説明

処理装置

【課題】ワークが搭載されるトレイを安定して、かつ、連続的に移動させ、処理室での処理効率を向上させつつ、処理室での処理をより確実に行うこと。
【解決手段】ワークが搭載される複数のトレイと、前記複数のトレイが係合される第1レール部と、前記複数のトレイのうちの搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に向けて前記第1レール部に沿って移動させる第1移動手段と、前記第1レール部が貫通するように配置され、前記第1移動手段によりその内部に搬入されたトレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う処理室と、を備え、前記トレイが、前記第1レール部と係合し、前記第1レール部に沿う前記トレイの移動が案内される被案内部を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搭載したトレイを処理室に通過させて処理を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の環状部品を超音波振動板に対して傾斜させてトレイに載置し、洗浄槽に満たされた洗浄液にトレイごと浸漬し、超音波によって複数の環状部品を洗浄する技術がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、回転テーブルの複数の載置部にベアリング組立体を1つずつ載置し、回転テーブルを回転させつつ、洗浄ノズルから洗浄液を噴出して載置部に載置された複数のベアリング組立体を洗浄する技術がある(特許文献2参照)。
【0004】
また、ベアリング組立体をブラシにより磨くと共にジェットノズルから洗浄液を噴出させた後に、そのベアリング組立体を1つずつメッシュ状のトレイに載置し、トレイの下側に設けられた洗浄槽に満たされた洗浄液にトレイごと浸漬し、ベアリング組立体を洗浄する技術がある(特許文献3参照)。
【0005】
また、一対の無端チェーンの間に複数の処理用トレイを搬送方向に連続して構成し、処理用トレイごとにリードフレームを1つずつ載置した状態で、無端チェーンを駆動することにより無端チェーンの通過を許容すると共に無端チェーンに沿って配置された処理室(噴射型処理槽及び浸漬型処理槽)で半導体のリードフレームを洗浄する技術がある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−059096号公報
【特許文献2】特開2005−230607号公報
【特許文献3】特開2001−087718号公報
【特許文献4】特開平09−104999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、環状部品がトレイに接触している面積が大きく、接触している部分の洗浄を十分に行うことができない可能性がある。また、複数(例えば、5個)の環状部品を一括して洗浄するため、ロットの切換時に端数(例えば、1個〜4個)の環状部品のみで洗浄する必要が生じ、洗浄効率が低下する虞がある。
【0008】
また、特許文献2では、回転テーブルの複数の載置部にベアリング組立体を1つずつ載置する載置動作、及び洗浄ノズルからの噴出が完了した後に、複数の載置部からベアリング組立体を取り除く取出動作が必要となるため、異なる処理を連続して行う場合、その都度、載置動作と取り出し動作とが必要になり、処理効率が低下する虞がある。また、異なる場所において載置・取り出し動作を行うために、それぞれの場所に載置装置および取出装置を配置する必要があり、装置全体が複雑になる。
【0009】
また、特許文献3では、洗浄部では、メッシュ状のトレイに一つのベアリングを載置する載置動作、トレイを洗浄槽内まで下降させる下降動作、トレイを洗浄槽内から上昇させる上昇動作、トレイから一つのベアリングを取り除く取り出し動作が必要となるため、連続した洗浄処理の効率を低下させる原因となってしまう。更に、トレイには、1つのベアリングしか載置できないため、1つのベアリングの洗浄のために、これらの処理を毎回行わなければならないため、ボトルネックとなり得る。また、メッシュを形成する線状部材の上にベアリングを載置するため、複数の線状部材がベアリングの載置部と接触してしまい、その部分の洗浄を十分に行うことができない可能性がある。
【0010】
また、特許文献4では、各処理用トレイが無端チェーンに連結されており、昇降を行うことができないため、浸漬型処理槽の一方側の側部から処理用トレイが浸漬型処理槽内に進入し、他方側の側部から処理用トレイが排出されるように、無端チェーンを配設している。この方式では、メッキ槽としての浸漬型処理槽内の処理液中に無端チェーン全体も浸漬されることとなり、無端チェーンに付着している油や粉塵等が処理液中に混入してしまうため、この方式の浸漬型処理槽を洗浄槽として用いることは難しい。また、浸漬型処理槽以外の処理槽であっても、ブローや乾燥等の工程で油や粉塵等の付着した無端チェーンが処理室内に進入すれば、油や粉塵等が処理室内に飛散してしまうため好ましくない。また、無端チェーンに処理用トレイを連結させて循環搬送するようにしているため、戻り側(下側)のトレイにはベアリングが載置されないこととなるため処理効率が低下する。更に、無端チェーンに処理用トレイを連結させて循環搬送するようにしているため、異なる複数の処理を行う際は、処理室を無端チェーンの搬送軌道に沿って配置する必要があり、全体的に長い処理装置となり、装置レイアウトが制限される。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ワークが搭載されるトレイを安定して、かつ、連続的に移動させ、処理室での処理効率を向上させつつ、処理室での処理をより確実に行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る処理装置は、ワークが搭載される複数のトレイと、前記複数のトレイが係合される第1レール部と、前記複数のトレイのうちの搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に向けて前記第1レール部に沿って移動させる第1移動手段と、前記第1レール部が貫通するように配置され、前記第1移動手段によりその内部に搬入された前記トレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う処理室と、を備え、前記トレイが、前記第1レール部と係合し、前記第1レール部に沿う前記トレイの移動が案内される被案内部を備える。
【0013】
本発明によれば、前記トレイが前記被案内部を備えるため、前記第1移動手段が搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて移動させることで、前記処理室内に安定して、かつ、連続的に前記トレイを搬入することができる。これにより、前記処理室での処理効率を向上させつつ、前記処理室での処理をより確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記トレイが、ワークが載置される被載置部と、前記被載置部の搬送方向上流側、下流側の少なくともいずれかで上方に起立し、搬送方向と直交する方向に延びる閉塞壁部と、を備え、前記処理室を区画する壁体は、前記第1レール部が貫通される部分に開口部を有し、前記処理室に搬入された前記トレイが前記開口部を通過する際、前記閉塞壁部が前記開口部を閉塞する。
