冷却ユニットの製造方法、冷却ユニット、光学装置、並びにプロジェクタ
【課題】 低コスト化並びに小型化に適した冷却ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】 冷却ユニットが備える冷却板は、冷却流体が流れる冷却管14を間に挟んで一対の板状部材12,13が対向配置された構成を有している。本発明の製造方法は、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、冷却管14を収納する溝部122,132を形成する溝部形成工程と、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に対して外力の付加又は所定部材の接合により、溝部122,132の内方に向かって突出する突起部124,134を形成する突起部形成工程と、溝部122,132に冷却管14を収納しかつその冷却管14を拡径させて、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14とを結合させる結合工程と、を有する。
【解決手段】 冷却ユニットが備える冷却板は、冷却流体が流れる冷却管14を間に挟んで一対の板状部材12,13が対向配置された構成を有している。本発明の製造方法は、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、冷却管14を収納する溝部122,132を形成する溝部形成工程と、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に対して外力の付加又は所定部材の接合により、溝部122,132の内方に向かって突出する突起部124,134を形成する突起部形成工程と、溝部122,132に冷却管14を収納しかつその冷却管14を拡径させて、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14とを結合させる結合工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ユニットの製造方法、冷却ユニット、光学装置、並びにプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却流体を用いた冷却ユニットとして、対向的に組み合わせられる一対の金属板の内面間に冷却液流路としての金属パイプを配置した構成の冷却板を備えるものがある。この冷却板は、一対の金属板の少なくとも一方に金属パイプよりも大きいパイプ収納溝を形成し、金属パイプと一対の金属板とを一体的に組み合わせることにより製造される。そして、その製造過程において、上記組み合わせの後に金属パイプ内に加圧流体を供給し、そのパイプを拡径させてパイプ収納溝に金属パイプを密着させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−156195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の冷却ユニットの製造方法では、パイプ収納溝を金属板の合わせ面に対して逆テーパ状に形成し、金属パイプの拡径時にその溝の縁部分(アンダーカット部)を金属パイプに食い込ませることにより金属板と金属パイプとを結合している。
【0004】
しかしながら、上記の製造方法では、上記のアンダーカット部の形成に、特殊な刃具を用いた切削加工が必要であり、そのため、低コスト化を図りにくく、また、小型化への対応も困難である。
【0005】
本発明は、低コスト化並びに小型化に適した冷却ユニットの製造方法、冷却ユニット、光学装置、並びにプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製造方法は、内部に冷却流体が流れる冷却板を備える冷却ユニットを製造する方法であって、前記冷却板は、冷却流体が流れる冷却管を間に挟んで一対の板状部材が対向配置された構成を有しており、前記一対の板状部材の各対向面に、前記冷却管を収納する溝部を形成する溝部形成工程と、前記一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により、前記溝部の内方に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、前記溝部に前記冷却管を収納しかつ該冷却管を拡径させて、前記一対の板状部材のそれぞれと前記冷却管とを結合させる結合工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この製造方法では、一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により突起部が形成され、冷却管の拡径時にその突起部が冷却管に食い込むことにより一対の板状部材のそれぞれと冷却管とが結合される。突起部を、外力の付加又は所定部材の接合によって形成することにより、特殊な刃具を用いた切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。
したがって、この製造方法では、低コスト化並びに小型化が図られる。
【0008】
なお、上記の製造方法により製造された冷却ユニットでは、板状部材の溝部と冷却管とが互いに接することで両者が熱的に接続され、板状部材に接する被冷却物体の熱が冷却管内を流れる冷却流体によって取り除かれる。冷却板の内部に冷却管を配設した構造は、冷却流体の経路形成のための接合部が比較的少なくて済むから流体漏れのリスクが小さく、また、流れ方向に関して均一かつ滑らかな流路が形成されるから配管抵抗が小さい。
【0009】
上記の製造方法においては、鋳造法又は鍛造法を用いて前記溝部を形成することが可能である。
また、鍛造法を用いて前記突起部を形成することが可能である。
鍛造法や鋳造法は、量産化による低コスト化を図りやすい。
【0010】
上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることにより、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0011】
例えば、前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクを形成し、前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させる。
これによれば、溝部の隣接位置に形成したバンクを押圧することで、溝部の隣接部位を容易に塑性変形させることができる。
【0012】
あるいは、前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクと、前記溝部に対して前記バンクの外側に配される凹部と、をそれぞれ形成し、前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させる。
これによれば、溝部の隣接位置にバンクとその外側に凹部が形成されるから、そのバンクを押圧することで、溝部の隣接部位を容易に塑性変形させることができる。
【0013】
また、上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部と該開口部の内方に突出する突起部とが形成された別の部材を接合することによっても、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0014】
また、上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部が形成された別の部材を接合するとともに、該別の部材の一面に所定の型を押し当てて該開口部の隣接部位を塑性変形させることによっても、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0015】
上記の製造方法においては、前記溝部と前記冷却管との隙間に熱伝導材を充填する充填工程を、さらに有する構成とすることができる。
これによれば、熱伝導材の充填により、板状部材と冷却管との間の熱伝達性の向上が図られる。
【0016】
熱伝導材の熱伝導率は、3W/(m・K)以上であるのが好ましく、5W/(m・K)以上であるのがより好ましい。熱伝導材の熱伝導率が3W/(m・K)未満であると、板状部材の熱が冷却管に移動しにくいので好ましくない。また、熱伝導材の熱伝導率が5W/(m・K)以上であることにより、板状部材の熱が冷却管に良好に移動する。
【0017】
この場合、例えば、前記熱伝導材は、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルトのうちの少なくとも1種類を含む。
【0018】
また、前記熱伝導材は、前記冷却板の使用温度範囲内において弾性を有するのが好ましい。
熱伝導材が弾性を有することにより、熱変形等に伴う板状部材と冷却管との隙間の変化に応じて熱伝導材が伸縮し、板状部材と冷却管との熱的接続が安定的に維持される。
【0019】
また、前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記溝部と前記冷却管との隙間に連通しかつ前記熱伝導材が少なくとも一時的に収容される補溝が形成されるのが好ましい。
この場合、例えば、前記溝部形成工程において、前記溝部の内面及び/又は前記一対の板状部材の少なくとも一方の対向面に、前記補溝を形成する。
上記補溝により、板状部材と冷却管との隙間の容積に応じて熱伝導材の配置量が適宜調整され、板状部材と冷却管との間の熱的接続が安定的に維持される。
【0020】
また、前記充填工程では、前記熱伝導材を軟化かつ流動させて前記熱伝導材の充填を行うことができる。
この場合、例えば、前記拡径工程における前記冷却管の熱により前記熱伝導材を軟化させる。
熱伝導材を軟化かつ流動させることで、上記隙間の領域にわたって熱伝導材が充填される。
【0021】
本発明の冷却ユニットは、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。
この冷却ユニットによれば、低コスト化並びに小型化が図られる。
【0022】
本発明の光学装置は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子を含んで構成される光学装置において、少なくとも、前記光変調素子が上記の製造方法により製造された冷却ユニットに保持されることを特徴とする。
この光学装置によれば、低コスト化並びに小型化及び冷却の効率化が図られる。
【0023】
本発明のプロジェクタは、光源装置と、少なくとも、前記光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子が、上記の製造方法により製造された冷却ユニットに保持された光学装置と、前記光学装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とする。
このプロジェクタによれば、低コスト化並びに小型化及び冷却の効率化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするために、必要に応じてその縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0025】
(冷却ユニット)
図1(A)は冷却ユニット10の構成を示す平面図、図1(B)は図1(A)に示すA−A断面図である。
図1(A)及び図1(B)に示すように、冷却ユニット10は、透過型の光学素子11の周縁を保持しかつその光学素子11を冷却するものであり、光学素子11を保持する一対の板状部材12,13と、一対の板状部材12,13に挟持された冷却管14とを備えている。
【0026】
光学素子11としては、液晶パネル、偏光板の他、位相差板、視野角補正板等の様々な光学素子が適用される。また、透過型に限らず、反射型の光学素子にも本発明は適用可能である。さらに、光学素子に限らず、他の物体の冷却にも本発明は適用可能である。なお、本発明の冷却ユニットを液晶パネル及び偏光板の冷却構造に適用した例について後で詳しく説明する。
【0027】
板状部材12,13はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、光学素子11における光束の透過領域に対応した矩形状の開口部121,131と、冷却管14を収納するための溝部122,132とを有する。板状部材12と板状部材13とは、冷却管14を間に挟んで互いに対向して配置される。板状部材12,13としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、マグネシウム(156W/(m・K))あるいはその合金(アルミニウム合金(約100W/(m・K))、低比重マグネシウム合金(約50W/(m・K))など)の他、各種金属が適用される。また、板状部材12,13は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0028】
冷却管14は、例えば環状の断面を有しその中心軸に沿って延在するパイプあるいはチューブからなり、板状部材12,13の溝部122,132の平面形状に応じて折り曲げ加工されている。冷却管14としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、銅(398W/(m・K))、ステンレス(16W/(m・K)(オーステナイト系))あるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、冷却管14は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0029】
具体的に、冷却管14は、図1(A)及び(B)に示すように、光学素子11の周縁部の外側で、光学素子11の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133(内面、合わせ面)において、開口部121,131の縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部122,132が形成されており、溝部122と溝部132とは互いに概ね鏡面対称の形状関係にある。そして、冷却管14を各溝部122,132内に収納した状態で、板状部材12,13同士が互いに接合されている。本例では、冷却管14は円形パイプであり、その外径は光学素子11の厚みと同程度である。
【0030】
図2は、板状部材12,13の溝部122,132を拡大して示す部分断面図である。
図2に示すように、板状部材12,13のそれぞれには、溝部122,132の内方に突出する突起部124,134が設けられており、この突起部124,134が冷却管14の外面に食い込んで係合することにより、各板状部材12,13と冷却管14とが一体化されている。また、後述する冷却管14の拡径処理を経て、各板状部材12,13の溝部122,132の内面に冷却管14の外面が密着している。
【0031】
なお、突起部124,134は、後述するように、板状部材12,13の溝部122,132を形成した後に、対向面123,133における溝部122,132の隣接位置に外力を加えて塑性変形させることにより形成したものである。そのため、板状部材12,13の各対向面123,133には、溝部122,132の隣接位置に、力付加の痕である凹部125,135が存在している。
【0032】
図1に戻り、冷却管14の一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。冷却管14の流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管に接続される。なお、冷却流体の経路上には、それぞれ不図示の、流体圧送部、各種タンク、ラジエータ等の流体循環用の機器が配置される。
【0033】
流入部(IN)から冷却管14内に流入した冷却流体は、光学素子11の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、冷却管14内を流れる間に、光学素子11から熱を奪う。すなわち、光学素子11の熱が、板状部材12,13を介して冷却管14の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0034】
本例では、後述する冷却管14の拡径処理を経て、各板状部材12,13の溝部122,132に冷却管14が密着しており、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性が高い。また、冷却管14は光学素子11の周縁部に沿って略一周にわたって配設されているから、伝熱面積の拡大が図られている。そのため、冷却管14内を流れる冷却流体によって、光学素子11が効果的に冷却される。
【0035】
光学素子11を保持する枠体(板状部材12,13)の内部に冷却管14を配設した構造は、冷却流体の経路形成のための接合部が比較的少なくて済むから流体漏れのリスクが小さく、また、流れ方向に関して均一かつ滑らかな流路が形成されるから配管抵抗が小さい。しかも、この構造では、枠体が、光学素子11の保持手段と冷却手段とを兼ねており、その結果、光学素子11を備える装置の小型化を図りやすいという利点がある。
【0036】
なお、各板状部材12,13における溝部122,132と冷却管14との隙間に、熱伝導材を充填させることにより、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上を図ることが可能である。この熱伝導材の充填については後述する。
【0037】
(冷却ユニットの製造方法)
次に、上記冷却ユニット10の製造方法について説明する。
図3は、冷却ユニット10の製造方法の一例を示す説明図である。この製造方法は、溝部形成工程と、突起部形成工程と、結合工程とを有する。
【0038】
まず、溝部形成工程では、図3(a)に示すように、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、冷却管を収納するための断面略U字状あるいは断面略半円状の溝部122,132を形成する。この工程では、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて溝部122(132)を備える板状部材12(13)を一体形成する。鋳造法では、例えば、溶融した材料を所定の形の型に流し込み、これを凝固させて所望の形状の板状部材を得る。鍛造法では、例えば、材料部材を一組の型の間に挟み、これを圧縮して所望の形状の板状部材を得る。切削加工により溝部122,132を形成してもよいが、鍛造法や鋳造法は、量産化による低コスト化を図りやすい。
【0039】
次に、突起部形成工程では、図3(b)に示すように、溝部122,132の内方に向かって突出する突起部124,134を形成する。この工程では、鍛造法を用いる。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133に、所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけにより、溝部122,132の隣接位置に型19の痕である凹部125,135を形成する(潰し加工)。この際、溝部122,132と凹部125,135との間の部位(溝部122,132の隣接部位)が型19に押され、その部位が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。その結果、溝部122,132の縁が内方に倒れて、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。プレスあるいは打ちつけは、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0040】
また、凹部125,135及び突起部124,134の形成は、冷却管14の軸方向にわたって行う。凹部125,135及び突起部124,134は、溝部122,132の軸方向に沿って連続して形成されていてもよく、間欠的あるいは部分的に形成されていてもよい。また、冷却管14の曲げ加工部分(図1(A)に示す冷却管14の湾曲部)は、突起部124,134を食い込ませるのが比較的困難であることから、これに対応する位置において、凹部125,135及び突起部124,134を省略したり突起部124,134の形状を小さくしたりするとよい。型19の形状は、板状部材12,13や冷却管14の材質、形状等に応じて適宜定められる。
【0041】
次に、結合工程では、図3(c)に示すように、各溝部122,132に冷却管14を収納した状態で板状部材12と板状部材13とを対向配置させて、各対向面123,133同士を当接状態に保持し、冷却管14を拡径させる。板状部材12,13の保持は、クランプ等の機械的把持手段や、ボルト等による締結により行う。拡径は、冷却管14の内部に流体を加圧供給することにより行い、また、必要に応じて複数回に分けて繰り返し行う。
【0042】
冷却管14の拡径により、図3(d)に示すように、冷却管14の外面が溝部122,132の内面に密着し、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14とが熱的に接続される。また、拡径時において、突起部124,134が冷却管14の外面に食い込んで係合することにより、各板状部材12,13と冷却管14とが結合される。これにより、冷却管14を間に挟んで一対の板状部材12,13が対向配置された構成を有する冷却構造(冷却板)が製造される。
その後、先の図1に示すように、板状部材12,13に光学素子11を固定するとともに、冷却管14を冷却流体の供給系に接続することにより冷却ユニット10が完成する。
【0043】
以上説明したように、本例の冷却ユニット10の製造方法では、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に対してプレスあるいは打ちつけ等の外力の付加により、突起部124,134を形成することから、切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。そのため、この製造方法によれば、製造される冷却ユニット10の低コスト化並びに小型化を図ることができる。
【0044】
図4〜図7は、図3の製造方法の変形例を示す説明図である。なお、既に説明したものと同一の機能を有する構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0045】
図4の例では、溝部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、溝部122,132に加えて、溝部122,132に隣接するバンク127,137を形成する(図4(a))。さらに、溝部122,132の壁面に型抜き用の勾配(抜き勾配)を設ける。バンク127(137)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から突出して形成された突起部である。抜き勾配は、離型の容易化を図るものであり、溝部122(132)の幅が開口に向かって徐々に広くなるように設けられる。バンク127,137の幅や高さ、抜き勾配の角度等は、板状部材12,13や冷却管の材質、形状等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0046】
突起部形成工程では、鍛造法を用いて上記のバンク127,137を塑性変形させる(図4(b))。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133における上記のバンク127,137に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、バンク127,137が型19に押され、そのバンク127,137が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。また、溝部122,132の隣接位置には、型の痕である凹部125,135(段落ち部)が形成される。なお、凹部125,135(段落ち部)が形成されず、力の付加位置が対向面123,133と同じ高さ(対向面123,133が平坦な状態)となってもよい。
【0047】
そして、バンク127,137の角部が溝部122,132の内方に倒れることにより、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。また、勾配が設けられた溝部122,132の壁面が内方に倒れることにより、突起部124,134がいわゆる逆テーパ状に形成される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0048】
本例では、バンク127,137が形成されていることで、突起部124,134形成時の塑性変形の容易化が図られる。しかも、突起部124,134が逆テーパ状に形成されることで、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14(図3参照)との結合性の向上が図られる。
【0049】
次に、図5の例では、溝部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、溝部122,132に加えて、溝部122,132に隣接するバンク127,137と、溝部122,132に対してバンク127,137の外側に隣接して配される凹部128,138とをそれぞれ形成する(図5(a))。さらに、溝部122,132の壁面に型抜き用の勾配(抜き勾配)を設ける。図4の例と同様に、バンク127(137)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から突出して形成された突起部であり、抜き勾配は、溝部122(132)の幅が開口に向かって徐々に広くなるように設けられる。また、凹部128(138)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から窪んで形成され、バンク127,137との間で壁面を一部共有している。凹部128,138の幅や深さ、バンク127,137の幅や高さ、抜き勾配の角度等は、板状部材12,13や冷却管の材質、形状等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0050】
突起部形成工程では、鍛造法を用いて上記のバンク127,137を塑性変形させる(図5(b))。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133における上記のバンク127,137に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、バンク127,137が型19に押され、そのバンク127,137が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。また、溝部122,132の隣接位置において、バンク127,137の変形に伴って拡大した凹部128,138が形成される。本例では、凹部128,138が形成されていることにより、バンク127,137の塑性変形が比較的小さい力で容易に行われる。これは、突起部124,134の形成に伴う板状部材12,13の変形を防止する上で有利である。
【0051】
そして、バンク127,137の角部が溝部122,132の内方に倒れることにより、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。また、勾配が設けられた溝部122,132の壁面が内方に倒れることにより、突起部124,134がいわゆる逆テーパ状に形成される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0052】
