冷却装置、冷却装置を備えた電子機器及び液晶プロジェクタ
【課題】小型で冷却効率の高い冷却装置を実現する。
【解決手段】冷却風を発生させる冷却風発生手段130と、冷却風発生手段130によって発生された冷却風を空間内へ流入させる供給手段131aと、空間を通過した冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段132と、を有する。
【解決手段】冷却風を発生させる冷却風発生手段130と、冷却風発生手段130によって発生された冷却風を空間内へ流入させる供給手段131aと、空間を通過した冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段132と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器内にある発熱体の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器内の発熱体を冷却するための手段が多数開発され、そのうちのいくつかは実用化されている。それら冷却手段の一つである空冷方式の冷却手段は、簡易かつ安価な冷却手段として、多くの電子機器に採用されている。例えば、業務用及び一般家庭用に広く普及している投写型表示装置(プロジェクタ)においても、空冷方式、特に強制空冷方式の冷却手段が採用されている。
【0003】
投写型表示装置は、画像表示素子上に生成された画像をスクリーンに拡大投影する表示装置である。かかる投写型表示装置のうち、画像表示素子に液晶パネルを用いた液晶プロジェクタは、次のような構成と動作によってスクリーン上に画像を拡大投影する。
【0004】
液晶プロジェクタは、光源を備えている。該光源から発せられた白色光は、リフレクタで反射され、PBS(Polarization Beam Splitter:偏光ビームスプリッタ)により偏光変換された後に、R/G/Bの各色光に分離される。分離された各色光は、各色ごとに用意された液晶パネルに導かれ、対応する液晶パネルに入射する。液晶パネルに入射した各色光は、液晶パネルによってビデオ信号に従った光変調を受ける。光変調された各色光は、色合成プリズムにより合成され、投写光学系を介してスクリーン上に投写される。
【0005】
ここで、TN(Twisted Nematic)モードで動作する液晶パネルは、特定の直線偏光成分しか扱えない。そこで、各液晶パネルの入射側には偏光板が配置され、液晶パネルに入射する色光の偏光方向が所定方向に統一される(ここでは、S偏光に統一されるものとする。)。さらに、液晶パネルの出射側にも偏光板が配置され、液晶パネルで光変調を受けた光のS偏光成分が該偏光板によってカットされ、P偏光成分のみが抽出される。ここで、液晶パネル及びその前後に配置される偏光板は、一体化されてユニット(液晶ユニット)を形成しているのが通常である。また、以下の説明では、液晶パネルの入射側に配置された偏光板を「入射側偏光板」、出射側に配置された偏光板を「出射側偏光板」と呼ぶ場合がある。
【0006】
このように、液晶パネルの前後に、光軸に沿って配置される入射側偏光板及び出射側偏光板は、各々1軸方向の偏光光のみを通過させ、他の偏光光を遮蔽する。入射側偏光板及び出射側偏光板によって遮蔽された光は熱に変換される。すなわち、入射側偏光板及び出射側偏光板は発熱する。また、液晶パネルにおいても、各画素境界にあるブラックマトリクスによって入射光の一部が遮蔽され、遮蔽された光は熱に変換される。従って、液晶パネルも入射側偏光板及び出射側偏光板と同様に発熱する。換言すれば、液晶ユニットは、プロジェクタという電子機器内の発熱体である。
【0007】
一方で、液晶パネルや偏光板には有機材料が用いられることが多い。従って、長時間にわたって波長の短い光が照射されたり、高温に曝されたりすると、液晶パネルの配向膜がダメージを受けたり、偏光板の偏光選択特性が低下したりするなど、その機能が著しく損なわれてしまう。そこで、液晶プロジェクタには、液晶ユニットを冷却するための冷却手段が設けられている。以下、液晶プロジェクタに設けられている冷却手段について詳しく説明する。
【0008】
図19(a)は、一般的な液晶プロジェクタ1の外観斜視図であり、同図(b)は内部構造を示す斜視図である。また、図20は、図19(b)に示す内部構造を模式的に示した平面図である。
【0009】
主に図20に示すように、液晶プロジェクタ1の筐体内には、液晶ユニット2を強制空冷するための冷却ファン3と空冷ダクト4とが設けられている。また、光源5を強制冷却するための冷却ファン7が設けられている。さらに、筐体内の空気を強制的に排気して電源ユニット6等を冷却するための排気ファン8も設けられている。
【0010】
図21を参照して、冷却ファン3及び空冷ダクト4による液晶ユニット2の冷却作用について具体的に説明する。図21(a)は、冷却ファン3及び空冷ダクト4の分解斜視図、同図(b)は冷却風の流れを示す模式図である。
【0011】
図21(a)(b)に示すように、入射側偏光板10、液晶パネル11及び出射側偏光板12から構成される液晶ユニット2は、R/G/Bの色光ごとに設けられており、それら液晶ユニット群の下方に、空冷ダクト4の吐出口15が配置されている。
【0012】
主に図21(b)に示すように、冷却ファン3によって生み出された冷却風14は、空冷ダクト4内を通って吐出口15から吹き出す。吐出口15から吹き出した冷却風14は、各液晶ユニット2の下方から各液晶ユニット2に供給される。各液晶ユニット2に供給された冷却風14は、各ユニット2の入射側偏光板10、液晶パネル11及び出射側偏光板12の間の空間を通過して上方に抜ける。
【0013】
ここで、近年のプロジェクタの利用形態の多様化に応じて、小型化・高輝度化の要求が高まっている。このような要求に応えるために、ランプ出力の向上と表示デバイス(液晶ユニット)の小型化が進められている。その結果、液晶ユニットへ入射する光の光束密度が増大し、液晶ユニットを構成する液晶パネル、入射側偏光板及び出射側偏光板の熱負荷は上昇の一途をたどっている。
【0014】
一方で、環境負荷の低減とランニングコストの削減を目的に、プロジェクタの長寿命化の要求も次第に高まりつつある。ランプ交換部品を除けば、液晶プロジェクタの寿命は、主に液晶ユニットの寿命に依存する。液晶ユニットの冷却手段の冷却能力を高めて液晶ユニットの寿命を延ばすことができれば、液晶プロジェクタ自体の寿命を延ばすことができる。
【0015】
一般に、液晶ユニットの冷却手段として空冷方式を採用する場合、その冷却能力を高めるためには、冷却ファンの送風量を増加させて、冷却風の風速を上げる必要がある。しかしながら、冷却ファンの回転数を上昇させて送風量を増加させると、冷却ファンの動作騒音も増加する。また、冷却ファンを大径化して送風量を増加させると、装置が大型化してしまう。
【0016】
また、冷却風が冷却対象に沿って平行に流れる層流である場合、平均熱伝達率は風速の平方根に比例し、冷却対象の温度上昇は風速の平方根に反比例する。従って、冷却対象の温度がある程度まで低下すると、風速増加に対する冷却対象の温度低下の感度が鈍くなる。
【0017】
図22に、0.8”サイズの液晶パネル(5000lm‐25℃環境)の動作温度の風速依存曲線の一例を示す。図22より、液晶パネル動作温度を70℃から60℃まで下げる場合には、冷却風の風速を4.5m/sから8.0m/sへ増速させるだけでよいが、60℃から50℃まで下げる場合には、冷却風の風速を8.0m/sから18.0m/sまで増速させなければならないことがわかる。
【0018】
従って、液晶ユニットの長寿命化を図るために、液晶ユニットの動作温度(特に液晶パネルの動作温度)のさらなる低減を目指す場合、冷却風の風速を極めて高速化しなければならない。しかし、冷却風の風速を高速化すると、冷却ファンの動作騒音の増大や装置の大型化を招く虞があることは上述のとおりである。さらには、冷却ファンの動作騒音の増大や装置の大型化を許容したとしても、冷却能力の向上には限界(空冷限界)がある。
【0019】
さらに、液晶パネルに関しては、画質の観点から冷却に対する別の要求も存在する。液晶パネルにおける光変調では、入力信号に対する光変調効果の温度依存性が高い。よって、パネル面に温度ムラが生じると、輝度ムラや色ムラが生じて画質が悪化する。従って、液晶パネルの冷却に関しては、パネル面に生じる温度勾配や温度ムラを極力小さくする冷却方法が望まれる。
【0020】
これまでは、プロジェクタ、特に液晶プロジェクタを例にとって電子機器の冷却に関して説明してきた。しかし、プロジェクタ以外にも発熱体を持った電子機器は多数存在しており、当該電子機器の性能向上や使用態様の多様化に伴って効率的な冷却手段が求められている。例えば、近年のパーソナルコンピュータは高性能な中央演算処理装置を内蔵しており、その中央演算処理装置は、その動作中に熱を発する。一方、中央演算処理装置の安定した動作を確保するためには、該処理装置を冷却して動作温度を所定範囲内に維持する必要がある。
【0021】
以上のような状況の下、電子機器の発熱体を高効率で冷却するための手段の開発が急務となっている。そこで、特許文献1には、液晶パネルへ送風される冷却風の向きを調整して、液晶パネルの冷却効率を改善することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図23に示すように、色合成プリズム16の下部に風向板17が設けられ、該風向板17によって冷却ファン3から送り出された冷却風14の向き制御する構造が開示されている。特許文献1によれば、風向板17によって冷却風14の向きが最適化される、とのことである。
【0022】
特許文献2には、液晶パネルを冷却するための冷却風を無駄なく液晶パネルに供給することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図24に示すように、液晶パネル11を保持する保持枠18であって、液晶パネル11の下方に設けられたダクト吐出口20から送り出される冷却風を液晶パネル11に案内する突片部19を備えた保持枠18が開示されている。特許文献2によれば、ダクト吐出口20から送り出された冷却風が突片部19によって略漏れなく液晶パネル11に導かれるので、冷却効率が向上する、とのことである。
【0023】
特許文献3には、液晶パネルを保持している保持枠と偏光板との間隔が狭い場合においても、十分な通風面積を確保することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図25に示すように、液晶パネル11の保持枠18の通風路に切欠部21を設けて、液晶パネル11と出射側偏光板12との間の通風路幅(図中:X部とY部)を変更した構造が開示されている。特許文献3によれば、上記構造によって送風速度が向上する、とのことである。
【0024】
特許文献4には、液晶パネルの入射側面と出射側面で送風方向を逆にして、パネル温度ムラの緩和を図ることを目的とした構造が開示されている。具体的には、図26に示すように、色合成プリズム16の周囲に配置された液晶パネル11と偏光板10との間にU字溝形状の導風路22を設けて冷却風をUターンさせることにより、液晶パネル11の入射側面と出射側面で送風の方向を逆向きにする構造が開示されている。また、特許文献4には、図27に示すように、液晶パネル11の上下に一対の冷却ファン3a、3bを設け、液晶パネル11を間に挟んで、出射側は下方から上方へ、入射側は上方から下方へ送風を通風させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平11−295814号公報
【特許文献2】特開2001−318361号公報
【特許文献3】特開2004−61894号公報
【特許文献4】特開2000−124649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
特許文献1に開示されている構造によれば、液晶パネルの出射面に当たる冷却風の量を増加させることはできる。しかし、液晶パネルの出射面と対向する出射側偏光板に当たる冷却風の量は逆に抑制され、出射側偏光板の冷却効率は悪化してしまう。
【0027】
特許文献2に開示されているように、液晶パネルの保持枠に設けた突片部によって冷却風の漏れを抑制すると、通風抵抗の増加による風速低下や下流域(液晶パネル上部)における排熱の澱み(排気の抜けの悪化)によるパネル温度の上昇を招く。よって、冷却効率の改善は相殺され、全体として十分な効果を得ることは難しい。
【0028】
特許文献3に開示されているように、通風路の下流側に切欠部を設けて通風面積を拡大したとしても、被冷却部(液晶パネルや偏光板の光透過面)の風速は低下するため、冷却効率の向上は望めない。また、通風路の流入側端部の間隔(各ユニットの間の間隔)が狭い場合、そこが通風抵抗となって通風量が低下してしまうので、やはり冷却効率の向上は望めない。
【0029】
特許文献4に開示されているように、U字溝形状の通風路によって冷却風を折り返すと、通風面積は半分になり、通風距離は2倍になる。よって、通風抵抗が増大し、通風量が抑制される。また、U字溝形状の通風路の前半においてパネル出射側面を冷却した冷却風の温度は、熱交換によって上昇しており、冷却能力が著しく低下している。従って、そのような冷却風をUターンさせてパネル入射側面に導いても、高い冷却効率は期待できない。
【0030】
また、1対の冷却ファンによって、液晶パネルの入射側面と出射側面に逆向きに流れる冷却風を供給した場合(図27の場合)、パネル面の発熱分布(冷却作用)が入射側と出射側とで上下逆になる。従って、図27に示す構造は、パネル内部の均温化を図るといった観点からは一定の効果が期待できる。しかし、発熱面に平行流を当てて冷却するという点では従来の冷却方法を踏襲しており、ファン1つ当たりの放熱負荷は減る一方で、各通風面積が半分になっているため、通風抵抗が増大し、十分な冷却効率は得られない。
【0031】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記課題の少なくとも一つを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