【0015】
この形態によれば、前記閉塞壁部を備えたことにより、前記処理室を閉塞状態に保持することができる。このため、前記処理室における処理をより確実に行うことができる。
【0016】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記第1移動手段は、前記第1レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて押し出す第1押出手段であり、前記処理装置は、前記第1押出手段により押し出されて前記トレイが空になった位置に新たな前記トレイを供給する第1供給手段を更に備える。
【0017】
この形態によれば、前記第1供給手段により搬送方向上流側端部の位置にトレイが供給され、前記第1押出手段により、供給されたトレイが搬送方向下流側に向けて押し出される。このため、トレイが、前記第1レール部に沿って玉突き状態で移動し、案内される。
【0018】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記第1レール部は、平行に配設される一対のレール部材を有し、前記一対のレール部材のいずれか一方は、他方の前記レール部材と対向する面に溝部を有し、前記被案内部は、前記一対のレール部材の一方に形成された前記溝部に向けて突出して形成され、前記溝部に係合される。
【0019】
この形態によれば、移動の負荷を受けるトレイの前記被案内部が前記レール部材の溝部に係合した状態で支持されるため、前記トレイの跳ね上がりを防止することができる。
【0020】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記第1レール部は、平行に配設される一対のレール部材を有し、前記一対のレール部材の双方は、対向する面に溝部を有し、前記被案内部は、前記一対のレール部材のそれぞれの前記溝部に向けて突出して形成され、それぞれの前記溝部に係合される。
【0021】
この形態によれば、トレイの跳ね上がりをより確実に抑制することができる。
【0022】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記トレイは、前記トレイの搬送方向上流側端部で後続の前記トレイの対応する部位と当接する上流側当接部と、前記トレイの搬送方向下流側に突出して形成され、その搬送方向下流側端部で先行する前記トレイの対応する部位と当接する下流側当接部と、を有する。
【0023】
この形態によれば、トレイが、先行するトレイ及び後続のトレイと当接するように形成されるため、トレイをより確実に押し出し移動させることができる。
【0024】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記被案内部が、前記上流側当接部及び前記下流側当接部を有する。
【0025】
この形態によれば、前記被案内部が、先行するトレイ及び後続のトレイと前記溝部内で当接するように形成されるため、トレイをより確実に押し出し移動させることができる。
【0026】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記処理室よりも搬送方向上流側の位置で、空のトレイにワークを載置する載置手段を更に備える。
【0027】
この形態によれば、前記載置手段を備えたことにより、前記ワークが搭載されたトレイを前記処理室に通過させることができる。
【0028】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを、前記第1レール部が延びる方向とは異なる方向に搬送する搬送手段を更に備える。
【0029】
この形態によれば、前記搬送手段を備えたことにより、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動したトレイを所望の場所に搬送することができる。
【0030】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記複数のトレイが係合される第2レール部と、前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて前記第2レール部に沿って移動させる第2移動手段と、を更に備え、前記搬送手段は、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを前記第2レール部の搬送方向上流側端部に搬送し、前記第2レール部が、前記第1レール部に並んで配置され、前記処理室に貫通される。
【0031】
この形態によれば、前記搬送手段により、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動したトレイを前記第2レール部の搬送方向上流側端部に搬送することが可能となるため、前記処理室の配置の自由度を向上することができる。
【0032】
また、本発明の一形態に係る処理装置は、前記第2移動手段は、前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて押し出す第2押出手段である。
【0033】
この形態によれば、前記搬送手段により前記第2レール部の搬送方向上流側端部の位置にトレイが搬送され、前記第2押出手段によりそのトレイが搬送方向下流側に向けて押し出される。このため、前記第2レール部上のトレイ全体が搬送方向下流側に向けて移動し、案内される。
【0034】
また、本発明に係る処理装置は、第1レール部と、前記第1レール部と並んで配設された第2レール部と、前記第1レール部の搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に押し出す第1押出手段と、前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に押し出す第2押出手段と、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動したトレイを前記第2レール部の搬送方向上流側端部に搬送する第1搬送手段と、前記第2レール部の搬送方向下流側端部に移動したトレイを前記第1レール部の搬送方向上流側端部に搬送する第2搬送手段と、前記第1レール部が貫通するように配置され、前記第1押出手段によりその内部に搬入されたトレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う第1処理室と、前記第2レール部が貫通するように配置され、前記第2押出手段によりその内部に搬入されたトレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う第2処理室と、前記第1処理室よりも搬送方向上流側の位置で、空の前記トレイにワークを載置する載置手段と、前記第2処理室よりも搬送方向下流側の位置で、処理済みの前記ワークが載置されたトレイからワークを取り出す取出手段と、を備え、前記トレイが、前記第1レール部及び前記第2レール部と係合し、前記第1レール部及び前記第2レール部に沿う前記トレイの移動が案内される被案内部を備え、前記第1レール部及び前記第2レール部が前記被案内部と係合する溝部を備える。
【0035】