本例では、バンク127,137と凹部128,138とが形成されていることで、突起部124,134形成時の塑性変形の容易化が図られる。しかも、突起部124,134が逆テーパ状に形成されることで、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14(図3参照)との結合性の向上が図られる。
【0053】
次に、図6の例では、突起部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、別の部材141,142を接合する(図6(a))。この部材141,142には、板状部材12(13)の溝部122(132)に対応して溝部122(132)とほぼ同じ平面形状を有する開口部141a(142a)と、この開口部141a(142a)の内方に突出する突起部124(134)とが予め形成されている。この部材141,142は、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて形成することができる。切削加工により開口部141a(142a)や突起部124(134)を形成してもよいが、鍛造法や鋳造法によって所望の形状に成形したほうが量産化による低コスト化を図りやすい。
【0054】
板状部材12,13と別部材141,142との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。例えば、図6(b)に示すように、板状部材12(13)及び部材141(142)に設けられた凸部145や凹部146によって両者を位置決めしておき、その後に上記接合による両者の固定を行うとよい。こうした接合は、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0055】
そして、板状部材12,13に部材141,142が接合されることで、板状部材12,13の溝部122,132の開口位置に、その溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が配設される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0056】
本例では、別部材141,142の接合によって突起部124,134を形成することから、切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。また、溝部を複数に分割して形成することで、鋳造法や鍛造法を用いて、いわゆる逆テーパ状などの様々な形状の突起部124,134を形成することができる。
【0057】
次に、図7の例では、突起部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、別の部材151,152を接合し(図7(a))、その後に鍛造法を用いてその部材151,152に突起部124,134を形成する(図7(b))。この部材151,152には、板状部材12(13)の溝部122(132)に対応して溝部122(132)とほぼ同じ平面形状を有する開口部151a(152a)が予め形成されている。この部材151,152は、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて形成することができる。板状部材12,13と別部材151,152との接合は、図6の例と同様に、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。こうした接合は、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0058】
そして、鍛造法を用いて上記の部材151,152を部分的に塑性変形させる。すなわち、部材151,152の各開口部151a,152aの隣接位置に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、開口部151a,152aの縁が型19に押され、その部位が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。部材151,152における開口部151a,152aの隣接位置には、型の痕である凹部125,135が形成される。
【0059】
本例では、別部材151,152の接合とその部材151,152に対する外力の付加により、突起部124,134を形成することから、切削加工を用いる場合に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。また、突起部124,134を形成する部材と板状部材12,13とが別体からなるので、材質の選択性の向上が図られる。
【0060】
(熱伝導材の充填)
ここで、上記の冷却ユニットにおいては、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間に、熱伝導材を充填させることにより、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上を図ることが可能である。
【0061】
熱伝導材としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられる。具体的には、例えば、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルト等が用いられる。熱伝導材の熱伝導率は、3W/(m・K)以上であるのが好ましく、5W/(m・K)以上であるのがより好ましい。ホットメルトの熱伝導率は通常、5W/(m・K)以上である。金属材あるいはカーボン材が混練された樹脂材には、熱伝導率が3W/(m・K)以上のものがあり、熱伝導率が10W/(m・K)以上のものもある。一例として、Cool polymers社製:D2(登録商標)(LCP樹脂+熱伝導用物混練、15W/(m・K)、熱膨張率:10×10^-6/K)、RS007(登録商標)(PPS樹脂+熱伝導用物混練、3.5W/(m・K)、熱膨張率:20×10^-6/K)がある。
【0062】
図8は、熱伝導材の充填の様子を示す説明図である。
図8(a)に示すように、熱伝導材140の充填は、例えば、冷却管14を拡径させる工程に先立って、板状部材12,13の溝部122,132の内面及び/又は冷却管14の外面に熱伝導材140を塗布しておくことにより実施できる。熱伝導材140の塗布は、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、あるいは液滴吐出法等の様々な方法を用いることができる。
【0063】
図8(b)に示すように、熱伝導材140の塗布後に冷却管14を拡径させると、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14とが互いに接する部分では板状部材12,13と冷却管14とが直接的に熱的に接続され、隙間が生じた部分では両者が熱伝導材140を介して間接的に熱的に接続される。つまり、板状部材12,13と冷却管14との熱伝達が熱伝導材140によって補完され、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上が図られる。また、熱伝導材140が接着力を有する場合にはその力を板状部材12,13と冷却管14との結合力等に利用することも可能である。
【0064】
また、冷却管14の拡径時において、必要に応じて熱伝導材140を軟化・流動させるとよい。例えば、熱伝導材が熱可塑性である場合には、上記拡径時に熱伝導材140を加熱する。この場合、拡径時における冷却管14内を流れる高温流体の熱を利用して熱伝導材140を加熱することができる。熱伝導材140が軟化・流動することにより、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140が充填される。
【0065】
また、溝部122,132に隣接して凹部125,135が設けられている場合には、熱伝導材140の余剰分がその凹部125,135(補溝)に貯溜される。熱伝導材140の逃げ場所が設けられていることで、熱伝導材140が均質に広がりやすくなり、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140がより確実に配置される。また、凹部125,135(あるいは対向面123,133の隙間)に配された熱伝導材140は、板状部材12と板状部材13との熱的接続性を向上させる機能を有する。
【0066】
また、熱伝導材は、冷却板(板状部材12,13)の使用温度範囲内において弾性を有することが好ましい。熱伝導材が弾性を有することにより、熱変形等に伴う板状部材12,13と冷却管14との隙間の変化に応じて熱伝導材が伸縮し、板状部材12,13と冷却管14との熱的接続が安定的に維持される。
【0067】
また、熱伝導材140が、冷却板(板状部材12,13)の使用温度範囲において流動性を有していてもよい。この場合、熱変形等に伴って板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の容積が変化する際に、上記隙間と凹部125,135(補溝)との間を熱伝導材140が適宜移動することにより、上記隙間における熱伝導材140の充填状態が保たれ、板状部材12,13と冷却管14との熱的接続が安定的に維持される。この場合、熱伝導材140の外部への漏れ出しを防止するための手段が講じられているのが好ましい。例えば、嫌気タイプ以外の熱伝導材を用い、外気と触れる部分では硬化させ、内部では流動性を保持させるようにしてもよい。あるいは、上記使用温度範囲内において流動性を有する熱伝導剤を内側に、硬化する別の熱伝導材を外側に配してもよい。
【0068】
図9、図10及び図11は、板状部材12,13の溝部122,132の内面あるいは対向面123,133に、上記熱伝導材140が少なくとも一時的に収容される補溝160を形成した例を示している。
【0069】
図9の例では、補溝160が、板状部材12,13の対向面123,133において、溝部122,132の両外側に溝部122,132と略並行に形成されている。さらに、複数の補溝160が、互いに離間して配設されている。補溝160の形状やその数は、熱伝導材140の材質特性等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0070】
図9の例では、板状部材12,13の対向面123,133に補溝160が形成されていることから、対向面123,133の隙間に熱伝導材140が広がりやすい。この熱伝導材140の配置領域の拡大により、板状部材12と板状部材13との間の熱伝達性の向上、並びに熱伝導材140による板状部材12と板状部材13との結合力が向上する。
【0071】
図10の例では、補溝160が、板状部材12,13の溝部122,132の内面にその軸方向に延びて形成されている。さらに、複数の補溝160が、補溝160の周方向に互いに離間して配設されている。
また、図11の例では、補溝160が、板状部材12,13の溝部122,132の内面に周方向に延びて形成されている。さらに、複数の補溝160が、溝部122,132の軸方向に互いに離間して配設されている。なお、図11において、補溝160を、溝部122(132)の底部から頂部に向かって深さが徐々に小さく変化するように形成してもよい。
【0072】
図10及び図11の例では、板状部材12,13の各溝部122,132の内面に補溝160が形成されていることから、熱伝導材140の充填時において熱伝導材140の余剰分が補溝160に容易に移動する。その結果、熱伝導材140が均質に広がりやすくなり、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140がより確実に配置される。
なお、板状部材12,13の溝部122,132と対向面123,133との双方に補溝160を設けてもよい。
【0073】
(光学素子の位置決め)
図12は、冷却ユニット10の変形例を示す図であり、図12(A)は模式的な平面図、図12(B)は(A)に示すD−D断面図である。なお、既に説明したものと同一の機能を有する構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0074】
図12の例では、図1の冷却ユニット10と同様に、光学素子11の周縁を一対の板状部材12,13が保持しており、また、その一対の板状部材12,13に冷却管14が挟持されている。
本例では、冷却管14は、光学素子11の幅方向に関して2重に配設されており、板状部材12,13の開口部に側に小径の管14Aが配され、その外側に大径の管14Bが配されている。
また、板状部材12,13の開口部の側面には、該側面から突出して複数の位置決め部159(本例では8ケ)が設けられている。各位置決め部159の先端面は、後述する塑性変形によって所望の形状に設定されている。なお、突起状の位置決め部159が設けられていることで、開口部の側面の面精度は比較的粗くてもよい。
そして、光学素子11は、この複数の位置決め部159によって、板状部材12,13に対する平面的な相対位置が位置決めされている。
【0075】
図13は、図12の位置決め部159の形状を設定する様子を示す説明図である。
本例では、冷却管14の拡径に伴う板状部材12,13の変形を利用して位置決め部159の形状設定を行う。
【0076】
まず、冷却管14の収納用の溝部122,132と、位置決め部159となる突起部とが設けられた板状部材12,13を用意する(図13(a))。この時点で突起部(位置決め部159)の先端は例えば曲面あるいは球面からなるとよい。また、その形状精度は比較的粗くてよい。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能であり、また小型の物体にも好ましく適用可能である。
【0077】
次に、各溝部122,132に冷却管14(14A,14B)を挟持した状態で板状部材12と板状部材13とを対向配置させて、各対向面123,133同士を当接状態に保持する(図13(b))。このとき、板状部材12,13の外側面の位置を型158(外型)によって固定するとともに、板状部材12,13の開口部に別の型157(内型)を配置する。また、外型158と内型157との面間を所望の距離に設定する。
【0078】
次に、冷却管14(14A,14B)を拡径させる(図13(c))。拡径は、冷却管14A,14Bの内部に流体を加圧供給することにより行い、また、必要に応じて複数回に分けて繰り返し行う。冷却管14の拡径により、板状部材12,13の各溝部122,132に冷却管14の外面が密着するとともに、板状部材12,13の薄肉部である冷却管14Aと開口部との間の部位が外方に変形する。そして、この薄肉部の変形に伴い、突起部(位置決め部159)の先端が内型157に押接されて塑性変形し、この塑性変形により、位置決め部159の形状設定がなされる。すなわち、外型158と内型157との面間距離に基づき、基準面(板状部材12,13の外側面)に対する位置決め部159の先端面の平面的な相対位置が設定される。
【0079】
このように、本例では、冷却管14の拡径を利用した塑性変形によって、光学素子11を位置決めするための位置決め部159の形状設定を行うことから、位置決め部159を切削加工によって形状設定する場合に比べて工程の簡素化が図られる。
【0080】
なお、図14に示すように、位置決め部159に光学素子11を案内するための斜面159aを形成してもよい。この場合、上記の内型157(図13参照)にこの斜面159aに対応する傾斜面を設けておく。型を用いた塑性変形により、位置決め部159を様々な形状に容易に設定可能である。
【0081】
以上説明した本発明の冷却ユニット及びその製造方法は、光学素子の冷却を必要とする各種光学装置に好ましく適用される。この適用により、光学装置の低コスト化並びに小型化を図ることができる。
【0082】
(プロジェクタの構成)
以下、上記の冷却ユニットの適用例として、プロジェクタの実施形態について図面を参照して説明する。以下の例では、後述する液冷ユニット46(図15参照)に、上記の冷却ユニット10及びその製造方法を適用することができる。
この場合、上記の光学素子11(図1参照)は、後述する液晶パネル441R,441G,441B、入射側偏光板442及び射出側偏光板443(図18参照)の少なくとも1つに適用される。
同様に、上記の板状部材12,13は、後述する液晶パネル保持枠445(枠状部材4451、枠状部材4452)、入射側偏光板保持枠446(枠状部材4461、枠状部材4462)及び射出側偏光板保持枠447(枠状部材4471、枠状部材4472)の少なくとも1つに適用される。
同様に、上記の冷却管14は、後述する素子冷却管463(液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632R、射出側偏光板冷却管4633R)に適用される。
上記の冷却ユニット及びその製造方法を、後述する液冷ユニット46に適用することにより、プロジェクタの低コスト化並びに小型化を図ることが可能となる。更に、冷却性能の向上による長寿命化が可能となる。
【0083】
図15は、プロジェクタ1の概略構成を模式的に示す図である。
プロジェクタ1は、光源から射出される光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、形成した光学像をスクリーン上に拡大投射するものである。このプロジェクタ1は、外装ケース2と、空冷装置3と、光学ユニット4と、投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
なお、図15において、図示は省略するが、外装ケース2内において、空冷装置3、光学ユニット4、及び投射レンズ5以外の空間には、電源ブロック、ランプ駆動回路等が配置されるものとする。
【0084】
外装ケース2は、合成樹脂等から構成され、空冷装置3、光学ユニット4、及び投射レンズ5を内部に収納配置する全体略直方状に形成されている。この外装ケース2は、図示は省略するが、プロジェクタ1の天面、前面、背面、及び側面をそれぞれ構成するアッパーケースと、プロジェクタ1の底面、前面、側面、及び背面をそれぞれ構成するロアーケースとで構成され、上記アッパーケース及び上記ロアーケースは互いにねじ等で固定されている。
なお、外装ケース2は、合成樹脂等に限らず、その他の材料にて形成してもよく、例えば、金属等により構成してもよい。
また、図示は省略するが、この外装ケース2には、プロジェクタ1外部から空気を内部に導入するための吸気口(例えば、図16に示す吸気口22)、及びプロジェクタ1内部で温められた空気を排出するための排気口が形成されている。
さらに、この外装ケース2には、図15に示すように、投射レンズ5の側方で外装ケース2の角部分に位置し、光学ユニット4の後述するラジエータ466及び軸流ファン467等を他の部材と隔離する隔壁21が形成されている。
【0085】
空冷装置3は、プロジェクタ1内部に形成される冷却流路に冷却空気を送り込み、プロジェクタ1内で発生する熱を冷却するものである。空冷装置3は、投射レンズ5の側方に位置し、外装ケース2に形成された図示しない吸気口からプロジェクタ1外部の冷却空気を内部に導入するシロッコファン31、及び図示しない電源ブロック、ランプ駆動回路等を冷却するための冷却ファン等を有する。
【0086】
光学ユニット4は、光源から射出された光束を、光学的に処理して画像情報に応じて光学像(カラー画像)を形成するユニットである。この光学ユニット4は、全体形状が、図15に示すように、概ね外装ケース2の背面に沿って延出するとともに、外装ケース2の側面に沿って延出する平面視略L字形状を有している。なお、この光学ユニット4の詳細な構成については後述する。
投射レンズ5は、複数のレンズが組み合わされた組レンズとして構成される。そして、この投射レンズ5は、光学ユニット4にて形成された光学像(カラー画像)を図示しないスクリーン上に拡大投射する。
【0087】
(光学ユニットの詳細な構成)
光学ユニット4は、図15に示すように、インテグレータ照明光学系41と、色分離光学系42と、リレー光学系43と、光学装置44と、光学部品用筐体45と、液冷ユニット46とを備える。
【0088】
インテグレータ照明光学系41は、光学装置44を構成する後述する液晶パネルの画像形成領域を略均一に照明するための光学系である。このインテグレータ照明光学系41は、図15に示すように、光源ユニット411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415とを備える。
【0089】
光源ユニット411は、放射状の光線を射出する光源ランプ416と、この光源ランプ416から射出された放射光を反射するリフレクタ417とを備える。光源ランプ416としては、ハロゲンランプやメタルハライドランプ、高圧水銀ランプが多用される。また、リフレクタ417としては、図15では、放射面鏡を採用しているが、これに限らず、楕円面鏡で構成し、光束射出側に該楕円面鏡により反射された光束を平行光とする平行化凹レンズを採用した構成としてもよい。
【0090】
第1レンズアレイ412は、光軸方向から見て略矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源ユニット411から射出される光束を、複数の部分光束に分割している。
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を光学装置44の後述する液晶パネル上に結像させる機能を有している。
【0091】
偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置され、第2レンズアレイ413からの光を略1種類の偏光光に変換するものである。
具体的に、偏光変換素子414によって略1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に光学装置44の後述する液晶パネル上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源ユニット411からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子414を用いることで、光源ユニット411からの射出光を略1種類の偏光光に変換し、光学装置44での光の利用効率を高めている。
【0092】
色分離光学系42は、図15に示すように、2枚のダイクロイックミラー421,422と、反射ミラー423とを備え、ダイクロイックミラー421,422によりインテグレータ照明光学系41から射出された複数の部分光束を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する機能を有している。
リレー光学系43は、図15に示すように、入射側レンズ431、リレーレンズ433、及び反射ミラー432,434を備え、色分離光学系42で分離された青色光を光学装置44の後述する青色光用の液晶パネルまで導く機能を有している。
【0093】
この際、色分離光学系42のダイクロイックミラー421では、インテグレータ照明光学系41から射出された光束の赤色光成分が反射するとともに、緑色光成分と青色光成分とが透過する。ダイクロイックミラー421によって反射した赤色光は、反射ミラー423で反射し、フィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する赤色光用の液晶パネルに達する。このフィールドレンズ418は、第2レンズアレイ413から射出された各部分光側をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の緑色光用、青色光用の液晶パネルの光入射側に設けられたフィールドレンズ418も同様である。
【0094】
ダイクロイックミラー421を透過した緑色光と青色光とのうちで、緑色光はダイクロイックミラー422によって反射し、フィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する緑色光用の液晶パネルに達する。一方、青色光はダイクロイックミラー422を透過してリレー光学系43を通り、さらにフィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する青色光用の液晶パネルに達する。なお、青色光にリレー光学系43が用いられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ431に入射した部分色光の光路長が長いのでこのような構成とされているが赤色光の光路長を長くする構成も考えられる。
【0095】
光学装置44は、図15に示すように、光変調素子としての3枚の液晶パネル441(赤色光用の液晶パネルを441R、緑色光用の液晶パネルを441G、青色光用の液晶パネルを441Bとする)と、この液晶パネル441の光束入射側及び光束射出側に配置される光学変換素子としての3つの入射側偏光板442及び3つの射出側偏光板443と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム444とが一体的に構成されたものである。
【0096】
液晶パネル441は、具体的な図示は省略するが、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密封封入された構成を有し、図示しない制御装置から出力される駆動信号に応じて、上記液晶の配向状態が制御され、入射側偏光板442から射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
入射側偏光板442は、偏光変換素子414で偏光方向が略一方向に揃えられた各色光が入射され、入射された光束のうち、偏光変換素子414で揃えられた光束の偏光軸と略同一方向の偏光光のみを透過させ、その他の光束を吸収するものである(光吸収型)。
この入射側偏光板442は、具体的な図示は省略するが、サファイアガラスまたは水晶等の透光性基板上に偏光膜が貼付された構成を有している。光吸収型の偏光膜は、例えば、ヨウ素分子または染料分子を含むフィルムを一軸延伸して形成されており、消光比が比較的高く、入射角依存性が比較的小さいという利点を有する。
射出側偏光板443は、入射側偏光板442と略同様の構成であり、液晶パネル441から射出された光束のうち、入射側偏光板442における光束の透過軸と直交する偏光軸を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである(光吸収型)。
【0097】
クロスダイクロイックプリズム444は、射出側偏光板443から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム444は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、液晶パネル441R,441Bから射出され射出側偏光板443を介した色光を反射し、液晶パネル441Gから射出され射出側偏光板443を介した色光を透過する。このようにして、各液晶パネル441R,441G,441Bにて変調された各色光が合成されてカラー画像が形成される。
【0098】
光学部品用筐体45は、例えば、金属製部材から構成され、内部に所定の照明光軸Aが設定され、上述した光学部品41〜44を照明光軸Aに対する所定位置に収納配置する。なお、光学部品用筐体45は、金属製部材に限らず、その他の材料にて構成してもよく、特に熱伝導性材料で構成することが好ましい。
【0099】
