説明

凍結乾燥容器および凍結乾燥容器の製造方法

【課題】製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および凍結乾燥時の熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要な凍結乾燥容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の凍結乾燥容器10は、凍結乾燥物が収容される金属製の容器本体11と、容器本体11に嵌合される金属製の栓21とを備え、容器本体11の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層12が継ぎ目なく形成され、かつ栓21の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層22が継ぎ目なく形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥容器および凍結乾燥容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛋白質製剤、抗生物質などの医療用薬剤には、有効成分の安定性を保つため、凍結乾燥処理が施される。
凍結乾燥物は以下の操作により凍結乾燥容器に収容される。まず、凍結乾燥容器の容器本体内に、凍結乾燥物の原液を充填する。次に、容器本体に栓を半打栓し、該容器本体を、凍結乾燥装置内の加熱と冷却機能を備えた棚(加熱冷却棚)の上に配置する。さらに、容器本体を該加熱冷却棚で冷却し、凍結乾燥物の原液を凍結処理する。次に、原液を凍結状態に保ったまま減圧乾燥する。その後、凍結乾燥装置内に窒素ガスを供給して容器本体内を大気圧に戻すことで、容器本体内をガス置換した後、容器本体に栓を完全打栓する。このようにして、凍結乾燥容器に凍結乾燥物が収容される。
【0003】
このような凍結乾燥容器から凍結乾燥物を取り出すには、凍結乾燥容器の栓に注射針を貫通させ、凍結乾燥容器内に凍結乾燥物を溶解するための所定の溶解液を注入し、該溶解液で凍結乾燥物を溶解する。その後、凍結乾燥物の溶液を注射針で吸引する。このようにして、凍結乾燥物の溶液を凍結乾燥容器から取り出す。
【0004】
このような凍結乾燥容器の容器本体には、主にガラス容器が用いられてきた。ガラス容器はガスバリア性に優れるため、酸素や水分が容器内に透過せず、凍結乾燥物が変質しにくい。しかし、ガラス容器は衝撃に弱く、破損しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、ガラス容器に代わるものとして、プラスチック容器を用いた凍結乾燥容器が種々製品化されている。プラスチック容器は、ガラス容器に比べて破損しにくい。ところが、プラスチック容器は、酸素や水分が容器内に透過しやすく、ガラス容器に比べてガスバリア性に劣るという問題があった。このため、プラスチック容器でガスバリア性を確保するには、容器の肉厚を厚くする必要があった。ところが、プラスチック容器は、ガラス容器に比べて熱伝導性に劣るため、容器の肉厚が厚いと、凍結乾燥時の凍結処理に時間がかかるという問題があった。
【0006】
また、ガラス容器に代わるものとして、ステンレスを用いた凍結乾燥容器が提案されている(特許文献1参照)。ステンレス容器は優れたガスバリア性を有し、さらにガラス容器に比べて破損しにくい。
【特許文献1】特開平6−30974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ステンレス容器は、材料費や成形加工費などの製造コストが嵩むという問題があった。
ところで、従来の凍結乾燥容器用の栓には、ゴム栓が使用されている。しかし、ゴム栓は高価で、凍結乾燥容器の製造コストを押し上げる原因であるとともに、ゴム栓と容器本体とを分別廃棄する必要があった。
また、従来の凍結乾燥容器は、打栓後にゴム栓が容器本体から脱落しないよう、容器本体とゴム栓とをかしめるアルミニウム製の留め具が必要であり、分別廃棄が必要であるとともに、製造コストがさらに嵩んでいた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性に優れ、容器の肉厚を薄くでき、さらに使用後の分別廃棄が不要な凍結乾燥容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)凍結乾燥物が収容される金属製の容器本体と、該容器本体に嵌合される金属製の栓とを備えた凍結乾燥容器であって、
前記容器本体の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層が継ぎ目なく形成され、
かつ前記栓の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層が継ぎ目なく形成されていることを特徴とする凍結乾燥容器。
(2)前記栓に、該栓に貫通させる注射針に密着し、該栓に空隙が生じないようにする再封止層が設けられている(1)に記載の凍結乾燥容器。
(3) 凍結乾燥物が収容される金属製の容器本体と、該容器本体に嵌合される金属製の栓とを備えた凍結乾燥容器の製造方法であって、
アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを用いて前記容器本体を成形し、
かつアルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを用いて前記栓を成形することを特徴とする凍結乾燥容器の製造方法。
