説明

処理槽へのセンサ取付構造と、これによりセンサが取り付けられた食品機械、およびこれらに使用される取替用センサ

【課題】 真空冷却機や蒸煮冷却機などの処理槽への温度センサの取付構造において、ケーブル間の接続部を保護し、センサの交換作業も容易な構造を提供する。
【解決手段】 第一ケーブル12は、先端部に温度センサ9が設けられ、基端部に第一コネクタ20が設けられる。第二ケーブル26は、先端部に第二コネクタ28が設けられ、基端部が制御盤に接続される。第一コネクタ20と第二コネクタ28は、着脱可能に接続される。処理槽1の側壁4には、円筒状の管体5が貫通して設けられ、この管体5の処理槽内側端部の外周面はネジ部8とされている。第一ケーブル12の中途に設けられた詰め具14は、管体5の内穴に気密状態にはめ込まれ、管体5のネジ部8にねじ込まれる取付具21により保持される。第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部は、詰め具14による封止部よりも処理槽外側へ配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理槽へのセンサの取付構造と、このセンサ取付構造により処理槽内にセンサが取り付けられた真空冷却機や蒸煮冷却機などの各種装置、およびこれらに使用される取替用センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空冷却機は、処理槽内の空気を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することで処理槽内の飽和蒸気圧力を低下させ、処理槽内に収容された食材からの水分蒸発を促し、その蒸発時の気化潜熱を利用して、前記食材の冷却を図る装置である。また、蒸煮冷却機は、処理槽内へ蒸気を供給することで、処理槽内に収容された食材を加熱調理すると共に、加熱調理後には処理槽内の食材の冷却を図る装置である。このような装置では、処理槽内の食材の温度を監視し、特に食材が所望温度まで加熱または冷却されたか否かを確認するために、処理槽内に温度センサが備えられている。
【0003】
図3に示すように、従来の温度センサAは、制御盤(不図示)に接続された一本のケーブルBの先端部に設けられていた。すなわち、このケーブルBは、処理槽の側壁Cを貫通して設けられ、先端部に温度センサAが設けられる一方、基端部は制御盤に接続されていた。また、ケーブルBの中途部は、処理槽の側壁Cにシール部Dを介して気密状態に固定されていた。
【0004】
ところが、このような構成では、故障などにより温度センサAを交換したい場合、ケーブルBの基端部を制御盤の端子台から取り外すと共に、処理槽との間の前記シール部Dを解体してケーブルBを取り外した後、処理槽外へ温度センサAを引っ張り出す必要があった。そして、新たな温度センサAを処理槽内へ差し込んだ状態で、処理槽の側壁CとケーブルBとの間をシール部Dで封止すると共に、ケーブルBの基端部を制御盤の端子台の所定箇所に接続する必要があった。しかも、処理槽外からのセンサ取替作業となるため、処理槽外に配置されたケーシング類などの着脱も必要となっていた。
【0005】
このように、図3の構成では、温度センサAの取替作業は、きわめて煩雑であり、しかもシール部Dを扱うため熟練を要し、ユーザ自身によるセンサ交換は事実上、不可能であった。その上、ケーブル全体と共にセンサを交換する必要があった。このようなことから、下記特許文献1に開示されるように、処理槽の側壁Cに設けたシール部Dを介してケーブルBを処理槽内へ導入し、このケーブルBにソケットEとプラグFを介して着脱可能に温度センサAを設けることが提案されている(図4)。
【特許文献1】特開平11−196833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示される発明では、前記ソケットとプラグとの接続部は、処理槽内に配置される構成である。このため、この接続部は、処理槽内の圧力変化や温度変化、さらには蒸気や水などにも接触する環境下におかれることになり、この接続部の故障や接触不良を招くおそれがあった。そして、その接続部の不良が発生した場合には、温度センサ自体は問題なくても、温度センサの取替えを要するものである。また、ソケットを交換するには、ケーブルの制御盤への接続部を取り外すと共に、処理槽との間のシール部も取り外す必要があり、前記図3の構成の場合と同様の問題点があった。