がハイポチューブまたはポリマーストランドである実施形態については、図13に示すように、工具を用いて固定線50の端を拡開させてもよい(ブロック86)。他の実施形態によれば、アンカー構造44は、リード14の内側、またはリード14の先端部もしくはその近傍に繋がれるか、または他の方法で連結される。
【0029】
図8は、本発明の実施形態に従った、パルス発生器12およびリード14の端子端部88を示す。密閉ハウジング90は、該密閉ハウジング90内に収容された電子回路の一部を形成するマイクロプロセッサに基づいた制御装置によって命令される予めプログラムされた振幅、持続時間および繰り返し率のパルスを生成するためのバッテリーおよび電子回路部品を収容し得る。パルス発生器12は、該パルス発生器12に取り付けられた成形プラスチックコネクター92を有し、コネクター内にはリード受容穴94が長手方向に形成されており、該リード受容穴94に医療用リード14の端子部分88が挿入される。
【0030】
リード14は、その先端部付近または先端部において1つ以上の電極98,100を有する、長尺状で可撓性のリード本体96を備える。これらの電極は長尺状の可撓性導体(図示せず)によって接続されており、前記長尺状可撓性導体はリード本体96内を通って延在し、かつ互いに絶縁されている。前記導体は、リードの基端側端子88上に配置された接点102,104に接続する。リード14上のシーリングリング106,108は穴94の壁と界接して、コネクター92の穴94内への体液の進入を防止する。
【0031】
埋め込み型装置12は、リード端子88上の接点領域102,104が穴94内に収容されている対となる接点から脱係合するのを防止するためにコネクター内にロック機構を備え得る。典型的なリードのロックは、内部に形成された長手方向の穴112を有する金属のブロック110を備える。前記穴は、横断方向に延びるねじ山付きの穴114と交差する。ねじ山付きの穴114には、止めねじ116が嵌め込まれる。コネクター内部への体液の進入を防止するために、穴114にはエラストマープラグが嵌合される。埋め込み時に、止めねじ116は、リード上の接点104を穴112の壁に対して緊密に押し付けるように、エラストマープラグを介して挿入された締付ツールを用いて締められる。本発明の実施形態によれば、リード端子88はまた端子ピンとも称され得る。
【0032】
図9は、本発明の実施形態に従った、図8のリード端子88の拡大図を示す。端子ピン118は、固定線120の基端部を取り囲んでいる。図9では、固定線120は中実チューブとして示されているが、固定線120はまた、例えば、ワイヤーおよび/または中空ハイポチューブであってもよい。固定線120はその基端部において頭部122を形成しており、頭部122の外寸は端子ピン118の内径124よりも大きい。そのような構成は、端子ピン118とリード14とが固定線に対して基端方向に摺動するのを防止し、よってリード14とその上に位置する電極42との移動を実質的に妨げる。図9の頭部122に類似して、図10の固定線120は、その基端部において楔126を形成しており、楔126の外寸は端子ピン118の内径もより大きい。
【0033】
図11および図12は、本発明の実施形態に従った、繊維または糸に非常によく類似した固定線128を示す。図11は、端子ピン118上に折り重ねられた固定線128を表しており、その後、端子ピン118の外面上にエンドキャップ130が挿入されて、固定線128を適所に保持している。本発明の一部の実施形態によれば、端子ピン118の端部から突出する過剰な固定線128は切断されてもよい。エンドキャップ130は端子ピン118の端部に対して圧力嵌めを生じ、他の実施形態によれば、エンドキャップ130は端子ピン118と螺合する。図12は、本発明の実施形態に従った、端子ピン118上に折り重ねられた固定線128を表しており、その後、例えばゴムバンドのようなバンド132が端子ピン118のまわりに固定されて、固定線128を端子ピン118と連結する。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、エンドキャップ130は穴(例えば「ピンホール」)を備えてもよく、その穴に固定線128を通し、次に結び目を形成して、固定線128に対するリード14の基端方向の移動を防止する。本発明のさらに他の実施形態によれば、端子キャップ118、頭部122、および/または楔126は、溝または切り欠きを備えてもよく、その溝または切り欠きの周りには、細い繊維状固定線128が、頭部122または楔126を端子ピン118と連結する前に、巻回され、かつ/または結ばれ得る。
【0035】
図13は、本発明の実施形態に従った別の端子エンドキャップを示す。上述したように、リードおよびアンカー構造44が配置されたならば、中実または中空のハイポチューブであり得る固定線120の基端部に楔ツール134が挿入され得る。楔ツール134の挿入により、拡開した縁136が形成される。拡開した縁136は、端子ピン118の内径124より大きな外寸を有し、拡開した縁136に対する端子ピン118およびリード14の、基端方向の運動または移動を実質的に防止する。本発明の実施形態によれば、図9〜図13の端子エンドキャップの実施形態は、端子ピン118がパルス発生器12の長手方向の穴112内に挿入されるのに十分な余裕をもたせながら、アンカー構造44を(固定線120,128によって)リード14に(端子ピン118によって)効果的に連結する、または繋ぐ。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、リード14は、リード14の配置の間にスタイレットまたはガイドワイヤーを収容する単一の管腔を備える。そのような実施形態によれば、スタイレットまたはガイドワイヤーは、リード14の前記管腔からアンカー構造44および/または固定線50を挿入する前に、リード14から除去される。図14は、本発明の実施形態に従った代替のリード14の管腔の形態を示す。リード14は、通常、アンカー構造44の挿入前にスタイレットまたはガイドワイヤーが留置され、次いで除去され得る単一の管腔138を有する。図14は、管腔138内において、リード14は、スタイレットまたはガイドワイヤーがリード14内に残っている間でさえアンカー構造44の留置を可能にするために、1つ以上の他の管腔140,142を備えてもよいことを示している。例えば、管腔140は、リード14を適所に誘導するためのスタイレットまたはガイドワイヤーを受容するために用いられ、一方、管腔142はアンカー構造44および/または固定線50を留置するために用いられ得る。
【0037】
図14に示すように、管腔142は任意で端子ピン118の先端側の位置において主管腔138を退出してもよい。アンカー構造44の留置用の管腔142がリード14の基端部に到達する前に主管腔138から分岐するこれらの実施形態によれば、固定線128が端子ピン118に到達しないために、図9〜図13の端子エンドキャップの例は当てはまらないことがある。しかしながら、固定線128は、依然として類似した方法で、リード14に連結されてもよいし、かつ/または固定されてもよい。例えば、リード14を固定線128に繋ぐために、固定線128の基端部に結び目144を形成してもよい。本発明の他の実施形態によれば、管腔140,142の一方または他方のいずれかが不在であってもよい。例えば、本発明の実施形態によれば、管腔142は、スタイレットまたはガイドワイヤーからアンカー構造44の留置を分離するために備えられ、スタイレットまたはガイドワイヤーは、単に管腔142の隣のリード14の主管腔138を通って挿入され得る。