本発明によれば、前記トレイが、前記被案内部を備え、前記第1レール部及び前記第2レール部が前記被案内部と係合する溝部を備えるため、前記第1押出手段又は前記第2押出手段が搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に押し出し、前記第1処理室又は前記第2処理室内に安定して、かつ、連続的に前記トレイを搬入することができる。これにより、前記第1処理室及び前記第2処理室での処理効率を向上させつつ、前記第1処理室及び前記第2処理室での処理をより確実に行うことができる。また、前記第1レール部と前記第2レール部との間を前記第1搬送手段及び前記第2搬送手段により接続したため、前記トレイを循環させて用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ワークが搭載されるトレイを安定して、かつ、連続的に移動させることができ、また、処理室での処理効率を向上させつつ、処理室での処理をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る処理装置100の全体構成を示す平面図である。
【図2】処理装置100での処理に供されるトレイの一構成を示す斜視図である。
【図3】図2に対応するトレイの平面図である。
【図4】処理室41の短手方向の概略断面図である。
【図5】処理室41の長手方向の概略断面図である。
【図6】制御部による各構成のタイミングチャートを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る処理装置200の全体構成を示す概略図である。
【図8】処理装置100又は200での処理に供されるトレイの他の構成を示す斜視図である。
【図9】図8に対応するトレイの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で以下の実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0039】
<第1の実施形態>
[処理装置100の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置100の全体構成を示す平面図である。
【0040】
処理装置100は、本実施形態では、ワークの洗浄に関連する処理を行う洗浄処理装置を想定する。
【0041】
処理装置100は、複数のトレイTRと、第1レール部20と、第1移動機構30と、処理室40(第1処理室41〜第4処理室44および移動室45)と、載置機構50と、第1搬送機構60と、第2レール部70と、第2移動機構80と、第2搬送機構90と、取出機構10とを備える。
【0042】
複数のトレイTRのそれぞれには、ワークとしてベアリングWが搭載される。各トレイTRには、本実施形態では、ベアリングWの完成品が2つ載置される。なお、ベアリングWが載置される後述の被載置部TR120の形状を変えれば、ベアリングWの完成品ではなく、ベアリングWの内輪と外輪とを1つずつ1つのトレイに載置することも可能である。複数のトレイTRは、本実施形態では、ベアリングWの洗浄工程で使用することを想定しており、洗浄工程を循環して使用される。
【0043】
第1レール部20には、複数のトレイTRが係合される。第1レール部20は、互いに平行に配設される一対のレール部材21、22を有する。
【0044】
第1移動機構30は、第1レール部20の搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて第1レール部20に沿って移動させる。本実施形態の場合、第1移動機構30は、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて押し出す機構であって、伸縮可能なロッド30bと、ロッド30bを伸縮駆動する駆動部30aとを含む、エアシリンダやガスシリンダ等の押出機構である。
【0045】
第1移動機構30は、例えば、所定のタイミングでエア又はガスが駆動部30aに供給されて、第1レール部20の搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを伸縮ロッド30bにより所定距離(ロッドのストローク範囲)だけ押し出す。
【0046】
そして、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて次々と押し出すことで、搬送方向下流側に押し出された複数のトレイTRの全部の移動(搬送)を可能にする。本実施形態では、例えば、伸縮ロッド30bのストローク量を、一つのトレイTRの搬送方向の長さ分に設定し、供給された1つのトレイTRを、搬送方向の長さ分だけ押し出すようにしている。しかし、第1搬送機構60及び第2搬送機構90が複数のトレイTRを受け入れ可能な構造であれば、複数のトレイTRの搬送方向の長さの分だけ押し出すことも可能である。
【0047】
処理室40のうち、第1処理室41及び第2処理室42は、第1レール部20が貫通するように、トレイTRの搬送方向に配置されるとともに、互いに隣り合って配置される。第1処理室41、第2処理室42では、その内部に搬入され、移動されるトレイTRに搭載されたベアリングWに対して所定の処理を行う。
【0048】
また、処理室40のうち、第3処理室43及び第4処理室44は、第2レール部70が貫通するように、トレイTRの搬送方向に配置されるとともに、互いに隣り合って配置される。第3処理室43、第4処理室44においも、その内部に搬入され、移動されるトレイTRに搭載されたベアリングWに対して所定の処理を行う。
【0049】
第1処理室41〜第4処理室44および移動室45は、壁体により区画され、後述するようにそれぞれ内部が閉塞空間となるようにしている。
【0050】
本実施形態の場合、処理室40全体で、ベアリングWの洗浄に関連する処理を行う。トレイTR上のベアリングWは、第1処理室41→第2処理室42→移動室45→第3処理室43→第4処理室44の順に搬送される。
【0051】
第1処理室41は、例えば、ベアリングWを洗浄液内に浸漬するための浸漬洗浄室であり、第2処理室42は、例えば、ベアリングWの上方及び下方から洗浄液を噴霧して洗浄するためのシャワー洗浄室である。第3処理室43は、例えば、ベアリングWに付着した洗浄液を吹き飛ばして水切りをするためのブロアー液切り室であり、第4処理室44は、例えば、ベアリングWに温風を吹き付けることによりベアリングWを乾燥させるための温風乾燥室である。
【0052】
なお、移動室45は、洗浄したベアリングWの洗浄状態を維持するために区画された閉塞空間となっており、ベアリングWの洗浄状態を維持したまま、トレイTRの移動を可能にしている。
【0053】
載置機構50は、処理室40(第1処理室41)よりも搬送方向上流側の位置で、空のトレイTRにベアリングWを載置する。載置機構50は、例えば、ロボットアーム等の把持機構と、この把持機構を移動する吊りレールと、を備える。そして、前工程の処理が終了し、ベルトコンベアBによって搬送され、所定の位置に停止されたベアリングWを、把持機構によって一つ或いは複数把持し、吊りレールに沿ってこれを搬送して、空のトレイTR上に載置する。
【0054】
第1搬送機構60は、処理室40(移動室45)の空間内に配置され、第1レール部20の搬送方向とは異なる方向に延びる搬送ベルト61と、駆動ローラを駆動させて搬送ベルト61を駆動する駆動機構62とを備える。異なる方向とは、本実施形態では、第1レール部20の搬送方向下流側端部と第2レール部70の搬送方向上流側端部とを接続する方向(搬送方向と直交する水平方向)を意味する。
【0055】