(4)アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを深絞り成形して、前記容器本体と前記栓とを成形することを特徴とする(3)に記載の凍結乾燥容器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凍結乾燥容器は、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性に優れ、かつ容器の肉厚を薄くできるので凍結乾燥時の熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要である。本発明の凍結乾燥容器の製造方法によれば、この凍結乾燥容器を効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10は、凍結乾燥物が収容される容器本体11と、容器本体11に嵌合される栓21とを備える。
【0011】
容器本体11は、金属層12と、金属層12の内側に形成された合成樹脂内層13と、金属層12の外側に形成された合成樹脂外層14とから形成されている。また、容器本体11の上端は、凍結乾燥物の原液を充填する開口15とされている。また、開口15の内周には中栓16が設けられ、開口15の外周にはフランジ17が形成されている。容器本体11は、図2に示すように断面円形とされているが、容器本体11が自立できるものであれば他の断面形状であってもよい。
【0012】
容器本体11の肉厚は、20〜1000μmが好ましい。20μm以上であれば、容器本体11の強度を充分に確保できる。1000μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保できる。
なお、容器本体11は、凍結乾燥容器10を金属として廃棄することを鑑みて、質量比で金属を主とするのが好ましい。
【0013】
金属層12は、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種から形成されている。これらの金属は、従来、凍結乾燥容器に用いられていたステンレスに比べて、成形加工性に優れ、かつ材料費および成形加工費といった製造コストが安価である。また、これら4種の金属の中でも、アルミニウムが好ましい。アルミニウムは、比較的柔らかい金属であるため、成形加工性に特に優れているとともに、凍結乾燥容器として要求される強度も備えている。さらに、アルミニウムは、金属の中でも材料費が安価であり、入手も容易であるとともに、熱伝導性にも優れている。なお、本発明に用いられるアルミニウムとしては、アルミニウムに、鉄、銅、マンガン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛などが含有されたアルミニウム合金も含む。
【0014】
金属層12の厚さは1〜1000μmが好ましく、20〜500μmがより好ましい。金属層12の厚さが1μm以上であれば、充分なガスバリア性を有することができ、かつ容器本体11の強度を充分なものとすることができる。金属層12の厚さが1000μm以下であれば、金属の使用量を抑えることができる。
【0015】
金属層12は、容器本体11のガスバリア層として機能する。金属層12は、容器本体11に、容器本体11の全体に継ぎ目なく形成されている。金属層に継ぎ目があると、該継ぎ目に隙間が生ずるなどしてガスバリア性が低下する可能性がある。本発明では、継ぎ目なく金属層12が形成されていることで、継ぎ目から酸素や水分が侵入する恐れがない。これにより、本発明の凍結乾燥容器10は、優れたガスバリア性を有することができる。
【0016】
また、金属層12は、金属で形成されているために強度に優れ、十分な強度を確保しつつ、容器本体11の肉厚を薄くすることができる。したがって、本発明の凍結乾燥容器10は、優れた熱伝導性を有することができる。
【0017】
合成樹脂内層13は、金属層12を形成する金属が医療用薬剤(収容物)と反応しないように、金属層12と収容物との接触を防止するために設けられている。合成樹脂内層13を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂およびこれらの共重合体や混合樹脂などが挙げられる。中でも、凍結乾燥物への影響が少ないポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、合成樹脂内層13は、複数の層からなる多層構造とされていてもよい。
【0018】
合成樹脂内層13の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂内層13の厚さが1μm以上であれば、取り扱い時の擦れなどから金属層12を充分に保護することができる。合成樹脂内層13の厚さが600μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保することができる。
【0019】
合成樹脂外層14は、金属層12への錆や傷の発生を防止するために設けられている。合成樹脂外層14を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、およびこれらの共重合体や混合樹脂などが挙げられる。また、合成樹脂外層14は、複数の層からなる多層構造とされていてもよい。
【0020】
合成樹脂外層14の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂外層14の厚さが1μm以上であれば、金属層12の錆の防止に有効であり、また取り扱い時の擦れなどによって金属層12に傷が生じるのを防止することができる。合成樹脂外層14の厚さが600μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保することができる。
【0021】
