説明

冷却体構造

【課題】冷却風の流れを90°曲げて流れるようにすることで、冷却体を含む筐体設計の自由度を上げる。
【解決手段】フィン部分が細かな部屋で仕切られた構造のロー付け加工による冷却体2と、フィン部分が解放された構造の押し出し材等による冷却体1を組み合わせた構造の冷却体を組み合わせて用い、フィン部分が解放された構造の押し出し材等による冷却体の冷却物を取りつける面の対面側の解放部を冷却風の入排気口の一部として利用することにより、冷却風の流れ方を90°曲げることを可能とする。入気口と排気口の方向に自由度を与えて冷却体全体を小さくすることが可能となる。筐体全体としての部品配置の適正化が容易となり装置全体として小型軽量化できる。入気口と排気口の方向を対面方向以外にするために、別の風洞部が不要で、余分なスペースを使わずに構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の発熱部品を冷却する冷却体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタに代表されるような電力用半導体や、高性能CPUは動作する際発熱を伴い、単体では冷却しきれない場合は半導体に冷却体を取り付け、放熱する必要がある。半導体に限らず、電力用の抵抗器なども同様に、単体では冷却しきれない場合、抵抗器に冷却体を取り付け放熱して用いる。
【0003】
図5はロー付け加工による冷却体2による冷却体の構造例である。図5に図示されるように立方体の解放された対面方向の2面のみの冷却風が流れる構造になっている。冷却する物を取り付けるベース板面(以下ベースと記載する)に、放熱用のフィンが取り付けられた構造となっている。図5の例では冷却フィンは格子状になっており、アルミの場合押し出し工程だけでは製造できないため、ベースに対し別にフィンを用意し、ロー付け加工等にて一体化させ、冷却体の製造を行うのが一般的となっている。この構造は、単位体積内に構成されるフィンの放熱面積が大きくなるため、冷却体としての熱性能は高性能となる。しかし製造工程が複雑なため、一般的にコストが高くなる傾向にある。
【0004】
図4は押し出し材による冷却体1による冷却体の別の構造例である。立方体の3面が解放された状態となっている。図5と同様ベースに冷却フィンが取り付けられている構造であるが、フィン自体はそれぞれが1枚板の状態でベースに取りついた構造となっている。この構造の場合、アルミの押し出し工程のみでも製作可能である。押し出しの工程のみで、できた物よりも熱性能を求められる場合には、フィンのピッチを細かくする必要があるが、押し出し材のベースに予めフィンを挟み込む溝を設けておき、そこにフィンを圧入するような製造方法もあるため、図5の例よりもコスト的には安価に製造が可能である。しかし、図5の冷却体の例の構造に対し、単位体積あたりのフィンの放熱面積は小さくなるので、熱性能としては劣る方向となる。そのため、図5の冷却体と同等な熱性能を図4の冷却体に求める場合、冷却体の体積は図5の冷却体よりも大きくなってしまう。なお、本発明の説明においては、図4の冷却体のような構造を、押し出し材による冷却体と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−33799公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4、ならびに図5に示す冷却体の一般的な使用方法としては、図4、図5の手前側から奥行き方向側が風洞になるような向きで冷却風を流し、発熱物の冷却を行う。そのため入気と排気が対面方向で固定されてしまう。通常発熱物を単体で使用することは少なく、他の電気回路部品や構造部品と共に、箱構造の筐体の中に収納して用いることが多い。世の中の動向として、小型軽量化を求められる傾向にあるが、入気と排気の方向が固定されてしまうと、発熱物とその冷却体の収納構造に対し自由度が少なくなり、構造設計に制約をもたらす場合がある。入気側に発熱部品が配置されていると入気温度自体が高くなってしまうため冷却性能を十分発揮できない配置となってしまう場合が発生する。また逆に排気側からは温度が高くなった風が排出されるため、排気口側に配置できる部品も制限される。