これにより、第1搬送機構60は、第1レール部20の搬送方向下流側端部に移動されたトレイTRを第2レール部70の搬送方向上流側端部まで搬送する。つまり、第1搬送機構60は、搬送機構としての他に、第2レール部70における後述の第2移動機構80により押し出されてトレイTRが空になった位置に、新たなトレイTRを供給する供給機構としても機能する。
【0056】
なお、第1搬送機構60は、ベルト搬送機構以外も採用可能である。例えば、第1レール部20の搬送方向と異なる直交方向に搬送軌道を画定し、トレイTRがスライド可能な載置テーブルを設ける。そして、第1移動機構30と同様の押出機構を設けて、トレイTRの一方の横側(幅方向の一方)を押し出すようにしてトレイTRを供給してもよい。
【0057】
また、搬送ベルト61が延びる方向としては、水平方向に限定するものではなく、第1レール部20の搬送方向下流側端部と第2レール部70の搬送方向上流側端部とを接続できればよい。
【0058】
トレイTRは第2レール部70にも係合される。第2レール部70は、互いに平行に配設される一対のレール部材71、72を有する。第2レール部70は、第1レール部20に平行に(左右に並べて)配置され、処理室40のうち、第3処理室43、第4処理室44を貫通するように配置される。
【0059】
第2移動機構80は、第2レール部70の搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて第2レール部70に沿って移動させる。本実施形態の場合、第2移動機構80は、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて押し出す機構であって、伸縮可能なロッド80bと、ロッド80bを伸縮駆動する駆動部80aとを含、エアシリンダやガスシリンダ等の押出機構である。
【0060】
第2移動機構80は、例えば、所定のタイミングでエア又はガスが駆動部80aに供給されて、第2レール部70の搬送方向上流側端部に位置するトレイを伸縮ロッド30bにより所定距離(ロッドのストローク範囲)だけ押し出す。
【0061】
そして、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて次々と押し出すことで、搬送方向下流側に押し出された複数のトレイTRの全部の移動(搬送)を可能にする。本実施形態では、例えば、伸縮ロッド80bのストローク量を、一つのトレイTRの搬送方向の長さ分に設定し、供給された1つのトレイTRを、搬送方向の長さ分だけ押し出すようにしている。しかし、第1搬送機構60及び第2搬送機構90が複数のトレイTRを受け入れ可能な構造であれば、複数のトレイTRの搬送方向の長さの分だけ押し出すことも可能である。
【0062】
第2搬送機構90は、第2レール部70の搬送方向とは異なる方向に延びる搬送ベルト91と、駆動ローラを駆動させて搬送ベルト91を駆動する駆動機構92とを備える。異なる方向とは、本実施形態では、第2レール部70の搬送方向下流側端部と第1レール部20の搬送方向上流側端部とを接続する方向(搬送方向と直交する水平方向)を意味する。
【0063】
これにより、第2搬送機構90は、第2レール部70の搬送方向下流側端部に移動されトレイTRを第1レール部20の搬送方向上流側端部まで搬送する。つまり、第2搬送機構90は、搬送機構としての他に、第1レール部20における第1移動機構30により押し出されてトレイTRが空になった位置に、新たなトレイTRを供給する供給機構としても機能する。
【0064】
なお、第2搬送機構90は、ベルト搬送機構以外も採用可能である。例えば、第2レール部70の搬送方向と異なる直交方向に搬送軌道を画定し、トレイTRがスライド可能な載置テーブルを設ける。そして、第2移動機構80と同様の押出機構を設けて、トレイTRの他方の横側(幅方向の他方)を押し出すようにしてトレイを供給してもよい。
【0065】
取出機構10は、処理室40(第4処理室44)よりも搬送方向下流側の位置で、トレイTRから処理済みのベアリングWを取り出す。取出機構10は、例えば、ロボットアーム等の把持機構と、この把持機構を移動する吊りレールと、を備える。そして、処理室40での洗浄工程が終了し、第2レール部70の所定の位置に移動され、停止されたトレイTRに搭載されたベアリングWを、把持機構によって一つ或いは複数把持し、吊りレールに沿ってこれを搬送して、後工程のベルトコンベアB上に載置する。
【0066】
上記の構成を備えることにより、洗浄工程において、同じトレイTR群を循環して用いることが可能となる。なお、本実施形態では、このように同じトレイTR群を循環して用いたが、このようにトレイを循環使用する形態以外の形態も採用可能である。例えば、洗浄後のワークをパレットごと、後工程のベルトコンベアに載置し、搬送するようにしてもよい。
【0067】
[詳細構成]
ここでは、トレイTRの構成を第1レール部20の構成を参照しながら説明するが、トレイTRとの関係では第2レール部70も第1レール部20と同様の構成である。
【0068】
図2は、処理装置100での処理に供されるトレイTRの一構成を示す斜視図である。図3は、図2に対応するトレイTRの平面図である。このトレイTRは、ベアリング載置トレイであり、例えば、内輪と外輪とを組み合わせたベアリングの完成品を2つ載置することを想定したトレイである。
【0069】
トレイTRの枠体である底部(フレーム部)TR101には、X字状に架け渡された筋交いである梁部TR103が設けられる。底部TR101及び梁部TR103で囲まれる空間が、ワークに対して下方から洗浄処理を行うための洗浄穴部TR102となる。
【0070】
梁部TR103の上面には、取付溝部TR104が形成される。この取付溝部TR104に、後述する載置部材TR121の係合部TR121bが嵌め込まれる。図2中では、X字状の梁部TR103が、トレイの搬送方向と直交する水平方向に、隣り合って2つ設けられる場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、X字状の梁部TR103は、1つだけであってもよく、また、3つ以上並べて設けてもよい。底部TR101と梁部TR103とは、一体又は別体のいずれであってもよい。
【0071】
トレイTRは、第1レール部20及び第2レール部70と係合し、これらに沿うトレイTRの移動が案内される被案内部TR110、TR110と、ワークが載置される被載置部TR120と、被載置部TR120の搬送方向上流側及び下流側で上方に起立し、搬送方向と直交する水平方向(幅方向)に延びる閉塞壁部TR130、TR130と、を備える。
【0072】
なお、閉塞壁部は、搬送方向の中央部に1つだけ設けてもよい。閉塞壁部を中央に1つ設ける場合は、閉塞壁部を境に搬送方向それぞれの側に被載置部TR120が構成(載置部材TR121は合計4つ)されることになる。
【0073】
被案内部TR110、TR110は、一対のレール部材21、22に係合するように底部TR101の両幅方向に突出してそれぞれ形成される。被案内部TR110を設けたことでトレイTRを安定して、連続的に搬送できる。本実施形態の場合、被案内部TR110は、トレイTRの搬送方向上流側に突出して形成される上流側当接部TR111と、トレイTRの搬送方向下流側に突出して形成される下流側当接部TR112とを有する。
【0074】
