説明

凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法

【課題】凹版オフセット印刷による連続印刷において、パイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。
【解決手段】無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分、溶剤成分及び分散剤をそれぞれ含有した印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、このインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、被転写体へインキを転写する塗膜の製造方法の改良であり、樹脂成分がスチレン−アクリル共重合体などの成分を含み、溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの成分を含み、シリコーンゴムシートに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付け、受理速度V1が0.1〜12m/min、かつ印刷速度V2が0.2〜120m/minの範囲内であるとき、印刷速度V2と受理速度V1との速度比(V2/V1)が2以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに微細でかつ高精度の電極パターンを形成する凹版オフセット印刷法での使用に好適な塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板や表示デバイス等の半導体デバイスにおける電極等の形成には従来よりフォトリソグラフィ法が用いられてきたが、このフォトリソグラフィ法は製造工程が複雑であり、また材料ロスが多く、パターン形成に必要な露光装置等の製造設備に莫大な費用がかかるため、製造コストが極めて高くなるという問題があった。更に、パターン形成時の現像処理等にて生じる廃液を処理するコストも高く、しかもこの廃液については環境保護の観点からも問題があった。
【0003】
そこで、低コストでかつ有害な廃液等を生じることのないパターン形成方法に関する研究が種々なされている。なかでも、凹版オフセット印刷法は、微細パターンを高い精度で形成することが可能であることから、フォトリソグラフィ法の代替法として注目されている。凹版オフセット印刷法では、印刷用ブランケットからガラス基板などの被転写体に印刷用インキを100%転写させるために、印刷用ブランケット表面にはシリコーンゴムシートを用い、印刷用インキには印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い、例えば溶剤を加え、この溶剤をシリコーンゴムに溶解させ、印刷用インキとシリコーンゴム界面の界面張力を低下させることでシリコーンゴムから印刷用インキを剥離し易くして印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体上に転写させている。
【0004】
凹版オフセット印刷を用いた技術として、導電性インキ組成物を印刷用ブランケット表面からガラス基板の表面に転移させた後に印刷用ブランケットの表面を加熱し、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、印刷用ブランケット表面にシリコン系エラストマを用いたものを使用し、印刷用インキとして、インキ中に低分子量ポリシロキサンを含有させたものを使用し、かつ印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体へ転写した後、印刷用ブランケットの表面を加熱して印刷用ブランケットに吸収された印刷用インキの溶剤を蒸散させ、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−245931号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−66804号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の凹版オフセット印刷において、連続で印刷を行うにつれて、印刷用ブランケットからガラス基板のような被転写体に印刷用インキを塗布するときに、印刷用ブランケット上に印刷用インキが次第に残っていく、いわゆるパイリング(piling)という現象が生じる問題があった。パイリング現象が生じる一因としては、図7に示すように、印刷用ブランケット3を回転して、印刷用ブランケット3表面のシリコーンゴムシート3aからガラス基板4へ印刷用インキ1を転写する際に、印刷用インキ1が内部で分断して、印刷用インキ1の一部がシリコーンゴムシート3aに残留してしまうことが考えられる。このパイリング現象により、得られる塗膜において、膜厚の減少やばらつき、線幅のばらつきの原因になるという問題があった。
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2に示される方法では、ブランケット表面を、版の表面温度に対して、10℃以下の範囲に冷却することを特徴としている。しかし、ブランケット表面温度が工程中に変化すると、ブランケットに受理されたインキの温度もブランケット表面温度に合わせて変化する。即ち、インキの温度変化に伴い、インキの粘度(インキ凝集力)が大きく変化するため、例えば、ブランケット表面の温度が5〜10℃上昇すると、ブランケット表面の温度上昇に伴い、受理されたインキの温度も上昇して、インキの粘度が急激に低下し、被転写体への印刷工程において、パイリングし易くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、凹版オフセット印刷による連続印刷において、パイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる、凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分、溶剤成分及び分散剤をそれぞれ含有した印刷用インキ11を凹状のパターン10aを有する印刷版10に充填し、印刷版10から充填したインキを表面にシリコーンゴムシート13aを有するロール状の印刷用ブランケット13へ転写した後、印刷用ブランケット13を回転して印刷用ブランケット13から被転写体16へインキを転写する凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法の改良である。その特徴ある構成は、樹脂成分がスチレン−アクリル共重合体、ウレタン−アクリル共重合体、エポキシ−アクリル共重合体、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の成分を含み、溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上の成分を含み、印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付け、印刷版10に充填したインキを印刷用ブランケット13へ転写する際の受理速度V1が0.1〜12m/min、かつ印刷用ブランケット13から被転写体16へインキを転写する際の印刷速度V2が0.2〜120m/minの範囲内であるとき、印刷速度V2と受理速度V1との速度比(V2/V1)が2以上であるところにある。