【0038】
本発明の範囲から逸脱することなく、検討した具体例としての実施形態に対して、様々な変更および追加をなすことができる。例えば、上記に記載した実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態および記載した特徴のすべては備えていない実施形態も包含する。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲内にあるすべてのそのような代替案、変更および別例を、それらのすべての均等物と共に、包含するように意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、冠状静脈に医療用リードを配置するための医療装置および方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、冠状静脈の分枝血管において拡張可能なアンカー装置に医療用リードを係留するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心機能管理システムは、不整脈および他の異常な心臓状態を治療するために用いられる。そのようなシステムは一般に、心筋に電気パルスを伝達するため、心筋で生じた電気信号を感知するため、または伝達および感知の双方のために、心臓内または心臓の周囲に埋め込まれる心臓リードを備える。前記リードは、典型的には、中心チャネルまたは管腔を画定し、先端部の電極から基端部のコネクターピン(例えば端子ピン)まで延在する絶縁チューブまたはシースに包囲された可撓性導体から成る。
【0003】
心臓リードの配置は、主要血管を介して該リードを導入し、そのリードの先端部を心臓または心臓近傍の最終目的地に進めることによって行われ得る。右心房または右心室ペーシングの場合には、最終目的地は特定の心室内に位置する。左心室ペーシングについては、前記リードは、多くの場合、右心房から冠状静脈洞に進められ、左心室の心外膜表面上に存在する分枝静脈内の最終目的地に到達する。血管系の挿管を促進するためには、多くの場合において、最初にガイドカテーテルを所望の血管経路を介して冠状静脈洞内に進めることが有用である。この方法におけるリードの埋め込みに伴う1つの難点は、心臓リードが、リードの埋め込み中またはその後に、その所望位置から外れるようになる傾向があるということである。例えば、臨床医がガイドカテーテルを抜去するときに、リードが外れたり、またはさもなれければ、リードが位置を変えたりすることがある。リードが埋め込まれた後、かつ組織の内部成長が最終的にリードを所望部位に固定するまで、リードは、経時的にその元の位置から離れて移動する傾向があり、従って、その信頼性や性能を損ねることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、コイリング機構または成形機構(shaped mechanism)がリードの管腔を介して搬送され、細い末梢静脈内に進められる。末梢静脈内では、固有なコイルまたは事前に形成された形状が血管内でロックされ(lock)、アンカーとして機能する。本発明の実施形態によれば、前記リードとアンカーとの間の繋ぎ紐(tether)、すなわち基端延長部は、前記リードを血管内において安定させる。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための方法は、リード本体を冠状静脈の分枝血管内に進めることと、固定線を、リード本体を通って、リード本体の先端部を通過させ、分枝血管内に挿入することとを含む。そのような実施形態によれば、固定線は拡張可能なアンカー構造を備え、前記方法は、分枝血管の壁を拡張可能なアンカー構造と係合させることと、固定線をリード本体と連結することとをさらに含み得る。いくつかの場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、コアワイヤと、コアワイヤの周りに事前に巻回された拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、コアワイヤを拡張可能なコイルから除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む。他の場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、固定線の周りに事前に巻回された拡張可能なコイルを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、固定線を拡張可能なコイルから少なくとも部分的に除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む。さらに他の場合には、前記拡張可能なアンカー構造は、チューブと、該チューブ内に位置する拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、拡張可能なコイルを前記チューブから押し出して、拡張可能なコイルを分枝血管と係合させることを含む。拡張可能なコイルは、例えば、らせん(helix)、コークスクリュー、渦巻き(spiral)、枝(tine)、正弦曲線、および/または鉤(hook)のようなその拡張形状に事前に形成された形状を備え得る。
【0007】
固定線をリード本体と連結することは、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を制限するように、リード本体の端子ピンをキャッピング(capping)することを含み得る。一例において、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの基端側の固定線上に頭部部分を形成することを含み、その頭部部分はリード本体の内径より大きな外寸を有する。別の例では、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、固定線および端子ピンの上に蓋を配置することとを含む。さらに別の例では、端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、端子ピンの外側のまわりにおいて固定線の上にバンドを固定することとを含む。さらなる例では、端子ピンをキャッピングすることは、リード本体の内径より大きな径を与えるように、固定線の基端部を拡開することを含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための装置は、1つ以上の電極を備えたリード本体と、固定線と、前記固定線の先端部において前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であることと、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を防止するための手段とを備える。拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え得る。いくつかの場合には、形状記憶コイルは、形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退が形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように、インナーワイヤの上に事前に巻回されていてもよい。他の例では、形状記憶コイルは外側チューブによって収納されていてもよく、内側チューブは形状記憶コイルを外側チューブから押し出して、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように構成され得る。