被載置部TR120は、互いに同じ形状である2つの載置部材TR121を有する。載置部材TR121は、ベアリングの完成品の内輪底面を支持する4つの支持部TR121aと、梁部TR103に形成された4つの取付溝部TR104に係合される4つの係合部TR121bとを有する。支持部TR121aは、ベアリングの完成品の内輪底面のみを支持する。これにより、ベアリングの完成品の外輪は、内輪と外輪との間に構成される転動体により負荷がかからない状態で支持されるため、例えば、洗浄液の噴き付けが行われる処理室では、外輪を水圧により回転させることにより、転動体、内輪の外周溝および外輪の内周溝の洗浄を効率よく行うことができる。
【0075】
支持部TR121aの内側には傾斜部が設けられている。これにより、載置するベアリングのサイズ変更を容易に行うことができると共に、載置機構50によるベアリングの投入位置がずれた場合であっても、所定の位置にベアリングを位置づけること(位置決め)を容易に行うことができる。係合部TR121bは、取付溝部TR104のサイズに応じたサイズに形成される。
【0076】
閉塞壁部TR130は、トレイTRの底部TR101から略垂直に起立するように形成される。閉塞壁部TR130は、本実施形態では、被案内部TR110よりも幅方向(搬送方向と直交する方向)の内方に形成される。閉塞壁部TR130は、第1レール部20又は第2レール部70に沿って移動するトレイTRが処理室41〜44の開口部46を通過する際に、開口部46を閉塞する。これにより、トレイTRの移動に伴って、開口部46が各トレイTRの閉塞壁部TR130により順次閉塞され、第1処理室41〜第4処理室44および移動室45は、それぞれ内部が閉塞空間とされる。
【0077】
図4(a)乃至(c)は、処理室41又は42の短手方向(幅方向)の概略断面図である。図5(a)及び(b)は、処理室41の長手方向(搬送方向)の概略断面図である。
【0078】
図4(a)で示すように、処理室41、42には、入口側、出口側の双方の壁体に形成された開口部46を通って、第1レール部20のレール部材21、22が貫通される。
【0079】
一対のレール部材21、22の双方は、搬送方向に伸張した3つの板状部材からそれぞれ構成され、上側と下側とに同じ幅の上側板状部材21a、22aと、下側板状部材21c、22cとを配置し、その間に上下板状部材より幅が小さい中間板状部材21b、22bをサンドイッチ状に配置し、それらをネジ部材等の締結部材で組み合わせることで、互いに対向する面に溝部23、23を形成する。そして、この溝部23、23にトレイTRの被案内部TR110、110を係合させ、この溝部23、23内で異なるトレイTRの上流側当接部TR111、111と下流側当接部TR112、112とを当接させることでトレイTRが搬送される。
【0080】
換言すれば、レール部材21、22は、互いに対向する面が開口するように断面略C字状に形成される。そして、第1レール部20に案内される(詳細には、第1レール部20の溝部23、23にトレイTRの被案内部TR110、110を係合して案内される)トレイを、第1レール部20の途中から抜き取る場合は、上側板状部材21a、22aを取り外すことでトレイの抜き取りが可能となる。なお、第2レール部70も同様の構成である。
【0081】
図4(b)で示すように、被案内部TR110は、一対のレール部材21、22のそれぞれの溝部23に向けて突出して形成される。突出する被案内部TR110がそれぞれの溝部23に係合される。
【0082】
図5(a)で示すように、上流側(後側)当接部TR111は、後続(上流側)のトレイの対応する部位(下流側(前側)当接部TR112)に当接される。下流側(前側)当接部TR112は、先行するトレイの対応する部位(上流側(後側)当接部TR111)に当接される。上流側当接部TR111及び下流側当接部TR112は、閉塞壁部TR130(または載置部TR120)よりも搬送方向上流側および下流側に突出して形成されている。
【0083】
なお、図5(b)で示すように、被案内部TR110は、本実施形態では、安定搬送のため、溝部23内で、上流側当接部TR111及び下流側当接部TR112が当接されることとしている。しかし、上流側当接部TR111と、下流側当接部TR112とは、被案内部TR110以外の部位に設けてもよい。例えば載置部TR120の幅方向中央部に当接部を設け(図示せず)、前後に隣接するトレイの、載置部TR120の当接部同士を当接するようにしても構わない。
【0084】
図4(a)、図5(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、更に、処理室41、42の開口部46に連続してトンネル部T1が設けられる。例えば、処理室41では、入口側及び出口側の開口部46に連続して、処理室41の内部にトンネル部T1が設けられる。トンネル部T1の搬送方向長さは、閉塞壁部TR130により常に閉塞状態が維持できるように2つの閉塞壁部TR130を収容できる長さに設定され、例えば、トレイの搬送方向長さ(閉塞壁部TR130の離間距離)と略同じとされる。
【0085】
処理室41を、浸漬洗浄室とした場合、処理室41内部の洗浄液の量が一定量になるように、洗浄液はその量を調整(制御)して充填(供給)される。その上で洗浄液が処理室41の外部に漏れる量を少なくすることで処理室41内部の洗浄液の量を管理して洗浄可能にしている。
【0086】
また、処理室42は、処理室41と隣り合っているため、入口側のトンネル部T1は省略することができ、出口側の処理室42の外部に同様のトンネル部T1が設けられる。
【0087】
処理室43、44についても同様にトンネル部T1を設ける。トンネル部T1を設けることにより、トレイTRが開口部46の位置で停止しなければならないという制約がなくなり、トンネル部T1内のいずれかの位置に閉塞壁部TR130が位置していれば、処理室40(第1処理室41〜第4処理室44および移動室45)の密閉性を保持することができる。
【0088】
このように、トンネル部T1を設けることによりトレイTRが移動中であっても処理室40の出入口を閉塞状態にすることができる。
【0089】
また、処理装置100は、図示しない制御部(例えば、CPU、ROM、RAM、インターフェース等)を備え、第1移動機構30、載置機構50、第1搬送機構60、第2移動機構80、第2搬送機構90、取出機構10及び各処理室の処理機構の各構成の動作を統括的に制御する。
【0090】
[処理フロー]
図6は、制御部による各構成のタイミングチャートを示す図である。
【0091】
まず、制御部は、載置機構50、第1搬送機構60、第2搬送機構90及び取出機構10に駆動開始を指示する。具体的には、載置機構50は処理室40(第1処理室41)よりも搬送方向上流側の載置位置に位置する空のトレイにワークを載置する。
【0092】
また、第1搬送機構60は、駆動機構62により搬送ベルト61を駆動して、第1レール部20の搬送方向下流側端部に移動したトレイを第2レール部70の搬送方向上流側端部まで搬送する。
【0093】
また、第2搬送機構90は、駆動機構92により搬送ベルト91を駆動して、第2レール部70の搬送方向下流側端部に移動したトレイを第1レール部20の搬送方向上流側端部まで搬送する。また、取出機構10は処理室40(第4処理室44)よりも搬送方向下流側の取出位置に位置するトレイから処理済みのワークを取り出す。
【0094】
そして、制御部は、第1移動機構30及び第2移動機構80に駆動開始を指示する。具体的には、第1移動機構30は、その押出機構を駆動させて、第1レール部20の搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に向けて第1レール部20に沿って移動させる。