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、ケーブル間の接続部を保護し、センサの取替作業も容易に行えるセンサ取付構造と、このセンサ取付構造によるセンサが設けられた食品機械、および取替用センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽へのセンサの取付構造であって、先端部に前記センサが設けられた第一ケーブルと、この第一ケーブルの基端部に着脱可能に接続される第二ケーブルと、前記処理槽内に前記センサを配置すると共に、前記処理槽に形成された貫通部を介して前記第二ケーブルを前記処理槽外へ導出した状態で、前記処理槽内から前記貫通部を封止する着脱可能なシール具とを備え、前記第一ケーブルと前記第二ケーブルとの接続部は、前記シール具による封止部よりも前記処理槽外側へ配置されることを特徴とする処理槽へのセンサ取付構造である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第二ケーブルを制御盤などから取り外すことなく、センサの交換が可能である。また、処理槽内から交換作業が可能なため、誰でも容易にセンサを交換できる。さらに、第一ケーブルと第二ケーブルとの接続部は、シール具による封止部よりも処理槽外側へ配置される。これにより、処理槽内の圧力変化や温度変化、さらには蒸気や水などへの接触が防止され、接続部の故障や接触不良などを防止できる。このように、封止部と電気接続部とを分離したため、簡単で信頼性の高い接続が可能である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記シール具は、前記貫通部の内穴への詰め具と、この詰め具を固定するための取付具とからなり、前記詰め具は、前記第一ケーブルが通されると共に、前記第一ケーブルに気密状態に固定され、前記取付具は、前記詰め具を前記貫通部に保持することを特徴とする請求項1に記載の処理槽へのセンサ取付構造である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記貫通部を封止するシール具は、第一ケーブルに固定の詰め具と、この詰め具を貫通部に保持するための取付具とから構成されるので、前記貫通部の封止作業を容易に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記処理槽には、その側壁を貫通して管体を設けることで、前記貫通部が形成されており、前記取付具は、前記第一ケーブルに相対回転に通されるナット状とされ、前記管体には、前記処理槽内側の端部外周面に、ネジ部が形成されており、このネジ部に前記取付具がねじ込まれることで、前記管体の内穴に前記詰め具が気密に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の処理槽へのセンサ取付構造である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、処理槽の側壁に設けた管体にケーブルを通し、処理槽内側から前記管体の開口部に、第一ケーブルに固定の詰め具をはめ込んだ状態で、第一ケーブルに対し相対回転可能なナット状の取付具を前記管体にねじ込んで、詰め具を管体に保持することができる。これにより、ケーブルのねじれを防止しつつ、さらに簡易にセンサの交換作業を行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記詰め具は、前記管体への取付状態において、前記第一ケーブルと前記第二ケーブルとの接続部が前記管体内に配置される位置に設けられ、前記接続部を前記管体から前記処理槽内へ引き出し可能な長さだけを残して、前記第二ケーブルの中途部が位置決め固定されたことを特徴とする請求項3に記載の処理槽へのセンサ取付構造である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、第一ケーブルと第二ケーブルとの接続部は、処理槽の側壁を貫通する管体内に収容される。仮に、その接続部が管体よりも外方(処理槽外)へ配置されている場合には、センサの交換のために接続部を処理槽内へ引き込む際に、管体の端部に引っ掛かるおそれがあるが、予め接続部を管体内に配置しておくことで、そのような不都合が回避される。また、接続部を管体から処理槽内へ引き出し可能な長さだけを残して、第二ケーブルの中途部が位置決め固定されているので、必要以上に第二ケーブルが処理槽内へ引っ張られることが防止される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ取付構造にて温度センサが取り付けられた処理槽を備えることを特徴とする食品機械である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明による作用効果を奏する食品機械を提供することができる。