【0009】
本発明の実施形態によれば、冠状静脈内に医療用リードを固定するための装置は、1つ以上の電極を有するリード本体と、固定線と、前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、リード本体を留置するための手段とを備え得る。そのような実施形態によれば、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って、冠状静脈の分枝血管内に留置可能であり得、拡張可能なアンカー構造は、冠状静脈の壁に係合するように構成された拡張形態を有し得る。本発明に従ったそのような実施形態はまた、固定線をリード本体に連結するための手段を備え得る。
【0010】
リード本体は第1管腔および第2管腔を備えてもよく、第1管腔は固定線および拡張可能なアンカー構造を受容するように構成され、第2管腔はリード本体を留置するための手段を受容するように構成される。一部の例では、第2管腔はリード本体の内壁によって形成されていてもよく、第1管腔は第2管腔内に延びていてもよい。他の例では、リード本体は、リード本体の内壁によって形成された第3管腔を備える。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、固定線は、リード本体からリード本体の端子ピンの先端側で分岐している。一部の例では、固定線はリード本体から孔を通って分岐しており、固定線には、孔の外側で結び目が形成されていてもよく、この結び目を越えて固定線に対してリード本体が基端方向へ移動することを防止できる。
【0012】
拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え得る。いくつかの実施形態によれば、形状記憶コイルは、形状記憶コイルからインナーワイヤが後退することによって形状記憶コイルが冠状静脈に対して拡張するように、インナーワイヤ上に事前に巻回されていてもよい。他の実施形態によれば、形状記憶コイルは、リード本体を介したアンカー構造の留置の間、外側チューブ内に収容されていてもよく、内側チューブは形状記憶コイルを外側チューブから押し出して、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させるように構成され得る。本発明の実施形態によれば、拡張可能なアンカー構造および/または形状記憶コイルは再吸収性ポリマー(resorbable polymer)製であってもよい。
【0013】
複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の実施形態は、当業者には本発明の例証となる実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から明白になるであろう。従って、図面および詳細な説明は、本来、例証とみなされるべきであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に従った、患者の心臓内に留置されたリードに連結されたパルス発生器を備える心調律管理システムを示す概略図。
【図2】本発明の実施形態に従った、冠状静脈の分枝血管内に配置されたリードを示す図。
【図3】本発明の実施形態に従った、分枝血管においてリードを通って進められる拡張可能なアンカー構造を示す図。
【図4】本発明の実施形態に従った、分枝血管内において拡張したアンカー構造を示す図。
【図5】本発明の実施形態に従った、ハイポチューブの内部にコイルスプリングを備えたアンカー構造を示す図。
【図6】本発明の実施形態に従った、コアワイヤ上に事前に巻回されたコイルスプリングを備えたアンカー構造を示す図。
【図7】本発明の実施形態に従った、冠状静脈において医療用リードを固定するための方法を示す図。
【図8】本発明の実施形態に従った、パルス発生器およびリードの端子端を示す図。
【図9】本発明の実施形態に従った、端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図10】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図11】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図12】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図13】本発明の実施形態に従った、別の端子端係留装置の拡大側面断面図。
【図14】本発明の実施形態に従った、多管腔構成の部分側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は様々な修正および代替形態を受け入れるが、特定の実施形態を例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、本発明を特定の実施形態に限定するものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての変更物、均等物、および代替物を対象とするものとする。
【0016】
図1は、患者の上大静脈17から心臓16内に留置されたリード14に接続されたパルス発生器12を備えた心調律管理システム10の概略図である。当業において知られているように、パルス発生器12は、典型的には、患者の胸または腹部の埋め込み位置において皮下に埋め込まれる。図示したように、心臓16は、右心房18および右心室20、左心房22および左心室24、右心房18の冠状静脈洞口26、冠状静脈洞28、並びに大心静脈30および具体例としての分枝血管32を含む様々な心臓の分枝血管を有する。
【0017】
図1に示すように、リード14は基端領域36および先端領域38を有する長尺状本体34を備え得る。本発明の実施形態によれば、先端領域38は、電極42を備え、かつ拡張可能なアンカー構造44において終端をなす先端部40を有する。経静脈的な手法による左心室の心外膜ペーシングを容易にするために、リード14を、静脈洞28を介して冠状静脈32内に留置し得る。一部の例において、リード14の不安定性は、処置時間の延長、再手術、捕捉の喪失、横隔神経の刺激、および再同期療法の喪失を生じ得る。本発明の実施形態は、血管32の壁に確実に固定するために拡張可能なアンカー構造44を提供する。