偏光板や液晶パネル、電子部品が実装された基板などの平坦な発熱体(発熱平板)の強制空冷において、熱伝達率を改善して伝熱の促進を図る方法には、薄膜化法と置換法の2つのアプローチが考えられる。
【0033】
薄膜化法は、発熱体表面に形成される温度境界層を薄く(薄膜化)することで熱伝達率を改善する方法である。この場合、温度境界層の厚さは主流方向速度(平板に沿った流速)の平方根に逆比例する。すなわち、先に述べたような、風速を上げて発熱体の温度を下げるというやり方は、薄膜化法に基づくものである。
【0034】
置換法は、固体表面近傍の流体と、少し離れた位置にある流体との交換(温度置換)を助長することで熱伝達率を改善する方法であり、非定常的な渦の生成/消失を伴う乱流を利用して伝熱の促進を図る。
【0035】
本発明は、上記2つのアプローチのうち置換法に基づくアプローチによって上記目的を達成しようとするものである。本発明は、一つの発生源から送り出され、発熱体が存在する空間を通過した冷却風の向きを流入方向と異なる向きに転向させる手段を備えていることを特徴とする。具体的には、冷却風を発生させる冷却風発生手段と、前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記空間内へ流入させる供給手段と、前記空間を通過した前記冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを前記空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、を有する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、小型でありながら冷却効率の高い冷却装置及びそれを備えた電子機器を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】衝突噴流冷却の概念図である。
【図2】液晶ユニットの構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】実施形態1に係る冷却装置の冷却原理を示す説明図である。
【図4】実施形態2に係る冷却装置の冷却原理を示す説明図である。
【図5】(a)は実施例1に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図6】(a)(b)は実施例1に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの液晶ユニット及びその近傍の斜視図、(c)は導風板の斜視図である。
【図7】実施例2に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図8】図7に示す液晶ユニット及び導風板の斜視図である。
【図9】実施例3に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図10】実施例4に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図11】実施例5に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図12】実施例6に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図13】実施例7に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図14】実施例8に係る冷却装置の導風板の斜視図である。
【図15】(a)は実施例8に係る冷却装置を用いた場合の冷却風の流れを示す断面図、(b)は導風板の変形例を示す断面図である。
【図16】(a)は実施例9に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図17】(a)は実施例10に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図18】(a)(b)は実施例10に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの液晶ユニット及びその近傍の斜視図、(c)は遮風板の斜視図である。
【図19】一般的な液晶プロジェクタの外観及び内部構造を示す斜視図である。
【図20】一般的な液晶プロジェクタの内部構造を示す模式図である。
【図21】(a)は図20に示す冷却ファン及び空冷ダクトの分解図、(b)は従来の冷却装置における冷却風の流れを示す模式図である。
【図22】液晶パネルに供給される冷却風の速度と動作温度との関係を示す図である。
【図23】特許文献1に開示されている構造を示す模式図である。
【図24】特許文献2に開示されている構造を示す模式図である。
【図25】特許文献3に開示されている構造を示す模式図である。
【図26】特許文献4に開示されている構造の一つを示す模式図である。
【図27】特許文献4に開示されている構造の他の一つを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施形態1)
以下、本発明の冷却装置の実施形態の一例について、冷却対象が液晶プロジェクタに内蔵された液晶ユニットである場合を例にとって説明する。
【0039】
本実施形態に係る冷却装置は、衝突噴流を利用して冷却対象を冷却する。ここで、衝突噴流冷却とは、図1に示すように、ノズルAから出射される噴流Bを発熱平板Cに対して垂直に当てて、発熱面を冷却する方法である。衝突噴流冷却では、
(1)噴流の衝突による発熱面の温度境界層の破壊(剥離)
(2)衝突部で発生する旋回流による流体交換(温度置換)
(3)コアンダ効果による噴流の壁面滑り
といったプロセスを経て放熱が行われる。従って、発熱平板に沿って冷却風を送風する冷却方法に比べて、5倍〜10倍の冷却性能を発揮する。尚、上記コアンダ効果とは、流体中に物体を置くと、流体と固体壁との間の圧力が低下し、流れが壁面に吸い寄せられ、その物体に沿って流れの向きが変わる流体の性質をいう。
【0040】
ところで、上記のような衝突噴流冷却を面内方向が同じになるように並設された複数の発熱平板に対して適用する場合、噴流の衝突方法が課題となる。例えば、図2(a)(b)に示すように、入射側偏光板21、液晶パネル22及び出射側偏光板23が光軸に沿って並設された液晶ユニット20の場合、偏光板21、23及び液晶パネル22の各発熱面は光透過面24とほぼ一致する。従って、各色光の透過を阻害しないように、発熱面への垂直空気流れを生成する必要がある。
【0041】
そこで本実施形態に係る冷却装置には、図3(a)(b)に示すように、一つの冷却ファン(不図示)から送り出された冷却風に基づいて、液晶ユニット20の面内方向に沿って流れる第一の冷却風31と、液晶ユニット20の面内方向に沿って第一の冷却風31とは異なる方向に流れる第二の冷却風32とを生成する手段を備えている。かかる手段によって生成された2つの冷却風31、32は、液晶パネル22と入射側偏光板21との間の空間(入射側空間)内及び液晶パネル22と出射側偏光板23との間の空間(出射側空間)内で衝突する。すると、対向する発熱面へ垂直に向かう旋回流が発生して垂直噴流が形成され、熱伝達率が増大して伝熱促進が図られる。
【0042】
次に、本発明の冷却装置の実施形態の他例について、冷却対象が液晶ユニットである場合を例にとって説明する。尚、本実施形態に係る冷却装置の冷却対象である液晶ユニットの構造は、実施形態1に係る冷却装置の冷却対象である液晶ユニット20(図2)と同一である。よって、液晶ユニットに関しては同一の符号を用いる。
【0043】
本実施形態に係る冷却装置は、図4に示すように、一つの冷却ファン(不図示)から送り出され、入射側空間および出射側空間を通過した冷却風40の風向を流入方向と異なる方向に強制的に転向させる手段を備えている。かかる手段により冷却風40の風向を転向させることによって、転回位置近傍において速度ベクトルの変化量に応じた旋回流が生成され、液晶パネル22と偏光板との間の各空間における乱流効果が高まり伝熱が促進される。また、コアンダ効果による壁面滑りを利用した冷却風の排気も行われる。
【0044】
以下、実施形態1及び実施形態2に係る冷却装置について、いくつかの実施例を挙げてより詳細に説明する。尚、以下の実施例1〜8は実施形態1に係る冷却装置の実施例であり、実施例9及び10は実施形態2に係る冷却装置の実施例である。尚、全ての実施例において、冷却対象は、液晶プロジェクタが備える3つの液晶ユニットであり、各液晶ユニットの構造は図2に示したとおりである。但し、以下の説明中で参照する図面には、便宜上一つの液晶ユニットのみが図示されている。
【0045】
(実施例1)
図5、図6は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式図である。具体的には、図5(a)は冷却装置及びその近傍の構造を示す断面図であり、図5(b)は同図(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを示す断面図である。また、図6(a)(b)は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図であり、(c)は導風板の斜視図である。
【0046】
主に図5(a)、図6(a)に示されているように、本例の冷却装置は、冷却ファン50と、空冷ダクト51と、導風板52とを有する。冷却ファン50及び空冷ダクト51は、図示されている液晶ユニット20を含む液晶ユニット群よりも下方に配置されており、導風板52は液晶ユニット20を含む各液晶ユニットの側方に配置されている。また、空冷ダクト51には、液晶ユニット群の下方において開口する2つの吐出口51a、51bが設けられている。さらに、導風板52には、対応する液晶ユニットに近接する方向に傾斜する斜面52aが設けられている。
【0047】
冷却ファン50によって生み出された冷却風53の一部は、空冷ダクト51の吐出口51aから液晶ユニット20を含む各液晶ユニットに向けて吐出される。一方、冷却ファン50によって生み出された冷却風53の他の一部は、空冷ダクト51の吐出口51bから導風板52を含む各液晶ユニットに対応する導風板に向けて吐出される。すなわち、冷却ファン50によって生み出された冷却風53は、空冷ダクト51によって、各液晶ユニットに向けて吐出される第一の冷却風53aと、各導風板に向けて吐出される第二の冷却風53bとに分岐される。換言すれば、空冷ダクト51は、冷却ファン50によって生み出された冷却風53を第一の冷却風53aと第二の冷却風53bとに分岐させる分岐手段として機能する。
【0048】
次いで、図5(b)、(c)を参照して、本例の冷却装置による冷却作用について説明する。ここでは、液晶ユニット20を例にとって冷却作用について説明するが、他の液晶ユニットに対する冷却作用も同様である。
【0049】
上述のようにして分岐された第一の冷却風53aは、入射側空間Aおよび出射側空間Bの下端の開口面(第一の開口面)から各空間A、Bへ流入し、同空間A、B内を図5(b)(c)の紙面下方から上方に向かって流れる。一方、第二の冷却風53bは、入射側空間Aおよび出射側空間Bの側方の開口面(第二の開口面)と対向する位置に配置されている導風板52(特に、導風板52に設けられている斜面52a)によって風向が90度転換される。風向が転向された第二の冷却風53bは、第二の開口面から入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入する。すなわち、導風板52は、第二の冷却風53bの風向を変えて、液晶パネルの表面と平行であって、かつ、第一の冷却風53aと異なる向きで入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入させる転向手段として機能する。
【0050】
導風板52の作用によって入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入した第二の冷却風53bは、それら空間A、B内を図5(b)の紙面右側から左側に向かって流れる。尚、導風板52に設けられている斜面52aの両側には、第二の冷却風53bの漏洩を防止するために、一対の側壁52bが対向するように設けられており、導風板52は全体としてフード状の形態を有する(図6(c))。
【0051】
以上のようにして、入射側空間Aおよび出射側空間Bに、互いに直交する方向から流入した第一の冷却風53aと第二の冷却風53bとは、各空間の略中央位置において直交状態で衝突する。このとき、互いに直交する方向から衝突した第一の冷却風53aと第二の冷却風53bは、その衝突位置において、入射側偏光板21、液晶パネル22および出射側偏光板23のそれぞれの光透過面24(図2)へ垂直に向かう旋回流を発生させる(図5(c)参照)。その結果、発熱面(光透過面24)への垂直噴流が形成され、発熱体近傍の熱伝達率が大幅に増加する。従って、従来の平行平板流れによる冷却方法に比べて、放熱効率が大幅に向上する。
【0052】
(実施例2)
図7(a)は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図、同図(b)は横断面図である。また、図8は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図である。
【0053】
本例の冷却装置の基本構成は、実施例1の冷却装置と同一である。相違点の一つは、各液晶ユニットの左右にそれぞれ導風板が設けられている点である。相違点の他の一つは、導風板の増設に伴って、空冷ダクトの吐出口が増設されている点である。以下、具体的に説明する。
【0054】
図7(a)に示されているように、液晶ユニット20の縦中心軸Y-Yを対称軸として、一対の導風板62a、62bが線対称に配置されている。各導風板62a、62bの形状や寸法は、実施例1で説明した導風板52と同一である。具体的には、図8に示すように、導風板62a、62bは、流入した冷却風の風向をスムーズに転向させるための斜面と、冷却風の漏洩を防止するための側壁とを備えたフード状の形態を有する。また、導風板62a、62bの幅(W)は、液晶ユニット20の光軸方向の長さ(L)と同程度であり、かつ、一定である。尚、図8では、一方の導風板62bの図示は省略されている。以下の説明では、図7(a)において、液晶ユニット20の右側(上記第二の開口面と対向する位置)に配置されている導風板62aを「右側導風板62a」、左側(上記第二の開口面の反対側の第三の開口面と対向する位置)に配置されている導風板62bを「左側導風板62b」と呼んで区別する。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0055】