液冷ユニット46は、冷却流体を循環させて主に光学装置44を冷却するものであり、冷却流体を一時的に貯溜するメインタンク461、冷却流体の熱を放熱させるための放熱部としてのラジエータ466、このラジエータ466に冷却空気を吹き付ける軸流ファン467の他、それぞれ後述する流体圧送部、素子冷却管、分岐タンク、合流タンク、及び管部等を備える。
【0100】
ここで、図16は、プロジェクタ1内の一部を上方側から見た斜視図であり、図17は、プロジェクタ1内における主に光学装置44と液冷ユニット46を下方から見た斜視図である。
なお、図16において、光学部品用筐体45内の光学部品は、説明の簡略化のために、光学装置44のみを図示し、その他の光学部品41〜43は省略している。また、図16及び図17において、説明の簡略化のために、液冷ユニット46における部材を一部省略して示している。
【0101】
図16に示すように、光学部品用筐体45は、部品収納部材451と、部品収納部材451の開口部分を閉塞する図示しない蓋状部材とを含んで構成される。
このうち、部品収納部材451は、光学部品用筐体45の底面、前面、及び側面をそれぞれ構成する。
【0102】
この部品収納部材451において、側面の内側面には、図16に示すように、上述した光学部品41〜44を上方からスライド式に嵌め込むための溝部451Aが形成されている。
また、側面の正面部分には、図16に示すように、投射レンズ5を光学ユニット4に対して所定位置に設置するための投射レンズ設置部451Bが形成されている。この投射レンズ設置部451Bは、平面視略矩形状に形成され、平面視略中央部分には光学装置44からの光束射出位置に対応して円形状の図示しない孔が形成されており、光学ユニット4にて形成されたカラー画像が上記孔を通して投射レンズ5にて拡大投射される。
【0103】
(液冷ユニット)
以下、液冷ユニット46について詳しく説明する。
図16及び図17において、液冷ユニット46は、メインタンク461、流体圧送部462(図17)、素子冷却管463、分岐タンク464(図17)、合流タンク465、ラジエータ466、軸流ファン467、及び管部469等を備える。
【0104】
メインタンク461は、図16及び図17に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の2つの容器状部材から構成され、2つの容器状部材の開口部分を互いに接続することで内部に冷却流体を一時的に蓄積する。これら容器状部材は、例えば、シール溶接またはゴム等の弾性部材を介在させることで接続される。
このメインタンク461の周面において、図17に示すように、冷却流体の流入部461A及び流出部461Bが形成されている。
これら流入部461A及び流出部461Bは、管状部材から構成され、メインタンク461の内外に突出するように配置されている。そして、流入部461Aの外側に突出した一端に管部469の一端が接続され、その管部469を介して外部からの冷却流体がメインタンク461内部に流入する。また、流出部461Bの外側に突出した一端にも管部469の一端が接続され、その管部469を介してメインタンク461内部の冷却流体が外部に流出する。
また、メインタンク461において、流入部461A及び流出部461Bの各中心軸が互いに略直交する位置関係にあり、これにより、流入部461Aを介してメインタンク461内部に流入した冷却流体が、流出部461Bを介して直ぐに外部に流出することが回避され、メインタンク461内部での混合作用により、冷却流体の均質化並びに温度の均一化が図られる。そして、メインタンク461から流出した冷却流体は、管部469を介して流体圧送部462に送られる。
【0105】
流体圧送部462は、図17に示すように、メインタンク461からの冷却流体を内部に吸引するとともに、その冷却流体を分岐タンク464に向けて外部に強制的に排出する。すなわち、メインタンク461の流出部461Bと流体圧送部462の流入部462Aとが管部469を介して接続され、流体圧送部462の流出部462Bと分岐タンク464の流入部464Aとが管部469を介して接続されている。
具体的に、流体圧送部462は、例えば、略直方体状のアルミニウム等の金属製の中空部材内に羽根車が配置された構成を有し、図示しない制御装置の制御の下、上記羽根車が回転することで、メインタンク461内に蓄積された冷却流体を管部469を介して強制的に吸引し、その冷却流体を管部469を介して外部に強制的に排出する。このような構成により、上記羽根車の回転軸方向の厚み寸法を小さくすることができ、コンパクト化並びに省スペース化が図られる。本実施形態では、流体圧送部462は、図16又は図17に示すように、投射レンズ5の下方に配置される。
【0106】
素子冷却管463は、光学装置44における液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443の各素子に隣接して配設されるものである。そして、素子冷却管463の内部を流れる冷却流体と各素子441,442,443との間で熱交換が行われる。
【0107】
ここで、図18は、光学装置44の全体構成を示す斜視図である。
図18において、前述したように、光学装置44は、3枚の液晶パネル441(赤色光用の液晶パネル441R、緑色光用の液晶パネル441G、青色光用の液晶パネル441B)と、各液晶パネル441の入射側あるいは射出側に配置される偏光板(入射側偏光板442、射出側偏光板443)と、クロスダイクロイックプリズム444とが一体的に構成されたものである。
すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色毎に、射出側偏光板443、液晶パネル441、及び入射側偏光板442の順に、それらがクロスダイクロイックプリズム444上に重ねて配置されている。
そして、素子冷却管463は、液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443のそれぞれに対して個別に配設されている。
【0108】
具体的に、素子冷却管463は、赤色光に関して、液晶パネル441Rの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Rと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Rと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Rとを含む。冷却流体は、各素子冷却管4631R,4632R,4633Rの流入部(IN)から各管内部に流入して各素子441R,442,443の周縁に沿って流れ、各管の流出部(OUT)から外部に流出する。
同様に、素子冷却管463は、緑色光に関して、液晶パネル441Gの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Gと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Gと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Gとを含み、また、青色光に関して、液晶パネル441Bの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Bと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Bと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Bとを含む。
【0109】
本実施形態では、液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443の各素子の周縁が保持枠に保持されており、この保持枠の内部に、各素子冷却管463が各素子の周縁部に沿って略一周にわたって配設されている。そして、各素子441,442,443の同一辺側において、各素子冷却管463の流入部(IN)と流出部(OUT)とが配設されている。
なお、上記素子保持枠、及び素子冷却管463の詳しい構造については後述する。
【0110】
図16及び図17に戻り、分岐タンク464は、図17に示すように、流体圧送部462から送られた冷却流体を各素子冷却管463に向けて分岐させるものである。
また、合流タンク465は、図16に示すように、各素子冷却管463から送られた冷却流体を合流させて一時的に蓄積するものである。
本実施形態では、光学装置44におけるクロスダイクロイックプリズム444の一面に分岐タンク464が配置され、そのクロスダイクロイックプリズム444の反端側の一面に合流タンク465が配置されている。分岐タンク464及び合流タンク465の配置位置はこれに限らず、他の位置でもよい。
【0111】
ここで、図19は、分岐タンク464の全体構成を示す斜視図であり、図20は、合流タンク465の全体構成を示す斜視図である。
分岐タンク464は、図19に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の密閉された容器状部材から構成され、内部に冷却流体を一時的に蓄積する。
この分岐タンク464の周面において、冷却流体の流入部464A、及び流出部464B1,464B2,…464B9が形成されている。
これら流入部464A及び流出部464B1〜464B9は、管状部材から構成され、分岐タンク464の内外に突出するように配置されている。そして、流入部464Aの外側に突出した一端に管部469の一端が接続され、その管部469を介して流体圧送部462(図17参照)からの冷却流体が分岐タンク464内部に流入する。また、流出部464B1〜464B9の外側に突出した各一端にも管部469の一端が個別に接続され、その管部469を介して分岐タンク464内部の冷却流体が各素子冷却管463(図18参照)に向けて流出する。
【0112】
合流タンク465は、分岐タンク464と同様に、図20に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の密閉された容器状部材から構成され、内部に冷却流体を一時的に蓄積する。
この合流タンク465の周面において、冷却流体の流入部465A1,465A2,…465A9、及び流出部465Bが形成されている。
これら流入部465A1〜465A9及び流出部465Bは、管状部材から構成され、合流タンク465の内外に突出するように配置されている。そして、流入部465A1〜465A9の外側に突出した各一端に管部469の一端が個別に接続され、その管部469を介して各素子冷却管463(図18参照)からの冷却流体が合流タンク465内部に流入する。また、流出部465Bの外側に突出した一端にも管部469の一端が接続され、その管部469を介して合流タンク465内部の冷却流体がラジエータ466に向けて流出する。
【0113】
図16及び図17に戻り、ラジエータ466は、図17に示すように、冷却流体が流れる管状部材4661と、この管状部材に接続された複数の放熱フィン4662とを備える。
管状部材4661は、アルミニウム等の熱伝導性の高い部材からなり、流入部4661Aから流入した冷却流体が流出部4661Bに向けて内部を流れる。管状部材4661の流入部4661Aと合流タンク465の流出部465Bとが管部469を介して接続され、管状部材4661の流出部4661Bとメインタンク461とが管部469を介して接続されている。
複数の放熱フィン4662は、アルミニウム等の熱伝導性の高い板状部材からなり、並列配置されている。また、軸流ファン467は、ラジエータ466の一面側から冷却空気を吹き付けるように構成されている。
そして、ラジエータ466では、管状部材4661内を流れる冷却流体の熱が放熱フィン4662を介して放熱されるとともに、軸流ファン467による冷却空気の供給によってその放熱が促進される。
【0114】
なお、管部469の形成材料としては、例えば、アルミニウム等の金属が用いられ、樹脂製などの他の材料を用いてもよい。
冷却流体としては、例えば透明性の非揮発性液体であるエチレングリコールが用いられ、この他の液体を用いてもよい。なお、本発明における冷却流体は液体に限らず、気体でもよく、また、液体と固体との混合物等を用いてもよい。
【0115】
以上説明したように、液冷ユニット46では、管部469を介して、メインタンク461、流体圧送部462、分岐タンク464、素子冷却管463、合流タンク465、及びラジエータ466の順に冷却流体が流れ、その冷却流体は、ラジエータ466からメインタンク461に戻り、上記経路を繰り返し流れて循環する。
【0116】
そして、液冷ユニット46では、各素子冷却管463内を冷却流体が流れることにより、光束の照射等によって生じた光学装置44における各素子441,442,443の熱が適宜取り除かれ、各素子441,442,443の温度上昇が抑制される。各素子441,442,443の熱は、各素子の保持枠を介して各素子冷却管463内の冷却流体に伝達される。
【0117】
(素子保持枠及び素子冷却管)
次に、素子保持枠及び素子冷却管について説明する。ここでは、代表的に、赤色光に関するものを説明するが、緑色光及び青色光に関するものもこれと同様である。
【0118】
図21は、光学装置44における赤色光用のパネル構成を示す部分斜視図である。
図21に示すように、赤色光に関して、液晶パネル441Rの周縁が液晶パネル保持枠445に保持され、入射側偏光板442の周縁が入射側偏光板保持枠446に保持され、射出側偏光板443の周縁が射出側偏光板保持枠447に保持されている。各保持枠445,446,447は、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した後述する矩形状の開口部を有しており、これらの開口部を光束が通過する。
そして、液晶パネル保持枠445の内部に、液晶パネル441Rの周縁に沿って液晶パネル冷却管4631Rが配設され、入射側偏光板保持枠446の内部に、入射側偏光板442の周縁に沿って入射側偏光板冷却管4632Rが配設され、射出側偏光板保持枠447の内部に、射出側偏光板443の周縁に沿って射出側偏光板冷却管4633Rが配設されている。
【0119】
図22は、液晶パネル保持枠445の分解斜視図であり、図23(A)は、液晶パネル保持枠445の組立正面図、図23(B)は図23(A)に示すA−A断面図である。
液晶パネル保持枠445は、図23に示すように、一対の枠状部材4451,4452と、液晶パネル固定板4453とを含む。
ここで、液晶パネル441Rは、透過型であり、一対の透明基板間に液晶層が密閉封入された構成を有し、一対の基板は、液晶に駆動電圧を印加するためのデータ線、走査線、スイッチング素子、画素電極等が形成された駆動基板と、共通電極、ブラックマトリックス等が形成された対向基板とを含む。
【0120】
枠状部材4451,4452はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した矩形状の開口部4451A,4452Aと、液晶パネル冷却管4631Rを収納するための溝部4451B,4452Bとを有する。枠状部材4451と枠状部材4452とは、液晶パネル冷却管4631Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4451,4452としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、マグネシウム(156W/(m・K))あるいはその合金(アルミダイカスト合金(約100W/(m・K))、Mg-Al-Zn系合金(約50W/(m・K))など)の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4451,4452は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0121】
液晶パネル固定板4453は、図22に示すように、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した矩形状の開口部4453Aを有する板状部材からなり、液晶パネル441Rを間に挟んで枠状部材4452に固定される。この液晶パネル固定板4453は、図23(B)に示すように、液晶パネル441Rに接触して配され、枠状部材4451,4452と液晶パネル441Rとを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、液晶パネル441Rの熱を放熱する機能を有する。また、液晶パネル441Rの熱の一部は、液晶パネル固定板4453を介して枠状部材4451,4452に伝達される。
【0122】
液晶パネル冷却管4631Rは、例えば環状の断面を有しその中心軸に沿って延在するパイプあるいはチューブからなり、図22に示すように、枠状部材4451,4452の溝部4451B,4452Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。液晶パネル冷却管4631Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、液晶パネル冷却管4631Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0123】
具体的に、液晶パネル冷却管4631Rは、図23(A)及び(B)に示すように、液晶パネル441Rの周縁部の外側で、液晶パネル441Rの周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4451,4452の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4451A,4452Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4451B,4452Bが形成されており、溝部4451Bと溝部4452Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、液晶パネル冷却管4631Rを各溝部4451B,4452B内に収納した状態で、枠状部材4451,4452同士が互いに接合されている。本実施形態では、液晶パネル冷却管4631Rは円形パイプであり、その外径は液晶パネル441Rの厚みと同程度である。
枠状部材4451と枠状部材4452との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法としては、液晶パネル冷却管4631Rと枠状部材4451,4452(あるいは液晶パネル441R)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0124】
液晶パネル冷却管4631Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。液晶パネル冷却管4631Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から液晶パネル冷却管4631R内に流入した冷却流体は、液晶パネル441Rの周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、液晶パネル冷却管4631R内を流れる間に、液晶パネル441Rから熱を奪う。すなわち、液晶パネル441Rの熱が、枠状部材4451,4452を介して液晶パネル冷却管4631R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0125】
ここで、この液晶パネル保持枠445では、図23(B)に示すように、液晶パネル441Rの厚み方向に関し、液晶パネル441Rの光束入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されている。液晶パネル441Rでは一般に射出面側に比べて、ブラックマトリックスが配置されている入射面側の熱吸収が多い。そのため、温度上昇しやすい入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されることにより、液晶パネル441Rの熱が効果的に取り除かれる。
さらに、液晶パネル441Rの側面には段差が設けられており、入射面に比べて射出面の面積が広い。そのため、面積の小さい入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されることにより、構成要素の配置の効率化が図られ、装置の小型化が図られる。
【0126】
図24(A)は、入射側偏光板保持枠446の組立正面図、図24(B)は図24(A)に示すB−B断面図である。
入射側偏光板保持枠446は、液晶パネル保持枠445(図22参照)と概ね同様の構成からなり、図24(A)及び(B)に示すように、一対の枠状部材4461,4462と、偏光板固定板4463とを含む。
ここで、入射側偏光板442は、透光性基板上に偏光膜フィルムが貼付された構成からなる。
【0127】
枠状部材4461,4462はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、入射側偏光板442の光透過領域に対応した矩形状の開口部4461A,4462Aと、入射側偏光板冷却管4632Rを収納するための溝部4461B,4462Bとを有する。枠状部材4461と枠状部材4462とは、入射側偏光板冷却管4632Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4461,4462としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、マグネシウムあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4461,4462は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0128】
偏光板固定板4463は、図24(A)及び(B)に示すように、入射側偏光板442の光透過領域に対応した矩形状の開口部4463Aを有する板状部材からなり、入射側偏光板442を間に挟んで枠状部材4461に固定される。この偏光板固定板4463は、図24(B)に示すように、入射側偏光板442に接触して配され、枠状部材4461,4462と入射側偏光板442とを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、入射側偏光板442の熱を放熱する機能を有する。また、入射側偏光板442の熱の一部は、偏光板固定板4463を介して枠状部材4461,4462に伝達される。
【0129】
入射側偏光板冷却管4632Rは、例えば引き抜き加工や絞り加工等により形成されたシームレスパイプからなり、枠状部材4461,4462の溝部4461B,4462Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。入射側偏光板冷却管4632Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、入射側偏光板冷却管4632Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0130】
具体的に、入射側偏光板冷却管4632Rは、図24(A)及び(B)に示すように、入射側偏光板442の周縁部の外側で、入射側偏光板442の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4461,4462の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4461A,4462Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4461B,4462Bが形成されており、溝部4461Bと溝部4462Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、入射側偏光板冷却管4632Rを各溝部4461B,4462B内に収納した状態で、枠状部材4461,4462同士が互いに接合されている。本実施形態では、入射側偏光板冷却管4632Rは円形パイプであり、その外径は入射側偏光板442の厚みと同程度である。
枠状部材4461と枠状部材4462との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法として、入射側偏光板冷却管4632Rと枠状部材4461,4462(あるいは入射側偏光板442)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0131】
入射側偏光板冷却管4632Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。入射側偏光板冷却管4632Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から入射側偏光板冷却管4632R内に流入した冷却流体は、入射側偏光板442の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、入射側偏光板冷却管4632R内を流れる間に、入射側偏光板442から熱を奪う。すなわち、入射側偏光板442の熱が、枠状部材4461,4462を介して入射側偏光板冷却管4632R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0132】
図25(A)は、射出側偏光板保持枠447の組立正面図、図25(B)は図25(A)に示すC−C断面図である。
射出側偏光板保持枠447は、入射側偏光板保持枠446(図24参照)と同様の構成からなり、図25(A)及び(B)に示すように、一対の枠状部材4471,4472と、偏光板固定板4473とを含む。
ここで、射出側偏光板443は、入射側偏光板442と同様に、透光性基板上に偏光膜フィルムが貼付された構成からなる。
【0133】
枠状部材4471,4472はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、射出側偏光板443の光透過領域に対応した矩形状の開口部4471A,4472Aと、射出側偏光板冷却管4633Rを収納するための溝部4471B,4472Bとを有する。枠状部材4471と枠状部材4472とは、射出側偏光板冷却管4633Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4471,4472としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、マグネシウムあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4471,4472は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0134】
偏光板固定板4473は、図25(A)及び(B)に示すように、射出側偏光板443の光透過領域に対応した矩形状の開口部4473Aを有する板状部材からなり、射出側偏光板443を間に挟んで枠状部材4471に固定される。この偏光板固定板4473は、図25(B)に示すように、射出側偏光板443に接触して配され、枠状部材4471,4472と射出側偏光板443とを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、射出側偏光板443の熱を放熱する機能を有する。また、射出側偏光板443の熱の一部は、偏光板固定板4473を介して枠状部材4471,4472に伝達される。
【0135】