なお、この実施形態例では、金属層12、合成樹脂内層13および合成樹脂外層14で形成された容器本体11を例示したが、本発明は容器本体11が金属製とされ、かつ容器本体11の全体に継ぎ目なく金属層12が形成されていればよい。すなわち、容器本体11は、金属層12のみで形成されていてもよく、金属層12と合成樹脂内層13のみで形成されていてもよく、金属層12と合成樹脂外層14のみで形成されていてもよく、合成樹脂内層13および/または合成樹脂外層14に、他の層がさらに積層されていてもよい。また、容器本体11は、金属層12の表面に、アルマイト処理、クロメート処理、ジルコニウム系化成処理、フッ化処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
【0022】
中栓16は、開口15を補強し、容器本体11と栓21とをより堅固に嵌合するために設けられる。
中栓16を形成する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチック、および熱可塑性エラストマー、ゴムが挙げられる。中栓16は、容器本体11と栓21との嵌合をより確実にするためのものである。中栓16は、容器本体11と溶着され、気密性をより完全とすることが好ましい。
また、後述する栓21の切欠き30に相当する部分を中栓16に設けて、中栓16の内周面側と、切欠き30を具備しない栓の外周面側とが接して嵌合する構造としてもよい。さらには、後述する栓21の切欠き30に相当する部分を中栓16に設けて、中栓16の外周面側と、切欠き30を具備しない栓の内周面側とが接して嵌合する構造としてもよい。なお、容器本体11と栓21とを直接嵌合する構成にした場合には、中栓16を省略してもよい。
【0023】
次に、栓21について図1および図3を参照しながら説明する。
栓21は、図1に示すように、金属層22と、金属層22の内側に形成された合成樹脂内層23と、金属層22の外側に形成された合成樹脂外層24とから形成されている。また、栓21は、打栓により容器本体11の開口15を塞ぐ頭部25と、頭部25の下方に連続して形成され、打栓により開口15に嵌合される脚部26とを有している。また、脚部26は、図3に示すように、切欠き30(図3では4箇所)を有している。切欠き30は、凍結乾燥物の原液の減圧乾燥において、半打栓された凍結乾燥容器10内外を繋ぎ、凍結乾燥容器10内から空気及び水分を逃がすために設けられている。
【0024】
金属層22は、容器本体11の金属層12と同様の金属で構成され、好ましい金属も容器本体11と同様である。
金属層22の厚さは1〜1000μmが好ましく、20〜500μmがより好ましい。金属層22の厚さが1μm以上であれば、充分なガスバリア性を有することができ、かつ栓21の強度を充分なものとすることができる。金属層22の厚さが1000μm以下であれば、金属の使用量を抑えることができる。なお、栓21は、凍結乾燥容器10を金属として廃棄することを鑑みて、質量比で金属を主とするのが好ましい。
【0025】
金属層22は、容器本体11の金属層12と同様に、栓21の全体に継ぎ目なく金属層22が形成され、栓21のガスバリア層として機能する。これにより、本発明の凍結乾燥容器10は、優れたガスバリア性を有することができる。
また、栓21は、金属で形成された金属層22によって優れた強度を有しており、十分な強度を確保しつつ、栓21の肉厚を薄くすることができる。したがって、本発明の凍結乾燥容器10は、容器本体11のみならず、栓21も金属製であり、優れた熱伝導性を有することができる。
【0026】
合成樹脂内層23は、容器本体11の合成樹脂内層13と同様に、金属層22が医療用薬剤(収容物)と反応しないように、金属層22と収容物との接触を防止するために設けられている。
合成樹脂内層23を形成する樹脂としては、容器本体11の合成樹脂内層13と同様の樹脂が挙げられ、好ましい樹脂も同様である。
合成樹脂内層23の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂内層23の厚さが1μm以上であれば、取り扱い時の擦れなどから金属層22を充分に保護することができる。合成樹脂内層23の厚さが600μm以下であれば、栓21の熱伝導性を充分に確保することができる。
【0027】
合成樹脂外層24は、合成樹脂外層14と同様に、金属層22に錆や傷が生ずるのを防止するために設けられている。
合成樹脂外層24を形成する樹脂としては、容器本体11の合成樹脂外層14と同様の樹脂が挙げられ、好ましい樹脂も同様である。
合成樹脂外層24の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂外層24の厚さが1μm以上であれば、金属層22の錆の防止に有効であり、また取り扱い時の擦れなどによって金属層22に傷が生じるのを防止することができる。合成樹脂外層24の厚さが600μm以下であれば、栓21の熱伝導性を充分に確保することができる。
【0028】
なお、この実施形態例では、その全体が金属層22、合成樹脂内層23および合成樹脂外層24で形成された栓21を例示したが、本発明は、容器本体11と同様に、栓21が金属製とされ、かつ栓21の全体を継ぎ目なく金属層22が形成されていればよい。したがって、栓21は、金属層22のみで形成されていてもよく、金属層22と合成樹脂内層23のみで形成されていてもよく、金属層22と合成樹脂外層24のみで形成されていてもよく、合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24に、他の層がさらに積層されていてもよい。また、栓21は、金属層22の表面に、アルマイト処理、クロメート処理、ジルコニウム系化成処理、フッ化処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
【0029】
頭部25には、図1、3に示すように、孔27が設けられている。孔27は、凍結乾燥容器10内への溶解液の注入および凍結乾燥物の溶液の取り出しを行う注射針を挿入する孔である。
【0030】