【0018】
図1は、心調律管理システム10の一部として電極42を備えたリード14を示しているが、これに代わって、リード14は、1つ以上のセンサーおよび/または1つ以上の電極42を備えてもよく、またパルス発生器12の代わりにおよび/またはパルス発生器12に加えて、モニターを備えた1つ以上のセンサーを接続していてもよい。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に従った、冠状静脈洞28を介した心静脈の分枝血管32へのリード14の配置を示す。リード14は分枝血管32内に押し込まれ得る。本発明の一部の実施形態によれば、リード14の配置および/または係留をさらに強化するために、リード14はさらなる分枝血管(すなわち支流(tributary))48内に押し込まれてもよい。次に、図3に表すように、リードがその標的位置に配置された後、その非拡張状態にあるアンカー構造44は、リード14を通って、リード14の端部(例えば電極42付近)を通り抜けて、分枝血管48内に進められ得る。その非拡張状態にあるアンカー構造44はリード14内の管腔を通って留置されるように十分に狭小であるため、非拡張状態にあるアンカー構造44もまた、リード14自体よりも分枝血管48内にさらに進められるように十分に狭小である。
【0020】
図4は、本発明の実施形態に従った、その拡張した状態にある拡張可能なアンカー構造44を示す。図4に表した実施形態において、アンカー構造44のコイルは、分枝血管48の側壁と係合し、その側壁に対して半径方向の力を及ぼすように拡張しており、それによりアンカー構造44を分枝血管48内に係留している。図4には示していないが、アンカー構造44は、ガイドワイヤーとさほど変わらない大きさ(例えば約0.356mm(14/1000インチ))の末梢静脈48の極めて狭い範囲に挿入されてもよい。アンカー構造44には固定線50が連結されており、固定線50は、リード14の管腔を通って、一端においてアンカー構造44から、もう一端においてリード14の基端部36まで延在し得る。これに代わって、固定線50は、基端部36以外の位置においてリード14に取り付けられていてもよい。本願で用いられる場合、「連結されている(coupled)」という用語は、直接的に、または一体的に、または他の要素を介して間接的に、恒久的に、一時的に、または取り外し可能に、接続、付着、および/または係合されている要素を指すように、その最も広い意味において用いられる。
【0021】
図5および図6は、本発明の実施形態に従った、アンカー構造44のための留置機構を示す。図5は、チューブ54の内部のスプリングコイル52を示す。前記チューブはポリマーおよび/または金属ハイポチューブ54であり得、大きさおよび可撓性においてガイドワイヤーに類似している。ハイポチューブ54がリード14の前方の分枝血管48の所望位置に搬送されたならば、該チューブ54は後方に引かれて、リード14の先端部(電極42付近)にスプリングコイル52を留置する。これに代わって、外側チューブ54内に位置する内側チューブ56を用いて、スプリングコイル52を外側チューブ54から矢印58の方向に押し出すことにより、スプリングコイル52を分枝血管48の側壁と係合するように拡張させてもよい。本発明の様々な実施形態によれば、スプリングコイル52の基端部は、基端部36近傍のリード14の端子ピンに連結されるか、さもなければ固定され得る。本発明の一部の実施形態では、チューブ54は、チューブ54からスプリングコイル52を押し出す前に、リード本体14から延ばされ得る。他の実施形態では、リード14の内部管腔自体が、その非拡張状態にあるスプリングコイル52を保持するように機能し、また、チューブ56は、スプリングコイル52をリード14から参照符号58の方向に押し出すように機能し得る。
【0022】
図6は、本発明の実施形態に従った、アンカー構造44のための代替の留置機構を示す。図6に示したアンカー構造44は、コアワイヤ60の上に事前巻回コイル52を備える。アンカー構造44がリード14より前方に分枝血管48内の所望位置に進められたならば、コアワイヤ60は、矢印62によって示された方向に引き戻されるか、または抜去されて、コイル52がその固有形状(intrinsic shape)に変形して、血管48の壁に係合することを可能にする。図5および図6のスプリングコイル52はステンレス鋼および/または形状記憶合金(例えばニチノール)から構成された金属コイルである。スプリングコイル52および/またはアンカー構造44の他の要素は、例えば、再吸収性ポリマーのようなポリマーによって製造されていてもよい。
【0023】
スプリングコイル52の基端部は、パルス発生器12付近にある端子ピンにおいて、下記に述べる様々な方法によって固定され得る金属またはポリマーハイポチューブから構成され得る。一部の実施形態によれば、そのような金属またはポリマーのハイポチューブの一部はリード14内に留まり、アンカー構造44への接続を提供する。いくつかの場合には、スプリングコイル52は、リード14内を通って基端部36に延びる固定線50と連結されている。他の場合には、スプリングコイル52自体が固定線50と一体的に形成されている。例えば、固定線は、スプリングコイル52に、はんだ付けされてもよいし、または他の方法で取り付けられていてもよい。本発明の一部の実施形態によれば、アンカー構造44および/または固定線は、全体的にポリマーから構成される。挿入後のリード14の除去を可能にするために、アンカー構造44は、例えば、再吸収性ポリマーから構成されていてもよい。
【0024】
固定線50は、固定線50がアンカー構造44付近から基端部36付近へ延びるにつれて、広がっていてもよく、例えば、固定線50は、固定線50が基端部36に近づくにつれて徐々に拡径していてもよいし、または、固定線50はハイポチューブと連結され、該ハイポチューブは、下記で述べるようにリード14の端子ピンと連結されてもよい。本発明の一部の実施形態によれば、固定線50自体がコアワイヤ60である。コアワイヤ60および/または固定線50は、その先端部付近においてテーパーをなしてもよい。スプリングコイル52はまた、例えばコークスクリュー、渦巻き、または、らせんのような事前に形成されたマクロ形状を有する。スプリングコイル52を拡張させると、スプリングコイル52は、分枝血管48の側壁に係合するだけでなく、特定のマクロの形状をとって係留をさらに増強する。スプリングコイル52はまた他のマクロの形状をとるように構成されていてもよい。例えば、スプリングコイル52は、正弦波曲線形、枝、および/または鉤のような二次元形状をとるように構成されていてもよい。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、固定線50およびアンカー構造44は、先端部が分枝血管48の内壁に係合する事前に形成された形状を有する連続したポリマーハイポチューブから構成され得る。コアワイヤ60と共に、ハイポチューブの先端部がガイドワイヤーの性能特性を示すように、事前に形成された部分(以下、「事前形成部分」と称する)には切り込みまたは切り溝が形成されていてもよい。コアワイヤ60が事前形成部分から除去されたならば、事前形成部分は、上述したスプリングコイル52の実施形態に類似して、その本来のマクロ形状に拡張する。そのような実施形態によれば、事前形成部分は、再吸収性ポリマーから構成され得る。