但し、ポリエステルポリオールは、炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール又は炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコールである。
【0009】
請求項1に係る発明では、印刷用インキに上記種類の樹脂成分及び上記種類の溶剤成分をそれぞれ用い、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに対して室温の気体を印刷中に連続して吹き付けることで、印刷版から印刷用ブランケットへ印刷用インキを転写した後は、印刷用インキから溶剤成分を速やかに揮発させるため、印刷用ブランケット表面に転写した印刷用インキの凝集力が向上する。印刷用インキの凝集力が向上すると、印刷用ブランケットから被転写体へ印刷する際に、印刷用ブランケット上に印刷用インキが残留し難くなる。また、印刷用ブランケットから被転写体へ印刷用インキを転写して1回分の印刷を終えた後は、印刷用ブランケット表面に浸透している溶剤成分を速やかに除去するため、印刷用ブランケットの状態を溶剤成分浸透前の状態に保つことができる。更に、受理速度V1と印刷速度V2との速度比(V2/V1)が2以上となるように受理と印刷とで速度差をつけて、インキの粘弾性特性の速度依存性を利用することにより、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である製造方法である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに吹き付ける気体の速度が0.1〜50m/secの範囲内である製造方法である。
請求項3に係る発明では、吹き付ける気体の速度が上記範囲内であれば、印刷用ブランケットへ転写した印刷用インキから溶剤成分を速やかに揮発させ、また、印刷後の印刷用ブランケット表面に浸透している溶剤成分を速やかに除去するのに好適である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに吹き付ける気体のうち、印刷版10方向又は被転写体16方向に向かう気体を遮るための遮蔽板15が設けられた製造方法である。
請求項4に係る発明では、遮蔽板を設けて印刷版方向又は被転写体方向に向かう気体を遮ることで、印刷版に充填した印刷用インキからの溶剤成分の揮発を十分に防止でき、また、被転写体では揮発した溶剤が基板に付着することを妨げることができ、基板表面状態を保つという優れた効果が得られる。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明であって、吹き付ける気体が空気、窒素又は二酸化炭素である製造方法である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、印刷用インキに含有する無機粉末が銀粉末を含む粉末であり、得られる塗膜が銀含有膜である製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法は、印刷用インキに所望の種類の樹脂成分及び所望の種類の溶剤成分を用い、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付けることで、印刷版から印刷用ブランケットへ印刷用インキを転写した後は、印刷用インキから溶剤成分を速やかに揮発させるため、印刷用ブランケット表面に転写した印刷用インキの凝集力が向上する。印刷用インキの凝集力が向上すると、印刷用ブランケットから被転写体へ印刷する際に、印刷用ブランケット上に印刷用インキが残留し難くなる。また、印刷用ブランケットから被転写体へ印刷用インキを転写して1回分の印刷を終えた後は、印刷用ブランケット表面に浸透している溶剤成分を速やかに除去するため、印刷用ブランケットの状態を溶剤成分浸透前の状態に保つことができる。更に、受理速度V1と印刷速度V2との速度比(V2/V1)が2以上となるように受理と印刷とで速度差をつけて、インキの粘弾性特性の速度依存性を利用することにより、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。従って、本発明の塗膜の製造方法では、連続印刷におけるパイリング現象に起因する、膜厚の減少やばらつき、線幅のばらつき等が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者は、半導体デバイスに微細でかつ高精度の電極パターンを形成する凹版オフセット印刷を用いた塗膜の製造方法について、従来より連続印刷を行う際に生じていたパイリング現象に関して鋭意検討した結果、特定の樹脂成分並びに特定の溶剤成分を含んだ印刷用インキを用い、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付け、更に、オフセット印刷時の受理速度と印刷速度とに特定の速度差をつけて、インキの粘弾性特性の速度依存性を利用することにより、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができることを確認し、本発明に至った。
【0016】
本発明の凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法は、図1(a)〜図1(d)に示すように、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分、溶剤成分及び分散剤をそれぞれ含有した印刷用インキ11を凹状のパターン10aを有する印刷版10に充填し、印刷版10から充填したインキ11を表面にシリコーンゴムシート13aを有するロール状の印刷用ブランケット13へ転写した後、印刷用ブランケット13を回転して印刷用ブランケット13から被転写体16へインキ11を転写する凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法の改良である。