孔27の大きさは、挿入される注射針の直径より大きいものとされ、概ね1〜10mmの口径が好ましい。なお、この実施形態例では、孔27を有した凍結乾燥容器10を示したが、これに限らず、孔27の代わりに、頭部25の一部の肉厚を注射針が貫通できる程度に薄くしてもよい。
【0031】
孔27は、図1に示すように、ガスバリア性フィルム28と、ガスバリア性フィルム28の下面に設けられた再封止層29とで塞がれている。ガスバリア性フィルム28は、凍結乾燥物の収容後、凍結乾燥容器10内に、孔27から酸素や水分が侵入するのを防止するために設けられている。再封止層29は、凍結乾燥容器10から凍結乾燥物を取り出す際、栓21に貫通させる注射針に密着し、栓21に空隙が生じないようにするために設けられている。すなわち、注射針の挿入の際、該注射針はガスバリア性フィルム28と再封止層29とを貫通して、凍結乾燥容器10内に挿入される。
【0032】
ガスバリア性フィルム28は、酸素バリア性、水蒸気バリア性を有するフィルムである。ガスバリア性フィルム28の酸素バリア性の指標となる酸素透過量は、0〜0.5ml/m/24hrs/MPaであることが好ましく、0〜0.1ml/m/24hrs/MPaであることがより好ましい。ガスバリア性フィルム28の水蒸気バリア性の指標となる水蒸気透過量は、0〜1.0g/m/24hrsであることが好ましく、0〜0.5g/m/24hrsであることがより好ましい。
ガスバリア性フィルム28の具体例としては、銅、アルミニウム、マグネシウムなどの金属からなる5〜100μmの金属箔フィルム、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などからなるフィルムに、シリカ、アルミニウム、アルミナなどを蒸着させた蒸着フィルム、5〜100μm程度の厚みの金属箔を、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂などで挟み込んだ金属箔積層フィルム、PETやセロファンなどのフィルムにポリビニリデンクロライド(PVDC)をコートしたKコートフィルム、バリア性を有する有機系および/または無機系のバリア性材料を、ポリエステルまたはポリアミドなどからなるフィルムにコートしたコート系バリアフィルムが挙げられる。また、フィルムの原材料として、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、PVDC、メタキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(MXD)を用いたフィルム、さらに、これら原材料を用いたフィルムと前述した他のガスバリアフィルムとをドライラミネート法などにより積層した積層フィルム、また、これら原材料とポリオレフィン樹脂などとを共押出にて積層した共押出系バリアフィルムが挙げられる。なお、特に優れたガスバリア性が要求される場合、ガスバリア性フィルム28には、ガスバリア性に特に優れたアルミニウム積層フィルムが好ましく用いられる。
【0033】
ガスバリア性フィルム28は市販品であってもよく、例えば、凸版印刷株式会社製の「GLフィルム」、大日本印刷株式会社製の「IBフィルム」、三菱樹脂株式会社製の「テックバリア」、東セロ株式会社製の「マックスバリア」、株式会社クラレ製の「エバールフィルム」や「クラリスタ」、株式会社クレハ製の「ベセーラ」、旭化成株式会社製の「サランUB」、タマポリ株式会社製の「ハイトロンBX」などが挙げられる。
【0034】
ガスバリア性フィルム28の厚さは、樹脂の種類にもよるが、概ね10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。ガスバリア性フィルム28の厚さが10μm以上であれば、充分なガスバリア性を確保することができる。ガスバリア性フィルム28の厚さが100μm以下であれば、ガスバリア性フィルム28に注射針を貫通させやすい。
なお、この実施形態例では、ガスバリア性フィルム28は、頭部25の内側に形成されているが、本発明はこれに限らず、頭部25の外側にガスバリア性フィルム28が形成されていてもよく、頭部25の内側および外側にガスバリア性フィルム28が形成されていてもよい。
【0035】
ガスバリア性フィルム28の表面には、ガスバリア性フィルム28を保護する保護層(不図示)が設けられていることが好ましい。これにより、擦れなどによるガスバリア性フィルム28のガスバリア層の損傷を防止でき、ガスバリア性を安定して維持できる。前記保護層を形成する樹脂としては、PETなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。前記保護層の厚さとしては、5〜100μmが好ましい。なお、前記保護層は、ガスバリア性フィルム28の片面だけであってもよく、両面に設けられてもよい。
【0036】
ガスバリア性フィルム28と頭部25との間には、ガスバリア性フィルム28と頭部25との接合を強固にする接着層(不図示)が形成されていることが好ましい。これにより、凍結乾燥時の温度変化に基づくガスバリア性フィルム28と頭部25との膨張率および収縮率の差により発生する物理的刺激や、頭部25を透過しうる内容物からの化学的刺激などによって、ガスバリア性フィルム28が頭部25から剥離することを防止でき、良好なガスバリア性を維持できる。なお、この接着層は、頭部25の樹脂と接着可能な、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂、または公知の接着剤や接着性樹脂から形成される。また、この接着層の厚みは5〜100μmが好ましい。前記接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、エステル系接着剤などが挙げられる。前記接着性樹脂としては、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