空冷ダクト61には、不図示の冷却ファンによって生み出された冷却風を3つに分岐するために、3つの吐出口61a、61b、61cが設けられている。不図示の冷却ファンによって生み出された冷却風の一部は、吐出口61aから液晶ユニット20に向けて吐出される。また、冷却風の他の一部は、吐出口61bから右側導風板62aに向けて吐出される。また、冷却風の他の一部は、吐出口61cから左側導風板62bに向けて吐出される。すなわち、冷却ファンによって生み出された冷却風は、液晶ユニット20に向けて吐出される第一の冷却風63aと、右側導風板62aに向けて吐出される第二の冷却風63bと、左側導風板62bに向けて吐出される第三の冷却風63cとに分岐される。
【0056】
図7(a)(b)に示すように、第一の冷却風63aと、右側導風板62aによって風向が転向させられた第二の冷却風63bとが、入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において直交状態で衝突する。また、第一の冷却風63aと、左側導風板62bによって風向が転向された第三の冷却風63cとが、やはり入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において直交状態で衝突する。さらに、第二の冷却風63bと第三の冷却風63cとが、入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において対向状態で衝突する。
【0057】
相互に直交或いは対向する方向から衝突した第一〜第三の冷却風63a、63b、63cは、その衝突位置において、入・出射側の偏光板21、23や液晶パネル22の光透過面へ垂直に向かう旋回流を発生させ、発熱面(光透過面)への垂直噴流を形成する。
【0058】
本実施例の冷却装置では、3方向からの冷却風を衝突させるので、実施例1の冷却装置に比べて、より乱流性の高い旋回流が形成され、冷却効率がさらに改善される。
【0059】
(実施例3)
図9は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2の冷却装置と同一である。本例の冷却装置が実施例2の冷却装置と異なるのは、図7(a)(b)に示す左右の導風板62a、62bの一方を液晶ユニット20のパネル横中心軸X-Xを基準として異なる高さに配置した点である。本例では、図7(a)(b)に示す左側導風板62bに相当する左側導風板72bを下方へ、右側導風板62aに相当する右側導風板72aを上方へ変位させた。さらに、具体的には、左側導風板72bは、その上端がパネル横中心軸X‐Xと一致する位置まで下方へ変位させた。一方、右側導風板72aは、斜面下の垂直部分をパネル横中心軸X‐Xが横切る位置まで上方へ変位させた。
【0060】
このとき、空冷ダクト71の第一の吐出口71aから吐出されて液晶ユニット20の入射側空間内および出射側空間内をその下方から上方へ流れる第一の冷却風73aと、第三の吐出口71cから吐出され、左側導風板72bの作用によって入射側空間内および出射側空間内をその左側から右側へ流れる第三の冷却風73cとは、パネル横中心軸X-Xよりも下方の位置において直交状態で衝突する。この結果、第一の冷却風73aと第三の冷却風73cとの衝突により生成された合成流74と、第二の吐出口71bから吐出され、右側導風板72aの作用によって入射側空間内および出射側空間内をその右側から左側へ流れる第二の冷却風73bとが、パネル横中心軸X-Xよりも上方の位置において鈍角で衝突する。
【0061】
この場合においても、第一の冷却風73aと第三の冷却風73cとの衝突位置、およびその合成流74と第二の冷却風73bとの衝突位置、のそれぞれにおいて、入・出射側の偏光板や液晶パネルの光透過面へ垂直に向かう旋回流が発生し、発熱面(光透過面)への垂直噴流が形成される。
【0062】
本例の冷却装置は、大型(≧0.8”)の液晶パネルや左右に広いワイド液晶パネル(16:9)を採用する液晶ユニットにおける温度ムラの解消に有効である。具体的には、液晶ユニットの入射側空間内および出射側空間内のパネル横中心軸X‐Xを挟んで左下と右上の2箇所において冷却風が衝突する。従って、実施例1の冷却装置に比べて、より広範囲において乱流性の高い旋回流が形成され、放熱能力が向上するとともに、温度分布が均一されて色ムラが解消され、画像品質が改善される。
【0063】
尚、左右の導風板72a、72bのパネル横中心軸X‐Xに対する変位方向や変位量は上記作用が得られる範囲内で任意に変更することができる。
【0064】
(実施例4)
図10は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2の冷却装置と同一である。本例の冷却装置が実施例2の冷却装置と異なるのは、実施例2の冷却装置を構成する空冷ダクト61には、3つの吐出口61a、61b、61c(図7(a))が設けられているのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト81には、吐出口61b、61cに相当する吐出口81b、81cのみが設けられている点である。換言すれば、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト81では、実施例2の冷却装置を構成する空冷ダクト61の吐出口61aが塞がれている。
【0065】
本例の冷却装置を用いた場合、空冷ダクト81の吐出口81bから吐出され、右側導風板82aにより風向が転向された第一の冷却風83aは図10の紙面右側から左側へ、吐出口81cから吐出され、左側導風板82bにより風向が転向された第二の冷却風83bは左側から右側へ流れ、各空間の略中央において斜向状態で衝突する。この結果、各空間内に液晶ユニット20の発熱面(光透過面)へ垂直に向かう旋回流が発生し、光透過面への垂直噴流が形成される。
【0066】
本例の冷却装置では、一つ冷却ファンによって生み出された冷却風を2系統に分岐して十分な風量と風速を確保しつつ、それを概略180度の対向方向から発熱面上で衝突させることにより、噴流の乱流生成効果をより高め、冷却能力の向上を図っている。
【0067】
尚、本例の冷却装置が備える導風板82a、82bは、これまで説明した実施例における斜面に相当する面を曲面としてある。もっとも、かかる相違は本発明における本質的相違点ではない。導風板の形状は、冷却風の方向を所定の方向へ転向させることができる形状であればよく、特定の形状に限定されるものではないことは、これまでの説明及び今後の説明によって理解できるはずである。
【0068】
(実施例5)
図11は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例3の冷却装置と同一である。異なるのは、実施例3の冷却装置を構成する空冷ダクト71には、3つの吐出口71a、71b、71c(図9)が設けられているのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト91には、吐出口71b、71cに相当する吐出口91b、91cのみが設けられている点である。換言すれば、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト91では、実施例3の冷却装置を構成する空冷ダクト71の吐出口71aが塞がれている。
【0069】
本例の冷却装置では、液晶ユニット20の入射側空間および出射側空間において、右側導風板92aにより風向が転向された第一の冷却風93aが図11の紙面右下から左上へ、左側導風板92bにより風向が転向された第二の冷却風93bが左下から右上へ流れる。さらに、右側導風板92aと左側導風板92bの高さを異ならせてあるので(本例では、パネル横中心軸X‐Xを基準として、右側導風板92aが左側導風板92bよりも高い位置に設けられている。)、入射側空間および出射側空間内を左下から右上へ流れる第二の冷却風93bが、同空間内を右下から左上へ流れる第一の冷却風93aに垂直に衝突する。この結果、各空間内の上記衝突位置において、液晶ユニット20の発熱面(光透過面)へ垂直に向かう旋回流が発生し、光透過面への垂直噴流が形成される。換言すれば、第一の冷却風93aは、第二の冷却風93bに対する障壁となっている。
【0070】
第一の冷却風93aの、第二の冷却風93bに対する障壁としての機能を高めるためには、第一の冷却風93aの送風量を第二の冷却風93bの送風量よりも多くすることが効果的である。そこで本例では、空冷ダクト91の吐出口91bの開口面積を吐出口91cよりも大きくして、第一の冷却風93aの送風量を第二の冷却風93bの送風量よりも多くしてある。
【0071】
ここで、本例の冷却装置においても、他の実施例の冷却装置においても、導風板の斜面の傾斜角や曲面の曲率といった冷却風の転向方向を決定するパラメータを適宜調整することが好ましい。
【0072】
(実施例6)
図12は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。既述の実施例に係る冷却装置を構成する空冷ダクトには2以上の吐出口が設けられていたのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト101には、1つの吐出口101aのみが設けられている。
【0073】
但し、本例の空冷ダクト101の吐出口101aの開口面積は、これまで説明した空冷ダクトの各吐出口の開口面積よりも大きく、開口中心がパネル縦中心軸Y‐Yよりも導風板102寄りに位置している。従って、吐出口101aから吐出された冷却風の一部は導風板102に当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は直接入射側空間および出射側空間に流入する。この結果、既述の各実施例に係る冷却装置と同様に、入射側空間内および出射側空間内を下方から上方に流れる冷却風と右から左に流れる冷却風とを直交状態で衝突させることができる。すなわち、空冷ダクト101は、冷却ファンによって生み出された冷却風の一部を入射側空間および出射側空間へ流入させる供給手段として機能する。一方、導風板102は、冷却ファンによって生み出された冷却風の他の一部の風向を変えて、液晶パネルの表面と平行であって、かつ、直接入射側空間および出射側空間へ流入する上記冷却風の一部とは異なる向きでそれら空間内へ流入させる転向手段として機能する。
【0074】
本実施例の冷却装置は、小型の液晶パネル(≦0.6”)が採用され、それに伴って液晶ユニットやその冷却装置が小型化される場合に有効である。すなわち、液晶ユニットが小型化して発熱体がより「点熱源」に近づく場合、空冷ダクトもそれに合わせて小型化される。このような場合には、冷却風を2系統以上に分岐するよりも一括して送風し、その一部の風向を導風板で制御する構造の方が好ましい。かかる構造によれば、「点熱源」全体に対して衝突効果が得られ、より速い風速で発熱体全体を高乱流化できるため、冷却効率を高めるのに有利となる。
【0075】
尚、空冷ダクトの内部に冷却ファンを配置し、そこから発生した冷却風を空冷ダクトの内部において直角に屈曲させて、吐出口から上方へ向けて吐出させる構造を採用する場合、吐出口から吐出される冷却風のうち、空冷ダクト内の屈曲部の外周側を通過した冷却風の方が内周側を通過した冷却風よりも風速が高くなる。そこで本例では、導風板102を空冷ダクト101内の屈曲部の外周側を通過した冷却風が吐出される先に設けることによって高い衝突効果が得られるようにしてある。
【0076】
(実施例7)
図13は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置も実施例6に係る冷却装置と同様に、空冷ダクトに設けられている吐出口の数は1つである。本例の冷却装置と実施例6に係る冷却装置との相違点は、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト111に設けられている吐出口111aの開口幅が液晶ユニット20の幅よりも広い点と、液晶ユニット20の両側方に右側導風板112a及び左側導風板112bが設けられている点である。尚、右側導風板112a及び左側導風板112bは、実施例3(図9)に係る冷却装置を構成する右側導風板72a及び左側導風板72bと同様に、上下方向に位置をずらして配置されている。
【0077】
従って、吐出口111aから吐出された冷却風の一部は右側導風板112aに当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は直接入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は左側導風板112bに当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入する。
【0078】
以上により、実施例3に係る冷却装置と同様に、入射側空間内および出射側空間内を下方から上方に流れる冷却風と左から右に流れる冷却風との衝突位置、およびその合成流と入射側空間内および出射側空間内を右から左に流れる冷却風との衝突位置、のそれぞれにおいて、入・出射側の偏光板や液晶パネルの光透過面へ垂直に向かう旋回流が発生し、発熱面(光透過面)への垂直噴流が形成される。
【0079】
本例の冷却装置も、実施例6に係る冷却装置と同様に、小型の液晶パネル(≦0.6”)が採用され、それに伴って液晶ユニットやその冷却装置が小型化される場合に有効であり、その理由も実施例6の説明中で述べた理由と同様である。
【0080】
(実施例8)
図14は、本例の冷却装置を構成する導風板122の斜視図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2(図7)に係る冷却装置と同一である。尚、図14では、1つの導風板122のみが図示されているが、実際には、導風板122と対をなす導風板が液晶ユニット20を挟んで反対側に配置されている。すなわち、導風板の数及び配置関係は、図7(a)に示した例と共通である。