【0017】
その特徴ある構成は、樹脂成分がスチレン−アクリル共重合体、ウレタン−アクリル共重合体、エポキシ−アクリル共重合体、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の成分を含み、溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上の成分を含み、印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付け、印刷版10に充填したインキを印刷用ブランケット13へ転写する際の受理速度V1が0.1〜12m/min、かつ印刷用ブランケット13から被転写体16へインキを転写する際の印刷速度V2が0.2〜120m/minの範囲内であるとき、印刷速度V2と受理速度V1との速度比(V2/V1)が2以上であるところにある。
但し、ポリエステルポリオールは、炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール又は炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコールである。
【0018】
印刷用インキに上記種類の樹脂成分及び上記種類の溶剤成分を用い、印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに対して室温の気体を印刷中に連続して吹き付けることで、印刷版10から印刷用ブランケット13へ印刷用インキ11を転写した後は、印刷用インキ11から溶剤成分を速やかに揮発させるため、印刷用ブランケット13表面に転写した印刷用インキ11の凝集力が向上する。印刷用インキ11の凝集力が向上すると、印刷用ブランケット13から被転写体16へ印刷する際に、印刷用インキ11が残留し難くなる。また、印刷用ブランケット13から被転写体16へ印刷用インキ11を転写して1回分の印刷を終えた後は、印刷用ブランケット13表面に浸透している溶剤成分を速やかに除去するため、印刷用ブランケット13の状態を溶剤成分浸透前の状態に保つことができる。
【0019】
印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに吹き付ける気体の速度は0.1〜50m/sec、好ましくは5〜20m/secの範囲内である。吹き付ける気体の速度が上記範囲内であれば、印刷用ブランケット13へ転写した印刷用インキ11から溶剤成分を速やかに揮発させ、また、印刷後の印刷用ブランケット13表面に浸透している溶剤成分を速やかに除去するのに好適である。吹き付ける気体の速度が0.1m/sec未満では印刷用ブランケット13上に転写した印刷用インキ11から溶剤成分を揮発させ難く、また印刷用ブランケット13に浸透している溶剤成分を十分に除去することができない不具合を生じ、50m/secを越えると、印刷用ブランケット13上に転写した印刷用インキ11の形状が乱れてしまう不具合が生じる。吹き付ける気体としては、空気、窒素又は二酸化炭素が挙げられる。
【0020】
印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aに吹き付ける気体のうち、印刷版10方向又は被転写体16方向に向かう気体を遮るために遮蔽板15を設けることが好ましい。遮蔽板15を設けて印刷版10又は被転写体16方向に向かう気体を遮ることで、印刷版10に充填した印刷用インキ11からの溶剤成分の揮発を十分に防止でき、また、被転写体16では揮発した溶剤が基板に付着することを妨げることができ、基板表面状態を保つという優れた効果が得られる。
【0021】
受理速度V1を上記範囲内としたのは、受理速度V1が0.1m/min未満では所望の受理量を得られず、12m/minを越えるとブランケット13に印刷用インキ11が受理し難くなるという問題があるためである。受理速度V1は1〜6m/minが好ましい。好ましい受理速度V1を1〜6m/minとしたのは、上記範囲内であれば、印刷用インキの弾性率が低くなり、インキが凝集破壊モードとなって、ブランケットへ転写され易くなるためである。また、印刷速度V2を上記範囲内としたのは、印刷速度V2が0.2m/min未満ではブランケット13にペーストが残るパイリング現象が生じてしまい、120m/minを越えるとパターン形状が乱れるという問題があるためである。印刷速度V2は6〜40m/minが好ましい。好ましい印刷速度V2を6〜40m/minとしたのは、上記範囲内であれば、印刷用インキの弾性率が高くなり、インキが界面剥離モードとなって、パイリング現象を生じることなくガラス基板へ転写され易くなるためである。なお、本発明でいう受理速度V1及び印刷速度V2は、ロール状の印刷用ブランケット13の周速である。
【0022】
受理速度V1と印刷速度V2との速度比(V2/V1)が2以上となるように受理と印刷とで速度差をつけて、インキの粘弾性特性の速度依存性を利用することにより、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。
【0023】
具体的には、図3に示すような印刷版10の凹状パターン10aに充填した印刷用インキ11をロール状の印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aへ転写する際、即ちブランケット受理時には、受理速度V1を図2中の点線で示される位置よりも低速にすることで、印刷用インキの弾性率は低くなる。このような低い弾性率では印刷用インキ11が柔らかくなるため、図4に示すように、印刷用インキ11は内部で分断して、印刷用インキ11の大部分がシリコーンゴムシート13aに転写し、一部が印刷版10の凹状パターン10aに残留する凝集破壊モードとなり、ブランケット上に印刷用インキ11を転位させることが可能となる。一方、図5に示すような印刷用ブランケット13表面のシリコーンゴムシート13aから被転写体16へ印刷用インキ11を転写する際、即ち印刷時には、印刷速度V2を図2中の点線で示される位置よりも高速にすることで、印刷用インキの弾性率は高くなる。このような高い弾性率では印刷用インキ11が硬くなるため、図6に示すように、印刷用インキ11は、内部で分断することなく、シリコーンゴムシート13aとの界面で剥離する界面剥離モードとなり、ブランケット上にインキを残留させることなく、被転写体へのインキの塗布を行うことが可能となる。
