説明

冷却装置

【課題】冷却ファンとヒートシンクとを具備する冷却装置を提供する。
【解決手段】ヒートシンク21は加熱部材81に直接取り付けられ、中央熱消失体22と中央熱消失体22の周辺から伸延する複数のフィン26を具備し、冷却ファン50は熱を消散するためヒートシンク21の頂部に設置され、中央熱消失体22は完全に密閉された中空室221を具備し、中空室221内には冷却液が充填されるとともに攪拌体25が配置され、攪拌体25は磁性部材251を具備し、冷却ファン50の回転子53と対応する磁性部材54は、磁力による吸着作用及び相互に引き合う作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子製品の中央演算装置(CPU)に取り付けられ、中央演算装置内の熱を吸収、伝熱及び消散する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子製品のCPU冷却方法は、アルミニウム又は銅からなるヒートシンクを加熱部材に取り付け、接触伝熱によって加熱部材の底部から頂部へ熱を拡散し、さらに、熱を消散するために冷却ファンを用いている。しかし、CPUの性能の確実な向上に伴って増大する蓄熱速度によって、加熱部材への要求は冷却装置の熱伝達速度の限界をはるかに越えている。
【0003】
従って、台湾特許出願公開第M259218号では“相変化による冷却装置”は、シリンダ10と、シリンダ10に一体的に取り付けられる複数のフィン20とを具備する。シリンダ10の内部には空所40が形成されており、空所40内に温度変化に基づいて気相と液相との間を変換可能な作動油を充填することによって、高い熱伝導率を有する作動油を用いて、冷却装置の全体的な熱伝達効率を増加しようとしている。
【0004】
しかし、作動油は空所40内に未だ存在するため、熱が底部から上部に徐々に拡散するとき、フィン20は非等温現象を受け、頂部は高温となり、底部は低温となる。
【0005】
従って、台湾特許出願公開第M584269号では“攪拌液体を有するフィン”において、フィン40の基部30の内部には室31を形成し、同室31に熱伝導液32を充填し、攪拌装置60を基部30上に設けている。攪拌装置60は駆動装置62及び攪拌部材61を具備しており、駆動装置62は攪拌部材61を強制的に回転させることによって、攪拌部材61が乱流効果を熱伝導液32に及ぼし、フィン41を通じて熱の迅速かつ均一な拡散を確保すると共に、冷却性能を向上することができる。
【0006】
ここで、上記した特許に記載される攪拌部材61は、以下の2つのレイアウトパターンを有する。
【0007】
第1のレイアウトパターンは、図5に示すように、室31の外部に配置した駆動装置62と、攪拌部材61を強制的に回転するために外部から室31を貫通する軸とを具備する。
【0008】
かかるレイアウトでは、追加駆動装置62を室31の外部に配置することによって、冷却装置の全体寸法及び製造コストを相対的に低減することができる。さらに、駆動装置62は、室31を貫通する軸を攪拌部材61の駆動に用いているため、この軸と室31の壁間には間隙が形成されている。従って、室31はもはや封止空間とすることはできない。熱伝導液32は加熱源80の熱を吸収するので、室31内の圧力が上昇し、熱伝導液32は溢出しやすくなる。
【0009】
第2のレイアウトパターンは、冷却ファン50の伸延する回転軸が室31を貫通し、同回転軸の回転と共に攪拌部材61を駆動するようにしている。
【0010】
このようなレイアウトは冷却装置の寸法を小さくしかつ製造コストを低減することができるが、未だ、室31内の上昇圧力によって熱伝導液32が溢出するという問題が存在する。さらに、攪拌部材61と冷却ファン50は同一軸周りに同期して回転する。しかし、熱伝導液32の濃度は空気の濃度より大きいので、攪拌部材61が受ける抵抗は冷却ファン50が受ける抵抗より大きい。そして、攪拌部材61が受ける抵抗は、回転軸を介して冷却ファン50に伝達され、冷却ファン50の回転速度を不安定にし、かつ、冷却効率に悪影響を及ぼす。
【特許文献1】台湾特許出願公開第M259218号公報
【特許文献2】台湾特許出願公開第M584269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した点に鑑み、本発明は、冷却ファンとヒートシンクとを具備する冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は下記の特徴を有する冷却装置を提供する。
1.請求項1に記載の冷却装置は、冷却ファンとヒートシンクとを具備する冷却装置であって、前記ヒートシンクは、さらに冷却液が充填された完全密閉の中空室と、前記中空室内に配置された攪拌体とを具備する中央熱消失体を具備し、第1磁性部材が前記攪拌体に配置され、前記冷却装置は、前記冷却ファンの磁性引力動作によって、迅速な熱消失効果を得ることができることを特徴とする。