【0026】
図7は、本発明の実施形態に従った、医療用リードを冠状静脈内に固定するための方法を示す。リードの配置において典型的に行われるように、リード14にスタイレットを搭載して、リード14に賦形し、かつ/またはリード14を偏向させて、リード14を前方に押し進めてもよいし、または、ガイドワイヤーを、冠状静脈洞口26を介して、冠状静脈洞28内を通って、分枝血管32内に進め、さらに支流48内に進めてもよい(ブロック64)。次に、リード14は分枝血管32内に留置され得る(ブロック66)。例えば、本発明の実施形態によれば、リード14は、オーバーザワイヤー技術によってガイドワイヤー上を通って分枝血管48内に留置され得る。リード14は、係留をさらに強化し、かつ/または電極42と支流48との間の接触を改善するために、分枝血管48内に押し込まれ得る。
【0027】
リード14がその所望位置に配置されたならば、リード14を配置するために用いるスタイレットまたはガイドワイヤーは除去され得る(ブロック68)。例えば、ガイドワイヤーは、リード14の管腔を介してガイドワイヤーを引き戻すことによって除去され得る。次に、アンカー構造44はリード14内を通って進められ得る(ブロック70)。本発明の一部の実施形態によれば、固定線50は、アンカー構造44と連結され、リード14内を通ってアンカー構造44の後方に進められ得る。アンカー構造44は、リード14の先端部を通って、さらに分枝血管48内に進められ得、その地点において、アンカー構造44は分枝血管48内に拡張され得る(ブロック72)。上述したように、アンカー構造44の拡張は、図6のそれに類似した留置機構のために、形状記憶コイル52からコアワイヤ60を除去することによって行われてもよいし(ブロック74)、またはスプリングコイル52は、図5のそれに類似した留置機構のために、ハイポチューブ54の内部から押し出されてもよい(ブロック76)。本願で提供される開示に基づいて、当業者は、リード14を通って留置され、分枝血管48内に係留され得る、ワイヤー、バルーン、ステント、鉤、枝、および/またはコイルを含むが、これらに限定されない様々な構造を認識するであろう。
【0028】
アンカー構造44が分枝血管48内において該構造を固定するように拡張されたならば、リード14はアンカー構造44に繋がれ得る(ブロック78)。本発明のいくつかの実施形態によれば、アンカー構造44は、アンカー構造44を固定線50と連結し、次に、固定線50を基端部36付近のリード14の端子ピンに連結することによって、リード14に繋がれる。一部の実施形態によれば、固定線50はハイポチューブまたは類似した装置である。アンカー構造44は、様々な方法でリード14と連結され得、例えば、図9に示すように、固定線50の頭部がリード14の管腔の内径より大きくなるように、固定線50の端子端部に頭部を形成してもよい(ブロック80)。別の例として、図10に示すように、固定線50の端子端部に楔を形成してもよいし(ブロック82)、さらに他の例として、図11に示すように、固定線50を末端キャップの基端部の上に折り重ねて、端子ピンおよび固定線50の上にエンドキャップを配置してもよいし(ブロック84)、または図12に示すように、端子ピンおよび固定線50の上にバンド(例えばゴムバンド)を配置してもよい。固定線50がハイポチューブまたはポリマーストランドである実施形態については、図13に示すように、工具を用いて固定線50の端を拡開させてもよい(ブロック86)。他の実施形態によれば、アンカー構造44は、リード14の内側、またはリード14の先端部もしくはその近傍に繋がれるか、または他の方法で連結される。
【0029】
図8は、本発明の実施形態に従った、パルス発生器12およびリード14の端子端部88を示す。密閉ハウジング90は、該密閉ハウジング90内に収容された電子回路の一部を形成するマイクロプロセッサに基づいた制御装置によって命令される予めプログラムされた振幅、持続時間および繰り返し率のパルスを生成するためのバッテリーおよび電子回路部品を収容し得る。パルス発生器12は、該パルス発生器12に取り付けられた成形プラスチックコネクター92を有し、コネクター内にはリード受容穴94が長手方向に形成されており、該リード受容穴94に医療用リード14の端子部分88が挿入される。
【0030】
リード14は、その先端部付近または先端部において1つ以上の電極98,100を有する、長尺状で可撓性のリード本体96を備える。これらの電極は長尺状の可撓性導体(図示せず)によって接続されており、前記長尺状可撓性導体はリード本体96内を通って延在し、かつ互いに絶縁されている。前記導体は、リードの基端側端子88上に配置された接点102,104に接続する。リード14上のシーリングリング106,108は穴94の壁と界接して、コネクター92の穴94内への体液の進入を防止する。
【0031】
埋め込み型装置12は、リード端子88上の接点領域102,104が穴94内に収容されている対となる接点から脱係合するのを防止するためにコネクター内にロック機構を備え得る。典型的なリードのロックは、内部に形成された長手方向の穴112を有する金属のブロック110を備える。前記穴は、横断方向に延びるねじ山付きの穴114と交差する。ねじ山付きの穴114には、止めねじ116が嵌め込まれる。コネクター内部への体液の進入を防止するために、穴114にはエラストマープラグが嵌合される。埋め込み時に、止めねじ116は、リード上の接点104を穴112の壁に対して緊密に押し付けるように、エラストマープラグを介して挿入された締付ツールを用いて締められる。本発明の実施形態によれば、リード端子88はまた端子ピンとも称され得る。
【0032】
図9は、本発明の実施形態に従った、図8のリード端子88の拡大図を示す。端子ピン118は、固定線120の基端部を取り囲んでいる。図9では、固定線120は中実チューブとして示されているが、固定線120はまた、例えば、ワイヤーおよび/または中空ハイポチューブであってもよい。固定線120はその基端部において頭部122を形成しており、頭部122の外寸は端子ピン118の内径124よりも大きい。そのような構成は、端子ピン118とリード14とが固定線に対して基端方向に摺動するのを防止し、よってリード14とその上に位置する電極42との移動を実質的に妨げる。図9の頭部122に類似して、図10の固定線120は、その基端部において楔126を形成しており、楔126の外寸は端子ピン118の内径もより大きい。
【0033】