【0081】
しかし、本例の冷却装置を構成する導風板122は、冷却風の流出側の幅(W2)が流入側の幅(W1)よりも狭くなるように、その上部が絞られている。具体的には、対向する側壁122bの一方の上部を他方に近接するように傾斜させてある。尚、流入側の幅(W1)は、液晶ユニット20の光軸方向の長さ(L)と同程度である。
【0082】
図15(a)は、本例の冷却装置によって入射側空間Aおよび出射側空間Bに送り込まれる冷却風の流れを模式的に示す断面図である。同図に示すように、入射側空間Aの冷却は、不図示の空冷ダクトの吐出口から吐出され、直接空間Aにその下方から流入する第一の冷却風123aのみよって行われる。一方、出射側空間Bの冷却は、第一の冷却風123aと、導風板122a、122bによって風向が転向された第二の冷却風123b及び第三の冷却風123cとによって行われる。ここで、上記3つの冷却風123a〜123cが互いに直交状態或いは対向状態で衝突して旋回流が形成される点は、実施例2と同様である(図7(b)参照)。しかし、実施例2の冷却装置を構成している導風板62a、62bの幅(W)は一定である(図8参照)。これに対し、本例の冷却装置を構成している導風板122a、122bの幅は上記のように絞られている。この結果、導風板122a、122bによって風向が転向された第二の冷却風123b及び第三の冷却風123cの量及び速度は、実施例2の導風板62a、62bによって風向が転向された第二の冷却風63b及び第三の冷却風63c(図7(b))よりも増加する。よって、出射側空間B内に、より高い乱流性を持った旋回流が生成され、同空間Bにおける発熱面の冷却性能が飛躍的に向上する。
【0083】
ここで、図15(b)に示すように、2つの導風板122a、122bの絞りの向きを逆転させることもできる。この場合、入射側空間Aおよび出射側空間Bの双方において、より高い乱流性を持った旋回流が生成される。
【0084】
上記のような構成によれば、入射側空間A内または出射側空間B内において衝突する冷却風の量を個別に調整することができる。従って、空冷ダクトの屈曲に起因する風速の内・外周差により、各導風板に流入する冷却風の量が不均衡となる場合や、液晶ユニットを構成する各部材(入射側偏光板、液晶パネル、出射側偏光板)の発熱量がそれぞれ異なる場合などに、要求される冷却性能と実現できる冷却性能とを容易にマッチングさせることが可能となる。
【0085】
尚、ここでは実施例2に係る冷却装置との対比において本例の冷却装置の利点について述べた。しかし、既述の各実施例に係る冷却装置を構成する導風板に上記のような絞りを設けることによって上記と同様の作用効果が得られる。
【0086】
(実施例9)
図16(a)は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式的断面図であり、図16(b)は、同図(a)の部分拡大図である。また、図16(c)は、本例の冷却装置による冷却の原理を示す説明図である。
【0087】
図16(a)に示されているように、本例の冷却装置は、冷却ファン130と、空冷ダクト131と、遮風板132とを有する。空冷ダクト131は、略L字形の断面形状を有し、液晶ユニット20に冷却風を供給するための吐出口131aは、液晶ユニット20の側方に配置されている。一方、遮風板132は、略L字形の断面形状を有し、液晶ユニット20を挟んで空冷ダクト131の吐出口131aと反対側に配置されている。より具体的には、図16(b)に示すように、遮風板132は、水平な一面(底面132a)が液晶ユニット20の下端を閉塞し、底面132aと直交する一面(ブロック面132b)が空冷ダクト131の吐出口131aと対向する液晶ユニット20の側面と反対側の側面を閉塞するように配置されている。尚、図16には、空冷ダクト131の吐出口131aが紙面左側、遮風板132が紙面右側に配置された例が図示されているが、空冷ダクト131の吐出口131aと遮風板132の位置関係を左右逆転させてもよい。
【0088】
次に、本例の冷却装置による液晶ユニット20の冷却動作について説明する。図16(a)に示すように、冷却ファン130によって生み出された冷却風133は、液晶ユニット20の側方に用意された空冷ダクト131の吐出口131aから液晶ユニット20に向けて吐出される。吐出された冷却風133の一部は、入射側空間に流入し、同空間内を図16の紙面左側から右側に向かって流れる。一方、吐出された冷却風133の他の一部は、出射側空間に流入し、同空間内を図16の紙面左側から右側に向かって流れる。空冷ダクト131は、冷却風133を液晶パネルの表面に対して平行な向きで入射側空間内および出射側空間内へ流入させる供給手段として機能する。尚、以下の説明では、液晶ユニット20の入・出射側空間内を上記のように流れる冷却風を「横断送風」と呼ぶ。
【0089】
入・出射側空間内を通過した横断送風は、遮風板132のブロック面132bに衝突し、その風向をブロック面132bの表面に沿って変える。すなわち、遮風板132は、横断送風の進行を阻害し、該横断送風の風向を入・出射側空間内への冷却風の流入方向とは異なる方向に変える遮風手段として機能する。以下の説明では、ブロック面132bに衝突して風向を変えた冷却風(横断送風)を「壁面送風」と呼ぶ。
【0090】
冷却風の挙動を、図10(c)を参照して説明する。空冷ダクト131の吐出口131aに相当するノズル200から吐出された噴流201(横断送風)が壁面202(遮風板132のブロック面132b)に衝突した場合、その衝突部において澱み領域が形成される。また、その衝突部の周辺領域では、壁面202に沿って風向を変える壁面噴流領域が形成される。これは、先に説明したコアンダ効果による壁面滑りに相当する。具体的には、壁面202への衝突により強制的に速度ベクトルを転向させられて、壁面(固体境界)に沿って流れる噴流(いわゆる壁面噴流)は、澱み点近傍で最大の乱れ強さを示しつつ、そこから離れるにしたがって、その流速(UX)と乱れエネルギーを弱めながら、自由せん断層(壁面噴流による自由空間側の速度分布の作用領域)を拡大して流れていく。また、壁面との衝突によって方向を変えて壁面噴流領域を形成する壁面噴流(壁面送風)は、送風ベクトルの転向位置近傍において、乱流性と拡散性の高い旋回流を発生させる。以上により、先に説明した衝突噴流冷却のプロセス(2)(3)が実行され、高い冷却性能が得られる。
【0091】
さらに、壁面滑りによって遮風板132のブロック面132bにガイドされた冷却風は、発熱体(入射側偏光板、液晶パネル及び出射側偏光板)を冷却したあと、そのまま液晶ユニット20の外部へ送り出されるので、効率的な排熱処理を行うことができる。このとき、液晶ユニット20の下方へ向かう壁面滑りの流れは、遮風板132の底面132aによって遮られるため、冷却風は、主に液晶ユニット20の上方へ向けて排気(排熱)される。
【0092】
ここまでの説明からわかるように、本例の冷却装置では、冷却風が遮風板と衝突する位置の近傍において、その冷却風に乱流性を持たせて熱伝達率を改善し、高い冷却性能を得ている。従って、本例の冷却装置は、主に、小型の液晶パネルを採用して発熱体が「点熱源」に近いような液晶ユニットの冷却に対して適用するのが望ましく、そのような小型の構成機器に対して、低コストかつコンパクトでシンプルな構成の高効率冷却システムを提供することができる。
【0093】
(実施例10)
図17、図18は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式図である。具体的には、図17(a)は冷却装置及びその近傍の構造を示す断面図であり、図17(b)は同図(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを示す説明図である。また、図18(a)(b)は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図であり、(c)は遮風板の斜視図である。
【0094】
本例の冷却装置の基本構成は、実施例9に係る冷却装置と同一である。異なるのは、遮風板142の断面形状を略J字形とした点と、遮風板142に対向する側壁を設けた点である。具体的には、図16に示す遮風板132の底面132aに相当する底面142aと、ブロック面132bに相当するブロック面142bとを有する。しかし、本例における遮風板142のブロック面142bは、曲面によって構成されている。また、底面142aとブロック面142bとの間には、冷却風の漏洩を防ぐための側壁142cが対向状態で設けられている。
【0095】
次に、本例の冷却装置による液晶ユニット20の冷却動作について説明する。図17(a)に示すように、冷却ファン140によって生み出された冷却風143は、液晶ユニット20の側方に用意された空冷ダクト141の吐出口141aから液晶ユニット20に向けて吐出される。吐出された冷却風143の一部は、入射側空間に流入し、同空間内を図17の紙面左側から右側に向かって流れる。一方、吐出された冷却風143の他の一部は、出射側空間に流入し、同空間内を図17の紙面左側から右側に向かって流れる。以下の説明では、液晶ユニット20の入・出射側空間内を上記のように流れる冷却風を「横断送風」と呼ぶ。
【0096】
入・出射側空間内を通過した横断送風は、遮風板142のブロック面142bに衝突し、その風向をブロック面142bの表面(曲面)に沿って鋭角(θ)に変える。以下の説明では、ブロック面142bに衝突して風向を変えた冷却風を「壁面送風」と呼ぶ。
【0097】
この場合も、ブロック面142bに衝突して風向を変えた壁面送風は、その風向転回位置の近傍において旋回渦を発生させ、温度置換効果による高い冷却性能を示す。この点は、実施例9に係る冷却装置と同様である。しかし、遮風板142のブロック面142bに曲率が与えられている本例の冷却装置では、冷却風の挙動が実施例9に係る冷却装置と異なる点がある。
【0098】
冷却風の挙動を、図17(c)を参照して説明する。空冷ダクト141の吐出口141aに相当するノズル210から吐出された噴流211(横断送風)が湾曲した壁面212(遮風板142のブロック面142b)に衝突した場合、壁面噴流領域における壁面滑りによって形成される噴流(壁面送風)は、ノズル210から吐出される噴流(横断送風)に対してより鋭角に転回する(図16(c)と図17(c)とを対比)。
【0099】
ところで、曲率を有する壁面上の流れ(曲がりチャネル乱流)は、その曲率の増大に伴って半径方向の乱流強度が増加する流動特性を示す(壁乱流における運動量の流線曲率の効果)。
【0100】
従って、本例のように、遮風板142のブロック面142bを曲面とすることによって風向を急角度で転回させると、その風向転回位置の近傍の流れ(壁面送風)において乱流強度が増大し、高い熱伝達特性が得られることが期待できる。
【0101】
また本例においても、実施例9と同様に、壁面送風のうち液晶ユニット20の下方へ向かう送風は、遮風板142の底面142aによって遮られる。よって、主に液晶ユニット20の左上方へ向けてその送風ベクトルは転回され排気(排熱)される。
【符号の説明】
【0102】
20 液晶ユニット
21 入射側偏光板
22 液晶パネル
23 出射側偏光板
51、61、71、81、91、101、111、131、141 空冷ダクト
51a、61a、71a 第一の吐出口
51b、61b、71b 第二の吐出口
81b、81c、91b、91c、101a、111a、131a、141a 吐出口
52、102 導風板
62a、72a、82a、92a、112a 右側導風板
62b、72b、82b、92b、112b 左側導風板
132、142 遮風板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器内にある発熱体の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器内の発熱体を冷却するための手段が多数開発され、そのうちのいくつかは実用化されている。それら冷却手段の一つである空冷方式の冷却手段は、簡易かつ安価な冷却手段として、多くの電子機器に採用されている。例えば、業務用及び一般家庭用に広く普及している投写型表示装置(プロジェクタ)においても、空冷方式、特に強制空冷方式の冷却手段が採用されている。
【0003】
投写型表示装置は、画像表示素子上に生成された画像をスクリーンに拡大投影する表示装置である。かかる投写型表示装置のうち、画像表示素子に液晶パネルを用いた液晶プロジェクタは、次のような構成と動作によってスクリーン上に画像を拡大投影する。
【0004】
液晶プロジェクタは、光源を備えている。該光源から発せられた白色光は、リフレクタで反射され、PBS(Polarization Beam Splitter:偏光ビームスプリッタ)により偏光変換された後に、R/G/Bの各色光に分離される。分離された各色光は、各色ごとに用意された液晶パネルに導かれ、対応する液晶パネルに入射する。液晶パネルに入射した各色光は、液晶パネルによってビデオ信号に従った光変調を受ける。光変調された各色光は、色合成プリズムにより合成され、投写光学系を介してスクリーン上に投写される。
【0005】
ここで、TN(Twisted Nematic)モードで動作する液晶パネルは、特定の直線偏光成分しか扱えない。そこで、各液晶パネルの入射側には偏光板が配置され、液晶パネルに入射する色光の偏光方向が所定方向に統一される(ここでは、S偏光に統一されるものとする。)。さらに、液晶パネルの出射側にも偏光板が配置され、液晶パネルで光変調を受けた光のS偏光成分が該偏光板によってカットされ、P偏光成分のみが抽出される。ここで、液晶パネル及びその前後に配置される偏光板は、一体化されてユニット(液晶ユニット)を形成しているのが通常である。また、以下の説明では、液晶パネルの入射側に配置された偏光板を「入射側偏光板」、出射側に配置された偏光板を「出射側偏光板」と呼ぶ場合がある。
【0006】