【0037】
再封止層29を形成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーなど、密着性に優れた樹脂が挙げられる。中でもポリエチレン樹脂が好ましく、特に低密度ポリエチレン樹脂および高強度な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。再封止層29の厚さは、50〜1000μmが好ましい。
【0038】
再封止層29は、少なくとも孔27を覆うように設けられていればよい。再封止層29は、例えばこの実施形態例のように、ガスバリア性フィルム28の下面に貼着された状態とされていてもよく、ガスバリア性フィルム28と合成樹脂内層23との間であってもよく、ガスバリア性フィルム28内に多層フィルムとしてあらかじめ設けられていてもよく、さらに頭部25の上面側、頭部25の下面および上面に設けられていてもよい。
再封止層29が設けられていることによって、凍結乾燥物の取り出しの際、注射針を貫通させても容器内の密閉状態を維持できる。これにより、外界の空気に含まれるホコリ、雑菌などの異物が凍結乾燥容器10内に混入するのを防止でき、かつ凍結乾燥物およびその溶液が外界に漏れ出すのを防止できる。
【0039】
なお、栓21は、孔27を有さずに、孔27に相当する部分にも金属層22が形成されたものであってもよい。この場合、孔27がないので、ガスバリア性フィルム28を省略することができる。なお、孔27に相当する部分の金属層22は、所定の強度を有しつつ、注射針が貫通できる程度に薄肉とされていることが好ましい。当該部分の金属層22の厚みは、10〜300μm程度の肉厚であることが好ましい。
さらに、栓21は、孔27を有さずに、孔27に相当する部分に形成された金属層22の表面に、再封止機能を有する合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24が形成されたものであってもよい。これにより、再封止層29を省略することができる。なお、再封止機能を有した合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24の材質としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーなど、密着性に優れた樹脂が挙げられる。中でもポリエチレン樹脂が好ましく、特に低密度ポリエチレン樹脂および高強度な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。また、再封止機能を有した合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24の厚みとしては、50〜1000μmが好ましい。
【0040】
以上説明した本発明の凍結乾燥容器10は、容器本体11と栓21とを合わせた質量中、質量比で金属が主とされる。すなわち、本発明の凍結乾燥容器10は、容器本体11および栓21を金属製としており、容器本体と栓とをいずれも金属として廃棄可能であり、分別廃棄する必要がない。なお、凍結乾燥容器10の質量比で金属を主とするには、後述の凍結乾燥容器10の製造において、金属層12および金属層22を形成する金属の質量に比べて、容器本体11、栓21に用いられる樹脂の質量が少なくなるように、各層の厚みや各部材の体積などを適宜調整すればよい。また、ガスバリア性フィルム28が、前述した金属箔フィルム、金属箔積層フィルム、金属箔フィルム、蒸着フィルムである場合、それらのフィルムに含まれる金属の質量も、凍結乾燥容器10に使われた金属の質量として加味される。
【0041】
また、凍結乾燥容器10は、容器本体11および栓21を金属製としているため、高い強度を有しており、破損しにくい。
また、凍結乾燥容器10は、容器本体11および栓21を金属製としているため、容器本体11および栓21の肉厚を薄肉にしても強度を維持できる。そのため、容器本体11および栓21の肉厚を薄肉にでき、優れた熱伝導性を有することができる。
また、凍結乾燥容器10は、容器本体11の全体に継ぎ目なく金属層12が形成されるとともに、栓21の全体に継ぎ目なく金属層22が形成されているため、ガスバリア性に優れている。
【0042】
また、凍結乾燥容器10は、材料費および成形加工費が安価なアルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属で栓21の金属層22が形成されている。したがって、凍結乾燥容器10は、従来用いられてきたゴム栓に比べて、栓の材料費および成形加工費を抑えることができ、製造コストが安価である。
また、凍結乾燥容器10は、ステンレスに比べて材料費および成形加工費が安価なアルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属で容器本体11が形成されていることで、ステンレス製の容器本体に比べて製造コストが安価である。
【0043】
また、凍結乾燥容器10は、容器本体11と栓21、または中栓16と栓21の物理的嵌合や、中栓16と栓21とのかしめなどにより気密性を持たせることができるので、アルミニウムの留め具は必要なく、製造コストが安価となる。
【0044】
なお、この実施形態例では、栓21に合成樹脂内層23が形成されているとともに、容器本体11に合成樹脂製の中栓16が設けられているので、容器本体11と栓21とを溶着することもできる。容器本体11と栓21とが溶着されることで、留め具が必要なくなり、製造コストが安価となる。また、容器本体11と栓21とを溶着することで、凍結乾燥容器10の気密性の向上、および栓21の脱落防止をより確実に図ることができる。また、容器本体11に中栓16が設けられていない場合も、容器本体11の合成樹脂内層13と、栓21の合成樹脂内層23とによって、容器本体11と栓21とを溶着できる。なお、溶着の方法としては、高周波溶着、超音波溶着、レーザー溶着、熱板溶着、インパルス溶着などが挙げられる。