【0018】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ取付構造、または請求項5に記載の食品機械において、前記第一ケーブル付きの前記センサに代えて使用されるケーブル付き取替用センサであって、基端部に前記第二ケーブルへの接続用コネクタが設けられたケーブルを備え、このケーブルの先端部に設けられたことを特徴とする取替用センサである。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明に利用される取替用センサを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ケーブル間の接続部を保護し、センサの取替作業も容易に行えるセンサ取付構造と、このセンサ取付構造によるセンサが設けられた食品機械、および取替用センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のセンサ取付構造は、真空冷却機や蒸煮冷却機などの各種食品機械において、その処理槽内に各種センサを取替可能に設置するための構造である。前記センサは、典型的には温度センサとされ、処理槽内またはそこに収容される被処理物の温度を計測する。特に、処理槽内に収容された食材(食品を含む)の温度を計測する。
【0022】
処理槽は、食材などの被処理物を収容して密閉可能な中空構造とされている。たとえば、前面に開閉可能な扉を設けた略直方体状の缶体、あるいは、上面に開閉可能な蓋を設けた有底筒状の缶体とされる。この処理槽には、本発明のセンサ取付構造を介して、温度センサが取り付けられる。この温度センサは、処理槽内に配置され、温度センサからのケーブルは、処理槽の側壁などを介して処理槽外へ導出され、制御盤に接続される。
【0023】
前記ケーブルは、第一ケーブルと第二ケーブルとから構成される。各ケーブルは、合成樹脂などの絶縁性および耐水性を有する素材で被覆された導線である。第一ケーブルは、先端部に温度センサが設けられ、基端部に第二ケーブルへの接続部としての第一コネクタが設けられる。第二ケーブルは、先端部に第一ケーブルへの接続部としての第二コネクタが設けられ、基端部が制御盤に接続される。第一コネクタと第二コネクタとは、着脱可能に係合可能とされる。第一コネクタと第二コネクタとの接続状態では、第一ケーブルと第二ケーブルとが電気的に接続される。
【0024】
温度センサは、処理槽内に配置され、第一ケーブルおよび第二ケーブルを介して、処理槽外の制御盤へ電気的に接続される。温度センサの種類は、特に問わないが、測温抵抗体センサが好適に使用される。温度センサからの前記ケーブルは、処理槽の側壁などに形成された貫通部を介して処理槽外へ導出される。このようにして、温度センサからの検出信号は、第一ケーブルおよび第二ケーブルを介して、制御盤へ送られる。
【0025】
処理槽の貫通部にはケーブルが通されるが、その状態で処理槽内の気密性を確保するために、貫通部の内穴はシール具にて封止される。このシール具は、処理槽内から貫通部に着脱可能に取り付けられる。貫通部にシール具を取り付けた状態で、第一ケーブルと第二ケーブルとの接続部は、シール具による封止部よりも処理槽外側へ配置される。これにより、第一コネクタと第二コネクタとは、処理槽内の圧力変化や温度変化に晒されることがなく、また水や蒸気などにも接触するおそれがなく、接続部の故障や接触不良などを防止することができる。
【0026】
シール具による前記貫通部の具体的な封止構造は、特に問わないが、たとえば、第一ケーブルが気密状態に通されたシール具を、貫通部の内穴へ押し込んで取り付けることができる。この際、処理槽またはその前記貫通部に、補助部材(取付具)をねじ止めするなどにより、シール具の外れ止めを図るのが好ましい。また、前記貫通部は、単に処理槽の側壁に丸穴などの貫通穴を形成するだけでもよいし、処理槽の側壁に、円筒パイプなどの管体を貫通して設けることで構成してもよい。後者の場合、前記管体の内周面に形成したネジ部に、ケーブルが気密状態に通されたシール具をねじ込んで設けることができる。
【0027】
本実施形態では、円筒パイプからなる管体が、処理槽の側壁を貫通して設けられることで、前記貫通部が形成されている。この管体は、その外周面が処理槽の側壁に、溶接などにより気密に固定されており、内穴にて処理槽の内外が連通される。また、この管体は、処理槽の側壁から処理槽内へ突出するよう設けられており、処理槽内側の端部外周面にネジ部が形成されている。そして、管体の内穴に前記ケーブルが通されるが、その状態で処理槽内の気密性を確保するために、前記内穴はシール具にて封止される。
