説明

凍結乾燥天ぷら用バッターミックス、該ミックスを用いたバッター、凍結乾燥天ぷらの製造方法及び凍結乾燥天ぷら

【課題】湯戻りが良く、熱湯を注ぐことにより食感及び外観の良好な天ぷらとなる凍結乾燥天ぷらを、簡単な工程で製造効率良く得ることができる、凍結乾燥天ぷら用バッターミックス及び該ミックスを用いたバッター、凍結乾燥天ぷらの製造方法を提供すること。
【解決手段】50〜99質量%の油脂加工澱粉と、増粘剤、α化穀粉及び澱粉から選ばれる1種以上を含有する凍結乾燥天ぷら用バッターミックス。該バッターミックス100重量部に対し、200質量部以上の水を加えてなり、且つその粘度が2000〜10000mPa・sであることを特徴とする凍結乾燥天ぷら用バッター。及び、前処理された原料種に、打ち粉を付着させずに、上記の凍結乾燥天ぷら用バッターを付着させ、次いで、バッターを付着させた原料種に揚げ玉を付着させ、この揚げ玉を付着させた原料種を加熱し、その後、凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥天ぷらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺の具材などとして好適な凍結乾燥天ぷらを製造するためのバッターミックス、該ミックスを用いたバッター、凍結乾燥天ぷらの製造方法、及び凍結乾燥天ぷらに関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺の具材として利用される天ぷらとしては、熱湯を注ぐことにより良好に復元(湯戻り)し、本来の天ぷらと変わらない食感及び外観となることが求められる。
この即席麺の具材として利用される天ぷらとして、凍結乾燥法により得られた天ぷらが知られている。この凍結乾燥天ぷらは、フライなどの油熱処理をせず、凍結乾燥を利用することにより、熱湯での良好な復元性(湯戻り)を付与させようとするものである。例えば、特許文献1には、頭部や殻の除去などの前処理をした原料エビを、ボイル、冷却、打ち粉付け、バッター付け、天かす(揚げ玉)付けの各工程を経て凍結乾燥する凍結乾燥エビ天ぷらの製造方法が開示されている。
しかし、この方法により得られる凍結乾燥エビ天ぷらは、湯戻りが不十分で食感が固く、改善する余地のあるものであった。
【0003】
また、特許文献2には、加熱処理した原料種を、別に調製した成型フライ衣で被覆して一体化し、これを凍結乾燥する凍結乾燥天ぷら様食品の製造方法が開示されている。
しかし、この方法は、予め成型フライ衣を調製する必要があるため、煩雑で製造効率が悪く、また成型フライ衣で原料種を覆うため、湯戻りが不十分となることがあった。
【0004】
【特許文献1】特許第3613566号公報
【特許文献2】特開2008−43267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、湯戻りが良く、熱湯を注ぐことにより食感及び外観の良好な天ぷらとなる凍結乾燥天ぷらを、簡単な工程で製造効率良く得ることができる、凍結乾燥天ぷら用バッターミックス及び該ミックスを用いたバッター、凍結乾燥天ぷらの製造方法並びに該製造方法により得られた凍結乾燥天ぷらを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の凍結乾燥天ぷら用バッターミックス、バッター及び凍結乾燥天ぷらの製造方法並びに凍結乾燥天ぷらを提供することにより、上記目的を達成したものである。
50〜99質量%油脂加工澱粉と、増粘剤、α化穀粉及び澱粉から選ばれる1種以上を含有する凍結乾燥天ぷら用バッターミックス。
上記の本発明のバッターミックス100質量部に対し、加水率を200質量部以上の水を加えてなり、且つ、その時の粘度が2000〜10000mPa・sであることを特徴とする凍結乾燥天ぷら用バッター。
前処理された原料種に、打ち粉を付着させずに、上記の本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターを付着させ、次いで、バッターを付着させた原料種に揚げ玉を付着させ、この揚げ玉を付着させた原料種を加熱し、その後、凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥天ぷらの製造方法。
上記の本発明の凍結乾燥天ぷらの製造方法により得られた凍結乾燥天ぷら。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、湯戻りが良く、熱湯を注ぐことにより食感及び外観の良好な天ぷらとなる凍結乾燥天ぷらを、簡単な工程で製造効率良く得ることができる。本発明により得られる凍結乾燥天ぷらは、即席麺の具材などとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックスについて説明する。
本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックスは、油脂加工澱粉と、増粘剤、α化穀粉及び澱粉から選ばれる1種以上を含有する。
【0009】
上記油脂加工澱粉は、植物性油脂類を澱粉に混合し、加熱や乾燥などの処理を行ったものである。原料の澱粉の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。また、これらの化工澱粉を使用しても良い。
また、上記植物性油脂類の種類としては、食用であれば特に制限されるものではなく、大豆油、菜種油、綿実油、紅花油、ヒマワリ油、米油、コーン油、パーム油、エゴマ油などが挙げられ、上記食用油脂の一部または全部の代替品として油分を多く含む穀粉、例えば生大豆粉などを用いてもよい。