射出側偏光板冷却管4633Rは、例えば引き抜き加工等により形成されたシームレスパイプからなり、枠状部材4471,4472の溝部4471B,4472Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。射出側偏光板冷却管4633Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、射出側偏光板冷却管4633Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0136】
具体的に、射出側偏光板冷却管4633Rは、図25(A)及び(B)に示すように、射出側偏光板443の周縁部の外側で、射出側偏光板443の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4471,4472の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4471A,4472Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4471B,4472Bが形成されており、溝部4471Bと溝部4472Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、射出側偏光板冷却管4633Rを各溝部4471B,4472B内に収納した状態で、枠状部材4471,4472同士が互いに接合されている。本実施形態では、射出側偏光板冷却管4633Rは円形パイプからなり、その外径は射出側偏光板443の厚みと同程度である。
枠状部材4471と枠状部材4472との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法として、射出側偏光板冷却管4633Rと枠状部材4471,4472(あるいは射出側偏光板443)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0137】
射出側偏光板冷却管4633Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。射出側偏光板冷却管4633Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から射出側偏光板冷却管4633R内に流入した冷却流体は、射出側偏光板443の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、射出側偏光板冷却管4633R内を流れる間に、射出側偏光板443から熱を奪う。すなわち、射出側偏光板443の熱が、枠状部材4471,4472を介して射出側偏光板冷却管4633R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0138】
このように、本実施形態では、赤色光に関して、液晶パネル441R、入射側偏光板442、射出側偏光板443の各素子の保持枠445,446,447の内部に素子冷却管4631R,4632R,4633Rが配設されており、その素子冷却管4631R,4632R,4633Rに流れる冷却流体によって各素子441R,442,443の熱が適宜取り除かれる。すなわち、各保持枠445,446,447を介して各素子441R,442,443と素子冷却管4631R,4632R,4633Rとが熱的に接続されており、各素子441R,442,443と素子冷却管4631R,4632R,4633R内の冷却流体との間で熱交換がなされることで、各素子441R,442,443の熱が保持枠445,446,447を介して素子冷却管4631R,4632R,4633R内の冷却流体に伝達される。そして、各素子441R,442,443の熱が冷却流体に移動することにより、各素子441R,442,443が冷却される。
【0139】
また、本実施形態では、各素子冷却管4631R,4632R,4633Rが、各素子441R,442,443の周縁部に沿って略一周にわたって配設されていることから、伝熱面積の拡大が図られており、各素子が効果的に冷却される。
しかも、冷却流体の経路(素子冷却管4631R,4632R,4633R)が各素子441R,442,443の周縁部に沿って配設されることにより、冷却流体中を画像形成用の光束が通過することがなく、そのため、液晶パネル441Rにて形成される光学像に冷却流体中の気泡や塵埃等の像が含まれたり、冷却流体の温度分布に伴う光学像の揺らぎが発生したりといったことが回避される。
【0140】
また、本実施形態では、各素子441R,442,443の周縁部における冷却流体の経路が管(素子冷却管4631R,4632R,4633R)によって形成されるから、経路形成のための接合部が比較的少なくて済む。接合部の数あるいは面積が少ないことで、構成の簡素化が図られるとともに、冷却流体の漏れが防止される。
【0141】
このように、本実施形態によれば、冷却流体を用いることによる不具合の発生を抑えつつ、各素子441R,442,443の温度上昇を効果的に抑制することができる。
なお、素子保持枠445,446,447の内部に素子冷却管4631R,4632R,4633Rを配設した構造は、保持枠445,446,447が、各素子441R,442,443の保持手段と冷却手段とを兼ねており、その結果、小型化を図りやすく、小型の光学素子に好ましく適用可能である。
例えば、本実施形態では、各素子441R,442,443の周縁部の外側に、各素子の厚みと同程度の外径を有する素子冷却管4631R,4632R,4633Rを配設しており、冷却流体経路を備えることによる厚み方向の拡大が抑制されている。
【0142】
以上、光学装置44(図18参照)における赤色光用のパネル構成及びその冷却構造について代表的に説明したが、緑色光及び青色光に関してもこれと同様であり、各素子(液晶パネル、入射側偏光板、射出側偏光板)が個別に保持枠に保持され、その保持枠の内部に素子冷却管が配設されている。
すなわち、本実施形態では、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子が、冷却流体を用いて個別に冷却される。各素子が個別に冷却されることにより、各素子の温度上昇に伴う不具合の発生が確実に防止される。
【0143】
(配管系統)
図26は、上記した光学装置44における冷却流体の流れを示す配管系統図である。
図26に示すように、本実施形態では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対して、冷却流体の経路が並行に設けられている。
【0144】
具体的に、赤色光に関する液晶パネル冷却管4631Rと入射側偏光板冷却管4632Rと射出側偏光板冷却管4633Rとを含む3つの素子冷却管はそれぞれ、一端が分岐タンク464に接続されかつ他端が合流タンク465に接続されている。同様に、緑色光に関する3つの素子冷却管4631G,4632G,4633G、及び青色光に関する3つの素子冷却管4631B,4632B,4633Bもそれぞれ、一端が分岐タンク464に接続されかつ他端が合流タンク465に接続されている。その結果、上記の9つの素子冷却管が分岐タンク464と合流タンク465との間の冷却流体の経路上で並列に配置されている。
【0145】
冷却流体は、分岐タンク464で各色毎に3つずつの合計9つの経路に分岐し、9つの素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)内を並行して流れる。上記の9つの素子冷却管が冷却流体の経路上で並列に配置されていることから、各素子冷却管内にほぼ同じ温度の冷却流体が流入する。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。この熱交換の後、冷却流体は合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0146】
本実施形態では、9つの光学素子に対応する上記の9つの素子冷却管が冷却流体の経路上で並列に配置されていることから、分岐タンク464から合流タンク465に至る冷却流体の経路の長さが比較的短く、その経路での圧力損失による流路抵抗が小さい。そのため、各素子冷却管が小径であっても冷却流体の流量を確保しやすく、また各素子のそれぞれに対して比較的低温の冷却流体が供給されるから、各素子が効果的に冷却される。
【0147】
なお、上記の9つの光学素子のうち、発熱が少ない素子に対し、素子冷却管の配設を省略してもよい。例えば、入射側偏光板442あるいは射出側偏光板443が無機偏光板等の光束の吸収の少ない形態である場合には、それらに対して冷却管を省略する構成とすることができる。
また、複数の素子冷却管を冷却流体の経路上ですべて並列に配置する構成に限らず、少なくとも一部を直列に配置する構成としてもよい。この場合、各素子の発熱量に応じてその経路を定めるとよい。
【0148】
図27は、上記配管系統の変形例を示している。なお、図26と共通の構成要素には同一の符号を付している。
図27の例では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対してそれぞれ素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)が配設されるとともに、冷却流体の経路が色毎に直列に設けられている。
【0149】
具体的に、赤色光に関し、分岐タンク464の流出部と射出側偏光板冷却管4633Rの流入部とが接続され、射出側偏光板冷却管4633Rの流出部と液晶パネル冷却管4631Rの流入部とが接続され、液晶パネル冷却管4631Rの流出部と入射側偏光板冷却管4632Rの流入部とが接続され、入射側偏光板冷却管4632Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。すなわち、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633R、液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632Rの順に、それらが直列に配置されている。同様に、緑色光に関して、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633G、液晶パネル冷却管4631G、入射側偏光板冷却管4632Gの順にそれらが直列に配置されている。また、青色光に関しても同様に、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633B、液晶パネル冷却管4631B、入射側偏光板冷却管4632Bの順にそれらが直列に配置されている。
【0150】
冷却流体は、分岐タンク464で3つの経路に分岐する。そして、各色毎にそれぞれ、最初に射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bを流れ、次に液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bを流れ、最後に入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bを流れる。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。本例では、各色毎に3つの素子冷却管が直列に配置されていることから、冷却流体の流入時の温度(入口温度)は、上流側の射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bで最も低く、液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bで次に低く、下流側の入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bで比較的高くなる。その後、冷却流体は合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0151】
ここで、液晶パネル441R,441G,441Bでは、液晶層による光吸収とともに、駆動基板に形成されたデータ線及び走査線や、対向基板に形成されたブラックマトリックス等で光束が一部吸収される。また、入射側偏光板442では、入射する光束が上流側の偏光変換素子414(図15参照)によって略1種類の偏光光に変換されたものであり、その光束のほとんどが透過し、光束の吸収は比較的少ない。また、射出側偏光板443では、入射する光束が画像情報に基づいて偏光方向が変調されたものであり、通常その光束の吸収量は入射側偏光板442よりも多い。
そして、光学装置44における発熱量は、入射側偏光板、液晶パネル、射出側偏光板、の順に高くなる傾向にある(入射側偏光板 < 液晶パネル < 射出側偏光板)。
【0152】
この図27の例では、各色毎に3つずつの素子冷却管が冷却流体の経路上で直列に配置されていることから、9つの素子冷却管をすべて並列に配置する構成に比べて、配管スペースの縮小化が図られる。
また、比較的発熱量が高い射出側偏光板443に対して最初に冷却流体を供給するので、射出側偏光板443が確実に冷却される。
【0153】
なお、上記の例では発熱量の高い順に上流側から素子冷却管を直列に配置しているがこれに限らない。発熱量の低い順に上流側から素子冷却管を直列に配置してもよく、あるいは別の順であってもよい。配置の順序は、複数の素子の間の発熱量の差、素子冷却管の冷却能力等に応じて定められる。
さらに、各色毎に複数の素子冷却管をすべて直列に配置するのに限らず、次に説明するように一部のみを直列に配置する構成でもよい。
【0154】
図28は、上記配管系統の別の変形例を示している。なお、図26と共通の構成要素には同一の符号を付している。
図28の例では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対してそれぞれ素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)が配設されるとともに、冷却流体の経路が各色毎に一部で直列に設けられている。
【0155】
具体的に、赤色光に関し、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632Rの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Rが配置されている。すなわち、分岐タンク464の流出部と液晶パネル冷却管4631Rの流入部とが接続され、液晶パネル冷却管4631Rの流出部と入射側偏光板冷却管4632Rの流入部とが接続され、入射側偏光板冷却管4632Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。また、分岐タンク464の流出部と射出側偏光板冷却管4633Rの流入部とが接続され、射出側偏光板冷却管4633Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。同様に、緑色光に関して、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、液晶パネル冷却管4631G、入射側偏光板冷却管4632Gの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Gが配置されている。青色光に関しても同様に、液晶パネル冷却管4631B、入射側偏光板冷却管4632Bの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Bが配置されている。
【0156】
冷却流体は、分岐タンク464で各色毎に2つずつの合計6つの経路に分岐する。そして、その冷却流体は、各色毎にそれぞれ、最初に液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bと射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bとに流入する。液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bを流れた冷却流体は、次に入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bを流れ、その後に合流タンク465に向かう。一方、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bを流れた冷却流体は、各色毎にそれぞれ、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bからそのまま合流タンク465に向かう。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。本例では、冷却流体の流入時の温度(入口温度)は、上流側の液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bと射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bとで比較的低く、入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bで比較的高い。また、上記したように射出側偏光板443の発熱量が他の素子に比べて最も高いことから、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bにおける冷却流体の流出時の温度(出口温度)は比較的高く、これと比べて液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bの出口温度は比較的低い。そのため、この図28の例では、入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bの入口温度は、先の図27の例に比べて低くなる。各素子周縁を流れた冷却流体はその後、合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0157】
この図28の例では、各色毎に2つの素子冷却管が直列に配置されかつそれと並行して他の1つの素子冷却管が配置されていることから、9つの素子冷却管をすべて並列に配置する構成に比べて、配管スペースの縮小化が図られる。
また、発熱量の高い射出側偏光板443に対する冷却経路と並行して、液晶パネル441R,441G,441B及び入射側偏光板442に対して冷却経路が設けられていることにより、射出側偏光板443の熱影響が他の素子に及ぶのが回避され、液晶パネル441R,441G,441B及び入射側偏光板442が効果的に冷却される。
【0158】
なお、上記の図26、図27、及び図28の例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の冷却構造がそれぞれ同じ構成であるが、色毎に異なる構成であってもよい。例えば、赤色光及び青色光に関しては図27または図28の構成を採用し、緑色光に関しては図26または図28の構成を採用してもよい。あるいは他の組み合わせでもよい。
ここで、緑色光は一般に光強度が比較的強いことからその光学素子も温度上昇しやすい。そのため、緑色光に関しては冷却効果が高い冷却構造を採用し、他の赤色光及び青色光に関しては簡素な構成の冷却構造を採用することにより、配管スペースの縮小化と素子冷却の効率化とが図られる。
【0159】
また、上記の図26、図27、及び図28の例では、分岐タンク464は、冷却流体の経路を、赤、緑、青の3色に対応して少なくとも3つに分岐しているがこれに限定されない。例えば、分岐タンク464は、冷却流体の経路を、赤色光と青色光とに関する系統と、緑色光に関する系統とに分岐する構成であってもよい。この場合、例えば、赤色光と青色光に関する冷却構造を直列に配置し、これと並行して緑色光に関する冷却構造を配置することにより、上記と同様に、配管スペースの縮小化と素子冷却の効率化とを図ることが可能である。
【0160】
上記実施形態では、3つの液晶パネルを用いたプロジェクタの例について説明したが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、2つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、あるいは4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも本発明は適用可能である。
また、透過型の液晶パネルに限らず、反射型の液晶パネルを用いてもよい。
また、光変調素子としては、液晶パネルに限らず、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調素子を用いてもよい。この場合、光束入射側及び光束射出側の偏光板は省略できる。
また、本発明は、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクタ、及びスクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
【0161】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】(A)は冷却ユニットの構成を示す平面図、(B)は(A)に示すA−A断面図。
【図2】板状部材の溝部を拡大して示す部分断面図。
【図3】冷却ユニットの製造方法の一例を示す説明図。
【図4】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図5】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図6】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図7】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図8】熱伝導材の充填の様子を示す説明図。
【図9】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図10】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図11】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図12】冷却ユニットの変形例を示す図であり、(A)は模式的な平面図、(B)は(A)に示すD−D断面図。
【図13】位置決め部の形状を設定する様子を示す説明図。
【図14】位置決め部に光学素子を案内するための斜面を形成した例を示す図。
【図15】プロジェクタの概略構成を模式的に示す図。
【図16】プロジェクタ内の一部を上方側から見た斜視図。
【図17】プロジェクタ内における光学装置と液冷ユニットを下方から見た斜視図。
【図18】光学装置の全体構成を示す斜視図。
【図19】分岐タンクの全体構成を示す斜視図。
【図20】合流タンクの全体構成を示す斜視図。
【図21】光学装置における赤色光用のパネル構成を示す部分斜視図。
【図22】液晶パネル保持枠の分解斜視図。
【図23】(A)は液晶パネル保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すA−A断面図。
【図24】(A)は入射側偏光板保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すB−B断面図。
【図25】(A)は射出側偏光板保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すC−C断面図。
【図26】光学装置における冷却流体の流れを示す配管系統図。
【図27】配管系統の変形例を示す図。
【図28】配管系統の別の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0163】
A…照明光軸、1…プロジェクタ、2…外装ケース、3…空冷装置、4…光学ユニット、5…投射レンズ(投射光学系)、10…冷却ユニット、11…光学素子、12,13…板状部材(枠状部材)、14…冷却管、44…光学装置、46…液冷ユニット、122,132…溝部、123,133…対向面、124,134…突起部、125,135,128,138…凹部、127,137…バンク、126,136,129,139…凸部、140…熱伝導材、141,142,151,152…別部材、159…位置決め部、160…補溝411…光源ユニット、416…光源ランプ、441,441R,441G,441B…液晶パネル(光学素子)、442…入射側偏光板(光学素子)、443…射出側偏光板(光学素子)、444…クロスダイクロイックプリズム、445…液晶パネル保持枠、4451,4452…枠状部材、4451B,4452B…溝部、446…入射側偏光板保持枠、4461,4462…枠状部材、4461B,4462B…溝部、447…射出側偏光板保持枠、4471,4472…枠状部材、4471B,4472B…溝部、461…メインタンク、462…流体圧送部、463…素子冷却管、4631R…液晶パネル冷却管、4632R…入射側偏光板冷却管、4633R…射出側偏光板冷却管、464…分岐タンク、465…合流タンク、466…ラジエータ、4662…放熱フィン、467…軸流ファン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ユニットの製造方法、冷却ユニット、光学装置、並びにプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却流体を用いた冷却ユニットとして、対向的に組み合わせられる一対の金属板の内面間に冷却液流路としての金属パイプを配置した構成の冷却板を備えるものがある。この冷却板は、一対の金属板の少なくとも一方に金属パイプよりも大きいパイプ収納溝を形成し、金属パイプと一対の金属板とを一体的に組み合わせることにより製造される。そして、その製造過程において、上記組み合わせの後に金属パイプ内に加圧流体を供給し、そのパイプを拡径させてパイプ収納溝に金属パイプを密着させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−156195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の冷却ユニットの製造方法では、パイプ収納溝を金属板の合わせ面に対して逆テーパ状に形成し、金属パイプの拡径時にその溝の縁部分(アンダーカット部)を金属パイプに食い込ませることにより金属板と金属パイプとを結合している。
【0004】
しかしながら、上記の製造方法では、上記のアンダーカット部の形成に、特殊な刃具を用いた切削加工が必要であり、そのため、低コスト化を図りにくく、また、小型化への対応も困難である。
【0005】
本発明は、低コスト化並びに小型化に適した冷却ユニットの製造方法、冷却ユニット、光学装置、並びにプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製造方法は、内部に冷却流体が流れる冷却板を備える冷却ユニットを製造する方法であって、前記冷却板は、冷却流体が流れる冷却管を間に挟んで一対の板状部材が対向配置された構成を有しており、前記一対の板状部材の各対向面に、前記冷却管を収納する溝部を形成する溝部形成工程と、前記一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により、前記溝部の内方に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、前記溝部に前記冷却管を収納しかつ該冷却管を拡径させて、前記一対の板状部材のそれぞれと前記冷却管とを結合させる結合工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この製造方法では、一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により突起部が形成され、冷却管の拡径時にその突起部が冷却管に食い込むことにより一対の板状部材のそれぞれと冷却管とが結合される。突起部を、外力の付加又は所定部材の接合によって形成することにより、特殊な刃具を用いた切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。