【0095】
また、第2移動機構80は、その押出機構を駆動させて、第2レール部70の搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に向けて、第2レール部70に沿って移動させる。このように、第1移動機構30および第2移動機構80により、搬送方向上流側端部の位置でそれぞれ待機するトレイを、搬送方向下流側に向けて移動させる。
【0096】
これにより、それぞれのトレイの下流側当接部TR112が、それぞれのトレイの下流側位置に待機するトレイの上流側当接部TR111に当接される。その結果、連続して隣接する複数のトレイTRすべてを搬送方向下流側に移動することができる。なお、押出機構の駆動とは、本実施形態では、エアシリンダやガスシリンダにエア又はガスを供給する処理を意味する。
【0097】
制御部は、任意のタイミングにより処理室40(第1処理室41〜第4処理室44)の処理機構に駆動開始を指示する。処理機構とは、例えば、処理室41での洗浄液の充填機構、処理室42でのシャワー噴射機構、処理室43での送風機構、処理室44での温風送出機構等を意味する。
【0098】
以上の処理により、洗浄に関連する処理の1サイクルが終了する。1サイクルとは、処理装置100の取出機構10によりワークが結果物として取り出されてから次に取り出されるまでの間の処理を示す。例えば、本実施形態では、6秒毎に取出機構10により2個のワークが取り出されるまでの処理を示す。
【0099】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、複数の処理室が水平方向に配置され、第1レール部20と第2レール部70とが平行に水平方向に並べて配置されており、第1搬送機構60及び第2搬送機構90によりトレイを洗浄工程で水平循環して用いた。
【0100】
しかし、処理室やレール部或いは搬送機構のレイアウトはこれに限られず、種々のレイアウトを採用することができる。図7は、本発明の第2の実施形態に係る処理装置200の全体構成を示す概略図である。
【0101】
本実施形態では、処理室40の第1処理室41および第2処理室42と第3処理室43および第4処理室44とが上下に並べて、また、第1レール部20と第2レール部70とが平行に上下に並べて配置されており、第1搬送機構60’及び第2搬送機構90’によりトレイを洗浄工程で上下方向に移動して循環する構成となっている。以下、このような構造を有する処理装置200について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の参照番号を用いて説明する。
【0102】
[処理装置200の全体構成]
図7に示すように、処理装置200は、複数のトレイTRと、第1レール部20と、第1移動機構30と、処理室40(第1処理室41〜第2処理室44および移動室45)と、載置機構50’と、第1搬送機構60’と、第2レール部70と、第2移動機構80と、第2搬送機構90’と、取出機構10’とを備える。
【0103】
処理装置200は、処理室40が上下方向に伸長して形成され(第1処理室41、第2処理室42と第3処理室43、第4処理室44とが上下に並べて配置され、下側に第1処理室41、第2処理室42が、上側に第3処理室43、第4処理室44が配置される積層構造となって)、配置されている。
【0104】
上記第1の実施形態と同様に、処理室41乃至44を、それぞれ浸漬洗浄室、シャワー洗浄室、ブロアー液切り室、温風乾燥室とすることができる。この場合、ブロアー液切り室である処理室43が、シャワー洗浄室である処理室42の上方に位置しているため、処理室43内でベアリングWから液切りされた水分(洗浄液)を、処理室42へ落下させる構成とすれば、処理室42内での洗浄液と処理室43から落下した水分(洗浄液)とを処理室42において共通に回収でき、洗浄液の回収を容易化できる。
【0105】
第1処理室41、第2処理室42は、第1レール部20がこれらを貫通するように構成している。また、第3処理室43、第4処理室44は、第2レール部材70がこれらを貫通するように構成している。そして、それぞれ第1レール部20と第2レール部70とに沿ってトレイTRの移動を可能にしている。
【0106】
第1レール部20は、第1の実施形態と同様に互いに平行に所定の高さ位置に配設される一対のレール部材21、22を有する。
【0107】
第1移動機構30は、後述する第2搬送機構90’の一部に構成され、第1レール部20の搬送方向上流側端部に第2搬送機構90’の昇降体91’がトレイを載置した状態で位置すると、トレイを搬送方向下流側に向けて昇降体91’から第1レール部20に移動させる。
【0108】
第1移動機構30は、所定のタイミングで第1レール部20の搬送方向上流側端部に昇降体91’に載置するトレイを伸縮ロッド30bにより所定距離(ロッドのストローク範囲)だけ押し出す。このように、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて次々と押出すことで搬送方向下流側に押し出された複数のトレイTRの全部の移動(搬送)を可能にする。
【0109】
本実施形態では、例えば、ロッド30bのストロークは、一つのトレイTRの大きさに設定されている。しかし、第1搬送機構60’が複数のトレイTRを受け入れ可能な構造であれば、複数のトレイTRの搬送方向の大きさの分だけ押し出すことも可能である。
【0110】
上記第1の実施形態の載置機構50に代わる載置機構50’は、下側に構成される第1レール部20上の処理室41よりも搬送方向上流側の位置で、空のトレイTRにベアリングWを載置する。載置機構50’の構成及び動作は、上記第1の実施形態の載置機構50と同様でよい。
【0111】
上記第1の実施形態の第1搬送機構60に代わる第1搬送機構60’は、第1レール部20の搬送方向とは異なる方向の上下方向に伸張するフレーム構造体60a’と、フレーム構造体60a’内を移動可能な昇降体61’と、不図示の昇降駆動機構(例えば、チェーン駆動機構や、エアシリンダなどのアクチュエータ機構等のエレベータ機構)とを備える。
【0112】
これにより、第1搬送機構60’は、第1レール部20の搬送方向下流側端部の位置と同じ高さ位置(下降位置)に待機する昇降体61’に移動されたトレイを、第2レール部70の搬送方向上流側端部の位置と同じ高さ位置(上昇位置)まで搬送する。つまり、第1搬送機構60’は、上側に配置された第2レール部70に新たなトレイを供給する供給機構として機能する。
【0113】
第2レール部70は、第1の実施形態と同じく、互いに平行に配設される一対のレール部材71、72を有する。第2レール部70は、第1レール部20に平行に上下に並べて配置され、処理室40のうち、第3処理室43、第4処理室44を貫通するように配置される。
【0114】
第2移動機構80は、第1搬送機構60’の一部に構成され、第2レール部70の搬送方向上流側端部に第1搬送機構60’の昇降体61’がトレイTRを載置した状態で位置すると、トレイTRを搬送方向下流側に向けて昇降体61’から第2レール部70に移動させる。
【0115】