【0028】
本実施形態のシール具は、管体の内穴への詰め具と、この詰め具を管体に保持するための取付具とからなる。詰め具は、第一ケーブルが気密状態に通されると共に、第一ケーブルに固定されている。取付具は、第一ケーブルに相対回転に通されたナット状である。そして、管体の内穴には、その処理槽内側の開口部から詰め具がはめ込まれた後、ナット状の取付具が管体の前記ネジ部にねじ込まれる。これにより、管体の内穴に詰め具が気密に取り付けられる。
【0029】
このようにして、ケーブルを気密状態に処理槽外へ導出した状態で、処理槽内には温度センサが設けられる。しかも、本発明では、温度センサは、第一ケーブルごと取替可能とされている。すなわち、故障などにより温度センサを取り替えたい場合には、管体から前記取付具および詰め具を取り外して、第一コネクタと第二コネクタとの接続部を処理槽内へ引き込んだ後、そのコネクタ間の係合を解除し、第一ケーブルごと温度センサを取り替えればよい。
【0030】
取替用センサは、基端部に前記第二ケーブルへの接続用コネクタが設けられたケーブルを備え、このケーブルの先端部に温度センサが設けられている。従って、第二ケーブルの第二コネクタに、取替用センサのコネクタを係合した後、上述と同様にして、処理槽の貫通部をシール具で封止すればよい。このシール具は、取替用センサに予め設けておくことができる。
【0031】
ところで、詰め具を管体に取り付けた状態において、第一ケーブルと第二ケーブルとの接続部が管体内に配置されるのが好ましい。仮に、その接続部が管体よりも外方(処理槽外)へ配置されている場合には、センサの交換のために接続部を処理槽内へ引き込む際に、管体の外端部に引っ掛かるおそれがあるが、予め接続部を管体内に配置しておくことで、そのような不都合が回避される。
【0032】
また、温度センサの交換に必要な所望長さだけケーブルを処理槽内へ引込み可能とするのがよい。つまり、両ケーブル間の接続部を管体から処理槽内へ引き出し可能な長さだけを残して、第二ケーブルの中途部を処理槽または管体に対し位置決め固定しておくのがよい。両ケーブル間の接続部を管体から処理槽内へ引き出し可能な長さだけを残して、第二ケーブルの中途部が位置決め固定されることで、必要以上に第二ケーブルが処理槽内へ引っ張られることが防止される。
【0033】
本実施形態のセンサ取付構造によれば、第二ケーブルの基端部を制御盤から取り外さなくても、温度センサを交換することができる。しかも、処理槽内から交換作業が可能なため、作業がし易い。さらに、第一ケーブルと第二ケーブルとの接続部が、シール具による封止部よりも処理槽外側へ配置されるので、上述したように、接続部の故障や接触不良などを防止することができる。また、第二ケーブルも処理槽に対し直接にシールされる訳ではないので、第二ケーブルや第二コネクタの取り替えも容易である。
【実施例】
【0034】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のセンサ取付構造の一実施例を示す分解斜視図であり、図2は、その組立後の使用状態を示す説明図であり、それぞれ一部を断面にして示している。
【0035】
本実施例のセンサ取付構造は、処理槽1内またはそこに収容される食材などの被処理物2の温度を計測する必要がある各種装置に適用される。特に、真空冷却機や蒸煮冷却機などの各種食品機械に好適に適用される。
【0036】
真空冷却機は、処理槽1内の空気を外部へ吸引排出して、処理槽1内を減圧することで処理槽1内に収容された食材2からの水分蒸発を促し、その気化熱を利用して前記食材2の冷却を図る装置である。このような真空冷却機は、食材2が収容される処理槽1と、この処理槽1内の空気を外部へ吸引排出して処理槽1内を減圧する減圧手段と、減圧下の処理槽1内へ外気を導入して処理槽1内を復圧する復圧手段と、これら各手段を制御する制御手段とを備える。
【0037】
一方、蒸煮冷却機は、処理槽1内へ蒸気を供給することで、処理槽1内に収容された食材2を加熱調理すると共に、加熱調理後には処理槽1内の食材2の冷却を図る装置である。加熱調理後の冷却は、典型的には、前記真空冷却機による冷却と同様の真空冷却である。このような蒸煮冷却機は、前記真空冷却機と同様に、処理槽1、減圧手段および復圧手段を備える他、処理槽1内へ蒸気供給する給蒸手段と、処理槽1内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段も備える。そして、制御手段は、これら各手段を制御する。