【0024】
この受理速度V1と印刷速度V2の速度比(V2/V1)を最適条件に制御することで、印刷用ブランケット表面に印刷用インキが残留せず、パイリング現象を解消することができる。本発明の塗膜の製造方法では、印刷速度V2と受理速度V1との速度比(V2/V1)が2以上であることを特徴とする。速度比(V2/V1)は良好な印刷パターンを得られるという理由で2〜400が好ましい。速度比(V2/V1)が2未満であると、印刷時に十分なペースト凝集力が得られないという理由により、パイリング現象が発生するまでの連続印刷回数が低下してしまう不具合が生じる。
【0025】
本発明の製造方法に使用する印刷用インキに含有する粉末成分は、無機粉末又は有機粉末である。具体的には有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、有機染料が挙げられる。また金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末は導電性パターンの印刷に使用できるため特に好適である。有機顔料としては、アゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ペリレン系、DPP系、蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料としては、アセチルカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトのような炭素粉末、合成シリカ、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、チタンブラック、酸化コバルト、酸化銅、これらの複合酸化物、焼成顔料、硫化亜鉛等が挙げられる。光輝性顔料としては、パール顔料、フレーク顔料、アルミニウム顔料、ブロンズ顔料等が挙げられる。有機染料としては、アルコール可溶性染料、油溶性染料、蛍光染料、集光性染料等が挙げられる。金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末の平均粒径は、印刷適性等を考慮すると、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。この平均粒径はレーザー回折散乱法により求められる数値である。
【0026】
本発明の製造方法に使用する印刷用インキに含有する樹脂成分としては、ポリメチルアクリレート等のポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のポリメタクリル酸エステルと、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂とを共重合させたアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステルの一部をウレタン、エポキシで置換したポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群より選ばれた1種又は2類以上の成分が挙げられる。印刷用インキに上記種類の樹脂成分を含有させることで、ペーストの内部凝集力を向上させるという効果が得られる。一方、上記種類の樹脂成分を含まない場合、ペーストの内部凝集力を向上させるという効果が得られないため、パイリング現象の発生を低減することができない。印刷用インキ100質量%とするとき、樹脂成分5〜20質量%の割合で配合することが好ましい。また、これらの樹脂成分の分子量は、数百〜数百万のオリゴマからポリマーの範囲で好適に用いられる。低分子量の樹脂成分はインキの乾燥抑制に有効であり、高分子量の樹脂成分はインキ内部での凝集破壊を抑制することができる。即ち転写性の向上に有効である。従って、インキ中に低分子量から高分子量と幅広い分子量の樹脂を含有させることにより、インキの乾燥抑制と転写性向上を同時に満たすことができる。上記種類の樹脂成分は、高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができる。
【0027】
本発明の製造方法に使用する印刷用インキに含有する溶剤成分としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上の成分が挙げられる。印刷用インキ100質量%とするとき、溶剤成分7.5〜30質量%の割合で配合することが好ましい。ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]としては、ポリ[(1,9−ノナンジオール)−alt−(アジピン酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール;トリメチロールプロパン)−alt−(アジピン酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(セバシン酸)]が挙げられる。またポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]としては、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(テレフタル酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(イソフタル酸)]が挙げられる。更に水酸基含有液状アクリル樹脂としては、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシメタクリレートが挙げられる。上記種類の溶剤成分は上記種類の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用インキを印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収、浸透され、インキとシリコーンゴムシート13aの間に溶剤成分に富んだ境界層(WBL)を形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができる。また、上記種類の溶剤成分は、揮発し易い成分であるため、従来の方法のように、溶剤成分が浸透しているブランケットを加熱することによって溶剤成分浸透前の状態に戻す必要がない。このような性能を有する溶剤成分を含む印刷用インキを使用することで、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。