したがって、この製造方法では、低コスト化並びに小型化が図られる。
【0008】
なお、上記の製造方法により製造された冷却ユニットでは、板状部材の溝部と冷却管とが互いに接することで両者が熱的に接続され、板状部材に接する被冷却物体の熱が冷却管内を流れる冷却流体によって取り除かれる。冷却板の内部に冷却管を配設した構造は、冷却流体の経路形成のための接合部が比較的少なくて済むから流体漏れのリスクが小さく、また、流れ方向に関して均一かつ滑らかな流路が形成されるから配管抵抗が小さい。
【0009】
上記の製造方法においては、鋳造法又は鍛造法を用いて前記溝部を形成することが可能である。
また、鍛造法を用いて前記突起部を形成することが可能である。
鍛造法や鋳造法は、量産化による低コスト化を図りやすい。
【0010】
上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることにより、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0011】
例えば、前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクを形成し、前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させる。
これによれば、溝部の隣接位置に形成したバンクを押圧することで、溝部の隣接部位を容易に塑性変形させることができる。
【0012】
あるいは、前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクと、前記溝部に対して前記バンクの外側に配される凹部と、をそれぞれ形成し、前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させる。
これによれば、溝部の隣接位置にバンクとその外側に凹部が形成されるから、そのバンクを押圧することで、溝部の隣接部位を容易に塑性変形させることができる。
【0013】
また、上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部と該開口部の内方に突出する突起部とが形成された別の部材を接合することによっても、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0014】
また、上記の製造方法において、前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部が形成された別の部材を接合するとともに、該別の部材の一面に所定の型を押し当てて該開口部の隣接部位を塑性変形させることによっても、上記突起部を短時間で形成することができる。
【0015】
上記の製造方法においては、前記溝部と前記冷却管との隙間に熱伝導材を充填する充填工程を、さらに有する構成とすることができる。
これによれば、熱伝導材の充填により、板状部材と冷却管との間の熱伝達性の向上が図られる。
【0016】
熱伝導材の熱伝導率は、3W/(m・K)以上であるのが好ましく、5W/(m・K)以上であるのがより好ましい。熱伝導材の熱伝導率が3W/(m・K)未満であると、板状部材の熱が冷却管に移動しにくいので好ましくない。また、熱伝導材の熱伝導率が5W/(m・K)以上であることにより、板状部材の熱が冷却管に良好に移動する。
【0017】
この場合、例えば、前記熱伝導材は、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルトのうちの少なくとも1種類を含む。
【0018】
また、前記熱伝導材は、前記冷却板の使用温度範囲内において弾性を有するのが好ましい。
熱伝導材が弾性を有することにより、熱変形等に伴う板状部材と冷却管との隙間の変化に応じて熱伝導材が伸縮し、板状部材と冷却管との熱的接続が安定的に維持される。
【0019】
また、前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記溝部と前記冷却管との隙間に連通しかつ前記熱伝導材が少なくとも一時的に収容される補溝が形成されるのが好ましい。
この場合、例えば、前記溝部形成工程において、前記溝部の内面及び/又は前記一対の板状部材の少なくとも一方の対向面に、前記補溝を形成する。
上記補溝により、板状部材と冷却管との隙間の容積に応じて熱伝導材の配置量が適宜調整され、板状部材と冷却管との間の熱的接続が安定的に維持される。
【0020】
また、前記充填工程では、前記熱伝導材を軟化かつ流動させて前記熱伝導材の充填を行うことができる。
この場合、例えば、前記拡径工程における前記冷却管の熱により前記熱伝導材を軟化させる。
熱伝導材を軟化かつ流動させることで、上記隙間の領域にわたって熱伝導材が充填される。
【0021】
本発明の冷却ユニットは、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。
この冷却ユニットによれば、低コスト化並びに小型化が図られる。
【0022】
本発明の光学装置は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子を含んで構成される光学装置において、少なくとも、前記光変調素子が上記の製造方法により製造された冷却ユニットに保持されることを特徴とする。
この光学装置によれば、低コスト化並びに小型化及び冷却の効率化が図られる。
【0023】
本発明のプロジェクタは、光源装置と、少なくとも、前記光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子が、上記の製造方法により製造された冷却ユニットに保持された光学装置と、前記光学装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とする。
このプロジェクタによれば、低コスト化並びに小型化及び冷却の効率化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするために、必要に応じてその縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0025】
(冷却ユニット)
図1(A)は冷却ユニット10の構成を示す平面図、図1(B)は図1(A)に示すA−A断面図である。
図1(A)及び図1(B)に示すように、冷却ユニット10は、透過型の光学素子11の周縁を保持しかつその光学素子11を冷却するものであり、光学素子11を保持する一対の板状部材12,13と、一対の板状部材12,13に挟持された冷却管14とを備えている。
【0026】
光学素子11としては、液晶パネル、偏光板の他、位相差板、視野角補正板等の様々な光学素子が適用される。また、透過型に限らず、反射型の光学素子にも本発明は適用可能である。さらに、光学素子に限らず、他の物体の冷却にも本発明は適用可能である。なお、本発明の冷却ユニットを液晶パネル及び偏光板の冷却構造に適用した例について後で詳しく説明する。
【0027】
板状部材12,13はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、光学素子11における光束の透過領域に対応した矩形状の開口部121,131と、冷却管14を収納するための溝部122,132とを有する。板状部材12と板状部材13とは、冷却管14を間に挟んで互いに対向して配置される。板状部材12,13としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、マグネシウム(156W/(m・K))あるいはその合金(アルミニウム合金(約100W/(m・K))、低比重マグネシウム合金(約50W/(m・K))など)の他、各種金属が適用される。また、板状部材12,13は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0028】
冷却管14は、例えば環状の断面を有しその中心軸に沿って延在するパイプあるいはチューブからなり、板状部材12,13の溝部122,132の平面形状に応じて折り曲げ加工されている。冷却管14としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、銅(398W/(m・K))、ステンレス(16W/(m・K)(オーステナイト系))あるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、冷却管14は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0029】
具体的に、冷却管14は、図1(A)及び(B)に示すように、光学素子11の周縁部の外側で、光学素子11の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133(内面、合わせ面)において、開口部121,131の縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部122,132が形成されており、溝部122と溝部132とは互いに概ね鏡面対称の形状関係にある。そして、冷却管14を各溝部122,132内に収納した状態で、板状部材12,13同士が互いに接合されている。本例では、冷却管14は円形パイプであり、その外径は光学素子11の厚みと同程度である。
【0030】
図2は、板状部材12,13の溝部122,132を拡大して示す部分断面図である。
図2に示すように、板状部材12,13のそれぞれには、溝部122,132の内方に突出する突起部124,134が設けられており、この突起部124,134が冷却管14の外面に食い込んで係合することにより、各板状部材12,13と冷却管14とが一体化されている。また、後述する冷却管14の拡径処理を経て、各板状部材12,13の溝部122,132の内面に冷却管14の外面が密着している。
【0031】
なお、突起部124,134は、後述するように、板状部材12,13の溝部122,132を形成した後に、対向面123,133における溝部122,132の隣接位置に外力を加えて塑性変形させることにより形成したものである。そのため、板状部材12,13の各対向面123,133には、溝部122,132の隣接位置に、力付加の痕である凹部125,135が存在している。
【0032】
図1に戻り、冷却管14の一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。冷却管14の流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管に接続される。なお、冷却流体の経路上には、それぞれ不図示の、流体圧送部、各種タンク、ラジエータ等の流体循環用の機器が配置される。
【0033】
流入部(IN)から冷却管14内に流入した冷却流体は、光学素子11の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、冷却管14内を流れる間に、光学素子11から熱を奪う。すなわち、光学素子11の熱が、板状部材12,13を介して冷却管14の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0034】
本例では、後述する冷却管14の拡径処理を経て、各板状部材12,13の溝部122,132に冷却管14が密着しており、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性が高い。また、冷却管14は光学素子11の周縁部に沿って略一周にわたって配設されているから、伝熱面積の拡大が図られている。そのため、冷却管14内を流れる冷却流体によって、光学素子11が効果的に冷却される。
【0035】
光学素子11を保持する枠体(板状部材12,13)の内部に冷却管14を配設した構造は、冷却流体の経路形成のための接合部が比較的少なくて済むから流体漏れのリスクが小さく、また、流れ方向に関して均一かつ滑らかな流路が形成されるから配管抵抗が小さい。しかも、この構造では、枠体が、光学素子11の保持手段と冷却手段とを兼ねており、その結果、光学素子11を備える装置の小型化を図りやすいという利点がある。
【0036】
なお、各板状部材12,13における溝部122,132と冷却管14との隙間に、熱伝導材を充填させることにより、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上を図ることが可能である。この熱伝導材の充填については後述する。
【0037】
(冷却ユニットの製造方法)
次に、上記冷却ユニット10の製造方法について説明する。
図3は、冷却ユニット10の製造方法の一例を示す説明図である。この製造方法は、溝部形成工程と、突起部形成工程と、結合工程とを有する。
【0038】
まず、溝部形成工程では、図3(a)に示すように、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、冷却管を収納するための断面略U字状あるいは断面略半円状の溝部122,132を形成する。この工程では、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて溝部122(132)を備える板状部材12(13)を一体形成する。鋳造法では、例えば、溶融した材料を所定の形の型に流し込み、これを凝固させて所望の形状の板状部材を得る。鍛造法では、例えば、材料部材を一組の型の間に挟み、これを圧縮して所望の形状の板状部材を得る。切削加工により溝部122,132を形成してもよいが、鍛造法や鋳造法は、量産化による低コスト化を図りやすい。
【0039】
次に、突起部形成工程では、図3(b)に示すように、溝部122,132の内方に向かって突出する突起部124,134を形成する。この工程では、鍛造法を用いる。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133に、所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけにより、溝部122,132の隣接位置に型19の痕である凹部125,135を形成する(潰し加工)。この際、溝部122,132と凹部125,135との間の部位(溝部122,132の隣接部位)が型19に押され、その部位が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。その結果、溝部122,132の縁が内方に倒れて、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。プレスあるいは打ちつけは、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0040】
また、凹部125,135及び突起部124,134の形成は、冷却管14の軸方向にわたって行う。凹部125,135及び突起部124,134は、溝部122,132の軸方向に沿って連続して形成されていてもよく、間欠的あるいは部分的に形成されていてもよい。また、冷却管14の曲げ加工部分(図1(A)に示す冷却管14の湾曲部)は、突起部124,134を食い込ませるのが比較的困難であることから、これに対応する位置において、凹部125,135及び突起部124,134を省略したり突起部124,134の形状を小さくしたりするとよい。型19の形状は、板状部材12,13や冷却管14の材質、形状等に応じて適宜定められる。
【0041】
次に、結合工程では、図3(c)に示すように、各溝部122,132に冷却管14を収納した状態で板状部材12と板状部材13とを対向配置させて、各対向面123,133同士を当接状態に保持し、冷却管14を拡径させる。板状部材12,13の保持は、クランプ等の機械的把持手段や、ボルト等による締結により行う。拡径は、冷却管14の内部に流体を加圧供給することにより行い、また、必要に応じて複数回に分けて繰り返し行う。
【0042】
冷却管14の拡径により、図3(d)に示すように、冷却管14の外面が溝部122,132の内面に密着し、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14とが熱的に接続される。また、拡径時において、突起部124,134が冷却管14の外面に食い込んで係合することにより、各板状部材12,13と冷却管14とが結合される。これにより、冷却管14を間に挟んで一対の板状部材12,13が対向配置された構成を有する冷却構造(冷却板)が製造される。
その後、先の図1に示すように、板状部材12,13に光学素子11を固定するとともに、冷却管14を冷却流体の供給系に接続することにより冷却ユニット10が完成する。
【0043】
以上説明したように、本例の冷却ユニット10の製造方法では、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に対してプレスあるいは打ちつけ等の外力の付加により、突起部124,134を形成することから、切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。そのため、この製造方法によれば、製造される冷却ユニット10の低コスト化並びに小型化を図ることができる。
【0044】
図4〜図7は、図3の製造方法の変形例を示す説明図である。なお、既に説明したものと同一の機能を有する構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0045】
図4の例では、溝部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、溝部122,132に加えて、溝部122,132に隣接するバンク127,137を形成する(図4(a))。さらに、溝部122,132の壁面に型抜き用の勾配(抜き勾配)を設ける。バンク127(137)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から突出して形成された突起部である。抜き勾配は、離型の容易化を図るものであり、溝部122(132)の幅が開口に向かって徐々に広くなるように設けられる。バンク127,137の幅や高さ、抜き勾配の角度等は、板状部材12,13や冷却管の材質、形状等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0046】
突起部形成工程では、鍛造法を用いて上記のバンク127,137を塑性変形させる(図4(b))。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133における上記のバンク127,137に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、バンク127,137が型19に押され、そのバンク127,137が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。また、溝部122,132の隣接位置には、型の痕である凹部125,135(段落ち部)が形成される。なお、凹部125,135(段落ち部)が形成されず、力の付加位置が対向面123,133と同じ高さ(対向面123,133が平坦な状態)となってもよい。
【0047】
そして、バンク127,137の角部が溝部122,132の内方に倒れることにより、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。また、勾配が設けられた溝部122,132の壁面が内方に倒れることにより、突起部124,134がいわゆる逆テーパ状に形成される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0048】
本例では、バンク127,137が形成されていることで、突起部124,134形成時の塑性変形の容易化が図られる。しかも、突起部124,134が逆テーパ状に形成されることで、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14(図3参照)との結合性の向上が図られる。
【0049】
次に、図5の例では、溝部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、溝部122,132に加えて、溝部122,132に隣接するバンク127,137と、溝部122,132に対してバンク127,137の外側に隣接して配される凹部128,138とをそれぞれ形成する(図5(a))。さらに、溝部122,132の壁面に型抜き用の勾配(抜き勾配)を設ける。図4の例と同様に、バンク127(137)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から突出して形成された突起部であり、抜き勾配は、溝部122(132)の幅が開口に向かって徐々に広くなるように設けられる。また、凹部128(138)は、板状部材12(13)の対向面123(133)から窪んで形成され、バンク127,137との間で壁面を一部共有している。凹部128,138の幅や深さ、バンク127,137の幅や高さ、抜き勾配の角度等は、板状部材12,13や冷却管の材質、形状等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0050】
突起部形成工程では、鍛造法を用いて上記のバンク127,137を塑性変形させる(図5(b))。すなわち、板状部材12,13の各対向面123,133における上記のバンク127,137に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、バンク127,137が型19に押され、そのバンク127,137が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。また、溝部122,132の隣接位置において、バンク127,137の変形に伴って拡大した凹部128,138が形成される。本例では、凹部128,138が形成されていることにより、バンク127,137の塑性変形が比較的小さい力で容易に行われる。これは、突起部124,134の形成に伴う板状部材12,13の変形を防止する上で有利である。
【0051】
そして、バンク127,137の角部が溝部122,132の内方に倒れることにより、溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が形成される。また、勾配が設けられた溝部122,132の壁面が内方に倒れることにより、突起部124,134がいわゆる逆テーパ状に形成される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0052】
本例では、バンク127,137と凹部128,138とが形成されていることで、突起部124,134形成時の塑性変形の容易化が図られる。しかも、突起部124,134が逆テーパ状に形成されることで、一対の板状部材12,13のそれぞれと冷却管14(図3参照)との結合性の向上が図られる。
【0053】
次に、図6の例では、突起部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、別の部材141,142を接合する(図6(a))。この部材141,142には、板状部材12(13)の溝部122(132)に対応して溝部122(132)とほぼ同じ平面形状を有する開口部141a(142a)と、この開口部141a(142a)の内方に突出する突起部124(134)とが予め形成されている。この部材141,142は、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて形成することができる。切削加工により開口部141a(142a)や突起部124(134)を形成してもよいが、鍛造法や鋳造法によって所望の形状に成形したほうが量産化による低コスト化を図りやすい。
【0054】
板状部材12,13と別部材141,142との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。例えば、図6(b)に示すように、板状部材12(13)及び部材141(142)に設けられた凸部145や凹部146によって両者を位置決めしておき、その後に上記接合による両者の固定を行うとよい。こうした接合は、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0055】
そして、板状部材12,13に部材141,142が接合されることで、板状部材12,13の溝部122,132の開口位置に、その溝部122,132の内方に突出しかつ先端が尖った突起部124,134が配設される。その後、前述した冷却管14の拡径による結合工程が行われる(図3参照)。
【0056】
本例では、別部材141,142の接合によって突起部124,134を形成することから、切削加工に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。また、溝部を複数に分割して形成することで、鋳造法や鍛造法を用いて、いわゆる逆テーパ状などの様々な形状の突起部124,134を形成することができる。
【0057】
次に、図7の例では、突起部形成工程において、一対の板状部材12,13の各対向面123,133に、別の部材151,152を接合し(図7(a))、その後に鍛造法を用いてその部材151,152に突起部124,134を形成する(図7(b))。この部材151,152には、板状部材12(13)の溝部122(132)に対応して溝部122(132)とほぼ同じ平面形状を有する開口部151a(152a)が予め形成されている。この部材151,152は、鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いて形成することができる。板状部材12,13と別部材151,152との接合は、図6の例と同様に、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。こうした接合は、極めて短時間で行うことができ、また小型の物体の加工にも好ましく適用される。
【0058】
そして、鍛造法を用いて上記の部材151,152を部分的に塑性変形させる。すなわち、部材151,152の各開口部151a,152aの隣接位置に所定の型19(矢型、タガネなど)を押し当て、プレスあるいは打ちつけを行う(潰し加工)。この際、開口部151a,152aの縁が型19に押され、その部位が溝部122,132の内方に向かって塑性変形する。部材151,152における開口部151a,152aの隣接位置には、型の痕である凹部125,135が形成される。
【0059】
本例では、別部材151,152の接合とその部材151,152に対する外力の付加により、突起部124,134を形成することから、切削加工を用いる場合に比べて、製造時間の短縮が可能であり、また小型化への対応も容易である。また、突起部124,134を形成する部材と板状部材12,13とが別体からなるので、材質の選択性の向上が図られる。
【0060】
(熱伝導材の充填)
ここで、上記の冷却ユニットにおいては、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間に、熱伝導材を充填させることにより、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上を図ることが可能である。
【0061】