このような油脂加工澱粉は、バッター用澱粉BT−500(商品名、三和澱粉工業社製)や日食バッタースターチIP(#0)(商品名、日本食品化工社製)などとして市販されており、本発明ではこれら市販品を用いることができる。
【0010】
上記油脂加工澱粉の含有量は、本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックス中、50〜99質量%であり、60〜90質量%が好ましく、70〜85質量%がより好ましい。上記油脂加工澱粉の含有量が50質量%より少ないと、湯戻し時に具材部分と衣部分が剥離し易く、また上記油脂加工澱粉の含有量が99質量%より多いと、湯戻りし難くなる。
【0011】
本発明で用いられる上記増粘剤としては、例えば、グアガム、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられ、これらなかでも、グアガム、キサンタンガムが好ましい。
【0012】
本発明で用いられる上記α化穀粉又は澱粉としては、原料の澱粉の種類に制限されるものではなく、例えば、小麦粉、コーンスターチ、小麦澱粉、タピオカ澱粉など、いずれの穀粉のものでも良いが、これらなかでも、タピオカ澱粉が好ましい。
【0013】
上記の増粘剤、α化穀粉又は澱粉の含有量は、増粘剤を単独使用する場合は、1〜5質量%が好ましく、2〜3質量%がより好ましい。
α化穀粉又は澱粉を単独使用する場合は、3〜10質量%が好ましく、5〜7質量%がより好ましい。
増粘剤及びα化穀粉又は澱粉を併用する場合は、増粘剤1〜3質量%及びα化穀粉又は澱粉は1〜4質量%が好ましく、増粘剤1.5〜2質量%及びα化穀粉又は澱粉は2〜3質量%がより好ましい。
【0014】
本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックスには、上記の油脂加工澱粉と、増粘剤、α化穀粉及び澱粉から選ばれる1種以上の他に、天ぷら用バッターミックスに従来用いられている原材料や添加物、例えば、小麦粉、その他の穀粉類、大豆蛋白、小麦蛋白、卵粉末、食物繊維、膨張剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料などを適宜含有させることができる。
【0015】
本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックスは、加水率200〜500質量%で使用し、その時の粘度が2000〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは加水率が250〜400質量%での粘度が2500〜5000mPa・s、より好ましくは加水率が300〜350質量%での粘度が2500〜4000mPa・sである。
加水率200〜500質量%での粘度が2000mPa・sより低いと、バッターを付着させた具材への揚げ玉の付着が悪くなり、また上記粘度が10000mPa・sより高いと、バッターを具材に付着させ難くなる。
上記粘度は、油脂加工澱粉、増粘剤、α化穀粉、澱粉の配合割合、増粘剤やα化穀粉、澱粉の選択などにより適宜調整することができる。
尚、上記粘度の測定方法及び測定条件は次の通りである。
バッターミックス100gに対し、特定の比率の水をホイッパーで均一に混合後、10分静置し、バッター液を調整する。調整したバッターを200mlのビーカーに入れ、BM型粘度計(東機産業株式会社製)を1分間稼動させ、生地粘度を測定する。
【0016】
本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターは、上述の本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックス100質量部に対し、200質量部以上、好ましくは200〜500質量部、より好ましくは250〜400質量部、さらに好ましくは300〜350質量部の水を加えてなり、且つ、その粘度が2000〜10000mPa・s、好ましくは、2500〜5000mPa・s、より好ましくは、2500〜4000mPa・sのものである。
【0017】
水の添加量が少なすぎると、湯戻し時の具材の戻りが悪くなり、また水の添加量が多すぎると、バッターを付着させた具材への揚げ玉の付着が悪くなる。また、上記バッターの粘度が低すぎると、バッターを付着させた具材への揚げ玉の付着が悪くなり、また上記バッターの粘度が高すぎると、バッターを具材に付着させ難くなる。
【0018】
次に、本発明の凍結乾燥天ぷらの製造方法について説明する。
本発明の凍結乾燥天ぷらの製造方法は、バッターとして、上述した本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターを用いるものである。
【0019】
上記バッターは、原料種に打ち粉を付着させることなく、原料種に直接付着させる。
上記バッターの原料種への付着方法は、常法により行えばよい。また、原料種への付着量は、従来と同程度で良く、原料種の種類などによっても異なるが、通常、原料種100質量部に対し、50〜150質量部程度、好ましくは70〜120質量部程度とすると良い。
【0020】
上記バッターを付着させる原料種としては、制限されるものではなく、例えば、海老、イカ、キス、アナゴ、南瓜、蓮根、薩摩芋、牛蒡などが挙げられる。
これらの原料種は、それぞれ原料種の種類に応じて前処理されたものである。この前処理は通常の前処理であり、例えば、原料種として海老を用いる場合には、頭部、殻及び必要に応じて背わたの除去などである。
原料種の大きさは、特に制限されるものではなく、通常の天ぷらに用いられるサイズの原料種を用いることができる。
【0021】
また、上記前処理として、原料種に加熱処理を施すことが好ましい。この加熱処理としては、ボイル、蒸煮、油ちょうなどが挙げられ、これらなかでもボイルが好ましい。