【0028】
本発明の製造方法に使用する印刷用インキに分散剤を加えるのは、分散剤を含むことで塗工した層表面が平滑になる効果が得られるためである。印刷用インキ100質量%とするとき分散剤を3〜10質量%の割合で配合することが好ましい。また、形成するラインのエッジ部におけるシャープネスさが高くなる。分散剤としては、カルボン酸系やリン酸エステル系、ポリカルボン酸高分子アニオンアリルエーテルコポリマ、ポリアミン−脂肪酸縮合物、高分子界面活性剤、高分子脂肪酸、脂肪酸エステル縮合体を使用することが好適である。
【0029】
本発明の製造方法に使用する印刷用インキは、樹脂成分が高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができる。また、上記種類の溶剤成分は上記種類の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用インキを印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収、浸透され、インキとシリコーンゴムシートの間にWBLを形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができる。また、上記種類の溶剤成分は、揮発し易い成分であるため、従来の方法のように、溶剤成分が浸透しているブランケットを加熱することによって溶剤成分浸透前の状態に戻す必要がない。このような性能を有する溶剤成分を含む印刷用インキを使用することで、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
【0030】
本発明の凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法を説明する。
【0031】
先ず、図1(a)に示すように、所望の凹状パターン10aを有する印刷版10として平面凹版を用意し、この平面凹版10表面に印刷用インキ11を所定量供給する。供給した印刷用インキ11は、スキージ12を平面凹版10表面にあててスライドさせることにより、凹状パターン10aに埋め込む。次に、図1(b)に示すように、表面にシリコーンゴムシート13aが取り付けられた印刷用ブランケット13としてブランケットロールを用意する。ブランケットロール13表面のシリコーンゴムシート13aには、送風機14により室温の気体が印刷中連続して吹き付けられる。送風機14の噴射口14aは、ブランケットロール13の曲面に対して、接線方向に気体を吹き付けるようにその方向を維持するよう設置される。また、吹き付ける気体のうち、平面凹版10方向又は被転写体16方向に向かう気体を遮るために遮蔽板15が設けられる。このブランケットロール13をインキ11が凹状パターン10aに埋め込まれた平面凹版10上に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、受理速度V1の範囲内の速度で平面凹版10上をスライドさせることにより、平面凹版10の凹状パターン10aに埋め込まれたインキ11の一部をブランケットロール13のシリコーンゴムシート13a表面に転写する。なお、ブランケットロール表面にはシリコーンゴムシートの代わりにシリコーン樹脂シートを取り付けてもよい。このときの転写率は平面凹版の凹状パターンやインキに含まれる成分やその比率、ブランケットの圧接の強弱によっても異なるが、ほぼ20〜60%程度の割合である。本発明に供される印刷用インキ11に含まれる溶剤成分の一部が、転写した際にブランケットロール13表面のシリコーンゴムシート13a中に吸収され、インキとシリコーンゴムシート13aの間にWBLを形成するので、後に続く工程で、インキをブランケット上に残すことなく被転写体に転写し易くすることができる。ブランケットロール13表面のシリコーンゴムシート13a上に転写した印刷用インキ11は、送風機14から吹き付けられる室温の気体により、溶剤成分が揮発し、印刷用インキ11の凝集力が向上する。
【0032】
最後に、図1(c)に示すように、印刷用インキ11を転写したブランケットロール13をガラス基板14のような被転写体に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、印刷速度V2の範囲内の速度でガラス基板14上でスライドさせることにより、図1(d)に示すように、ガラス基板14表面に所望のパターンが転写される。このときの印刷速度V2と受理速度V1との速度比(V2/V1)を2以上となるように受理と印刷とで速度差をつけて、インキの粘弾性特性の速度依存性を利用することにより、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。
【0033】
印刷用インキ11をガラス基板14に転写して1回分の印刷を終えた後は、送風機14から吹き付けられる室温の気体により、シリコーンゴムシート13aに浸透している溶剤成分が除去され、シリコーンゴムシート13aは溶剤成分浸透前の状態に戻される。このように、本発明の製造方法では、1回の印刷につき、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに印刷用インキが残留するのを防ぎ、かつシリコーンゴムシートに浸透する溶剤成分を除去している。これらの効果によっても、連続印刷におけるパイリング現象の発生を低減し、かつパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数を延ばすことができる。従って、本発明の塗膜の製造方法では、連続印刷におけるパイリング現象に起因する、膜厚の減少やばらつき、線幅のばらつき等が解消される。
【実施例】
【0034】
<実施例1〜675>
次の表1〜表5に示す粉末成分、溶剤成分及び分散剤をミキサーにて混合し、更に3本ロールミルにて5〜10Pa・s程度に混練することにより、ペースト状の印刷用インキNo.1〜No.25を得た。
【0035】
凹版オフセット印刷に使用する印刷版としてライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版を、被転写体としてガラス基板をそれぞれ準備した。また、印刷用ブランケットとして表面に厚さ0.3mmのシリコーン樹脂層を有する樹脂シートが取り付けられた直径200mmのブランケットロールを用いた。更に、ブランケットロールには、ロール表面に送風可能なノズルと平面凹版及びガラス基板上への送風を遮蔽するカバーが備えられ、印刷工程中、常時、室温の空気をブランケット上に送風するような構造となっている。