熱伝導材としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられる。具体的には、例えば、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルト等が用いられる。熱伝導材の熱伝導率は、3W/(m・K)以上であるのが好ましく、5W/(m・K)以上であるのがより好ましい。ホットメルトの熱伝導率は通常、5W/(m・K)以上である。金属材あるいはカーボン材が混練された樹脂材には、熱伝導率が3W/(m・K)以上のものがあり、熱伝導率が10W/(m・K)以上のものもある。一例として、Cool polymers社製:D2(登録商標)(LCP樹脂+熱伝導用物混練、15W/(m・K)、熱膨張率:10×10^-6/K)、RS007(登録商標)(PPS樹脂+熱伝導用物混練、3.5W/(m・K)、熱膨張率:20×10^-6/K)がある。
【0062】
図8は、熱伝導材の充填の様子を示す説明図である。
図8(a)に示すように、熱伝導材140の充填は、例えば、冷却管14を拡径させる工程に先立って、板状部材12,13の溝部122,132の内面及び/又は冷却管14の外面に熱伝導材140を塗布しておくことにより実施できる。熱伝導材140の塗布は、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、あるいは液滴吐出法等の様々な方法を用いることができる。
【0063】
図8(b)に示すように、熱伝導材140の塗布後に冷却管14を拡径させると、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14とが互いに接する部分では板状部材12,13と冷却管14とが直接的に熱的に接続され、隙間が生じた部分では両者が熱伝導材140を介して間接的に熱的に接続される。つまり、板状部材12,13と冷却管14との熱伝達が熱伝導材140によって補完され、板状部材12,13と冷却管14との間の熱伝達性の向上が図られる。また、熱伝導材140が接着力を有する場合にはその力を板状部材12,13と冷却管14との結合力等に利用することも可能である。
【0064】
また、冷却管14の拡径時において、必要に応じて熱伝導材140を軟化・流動させるとよい。例えば、熱伝導材が熱可塑性である場合には、上記拡径時に熱伝導材140を加熱する。この場合、拡径時における冷却管14内を流れる高温流体の熱を利用して熱伝導材140を加熱することができる。熱伝導材140が軟化・流動することにより、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140が充填される。
【0065】
また、溝部122,132に隣接して凹部125,135が設けられている場合には、熱伝導材140の余剰分がその凹部125,135(補溝)に貯溜される。熱伝導材140の逃げ場所が設けられていることで、熱伝導材140が均質に広がりやすくなり、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140がより確実に配置される。また、凹部125,135(あるいは対向面123,133の隙間)に配された熱伝導材140は、板状部材12と板状部材13との熱的接続性を向上させる機能を有する。
【0066】
また、熱伝導材は、冷却板(板状部材12,13)の使用温度範囲内において弾性を有することが好ましい。熱伝導材が弾性を有することにより、熱変形等に伴う板状部材12,13と冷却管14との隙間の変化に応じて熱伝導材が伸縮し、板状部材12,13と冷却管14との熱的接続が安定的に維持される。
【0067】
また、熱伝導材140が、冷却板(板状部材12,13)の使用温度範囲において流動性を有していてもよい。この場合、熱変形等に伴って板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の容積が変化する際に、上記隙間と凹部125,135(補溝)との間を熱伝導材140が適宜移動することにより、上記隙間における熱伝導材140の充填状態が保たれ、板状部材12,13と冷却管14との熱的接続が安定的に維持される。この場合、熱伝導材140の外部への漏れ出しを防止するための手段が講じられているのが好ましい。例えば、嫌気タイプ以外の熱伝導材を用い、外気と触れる部分では硬化させ、内部では流動性を保持させるようにしてもよい。あるいは、上記使用温度範囲内において流動性を有する熱伝導剤を内側に、硬化する別の熱伝導材を外側に配してもよい。
【0068】
図9、図10及び図11は、板状部材12,13の溝部122,132の内面あるいは対向面123,133に、上記熱伝導材140が少なくとも一時的に収容される補溝160を形成した例を示している。
【0069】
図9の例では、補溝160が、板状部材12,13の対向面123,133において、溝部122,132の両外側に溝部122,132と略並行に形成されている。さらに、複数の補溝160が、互いに離間して配設されている。補溝160の形状やその数は、熱伝導材140の材質特性等に応じて適宜定められる。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能である。
【0070】
図9の例では、板状部材12,13の対向面123,133に補溝160が形成されていることから、対向面123,133の隙間に熱伝導材140が広がりやすい。この熱伝導材140の配置領域の拡大により、板状部材12と板状部材13との間の熱伝達性の向上、並びに熱伝導材140による板状部材12と板状部材13との結合力が向上する。
【0071】
図10の例では、補溝160が、板状部材12,13の溝部122,132の内面にその軸方向に延びて形成されている。さらに、複数の補溝160が、補溝160の周方向に互いに離間して配設されている。
また、図11の例では、補溝160が、板状部材12,13の溝部122,132の内面に周方向に延びて形成されている。さらに、複数の補溝160が、溝部122,132の軸方向に互いに離間して配設されている。なお、図11において、補溝160を、溝部122(132)の底部から頂部に向かって深さが徐々に小さく変化するように形成してもよい。
【0072】
図10及び図11の例では、板状部材12,13の各溝部122,132の内面に補溝160が形成されていることから、熱伝導材140の充填時において熱伝導材140の余剰分が補溝160に容易に移動する。その結果、熱伝導材140が均質に広がりやすくなり、板状部材12,13の溝部122,132と冷却管14との隙間の領域全体にわたって熱伝導材140がより確実に配置される。
なお、板状部材12,13の溝部122,132と対向面123,133との双方に補溝160を設けてもよい。
【0073】
(光学素子の位置決め)
図12は、冷却ユニット10の変形例を示す図であり、図12(A)は模式的な平面図、図12(B)は(A)に示すD−D断面図である。なお、既に説明したものと同一の機能を有する構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0074】
図12の例では、図1の冷却ユニット10と同様に、光学素子11の周縁を一対の板状部材12,13が保持しており、また、その一対の板状部材12,13に冷却管14が挟持されている。
本例では、冷却管14は、光学素子11の幅方向に関して2重に配設されており、板状部材12,13の開口部に側に小径の管14Aが配され、その外側に大径の管14Bが配されている。
また、板状部材12,13の開口部の側面には、該側面から突出して複数の位置決め部159(本例では8ケ)が設けられている。各位置決め部159の先端面は、後述する塑性変形によって所望の形状に設定されている。なお、突起状の位置決め部159が設けられていることで、開口部の側面の面精度は比較的粗くてもよい。
そして、光学素子11は、この複数の位置決め部159によって、板状部材12,13に対する平面的な相対位置が位置決めされている。
【0075】
図13は、図12の位置決め部159の形状を設定する様子を示す説明図である。
本例では、冷却管14の拡径に伴う板状部材12,13の変形を利用して位置決め部159の形状設定を行う。
【0076】
まず、冷却管14の収納用の溝部122,132と、位置決め部159となる突起部とが設けられた板状部材12,13を用意する(図13(a))。この時点で突起部(位置決め部159)の先端は例えば曲面あるいは球面からなるとよい。また、その形状精度は比較的粗くてよい。鋳造法(ダイカスト法など)や鍛造法(冷間/熱間鍛造など)を用いることにより、こうした形状の板状部材12,13であっても容易かつ低コストでの形成が可能であり、また小型の物体にも好ましく適用可能である。
【0077】
次に、各溝部122,132に冷却管14(14A,14B)を挟持した状態で板状部材12と板状部材13とを対向配置させて、各対向面123,133同士を当接状態に保持する(図13(b))。このとき、板状部材12,13の外側面の位置を型158(外型)によって固定するとともに、板状部材12,13の開口部に別の型157(内型)を配置する。また、外型158と内型157との面間を所望の距離に設定する。
【0078】
次に、冷却管14(14A,14B)を拡径させる(図13(c))。拡径は、冷却管14A,14Bの内部に流体を加圧供給することにより行い、また、必要に応じて複数回に分けて繰り返し行う。冷却管14の拡径により、板状部材12,13の各溝部122,132に冷却管14の外面が密着するとともに、板状部材12,13の薄肉部である冷却管14Aと開口部との間の部位が外方に変形する。そして、この薄肉部の変形に伴い、突起部(位置決め部159)の先端が内型157に押接されて塑性変形し、この塑性変形により、位置決め部159の形状設定がなされる。すなわち、外型158と内型157との面間距離に基づき、基準面(板状部材12,13の外側面)に対する位置決め部159の先端面の平面的な相対位置が設定される。
【0079】
このように、本例では、冷却管14の拡径を利用した塑性変形によって、光学素子11を位置決めするための位置決め部159の形状設定を行うことから、位置決め部159を切削加工によって形状設定する場合に比べて工程の簡素化が図られる。
【0080】
なお、図14に示すように、位置決め部159に光学素子11を案内するための斜面159aを形成してもよい。この場合、上記の内型157(図13参照)にこの斜面159aに対応する傾斜面を設けておく。型を用いた塑性変形により、位置決め部159を様々な形状に容易に設定可能である。
【0081】
以上説明した本発明の冷却ユニット及びその製造方法は、光学素子の冷却を必要とする各種光学装置に好ましく適用される。この適用により、光学装置の低コスト化並びに小型化を図ることができる。
【0082】
(プロジェクタの構成)
以下、上記の冷却ユニットの適用例として、プロジェクタの実施形態について図面を参照して説明する。以下の例では、後述する液冷ユニット46(図15参照)に、上記の冷却ユニット10及びその製造方法を適用することができる。
この場合、上記の光学素子11(図1参照)は、後述する液晶パネル441R,441G,441B、入射側偏光板442及び射出側偏光板443(図18参照)の少なくとも1つに適用される。
同様に、上記の板状部材12,13は、後述する液晶パネル保持枠445(枠状部材4451、枠状部材4452)、入射側偏光板保持枠446(枠状部材4461、枠状部材4462)及び射出側偏光板保持枠447(枠状部材4471、枠状部材4472)の少なくとも1つに適用される。
同様に、上記の冷却管14は、後述する素子冷却管463(液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632R、射出側偏光板冷却管4633R)に適用される。
上記の冷却ユニット及びその製造方法を、後述する液冷ユニット46に適用することにより、プロジェクタの低コスト化並びに小型化を図ることが可能となる。更に、冷却性能の向上による長寿命化が可能となる。
【0083】
図15は、プロジェクタ1の概略構成を模式的に示す図である。
プロジェクタ1は、光源から射出される光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、形成した光学像をスクリーン上に拡大投射するものである。このプロジェクタ1は、外装ケース2と、空冷装置3と、光学ユニット4と、投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
なお、図15において、図示は省略するが、外装ケース2内において、空冷装置3、光学ユニット4、及び投射レンズ5以外の空間には、電源ブロック、ランプ駆動回路等が配置されるものとする。
【0084】
外装ケース2は、合成樹脂等から構成され、空冷装置3、光学ユニット4、及び投射レンズ5を内部に収納配置する全体略直方状に形成されている。この外装ケース2は、図示は省略するが、プロジェクタ1の天面、前面、背面、及び側面をそれぞれ構成するアッパーケースと、プロジェクタ1の底面、前面、側面、及び背面をそれぞれ構成するロアーケースとで構成され、上記アッパーケース及び上記ロアーケースは互いにねじ等で固定されている。
なお、外装ケース2は、合成樹脂等に限らず、その他の材料にて形成してもよく、例えば、金属等により構成してもよい。
また、図示は省略するが、この外装ケース2には、プロジェクタ1外部から空気を内部に導入するための吸気口(例えば、図16に示す吸気口22)、及びプロジェクタ1内部で温められた空気を排出するための排気口が形成されている。
さらに、この外装ケース2には、図15に示すように、投射レンズ5の側方で外装ケース2の角部分に位置し、光学ユニット4の後述するラジエータ466及び軸流ファン467等を他の部材と隔離する隔壁21が形成されている。
【0085】
空冷装置3は、プロジェクタ1内部に形成される冷却流路に冷却空気を送り込み、プロジェクタ1内で発生する熱を冷却するものである。空冷装置3は、投射レンズ5の側方に位置し、外装ケース2に形成された図示しない吸気口からプロジェクタ1外部の冷却空気を内部に導入するシロッコファン31、及び図示しない電源ブロック、ランプ駆動回路等を冷却するための冷却ファン等を有する。
【0086】
光学ユニット4は、光源から射出された光束を、光学的に処理して画像情報に応じて光学像(カラー画像)を形成するユニットである。この光学ユニット4は、全体形状が、図15に示すように、概ね外装ケース2の背面に沿って延出するとともに、外装ケース2の側面に沿って延出する平面視略L字形状を有している。なお、この光学ユニット4の詳細な構成については後述する。
投射レンズ5は、複数のレンズが組み合わされた組レンズとして構成される。そして、この投射レンズ5は、光学ユニット4にて形成された光学像(カラー画像)を図示しないスクリーン上に拡大投射する。
【0087】
(光学ユニットの詳細な構成)
光学ユニット4は、図15に示すように、インテグレータ照明光学系41と、色分離光学系42と、リレー光学系43と、光学装置44と、光学部品用筐体45と、液冷ユニット46とを備える。
【0088】
インテグレータ照明光学系41は、光学装置44を構成する後述する液晶パネルの画像形成領域を略均一に照明するための光学系である。このインテグレータ照明光学系41は、図15に示すように、光源ユニット411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415とを備える。
【0089】
光源ユニット411は、放射状の光線を射出する光源ランプ416と、この光源ランプ416から射出された放射光を反射するリフレクタ417とを備える。光源ランプ416としては、ハロゲンランプやメタルハライドランプ、高圧水銀ランプが多用される。また、リフレクタ417としては、図15では、放射面鏡を採用しているが、これに限らず、楕円面鏡で構成し、光束射出側に該楕円面鏡により反射された光束を平行光とする平行化凹レンズを採用した構成としてもよい。
【0090】
第1レンズアレイ412は、光軸方向から見て略矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源ユニット411から射出される光束を、複数の部分光束に分割している。
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を光学装置44の後述する液晶パネル上に結像させる機能を有している。
【0091】
偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置され、第2レンズアレイ413からの光を略1種類の偏光光に変換するものである。
具体的に、偏光変換素子414によって略1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に光学装置44の後述する液晶パネル上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源ユニット411からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子414を用いることで、光源ユニット411からの射出光を略1種類の偏光光に変換し、光学装置44での光の利用効率を高めている。
【0092】
色分離光学系42は、図15に示すように、2枚のダイクロイックミラー421,422と、反射ミラー423とを備え、ダイクロイックミラー421,422によりインテグレータ照明光学系41から射出された複数の部分光束を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する機能を有している。
リレー光学系43は、図15に示すように、入射側レンズ431、リレーレンズ433、及び反射ミラー432,434を備え、色分離光学系42で分離された青色光を光学装置44の後述する青色光用の液晶パネルまで導く機能を有している。
【0093】
この際、色分離光学系42のダイクロイックミラー421では、インテグレータ照明光学系41から射出された光束の赤色光成分が反射するとともに、緑色光成分と青色光成分とが透過する。ダイクロイックミラー421によって反射した赤色光は、反射ミラー423で反射し、フィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する赤色光用の液晶パネルに達する。このフィールドレンズ418は、第2レンズアレイ413から射出された各部分光側をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の緑色光用、青色光用の液晶パネルの光入射側に設けられたフィールドレンズ418も同様である。
【0094】
ダイクロイックミラー421を透過した緑色光と青色光とのうちで、緑色光はダイクロイックミラー422によって反射し、フィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する緑色光用の液晶パネルに達する。一方、青色光はダイクロイックミラー422を透過してリレー光学系43を通り、さらにフィールドレンズ418を通って光学装置44の後述する青色光用の液晶パネルに達する。なお、青色光にリレー光学系43が用いられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ431に入射した部分色光の光路長が長いのでこのような構成とされているが赤色光の光路長を長くする構成も考えられる。
【0095】
光学装置44は、図15に示すように、光変調素子としての3枚の液晶パネル441(赤色光用の液晶パネルを441R、緑色光用の液晶パネルを441G、青色光用の液晶パネルを441Bとする)と、この液晶パネル441の光束入射側及び光束射出側に配置される光学変換素子としての3つの入射側偏光板442及び3つの射出側偏光板443と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム444とが一体的に構成されたものである。
【0096】
液晶パネル441は、具体的な図示は省略するが、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密封封入された構成を有し、図示しない制御装置から出力される駆動信号に応じて、上記液晶の配向状態が制御され、入射側偏光板442から射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
入射側偏光板442は、偏光変換素子414で偏光方向が略一方向に揃えられた各色光が入射され、入射された光束のうち、偏光変換素子414で揃えられた光束の偏光軸と略同一方向の偏光光のみを透過させ、その他の光束を吸収するものである(光吸収型)。
この入射側偏光板442は、具体的な図示は省略するが、サファイアガラスまたは水晶等の透光性基板上に偏光膜が貼付された構成を有している。光吸収型の偏光膜は、例えば、ヨウ素分子または染料分子を含むフィルムを一軸延伸して形成されており、消光比が比較的高く、入射角依存性が比較的小さいという利点を有する。
射出側偏光板443は、入射側偏光板442と略同様の構成であり、液晶パネル441から射出された光束のうち、入射側偏光板442における光束の透過軸と直交する偏光軸を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである(光吸収型)。
【0097】
クロスダイクロイックプリズム444は、射出側偏光板443から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム444は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、液晶パネル441R,441Bから射出され射出側偏光板443を介した色光を反射し、液晶パネル441Gから射出され射出側偏光板443を介した色光を透過する。このようにして、各液晶パネル441R,441G,441Bにて変調された各色光が合成されてカラー画像が形成される。
【0098】
光学部品用筐体45は、例えば、金属製部材から構成され、内部に所定の照明光軸Aが設定され、上述した光学部品41〜44を照明光軸Aに対する所定位置に収納配置する。なお、光学部品用筐体45は、金属製部材に限らず、その他の材料にて構成してもよく、特に熱伝導性材料で構成することが好ましい。
【0099】
液冷ユニット46は、冷却流体を循環させて主に光学装置44を冷却するものであり、冷却流体を一時的に貯溜するメインタンク461、冷却流体の熱を放熱させるための放熱部としてのラジエータ466、このラジエータ466に冷却空気を吹き付ける軸流ファン467の他、それぞれ後述する流体圧送部、素子冷却管、分岐タンク、合流タンク、及び管部等を備える。
【0100】
ここで、図16は、プロジェクタ1内の一部を上方側から見た斜視図であり、図17は、プロジェクタ1内における主に光学装置44と液冷ユニット46を下方から見た斜視図である。
なお、図16において、光学部品用筐体45内の光学部品は、説明の簡略化のために、光学装置44のみを図示し、その他の光学部品41〜43は省略している。また、図16及び図17において、説明の簡略化のために、液冷ユニット46における部材を一部省略して示している。
【0101】
図16に示すように、光学部品用筐体45は、部品収納部材451と、部品収納部材451の開口部分を閉塞する図示しない蓋状部材とを含んで構成される。
このうち、部品収納部材451は、光学部品用筐体45の底面、前面、及び側面をそれぞれ構成する。
【0102】
この部品収納部材451において、側面の内側面には、図16に示すように、上述した光学部品41〜44を上方からスライド式に嵌め込むための溝部451Aが形成されている。
また、側面の正面部分には、図16に示すように、投射レンズ5を光学ユニット4に対して所定位置に設置するための投射レンズ設置部451Bが形成されている。この投射レンズ設置部451Bは、平面視略矩形状に形成され、平面視略中央部分には光学装置44からの光束射出位置に対応して円形状の図示しない孔が形成されており、光学ユニット4にて形成されたカラー画像が上記孔を通して投射レンズ5にて拡大投射される。
【0103】
(液冷ユニット)
以下、液冷ユニット46について詳しく説明する。
図16及び図17において、液冷ユニット46は、メインタンク461、流体圧送部462(図17)、素子冷却管463、分岐タンク464(図17)、合流タンク465、ラジエータ466、軸流ファン467、及び管部469等を備える。
【0104】
メインタンク461は、図16及び図17に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の2つの容器状部材から構成され、2つの容器状部材の開口部分を互いに接続することで内部に冷却流体を一時的に蓄積する。これら容器状部材は、例えば、シール溶接またはゴム等の弾性部材を介在させることで接続される。
このメインタンク461の周面において、図17に示すように、冷却流体の流入部461A及び流出部461Bが形成されている。
これら流入部461A及び流出部461Bは、管状部材から構成され、メインタンク461の内外に突出するように配置されている。そして、流入部461Aの外側に突出した一端に管部469の一端が接続され、その管部469を介して外部からの冷却流体がメインタンク461内部に流入する。また、流出部461Bの外側に突出した一端にも管部469の一端が接続され、その管部469を介してメインタンク461内部の冷却流体が外部に流出する。
また、メインタンク461において、流入部461A及び流出部461Bの各中心軸が互いに略直交する位置関係にあり、これにより、流入部461Aを介してメインタンク461内部に流入した冷却流体が、流出部461Bを介して直ぐに外部に流出することが回避され、メインタンク461内部での混合作用により、冷却流体の均質化並びに温度の均一化が図られる。そして、メインタンク461から流出した冷却流体は、管部469を介して流体圧送部462に送られる。
【0105】
流体圧送部462は、図17に示すように、メインタンク461からの冷却流体を内部に吸引するとともに、その冷却流体を分岐タンク464に向けて外部に強制的に排出する。すなわち、メインタンク461の流出部461Bと流体圧送部462の流入部462Aとが管部469を介して接続され、流体圧送部462の流出部462Bと分岐タンク464の流入部464Aとが管部469を介して接続されている。
具体的に、流体圧送部462は、例えば、略直方体状のアルミニウム等の金属製の中空部材内に羽根車が配置された構成を有し、図示しない制御装置の制御の下、上記羽根車が回転することで、メインタンク461内に蓄積された冷却流体を管部469を介して強制的に吸引し、その冷却流体を管部469を介して外部に強制的に排出する。このような構成により、上記羽根車の回転軸方向の厚み寸法を小さくすることができ、コンパクト化並びに省スペース化が図られる。本実施形態では、流体圧送部462は、図16又は図17に示すように、投射レンズ5の下方に配置される。
【0106】
素子冷却管463は、光学装置44における液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443の各素子に隣接して配設されるものである。そして、素子冷却管463の内部を流れる冷却流体と各素子441,442,443との間で熱交換が行われる。
【0107】
ここで、図18は、光学装置44の全体構成を示す斜視図である。
図18において、前述したように、光学装置44は、3枚の液晶パネル441(赤色光用の液晶パネル441R、緑色光用の液晶パネル441G、青色光用の液晶パネル441B)と、各液晶パネル441の入射側あるいは射出側に配置される偏光板(入射側偏光板442、射出側偏光板443)と、クロスダイクロイックプリズム444とが一体的に構成されたものである。