図4の冷却体のみで構成すると冷却風の自由度は確保できるが、熱性能が図5の冷却体より劣るため、冷却体の体積を大きくする必要があり、小型軽量化に反する方向となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、冷却フィンを有する冷却体構造において、該冷却フィンの冷却通風方向に粗い櫛の歯状の断面形状を有し、かつ当該断面形状の粗い櫛の歯元側の一辺側に冷却するものを取り付けるベース板面を形成する第1の冷却体と、該冷却フィンの冷却通風方向に細かな四辺形に仕切られた矩形状の断面形状を有し、かつ当該断面形状の一辺側に冷却するものを取り付けるベース板面を形成する第2の冷却体とを具備し、互いの該ベース板面の形成側が同一平面に隣接配設され、かつ互いの冷却フィンに沿う冷却通風路が連通されるように互いに組み合わせて隣接配設すること特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、請求項1記載のように組み合わせて隣接配設される冷却体構造において、前記第1の冷却体を中央に配置し、連通された冷却通風路が形成されるように前記第2の冷却体を前記第1の冷却体の両側に隣接配設し、前記第1の冷却体の前記ベース板面の対面に該冷却通風路の第1の冷却通風口を形成し、該両側の前記第2の冷却体の該冷却通風路端部に該第1の冷却通風口に対する第2の冷却通風口を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によれば、請求項2記載の冷却通風口を有する冷却体構造において、連通された冷却通風路が形成されるように前記第2の冷却体を前記第1の冷却体の片方側に隣接配設し、他方側には前記第1の冷却体の冷却通風路を隠蔽する板を配設することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明によれば、請求項2、または請求項3記載の冷却通風口を有する冷却体構造において、前記第1の冷却通風口または第2の冷却通風口のいずれかに冷却ファンを配設することを特徴とする。
【0011】
すなわち、図4、ならびに図5に示した冷却体を組み合わせて全体の冷却体とすることで、熱性能の高い冷却体を用いながら、対面方向以外の方向に風洞を構成することができ入気口、排気口の配置の自由度を増やすことが可能となる。
【0012】
また、図1に本発明による冷却体構造の例を示す。図1の例では図4に示した構造の冷却体の両側に図5に示した構造の冷却体を配置した形状となっている。なお図1の俯瞰方向は図4、図5と90°水平方向に回転した方向となっている。中心となっている図4の構造による冷却体のベースの対面が解放されているため、この部分を冷却通風口である入排気口として使用することが可能となっている。この構造にすることで、入気と排気の方向を対面ではなく90°曲げた方向に設定することが可能となる。中心となっている図4の構造による冷却体のベースの対面の解放部を塞ぐと、従来の風洞構造である、入気口と排気口が対面に配置された構造になるので、従来の構造としての使い方も可能となる。
【0013】
さらに、図2は、図1の冷却体構造に冷却ファンを取りつけ、冷却風の流れを示した図ある。中心の開口部に冷却ファンを取り付け、冷却風を取り込み、両側の冷却体の開口部から排出する構造例である。図2の風方向を示す矢印とは逆となるように、冷却ファンの回転方向を中心から排出するような方向に取りつけることで、入気口と排気口の関係を反転させることが可能なのは当然である。図5の構造の冷却体に対し、図4の構造の冷却体は熱性能が劣ることになるが、発熱部品の発熱量と温度耐量により必要な熱性能を有する冷却体のベースに取りつけることにより、適正化することは可能である。
【0014】
そして、図3は本発明の別の実施例である。図4の冷却体と図5の冷却体を合わせ、図4の冷却体のベースと垂直方向になる解放面の片側を塞いだ構成となっている。そのため、入排気口は図5の冷却体の解放部と図4も冷却体のベース対面の解放部に限定される構造となるが、入気口と排気口を対面方向ではなく90°曲がった方向に構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
従来の冷却体の構造では、入気口と排気口が対面方向のみとなり、筐体内への発熱物、冷却体、およびその他の構成部品の配置構造に対し制約を与えていたが、本発明の冷却体構造とすることで、入気口と排気口の方向に自由度を与えることが可能となる。熱性能の高い図5の冷却体を用いているので、図4の冷却体のみで構成する場合よりも冷却体全体を小さくすることが可能となる。そのため筐体全体としての部品配置の適正化が容易となり装置全体として小型軽量化してものを提供できるようになる。また、入気口と排気口の方向を対面方向以外にするために、別の風洞部を追加する必要がないので、余分なスペースを使わずに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】冷却体構造の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】冷却体構造の使用方法を示した説明図である。