このように、液晶パネルの前後に、光軸に沿って配置される入射側偏光板及び出射側偏光板は、各々1軸方向の偏光光のみを通過させ、他の偏光光を遮蔽する。入射側偏光板及び出射側偏光板によって遮蔽された光は熱に変換される。すなわち、入射側偏光板及び出射側偏光板は発熱する。また、液晶パネルにおいても、各画素境界にあるブラックマトリクスによって入射光の一部が遮蔽され、遮蔽された光は熱に変換される。従って、液晶パネルも入射側偏光板及び出射側偏光板と同様に発熱する。換言すれば、液晶ユニットは、プロジェクタという電子機器内の発熱体である。
【0007】
一方で、液晶パネルや偏光板には有機材料が用いられることが多い。従って、長時間にわたって波長の短い光が照射されたり、高温に曝されたりすると、液晶パネルの配向膜がダメージを受けたり、偏光板の偏光選択特性が低下したりするなど、その機能が著しく損なわれてしまう。そこで、液晶プロジェクタには、液晶ユニットを冷却するための冷却手段が設けられている。以下、液晶プロジェクタに設けられている冷却手段について詳しく説明する。
【0008】
図19(a)は、一般的な液晶プロジェクタ1の外観斜視図であり、同図(b)は内部構造を示す斜視図である。また、図20は、図19(b)に示す内部構造を模式的に示した平面図である。
【0009】
主に図20に示すように、液晶プロジェクタ1の筐体内には、液晶ユニット2を強制空冷するための冷却ファン3と空冷ダクト4とが設けられている。また、光源5を強制冷却するための冷却ファン7が設けられている。さらに、筐体内の空気を強制的に排気して電源ユニット6等を冷却するための排気ファン8も設けられている。
【0010】
図21を参照して、冷却ファン3及び空冷ダクト4による液晶ユニット2の冷却作用について具体的に説明する。図21(a)は、冷却ファン3及び空冷ダクト4の分解斜視図、同図(b)は冷却風の流れを示す模式図である。
【0011】
図21(a)(b)に示すように、入射側偏光板10、液晶パネル11及び出射側偏光板12から構成される液晶ユニット2は、R/G/Bの色光ごとに設けられており、それら液晶ユニット群の下方に、空冷ダクト4の吐出口15が配置されている。
【0012】
主に図21(b)に示すように、冷却ファン3によって生み出された冷却風14は、空冷ダクト4内を通って吐出口15から吹き出す。吐出口15から吹き出した冷却風14は、各液晶ユニット2の下方から各液晶ユニット2に供給される。各液晶ユニット2に供給された冷却風14は、各ユニット2の入射側偏光板10、液晶パネル11及び出射側偏光板12の間の空間を通過して上方に抜ける。
【0013】
ここで、近年のプロジェクタの利用形態の多様化に応じて、小型化・高輝度化の要求が高まっている。このような要求に応えるために、ランプ出力の向上と表示デバイス(液晶ユニット)の小型化が進められている。その結果、液晶ユニットへ入射する光の光束密度が増大し、液晶ユニットを構成する液晶パネル、入射側偏光板及び出射側偏光板の熱負荷は上昇の一途をたどっている。
【0014】
一方で、環境負荷の低減とランニングコストの削減を目的に、プロジェクタの長寿命化の要求も次第に高まりつつある。ランプ交換部品を除けば、液晶プロジェクタの寿命は、主に液晶ユニットの寿命に依存する。液晶ユニットの冷却手段の冷却能力を高めて液晶ユニットの寿命を延ばすことができれば、液晶プロジェクタ自体の寿命を延ばすことができる。
【0015】
一般に、液晶ユニットの冷却手段として空冷方式を採用する場合、その冷却能力を高めるためには、冷却ファンの送風量を増加させて、冷却風の風速を上げる必要がある。しかしながら、冷却ファンの回転数を上昇させて送風量を増加させると、冷却ファンの動作騒音も増加する。また、冷却ファンを大径化して送風量を増加させると、装置が大型化してしまう。
【0016】
また、冷却風が冷却対象に沿って平行に流れる層流である場合、平均熱伝達率は風速の平方根に比例し、冷却対象の温度上昇は風速の平方根に反比例する。従って、冷却対象の温度がある程度まで低下すると、風速増加に対する冷却対象の温度低下の感度が鈍くなる。
【0017】
図22に、0.8”サイズの液晶パネル(5000lm‐25℃環境)の動作温度の風速依存曲線の一例を示す。図22より、液晶パネル動作温度を70℃から60℃まで下げる場合には、冷却風の風速を4.5m/sから8.0m/sへ増速させるだけでよいが、60℃から50℃まで下げる場合には、冷却風の風速を8.0m/sから18.0m/sまで増速させなければならないことがわかる。
【0018】
従って、液晶ユニットの長寿命化を図るために、液晶ユニットの動作温度(特に液晶パネルの動作温度)のさらなる低減を目指す場合、冷却風の風速を極めて高速化しなければならない。しかし、冷却風の風速を高速化すると、冷却ファンの動作騒音の増大や装置の大型化を招く虞があることは上述のとおりである。さらには、冷却ファンの動作騒音の増大や装置の大型化を許容したとしても、冷却能力の向上には限界(空冷限界)がある。
【0019】
さらに、液晶パネルに関しては、画質の観点から冷却に対する別の要求も存在する。液晶パネルにおける光変調では、入力信号に対する光変調効果の温度依存性が高い。よって、パネル面に温度ムラが生じると、輝度ムラや色ムラが生じて画質が悪化する。従って、液晶パネルの冷却に関しては、パネル面に生じる温度勾配や温度ムラを極力小さくする冷却方法が望まれる。
【0020】
これまでは、プロジェクタ、特に液晶プロジェクタを例にとって電子機器の冷却に関して説明してきた。しかし、プロジェクタ以外にも発熱体を持った電子機器は多数存在しており、当該電子機器の性能向上や使用態様の多様化に伴って効率的な冷却手段が求められている。例えば、近年のパーソナルコンピュータは高性能な中央演算処理装置を内蔵しており、その中央演算処理装置は、その動作中に熱を発する。一方、中央演算処理装置の安定した動作を確保するためには、該処理装置を冷却して動作温度を所定範囲内に維持する必要がある。
【0021】
以上のような状況の下、電子機器の発熱体を高効率で冷却するための手段の開発が急務となっている。そこで、特許文献1には、液晶パネルへ送風される冷却風の向きを調整して、液晶パネルの冷却効率を改善することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図23に示すように、色合成プリズム16の下部に風向板17が設けられ、該風向板17によって冷却ファン3から送り出された冷却風14の向き制御する構造が開示されている。特許文献1によれば、風向板17によって冷却風14の向きが最適化される、とのことである。
【0022】
特許文献2には、液晶パネルを冷却するための冷却風を無駄なく液晶パネルに供給することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図24に示すように、液晶パネル11を保持する保持枠18であって、液晶パネル11の下方に設けられたダクト吐出口20から送り出される冷却風を液晶パネル11に案内する突片部19を備えた保持枠18が開示されている。特許文献2によれば、ダクト吐出口20から送り出された冷却風が突片部19によって略漏れなく液晶パネル11に導かれるので、冷却効率が向上する、とのことである。
【0023】
特許文献3には、液晶パネルを保持している保持枠と偏光板との間隔が狭い場合においても、十分な通風面積を確保することを目的とした構造が開示されている。具体的には、図25に示すように、液晶パネル11の保持枠18の通風路に切欠部21を設けて、液晶パネル11と出射側偏光板12との間の通風路幅(図中:X部とY部)を変更した構造が開示されている。特許文献3によれば、上記構造によって送風速度が向上する、とのことである。
【0024】
特許文献4には、液晶パネルの入射側面と出射側面で送風方向を逆にして、パネル温度ムラの緩和を図ることを目的とした構造が開示されている。具体的には、図26に示すように、色合成プリズム16の周囲に配置された液晶パネル11と偏光板10との間にU字溝形状の導風路22を設けて冷却風をUターンさせることにより、液晶パネル11の入射側面と出射側面で送風の方向を逆向きにする構造が開示されている。また、特許文献4には、図27に示すように、液晶パネル11の上下に一対の冷却ファン3a、3bを設け、液晶パネル11を間に挟んで、出射側は下方から上方へ、入射側は上方から下方へ送風を通風させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平11−295814号公報
【特許文献2】特開2001−318361号公報
【特許文献3】特開2004−61894号公報
【特許文献4】特開2000−124649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
特許文献1に開示されている構造によれば、液晶パネルの出射面に当たる冷却風の量を増加させることはできる。しかし、液晶パネルの出射面と対向する出射側偏光板に当たる冷却風の量は逆に抑制され、出射側偏光板の冷却効率は悪化してしまう。
【0027】
特許文献2に開示されているように、液晶パネルの保持枠に設けた突片部によって冷却風の漏れを抑制すると、通風抵抗の増加による風速低下や下流域(液晶パネル上部)における排熱の澱み(排気の抜けの悪化)によるパネル温度の上昇を招く。よって、冷却効率の改善は相殺され、全体として十分な効果を得ることは難しい。
【0028】
特許文献3に開示されているように、通風路の下流側に切欠部を設けて通風面積を拡大したとしても、被冷却部(液晶パネルや偏光板の光透過面)の風速は低下するため、冷却効率の向上は望めない。また、通風路の流入側端部の間隔(各ユニットの間の間隔)が狭い場合、そこが通風抵抗となって通風量が低下してしまうので、やはり冷却効率の向上は望めない。
【0029】
特許文献4に開示されているように、U字溝形状の通風路によって冷却風を折り返すと、通風面積は半分になり、通風距離は2倍になる。よって、通風抵抗が増大し、通風量が抑制される。また、U字溝形状の通風路の前半においてパネル出射側面を冷却した冷却風の温度は、熱交換によって上昇しており、冷却能力が著しく低下している。従って、そのような冷却風をUターンさせてパネル入射側面に導いても、高い冷却効率は期待できない。
【0030】
また、1対の冷却ファンによって、液晶パネルの入射側面と出射側面に逆向きに流れる冷却風を供給した場合(図27の場合)、パネル面の発熱分布(冷却作用)が入射側と出射側とで上下逆になる。従って、図27に示す構造は、パネル内部の均温化を図るといった観点からは一定の効果が期待できる。しかし、発熱面に平行流を当てて冷却するという点では従来の冷却方法を踏襲しており、ファン1つ当たりの放熱負荷は減る一方で、各通風面積が半分になっているため、通風抵抗が増大し、十分な冷却効率は得られない。
【0031】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記課題の少なくとも一つを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
偏光板や液晶パネル、電子部品が実装された基板などの平坦な発熱体(発熱平板)の強制空冷において、熱伝達率を改善して伝熱の促進を図る方法には、薄膜化法と置換法の2つのアプローチが考えられる。
【0033】
薄膜化法は、発熱体表面に形成される温度境界層を薄く(薄膜化)することで熱伝達率を改善する方法である。この場合、温度境界層の厚さは主流方向速度(平板に沿った流速)の平方根に逆比例する。すなわち、先に述べたような、風速を上げて発熱体の温度を下げるというやり方は、薄膜化法に基づくものである。
【0034】
置換法は、固体表面近傍の流体と、少し離れた位置にある流体との交換(温度置換)を助長することで熱伝達率を改善する方法であり、非定常的な渦の生成/消失を伴う乱流を利用して伝熱の促進を図る。
【0035】
本発明は、上記2つのアプローチのうち置換法に基づくアプローチによって上記目的を達成しようとするものである。本発明は、一つの発生源から送り出され、発熱体が存在する空間を通過した冷却風の向きを流入方向と異なる向きに転向させる手段を備えていることを特徴とする。具体的には、冷却風を発生させる冷却風発生手段と、前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記空間内へ流入させる供給手段と、前記空間を通過した前記冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを前記空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、を有する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、小型でありながら冷却効率の高い冷却装置及びそれを備えた電子機器を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】衝突噴流冷却の概念図である。
【図2】液晶ユニットの構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】実施形態1に係る冷却装置の冷却原理を示す説明図である。
【図4】実施形態2に係る冷却装置の冷却原理を示す説明図である。
【図5】(a)は実施例1に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図6】(a)(b)は実施例1に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの液晶ユニット及びその近傍の斜視図、(c)は導風板の斜視図である。
【図7】実施例2に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図8】図7に示す液晶ユニット及び導風板の斜視図である。
【図9】実施例3に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図10】実施例4に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図11】実施例5に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図12】実施例6に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図13】実施例7に係る冷却装置の構成を示す模式的断面図である。