【0036】
先ず、平面凹版表面に上記得られた印刷用インキを所定量供給し、SUS製スキージを用いて平面凹版の凹状パターンにインキを埋め込んだ。次に、ブランケットロールを平面凹版上に圧接した状態で回転させ、平面凹版上を速度V1で移動させることにより、平面凹版の凹状パターンに埋め込まれたインキの一部をブランケットロールのシリコーン樹脂シート表面に転写した。最後に、ブランケットロールをガラス基板に圧接した状態で回転させ、ガラス基板上を速度V2で移動させることにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する印刷基板を得た。
【0037】
上記オフセット印刷を連続で行い、印刷後、50枚毎にブランケット表面にガラス基板に印刷されずにインキが残っているか確認を行い、インクの残りが確認された枚数を、パイリング開始回数とした。
【0038】
なお、実施例1〜25の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例26〜50の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例51〜75の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例76〜100の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例101〜125の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例126〜150の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例151〜175の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例176〜200の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例201〜225の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を1m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。
【0039】
また、実施例226〜250の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例251〜275の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例276〜300の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を6m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例301〜325の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例326〜350の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例351〜375の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を10m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例376〜400の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例401〜425の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例426〜450の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。
【0040】
また、実施例451〜475の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を12m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例476〜500の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を12m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例501〜525の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を12m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例526〜550の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例551〜575の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。また、実施例576〜600の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を30m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。また、実施例601〜625の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を60m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を5m/secとした。また、実施例626〜650の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を60m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を20m/secとした。更に、実施例651〜675の印刷条件は、印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を6m/min、印刷速度V2を60m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を40m/secとした。その結果を表6〜表19に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