【図3】冷却体構造の別の実施方法を示した説明図である。(実施例2)
【図4】押し出し材による冷却体の構造例を示す説明図である。
【図5】ロー付け加工による冷却体の構造例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ロー付け加工による冷却体と押し出し材等による冷却体を組み合わせて全体の冷却体構成を行うことにより、別の風洞部等の追加をすることなく、最小の部品点数で、熱性能の高い冷却体を用いながら、入気口および排気口の配置に自由度を増やすことを実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明装置の1実施例の構造図であって、1、2は、図4ならびに図5と同様である。図4の冷却体の両側にベース面を同一方向にして図5の冷却体を配置した構成となっている。
【0019】
図5の冷却体はベース面と反対の面は解放されていない構造のため冷却風はフィンの解放部方向にしか通すことができない。しかし図4の冷却体はベース面と反対の面が解放されているので、この部分を入気口または排気口として利用することが可能である。図2により、図1の冷却体構造にファンの配置した例が説明されている。
【実施例2】
【0020】
図3は、本発明の別の実施例の構造図である。1、2は、図4ならびに図5と同様である。図4の冷却体と図5の冷却体を各々1個ずつ用い、ベース面を同一に配置し、図4の冷却体のベースと垂直方向になる解放面の片側をカバー4にて塞いだ構成となっている。この例においても説明図は記載していないが、図4の冷却体のベース面の反対の面にファンを取り付け、入気口または排気口として利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
半導体等を冷却する冷却体を収納する筐体において熱性能の高い冷却体を用いながら、冷却風の入気口、排気口の配置方向に自由度が増えるため、該筐体の小型軽量化に寄与する冷却体構造を供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 押し出し材による冷却体
2 ロー付け加工による冷却体
3 ファン
4 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却フィンを有する冷却体構造において、該冷却フィンの冷却通風方向に粗い櫛の歯状の断面形状を有し、かつ当該断面形状の粗い櫛の歯元側の一辺側に冷却するものを取り付けるベース板面を形成する第1の冷却体と、該冷却フィンの冷却通風方向に細かな四辺形に仕切られた矩形状の断面形状を有し、かつ当該断面形状の一辺側に冷却するものを取り付けるベース板面を形成する第2の冷却体とを具備し、互いの該ベース板面の形成側が同一平面に隣接配設され、かつ互いの前記冷却フィンに沿う冷却通風路が連通されるように互いに組み合わせて隣接配設すること特徴とする冷却体構造。

【請求項2】
請求項1記載のように組み合わせて隣接配設される冷却体構造において、前記第1の冷却体を中央に配置し、連通された冷却通風路が形成されるように前記第2の冷却体を前記第1の冷却体の両側に隣接配設し、前記第1の冷却体の前記ベース板面の対面に該連通された冷却通風路の第1の冷却通風口を形成し、前記第2の冷却体の該連通された冷却通風路の各々の端部に該第1の冷却通風口に対する第2の冷却通風口を形成することを特徴とする冷却体構造。

【請求項3】
請求項2記載の冷却通風口を有する冷却体構造において、連通された冷却通風路が形成されるように前記第2の冷却体を前記第1の冷却体の片方側に隣接配設し、他方側には前記第1の冷却体の冷却通風路を隠蔽する板を配設することを特徴とする冷却体構造。

【請求項4】
請求項2、または請求項3記載の冷却通風口を有する冷却体構造において、前記第1の冷却通風口または第2の冷却通風口のいずれかに冷却ファンを配設することを特徴とする冷却体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38232(P2013−38232A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173199(P2011−173199)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】