2.請求項2に記載の冷却装置は、請求項1の場合において、前記冷却ファン及び攪拌体は、前記磁力により引き合う動作によって間接的駆動動作を行うことを特徴とする。
3.請求項3に記載の冷却装置は、請求項1の場合において、前記冷却装置は前記冷却ファンのロータを具備し、前記冷却ファンのロータには、前記第1磁性部材と対応する位置で前記第2磁性部材が取り付けられ、前記磁性部材は磁石及び磁性吸引力を有する金属からなる群から選択したいずれかからなることを特徴とする。
4.請求項4に記載の冷却装置は、請求項1の場合において、前記第1磁性部材は前記攪拌体に取り付けた磁石からなり、磁力による吸着が前記磁石と回転子の鉄心モータハブとの間に形成されることを特徴とする。
5.請求項5に記載の冷却装置は、請求項1の場合において、前記中央熱消失体にカバーが取り付けられ、前記カバーに対応する前記中央熱消失体の頂部は環状溝を具備し、同環状溝にはOリングが嵌入され、前記中空室を完全に密閉された空間とすることを特徴とする。
6.請求項6に記載の冷却装置は、請求項5の場合において、前記中央熱消失体に孔が形成され、前記孔は前記環状溝の外周部に配置されると共に前記カバーに設けた突起と対応し、前記突起が前記孔内に挿入されることを特徴とする。
7.請求項7に記載の冷却装置は、請求項1の場合において、前記中空室の内部底壁又は内壁には複数のフィンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記により、本発明は、冷却ファンの回転子と攪拌体間の磁力による吸着によって、より迅速かつ良好な熱消失効果を得ることができ、中空室を完全に密閉室に維持して冷却液の溢出に関する問題を解決でき、冷却ファンの回転速度に影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、冷却ファン50とヒートシンク21とを具備する冷却装置に関する。ヒートシンク21は被熱吸収物である加熱部材81に直接取り付けられ、冷却ファン50は熱を消散するためヒートシンク21の頂部に載置されている。好ましい実施例を以下例示する。
【0015】
(実施例1)
図1及び図2を参照して説明すると、ヒートシンク21は、中央熱消失体22と、中央熱消失体22の周辺から伸延する複数のフィン23とを具備する。中央熱消失体22はその底部で加熱部材81に直接接触しており、中央熱消失体22内に中空室221が形成されている。カバー24が中空室221の頂部上に配置され、カバー24と対応する、中央熱消失体22の頂部に環状スロット222が形成され、環状スロット222にはO−リング223が装着され、室221を密封室としている。
【0016】
さらに、中空室221内には冷却液が充填されている。冷却液は、熱を吸収して気体―液体変換可能な水、凝縮物又は他の液体からなる。カバー24の内側には攪拌体25が配置されている。攪拌体25は磁性部材251を具備しており、冷却ファン50の回転子53と対応する磁性体251は、磁力による吸着作用及び相互に引き合う作用を有する。
【0017】
図1に示すように、相互引力係合手段は、攪拌体25と冷却ファン50の回転子53にそれぞれ取り付けた磁性部材251,54から構成される。磁性部材251,54は、例えば、磁石や磁性吸引力を有する金属等の磁性材料からなり、カバー24によって分離される磁性部材251,54は相互に対応して磁性引力効果を生じる。
【0018】
その結果、冷却ファン50の回転子53を回転すると、攪拌体25が、磁性部材251,54の磁力による吸着によって、冷却ファン50の回転子53と共に同時に回転し、中空室221内に充填されている冷却液を攪拌する。熱を吸収した冷却液は、動的な熱液に変換され、熱をフィン23の各片に均一にかつ迅速に伝熱し、冷却ファン50の熱消散を促進し、より速やかにかつ大きな温度冷却効果を得ることができる。
【0019】
(実施例2)
図3を参照して説明すると、攪拌体25と冷却ファン50の回転子53を相互に引き合う相互引力係合手段は、図3にも示すように、攪拌体25上に配置した磁性部材251を具備する。磁性部材251は、回転子53と対応する位置で、モータの鉄心ハブ55に磁力で引き合う機能を持たせる磁石からなる。
【0020】
第1実施例と同様に、攪拌体25は冷却ファン50の回転子53と同時に回転し、中空室221内の冷却液を攪拌する。
【0021】
攪拌体25が磁性部材251,54を介して冷却ファン50の回転子53によって磁性的に引かれると、冷却ファン50の回転子53の回転によって、攪拌体25は冷却液が保有する熱を動的に拡散してフィン23の各片に伝導する。さらに、冷却ファン50の熱消散によって、より良い冷却効果を確実に得ることができる。その理由は、磁性部材251,54を介して相互に引き合った状態で作動する冷却ファン50と攪拌体25は、間接駆動動作を行うので、中空室221は未だ完全密封状態に維持され、冷却液の溢流という問題を生じることはない。さらに、冷却ファン50の回転子53と攪拌体25間の磁力による吸着によって、攪拌体25に生じる大きな抵抗にも拘わらず、冷却ファン50の回転速度はその影響を受けることはない。