【図14】実施例8に係る冷却装置の導風板の斜視図である。
【図15】(a)は実施例8に係る冷却装置を用いた場合の冷却風の流れを示す断面図、(b)は導風板の変形例を示す断面図である。
【図16】(a)は実施例9に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図17】(a)は実施例10に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを模式的に示す断面図である。
【図18】(a)(b)は実施例10に係る冷却装置を備えた液晶プロジェクタの液晶ユニット及びその近傍の斜視図、(c)は遮風板の斜視図である。
【図19】一般的な液晶プロジェクタの外観及び内部構造を示す斜視図である。
【図20】一般的な液晶プロジェクタの内部構造を示す模式図である。
【図21】(a)は図20に示す冷却ファン及び空冷ダクトの分解図、(b)は従来の冷却装置における冷却風の流れを示す模式図である。
【図22】液晶パネルに供給される冷却風の速度と動作温度との関係を示す図である。
【図23】特許文献1に開示されている構造を示す模式図である。
【図24】特許文献2に開示されている構造を示す模式図である。
【図25】特許文献3に開示されている構造を示す模式図である。
【図26】特許文献4に開示されている構造の一つを示す模式図である。
【図27】特許文献4に開示されている構造の他の一つを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施形態1)
以下、本発明の冷却装置の実施形態の一例について、冷却対象が液晶プロジェクタに内蔵された液晶ユニットである場合を例にとって説明する。
【0039】
本実施形態に係る冷却装置は、衝突噴流を利用して冷却対象を冷却する。ここで、衝突噴流冷却とは、図1に示すように、ノズルAから出射される噴流Bを発熱平板Cに対して垂直に当てて、発熱面を冷却する方法である。衝突噴流冷却では、
(1)噴流の衝突による発熱面の温度境界層の破壊(剥離)
(2)衝突部で発生する旋回流による流体交換(温度置換)
(3)コアンダ効果による噴流の壁面滑り
といったプロセスを経て放熱が行われる。従って、発熱平板に沿って冷却風を送風する冷却方法に比べて、5倍〜10倍の冷却性能を発揮する。尚、上記コアンダ効果とは、流体中に物体を置くと、流体と固体壁との間の圧力が低下し、流れが壁面に吸い寄せられ、その物体に沿って流れの向きが変わる流体の性質をいう。
【0040】
ところで、上記のような衝突噴流冷却を面内方向が同じになるように並設された複数の発熱平板に対して適用する場合、噴流の衝突方法が課題となる。例えば、図2(a)(b)に示すように、入射側偏光板21、液晶パネル22及び出射側偏光板23が光軸に沿って並設された液晶ユニット20の場合、偏光板21、23及び液晶パネル22の各発熱面は光透過面24とほぼ一致する。従って、各色光の透過を阻害しないように、発熱面への垂直空気流れを生成する必要がある。
【0041】
そこで本実施形態に係る冷却装置には、図3(a)(b)に示すように、一つの冷却ファン(不図示)から送り出された冷却風に基づいて、液晶ユニット20の面内方向に沿って流れる第一の冷却風31と、液晶ユニット20の面内方向に沿って第一の冷却風31とは異なる方向に流れる第二の冷却風32とを生成する手段を備えている。かかる手段によって生成された2つの冷却風31、32は、液晶パネル22と入射側偏光板21との間の空間(入射側空間)内及び液晶パネル22と出射側偏光板23との間の空間(出射側空間)内で衝突する。すると、対向する発熱面へ垂直に向かう旋回流が発生して垂直噴流が形成され、熱伝達率が増大して伝熱促進が図られる。
【0042】
次に、本発明の冷却装置の実施形態の他例について、冷却対象が液晶ユニットである場合を例にとって説明する。尚、本実施形態に係る冷却装置の冷却対象である液晶ユニットの構造は、実施形態1に係る冷却装置の冷却対象である液晶ユニット20(図2)と同一である。よって、液晶ユニットに関しては同一の符号を用いる。
【0043】
本実施形態に係る冷却装置は、図4に示すように、一つの冷却ファン(不図示)から送り出され、入射側空間および出射側空間を通過した冷却風40の風向を流入方向と異なる方向に強制的に転向させる手段を備えている。かかる手段により冷却風40の風向を転向させることによって、転回位置近傍において速度ベクトルの変化量に応じた旋回流が生成され、液晶パネル22と偏光板との間の各空間における乱流効果が高まり伝熱が促進される。また、コアンダ効果による壁面滑りを利用した冷却風の排気も行われる。
【0044】
以下、実施形態1及び実施形態2に係る冷却装置について、いくつかの実施例を挙げてより詳細に説明する。尚、以下の実施例1〜8は実施形態1に係る冷却装置の実施例であり、実施例9及び10は実施形態2に係る冷却装置の実施例である。尚、全ての実施例において、冷却対象は、液晶プロジェクタが備える3つの液晶ユニットであり、各液晶ユニットの構造は図2に示したとおりである。但し、以下の説明中で参照する図面には、便宜上一つの液晶ユニットのみが図示されている。
【0045】
(実施例1)
図5、図6は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式図である。具体的には、図5(a)は冷却装置及びその近傍の構造を示す断面図であり、図5(b)は同図(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを示す断面図である。また、図6(a)(b)は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図であり、(c)は導風板の斜視図である。
【0046】
主に図5(a)、図6(a)に示されているように、本例の冷却装置は、冷却ファン50と、空冷ダクト51と、導風板52とを有する。冷却ファン50及び空冷ダクト51は、図示されている液晶ユニット20を含む液晶ユニット群よりも下方に配置されており、導風板52は液晶ユニット20を含む各液晶ユニットの側方に配置されている。また、空冷ダクト51には、液晶ユニット群の下方において開口する2つの吐出口51a、51bが設けられている。さらに、導風板52には、対応する液晶ユニットに近接する方向に傾斜する斜面52aが設けられている。
【0047】
冷却ファン50によって生み出された冷却風53の一部は、空冷ダクト51の吐出口51aから液晶ユニット20を含む各液晶ユニットに向けて吐出される。一方、冷却ファン50によって生み出された冷却風53の他の一部は、空冷ダクト51の吐出口51bから導風板52を含む各液晶ユニットに対応する導風板に向けて吐出される。すなわち、冷却ファン50によって生み出された冷却風53は、空冷ダクト51によって、各液晶ユニットに向けて吐出される第一の冷却風53aと、各導風板に向けて吐出される第二の冷却風53bとに分岐される。換言すれば、空冷ダクト51は、冷却ファン50によって生み出された冷却風53を第一の冷却風53aと第二の冷却風53bとに分岐させる分岐手段として機能する。
【0048】
次いで、図5(b)、(c)を参照して、本例の冷却装置による冷却作用について説明する。ここでは、液晶ユニット20を例にとって冷却作用について説明するが、他の液晶ユニットに対する冷却作用も同様である。
【0049】
上述のようにして分岐された第一の冷却風53aは、入射側空間Aおよび出射側空間Bの下端の開口面(第一の開口面)から各空間A、Bへ流入し、同空間A、B内を図5(b)(c)の紙面下方から上方に向かって流れる。一方、第二の冷却風53bは、入射側空間Aおよび出射側空間Bの側方の開口面(第二の開口面)と対向する位置に配置されている導風板52(特に、導風板52に設けられている斜面52a)によって風向が90度転換される。風向が転向された第二の冷却風53bは、第二の開口面から入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入する。すなわち、導風板52は、第二の冷却風53bの風向を変えて、液晶パネルの表面と平行であって、かつ、第一の冷却風53aと異なる向きで入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入させる転向手段として機能する。
【0050】
導風板52の作用によって入射側空間Aおよび出射側空間Bへ流入した第二の冷却風53bは、それら空間A、B内を図5(b)の紙面右側から左側に向かって流れる。尚、導風板52に設けられている斜面52aの両側には、第二の冷却風53bの漏洩を防止するために、一対の側壁52bが対向するように設けられており、導風板52は全体としてフード状の形態を有する(図6(c))。
【0051】
以上のようにして、入射側空間Aおよび出射側空間Bに、互いに直交する方向から流入した第一の冷却風53aと第二の冷却風53bとは、各空間の略中央位置において直交状態で衝突する。このとき、互いに直交する方向から衝突した第一の冷却風53aと第二の冷却風53bは、その衝突位置において、入射側偏光板21、液晶パネル22および出射側偏光板23のそれぞれの光透過面24(図2)へ垂直に向かう旋回流を発生させる(図5(c)参照)。その結果、発熱面(光透過面24)への垂直噴流が形成され、発熱体近傍の熱伝達率が大幅に増加する。従って、従来の平行平板流れによる冷却方法に比べて、放熱効率が大幅に向上する。
【0052】
(実施例2)
図7(a)は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図、同図(b)は横断面図である。また、図8は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図である。
【0053】
本例の冷却装置の基本構成は、実施例1の冷却装置と同一である。相違点の一つは、各液晶ユニットの左右にそれぞれ導風板が設けられている点である。相違点の他の一つは、導風板の増設に伴って、空冷ダクトの吐出口が増設されている点である。以下、具体的に説明する。
【0054】
図7(a)に示されているように、液晶ユニット20の縦中心軸Y-Yを対称軸として、一対の導風板62a、62bが線対称に配置されている。各導風板62a、62bの形状や寸法は、実施例1で説明した導風板52と同一である。具体的には、図8に示すように、導風板62a、62bは、流入した冷却風の風向をスムーズに転向させるための斜面と、冷却風の漏洩を防止するための側壁とを備えたフード状の形態を有する。また、導風板62a、62bの幅(W)は、液晶ユニット20の光軸方向の長さ(L)と同程度であり、かつ、一定である。尚、図8では、一方の導風板62bの図示は省略されている。以下の説明では、図7(a)において、液晶ユニット20の右側(上記第二の開口面と対向する位置)に配置されている導風板62aを「右側導風板62a」、左側(上記第二の開口面の反対側の第三の開口面と対向する位置)に配置されている導風板62bを「左側導風板62b」と呼んで区別する。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0055】
空冷ダクト61には、不図示の冷却ファンによって生み出された冷却風を3つに分岐するために、3つの吐出口61a、61b、61cが設けられている。不図示の冷却ファンによって生み出された冷却風の一部は、吐出口61aから液晶ユニット20に向けて吐出される。また、冷却風の他の一部は、吐出口61bから右側導風板62aに向けて吐出される。また、冷却風の他の一部は、吐出口61cから左側導風板62bに向けて吐出される。すなわち、冷却ファンによって生み出された冷却風は、液晶ユニット20に向けて吐出される第一の冷却風63aと、右側導風板62aに向けて吐出される第二の冷却風63bと、左側導風板62bに向けて吐出される第三の冷却風63cとに分岐される。
【0056】
図7(a)(b)に示すように、第一の冷却風63aと、右側導風板62aによって風向が転向させられた第二の冷却風63bとが、入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において直交状態で衝突する。また、第一の冷却風63aと、左側導風板62bによって風向が転向された第三の冷却風63cとが、やはり入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において直交状態で衝突する。さらに、第二の冷却風63bと第三の冷却風63cとが、入射側空間Aおよび出射側空間Bの略中央において対向状態で衝突する。
【0057】
相互に直交或いは対向する方向から衝突した第一〜第三の冷却風63a、63b、63cは、その衝突位置において、入・出射側の偏光板21、23や液晶パネル22の光透過面へ垂直に向かう旋回流を発生させ、発熱面(光透過面)への垂直噴流を形成する。
【0058】
本実施例の冷却装置では、3方向からの冷却風を衝突させるので、実施例1の冷却装置に比べて、より乱流性の高い旋回流が形成され、冷却効率がさらに改善される。
【0059】
(実施例3)
図9は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2の冷却装置と同一である。本例の冷却装置が実施例2の冷却装置と異なるのは、図7(a)(b)に示す左右の導風板62a、62bの一方を液晶ユニット20のパネル横中心軸X-Xを基準として異なる高さに配置した点である。本例では、図7(a)(b)に示す左側導風板62bに相当する左側導風板72bを下方へ、右側導風板62aに相当する右側導風板72aを上方へ変位させた。さらに、具体的には、左側導風板72bは、その上端がパネル横中心軸X‐Xと一致する位置まで下方へ変位させた。一方、右側導風板72aは、斜面下の垂直部分をパネル横中心軸X‐Xが横切る位置まで上方へ変位させた。
【0060】