すなわち、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色毎に、射出側偏光板443、液晶パネル441、及び入射側偏光板442の順に、それらがクロスダイクロイックプリズム444上に重ねて配置されている。
そして、素子冷却管463は、液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443のそれぞれに対して個別に配設されている。
【0108】
具体的に、素子冷却管463は、赤色光に関して、液晶パネル441Rの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Rと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Rと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Rとを含む。冷却流体は、各素子冷却管4631R,4632R,4633Rの流入部(IN)から各管内部に流入して各素子441R,442,443の周縁に沿って流れ、各管の流出部(OUT)から外部に流出する。
同様に、素子冷却管463は、緑色光に関して、液晶パネル441Gの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Gと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Gと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Gとを含み、また、青色光に関して、液晶パネル441Bの周縁に配設される液晶パネル冷却管4631Bと、入射側偏光板442の周縁に配設される入射側偏光板冷却管4632Bと、射出側偏光板443の周縁に配設される射出側偏光板冷却管4633Bとを含む。
【0109】
本実施形態では、液晶パネル441、入射側偏光板442、及び射出側偏光板443の各素子の周縁が保持枠に保持されており、この保持枠の内部に、各素子冷却管463が各素子の周縁部に沿って略一周にわたって配設されている。そして、各素子441,442,443の同一辺側において、各素子冷却管463の流入部(IN)と流出部(OUT)とが配設されている。
なお、上記素子保持枠、及び素子冷却管463の詳しい構造については後述する。
【0110】
図16及び図17に戻り、分岐タンク464は、図17に示すように、流体圧送部462から送られた冷却流体を各素子冷却管463に向けて分岐させるものである。
また、合流タンク465は、図16に示すように、各素子冷却管463から送られた冷却流体を合流させて一時的に蓄積するものである。
本実施形態では、光学装置44におけるクロスダイクロイックプリズム444の一面に分岐タンク464が配置され、そのクロスダイクロイックプリズム444の反端側の一面に合流タンク465が配置されている。分岐タンク464及び合流タンク465の配置位置はこれに限らず、他の位置でもよい。
【0111】
ここで、図19は、分岐タンク464の全体構成を示す斜視図であり、図20は、合流タンク465の全体構成を示す斜視図である。
分岐タンク464は、図19に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の密閉された容器状部材から構成され、内部に冷却流体を一時的に蓄積する。
この分岐タンク464の周面において、冷却流体の流入部464A、及び流出部464B1,464B2,…464B9が形成されている。
これら流入部464A及び流出部464B1〜464B9は、管状部材から構成され、分岐タンク464の内外に突出するように配置されている。そして、流入部464Aの外側に突出した一端に管部469の一端が接続され、その管部469を介して流体圧送部462(図17参照)からの冷却流体が分岐タンク464内部に流入する。また、流出部464B1〜464B9の外側に突出した各一端にも管部469の一端が個別に接続され、その管部469を介して分岐タンク464内部の冷却流体が各素子冷却管463(図18参照)に向けて流出する。
【0112】
合流タンク465は、分岐タンク464と同様に、図20に示すように、全体が略円柱形状を有し、アルミニウム等の金属製の密閉された容器状部材から構成され、内部に冷却流体を一時的に蓄積する。
この合流タンク465の周面において、冷却流体の流入部465A1,465A2,…465A9、及び流出部465Bが形成されている。
これら流入部465A1〜465A9及び流出部465Bは、管状部材から構成され、合流タンク465の内外に突出するように配置されている。そして、流入部465A1〜465A9の外側に突出した各一端に管部469の一端が個別に接続され、その管部469を介して各素子冷却管463(図18参照)からの冷却流体が合流タンク465内部に流入する。また、流出部465Bの外側に突出した一端にも管部469の一端が接続され、その管部469を介して合流タンク465内部の冷却流体がラジエータ466に向けて流出する。
【0113】
図16及び図17に戻り、ラジエータ466は、図17に示すように、冷却流体が流れる管状部材4661と、この管状部材に接続された複数の放熱フィン4662とを備える。
管状部材4661は、アルミニウム等の熱伝導性の高い部材からなり、流入部4661Aから流入した冷却流体が流出部4661Bに向けて内部を流れる。管状部材4661の流入部4661Aと合流タンク465の流出部465Bとが管部469を介して接続され、管状部材4661の流出部4661Bとメインタンク461とが管部469を介して接続されている。
複数の放熱フィン4662は、アルミニウム等の熱伝導性の高い板状部材からなり、並列配置されている。また、軸流ファン467は、ラジエータ466の一面側から冷却空気を吹き付けるように構成されている。
そして、ラジエータ466では、管状部材4661内を流れる冷却流体の熱が放熱フィン4662を介して放熱されるとともに、軸流ファン467による冷却空気の供給によってその放熱が促進される。
【0114】
なお、管部469の形成材料としては、例えば、アルミニウム等の金属が用いられ、樹脂製などの他の材料を用いてもよい。
冷却流体としては、例えば透明性の非揮発性液体であるエチレングリコールが用いられ、この他の液体を用いてもよい。なお、本発明における冷却流体は液体に限らず、気体でもよく、また、液体と固体との混合物等を用いてもよい。
【0115】
以上説明したように、液冷ユニット46では、管部469を介して、メインタンク461、流体圧送部462、分岐タンク464、素子冷却管463、合流タンク465、及びラジエータ466の順に冷却流体が流れ、その冷却流体は、ラジエータ466からメインタンク461に戻り、上記経路を繰り返し流れて循環する。
【0116】
そして、液冷ユニット46では、各素子冷却管463内を冷却流体が流れることにより、光束の照射等によって生じた光学装置44における各素子441,442,443の熱が適宜取り除かれ、各素子441,442,443の温度上昇が抑制される。各素子441,442,443の熱は、各素子の保持枠を介して各素子冷却管463内の冷却流体に伝達される。
【0117】
(素子保持枠及び素子冷却管)
次に、素子保持枠及び素子冷却管について説明する。ここでは、代表的に、赤色光に関するものを説明するが、緑色光及び青色光に関するものもこれと同様である。
【0118】
図21は、光学装置44における赤色光用のパネル構成を示す部分斜視図である。
図21に示すように、赤色光に関して、液晶パネル441Rの周縁が液晶パネル保持枠445に保持され、入射側偏光板442の周縁が入射側偏光板保持枠446に保持され、射出側偏光板443の周縁が射出側偏光板保持枠447に保持されている。各保持枠445,446,447は、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した後述する矩形状の開口部を有しており、これらの開口部を光束が通過する。
そして、液晶パネル保持枠445の内部に、液晶パネル441Rの周縁に沿って液晶パネル冷却管4631Rが配設され、入射側偏光板保持枠446の内部に、入射側偏光板442の周縁に沿って入射側偏光板冷却管4632Rが配設され、射出側偏光板保持枠447の内部に、射出側偏光板443の周縁に沿って射出側偏光板冷却管4633Rが配設されている。
【0119】
図22は、液晶パネル保持枠445の分解斜視図であり、図23(A)は、液晶パネル保持枠445の組立正面図、図23(B)は図23(A)に示すA−A断面図である。
液晶パネル保持枠445は、図23に示すように、一対の枠状部材4451,4452と、液晶パネル固定板4453とを含む。
ここで、液晶パネル441Rは、透過型であり、一対の透明基板間に液晶層が密閉封入された構成を有し、一対の基板は、液晶に駆動電圧を印加するためのデータ線、走査線、スイッチング素子、画素電極等が形成された駆動基板と、共通電極、ブラックマトリックス等が形成された対向基板とを含む。
【0120】
枠状部材4451,4452はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した矩形状の開口部4451A,4452Aと、液晶パネル冷却管4631Rを収納するための溝部4451B,4452Bとを有する。枠状部材4451と枠状部材4452とは、液晶パネル冷却管4631Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4451,4452としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム(234W/(m・K))、マグネシウム(156W/(m・K))あるいはその合金(アルミダイカスト合金(約100W/(m・K))、Mg-Al-Zn系合金(約50W/(m・K))など)の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4451,4452は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0121】
液晶パネル固定板4453は、図22に示すように、液晶パネル441Rの画像形成領域に対応した矩形状の開口部4453Aを有する板状部材からなり、液晶パネル441Rを間に挟んで枠状部材4452に固定される。この液晶パネル固定板4453は、図23(B)に示すように、液晶パネル441Rに接触して配され、枠状部材4451,4452と液晶パネル441Rとを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、液晶パネル441Rの熱を放熱する機能を有する。また、液晶パネル441Rの熱の一部は、液晶パネル固定板4453を介して枠状部材4451,4452に伝達される。
【0122】
液晶パネル冷却管4631Rは、例えば環状の断面を有しその中心軸に沿って延在するパイプあるいはチューブからなり、図22に示すように、枠状部材4451,4452の溝部4451B,4452Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。液晶パネル冷却管4631Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、液晶パネル冷却管4631Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0123】
具体的に、液晶パネル冷却管4631Rは、図23(A)及び(B)に示すように、液晶パネル441Rの周縁部の外側で、液晶パネル441Rの周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4451,4452の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4451A,4452Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4451B,4452Bが形成されており、溝部4451Bと溝部4452Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、液晶パネル冷却管4631Rを各溝部4451B,4452B内に収納した状態で、枠状部材4451,4452同士が互いに接合されている。本実施形態では、液晶パネル冷却管4631Rは円形パイプであり、その外径は液晶パネル441Rの厚みと同程度である。
枠状部材4451と枠状部材4452との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法としては、液晶パネル冷却管4631Rと枠状部材4451,4452(あるいは液晶パネル441R)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0124】
液晶パネル冷却管4631Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。液晶パネル冷却管4631Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から液晶パネル冷却管4631R内に流入した冷却流体は、液晶パネル441Rの周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、液晶パネル冷却管4631R内を流れる間に、液晶パネル441Rから熱を奪う。すなわち、液晶パネル441Rの熱が、枠状部材4451,4452を介して液晶パネル冷却管4631R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0125】
ここで、この液晶パネル保持枠445では、図23(B)に示すように、液晶パネル441Rの厚み方向に関し、液晶パネル441Rの光束入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されている。液晶パネル441Rでは一般に射出面側に比べて、ブラックマトリックスが配置されている入射面側の熱吸収が多い。そのため、温度上昇しやすい入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されることにより、液晶パネル441Rの熱が効果的に取り除かれる。
さらに、液晶パネル441Rの側面には段差が設けられており、入射面に比べて射出面の面積が広い。そのため、面積の小さい入射面側に近づけて液晶パネル冷却管4631Rが配設されることにより、構成要素の配置の効率化が図られ、装置の小型化が図られる。
【0126】
図24(A)は、入射側偏光板保持枠446の組立正面図、図24(B)は図24(A)に示すB−B断面図である。
入射側偏光板保持枠446は、液晶パネル保持枠445(図22参照)と概ね同様の構成からなり、図24(A)及び(B)に示すように、一対の枠状部材4461,4462と、偏光板固定板4463とを含む。
ここで、入射側偏光板442は、透光性基板上に偏光膜フィルムが貼付された構成からなる。
【0127】
枠状部材4461,4462はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、入射側偏光板442の光透過領域に対応した矩形状の開口部4461A,4462Aと、入射側偏光板冷却管4632Rを収納するための溝部4461B,4462Bとを有する。枠状部材4461と枠状部材4462とは、入射側偏光板冷却管4632Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4461,4462としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、マグネシウムあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4461,4462は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0128】
偏光板固定板4463は、図24(A)及び(B)に示すように、入射側偏光板442の光透過領域に対応した矩形状の開口部4463Aを有する板状部材からなり、入射側偏光板442を間に挟んで枠状部材4461に固定される。この偏光板固定板4463は、図24(B)に示すように、入射側偏光板442に接触して配され、枠状部材4461,4462と入射側偏光板442とを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、入射側偏光板442の熱を放熱する機能を有する。また、入射側偏光板442の熱の一部は、偏光板固定板4463を介して枠状部材4461,4462に伝達される。
【0129】
入射側偏光板冷却管4632Rは、例えば引き抜き加工や絞り加工等により形成されたシームレスパイプからなり、枠状部材4461,4462の溝部4461B,4462Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。入射側偏光板冷却管4632Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、入射側偏光板冷却管4632Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0130】
具体的に、入射側偏光板冷却管4632Rは、図24(A)及び(B)に示すように、入射側偏光板442の周縁部の外側で、入射側偏光板442の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4461,4462の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4461A,4462Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4461B,4462Bが形成されており、溝部4461Bと溝部4462Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、入射側偏光板冷却管4632Rを各溝部4461B,4462B内に収納した状態で、枠状部材4461,4462同士が互いに接合されている。本実施形態では、入射側偏光板冷却管4632Rは円形パイプであり、その外径は入射側偏光板442の厚みと同程度である。
枠状部材4461と枠状部材4462との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法として、入射側偏光板冷却管4632Rと枠状部材4461,4462(あるいは入射側偏光板442)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0131】
入射側偏光板冷却管4632Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。入射側偏光板冷却管4632Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から入射側偏光板冷却管4632R内に流入した冷却流体は、入射側偏光板442の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、入射側偏光板冷却管4632R内を流れる間に、入射側偏光板442から熱を奪う。すなわち、入射側偏光板442の熱が、枠状部材4461,4462を介して入射側偏光板冷却管4632R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0132】
図25(A)は、射出側偏光板保持枠447の組立正面図、図25(B)は図25(A)に示すC−C断面図である。
射出側偏光板保持枠447は、入射側偏光板保持枠446(図24参照)と同様の構成からなり、図25(A)及び(B)に示すように、一対の枠状部材4471,4472と、偏光板固定板4473とを含む。
ここで、射出側偏光板443は、入射側偏光板442と同様に、透光性基板上に偏光膜フィルムが貼付された構成からなる。
【0133】
枠状部材4471,4472はそれぞれ、平面視略矩形状の枠体であり、射出側偏光板443の光透過領域に対応した矩形状の開口部4471A,4472Aと、射出側偏光板冷却管4633Rを収納するための溝部4471B,4472Bとを有する。枠状部材4471と枠状部材4472とは、射出側偏光板冷却管4633Rを間に挟んで互いに対向して配置される。枠状部材4471,4472としては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、マグネシウムあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、枠状部材4471,4472は、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0134】
偏光板固定板4473は、図25(A)及び(B)に示すように、射出側偏光板443の光透過領域に対応した矩形状の開口部4473Aを有する板状部材からなり、射出側偏光板443を間に挟んで枠状部材4471に固定される。この偏光板固定板4473は、図25(B)に示すように、射出側偏光板443に接触して配され、枠状部材4471,4472と射出側偏光板443とを互いに密着させてそれらを熱的に接続させる機能を有するとともに、射出側偏光板443の熱を放熱する機能を有する。また、射出側偏光板443の熱の一部は、偏光板固定板4473を介して枠状部材4471,4472に伝達される。
【0135】
射出側偏光板冷却管4633Rは、例えば引き抜き加工等により形成されたシームレスパイプからなり、枠状部材4471,4472の溝部4471B,4472Bの形状に応じて折り曲げ加工されている。射出側偏光板冷却管4633Rとしては、熱伝導率が高い材質からなる熱良導体が好ましく用いられ、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスあるいはその合金の他、各種金属が適用される。また、射出側偏光板冷却管4633Rは、金属材に限らず、熱伝導率の高い(例えば5W/(m・K)以上)の他の材料(樹脂材など)でもよい。
【0136】
具体的に、射出側偏光板冷却管4633Rは、図25(A)及び(B)に示すように、射出側偏光板443の周縁部の外側で、射出側偏光板443の周縁部に沿って略一周にわたって配設される。すなわち、枠状部材4471,4472の各内面(合わせ面、対向面)において、開口部4471A,4472Aの縁部に沿って略一周にわたって断面略半円状の溝部4471B,4472Bが形成されており、溝部4471Bと溝部4472Bとは互いに略鏡面対称の形状関係にある。そして、射出側偏光板冷却管4633Rを各溝部4471B,4472B内に収納した状態で、枠状部材4471,4472同士が互いに接合されている。本実施形態では、射出側偏光板冷却管4633Rは円形パイプからなり、その外径は射出側偏光板443の厚みと同程度である。
枠状部材4471と枠状部材4472との接合は、ネジ等による締結接合、接着接合、溶接接合、嵌合等の機械的接合など、様々な方法が適用可能である。接合方法として、射出側偏光板冷却管4633Rと枠状部材4471,4472(あるいは射出側偏光板443)との間の熱伝達性の高い方法が好ましく用いられる。
【0137】
射出側偏光板冷却管4633Rの一端には冷却流体の流入部(IN)が配設され、他端には流出部(OUT)が配設されている。射出側偏光板冷却管4633Rの流入部及び流出部はそれぞれ、冷却流体循環用の配管(管部469)に接続される。
流入部(IN)から射出側偏光板冷却管4633R内に流入した冷却流体は、射出側偏光板443の周縁に沿って略一周にわたって流れ、流出部(OUT)から流出する。また、その冷却流体は、射出側偏光板冷却管4633R内を流れる間に、射出側偏光板443から熱を奪う。すなわち、射出側偏光板443の熱が、枠状部材4471,4472を介して射出側偏光板冷却管4633R内の冷却流体に伝達されて外部に運ばれる。
【0138】
このように、本実施形態では、赤色光に関して、液晶パネル441R、入射側偏光板442、射出側偏光板443の各素子の保持枠445,446,447の内部に素子冷却管4631R,4632R,4633Rが配設されており、その素子冷却管4631R,4632R,4633Rに流れる冷却流体によって各素子441R,442,443の熱が適宜取り除かれる。すなわち、各保持枠445,446,447を介して各素子441R,442,443と素子冷却管4631R,4632R,4633Rとが熱的に接続されており、各素子441R,442,443と素子冷却管4631R,4632R,4633R内の冷却流体との間で熱交換がなされることで、各素子441R,442,443の熱が保持枠445,446,447を介して素子冷却管4631R,4632R,4633R内の冷却流体に伝達される。そして、各素子441R,442,443の熱が冷却流体に移動することにより、各素子441R,442,443が冷却される。
【0139】
また、本実施形態では、各素子冷却管4631R,4632R,4633Rが、各素子441R,442,443の周縁部に沿って略一周にわたって配設されていることから、伝熱面積の拡大が図られており、各素子が効果的に冷却される。
しかも、冷却流体の経路(素子冷却管4631R,4632R,4633R)が各素子441R,442,443の周縁部に沿って配設されることにより、冷却流体中を画像形成用の光束が通過することがなく、そのため、液晶パネル441Rにて形成される光学像に冷却流体中の気泡や塵埃等の像が含まれたり、冷却流体の温度分布に伴う光学像の揺らぎが発生したりといったことが回避される。
【0140】
また、本実施形態では、各素子441R,442,443の周縁部における冷却流体の経路が管(素子冷却管4631R,4632R,4633R)によって形成されるから、経路形成のための接合部が比較的少なくて済む。接合部の数あるいは面積が少ないことで、構成の簡素化が図られるとともに、冷却流体の漏れが防止される。
【0141】
このように、本実施形態によれば、冷却流体を用いることによる不具合の発生を抑えつつ、各素子441R,442,443の温度上昇を効果的に抑制することができる。
なお、素子保持枠445,446,447の内部に素子冷却管4631R,4632R,4633Rを配設した構造は、保持枠445,446,447が、各素子441R,442,443の保持手段と冷却手段とを兼ねており、その結果、小型化を図りやすく、小型の光学素子に好ましく適用可能である。
例えば、本実施形態では、各素子441R,442,443の周縁部の外側に、各素子の厚みと同程度の外径を有する素子冷却管4631R,4632R,4633Rを配設しており、冷却流体経路を備えることによる厚み方向の拡大が抑制されている。
【0142】
以上、光学装置44(図18参照)における赤色光用のパネル構成及びその冷却構造について代表的に説明したが、緑色光及び青色光に関してもこれと同様であり、各素子(液晶パネル、入射側偏光板、射出側偏光板)が個別に保持枠に保持され、その保持枠の内部に素子冷却管が配設されている。
すなわち、本実施形態では、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子が、冷却流体を用いて個別に冷却される。各素子が個別に冷却されることにより、各素子の温度上昇に伴う不具合の発生が確実に防止される。
【0143】
(配管系統)
図26は、上記した光学装置44における冷却流体の流れを示す配管系統図である。
図26に示すように、本実施形態では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対して、冷却流体の経路が並行に設けられている。