第2移動機構80は、所定のタイミングで第2レール部70の搬送方向上流側端部に昇降体61’に載置するトレイを伸縮ロッド80bにより所定距離(ロッドのストローク範囲)だけ押し出す。このように、搬送方向上流側端部に位置するトレイTRを搬送方向下流側に向けて次々と押出すことで搬送方向下流側に押し出された複数のトレイTRの全部の移動(搬送)を可能にする。本実施形態では、例えば、ロッドのストロークは、一つのトレイの大きさに設定されている。しかし、第2搬送機構90’が複数のトレイTRを受け入れ可能な構造であれば、複数のトレイTRの搬送方向の大きさの分だけ押し出すことも可能である。
【0116】
上記第1の実施形態の第2搬送機構90に代わる第2搬送機構90’は、第2レール部70の搬送方向とは異なる方向の上下方向に伸張するフレーム構造体90a’と、フレーム構造体90a’内を移動可能な昇降体91’と、不図示の昇降駆動機構(例えば、チェーン駆動機構や、エアシリンダなどのアクチュエータ機構等のエレベータ機構)とを備える。
【0117】
これにより、第2搬送機構90’は、第2レール部70の搬送方向下流側端部の位置と同じ高さ位置(下降位置)に待機する昇降体91’に移動されたトレイを、第2レール部70の搬送方向上流側端部の位置と同じ高さ位置(上昇位置)まで搬送する。つまり、第2搬送機構90’は、下側に配置された第1レール部20に新たなトレイTRを供給する供給機構として機能する。
【0118】
上記第1の実施形態の取出機構10に代わる取出機構10’は、処理室40(第4処理室44)よりも搬送方向下流側(載置機構50’の上部)の位置で、トレイから処理済みのベアリングWを取り出す。取出機構10’の構成及び動作は、上記第1の実施形態の取出機構10と同様でよい。
【0119】
次に、係る構成からなる処理装置200の動作について説明する。まず、処理装置200の制御部は、載置機構50’、第1搬送機構60’、第2搬送機構90’及び取出機構10’に駆動開始を指示する。具体的には、載置機構50’は処理室40(第1処理室41)よりも搬送方向上流側の載置位置に位置する空のトレイにワークを載置する。
【0120】
また、第1搬送機構60’は、不図示の昇降駆動機構を駆動して、第1レール部20の搬送方向下流側端部へ昇降体61’を移動(下降)させる。そして、第1レール部20からトレイを受け取り、第2レール部70の搬送方向上流側端部まで搬送(上昇)させる。
【0121】
また、第2搬送機構90’は、不図示の昇降駆動機構を駆動して、第2レール部70の搬送方向下流側端部へ昇降体91’を移動(上昇)させる。そして、第2レール部70からトレイを受け取り、第1レール部20の搬送方向上流側端部まで搬送(下降)させる。また、取出機構10’は処理室40(第4処理室44)よりも搬送方向下流側の取出位置に位置するトレイから処理済みのワークを取り出す。
【0122】
そして、制御部は、第1移動機構30及び第2移動機構80に駆動開始を指示する。具体的には、第1移動機構30は、その押出機構を駆動させて、昇降体91’からトレイTRを搬送方向下流側に向けて第1レール部20に沿って移動させる。また、第2移動機構80は、その押出機構を駆動させて、昇降体61’からトレイTRを搬送方向下流側に向けて、第2レール部70に沿って移動させる。
【0123】
このように第1移動機構30および第2移動機構80によりそれぞれの昇降体61’および昇降体91’に待機するトレイTRに向かって搬送方向上流側端部のトレイTRを搬送方向下流側に向けて移動させることで、それぞれのトレイTRの下流側当接部TR112をそれぞれの上流側位置に待機するトレイTRの上流側当接部TR111に当接することで下流側に連続して隣接する複数のトレイTRすべてを搬送方向下流側に移動することができる。
【0124】
以上の処理により、洗浄に関連する処理の1サイクルが終了する。
【0125】
本実施形態においては、処理室41、42と処理室43、44とが上下に2つ並べて配置されているが、上下に3つ又は4つ並べて配置するようにしてもよい。例えば、上下に4つ並べて配置する場合においては、第1階層には処理室41、第2階層には処理室42、第3階層には処理室43、第4階層には処理室44を配置して構成してもよい。このように本実施形態の構成によれば、多様なレイアウトに対応可能に装置構成を変更することができる。また、上下に並べて配置することで、洗浄液の回収が容易になり、装置構造を容易にすることが可能となる。
【0126】
<第3の実施形態>
トレイTRは、種々の変更が可能である。以下、トレイTRの他の例について説明する。
【0127】
図8は、処理装置100又は200での処理に供されるトレイTRの他の構成例であるトレイTR200を示す斜視図である。図9は、図8に対応するトレイTR200の平面図である。このトレイTR200は、ベアリングの構成部品となる内輪と外輪とを載置し、内輪と外輪とを組み立てる前の工程としての洗浄に関連する処理に用いられることを想定したトレイである。
【0128】
トレイTR200は、トレイTR200を第1レール部20と係合し、これらに沿うトレイTRの移動が案内される被案内部TR210、TR210と、ワークが載置される被載置部TR220と、被載置部TR220の搬送方向上流側及び下流側で上方に起立し、搬送方向と直交する水平方向に延びる閉塞壁部TR230、TR230と、を備える。
【0129】
被案内部TR210、TR210は、一対のレール部材21、22に係合するように底部TR110の両幅方向(搬送方向と直交する水平方向)に突出してそれぞれ形成される。被案内部TR210は、トレイTR200の搬送方向上流側に突出して形成される上流側当接部TR211と、トレイTR200の搬送方向下流側に突出して形成される下流側当接部TR212とを有する。なお、上流側当接部TR211と下流側当接部TR212とは被案内部TR210以外の部位(例えば被載置部TR220)に設けてもよい。
【0130】
被載置部TR220は、L字状の第1載置部材TR221と、第1載置部材TR221と組み合わせられるL字状の第2載置部材TR222とを有する。トレイTR200の底部TR201には、ワーク(外輪および内輪)に対して下方から洗浄処理を行うための洗浄穴部TR202と、洗浄穴部TR202の周縁で第1載置部材TR221及び第2載置部材TR222を取り付けるための取付溝部TR203とを備える。
【0131】
第2載置部材TR222に対して第1載置部材TR221を、スリット221a、222a同士を重ね合わせるように組み合わせる。これら組み合わせた第1載置部材TR221及び第2載置部材TR222の各屈曲部及び各端部が、底部TR201の各取付溝部TR203に嵌め込み、着座される。第1載置部材TR221と第2載置部材TR222とが交差する位置が2つ存在し、各交差する位置がワークの形状に合わせたワーク載置部として形成される。
【0132】
第1載置部材TR221及び第2載置部材TR222は、ベアリングの内輪底面(外周および内周を結ぶ一側面)を支持する内輪支持部TR223と、ベアリングの外輪底面(外周および内周を結ぶ一側面)を支持する外輪支持部TR224と、底部TR201の周縁に形成された取付溝部TR203に係合される複数の係合部TR225とを有する。
【0133】
内輪支持部TR223及び外輪支持部TR224の内側には傾斜部が設けられている。これにより、載置する内輪、外輪のサイズ変更を行っても、所定の範囲内に位置づけを行うことができる。係合部TR225は、取付溝部TR203のサイズに応じたサイズに形成される。第1載置部材TR221及び第2載置部材TR222は一体に設けてもよい。また、トレイ本体の底部TR201及び第2載置部材TR222、又はトレイ本体の底部TR201、第1載置部材TR221及び第2載置部材TR222を一体に設けてもよい。