このとき、空冷ダクト71の第一の吐出口71aから吐出されて液晶ユニット20の入射側空間内および出射側空間内をその下方から上方へ流れる第一の冷却風73aと、第三の吐出口71cから吐出され、左側導風板72bの作用によって入射側空間内および出射側空間内をその左側から右側へ流れる第三の冷却風73cとは、パネル横中心軸X-Xよりも下方の位置において直交状態で衝突する。この結果、第一の冷却風73aと第三の冷却風73cとの衝突により生成された合成流74と、第二の吐出口71bから吐出され、右側導風板72aの作用によって入射側空間内および出射側空間内をその右側から左側へ流れる第二の冷却風73bとが、パネル横中心軸X-Xよりも上方の位置において鈍角で衝突する。
【0061】
この場合においても、第一の冷却風73aと第三の冷却風73cとの衝突位置、およびその合成流74と第二の冷却風73bとの衝突位置、のそれぞれにおいて、入・出射側の偏光板や液晶パネルの光透過面へ垂直に向かう旋回流が発生し、発熱面(光透過面)への垂直噴流が形成される。
【0062】
本例の冷却装置は、大型(≧0.8”)の液晶パネルや左右に広いワイド液晶パネル(16:9)を採用する液晶ユニットにおける温度ムラの解消に有効である。具体的には、液晶ユニットの入射側空間内および出射側空間内のパネル横中心軸X‐Xを挟んで左下と右上の2箇所において冷却風が衝突する。従って、実施例1の冷却装置に比べて、より広範囲において乱流性の高い旋回流が形成され、放熱能力が向上するとともに、温度分布が均一されて色ムラが解消され、画像品質が改善される。
【0063】
尚、左右の導風板72a、72bのパネル横中心軸X‐Xに対する変位方向や変位量は上記作用が得られる範囲内で任意に変更することができる。
【0064】
(実施例4)
図10は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2の冷却装置と同一である。本例の冷却装置が実施例2の冷却装置と異なるのは、実施例2の冷却装置を構成する空冷ダクト61には、3つの吐出口61a、61b、61c(図7(a))が設けられているのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト81には、吐出口61b、61cに相当する吐出口81b、81cのみが設けられている点である。換言すれば、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト81では、実施例2の冷却装置を構成する空冷ダクト61の吐出口61aが塞がれている。
【0065】
本例の冷却装置を用いた場合、空冷ダクト81の吐出口81bから吐出され、右側導風板82aにより風向が転向された第一の冷却風83aは図10の紙面右側から左側へ、吐出口81cから吐出され、左側導風板82bにより風向が転向された第二の冷却風83bは左側から右側へ流れ、各空間の略中央において斜向状態で衝突する。この結果、各空間内に液晶ユニット20の発熱面(光透過面)へ垂直に向かう旋回流が発生し、光透過面への垂直噴流が形成される。
【0066】
本例の冷却装置では、一つ冷却ファンによって生み出された冷却風を2系統に分岐して十分な風量と風速を確保しつつ、それを概略180度の対向方向から発熱面上で衝突させることにより、噴流の乱流生成効果をより高め、冷却能力の向上を図っている。
【0067】
尚、本例の冷却装置が備える導風板82a、82bは、これまで説明した実施例における斜面に相当する面を曲面としてある。もっとも、かかる相違は本発明における本質的相違点ではない。導風板の形状は、冷却風の方向を所定の方向へ転向させることができる形状であればよく、特定の形状に限定されるものではないことは、これまでの説明及び今後の説明によって理解できるはずである。
【0068】
(実施例5)
図11は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例3の冷却装置と同一である。異なるのは、実施例3の冷却装置を構成する空冷ダクト71には、3つの吐出口71a、71b、71c(図9)が設けられているのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト91には、吐出口71b、71cに相当する吐出口91b、91cのみが設けられている点である。換言すれば、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト91では、実施例3の冷却装置を構成する空冷ダクト71の吐出口71aが塞がれている。
【0069】
本例の冷却装置では、液晶ユニット20の入射側空間および出射側空間において、右側導風板92aにより風向が転向された第一の冷却風93aが図11の紙面右下から左上へ、左側導風板92bにより風向が転向された第二の冷却風93bが左下から右上へ流れる。さらに、右側導風板92aと左側導風板92bの高さを異ならせてあるので(本例では、パネル横中心軸X‐Xを基準として、右側導風板92aが左側導風板92bよりも高い位置に設けられている。)、入射側空間および出射側空間内を左下から右上へ流れる第二の冷却風93bが、同空間内を右下から左上へ流れる第一の冷却風93aに垂直に衝突する。この結果、各空間内の上記衝突位置において、液晶ユニット20の発熱面(光透過面)へ垂直に向かう旋回流が発生し、光透過面への垂直噴流が形成される。換言すれば、第一の冷却風93aは、第二の冷却風93bに対する障壁となっている。
【0070】
第一の冷却風93aの、第二の冷却風93bに対する障壁としての機能を高めるためには、第一の冷却風93aの送風量を第二の冷却風93bの送風量よりも多くすることが効果的である。そこで本例では、空冷ダクト91の吐出口91bの開口面積を吐出口91cよりも大きくして、第一の冷却風93aの送風量を第二の冷却風93bの送風量よりも多くしてある。
【0071】
ここで、本例の冷却装置においても、他の実施例の冷却装置においても、導風板の斜面の傾斜角や曲面の曲率といった冷却風の転向方向を決定するパラメータを適宜調整することが好ましい。
【0072】
(実施例6)
図12は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。既述の実施例に係る冷却装置を構成する空冷ダクトには2以上の吐出口が設けられていたのに対し、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト101には、1つの吐出口101aのみが設けられている。
【0073】
但し、本例の空冷ダクト101の吐出口101aの開口面積は、これまで説明した空冷ダクトの各吐出口の開口面積よりも大きく、開口中心がパネル縦中心軸Y‐Yよりも導風板102寄りに位置している。従って、吐出口101aから吐出された冷却風の一部は導風板102に当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は直接入射側空間および出射側空間に流入する。この結果、既述の各実施例に係る冷却装置と同様に、入射側空間内および出射側空間内を下方から上方に流れる冷却風と右から左に流れる冷却風とを直交状態で衝突させることができる。すなわち、空冷ダクト101は、冷却ファンによって生み出された冷却風の一部を入射側空間および出射側空間へ流入させる供給手段として機能する。一方、導風板102は、冷却ファンによって生み出された冷却風の他の一部の風向を変えて、液晶パネルの表面と平行であって、かつ、直接入射側空間および出射側空間へ流入する上記冷却風の一部とは異なる向きでそれら空間内へ流入させる転向手段として機能する。
【0074】
本実施例の冷却装置は、小型の液晶パネル(≦0.6”)が採用され、それに伴って液晶ユニットやその冷却装置が小型化される場合に有効である。すなわち、液晶ユニットが小型化して発熱体がより「点熱源」に近づく場合、空冷ダクトもそれに合わせて小型化される。このような場合には、冷却風を2系統以上に分岐するよりも一括して送風し、その一部の風向を導風板で制御する構造の方が好ましい。かかる構造によれば、「点熱源」全体に対して衝突効果が得られ、より速い風速で発熱体全体を高乱流化できるため、冷却効率を高めるのに有利となる。
【0075】
尚、空冷ダクトの内部に冷却ファンを配置し、そこから発生した冷却風を空冷ダクトの内部において直角に屈曲させて、吐出口から上方へ向けて吐出させる構造を採用する場合、吐出口から吐出される冷却風のうち、空冷ダクト内の屈曲部の外周側を通過した冷却風の方が内周側を通過した冷却風よりも風速が高くなる。そこで本例では、導風板102を空冷ダクト101内の屈曲部の外周側を通過した冷却風が吐出される先に設けることによって高い衝突効果が得られるようにしてある。
【0076】
(実施例7)
図13は、本例の冷却装置の構造を模式的に示す縦断面図である。本例の冷却装置も実施例6に係る冷却装置と同様に、空冷ダクトに設けられている吐出口の数は1つである。本例の冷却装置と実施例6に係る冷却装置との相違点は、本例の冷却装置を構成する空冷ダクト111に設けられている吐出口111aの開口幅が液晶ユニット20の幅よりも広い点と、液晶ユニット20の両側方に右側導風板112a及び左側導風板112bが設けられている点である。尚、右側導風板112a及び左側導風板112bは、実施例3(図9)に係る冷却装置を構成する右側導風板72a及び左側導風板72bと同様に、上下方向に位置をずらして配置されている。
【0077】
従って、吐出口111aから吐出された冷却風の一部は右側導風板112aに当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は直接入射側空間および出射側空間に流入し、他の一部は左側導風板112bに当たって風向が転向され、入射側空間および出射側空間に流入する。
【0078】
以上により、実施例3に係る冷却装置と同様に、入射側空間内および出射側空間内を下方から上方に流れる冷却風と左から右に流れる冷却風との衝突位置、およびその合成流と入射側空間内および出射側空間内を右から左に流れる冷却風との衝突位置、のそれぞれにおいて、入・出射側の偏光板や液晶パネルの光透過面へ垂直に向かう旋回流が発生し、発熱面(光透過面)への垂直噴流が形成される。
【0079】
本例の冷却装置も、実施例6に係る冷却装置と同様に、小型の液晶パネル(≦0.6”)が採用され、それに伴って液晶ユニットやその冷却装置が小型化される場合に有効であり、その理由も実施例6の説明中で述べた理由と同様である。
【0080】
(実施例8)
図14は、本例の冷却装置を構成する導風板122の斜視図である。本例の冷却装置の基本構成は、実施例2(図7)に係る冷却装置と同一である。尚、図14では、1つの導風板122のみが図示されているが、実際には、導風板122と対をなす導風板が液晶ユニット20を挟んで反対側に配置されている。すなわち、導風板の数及び配置関係は、図7(a)に示した例と共通である。
【0081】
しかし、本例の冷却装置を構成する導風板122は、冷却風の流出側の幅(W2)が流入側の幅(W1)よりも狭くなるように、その上部が絞られている。具体的には、対向する側壁122bの一方の上部を他方に近接するように傾斜させてある。尚、流入側の幅(W1)は、液晶ユニット20の光軸方向の長さ(L)と同程度である。
【0082】
図15(a)は、本例の冷却装置によって入射側空間Aおよび出射側空間Bに送り込まれる冷却風の流れを模式的に示す断面図である。同図に示すように、入射側空間Aの冷却は、不図示の空冷ダクトの吐出口から吐出され、直接空間Aにその下方から流入する第一の冷却風123aのみよって行われる。一方、出射側空間Bの冷却は、第一の冷却風123aと、導風板122a、122bによって風向が転向された第二の冷却風123b及び第三の冷却風123cとによって行われる。ここで、上記3つの冷却風123a〜123cが互いに直交状態或いは対向状態で衝突して旋回流が形成される点は、実施例2と同様である(図7(b)参照)。しかし、実施例2の冷却装置を構成している導風板62a、62bの幅(W)は一定である(図8参照)。これに対し、本例の冷却装置を構成している導風板122a、122bの幅は上記のように絞られている。この結果、導風板122a、122bによって風向が転向された第二の冷却風123b及び第三の冷却風123cの量及び速度は、実施例2の導風板62a、62bによって風向が転向された第二の冷却風63b及び第三の冷却風63c(図7(b))よりも増加する。よって、出射側空間B内に、より高い乱流性を持った旋回流が生成され、同空間Bにおける発熱面の冷却性能が飛躍的に向上する。
【0083】
ここで、図15(b)に示すように、2つの導風板122a、122bの絞りの向きを逆転させることもできる。この場合、入射側空間Aおよび出射側空間Bの双方において、より高い乱流性を持った旋回流が生成される。
【0084】
上記のような構成によれば、入射側空間A内または出射側空間B内において衝突する冷却風の量を個別に調整することができる。従って、空冷ダクトの屈曲に起因する風速の内・外周差により、各導風板に流入する冷却風の量が不均衡となる場合や、液晶ユニットを構成する各部材(入射側偏光板、液晶パネル、出射側偏光板)の発熱量がそれぞれ異なる場合などに、要求される冷却性能と実現できる冷却性能とを容易にマッチングさせることが可能となる。
【0085】
尚、ここでは実施例2に係る冷却装置との対比において本例の冷却装置の利点について述べた。しかし、既述の各実施例に係る冷却装置を構成する導風板に上記のような絞りを設けることによって上記と同様の作用効果が得られる。
【0086】
(実施例9)
図16(a)は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式的断面図であり、図16(b)は、同図(a)の部分拡大図である。また、図16(c)は、本例の冷却装置による冷却の原理を示す説明図である。
【0087】
図16(a)に示されているように、本例の冷却装置は、冷却ファン130と、空冷ダクト131と、遮風板132とを有する。空冷ダクト131は、略L字形の断面形状を有し、液晶ユニット20に冷却風を供給するための吐出口131aは、液晶ユニット20の側方に配置されている。一方、遮風板132は、略L字形の断面形状を有し、液晶ユニット20を挟んで空冷ダクト131の吐出口131aと反対側に配置されている。より具体的には、図16(b)に示すように、遮風板132は、水平な一面(底面132a)が液晶ユニット20の下端を閉塞し、底面132aと直交する一面(ブロック面132b)が空冷ダクト131の吐出口131aと対向する液晶ユニット20の側面と反対側の側面を閉塞するように配置されている。尚、図16には、空冷ダクト131の吐出口131aが紙面左側、遮風板132が紙面右側に配置された例が図示されているが、空冷ダクト131の吐出口131aと遮風板132の位置関係を左右逆転させてもよい。