図11および図12は、本発明の実施形態に従った、繊維または糸に非常によく類似した固定線128を示す。図11は、端子ピン118上に折り重ねられた固定線128を表しており、その後、端子ピン118の外面上にエンドキャップ130が挿入されて、固定線128を適所に保持している。本発明の一部の実施形態によれば、端子ピン118の端部から突出する過剰な固定線128は切断されてもよい。エンドキャップ130は端子ピン118の端部に対して圧力嵌めを生じ、他の実施形態によれば、エンドキャップ130は端子ピン118と螺合する。図12は、本発明の実施形態に従った、端子ピン118上に折り重ねられた固定線128を表しており、その後、例えばゴムバンドのようなバンド132が端子ピン118のまわりに固定されて、固定線128を端子ピン118と連結する。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、エンドキャップ130は穴(例えば「ピンホール」)を備えてもよく、その穴に固定線128を通し、次に結び目を形成して、固定線128に対するリード14の基端方向の移動を防止する。本発明のさらに他の実施形態によれば、端子キャップ118、頭部122、および/または楔126は、溝または切り欠きを備えてもよく、その溝または切り欠きの周りには、細い繊維状固定線128が、頭部122または楔126を端子ピン118と連結する前に、巻回され、かつ/または結ばれ得る。
【0035】
図13は、本発明の実施形態に従った別の端子エンドキャップを示す。上述したように、リードおよびアンカー構造44が配置されたならば、中実または中空のハイポチューブであり得る固定線120の基端部に楔ツール134が挿入され得る。楔ツール134の挿入により、拡開した縁136が形成される。拡開した縁136は、端子ピン118の内径124より大きな外寸を有し、拡開した縁136に対する端子ピン118およびリード14の、基端方向の運動または移動を実質的に防止する。本発明の実施形態によれば、図9〜図13の端子エンドキャップの実施形態は、端子ピン118がパルス発生器12の長手方向の穴112内に挿入されるのに十分な余裕をもたせながら、アンカー構造44を(固定線120,128によって)リード14に(端子ピン118によって)効果的に連結する、または繋ぐ。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、リード14は、リード14の配置の間にスタイレットまたはガイドワイヤーを収容する単一の管腔を備える。そのような実施形態によれば、スタイレットまたはガイドワイヤーは、リード14の前記管腔からアンカー構造44および/または固定線50を挿入する前に、リード14から除去される。図14は、本発明の実施形態に従った代替のリード14の管腔の形態を示す。リード14は、通常、アンカー構造44の挿入前にスタイレットまたはガイドワイヤーが留置され、次いで除去され得る単一の管腔138を有する。図14は、管腔138内において、リード14は、スタイレットまたはガイドワイヤーがリード14内に残っている間でさえアンカー構造44の留置を可能にするために、1つ以上の他の管腔140,142を備えてもよいことを示している。例えば、管腔140は、リード14を適所に誘導するためのスタイレットまたはガイドワイヤーを受容するために用いられ、一方、管腔142はアンカー構造44および/または固定線50を留置するために用いられ得る。
【0037】
図14に示すように、管腔142は任意で端子ピン118の先端側の位置において主管腔138を退出してもよい。アンカー構造44の留置用の管腔142がリード14の基端部に到達する前に主管腔138から分岐するこれらの実施形態によれば、固定線128が端子ピン118に到達しないために、図9〜図13の端子エンドキャップの例は当てはまらないことがある。しかしながら、固定線128は、依然として類似した方法で、リード14に連結されてもよいし、かつ/または固定されてもよい。例えば、リード14を固定線128に繋ぐために、固定線128の基端部に結び目144を形成してもよい。本発明の他の実施形態によれば、管腔140,142の一方または他方のいずれかが不在であってもよい。例えば、本発明の実施形態によれば、管腔142は、スタイレットまたはガイドワイヤーからアンカー構造44の留置を分離するために備えられ、スタイレットまたはガイドワイヤーは、単に管腔142の隣のリード14の主管腔138を通って挿入され得る。
【0038】
本発明の範囲から逸脱することなく、検討した具体例としての実施形態に対して、様々な変更および追加をなすことができる。例えば、上記に記載した実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態および記載した特徴のすべては備えていない実施形態も包含する。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲内にあるすべてのそのような代替案、変更および別例を、それらのすべての均等物と共に、包含するように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための方法であって、前記方法は、
冠状静脈の分枝血管内にリード本体を進めることと、
固定線を、前記リード本体を通って、リード本体の先端部を通過させ、分枝血管内に挿入することと、前記固定線は拡張可能なアンカー構造を備えることと、
分枝血管の壁を拡張可能な前記アンカー構造と係合させることと、
前記固定線をリード本体に連結することと
を有する、方法。
【請求項2】
前記拡張可能なアンカー構造は、コアワイヤと、該コアワイヤの周りに事前に巻回された拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、コアワイヤを拡張可能なコイルから除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拡張可能なコイルは、拡張状態にある事前に形成された形状を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記事前に形成された形状は、らせん、コークスクリュー、および渦巻きのうちから選択される形状である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記拡張可能なアンカー構造は、固定線の周りに事前に巻回された拡張可能なコイルを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、固定線を拡張可能なコイルから少なくとも部分的に除去して、拡張可能なコイルが分枝血管と係合するのを可能することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記拡張可能なアンカー構造は、チューブと、該チューブ内に位置する拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、前記拡張可能なコイルを前記チューブから押し出して、前記拡張可能なコイルを分枝血管と係合させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記拡張可能なコイルは、拡張状態にある事前に形成された形状を備え、前記事前に形成された形状は、らせん、コークスクリュー、渦巻き、枝、正弦曲線および鉤のうちから