【0144】
具体的に、赤色光に関する液晶パネル冷却管4631Rと入射側偏光板冷却管4632Rと射出側偏光板冷却管4633Rとを含む3つの素子冷却管はそれぞれ、一端が分岐タンク464に接続されかつ他端が合流タンク465に接続されている。同様に、緑色光に関する3つの素子冷却管4631G,4632G,4633G、及び青色光に関する3つの素子冷却管4631B,4632B,4633Bもそれぞれ、一端が分岐タンク464に接続されかつ他端が合流タンク465に接続されている。その結果、上記の9つの素子冷却管が分岐タンク464と合流タンク465との間の冷却流体の経路上で並列に配置されている。
【0145】
冷却流体は、分岐タンク464で各色毎に3つずつの合計9つの経路に分岐し、9つの素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)内を並行して流れる。上記の9つの素子冷却管が冷却流体の経路上で並列に配置されていることから、各素子冷却管内にほぼ同じ温度の冷却流体が流入する。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。この熱交換の後、冷却流体は合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0146】
本実施形態では、9つの光学素子に対応する上記の9つの素子冷却管が冷却流体の経路上で並列に配置されていることから、分岐タンク464から合流タンク465に至る冷却流体の経路の長さが比較的短く、その経路での圧力損失による流路抵抗が小さい。そのため、各素子冷却管が小径であっても冷却流体の流量を確保しやすく、また各素子のそれぞれに対して比較的低温の冷却流体が供給されるから、各素子が効果的に冷却される。
【0147】
なお、上記の9つの光学素子のうち、発熱が少ない素子に対し、素子冷却管の配設を省略してもよい。例えば、入射側偏光板442あるいは射出側偏光板443が無機偏光板等の光束の吸収の少ない形態である場合には、それらに対して冷却管を省略する構成とすることができる。
また、複数の素子冷却管を冷却流体の経路上ですべて並列に配置する構成に限らず、少なくとも一部を直列に配置する構成としてもよい。この場合、各素子の発熱量に応じてその経路を定めるとよい。
【0148】
図27は、上記配管系統の変形例を示している。なお、図26と共通の構成要素には同一の符号を付している。
図27の例では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対してそれぞれ素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)が配設されるとともに、冷却流体の経路が色毎に直列に設けられている。
【0149】
具体的に、赤色光に関し、分岐タンク464の流出部と射出側偏光板冷却管4633Rの流入部とが接続され、射出側偏光板冷却管4633Rの流出部と液晶パネル冷却管4631Rの流入部とが接続され、液晶パネル冷却管4631Rの流出部と入射側偏光板冷却管4632Rの流入部とが接続され、入射側偏光板冷却管4632Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。すなわち、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633R、液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632Rの順に、それらが直列に配置されている。同様に、緑色光に関して、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633G、液晶パネル冷却管4631G、入射側偏光板冷却管4632Gの順にそれらが直列に配置されている。また、青色光に関しても同様に、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、射出側偏光板冷却管4633B、液晶パネル冷却管4631B、入射側偏光板冷却管4632Bの順にそれらが直列に配置されている。
【0150】
冷却流体は、分岐タンク464で3つの経路に分岐する。そして、各色毎にそれぞれ、最初に射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bを流れ、次に液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bを流れ、最後に入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bを流れる。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。本例では、各色毎に3つの素子冷却管が直列に配置されていることから、冷却流体の流入時の温度(入口温度)は、上流側の射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bで最も低く、液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bで次に低く、下流側の入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bで比較的高くなる。その後、冷却流体は合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0151】
ここで、液晶パネル441R,441G,441Bでは、液晶層による光吸収とともに、駆動基板に形成されたデータ線及び走査線や、対向基板に形成されたブラックマトリックス等で光束が一部吸収される。また、入射側偏光板442では、入射する光束が上流側の偏光変換素子414(図15参照)によって略1種類の偏光光に変換されたものであり、その光束のほとんどが透過し、光束の吸収は比較的少ない。また、射出側偏光板443では、入射する光束が画像情報に基づいて偏光方向が変調されたものであり、通常その光束の吸収量は入射側偏光板442よりも多い。
そして、光学装置44における発熱量は、入射側偏光板、液晶パネル、射出側偏光板、の順に高くなる傾向にある(入射側偏光板 < 液晶パネル < 射出側偏光板)。
【0152】
この図27の例では、各色毎に3つずつの素子冷却管が冷却流体の経路上で直列に配置されていることから、9つの素子冷却管をすべて並列に配置する構成に比べて、配管スペースの縮小化が図られる。
また、比較的発熱量が高い射出側偏光板443に対して最初に冷却流体を供給するので、射出側偏光板443が確実に冷却される。
【0153】
なお、上記の例では発熱量の高い順に上流側から素子冷却管を直列に配置しているがこれに限らない。発熱量の低い順に上流側から素子冷却管を直列に配置してもよく、あるいは別の順であってもよい。配置の順序は、複数の素子の間の発熱量の差、素子冷却管の冷却能力等に応じて定められる。
さらに、各色毎に複数の素子冷却管をすべて直列に配置するのに限らず、次に説明するように一部のみを直列に配置する構成でもよい。
【0154】
図28は、上記配管系統の別の変形例を示している。なお、図26と共通の構成要素には同一の符号を付している。
図28の例では、光学装置44における、3枚の液晶パネル441R,441G,441Bと、3つの入射側偏光板442と、3つの射出側偏光板443とを含む合計9つの光学素子に対してそれぞれ素子冷却管(4631R,4632R,4633R,4631G,4632G,4633G,4631B,4632B,4633B)が配設されるとともに、冷却流体の経路が各色毎に一部で直列に設けられている。
【0155】
具体的に、赤色光に関し、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、液晶パネル冷却管4631R、入射側偏光板冷却管4632Rの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Rが配置されている。すなわち、分岐タンク464の流出部と液晶パネル冷却管4631Rの流入部とが接続され、液晶パネル冷却管4631Rの流出部と入射側偏光板冷却管4632Rの流入部とが接続され、入射側偏光板冷却管4632Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。また、分岐タンク464の流出部と射出側偏光板冷却管4633Rの流入部とが接続され、射出側偏光板冷却管4633Rの流出部と合流タンク465の流入部とが接続されている。同様に、緑色光に関して、分岐タンク464から合流タンク465に向かって、液晶パネル冷却管4631G、入射側偏光板冷却管4632Gの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Gが配置されている。青色光に関しても同様に、液晶パネル冷却管4631B、入射側偏光板冷却管4632Bの順にそれらが直列に配置され、これと並行して射出側偏光板冷却管4633Bが配置されている。
【0156】
冷却流体は、分岐タンク464で各色毎に2つずつの合計6つの経路に分岐する。そして、その冷却流体は、各色毎にそれぞれ、最初に液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bと射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bとに流入する。液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bを流れた冷却流体は、次に入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bを流れ、その後に合流タンク465に向かう。一方、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bを流れた冷却流体は、各色毎にそれぞれ、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bからそのまま合流タンク465に向かう。各素子の周縁に沿って、各素子冷却管内を冷却流体が流れることにより、各素子が冷却されるとともに、各素子冷却管を流れる冷却流体の温度が上昇する。本例では、冷却流体の流入時の温度(入口温度)は、上流側の液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bと射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bとで比較的低く、入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bで比較的高い。また、上記したように射出側偏光板443の発熱量が他の素子に比べて最も高いことから、射出側偏光板冷却管4633R,4633G,4633Bにおける冷却流体の流出時の温度(出口温度)は比較的高く、これと比べて液晶パネル冷却管4631R,4631G,4631Bの出口温度は比較的低い。そのため、この図28の例では、入射側偏光板冷却管4632R,4632G,4632Bの入口温度は、先の図27の例に比べて低くなる。各素子周縁を流れた冷却流体はその後、合流タンク465内で合流し、先に説明したラジエータ466(図17参照)での放熱により冷却される。そして、温度が下がった冷却流体が再び分岐タンク464に供給される。
【0157】
この図28の例では、各色毎に2つの素子冷却管が直列に配置されかつそれと並行して他の1つの素子冷却管が配置されていることから、9つの素子冷却管をすべて並列に配置する構成に比べて、配管スペースの縮小化が図られる。
また、発熱量の高い射出側偏光板443に対する冷却経路と並行して、液晶パネル441R,441G,441B及び入射側偏光板442に対して冷却経路が設けられていることにより、射出側偏光板443の熱影響が他の素子に及ぶのが回避され、液晶パネル441R,441G,441B及び入射側偏光板442が効果的に冷却される。
【0158】
なお、上記の図26、図27、及び図28の例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の冷却構造がそれぞれ同じ構成であるが、色毎に異なる構成であってもよい。例えば、赤色光及び青色光に関しては図27または図28の構成を採用し、緑色光に関しては図26または図28の構成を採用してもよい。あるいは他の組み合わせでもよい。
ここで、緑色光は一般に光強度が比較的強いことからその光学素子も温度上昇しやすい。そのため、緑色光に関しては冷却効果が高い冷却構造を採用し、他の赤色光及び青色光に関しては簡素な構成の冷却構造を採用することにより、配管スペースの縮小化と素子冷却の効率化とが図られる。
【0159】
また、上記の図26、図27、及び図28の例では、分岐タンク464は、冷却流体の経路を、赤、緑、青の3色に対応して少なくとも3つに分岐しているがこれに限定されない。例えば、分岐タンク464は、冷却流体の経路を、赤色光と青色光とに関する系統と、緑色光に関する系統とに分岐する構成であってもよい。この場合、例えば、赤色光と青色光に関する冷却構造を直列に配置し、これと並行して緑色光に関する冷却構造を配置することにより、上記と同様に、配管スペースの縮小化と素子冷却の効率化とを図ることが可能である。
【0160】
上記実施形態では、3つの液晶パネルを用いたプロジェクタの例について説明したが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、2つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、あるいは4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも本発明は適用可能である。
また、透過型の液晶パネルに限らず、反射型の液晶パネルを用いてもよい。
また、光変調素子としては、液晶パネルに限らず、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調素子を用いてもよい。この場合、光束入射側及び光束射出側の偏光板は省略できる。
また、本発明は、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクタ、及びスクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
【0161】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】(A)は冷却ユニットの構成を示す平面図、(B)は(A)に示すA−A断面図。
【図2】板状部材の溝部を拡大して示す部分断面図。
【図3】冷却ユニットの製造方法の一例を示す説明図。
【図4】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図5】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図6】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図7】図3の製造方法の変形例を示す説明図。
【図8】熱伝導材の充填の様子を示す説明図。
【図9】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図10】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図11】板状部材に補溝を形成した例を示す図。
【図12】冷却ユニットの変形例を示す図であり、(A)は模式的な平面図、(B)は(A)に示すD−D断面図。
【図13】位置決め部の形状を設定する様子を示す説明図。
【図14】位置決め部に光学素子を案内するための斜面を形成した例を示す図。
【図15】プロジェクタの概略構成を模式的に示す図。
【図16】プロジェクタ内の一部を上方側から見た斜視図。
【図17】プロジェクタ内における光学装置と液冷ユニットを下方から見た斜視図。
【図18】光学装置の全体構成を示す斜視図。
【図19】分岐タンクの全体構成を示す斜視図。
【図20】合流タンクの全体構成を示す斜視図。
【図21】光学装置における赤色光用のパネル構成を示す部分斜視図。
【図22】液晶パネル保持枠の分解斜視図。
【図23】(A)は液晶パネル保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すA−A断面図。
【図24】(A)は入射側偏光板保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すB−B断面図。
【図25】(A)は射出側偏光板保持枠の組立正面図、(B)は(A)に示すC−C断面図。
【図26】光学装置における冷却流体の流れを示す配管系統図。
【図27】配管系統の変形例を示す図。
【図28】配管系統の別の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0163】
A…照明光軸、1…プロジェクタ、2…外装ケース、3…空冷装置、4…光学ユニット、5…投射レンズ(投射光学系)、10…冷却ユニット、11…光学素子、12,13…板状部材(枠状部材)、14…冷却管、44…光学装置、46…液冷ユニット、122,132…溝部、123,133…対向面、124,134…突起部、125,135,128,138…凹部、127,137…バンク、126,136,129,139…凸部、140…熱伝導材、141,142,151,152…別部材、159…位置決め部、160…補溝411…光源ユニット、416…光源ランプ、441,441R,441G,441B…液晶パネル(光学素子)、442…入射側偏光板(光学素子)、443…射出側偏光板(光学素子)、444…クロスダイクロイックプリズム、445…液晶パネル保持枠、4451,4452…枠状部材、4451B,4452B…溝部、446…入射側偏光板保持枠、4461,4462…枠状部材、4461B,4462B…溝部、447…射出側偏光板保持枠、4471,4472…枠状部材、4471B,4472B…溝部、461…メインタンク、462…流体圧送部、463…素子冷却管、4631R…液晶パネル冷却管、4632R…入射側偏光板冷却管、4633R…射出側偏光板冷却管、464…分岐タンク、465…合流タンク、466…ラジエータ、4662…放熱フィン、467…軸流ファン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却流体が流れる冷却板を備える冷却ユニットを製造する方法であって、
前記冷却板は、冷却流体が流れる冷却管を間に挟んで一対の板状部材が対向配置された構成を有しており、
前記一対の板状部材の各対向面に、前記冷却管を収納する溝部を形成する溝部形成工程と、
前記一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により、前記溝部の内方に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、
前記溝部に前記冷却管を収納しかつ該冷却管を拡径させて、前記一対の板状部材のそれぞれと前記冷却管とを結合させる結合工程と、を有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
鋳造法又は鍛造法を用いて前記溝部を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
鍛造法を用いて前記突起部を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクを形成し、
前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクと、前記溝部に対して前記バンクの外側に配される凹部と、をそれぞれ形成し、
前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部と該開口部の内方に突出する突起部とが形成された別の部材を接合することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部が形成された別の部材を接合するとともに、該別の部材の一面に所定の型を押し当てて該開口部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造方法において、
前記溝部と前記冷却管との隙間に熱伝導材を充填する充填工程を、さらに有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法において、
前記熱伝導材は、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルトのうちの少なくとも1種類を含むことを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の製造方法において、
前記熱伝導材は、前記冷却板の使用温度範囲内において弾性を有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載の製造方法において、
前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記溝部と前記冷却管との隙間に連通しかつ前記熱伝導材が少なくとも一時的に収容される補溝が形成されることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程において、前記溝部の内面及び/又は前記一対の板状部材の少なくとも一方の対向面に、前記補溝を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載の製造方法において、
前記充填工程では、前記熱伝導材を軟化かつ流動させて前記熱伝導材の充填を行うことを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法において、
前記拡径工程における前記冷却管の熱により前記熱伝導材を軟化させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれかの製造方法により製造されたことを特徴とする冷却ユニット。
【請求項17】
光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子を含んで構成される光学装置であって、
少なくとも、前記光変調素子が請求項1から請求項15のいずれかに記載の製造方法により製造された冷却ユニットに保持されることを特徴とする光学装置。
【請求項18】
光源装置と、
請求項17に記載の光学装置と、
前記光学装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
内部に冷却流体が流れる冷却板を備える冷却ユニットを製造する方法であって、
前記冷却板は、冷却流体が流れる冷却管を間に挟んで一対の板状部材が対向配置された構成を有しており、
前記一対の板状部材の各対向面に、前記冷却管を収納する溝部を形成する溝部形成工程と、
前記一対の板状部材の各対向面に対して外力の付加又は所定部材の接合により、前記溝部の内方に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、
前記溝部に前記冷却管を収納しかつ該冷却管を拡径させて、前記一対の板状部材のそれぞれと前記冷却管とを結合させる結合工程と、を有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
鋳造法又は鍛造法を用いて前記溝部を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
鍛造法を用いて前記突起部を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクを形成し、
前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に加えて、前記溝部に隣接するバンクと、前記溝部に対して前記バンクの外側に配される凹部と、をそれぞれ形成し、
前記突起部形成工程では、前記バンクに所定の型を押し当てて前記溝部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部と該開口部の内方に突出する突起部とが形成された別の部材を接合することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法において、
前記突起部形成工程では、前記一対の板状部材の各対向面に、前記溝部に対応する開口部が形成された別の部材を接合するとともに、該別の部材の一面に所定の型を押し当てて該開口部の隣接部位を塑性変形させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造方法において、
前記溝部と前記冷却管との隙間に熱伝導材を充填する充填工程を、さらに有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法において、
前記熱伝導材は、金属材が混入した樹脂材、カーボン材が混入した樹脂材、及びホットメルトのうちの少なくとも1種類を含むことを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の製造方法において、
前記熱伝導材は、前記冷却板の使用温度範囲内において弾性を有することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載の製造方法において、
前記一対の板状部材の少なくとも一方には、前記溝部と前記冷却管との隙間に連通しかつ前記熱伝導材が少なくとも一時的に収容される補溝が形成されることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法において、
前記溝部形成工程において、前記溝部の内面及び/又は前記一対の板状部材の少なくとも一方の対向面に、前記補溝を形成することを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載の製造方法において、
前記充填工程では、前記熱伝導材を軟化かつ流動させて前記熱伝導材の充填を行うことを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法において、
前記拡径工程における前記冷却管の熱により前記熱伝導材を軟化させることを特徴とする冷却ユニットの製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれかの製造方法により製造されたことを特徴とする冷却ユニット。
【請求項17】
光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調素子を含んで構成される光学装置であって、
少なくとも、前記光変調素子が請求項1から請求項15のいずれかに記載の製造方法により製造された冷却ユニットに保持されることを特徴とする光学装置。
【請求項18】
光源装置と、
請求項17に記載の光学装置と、
前記光学装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2006−242414(P2006−242414A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55629(P2005−55629)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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