【0088】
次に、本例の冷却装置による液晶ユニット20の冷却動作について説明する。図16(a)に示すように、冷却ファン130によって生み出された冷却風133は、液晶ユニット20の側方に用意された空冷ダクト131の吐出口131aから液晶ユニット20に向けて吐出される。吐出された冷却風133の一部は、入射側空間に流入し、同空間内を図16の紙面左側から右側に向かって流れる。一方、吐出された冷却風133の他の一部は、出射側空間に流入し、同空間内を図16の紙面左側から右側に向かって流れる。空冷ダクト131は、冷却風133を液晶パネルの表面に対して平行な向きで入射側空間内および出射側空間内へ流入させる供給手段として機能する。尚、以下の説明では、液晶ユニット20の入・出射側空間内を上記のように流れる冷却風を「横断送風」と呼ぶ。
【0089】
入・出射側空間内を通過した横断送風は、遮風板132のブロック面132bに衝突し、その風向をブロック面132bの表面に沿って変える。すなわち、遮風板132は、横断送風の進行を阻害し、該横断送風の風向を入・出射側空間内への冷却風の流入方向とは異なる方向に変える遮風手段として機能する。以下の説明では、ブロック面132bに衝突して風向を変えた冷却風(横断送風)を「壁面送風」と呼ぶ。
【0090】
冷却風の挙動を、図10(c)を参照して説明する。空冷ダクト131の吐出口131aに相当するノズル200から吐出された噴流201(横断送風)が壁面202(遮風板132のブロック面132b)に衝突した場合、その衝突部において澱み領域が形成される。また、その衝突部の周辺領域では、壁面202に沿って風向を変える壁面噴流領域が形成される。これは、先に説明したコアンダ効果による壁面滑りに相当する。具体的には、壁面202への衝突により強制的に速度ベクトルを転向させられて、壁面(固体境界)に沿って流れる噴流(いわゆる壁面噴流)は、澱み点近傍で最大の乱れ強さを示しつつ、そこから離れるにしたがって、その流速(UX)と乱れエネルギーを弱めながら、自由せん断層(壁面噴流による自由空間側の速度分布の作用領域)を拡大して流れていく。また、壁面との衝突によって方向を変えて壁面噴流領域を形成する壁面噴流(壁面送風)は、送風ベクトルの転向位置近傍において、乱流性と拡散性の高い旋回流を発生させる。以上により、先に説明した衝突噴流冷却のプロセス(2)(3)が実行され、高い冷却性能が得られる。
【0091】
さらに、壁面滑りによって遮風板132のブロック面132bにガイドされた冷却風は、発熱体(入射側偏光板、液晶パネル及び出射側偏光板)を冷却したあと、そのまま液晶ユニット20の外部へ送り出されるので、効率的な排熱処理を行うことができる。このとき、液晶ユニット20の下方へ向かう壁面滑りの流れは、遮風板132の底面132aによって遮られるため、冷却風は、主に液晶ユニット20の上方へ向けて排気(排熱)される。
【0092】
ここまでの説明からわかるように、本例の冷却装置では、冷却風が遮風板と衝突する位置の近傍において、その冷却風に乱流性を持たせて熱伝達率を改善し、高い冷却性能を得ている。従って、本例の冷却装置は、主に、小型の液晶パネルを採用して発熱体が「点熱源」に近いような液晶ユニットの冷却に対して適用するのが望ましく、そのような小型の構成機器に対して、低コストかつコンパクトでシンプルな構成の高効率冷却システムを提供することができる。
【0093】
(実施例10)
図17、図18は、本例の冷却装置を備えた液晶プロジェクタの内部構造の一部を示す模式図である。具体的には、図17(a)は冷却装置及びその近傍の構造を示す断面図であり、図17(b)は同図(a)の部分拡大図、(c)は冷却風の流れを示す説明図である。また、図18(a)(b)は液晶ユニット及びその近傍の構造を示す斜視図であり、(c)は遮風板の斜視図である。
【0094】
本例の冷却装置の基本構成は、実施例9に係る冷却装置と同一である。異なるのは、遮風板142の断面形状を略J字形とした点と、遮風板142に対向する側壁を設けた点である。具体的には、図16に示す遮風板132の底面132aに相当する底面142aと、ブロック面132bに相当するブロック面142bとを有する。しかし、本例における遮風板142のブロック面142bは、曲面によって構成されている。また、底面142aとブロック面142bとの間には、冷却風の漏洩を防ぐための側壁142cが対向状態で設けられている。
【0095】
次に、本例の冷却装置による液晶ユニット20の冷却動作について説明する。図17(a)に示すように、冷却ファン140によって生み出された冷却風143は、液晶ユニット20の側方に用意された空冷ダクト141の吐出口141aから液晶ユニット20に向けて吐出される。吐出された冷却風143の一部は、入射側空間に流入し、同空間内を図17の紙面左側から右側に向かって流れる。一方、吐出された冷却風143の他の一部は、出射側空間に流入し、同空間内を図17の紙面左側から右側に向かって流れる。以下の説明では、液晶ユニット20の入・出射側空間内を上記のように流れる冷却風を「横断送風」と呼ぶ。
【0096】
入・出射側空間内を通過した横断送風は、遮風板142のブロック面142bに衝突し、その風向をブロック面142bの表面(曲面)に沿って鋭角(θ)に変える。以下の説明では、ブロック面142bに衝突して風向を変えた冷却風を「壁面送風」と呼ぶ。
【0097】
この場合も、ブロック面142bに衝突して風向を変えた壁面送風は、その風向転回位置の近傍において旋回渦を発生させ、温度置換効果による高い冷却性能を示す。この点は、実施例9に係る冷却装置と同様である。しかし、遮風板142のブロック面142bに曲率が与えられている本例の冷却装置では、冷却風の挙動が実施例9に係る冷却装置と異なる点がある。
【0098】
冷却風の挙動を、図17(c)を参照して説明する。空冷ダクト141の吐出口141aに相当するノズル210から吐出された噴流211(横断送風)が湾曲した壁面212(遮風板142のブロック面142b)に衝突した場合、壁面噴流領域における壁面滑りによって形成される噴流(壁面送風)は、ノズル210から吐出される噴流(横断送風)に対してより鋭角に転回する(図16(c)と図17(c)とを対比)。
【0099】
ところで、曲率を有する壁面上の流れ(曲がりチャネル乱流)は、その曲率の増大に伴って半径方向の乱流強度が増加する流動特性を示す(壁乱流における運動量の流線曲率の効果)。
【0100】
従って、本例のように、遮風板142のブロック面142bを曲面とすることによって風向を急角度で転回させると、その風向転回位置の近傍の流れ(壁面送風)において乱流強度が増大し、高い熱伝達特性が得られることが期待できる。
【0101】
また本例においても、実施例9と同様に、壁面送風のうち液晶ユニット20の下方へ向かう送風は、遮風板142の底面142aによって遮られる。よって、主に液晶ユニット20の左上方へ向けてその送風ベクトルは転回され排気(排熱)される。
【符号の説明】
【0102】
20 液晶ユニット
21 入射側偏光板
22 液晶パネル
23 出射側偏光板
51、61、71、81、91、101、111、131、141 空冷ダクト
51a、61a、71a 第一の吐出口
51b、61b、71b 第二の吐出口
81b、81c、91b、91c、101a、111a、131a、141a 吐出口
52、102 導風板
62a、72a、82a、92a、112a 右側導風板
62b、72b、82b、92b、112b 左側導風板
132、142 遮風板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの面の間の空間に冷却風を供給して、前記2つの面の少なくとも一方の面の面内に設けられた発熱体を冷却する冷却装置であって、
前記冷却風を発生させる冷却風発生手段と、
前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記空間内へ流入させる供給手段と、
前記空間を通過した前記冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを前記空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記供給手段と前記遮風手段とが、前記空間を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記供給手段が、前記冷却風を前記空間へ向けて吐出する吐出口を有し、
前記遮風手段が、前記空間を挟んで前記吐出口と対向する位置に設けられた遮風板であることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記供給手段が前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を所定位置まで案内するダクトであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
対向する2つの面の少なくとも一方の面の面内に設けられた発熱体と、前記対向する2つの面の間の空間に冷却風を供給して前記発熱体を冷却する冷却装置とを有する電子機器であって、前記冷却装置が請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の冷却装置であることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
液晶パネルを挟んで入射側偏光板と出射側偏光板とが対向配置された液晶ユニットと、前記液晶パネルと前記入射側偏光板との間の入射側空間及び前記液晶パネルと前記出射側偏光板との間の出射側空間に冷却風を供給して前記液晶ユニットを冷却する冷却装置とを備えた液晶プロジェクタであって、
前記冷却装置は、
前記冷却風を発生させる冷却風発生手段と、
前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記入射側空間内及び前記出射側空間内へ流入させる供給手段と、
前記入射側空間及び前記出射側空間を通過した前記冷却風の進行を阻止し、該冷却風の向きを前記入射側空間及び前記出射側空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、
を有することを特徴とする液晶プロジェクタ。
【請求項1】
対向する2つの面の間の空間に冷却風を供給して、前記2つの面の少なくとも一方の面の面内に設けられた発熱体を冷却する冷却装置であって、
前記冷却風を発生させる冷却風発生手段と、
前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記空間内へ流入させる供給手段と、
前記空間を通過した前記冷却風の進行を阻害し、該冷却風の向きを前記空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記供給手段と前記遮風手段とが、前記空間を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記供給手段が、前記冷却風を前記空間へ向けて吐出する吐出口を有し、
前記遮風手段が、前記空間を挟んで前記吐出口と対向する位置に設けられた遮風板であることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記供給手段が前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を所定位置まで案内するダクトであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
対向する2つの面の少なくとも一方の面の面内に設けられた発熱体と、前記対向する2つの面の間の空間に冷却風を供給して前記発熱体を冷却する冷却装置とを有する電子機器であって、前記冷却装置が請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の冷却装置であることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
液晶パネルを挟んで入射側偏光板と出射側偏光板とが対向配置された液晶ユニットと、前記液晶パネルと前記入射側偏光板との間の入射側空間及び前記液晶パネルと前記出射側偏光板との間の出射側空間に冷却風を供給して前記液晶ユニットを冷却する冷却装置とを備えた液晶プロジェクタであって、
前記冷却装置は、
前記冷却風を発生させる冷却風発生手段と、
前記冷却風発生手段によって発生された前記冷却風を前記入射側空間内及び前記出射側空間内へ流入させる供給手段と、
前記入射側空間及び前記出射側空間を通過した前記冷却風の進行を阻止し、該冷却風の向きを前記入射側空間及び前記出射側空間への流入方向と異なる向きに変える遮風手段と、
を有することを特徴とする液晶プロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図24】
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【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−93773(P2012−93773A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266069(P2011−266069)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2007−242247(P2007−242247)の分割
【原出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2007−242247(P2007−242247)の分割
【原出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】
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