【0022】
(実施例3)
図4を参照して説明すると、中央熱消失体22の頂部には孔224が設けられている。孔224は中央熱消失体22の頂部の外周部に位置している。また、突起241がカバー24に取り付けられており、この突起241を孔224に嵌入することによって、カバー24と中空室221との封止効果を高めることができると共に、位置決め効果も高めることができる。
【0023】
(実施例4)
図5を参照して説明すると、中空室221の内部底部又は内壁にも複数のフィン26を設けることができる。これらのフィン26によって、冷却効果の乱流効果を促進することができ、熱をより迅速かつ均一に各フィン23に伝導することができる。
【0024】
本発明を現時点で最も実用上好ましいと思われる実施例を参照して説明してきたが、本発明は開示された実施例に限定されるものではないことは理解されるべきである。むしろ、本発明は、請求項の要旨及び範囲内でなされる変容例や同様な装置も含むものとし、このような変容例や同様な構造を含むように広く解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明(実施例1)を示す模式断面図である。
【図2】本発明(実施例1)を示す分解模式図である。
【図3】本発明(実施例2)を示す模式断面図である。
【図4】本発明(実施例3)を示す模式分解図である。
【図5】本発明(実施例4)を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0026】
21 ヒートシンク
22 中央熱消失体
221 中空室
222 環状スロット
223 O−リング
224 孔
23 フィン
24 カバー
241 突起
25 攪拌体
251 磁性部材
26 フィン
50 冷却ファン
53 回転子
54 磁性部材
55 鉄心ハブ
81 加熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンとヒートシンクとを具備する冷却装置であって、
前記ヒートシンクは、さらに冷却液が充填された完全密閉の中空室と、前記中空室内に配置された攪拌体とを具備する中央熱消失体を具備し、
第1磁性部材が前記攪拌体に配置され、
前記冷却装置は、前記冷却ファンの磁性引力動作によって、迅速な熱消失効果を得ることができることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ファン及び攪拌体は、前記磁力により引き合う動作によって間接的駆動動作を行うことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置は前記冷却ファンのロータを具備し、前記冷却ファンのロータには、前記第1磁性部材と対応する位置で前記第2磁性部材が取り付けられ、前記磁性部材は磁石及び磁性吸引力を有する金属からなる群から選択したいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1磁性部材は前記攪拌体に取り付けた磁石からなり、磁力による吸着が前記磁石と回転子の鉄心モータハブとの間に形成されることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項5】
前記中央熱消失体にカバーが取り付けられ、前記カバーに対応する前記中央熱消失体の頂部は環状溝を具備し、同環状溝にはOリングが嵌入され、前記中空室を完全に密閉された空間とすることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項6】
前記中央熱消失体に孔が形成され、前記孔は前記環状溝の外周部に配置されると共に前記カバーに設けた突起と対応し、前記突起が前記孔内に挿入されることを特徴とする請求項5記載の冷却装置。
【請求項7】
前記中空室の内部底壁又は内壁には複数のフィンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−73922(P2007−73922A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8072(P2006−8072)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(505381910)サノンウェルス エレクトリック マシーン インダストリー カンパニー リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】Sunonwealth Electric Machine Industry Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】12th Froor, 120 Chung Cheng 1st Road, Ling Ya Dt., Kaohsiung City, TAIWAN
【Fターム(参考)】