【0038】
いずれの場合も、本実施例では、前記処理槽1は、耐圧性を備えたボックス状の缶体であり、正面に開閉可能な扉を有している。この処理槽1には、各種食材2が収容される。この食材2は、液体、固体、およびその混合のいずれの状態でもよい。また、図2に示すように、食材2は容器3などに入れられていてもよい。さらに、本明細書において、食材には、食品も含まれる。
【0039】
前記減圧手段は、真空ポンプおよび/またはエゼクタを含んで構成される。また、前記復圧手段は、処理槽1に接続された開閉可能な管路(復圧ライン)から構成され、このラインを開くことで処理槽1内は除菌フィルターを介して外気と連通される。さらに、前記給蒸手段は、ボイラを含んで構成される。また、前記排出手段は、処理槽1に接続された開閉可能な管路(排蒸ラインおよびトラップライン)から構成され、このラインを開くことで蒸気またはその凝縮水を処理槽1外へ排出できる。そして、前記制御手段は、処理槽1内の食材2を真空冷却または蒸煮冷却するよう前記各手段を制御する制御盤である。
【0040】
図1および図2に示すように、処理槽1の側壁4には、管体5が貫通して設けられることで、貫通部6が形成されている。本実施例の管体5は、ステンレス製の円筒パイプからなり、処理槽1の側壁4に形成された丸穴にはめ込まれ、外周部が前記側壁4の内外面に溶接7にて固定されている。図示例では、管体5は、水平に保持され、長手方向中央部の外周面が処理槽1の側壁4に気密に固定され、長手方向両端部が前記側壁4から延出するよう設けられる。図1および図2において、管体5が保持された前記側壁4から左側領域が処理槽1内を示し、前記側壁4から右側領域が処理槽1外を示している。前記管体5には、処理槽内側への延出部の端部外周面に、ネジ部8が形成されている。
【0041】
処理槽1内には、温度センサ9が配置される。本実施例では、温度センサ9として、白金測温抵抗体(Pt100Ω、三線式)が使用される。この温度センサ9は、細長い第一ステンレス管10の先端部に封入されている。この第一ステンレス管10の先端部は、円錐状に形成されている。また、第一ステンレス管10の基端部には、それよりやや大径の第二ステンレス管11を介して、テフロン(登録商標)で被覆された第一ケーブル12が接続される。本実施例では、測温抵抗体9が三線式の結線方式を採用するため、この第一ケーブル12内には、測温抵抗体9から導出された三本の導線(リード線)13が互いに絶縁状態で通される。また、第一ステンレス管10と第二ステンレス管11との間、および第二ステンレス管11と第一ケーブル12との間は、それぞれ気密状態に接続されている。
【0042】
第一ケーブル12の基端部には、管体5の処理槽内側開口への詰め具14が設けられる。本実施例の詰め具14は、段付き円柱形状とされている。具体的には、管体5の内穴への嵌合部15と、この嵌合部15より温度センサ9側に配置される第一ツバ部16と、この第一ツバ部16と離隔してさらに温度センサ9側に配置される第二ツバ部17とが一体形成されたステンレス製である。第一ツバ部16と第二ツバ部17とは、それぞれフランジ状に径方向外側へ延出した円板状に形成されている。ここで、第一ツバ部16は、管体5の内径よりも大径で、管体5の外径よりも小径に形成されている。ところで、前記嵌合部15の中途部の外周面には、周方向に沿ってパッキン溝が形成され、このパッキン溝にOリング18がはめ込まれている。
【0043】
このような詰め具14の中心部には、軸方向へ沿って細長い貫通穴(不図示)が形成されており、この貫通穴に前記第一ケーブル12が通される。ここで、詰め具14の第二ツバ部17側の端面には、前記貫通穴に沿って、前記第一ケーブル12よりも一まわり大径の短筒19(図2参照)が一体形成されている。そして、この短筒19および前記貫通穴に第一ケーブル12を通した状態で、前記短筒19がかしめられることで、第一ケーブル12に詰め具14が気密状態に固定される。
【0044】
このようにして詰め具14を気密状態に貫通した第一ケーブル12の基端部には、第一コネクタ20が設けられる。この第一コネクタ20の構成は、特に問わないが、本実施例では、たとえば日本モレックス株式会社製の「MOLEX 5557−04R」の圧着ハウジングが用いられる。この圧着ハウジングは、接続電線数として四極を有するが、本実施例では、その内の三極を用いて前記第一ケーブル12からの三つの導線13が接続される。
【0045】