【0045】
次に、本発明の凍結乾燥容器10の製造方法の一製造例について、図4〜6を参照しながら説明する。
この製造例では、図4に示すような、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート(金属層12)に、合成樹脂(合成樹脂内層13、合成樹脂外層14)が積層された積層シート40を深絞り成形することで容器本体11を成形する。深絞り成形は、ジュースの缶の製造など広く用いられている成形技術であり、成形品を迅速かつ大量に製造することが可能である。なお、前記の4種の金属シートの中では、深絞り成形が特に行いやすいことから、アルミニウムシートが好ましい。
【0046】
積層シート40は、どのような方法によって形成されたものであってもよいが、例えば以下の1〜4の方法によって形成される。
1.金属シート(金属層12)の一方の面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂フィルムを積層するとともに、該金属シートの他方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂フィルムを積層する方法。
2.金属シート(金属層12)の一方の面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂をコーティングするとともに、該金属シートの他方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
3.金属シート(金属層12)の一方の面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂フィルムを積層するとともに、該金属シートの他方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
4.金属シート(金属層12)の一方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂フィルムを積層するとともに、該金属シートの他方の面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
【0047】
積層シート40における金属層12の厚さは、1〜1000μmが好ましい。より好ましくは20〜500μmである。1μm以上であれば、容器の成形時に金属層12の破断が生じにくい。1000μm以下にすることで、金属の使用量を抑えて製造コストを低減できる。
【0048】
積層シート40における合成樹脂内層13の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂内層13の厚さを1μm以上とすることで、容器本体11の成形時に、合成樹脂内層13に破断が生じにくい。合成樹脂内層13の厚さを600μm以下とすることで、容器本体11の成形が行いやすく、生産性を良好とすることができる。
なお、合成樹脂内層13が合成樹脂フィルムから形成される場合、好ましくは10〜600μmであり、より好ましくは50〜500μmである。また、合成樹脂内層13が金属層12への合成樹脂のコーティングにより形成される場合、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは3〜8μmである。
【0049】
合成樹脂内層13が合成樹脂フィルムより形成される場合、該合成樹脂フィルムの材質には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合物が用いられる。合成樹脂内層13が合成樹脂のコーティングにより形成される場合、コーティングに用いる合成樹脂には、酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが用いられる。
【0050】
積層シート40での合成樹脂外層14の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂外層14の厚さを1μm以上とすることで、容器本体11の成形時に、合成樹脂外層14に破断が生じにくい。合成樹脂外層14の厚さを600μm以下とすることで、容器本体11の成形が行いやすく、生産性を良好とすることができる。
なお、合成樹脂外層14が合成樹脂フィルムから形成される場合、好ましくは10〜600μmであり、より好ましくは50〜500μmである。また、合成樹脂外層14が金属層12への合成樹脂のコーティングにより形成される場合、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは3〜8μmである。
【0051】
合成樹脂外層14が合成樹脂フィルムより形成される場合、該合成樹脂フィルムの材質には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合樹脂が用いられる。合成樹脂外層14が合成樹脂のコーティングにより形成される場合、コーティングに用いる合成樹脂としては、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが用いられる。
なお、合成樹脂内層13または合成樹脂外層14の形成方法において、合成樹脂フィルムの積層は、ドライラミネート法、押出ラミネート法などで行われ、合成樹脂のコーティングは、溶液コーティング、粉体コーティング、エマルジョンコーティングなどで行われる。
【0052】
なお、凍結乾燥容器10を金属として廃棄可能とするためには、凍結乾燥容器10の質量中、金属が主であることが必要条件となる。容器本体11および栓21の金属層および合成樹脂層の厚みは、この必要条件も鑑みた上で、適宜調整される。
【0053】