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定線をリード本体と連結することは、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を制限するように、リード本体の端子ピンをキャッピングすることを含み得る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リード本体は端子ピンにおいて内径を有し、前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの基端側の固定線上に頭部部分を形成することを含み、前記頭部部分は、前記内径より大きな外寸を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、固定線および端子ピン上に蓋を配置することとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの上に固定線を折り重ねることと、端子ピンの外側の周囲において固定線の上にバンドを固定することとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記リード本体は端子ピンにおいて内径を有し、前記端子ピンをキャッピングすることは、固定線の基端部を、前記内径より大きな径を与えるように拡開することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための装置であって、該装置は、
1つ以上の電極を有するリード本体と、
固定線と、
前記固定線の先端部において前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であることと、
前記固定線に対するリード本体の基端方向の移動を防止するための手段とを
備える、装置。
【請求項14】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
インナーワイヤをさらに備え、該インナーワイヤの上には前記形状記憶コイルが事前に巻回されており、前記形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退は、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記拡張可能なアンカー構造は形状記憶コイルを備え、該装置は、
リード本体を介した拡張可能なアンカー構造の留置の間に、前記形状記憶コイルを収容するように構成された外側チューブと、
前記形状記憶コイルを外側チューブから押し出すように構成された内側チューブとをさらに備え、前記形状記憶コイルを外側チューブから押し出すことにより、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための装置であって、該装置は、
1つ以上の電極を有するリード本体と、
固定線と、
前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であり、前記拡張可能なアンカー構造は、冠状静脈の壁に係合するように構成された拡張形態を有することと、
リード本体を留置するための手段と
を有する、装置。
【請求項17】
前記固定線をリード本体に連結するための手段をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記リード本体は第1管腔および第2管腔を備え、第1管腔は固定線および拡張可能なアンカー構造を受容するように構成されており、第2管腔はリード本体を留置するための手段を受容するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記リード本体は第3管腔を備え、第3管腔はリード本体の内壁によって形成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記固定線は、リード本体からリード本体の端子ピンの先端側で分岐している、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
その内部を通って前記固定線がリード本体から分岐する孔と、前記孔の外側において前記固定線に形成された結び目とをさらに備え、前記結び目の外寸は、前記孔の内寸よりも大きい、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
インナーワイヤをさらに備え、該インナーワイヤの上には前記形状記憶コイルが事前に巻回されており、前記形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退は、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記拡張可能なアンカー構造は、再吸収性ポリマーで製造されている、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
リード本体を介した拡張可能なアンカー構造の留置の間に、形状記憶コイルを収容するように構成された外側チューブと、
前記形状記憶コイルを前記外側チューブから押し出すように構成された内側チューブとをさらに備え、前記形状記憶コイルを前記外側チューブから押し出すことにより、前記形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項16に記載の装置。
【請求項1】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための方法であって、前記方法は、
冠状静脈の分枝血管内にリード本体を進めることと、
固定線を、前記リード本体を通って、リード本体の先端部を通過させ、分枝血管内に挿入することと、前記固定線は拡張可能なアンカー構造を備えることと、
分枝血管の壁を拡張可能な前記アンカー構造と係合させることと、
前記固定線をリード本体に連結することと
を有する、方法。
【請求項2】
前記拡張可能なアンカー構造は、コアワイヤと、該コアワイヤの周りに事前に巻回された拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、コアワイヤを拡張可能なコイルから除去して、拡張可能なコイルが拡張して分枝血管と係合するのを可能にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拡張可能なコイルは、拡張状態にある事前に形成された形状を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記事前に形成された形状は、らせん、コークスクリュー、および渦巻きのうちから選択される形状である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記拡張可能なアンカー構造は、固定線の周りに事前に巻回された拡張可能なコイルを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、固定線を拡張可能なコイルから少なくとも部分的に除去して、拡張可能なコイルが分枝血管と係合するのを可能することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記拡張可能なアンカー構造は、チューブと、該チューブ内に位置する拡張可能なコイルとを備え、前記分枝血管の壁を係合させることは、前記拡張可能なコイルを前記チューブから押し出して、前記拡張可能なコイルを分枝血管と係合させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記拡張可能なコイルは、拡張状態にある事前に形成された形状を備え、前記事前に形成された形状は、らせん、コークスクリュー、渦巻き、枝、正弦曲線および鉤のうちから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定線をリード本体と連結することは、固定線に対するリード本体の基端方向の移動を制限するように、リード本体の端子ピンをキャッピングすることを含み得る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リード本体は端子ピンにおいて内径を有し、前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの基端側の固定線上に頭部部分を形成することを含み、前記頭部部分は、前記内径より大きな外寸を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピン上に固定線を折り重ねることと、固定線および端子ピン上に蓋を配置することとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記端子ピンをキャッピングすることは、端子ピンの上に固定線を折り重ねることと、端子ピンの外側の周囲において固定線の上にバンドを固定することとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記リード本体は端子ピンにおいて内径を有し、前記端子ピンをキャッピングすることは、固定線の基端部を、前記内径より大きな径を与えるように拡開することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための装置であって、該装置は、
1つ以上の電極を有するリード本体と、
固定線と、
前記固定線の先端部において前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であることと、
前記固定線に対するリード本体の基端方向の移動を防止するための手段とを
備える、装置。
【請求項14】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
インナーワイヤをさらに備え、該インナーワイヤの上には前記形状記憶コイルが事前に巻回されており、前記形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退は、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記拡張可能なアンカー構造は形状記憶コイルを備え、該装置は、
リード本体を介した拡張可能なアンカー構造の留置の間に、前記形状記憶コイルを収容するように構成された外側チューブと、
前記形状記憶コイルを外側チューブから押し出すように構成された内側チューブとをさらに備え、前記形状記憶コイルを外側チューブから押し出すことにより、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
冠状静脈内において医療用リードを固定するための装置であって、該装置は、
1つ以上の電極を有するリード本体と、
固定線と、
前記固定線に連結された拡張可能なアンカー構造と、前記固定線および拡張可能なアンカー構造は、リード本体を通って冠状静脈の分枝血管内に留置可能であり、前記拡張可能なアンカー構造は、冠状静脈の壁に係合するように構成された拡張形態を有することと、
リード本体を留置するための手段と
を有する、装置。
【請求項17】
前記固定線をリード本体に連結するための手段をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記リード本体は第1管腔および第2管腔を備え、第1管腔は固定線および拡張可能なアンカー構造を受容するように構成されており、第2管腔はリード本体を留置するための手段を受容するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記リード本体は第3管腔を備え、第3管腔はリード本体の内壁によって形成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記固定線は、リード本体からリード本体の端子ピンの先端側で分岐している、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
その内部を通って前記固定線がリード本体から分岐する孔と、前記孔の外側において前記固定線に形成された結び目とをさらに備え、前記結び目の外寸は、前記孔の内寸よりも大きい、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
インナーワイヤをさらに備え、該インナーワイヤの上には前記形状記憶コイルが事前に巻回されており、前記形状記憶コイルからのインナーワイヤの後退は、形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記拡張可能なアンカー構造は、再吸収性ポリマーで製造されている、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記拡張可能なアンカー構造は、形状記憶コイルを備え、該装置は、
リード本体を介した拡張可能なアンカー構造の留置の間に、形状記憶コイルを収容するように構成された外側チューブと、
前記形状記憶コイルを前記外側チューブから押し出すように構成された内側チューブとをさらに備え、前記形状記憶コイルを前記外側チューブから押し出すことにより、前記形状記憶コイルを冠状静脈に対して拡張させる、請求項16に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−540080(P2010−540080A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526978(P2010−526978)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/059431
【国際公開番号】WO2009/042250
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/059431
【国際公開番号】WO2009/042250
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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