第一ケーブル12には、詰め具14を管体5に保持するための取付具21が通されている。本実施例の取付具21は、ステンレス製であり、温度センサ9側に端壁22を有し第一コネクタ20側へ開口する袋ナット状とされる。但し、前記端壁22の中央部には、円形のケーブル挿通穴23が貫通して形成されている。このケーブル挿通穴23に第一ケーブル12が通されることで、取付具21は第一ケーブル12に対し軸方向へ移動自在で、且つ周方向へ回転自在とされている。なお、詰め具14と取付具21とを合わせて、シール具24ということがある。
【0046】
ここで、取付具21の端壁22に形成されたケーブル挿通穴23の直径は、第一ケーブル12の線径よりも大径で、詰め具14の第二ツバ部17の外径よりも小径である。また、取付具21の内周面には、基端側へ開口してネジ穴25が形成されており、このネジ穴25は、第一ツバ部16や第二ツバ部17の外径よりも大径である。取付具21は、そのネジ穴25を管体5のネジ部8にねじ込むことで、管体5のネジ部8に着脱可能とされる。
【0047】
温度センサ9からの検出信号は、第一ケーブル12および第二ケーブル26を介して、制御手段を構成する制御盤(不図示)へ送られる。第二ケーブル26は、ビニール樹脂で被覆されており、第一ケーブル12と同様に三本の導線(リード線)27が互いに絶縁状態で通されている。そして、この第二ケーブル26の基端部から導出された各導線27は、制御盤の端子台の所定箇所にそれぞれねじ止めされる。
【0048】
一方、第二ケーブル26の先端部には、第二コネクタ28が設けられる。この第二コネクタ28は、前記第一コネクタ20と着脱可能で、且つ両コネクタ20,28の係合状態において、第一ケーブル12の各導線13と第二ケーブル26の各導線27とが電気的に接続されるならば、その構成を特に問わない。本実施例では、第一コネクタ20を上述したように「MOLEX 5557−04R」とした関係から、第二コネクタ28は、同じく日本モレックス株式会社製の「MOLEX 5559−04P」の圧着ハウジングを用いている。この圧着ハウジングは、接続電線数として四極を有するが、本実施例では、その内の第一コネクタ20と対応した三極を用いて、前記第二ケーブル26からの三つの導線27が接続される。
【0049】
次に、本実施例のセンサ取付構造により、処理槽1外へケーブル12,26を気密状態に導出しつつ、処理槽1内に温度センサ9を設ける手順について説明する。まず、図1に示すように、処理槽1の側壁4に設けた管体5の内穴には、第二ケーブル26の先端部が通されており、管体5の処理槽内側開口から処理槽1内へ第二コネクタ28が導出されている。また、第二ケーブル26の基端部は、制御盤の端子台に接続されている。
【0050】
この状態で、温度センサ9付きの第一ケーブル12を、第二ケーブル26に接続する。具体的には、第二ケーブル26の先端部の第二コネクタ28に、第一ケーブル12の基端部の第一コネクタ20を接続する。本実施例では、第一コネクタ20に第二コネクタ28をはめ込むと、自動的に両コネクタ20,28が係合されて、第一ケーブル12と第二ケーブル26とが電気的に接続される。
【0051】
その後、両コネクタ20,28の接続部を管体5内へ押し込みながら、管体5の処理槽内側開口に、詰め具14の嵌合部15をはめ込めばよい。そして、図2に示すように、管体5のネジ部8に取付具21をねじ込めばよい。管体5のネジ部8に取付具21を十分にねじ込んだ状態では、管体5の処理槽内側端面に詰め具14の第一ツバ部16が当接され、且つ、詰め具の第二ツバ部17に取付具21の端壁22が当接される。この状態では、嵌合部15にはめ込まれたOリング18により、管体5の内穴に嵌合部15が気密に保持される。このようにして、処理槽1内の気密性を確保しつつ、処理槽1の内外を貫通してケーブル12,26を配置した状態で、そのケーブル12,26の先端部の温度センサ9は、図2に示すように、食材2に差し込まれるなどして使用される。
【0052】
本実施例の構造によれば、第一ケーブル12に固定されOリング18が装着された詰め具14を回転させることなく、第一ケーブル12に通された取付具21の方を回転させて、管体5の内穴に詰め具14を保持することができる。そのため、作業性がよいだけでなく、ケーブル12,26やOリング18がねじれるおそれがない。
【0053】
本実施例の構造によれば、第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部は、管体5の内穴を封止する詰め具14よりも処理槽1外へ配置される。従って、真空状態と大気圧状態とを交互に繰り返す真空冷却機や、加圧状態、大気圧状態、真空状態を繰り返す蒸煮冷却機において使用されても、第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部が、圧力変化や温度変化に晒されることはない。従って、第一ケーブル12と第二ケーブル26との接続部の故障や接触不良などを防止することができる。