このようにして形成された積層シート40を、図5に示すように、深絞り成形機50に設置する。ここで、深絞り成形機50は、上下に移動可能なダイ51、パンチ台53に固定されたパンチ52、上下に移動可能なブランクホルダ54とから概略構成される。
【0054】
次いで、深絞り成形機50に設置された積層シート40に対して、図6のようにダイ51およびブランクホルダ54を下げ、パンチ52を積層シート40に押し当てることで、積層シート40を容器本体11の形状に成形する。その後、ダイ51およびブランクホルダ54を上げて、成形された積層シート40を深絞り成形機50から取り出し、余分なバリなどを切除して、容器本体11を得る。このように、積層シート40を深絞り成形機50を用いて深絞り成形することで、容器本体11を成形することができる。
本発明の凍結乾燥容器10の製造方法では、この製造例のように、深絞り成形によって容器本体11を成形することで、その全体に金属層12が継ぎ目なく形成された容器本体11を効率よく製造することが可能である。
【0055】
なお、本発明の凍結乾燥容器10の製造方法は、深絞り成形以外、例えばしごき成形で容器本体11を成形してもよく、深絞り成形としごき成形を組み合わせて用いてもよい。
また、この製造例では、あらかじめ両面に合成樹脂層が形成された積層シート40を用いて容器本体11を成形しているが、本発明はこれに限らず、金属層12を形成する金属シートを深絞り成形やしごき成形などで成形してから、得られた金属容器の内面に、合成樹脂内層13を形成する合成樹脂をコーティングするとともに、その金属容器の外面に、合成樹脂外層14を形成する合成樹脂をコーティングすることでも、容器本体11を成形することができる。さらに、本発明においては、金属シートを用いて、金属層12のみからなる容器本体11を成形し、合成樹脂層を設けなくてもよい。
【0056】
容器本体11の開口15に設けられる中栓16は射出成形で成形される。中でも、インサート射出成形が好ましく用いられる。インサート射出成形では、まず射出成形金型に溶液本体11を固定し、次いで該成形金型内にポリプロピレン樹脂などの合成樹脂を流し込むことで、容器本体11の所定位置に中栓16を成形することができる。なお、射出成形には、それぞれ公知の成形機を用いることができる。
また、中栓16を射出成形で別に成形した場合でも、中栓16と開口15とを物理的に嵌合する、または高周波溶着などで溶着することで、中栓16を開口15に固定できる。
【0057】
次に栓21の成形について説明する。
栓21の成形には、容器本体11と同様に、積層シート40を用いることができ、成形に好ましく用いられる金属シートも、容器本体11と同様に、アルミニウムシートである。栓21の成形方法としては、容器本体11と同様の深絞り成形、しごき成形、またはそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、栓21は、容器本体11と同様に、金属シートを成形してから、その両面に所望の合成樹脂をコーティングすることで成形してもよい。
その後、栓21に、注射針を挿入するための孔27を、公知のプレス機などで打ち抜く。なお、本発明においては、容器本体11の成形と同様に、金属シートを用いて、金属層22からなる栓21を成形し、合成樹脂層を設けなくてもよい。
【0058】
次いで、孔27に、ガスバリア性フィルム28と再封止層29とを溶着する。ガスバリア性フィルム28には、前述したガスバリア性を有するフィルムを用いることができる。また、再封止層29には、前述したポリエチレン樹脂などの密着性に優れた樹脂を用いることができる。なお、頭部25にガスバリア性フィルム28を固定するには、高周波溶着、熱板溶着、インパルス溶着などにより溶着する方法、または前述したガスバリア性フィルム28と頭部25との間に好ましく設けられる接着層を形成する合成樹脂、公知の接着剤、接着性樹脂などを用いて接着する方法が挙げられる。また、頭部25に再封止層29を固定するには、頭部25にガスバリア性フィルム28を固定する方法と同様の方法を用いることができる。
【0059】
なお、本発明では、孔27の打ち抜きと、ガスバリア性フィルム28の溶着とを行わずに栓21を成形してもよい。この場合、孔27に相当する部分の金属層22を、所定の強度を有しつつ、注射針が貫通できる程度に薄肉に成形する。例えば、当該部分を凹形状に絞り成形することで、当該部分の金属層22を展延し、薄肉にした栓21を成形することができる。なお、当該部分の金属層22を10〜300μm程度の薄肉に成形することが好ましい。
【0060】
さらに、本発明では、孔27の打ち抜きと、ガスバリア性フィルム28の溶着と、再封止層29の溶着とを行わずに栓21を成形してもよい。この場合、例えば再封止機能を有する合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24が形成された積層シート40を用いることで、孔27に相当する部分の金属層22の表面に、再封止機能を有した合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24が形成された栓21を成形することができる。なお、再封止機能を有した合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24の材質としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーなど、密着性に優れた樹脂が挙げられる。中でもポリエチレン樹脂が好ましく、特に低密度ポリエチレン樹脂および高強度な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。また、再封止機能を有した合成樹脂内層23および/または合成樹脂外層24の厚みとしては、50〜1000μmが好ましい。
【0061】