ボイルは、原料種の種類や重量によっても異なるが、通常、熱湯中で1〜2分間程度行えば良い。
【0022】
また、原料種として海老、イカ、キス、アナゴなどを用いる場合には、原料種をリン酸塩水溶液に浸漬することが好ましい。このリン酸塩水溶液への浸漬は、原料種に上記の加熱処理を施す場合には、該加熱処理前に行うことが好ましい。
上記リン酸塩としては、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸のナトリウムやカリウム塩などが挙げられ、その水溶液の濃度は、リン酸塩の種類によっても異なるが、通常、0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜3.0質量%程度とすると良い。また、浸漬時間は、2〜12時間程度である。
【0023】
次いで、上記のようにして前処理した原料種に本発明の凍結乾燥天ぷら用バッターミックスを加水して得られるバッターを付着させた後、揚げ玉を付着させる。
揚げ玉としては、通常の天かすを用いることができる。付着方法は、例えば、バッターを付着させた原料種に揚げ玉をまぶせば良く、またその付着量は、通常、原料種100質量部に対し、揚げ玉を50〜150質量部程度、好ましくは70〜120質量部程度とすると良い。
【0024】
次いで、揚げ玉を付着させた原料種を加熱する。この加熱手段は、蒸煮、ボイル、油ちょう、熱風などを採用することができるが、蒸煮が好ましい。この蒸煮は、具材の種類や重量によって異なるが、通常、好ましくは1〜5分間程度、より好ましくは2〜3分間程度行うと良い。
【0025】
上記加熱後、凍結乾燥する。この凍結乾燥は、例えば、−25℃以下で1〜24時間程度予備冷凍した後、真空度0.3〜1Torr、好ましくは0.5〜0.6Torrの減圧下、温度20〜80℃、好ましくは50〜60℃の条件で行うのが好ましい。また、この凍結乾燥は、得られる凍結乾燥天ぷらの水分が、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜3質量%となるように行うことが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。
【0027】
実施例1〜3及び比較例1〜2
<凍結乾燥天ぷら用バッターミックスの調製>
表1に示す配合により凍結乾燥天ぷら用バッターミックスをそれぞれ調製した。
尚、油脂加工澱粉としては下記のものを用いた。
油脂加工澱粉:バッター用澱粉BT−500(三和澱粉工業社製)
【0028】
【表1】

【0029】
実施例4〜6及び比較例3〜5
<評価試験>
実施例1〜3及び比較例1〜2で調製した凍結乾燥天ぷら用バッターミックスを用いて、下記(1) 〜(5) のようにして凍結乾燥海老天ぷらをそれぞれ製造した。
(1) 原料の冷凍無頭海老(サイズ:61〜70mm、重量:10〜12g)を解凍し、殻及び背わたを除去後、3%ポリリン酸ナトリウム水溶液に4時間浸漬する。水切りを行った後、熱湯中で1分間ボイルを行う。湯切りを行った後、放冷する。
(2) 上記(1) の前処理を行った海老に、実施例1〜3及び比較例1〜2で調製した凍結乾燥天ぷら用バッターミックスを表2に示す加水率で加水して得られたバッターを用いてバッターリングを行い、バッターを付着させる。バッターの粘度はそれぞれ表2に示す通りである。尚、比較例5においては、バッターを付着させる前に、上記(1) の前処理を行った海老に打ち粉を付着させた。
(3) バッターリングした海老に揚げ玉をまぶして付着させる。
(4) 揚げ玉を付着させた海老を蒸し器にて2分間蒸す。
(5) 放冷し、−25℃で4時間予備冷凍した後、真空乾燥機にて真空度0.5Torr、温度50℃で一晩乾燥処理を行い、凍結乾燥海老天ぷらを得る。得られた凍結乾燥海老天ぷらの水分は、3質量%程度であった。
【0030】
このようにして得られた凍結乾燥海老天ぷらについて、熱湯を150ml注ぎ、3分間放置後、食感及び外観を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0031】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜99質量%の油脂加工澱粉と、増粘剤、α化穀粉及び澱粉から選ばれる1種以上を含有する凍結乾燥天ぷら用バッターミックス。
【請求項2】
前記請求項1に記載のバッターミックス100質量部に対し、200質量部以上の水を加えてなり、且つ、その粘度が2000〜10000mPa・sであることを特徴とする凍結乾燥天ぷら用バッター。
【請求項3】
前処理された原料種に、打ち粉を付着させずに、前記請求項2に記載のバッターを付着させ、次いで、バッターを付着させた原料種に揚げ玉を付着させ、この揚げ玉を付着させた原料種を加熱し、その後、凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥天ぷらの製造方法。
【請求項4】
前記前処理は、原料種に対するボイルである前記請求項3に記載の凍結乾燥天ぷらの製造方法。
【請求項5】
前記の揚げ玉を付着させた原料種の加熱が、該揚げ玉を付着させた原料種を蒸煮することである前記請求項3又は4に記載の凍結乾燥天ぷらの製造方法。
【請求項6】
前記請求項3〜5のいずれか1項に記載の凍結乾燥天ぷらの製造方法により得られた凍結乾燥天ぷら。

【公開番号】特開2009−284827(P2009−284827A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140746(P2008−140746)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】