【0054】
また、前記給蒸手段により処理槽1内へ供給される蒸気や、処理槽1内の洗浄時の水などがかかるおそれもない。さらに、本実施例では、処理槽1内に配置される第一ケーブル12やその先端部の温度センサ9(10,11)などは、互いの接続部も含めて隙間のない構造とされており、異物の付着がないだけでなく、仮に付着しても容易に拭き取ることができる。
【0055】
その上、本実施例の構造によれば、万一温度センサ9が故障などした場合には、温度センサ9の取替えが容易である。取替用温度センサは、図1における第一コネクタ20から先端側に相当する構成を備える。すなわち、取替部品は、先端部に温度センサ9が設けられ、基端部に第一コネクタ20が設けられた第一ケーブル12からなり、この第一ケーブル12の中途部には、詰め具14と取付具21とが設けられている。
【0056】
そして、温度センサ9を取り替えるには、図2の状態から、第一ケーブル12と第二ケーブル26との接続を解除して、第一ケーブル12を新たなものに付け替えればよい。具体的には、管体5のネジ部8にねじ込まれた袋ナット状の取付具21を緩めて、管体5から詰め具14を抜き外す。この際、第二ツバ部17をつかむことで、管体5からの詰め具14の取り外しは容易になされる。その後、第一ケーブル12を処理槽1内へ引き込むことで、第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部を処理槽1内へ導入して、両コネクタ20,28の係合を解除する。そして、先端部に温度センサ9が設けられた新たな第一ケーブル12の第一コネクタ20を、既設の第二ケーブル26の第二コネクタ28に係合して、前述したのと同様にして、再び管体5にシール具24(14,21)を取り付けて、図2の状態にして使用すればよい。
【0057】
ところで、温度センサ9の交換時に、上述したように、第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部を処理槽1内へ引き込むが、この際、不必要に処理槽1内へ第二ケーブル26が導入されることを防止するために、第二ケーブル26の中途部は、処理槽1や管体5に対し位置決めしておくのが好ましい。本実施例では、たとえばタイトン株式会社製の「インシュロックタイ」などの結束具29で、第二ケーブル26の中途部が、管体5の処理槽外側への延出部に結束されている。この際、管体5にシール具24を取り付けた状態で、図2に示すように、管体5の処理槽外側領域に第二ケーブル26が多少弛む程度の余裕(弛み分30)を持たせて結束される。そして、管体5からシール具24を取り外した状態で、図1に示すように、前記弛み分30を利用して、第二コネクタ28が処理槽1内に配置されるまで、第二ケーブル26を処理槽1内へ引込み可能とされている。
【0058】
その上、本実施例では、第一ケーブル12への詰め具14の取付位置を調整することで、管体5に詰め具14を取り付けた状態では、図2に示すように、第一コネクタ20と第二コネクタ28との接続部は、管体5内に収容される。仮に、その接続部(20,28)が管体5外へ配置されている場合には、温度センサ9の交換のために前記接続部を処理槽1内へ引き込む際に、管体5の処理槽外側端部に引っ掛かるおそれがあるが、予め接続部を管体5内に配置しておくことで、そのような不都合が回避される。
【0059】
本実施例の構造によれば、第二ケーブル26の基端部を制御盤から取り外さなくても、温度センサ9を交換することができる。しかも、処理槽1内から交換作業が可能なため、作業がし易い。また、第二ケーブル26も処理槽1に対し直接にシールされる訳ではないので、必要の際には、第二ケーブル26や第二コネクタ28の取り替えも容易になされる。
【0060】
本発明の処理槽へのセンサ取付構造と、これによりセンサが取り付けられた食品機械、およびこれらに使用される取替用センサは、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、前記実施例では、真空冷却機または蒸煮冷却機の処理槽に適用した例について説明したが、温度センサを必要とするその他の装置にも適用可能である。たとえば、蒸煮機のような加熱調理機の他、真空蒸気解凍機や、蒸気滅菌機などの処理槽にも適用可能である。
【0061】