次に、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10に、凍結乾燥物を収容する手順について説明する。
まず、凍結乾燥容器10の容器本体11内に、無菌状態とされた凍結乾燥物の原液を充填し、容器本体11に栓21を半打栓した上で、凍結乾燥装置内の加熱と冷却機能を備えた棚(加熱冷却棚)の上に配置する。該凍結乾燥装置としては、公知の凍結乾燥装置を用いることができる。
次に、凍結乾燥物の原液を充填した容器本体11を、加熱冷却棚を用いて冷却し、凍結乾燥物の原液を凍結処理する。ここで、容器本体11および栓21は金属製であることから、優れた熱伝導性を有することができる。これにより、本発明の凍結乾燥容器10を用いれば凍結処理を迅速に行える。
【0062】
次に、凍結乾燥物の原液を凍結状態に保ったまま減圧乾燥することで、水分を昇華させる。この半打栓状態において、水分は切欠き30から凍結乾燥容器10外に放出される。その後、凍結乾燥装置内に窒素ガスを供給して大気圧に戻すことで、凍結乾燥容器10内が窒素ガスにガス置換される。その後、栓21を完全打栓することで、凍結乾燥容器10に凍結乾燥物が収容された状態で、栓21は容器本体11に物理的に嵌合される。これにより、凍結乾燥容器10の気密性が確保される。なお、この実施形態例では、栓21は中栓16を介して、容器本体11に嵌合される。
その後、さらに気密性により完全を期すため、容器本体11と栓21との嵌合箇所を高周波溶着、超音波溶着、レーザー溶着、熱板溶着、インパルス溶着などの手段により溶着する。
【0063】
次に、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10に収容された凍結乾燥物を取り出す手順について説明する。
まず、孔27から注射針を挿入し、ガスバリア性フィルム28および再封止層29を貫通させ、凍結乾燥容器10内に凍結乾燥物を溶解するための所定の溶液を注入する。そして、該溶液により凍結乾燥物を溶解する。次いで、凍結乾燥物の溶解液を注射針で吸引する。このようにして、凍結乾燥物を溶解液の状態にして凍結乾燥容器10から取り出す。ここで、凍結乾燥容器10には、栓21に再封止層29が設けられているため、再封止層29が注射針に密着し、注射針とガスバリア性フィルム28との間に空隙が生じるのを防止できる。これにより、凍結乾燥容器10内にホコリや雑菌などの異物が混入するのを防止でき、かつ凍結乾燥容器10外に凍結乾燥物および凍結乾燥物の溶解液が漏れ出すのを防止できる。
また、凍結乾燥物を溶解させずにそのまま服用する、または孔27から複数流路を有するチューブなどを挿入し、空気流下で微粉の凍結乾燥物として凍結乾燥容器10外へ搬送させて、服用することも可能である。
【0064】
本発明の凍結乾燥容器は、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要である。本発明の凍結乾燥容器の製造方法は、前記凍結乾燥容器を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の栓の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器の成形に用いる積層シートの部分断面図である。
【図5】深絞り成形機で、本発明の凍結乾燥容器の容器本体を成形する様子を示す縦断面図である。
【図6】深絞り成形機で、本発明の凍結乾燥容器の容器本体を成形する様子を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 凍結乾燥容器
11 容器本体
12、22 金属層
13、23 合成樹脂内層
14、24 合成樹脂外層
15 開口
16 中栓
21 栓
25 頭部
26 脚部
27 孔
28 ガスバリア性フィルム
29 再封止層
30 切欠き
40 積層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥物が収容される金属製の容器本体と、該容器本体に嵌合される金属製の栓とを備えた凍結乾燥容器であって、
前記容器本体の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層が継ぎ目なく形成され、
かつ前記栓の全体に、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属層が継ぎ目なく形成されていることを特徴とする凍結乾燥容器。
【請求項2】
前記栓に、該栓に貫通させる注射針に密着し、該栓に空隙が生じないようにする再封止層が設けられている請求項1に記載の凍結乾燥容器。
【請求項3】
凍結乾燥物が収容される金属製の容器本体と、該容器本体に嵌合される金属製の栓とを備えた凍結乾燥容器の製造方法であって、
アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを用いて前記容器本体を成形し、
かつアルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを用いて前記栓を成形することを特徴とする凍結乾燥容器の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅のうち、いずれか一種からなる金属シート、または該金属シートに合成樹脂が積層された積層シートを深絞り成形して、前記容器本体と前記栓とを成形することを特徴とする請求項3に記載の凍結乾燥容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241934(P2009−241934A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88143(P2008−88143)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】