<比較例1〜25>
印刷用インキNo.1〜No.25を使用し、受理速度V1を3m/min、印刷速度V2を3m/min、ノズルから印刷用ブランケット表面に吹き付ける空気の速度を60m/secとした以外は実施例1〜675と同様の条件で連続印刷を行った。その結果を表19に示す。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

【0050】
【表10】

【0051】
【表11】

【0052】
【表12】

【0053】
【表13】

【0054】
【表14】

【0055】
【表15】

【0056】
【表16】

【0057】
【表17】

【0058】
【表18】

【0059】
【表19】

表19より明らかなように、比較例1〜25では、パターン形状に異常が生じてしまい、パイリング開始印刷回数を測定するまでには至らなかった。これに対して、表6〜表19より明らかなように、実施例1〜675では、パイリング開始印刷回数が1000〜6350枚と、パイリング現象が発生するまでの連続印刷回数が延びることが確認された。特に、速度比(V2/V1)が大きいほど、また、風速が高いほど、パイリング現象が発生するまでの連続印刷回数が延びる傾向が確認された。更に、実施例同士を比較すると、同じ速度比(V2/V1)であれば受理速度V1が早い方がパイリング現象が発生するまでの連続印刷回数が延びる傾向が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法の概略図。
【図2】印刷用インキの離脱速度と弾性率の関係を示す図。
【図3】平面凹版に充填したインキをブランケットロール表面のシリコーンゴムシートへ転写している状況を示す図。
【図4】平面凹版に充填したインキをブランケットロール表面のシリコーンゴムシートへ転写した後の状況を示す図。
【図5】ブランケットロール表面のシリコーンゴムシートからガラス基板へ印刷用インキを転写している状況を示す図。
【図6】ブランケットロール表面のシリコーンゴムシートからガラス基板へ印刷用インキを転写した後の状況を示す図。
【図7】従来の凹版オフセット印刷でのパイリング現象の原因を説明する図。
【符号の説明】
【0061】
10 印刷版
10a 凹状パターン
11 印刷用インキ
12 スキージ
13 ロール状の印刷用ブランケット
13a シリコーンゴムシート
14 送風機
15 遮蔽板
16 被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分、溶剤成分及び分散剤をそれぞれ含有した印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記印刷版から前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有するロール状の印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットを回転して前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法において、
前記樹脂成分がスチレン−アクリル共重合体、ウレタン−アクリル共重合体、エポキシ−アクリル共重合体、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート及びポリブタジエンアクリレートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の成分を含み、
前記溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上の成分を含み、
前記印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに対して室温の気体を印刷中連続して吹き付け、
前記印刷版に充填したインキを前記印刷用ブランケットへ転写する際の受理速度V1が0.1〜12m/min、かつ前記印刷用ブランケットから前記被転写体へインキを転写する際の印刷速度V2が0.2〜120m/minの範囲内であるとき、
前記印刷速度V2と前記受理速度V1との速度比(V2/V1)が2以上であることを特徴とする凹版オフセット印刷法を用いた塗膜の製造方法。
但し、ポリエステルポリオールは、炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール又は炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコールである。
【請求項2】
無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに吹き付ける気体の速度が0.1〜50m/secの範囲内である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに吹き付ける気体のうち、印刷版方向又は被転写体方向に向かう気体を遮るための遮蔽板が設けられた請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
吹き付ける気体が空気、窒素又は二酸化炭素である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
印刷用インキに含有する無機粉末が銀粉末を含む粉末であり、得られる塗膜が銀含有膜である請求項1又は2記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−230243(P2008−230243A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38184(P2008−38184)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】