また、処理槽1の封止構造も適宜に変更可能である。たとえば、管体5の内穴の処理槽内側開口部を、処理槽内側へ行くに従って拡径するテーパ穴としておき、詰め具14に形成した第一ツバ部16の処理槽外側端面に当接して装着したOリング18を、前記テーパ穴へ押し付けて封止する構成としてもよい。また、管体5の処理槽内側開口部の内周面をネジ穴としておき、取付具21をこのネジ穴にねじ込んで、管体5の内穴に詰め具14を保持する構成とすることもできる。さらに、前記実施例では、処理槽1の側壁4に管体5を設けて貫通部6を構成したが、処理槽1の側壁4に形成した貫通穴で済ませることもできる。また、取付具21を用いることなく、詰め具14を管体5に直接装着するか、詰め具14を処理槽1の側壁4に設けた貫通穴に直接装着するように構成することもできる。この取付具21を用いない形態においては、詰め具14の装着をねじ込みにより行うとケーブルがねじ込みの際に捻れるので、ねじ込み以外の装着方式が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のセンサ取付構造の一実施例を示す分解斜視図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1のセンサ取付構造の使用状態を示す説明図であり、一部を断面にして示している。
【図3】従来のセンサ取付構造を示す説明図である。
【図4】従来の別のセンサ取付構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 処理槽
2 被処理物(食材など)
4 側壁
5 管体
6 貫通部
8 ネジ部
9 温度センサ(測温抵抗体)
12 第一ケーブル
14 詰め具
18 Oリング
21 取付具
24 シール具
26 第二ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽へのセンサの取付構造であって、
先端部に前記センサが設けられた第一ケーブルと、
この第一ケーブルの基端部に着脱可能に接続される第二ケーブルと、
前記処理槽内に前記センサを配置すると共に、前記処理槽に形成された貫通部を介して前記第二ケーブルを前記処理槽外へ導出した状態で、前記処理槽内から前記貫通部を封止する着脱可能なシール具とを備え、
前記第一ケーブルと前記第二ケーブルとの接続部は、前記シール具による封止部よりも前記処理槽外側へ配置される
ことを特徴とする処理槽へのセンサ取付構造。
【請求項2】
前記シール具は、前記貫通部の内穴への詰め具と、この詰め具を固定するための取付具とからなり、
前記詰め具は、前記第一ケーブルが通されると共に、前記第一ケーブルに気密状態に固定され、
前記取付具は、前記詰め具を前記貫通部に保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の処理槽へのセンサ取付構造。
【請求項3】
前記処理槽には、その側壁を貫通して管体を設けることで、前記貫通部が形成されており、
前記取付具は、前記第一ケーブルに相対回転に通されるナット状とされ、
前記管体には、前記処理槽内側の端部外周面に、ネジ部が形成されており、
このネジ部に前記取付具がねじ込まれることで、前記管体の内穴に前記詰め具が気密に取り付けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の処理槽へのセンサ取付構造。
【請求項4】
前記詰め具は、前記管体への取付状態において、前記第一ケーブルと前記第二ケーブルとの接続部が前記管体内に配置される位置に設けられ、
前記接続部を前記管体から前記処理槽内へ引き出し可能な長さだけを残して、前記第二ケーブルの中途部が位置決め固定された
ことを特徴とする請求項3に記載の処理槽へのセンサ取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ取付構造にて温度センサが取り付けられた処理槽を備える
ことを特徴とする食品機械。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ取付構造、または請求項5に記載の食品機械において、前記第一ケーブル付きの前記センサに代えて使用されるケーブル付き取替用センサであって、
基端部に前記第二ケーブルへの接続用コネクタが設けられたケーブルを備え、このケーブルの先端部に設けられた
ことを特徴とする取替用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−78588(P2007−78588A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269019(P2005−269019)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】