【0134】
閉塞壁部TR230は、トレイTR200の底部TR201から略垂直に起立するように形成される。閉塞壁部TR230は、本実施形態では、被案内部TR210よりも幅方向(搬送方向と直交する方向)の内方に形成される。閉塞壁部TR230は、第1レール部20又は第2レール部70に沿って搬入されたトレイTR200が処理室41〜44の開口部46を通過する際に開口部46を閉塞する。
【符号の説明】
【0135】
TR トレイ
TR110 被案内部
20 第1レール部
30 第1移動機構
40 処理室(第1処理室41〜第4処理室44)
50、50’ 載置機構
60、60’ 第1搬送機構
70 第2レール部
80 第2移動機構
90、90’ 第2搬送機構
10、10’ 取出機構
100、200 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが搭載される複数のトレイと、
前記複数のトレイが係合される第1レール部と、
前記複数のトレイのうちの搬送方向上流側端部に位置するトレイを搬送方向下流側に向けて前記第1レール部に沿って移動させる第1移動手段と、
前記第1レール部が貫通するように配置され、前記第1移動手段によりその内部に搬入された前記トレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う処理室と、を備え、
前記トレイが、
前記第1レール部と係合し、前記第1レール部に沿う前記トレイの移動が案内される被案内部を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記トレイが、
ワークが載置される被載置部と、
前記被載置部の搬送方向上流側、下流側の少なくともいずれかで上方に起立し、搬送方向と直交する方向に延びる閉塞壁部と、を備え、
前記処理室を区画する壁体は、前記第1レール部が貫通される部分に開口部を有し、
前記処理室に搬入された前記トレイが前記開口部を通過する際、前記閉塞壁部が前記開口部を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第1移動手段は、前記第1レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて押し出す第1押出手段であり、
前記処理装置は、前記第1押出手段により押し出されて前記トレイが空になった位置に新たな前記トレイを供給する第1供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1レール部は、平行に配設される一対のレール部材を有し、
前記一対のレール部材のいずれか一方は、他方の前記レール部材と対向する面に溝部を有し、
前記被案内部は、前記一対のレール部材の一方に形成された前記溝部に向けて突出して形成され、前記溝部に係合されることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記第1レール部は、平行に配設される一対のレール部材を有し、
前記一対のレール部材の双方は、対向する面に溝部を有し、
前記被案内部は、前記一対のレール部材のそれぞれの前記溝部に向けて突出して形成され、それぞれの前記溝部に係合されることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記トレイは、
前記トレイの搬送方向上流側端部で後続の前記トレイの対応する部位と当接する上流側当接部と、
前記トレイの搬送方向下流側に突出して形成され、その搬送方向下流側端部で先行する前記トレイの対応する部位と当接する下流側当接部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記被案内部が、前記上流側当接部及び前記下流側当接部を有することを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記処理室よりも搬送方向上流側の位置で、空の前記トレイにワークを載置する載置手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを、前記第1レール部が延びる方向とは異なる方向に搬送する搬送手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項10】
前記複数のトレイが係合される第2レール部と、
前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて前記第2レール部に沿って移動させる第2移動手段と、
を更に備え、
前記搬送手段は、前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを前記第2レール部の搬送方向上流側端部に搬送し、
前記第2レール部が、前記第1レール部に並んで配置され、前記処理室に貫通されることを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記第2移動手段は、前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に向けて押し出す第2押出手段であることを特徴とする請求項10に記載の処理装置。
【請求項12】
第1レール部と、
前記第1レール部と並んで配設された第2レール部と、
前記第1レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に押し出す第1押出手段と、
前記第2レール部の搬送方向上流側端部に位置する前記トレイを搬送方向下流側に押し出す第2押出手段と、
前記第1レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを前記第2レール部の搬送方向上流側端部に搬送する第1搬送手段と、
前記第2レール部の搬送方向下流側端部に移動した前記トレイを前記第1レール部の搬送方向上流側端部に搬送する第2搬送手段と、
前記第1レール部が貫通するように配置され、前記第1押出手段によりその内部に搬入された前記トレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う第1処理室と、
前記第2レール部が貫通するように配置され、前記第2押出手段によりその内部に搬入された前記トレイに搭載されたワークに対して所定の処理を行う第2処理室と、
前記第1処理室よりも搬送方向上流側の位置で、空の前記トレイにワークを載置する載置手段と、
前記第2処理室よりも搬送方向下流側の位置で、処理済みの前記ワークが載置された前記トレイからワークを取り出す取出手段と、
を備え、
前記トレイが、前記第1レール部及び前記第2レール部と係合し、前記第1レール部及び前記第2レール部に沿う前記トレイの移動が案内される被案内部を備え、
前記第1レール部及び前記第2レール部が前記被案内部と係合する溝部を備えることを特徴とする処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−187559(P2012−187559A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55575(P2011−55575)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】